JP3970033B2 - 釣り用リールの発音装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発音装置、特に、釣り用リールの第1部品と第1部品に対して相対回転する第2部品との相対回転により発音する釣り用リールの発音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フロントドラグ形のスピニングリールでは、スプール軸の先端に装着されたスプール内にドラグ機構が装着されている。ドラグ機構は釣り糸に過度な張力が作用して糸切れを起こすのを防止するために設けられている。ドラグ機構は、スプール内に収納された1又は複数枚のドラグディスクと、ドラグディスクを押圧するドラグつまみと、ドラグ作動時に発音するドラグ発音機構とを備えている。
【0003】
このようなドラグ機構が装着されたスプールでは、設定されたドラグ力を超える過度な張力が釣り糸に作用すると、スプールが糸繰り出し方向に回転して釣り糸を繰り出し、張力の増加を抑え糸切れを抑えることができる。ドラグ発音機構は、このドラグ作動時、つまりスプール(第2部品の一例)がスプール軸(第1部品の一例)に対して相対回転すると発音する。
【0004】
従来のドラグ発音機構として、スプール軸に回転不能に装着された音出し部材と、スプール軸と平行な軸回りに揺動自在にスプールに装着された爪部材と、爪部材を接触姿勢に付勢する板ばねとを有するコンパクトな構成のドラグ発音機構が知られている。音出し部材は、外周にギア歯状の多数の凹凸が形成された円板状の部材である。爪部材は、二等辺三角形状の板状部材であり、等辺で挟まれた角部が音出し部材に接触し、他の2つの角部間の底辺に板ばねが接触している。その接触面となる底辺は揺動中心を結ぶ半径より大きな半径で円弧状に僅かに湾曲している。そして、爪部材を接触姿勢に付勢している。板ばねは、基端がスプールに装着され、装着端から爪部材の底辺に向けて折り曲げられており、爪部材の底辺の一側から他側に延びている。
【0005】
このような構成の従来のドラグ発音機構では、ドラグ作動時などスプールがスプール軸に対して相対回転すると、音出し部材により押圧されて爪部材が揺動する。爪部材が揺動すると爪部材の一側又は他側が板ばねを押圧し、板ばねが爪部材を付勢して元の接触姿勢に戻す。これにより、凹凸部への衝突を繰り返し、発音機構が発音する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、揺動する爪部材を音出し部材に衝突させて発音させているので、歯切れのよいクリック音を得やすい。しかし、爪部材の底辺の一側から他側に延びる板ばねを爪部材の底辺に接触させて付勢しているので、スプールの回転方向によって付勢力が変化し音色が変化するという問題がある。具体的には、板ばねの装着側に近い一側が板ばねを押圧する場合と、装着側から遠い他側が板ばねを押圧する場合とでは、一側が押圧する方が板ばねの変位が大きくなりそれにより付勢力も大きくなる。したがって一側が押圧するようにスプールが回転する場合と他側を押圧するようにスプールが回転する場合とで付勢力が変化し音色が変化するのである。
【0007】
本発明の課題は、爪部材を有する釣り用リールの発音装置において、スプールの回転方向による音色の変動抑えることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る釣り用リールの発音装置は、釣り用リールの第1部品と第1部品に対して相対回転する第2部品との相対回転により発音する装置であって、音出し部材と、爪部材と、付勢部材とを備えている。音出し部材は、第1部品に回転不能に装着され外周に径方向に突出する多数の凹凸部を有する部材である。爪部材は、第2部品に揺動自在に装着された本体部と、本体部の揺動中心より第1部品側に形成され音出し部材の凹凸部に衝突する爪部と、揺動中心を挟んで第1部品と逆側に円弧状に本体部に形成されかつ揺動中心と爪部とを結ぶ直線を境に、直線上に中心が配置された第1側の円弧の半径が第2側の円弧の半径より小さい接触面とを有している。爪部材は角がそれぞれ丸められた略三角形状であり、第1角に爪部が形成され、第2角及び第3角を結ぶ円弧状の曲線部に接触面が形成されている。第1側及び第2側の円弧の中心は、揺動中心より接触面から離反した位置に配置されている。付勢部材は、接触面の第1側に近い一端が第2部品に装着され、一端から延びる他端側が接触面に接触し、爪部材の爪部を音出し部材に衝突する衝突姿勢に付勢する部材である。
【0009】
この発音装置では、第1部品が第2部品に対して相対回転すると、音出し部材により押圧されて爪部材が揺動する。爪部材が揺動すると爪部材の一側又は他側が付勢部材を押圧し、付勢部材が爪部材を付勢して元の衝突姿勢に戻す。これにより、凹凸部への衝突を繰り返し発音装置が発音する。この接触面の第1側又は第2側が付勢部材を押圧する際に、爪部材の接触面の半径が付勢部材の装着側(一端)に近い第1側の方が第2側より小さいので、揺動して第1側が押圧する際の付勢部材の変位と第2側が押圧する際の付勢部材の変位との差を少なくすることができる。このため、付勢力の差が少なくなり音色の変動を抑えることができる。また、簡素な形状で爪部材を構成できる。
【0010】
発明2に係る釣り用リールの発音装置は、発明1に装置において、釣り用リールは、リール本体に回転不能かつ前後移動自在に装着された第1部品としてのスプール軸と、スプール軸にドラグ機構を介して装着された第2部品としてのスプールとを有するスピニングリールであり、スプール軸とスプールとの相対回転により発音する。この場合には、スピニングリールにおいて、スプール軸とスプールとの相対回転により発音するドラグ作動認識用の発音装置の音色の変動を抑えることができる。
【0011】
発明3に係る釣り用リールの発音装置は、発明2に記載の装置において、爪部は、他の部分よりスプールの回転軸方向の長さが長く形成されている。この場合には、音出し部材に接触する爪部のスプール軸方向長さが長いので、爪部のスプール軸方向の接触範囲が広くなる。このため、たとえば糸巻形状を変更するためにスプールの前後位置を調整しても確実に発音する。
【0012】
発明に係る釣り用リールの発音装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、第2角は第1側に位置し第3角は第2側に位置するとともに、それぞれ丸められており、その丸め半径は第2角が第3角より大きい。この場合には、角で付勢部材を押圧した場合に、第1側にある第2角の丸め半径が大きいので第1側で押圧するときの付勢部材の変位をさらに少なくすることができる。
【0013】
発明に係る釣り用リールの発音装置は、発明1からのいずれかに記載の装置において、付勢部材は、ばね板材を折り曲げて形成された板ばねである。この場合には、板ばねを用いることにより装置の設置面積を小さくすることができ、狭い空間にも発音装置を収納できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
〔全体構成及びリール本体の構成〕
図1及び図2において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、スプール4に釣り糸を巻き付けるものであり、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、外周面に釣り糸を巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。なお、ハンドル1は、図1に示すリール本体2の左側と、図2に示すリール本体2の右側とのいずれにも装着可能である。
【0015】
リール本体2は、開口を有するリールボディ2aと、開口を塞ぐようにリールボディ2aに着脱自在に装着された蓋部材2bと、蓋部材2bから斜め上前方に延びる竿取付脚2cとを有している。リールボディ2aは、内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0016】
ロータ駆動機構5は、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a,14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0017】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23は、図示しない減速機構を介してピニオンギア12に噛み合っている。このため、オシレーティング機構6の前後移動速度が遅くなり、釣り糸をスプール4に緻密に巻き付ける密巻を実現できる。
【0018】
〔ロータの構成〕
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえば合成樹脂製であり一体成形されている。
【0019】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部には貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギアの前部12a及びスプール軸15が貫通している。前壁33の前部にナット13が配置されている。
【0020】
第1ロータアーム31は、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、円筒部30との接続部は円筒部30の周方向に広がり湾曲している。第1ロータアーム31の先端の外周側には、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41が装着されている。
【0021】
第2ロータアーム32は、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びている。第2ロータアーム32は、先端部から円筒部30との接続部分に向けて2股に分岐しており、円筒部30と周方向に間隔を隔てた2カ所で接続されている。第2ロータアーム32の先端外周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0022】
ラインローラ41と第2ベール支持部材42との間には線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1及び第2ベール支持部材40,42、ラインローラ41及びベール43により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム44が構成される。ベールアーム44は、図2に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0023】
ロータ3の円筒部30の内部にはロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0024】
〔スプールの構成〕
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。スプール4は、図3及び図4に示すように、スプール本体53と、スプール本体53の前端部に取り付けられた前フランジ部54とを有している。
【0025】
スプール本体53は、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部55と、糸巻胴部55の後端部に一体成形された大径筒状のスカート部56と、糸巻胴部55の内周側に挿入された挿入部材57と、糸巻胴部55を挿入部材57に固定するための固定部材58とを有している。
【0026】
糸巻胴部55及びスカート部56は、たとえばアルミニウム合金の薄板をプレス加工により一体成形して得られた大小2段の筒状の部材である。糸巻胴部55は、スカート部に連なる径方向外方に延びる後フランジ部55aを有している。後フランジ部55aの後面に固定部材58が配置されている。
【0027】
スカート部56は、後端が折り曲げられて補強されており、その前部外周面には、糸止め90を装着するための装着凹部56aが形成されている。装着凹部56aには、糸止め90が貫通する貫通孔56bが形成されている。糸止め90は、合成樹脂製の部材であり、釣り糸を係止する板状の糸止め部90aと、糸止め部の下面から径方向内方に延びる取付部90bとを有している。取付部90bは、固定部材58に形成された糸止め装着部58aに取り付けられている。糸止め装着部58aは、固定部材58の前面及び外周面に僅かに凹んで形成されており、糸止め装着部58aには、糸止め90が装着される円錐台形状の突起部58bが形成されている。
【0028】
挿入部材57は、図3〜図6に示すように、糸巻胴部55の内周側に挿入され、ドラグ機構60が収納される合成樹脂製の筒状部材であり、たとえばインジェクション成形により形成されている。挿入部材57は、糸巻胴部55が装着される外筒部57aと、外筒部57aの前端部に大径に形成されたフランジ固定部57bと、外筒部57aの内周部に形成された壁面部57cと、外筒部57aの内周側で壁面部57cから前方に突出する内筒部57dと、壁面部57cの内周部に後方に突出して形成された筒状の軸支持部57eとを有している。
【0029】
外筒部57aの前端部のフランジ固定部57bの根元部分には、周方向に間隔を隔てて前フランジ部54を回り止めするための4つの回り止め突起57fが形成されている。この回り止め突起57fに係止される切欠き54aが前フランジ部54の先端内周面に形成されている。また、外筒部57aの前端外周面は、図7に示すように、前方に行くに連れて拡径するテーパ面となっている。この拡がり角度αはたとえば1度から5度の範囲である。このような範囲でテーパ面を形成すると、薄肉金属製の糸巻胴部55を外筒部57aにはめ込むときに圧入することができ、糸巻胴部55と外筒部57aとの隙間をなくし、その間での糸噛みを防止することができる。
【0030】
フランジ固定部57bは、前フランジ部54を糸巻胴部55とで挟持するために設けられている。フランジ固定部57bは前フランジ部54の前面と所定の交差角βで接触するように、後面にテーパ面57nが形成されている。このようなテーパ面57nを形成することにより前フランジ部54との間に隙間が生じにくくなり、糸噛みを防止できるとともに外観を向上させることができる。
【0031】
壁面部57cの後面外周側には、外筒部57aとにまたがって後方に突出する4つの取付ボス57gが形成されている。この取付ボス57gに取付ボルト59がねじ込まれて糸巻胴部55及びスカート部56が挿入部材57に固定されている。また、壁面部57cには、ドラグ機構60の第1発音機構63(後述)を装着するための装着ボス57kやばね止め部57mなども形成されている。
【0032】
内筒部57dの内周側は、ドラグ機構60を収納する凹部64となっており、その内周面には、ドラグ機構60を回り止めするための1対の第1係止溝57hが形成されている。第1係止溝57hは、矩形断面の溝であり、径方向に対向する位置にスプール軸15に沿って形成されている。また、内筒部57dの内周面には、ドラグ機構60を抜け止めするために周方向に間隔を隔てて4つの第2係止溝57iが形成されている。第2係止溝57iは、壁面部57c側からスプール軸15に沿って壁面部57cを貫通する丸穴を内周面(凹部64の外縁部)を通って形成することにより略半円形の断面になるように形成されている。第2係止溝57iは、内筒部57dの前端面より手前側までしか形成されていない。この前端面側の形成端57jで抜け止めばね70(後述)を係止する。
【0033】
固定部材58は、円板状の合成樹脂製の部材であり、取付ボルト59が貫通する4つの貫通孔58cが形成されている。また、挿入部材57の後端面に芯出しされる段差凹部58dが形成されている。さらに前面側に後フランジ部55aの傾斜に合わせて僅かに前方に凸に傾斜した押圧面58eが形成されている。固定部材58は、取付ボルト59により挿入部材57の後面に芯出しされた状態で装着され、押圧面58eで後フランジ部55aを押圧して糸巻胴部55を挿入部材57に固定している。また、糸巻胴部55により前フランジ部54をフランジ固定部57bに向けて押圧して前フランジ部54を固定している。
【0034】
前フランジ部54は、たとえば,アルミニウム合金製の環状部材であり、板状の金属薄板を打ち抜きプレス加工後に切削加工して形成されたものである。図7に示すように、前フランジ部54の外周面54cは機械加工により断面視円形に丸められている。前フランジ部54の内周面には、前述した切欠き54aと、切欠き54aの後面側に糸巻胴部55の前端面が当接するように形成された環状の当接凹部54bとが形成されている。これらの切欠き54a及び当接凹部54bは、打ち抜き加工時に同時に形成されている。前フランジ部54は、糸巻胴部55及びスカート部56を挿入部材57に固定することにより挿入部材57に固定されている。すなわち、前フランジ部54に向けして押圧した状態で糸巻胴部55を挿入部材57に固定することにより糸巻胴部55とフランジ固定部57bとで前フランジ部54を挟持して固定している。
【0035】
〔ドラグ機構の構成〕
ドラグ機構60は、図3及び図4に示すように、挿入部材57の内筒部57dの凹部64内に配置され、スプール4の糸繰り出し方向への回転を制動してスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、スプール軸15の先端に螺合するドラグつまみ61と、ドラグつまみにより押圧される、たとえば4枚のドラグディスク62a〜62dと、ドラグ作動時に発音する第1発音機構63とを備えている。
【0036】
ドラグつまみ61は、図8から図10に示すように、ドラグ力を手で調整する操作を行うためのつまみ本体65と、つまみ本体65により押圧される押圧体66と、つまみ本体65と押圧体66との間に配置されたコイルバネ67と、押圧体66をつまみ本体65に対して抜け止めするための抜け止めばね68と、ドラグ操作時に発音する第2発音機構75とを有している。
【0037】
つまみ本体65は、後端面に開口して形成された円形の凹部65aと、前端面から凹部65aの外縁部を通って後端面の手前側まで周方向に間隔を隔てかつスプール軸方向に沿って形成されたたとえば4つの係止溝65bとを有し、合成樹脂製のたとえばインジェクション成形された鍔付き円筒状の部材である。係止溝65bは、前端面から形成された丸穴により凹部65aの外縁に半円状に形成されかつ凹部65aの後端部より手前側まで形成されている。この係止溝65bの形成端65fに抜け止めばね68が係止される。係止溝65bを形成するための丸穴はつまみ本体65の前面に貼られたシール71により隠されている。このようにシール71を貼って丸孔を塞ぐことにより、型成形するために丸穴により係止溝65b形成しても、水などの異物が内部に入りにくくなる。
【0038】
つまみ本体65の中心部には、四角形のナット69が回転不能かつ軸方向移動自在に装着されるナット装着部65cが形成されている。つまみ本体65の前部には、略台形状に形成されたつまみ突起65dが直径に沿って形成されている。つまみ本体65の後面には、第2発音機構75を収納するための装着穴65eが形成されている。ナット69は、スプール軸15の先端に形成された雄ねじ部15aに螺合している。コイルバネ67は、ナット69と押圧体66との間に圧縮状態に装着されている。
【0039】
押圧体66は、つまみ本体65に回転自在かつ軸方向に抜け止めされた状態で連結され、スプール軸15に対して回転不能な部材である。押圧体66は、コイルバネ67の後端に接触してコイルバネ67のばね力の変化によりドラグディスク62a〜62dへの押圧力が変化する。押圧体66は、円筒部66aと円筒部66aより大径のリング状の鍔部66bとを有する鍔付き有底筒状の部材である。円筒部66aの内周部には、スプール軸15の先端に形成された互いに平行な面取り部15bに回転不能に係止する長溝形状の係止孔66cが形成されている。この円筒部66a内にコイルバネ67が収納されている。鍔部66bの前端面には周方向に多数の半球状の音出し穴76が並べて形成されている。押圧体66は、抜け止めばね68によりつまみ本体65と連結されている。
【0040】
コイルバネ67は、ナット69と押圧体66との間に圧縮状態に装着されている。具体的には、コイルバネ67は、押圧体の円筒部66aにガイドされた状態でナット69と円筒部66aの底部とに接触して配置されている。
【0041】
抜け止めばね68は、弾性を有する金属線材を折り曲げて形成された部材である。抜け止めばね68は、装着時に圧縮して四角形になるように形成され、非装着時に僅かに拡がるように形成されている。この四角形の角部68aが係止溝65bの形成端65fに係止され、角部68aを連結する接触部68bが押圧体66の鍔部66bの後面側に接触する。これにより押圧体66が凹部65aに抜け止めされた状態で収納される。
【0042】
第2発音機構75は、押圧体66に音出し穴76と、装着穴65eに装着された音出しピン77と、音出しピン77を音出し穴76に向けて付勢するコイルバネ78とを有している。音出し穴76は、装着穴65eと対向可能な位置に周方向に間隔を隔てて多数形成されている。音出しピン77は、中央部分が大径で先端及び後端が小径でさらに先端が半球状に丸められたピンであり、ドラグ操作時につまみ本体65と押圧体66とが相対回転すると、音出し穴76との衝突を繰り返して発音する。
【0043】
ドラグディスク62aは、図4に示すように、押圧体66に接触し、かつスプール軸15に対して回転不能な金属製の円板部材である。ドラグディスク62bは、スプール4及びスプール軸15に対して回転自在なたとえばフェルト製の円板部材である。ドラグディスク62cは、スプール4に対して回転不能な金属製の円板部材である。ドラグディスク62dは、スプール4及びスプール軸15に対して回転自在なたとえばフェルト製の円板部材である。ドラグディスク62aの中心部には、スプール軸15の面取り部15bに係合する長溝形状の係止孔62eが形成されている。ドラグディスク62cの外周面には、径方向外方に突出する一対の耳部62fが形成されているこの耳部62fは、スプール4の第1係止溝57hに係止されている。これにより、ドラグディスク62cは、スプール4に対して回転不能になっている。
【0044】
ドラグディスク62の前面には、抜け止めばね70が接触している。抜け止めばね70は、抜け止めばね68と同様な4角形状であり、それぞれの角部70aが第2係止溝57iの形成端57jに係止され、接触部70bがドラグディスク62a〜62dに接触してドラグディスク62a〜62dが抜け止めされている。これにより、ドラグつまみ61を外してもドラグディスク62a〜62dが脱落しない。
【0045】
第1発音機構63は、ドラグの作動によりスプール軸15とスプール4とが相対回転すると発音する機構である。第1発音機構63は、図3、図4及び図11に示すようにスプール軸15に回転不能に装着された音出し部材81と、挿入部材57に揺動自在に装着され音出し部材81と衝突を繰り返す爪部材82と、爪部材82を付勢する板ばね83とを有している。
【0046】
音出し部材81は、内周部に面取り部15bに係止される長溝形状の係止孔81aを有し、外周部に径方向に突出し、周方向に間隔を隔てて配置された多数の凹凸部81bを有するギア形状の円板部材である。音出し部材81の両側には、スプール4の前後位置を調整するためのスプールワッシャ84が装着されている。スプールワッシャ84は、スプール軸15に回転不能に装着されており、スプールワッシャ84の枚数を変えてスプール4の前後位置を変化させることによりスプール4における糸巻形状を任意に調整することができる。
【0047】
爪部材82は、図12に示すように、スプール4の挿入部材57に揺動自在に装着された本体部82aと、音出し部材81の凹凸部81bに衝突する爪部82bと、板ばね83に接触する接触面82cとを有している。爪部82bは、本体部82aの揺動中心SCよりスプール軸15側に形成されている。爪部82bは、他の部分よりスプール軸方向の長さが長く形成されている。接触面82cは、揺動中心SCを挟んでスプール軸15と逆側に円弧状に本体部82aに形成され形成された円弧は、揺動中心SCと爪部82bとを結ぶ直線L1を境に第1側(図12右側)の半径R1が第2側(図12左側)の半径R2より小さい。接触面82cの両側の角部は丸められており、その第1側の丸め半径R3は第2側の丸め半径R4より大きい。
【0048】
板ばね83は、ばね止め部57mと取付ボス57gのひとつとに挟持されて挿入部材57に装着されている。板ばね83は、本体部82aの異なる半径で僅かに湾曲した部分に接触して爪部材82を音出し部材81に最も接触する方向に付勢している。具体的には、爪部材82は、板ばね83の装着部分に大きな半径の角部が位置するように配置されている。板ばね83は、3箇所でジグザグに逆側に折り曲げられた金属製の板状部材であり、接触面82cの第1側に近い一端がスプール4の挿入部材57に装着されている。具体的には、ばね止め部57mと取付ボス57gとの境界部分に挟まれた状態で取付ボス57gに形成された突起部57pで折り曲げられさらに逆側に折り曲げられて接触面82cに第1側から接触している。そして、爪部材82の爪部82bを音出し部材81に衝突する衝突姿勢に付勢している。すなわち、接触面82cにおいて、揺動中心SCから最も距離が短いのは直線L1の境界部分であり、それから第1側及び第2側に行くに連れて距離が長くなる。その長くなる割合は、半径R1が半径R2より短くかつ半径R3が半R4より大きいので、第1側が第2側に比べて小さくなっている。このため、板ばね83は、爪部材82の接触面82cで押圧されると、爪部82bが音出し部材81に接触する境界部分で接触面に接触するように爪部材82を付勢し、爪部材82を衝突姿勢にする。
【0049】
このように爪部材82及び板ばね83を配置すると、爪部材82の押圧力がスプールの回転方向に関わらず変動しにくくなる。なぜなら、板ばね83は、突起部57pとの接触部分から変位するので、もし爪部材82の接触部分の半径が同じであると、爪部材82が図13に示すように時計回りに揺動する場合と図12に示すように反時計回りに揺動する場合とで、板ばね83の装着部分に近い第1側で板ばね83を押圧する時計回りに揺動する場合の方が板ばね83の変位が大きくなる。そこで、時計回りに揺動する際の板ばね83の変位を小さくするために、板ばね83の装着部分に近い第1側の半径R1を第2側に比べて小さくするとともに丸め半径R3を大きくしているのである。これにより、回転方向による音の変化が生じにくくなる。また、爪部82bをスプール軸方向に延ばしているので、スプール4の位置をスプールワッシャ84により調整しても爪部82bが常に音出し部材81に接触する。
【0050】
〔リールの操作及び動作〕
釣りを行う前に魚の大きさや種類に合わせてドラグ力を調整する。ドラグ力を調整するには、ドラグつまみ61を回す。ドラグつまみ61をたとえば時計回りに回すとスプール軸15に螺合するナット69によりコイルバネ67を介して押圧体66がドラグディスク62aを押圧する。これによりドラグ力が大きくなる。このとき、押圧体66とつまみ本体65との相対回転により第2発音機構75の音出しピン77が音出し穴76への衝突を所定間隔で繰り返し、歯切れがよい軽快なクリック音を発生する。
【0051】
キャスティング時にはベールアーム44を糸開放姿勢に反転させる。これにより第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は揺動する。この状態で釣り竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣り竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。この状態でハンドル1を糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転し、ベールアーム44がベール反転機構により糸巻取位置に復帰し釣り糸がスプール4に巻き付けられる。
【0052】
この状態で魚がかかってドラグが作動すると、スプール4がスプール軸15に対して回転する。すると、第1発音機構63が発音してそのことを釣り人に報知する。そして、設定されたドラグ力でスプール4が糸繰り出し方向に回転する。ドラグ作動時の第1発音機構63による発音の際には、図12に示すように、スプール4は後方から見て反時計回りに回転するので、板ばね83は接触面82cの第2側に接触する。また、スプール4を手で糸巻取方向に回転させたときには、図13に示すようにスプール4は、後方から見て時計回りに回転する。このようにスプール4の回転方向が異なる場合、爪部材82の揺動方向によって従来は板ばね83の変位が変化し音色が異なっている。しかし、本願発明では、板ばね83の装着側に近い第1側の半径R1を小さくしかつ丸め半径R3を大きくしたので、ばね装着側に近く少ない押圧量でばねが大きく変位する第1側が第2側に比べて揺動量に対して押圧量が小さくなる。このため、第1側と第2側とで同じ揺動量に対して板ばね83の変位の変動が少なくなり、付勢力が変動しにくくなる。このため、スプールの回転方向にかかわらず音色が安定する。
【0053】
釣りを行う前などに、予め複数種の釣り糸を巻き付けたスプール4を用意し、スプール4を釣りに合わせて交換することがある。この場合には、ドラグつまみ61を緩めてスプール軸15から外す。このとき、抜け止めばね68により押圧体66がつまみ本体65に連結されているので、押圧体66がつまみ本体65から脱落することがない。また、ドラグディスク62a〜62dも抜け止めばね70により抜け止めされているのでスプール4から脱落することがない。
【0054】
このような抜け止めばね68,70を、従来は機械加工により形成された環状の溝部で係止していたので、溝部を形成するために機械加工が必要になる。しかし、本実施形態では、挿入部材57又はつまみ本体65の成形時に型により形成された係止溝57i,65bにより抜け止めばね70,68を係止しているので、係止のための機械加工が不要になる。このため、加工コストを削減できる。
【0055】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、付勢手段としてコンパクトに収納できる板ばねを例示したが、付勢手段は板ばね以外のコイルバネや捩じりコイルバネなど他の形態のばねでもよい。
【0056】
(b)前記実施形態では、スピニングリールの発音機構を例示したが、釣り用リールはスピニングリールに限定されず、両軸受リールや片軸受リールの発音機構にも本発明を適用できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、接触面の一側又は他側が付勢部材を押圧する際に、爪部材の接触面の半径が付勢部材の装着側(一端)に近い一側の方が他側より小さいので、揺動して一側が押圧する際の付勢部材の変位と他側が押圧する際の付勢部材の変位との差を少なくすることができる。このため、付勢力の差が少なくなり音色の変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図2】 その側面断面図。
【図3】 そのスプール部分の断面拡大図。
【図4】 スプールの分解斜視図。
【図5】 スプールの正面図。
【図6】 図5のVI−VI断面図。
【図7】 スプール先端部分の断面拡大図。
【図8】 ドラグつまみの分解斜視図。
【図9】 ドラグつまみの正面図。
【図10】 図9のX−X断面図。
【図11】 スプールの背面側に配置された第1発音機構の全体図。
【図12】 その拡大部分図。
【図13】 その拡大部分図。
【符号の説明】
4 スプール
15 スプール軸
60 ドラグ機構
63 第1発音装置
81 音出し部材
82 爪部材
82a 本体部
82b 爪部
82c 接触面
83 板ばね

Claims (5)

  1. 釣り用リールの第1部品と前記第1部品に対して相対回転する第2部品との相対回転により発音する釣り用リールの発音装置であって、
    前記第1部品に回転不能に装着され外周に径方向に突出する多数の凹凸部を有する音出し部材と、
    前記第2部品に揺動自在に装着された本体部と、前記本体部の揺動中心より前記第1部品側に形成され前記音出し部材の凹凸部に衝突する爪部と、前記揺動中心を挟んで前記第1部品と逆側に円弧状に前記本体部に形成されかつ前記揺動中心と前記爪部とを結ぶ直線を境に、前記直線上に中心が配置された第1側の円弧の半径が前記直線上に中心が配置された第2側の円弧の半径より小さい接触面とを有する爪部材と、
    前記接触面の前記第1側に近い一端が前記第2部品に装着され、前記一端から延びる他端側が前記接触面に接触し、前記爪部材の爪部を前記音出し部材に衝突する衝突姿勢に付勢する付勢部材と、を備え、
    前記第1側及び第2側の円弧の中心は、前記揺動中心より前記接触面から離反した位置に配置され、
    前記爪部材は角がそれぞれ丸められた略三角形状であり、第1角に前記爪部が形成され、第2角及び第3角を結ぶ円弧状の曲線部に前記接触面が形成されている、釣り用リールの発音装置。
  2. 前記釣り用リールは、リール本体に回転不能かつ前後移動自在に装着された前記第1部品としてのスプール軸と、前記スプール軸にドラグ機構を介して装着された前記第2部品としてのスプールとを有するスピニングリールであり、
    前記スプール軸と前記スプールとの相対回転により発音する、請求項1に記載の釣り用リールの発音機構。
  3. 前記爪部は、他の部分より前記スプールの回転軸方向の長さが長く形成されている、請求項2に記載の釣り用リールの発音装置。
  4. 前記第2角は前記第1側に位置し前記第3角は前記第2側に位置するとともに、それぞれ丸められており、その丸め半径は第2角が第3角より大きい、請求項1から3のいずれかに記載の釣り用リールの発音装置。
  5. 前記付勢部材は、ばね板材を折り曲げて形成された板ばねである、請求項1からのいずれかに記載の釣り用リールの発音装置。
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