JP3969703B2 - 受信信号処理装置および距離測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水深を測定する測深機や、トランスポンダを利用した測位システム等に用いられる受信信号処理装置に関する。
【0002】
図18は超音波を利用して水深を測定する測深機の原理を説明する図である。船底に設けられた送受波器(図示省略)より(A)の超音波送信信号を水中に発射してから、水底で反射して帰って来るエコーによる(B)の受信信号を受信するまでの時間Tを、(C)のタイミングパルスを計数することにより求め、この時間Tと水中の音速Cとに基づいて、次式により水深Dを算出することができる。
D=C・T/2
また、水中に3箇所設けたトランスポンダに対して船から超音波信号を送信し、各トランスポンダから受信した応答信号に基づいて、自船と各トランスポンダとの距離を測定し、その結果から自船の位置を算出する測位システムにおいても、距離測定にあたって上記と同様の原理を用いて演算を行うことができる。
【0003】
ところで、受信信号には、水底で反射して帰って来る本来のエコー信号や、トランスポンダからの本来の応答信号以外に、様々なノイズ信号も含まれているため、送受波器が受信した信号の中から水底エコーやトランスポンダの応答に基づく正規の受信信号を検出する処理が必要となる。このために、従来から図14に示したような回路が用いられている。図14において、201は送受波器、202は増幅部、203はフィルタ、204はログアンプ(対数増幅器)、205はA/D変換器、206はデジタルコンパレータである。なお、図14では送受波器201に送信信号を与える送信部は図示を省略してある。
【0004】
図14の回路では、送受波器201が受信した信号を増幅部202で増幅してフィルタ203を通した後、ログアンプ204へ入力して受信信号のエンベロープ信号を生成し、A/D変換器205でエンベロープ信号のレベルに応じたデジタル値に変換する。そして、このデジタル値をデジタルコンパレータ206において所定の基準値(閾値)と比較して基準値を超えておれば、受信した信号を正規の信号と判定するようにしている。
【0005】
しかしながら、この方式では、ノイズであっても信号のレベルが基準値を超えておれば正規の信号と判定してしまうため、誤検出の生じる割合が高くなり、信頼性に欠けるという問題がある。そこで、受信信号に対して相関処理を行い、レベルだけでなく位相も比較することによって検出精度を向上させる方式が提案されている。図15はこのような相関処理方式による回路を示している。図15において、301は送受波器、302は増幅部、303はフィルタ、304はA/D変換器、305は相関器である。ここでも、送受波器301に送信信号を与える送信部は図示を省略してある。
【0006】
図15の回路では、送受波器301が受信した信号を、増幅部302で増幅してフィルタ303を通した後、A/D変換器304でデジタル信号に変換し、このデジタル信号に対して相関器305で基準信号との比較による相関処理を行い、相関出力が最大となる場合に、受信した信号を正規の信号と判定するようにしている。相関器305は、マッチドフィルタ(Matched Filter)から構成され、内部に保有している基準信号(チャープ信号等)の波形と一致する(もしくは最も近似した)波形の信号を検出する機能を有している。なお、送信部あるいはトランスポンダ(いずれも図示省略)からは、上記の基準信号と一致した波形の信号が送信される。
【0007】
図16および図17は、相関処理の原理を示した図である。図16(A)は正規の受信信号に対応した基準信号、(B)はフィルタ303から出力された受信信号である。基準信号は、相関器305の内部メモリにあらかじめ記憶されており、時間とともに周波数が高くなるチャープ信号からなる。相関処理においては、受信信号と基準信号の位相を少しづつずらせながら、各時点での受信信号のレベルと、基準信号のレベルとの積和を演算する。図16はある時点での積和演算の様子を示しており、所定のサンプリング間隔で受信信号のレベル値(A/D変換器304の出力値)と基準信号のレベル値との乗算を行い、その積X1,X2,…Xnをサンプリング区間にわたって加算する。そして、この加算値X1+X2+…+Xnの値を相関出力とする。(C)はこの相関出力を示しており、Q1はこの時点での相関出力値である。
【0008】
図17は、一定時間経過後の別の時点における積和演算の様子を示しており、位相をずらせた結果、受信信号の波形が基準信号の波形と一致した状態を示している。この場合も、所定のサンプリング間隔で受信信号のレベル値と基準信号のレベル値との乗算を行い、その積Y1,Y2,…Ynをサンプリング区間にわたって加算する。そして、この加算値Y1+Y2+…+Ynの値を相関出力とする。(C)はこの相関出力を示しており、Q2はこの時点での相関出力値である。
【0009】
図17では、受信信号が基準信号と一致しているため、積Y1,Y2,…Ynの加算値、すなわち相関出力値Q2は、先の相関出力値Q1よりも大きくなって最大値となる(その後は、受信信号と基準信号の位相が再びずれてゆくため、相関出力値は減少する)。そこで、この相関出力の最大値Q2が一定の基準レベルを越えているか否かを判別し、超えておれば、この受信信号を正規の受信信号として検出することができる。こうして、相関処理によれば、積和演算によって信号のレベルの情報だけでなく位相の情報も取り込んで信号の検出を行うため、レベルが大きくても位相が一致しないノイズは排除され、レベルだけに基づいて信号検出を行う場合に比べて、信号の検出精度を高めることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した相関処理方式では、受信信号をそのまま相関処理しており、受信信号および基準信号のレベル値としてアナログ値を用いているため、積和演算を行うにあたって、取り扱うデータ量が非常に多くなり、演算処理に要する時間が長くなるともに、システムが複雑化する。このため、相関処理にはDSP(Digital Signal Processor)などを用いねばならず、そのためのソフトウエアの開発も必要となって、コストが高くつくという問題がある。また、レベル値をそのまま用いて積和演算を行うことから、信号のレベルがわずかに変化しただけでも、相関出力には大きな変化となって現れるため、信号検出を行うための基準レベルの設定が非常に難しくなり、その結果として信号検出のダイナミックレンジが狭くなるという不具合が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その目的とするところは、相関処理における処理時間を短縮してシステムを簡略化するとともに、信号検出のダイナミックレンジを広く取れる受信信号処理装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る受信信号処理装置は、水中へ発射された超音波に応答して得られるアナログ受信信号を処理する受信信号処理装置であって、受信信号に基づいて当該信号の位相情報を表す矩形波のデジタル信号を生成する位相情報生成手段と、受信信号に基づいて当該信号のレベル情報を表すレベル信号を生成するレベル情報生成手段と、位相情報生成手段で生成された矩形波のデジタル信号に対して、矩形波の基準信号との比較による相関処理を行う相関処理部と、レベル情報生成手段で生成されたレベル信号の移動平均を算出し、この結果得られた移動平均信号と相関処理部から出力される相関出力信号とを加算する加算手段とを備える。そして、この加算手段の出力に基づいて正規の受信信号を検出する。
【0013】
本発明では、受信信号に対してそのまま相関処理を行うのではなく、受信信号から矩形波のデジタル信号を生成し、このデジタル信号に対して矩形波の基準信号を用いて相関処理を行う。この場合、矩形波のデジタル信号はレベル情報を有しないが、位相情報は保持している。一方、矩形波の基準信号もレベル情報は有しておらず、位相情報のみを有している。そこで、これらのデジタル信号と基準信号とにより、位相情報のみに基づく相関処理を行う。この場合、デジタル信号と基準信号はいずれも「H」「L」の2値をとるだけであるから、演算処理が非常に簡単になる。
【0014】
しかし、位相情報だけで相関処理を行ったのではレベル情報が反映されず、基準信号とたまたま位相情報が合致したノイズ信号を正規の信号として誤検出するおそれがある。そこで、本発明では、相関処理の結果得られた相関出力信号にレベル信号の移動平均信号を加算することによって、受信信号のレベル情報を反映させる。こうすれば、信号レベルの低いノイズについてはたとえ位相情報が合致していたとしても誤検出が生じることはなく、また、信号レベルの高いノイズについては基準信号と位相情報が合致しないため正規の信号とはみなされず、やはり誤検出が生じることはない。すなわち、本発明では、信号レベルが高く、かつ基準信号と位相情報が合致した信号のみを正規の受信信号として検出することができる。
【0015】
本発明では、上記のような位相情報とレベル情報を生成する手段として、ログアンプ(対数増幅器)を用いることが推奨される。本発明で用いるログアンプは、受信信号のエンベロープを検出してエンベロープ信号を生成する機能と、受信信号を飽和させてリミット信号を生成する機能とを備えている。そして、エンベロープ信号は受信信号のレベル情報を表しており、リミット信号は受信信号の位相情報を表している。したがって、1つのログアンプによって、レベル情報と位相情報を同時に得ることができる。
【0016】
本発明では、相関処理によって得られた相関出力信号を正規化して移動平均信号と加算した後、加算された信号のエンベロープを抽出して、当該エンベロープ信号が所定の基準レベルを超えているか否かを判定することで、正規の受信信号を検出することができる。この場合、相関処理において2値信号により位相情報の比較を行うので、受信信号のレベルが変化しても、相関出力はほとんど変化しない。このため、相関出力信号の正規化が容易となり、これにともなって基準レベルの設定も容易となるため、信号検出のダイナミックレンジを広く取ることが可能となる。
【0017】
本発明の受信信号処理装置の典型的な適用例としては、船舶等に搭載されて水底までの距離を測定する測深機や、測位システムにおける自船とトランスポンダとの距離を測定する測距装置などが挙げられる。これらの距離測定装置は、水中へ超音波を発射する送受波器と、この送受波器に送信信号を与えるとともに、送受波器で受信された受信信号を信号処理する送受信部と、この送受信部で受信された受信信号に基づいて距離の演算を行う演算処理部とを備えていて、送受信部が本発明に係る受信信号処理装置を有している。そして、演算処理部は、受信信号処理装置で相関出力信号に基づき正規の受信信号が検出されたことに応答して、距離の演算を行う。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示したブロック図である。図において、1は水中へ超音波を発射するとともに、超音波に応答して得られる水底からのエコー信号やトランスポンダからの応答信号受信する送受波器である。なお、図1では受信部のみを示してあり、送信部は図示を省略してある。2〜11は受信信号処理装置を構成するブロックであって、2は受信した信号を増幅する増幅部、3は増幅した受信信号から所定の周波数の信号を取り出すためのフィルタ、4はフィルタ3を通過した受信信号のエンベロープを検出してレベル信号を生成するとともに、受信信号を飽和させてリミット信号を生成するログアンプである。
【0019】
6はログアンプ4から出力されるリミット信号に対して波形整形を行う波形整形部、8は波形整形部6から出力されたデジタル信号に対して相関処理を行う相関処理部、11はログアンプ4から出力されるレベル信号と相関処理部8から出力される相関出力信号とに対して後述の加算処理を行う加算処理部である。相関処理部8はマッチドフィルタ( Matched Filter )から構成され、内部に保有している基準信号の波形と一致する(もしくは最も近似した)波形の信号を検出する機能を有している。
【0020】
9は加算処理部11から出力される信号のエンベロープを取り出すローパスフィルタ、10はこの取り出されたエンベロープ信号に対して基準レベルとの比較を行い、その結果に基づいて受信信号を検出する信号検出部である。上記構成において、ログアンプ4は本発明におけるレベル情報生成手段および位相情報生成手段に相当し、加算処理部11は本発明における加算手段に相当する。
【0021】
図3および図4は、図1の装置における各部の信号波形を示した図である。これらの波形はシミュレーションによるものであるが、実験結果では、ここに示した波形と殆ど同じ波形が得られることが確認された。以下、図3および図4の波形図を参照しながら、図1の装置の動作を説明する。送受波器1から水中へ発射された超音波は、水底で反射し(測深機の場合)、あるいはトランスポンダで受信されて(測位システムの場合)、水底からのエコー信号やトランスポンダからの応答信号が送受波器1で受信される。この受信信号は増幅部2において増幅され、フィルタ3において所定周波数の信号が取り出される。図3のaはフィルタ3から取り出された受信信号を示している。この受信信号aは、図5の拡大波形aに示すような正弦波信号からなる。
【0022】
受信信号aはログアンプ4に入力される。ログアンプ4では、受信信号aのエンベロープを検出して図3のbのようなレベル信号を生成するとともに、受信信号aを飽和させてcのようなリミット信号を生成する。このリミット信号cは、図5の拡大波形cに示すように、ほぼ矩形波のデジタル信号となる。レベル信号bは加算処理部11に入力され、リミット信号cは波形整形部6に入力される。
【0023】
波形整形部6においては、リミット信号cに対して波形のなまりをなくすために波形整形を行い、図3のdに示すデジタル信号を出力する。このデジタル信号dは、図5の拡大波形dに示すように、受信信号aと同期した矩形波信号であって、受信信号aの位相情報を持った信号である。なお波形整形部6は必須ではなく、リミット信号cの波形なまりが無視できる程度であれば、波形整形部6を省略することもできる。
【0024】
上記デジタル信号dは相関処理部8へ入力される。相関処理部8においては、上記デジタル信号dに対して、図3のeに示す基準信号を用いて相関処理を行う。この基準信号eは、図5の拡大波形eに示すような矩形波のデジタル信号である。
【0025】
図6は、相関処理部8における相関処理の原理を示した図である。図6(A)は相関処理部8の内部メモリにあらかじめ設定されている基準信号e、(B)は波形整形部6から出力されるデジタル信号である。基準信号eは、エコーによる正規の受信信号に対応した位相情報を有する基準信号である。相関処理においては、デジタル信号と基準信号eの位相を少しづつずらせながら、各時点でのデジタル信号と基準信号eとの一致度合いを演算する。図6はある時点での演算の様子を示しており、所定のサンプリング間隔でデジタル信号のデジタル値(HまたはL)と、基準信号eのデジタル値(HまたはL)との比較を行い、デジタル値が一致している場合は「1」を割当て、デジタル値が一致していない場合は「0」を割当てる。そして、サンプリング区間にわたって「1」の数を合計し、この合計値を相関出力とする。(C)はこの相関出力を示しており、P1はこの時点での相関出力値である。
【0026】
図7は、一定時間経過後の別の時点における演算の様子を示しており、デジタル信号と基準信号eの位相をずらせた結果、デジタル信号の波形が基準信号eの波形と一致した状態を示している。この場合も、デジタル信号のデジタル値(HまたはL)と、基準信号eのデジタル値(HまたはL)との比較を行い、デジタル値が一致している場合は「1」を割当て、デジタル値が一致していない場合は「0」を割当てる。そして、サンプリング区間にわたって「1」の数を合計し、この合計値を相関出力とする。(C)はこの相関出力を示しており、P2はこの時点での相関出力値である。
【0027】
図7では、デジタル信号が基準信号eと位相的に一致しているため、デジタル値を比較した結果はすべて「1」となり、相関出力値P2は、先の相関出力値P1よりも大きくなって最大値となる。その後は、デジタル信号と基準信号eの位相が再びずれてゆくため相関出力値は減少し、最終的には図8のような相関出力信号が得られる。この相関出力信号に対して、一定の基準レベルLaを設定し、最大値P2が基準レベルLaを越えるか否かを判別することで、正規の受信信号を検出することができる。
【0028】
図9は、相関処理部8における演算回路の具体的構成を示した図である。図において、21は入力バッファを構成するシフトレジスタであって、このシフトレジスタ21には、相関処理部8に入力されるデジタル信号をサンプリングして得られるビット1,0,1,1,…0,…が順次格納される。図9はある時点での格納状態を示しており、シフトレジスタ21には上から順に「1」「0」「1」「1」…「0」が格納されている。22は基準信号eをサンプリングして得られるビットが格納されたレジスタであって、このレジスタ22には上から順に「1」「1」「0」「1」…「1」が格納されている。23は各レジスタ21,22に格納されたビットの一致を検出する一致検出回路であって、レジスタ21,22の対応するビットが一致すれば「1」を、一致しなければ「0」を出力する。24は加算回路であって、一致検出回路23から出力された「1」の数の合計値を演算し、その結果を相関出力として出力する。
【0029】
図10は、一定時間経過後の別の時点におけるビット格納状態を示しており、シフトレジスタ21には上から順に「1」「1」「0」「1」…「1」が格納されており、レジスタ22には上から順に「1」「1」「0」「1」…「1」が格納されている。すなわち、図10はデジタル信号と基準信号eとが位相的に一致した状態を示している。この場合は、一致検出回路23の出力はすべて「1」となり、加算回路24の出力(相関出力)は最大となる。
【0030】
相関処理を行った結果、図4のwに示すような相関出力信号が得られ、更にその絶対値化処理を行うことで、相関処理部8からはxに示すような相関出力信号が出力される。この相関出力信号xは、加算処理部11に入力される。加算処理部11は、図2に示すように、移動平均算出部111と加算器112とを備えている。移動平均算出部111にはログアンプ4からのレベル信号bが入力され、このレベル信号bの移動平均が算出される。この結果、移動平均算出部111からは図3のvに示すような移動平均信号が出力される。そして、この移動平均信号vと相関処理部8からの相関出力信号xとを加算器112で加算すると、加算器112から図4のyに示す加算信号が出力される。
【0031】
上記加算信号yは、ローパスフィルタ9に入力される。ローパスフィルタ9では、加算信号yのエンベロープが検出され、図4のzに示すようなエンベロープ信号が得られる。このエンベロープ信号zは、信号検出部10へ入力される。信号検出部10では、一定の基準レベル(閾値)があらかじめ設定されており、エンベロープ信号zのレベルがこの基準レベルを超えているか否かを判定する。そして、エンベロープ信号zのレベルが基準レベルを超えておれば、このときの受信信号aを正規の受信信号として検出し、検出信号を図示しない演算処理部へ送出する。一方、エンベロープ信号zのレベルが基準レベルを超えてなければ、受信信号aは正規の受信信号ではないと判断し、演算処理部へ検出信号は送出しない。
【0032】
このように、実施形態において、受信信号から矩形波のデジタル信号を生成し、このデジタル信号と矩形波の基準信号とを用いて位相情報のみに基づく相関処理を行っているので、各信号の2値を比較して「1」の数を合計するだけで簡単に信号の一致度合いを算出することができる。したがって、従来のように受信信号と基準信号のレベル値を乗算して積和演算を行う必要がなく、演算処理が非常に簡単になる。
【0033】
また、単に位相情報だけで相関処理するのではなく、相関処理を行った後に受信信号のレベルに応じた信号を加算し、この加算結果に基づいて受信信号を検出しているので、信号レベルの低いノイズは、たとえ基準信号と位相情報が合致していても相関処理の後に排除される。また、信号レベルの高いノイズは基準信号と位相情報が合致しないため、相関処理の段階で排除される。この結果、信号レベルが高く、かつ基準信号と位相情報が合致した正規の信号のみを正確に検出することができ、誤検出のない信頼性の高い装置が得られる。
【0034】
さらに、2値信号により位相情報の比較を行うことで、受信信号のレベルが変化しても相関出力はほとんど変化しないため、相関出力信号の正規化ないし基準レベルの設定が容易となり、信号検出のダイナミックレンジを広く取ることができる。
【0035】
図11は、図1の装置の動作をフローチャートで表したものである。受信信号aがログアンプ4に入力されると(ステップS21)、ログアンプ4はレベル信号bとリミット信号cとを生成してこれらを出力する(ステップS22)。レベル信号bは加算処理部11に入力され、移動平均算出部111(図2)においてレベル信号bの移動平均が算出される(ステップS23)。一方、リミット信号cを波形整形した矩形波のデジタル信号dが相関処理部8へ入力され、前述した要領で相関処理が行われる(ステップS24)。そして、算出された相関出力値は正規化されるとともに絶対値化され(ステップS25)、加算処理部11において、相関出力信号xと移動平均信号vとが加算される(ステップS26)。次に、ローパスフィルタ9によって、加算信号yからエンベロープ信号zが抽出される(ステップS27)。
【0036】
その後、信号検出部10においてエンベロープ信号zと基準レベルとの比較が行われ(ステップS28)、エンベロープ信号zのレベルが基準レベルを超えておれば(ステップS28:YES)、信号検出部10から検出信号として「1」が出力され(ステップS29)、基準レベルを超えてなければ(ステップS28:NO)、検出信号として「0」が出力される(ステップS30)。これらの検出結果は、「1」「0」のフラグとして信号検出部10の内部レジスタにセットされる。検出結果「1」は受信信号が正規の受信信号であることを表し、検出結果「0」は受信信号が正規の受信信号でないことを表している。
【0037】
次に、このフラグを判定して(ステップS31)、フラグが「1」であれば(ステップS31:YES)、エンベロープ信号zを微分処理し(ステップS32)、微分値がゼロとなる点、すなわちエンベロープ信号の極大点を検出する(ステップS33)。このようにするのは、エンベロープ信号zは図12に示すようにある程度の幅を有しているので、相関出力が最大となる点を確実に検出するためである。そして、この極大点が検出された時点で、受信信号が正規の受信信号であることが確定するから、信号検出部10は、距離の演算を指令する信号を後段の演算処理部へ出力する(ステップS34)。演算処理部ではこの指令を受け、受信信号に基づいて距離の演算を行う。
【0038】
ところで、エンベロープ信号が出力されるのは、受信信号aの相関処理が終了してからであり、図12に示したように、受信信号aの受信時点とエンベロープ信号の出力時点との間にはτの時間差がある。このため、送信信号が送信されてからエンベロープ信号の極大点が検出される(すなわち距離演算指令が出力される)までの時間によって距離を計算したのでは、演算結果に誤差が生じる。そこで、距離の演算にあたっては、上記の時間差τを補正したうえで演算処理が行われる。
【0039】
ステップS31においてフラグが「0」であれば(ステップS31:NO)、受信信号は正規の受信信号ではないので、ステップS32〜S34は実行せず、距離演算は行われない。最後に、処理を継続するか否かを判別して(ステップS35)、処理を継続する場合は(ステップS35:YES)、ステップS21へ戻って上述した処理を繰り返す。また、処理を継続しない場合は(ステップS35:NO)、終了する。
【0040】
図13は、本発明に係る距離測定装置のブロック図を表している。1は船底に設けられて水中へ超音波を発射する送受波器、101は送受波器1に送信信号を与えるとともに、送受波器1で受信された受信信号を信号処理する送受信部、102は送受信部101で受信された受信信号に基づいて距離の演算を行う演算処理部、103は演算処理部102での演算結果に基づいて水深等の情報を表示する表示部、104は各種の設定等を行う操作部である。
【0041】
上記距離測定装置は、送受波器1より超音波を発射してから、水底で反射して帰って来るエコーや、トランスポンダからの応答信号を受信するまでの時間を測定して、図18で説明した原理に基づき演算処理部102で距離の演算を行い、水深値等を表示部103に表示するものである。送受信部101は図1で示した受信信号処理装置を備えており、演算処理部102は、送受信部101の受信信号処理装置から出力される前述の距離演算指令を受けて、距離の演算を行う。
【0042】
以上述べた実施形態においては、位相情報生成手段およびレベル情報生成手段としてログアンプ4を用いたが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、受信信号に基づいて位相情報とレベル情報を生成できる手段であれば、ログアンプ以外の手段を用いてもよい。たとえば、位相情報生成手段としてコンパレータを用いて、受信信号から矩形波のデジタル信号を生成し、また、レベル情報生成手段としてアンプを用いて、受信信号から信号レベルを生成するような構成にしてもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、相関処理における処理時間を短縮してシステムを簡略化できるとともに、誤検出のない信頼性の高い装置を実現することができる。また、相関出力信号の正規化が容易となることから、信号検出のダイナミックレンジを広く取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示したブロック図である。
【図2】加算処理部における具体的構成を示した図である。
【図3】図1の各部の信号波形を示した図である。
【図4】図1の各部の信号波形を示した図である。
【図5】拡大波形を示した図である。
【図6】本発明における相関処理の原理を示した図である。
【図7】本発明における相関処理の原理を示した図である。
【図8】相関出力信号を示した図である。
【図9】相関処理部における演算回路の具体的構成を示した図である。
【図10】相関処理部における演算回路の具体的構成を示した図である。
【図11】実施形態の動作を表したフローチャートである。
【図12】受信信号とエンベロープ信号との間の時間差を説明する図である。
【図13】本発明に係る距離測定装置のブロック図である。
【図14】従来例を示すブロック図である。
【図15】他の従来例を示すブロック図である。
【図16】従来例における相関処理の原理を示した図である。
【図17】従来例における相関処理の原理を示した図である。
【図18】超音波を利用した距離測定の原理を説明する図である。
【符号の説明】
1 送受波器
4 ログアンプ
6 波形整形部
8 相関処理部
9 ローパスフィルタ
10 信号検出部
11 加算処理部

Claims (4)

  1. 水中へ発射された超音波に応答して得られるアナログ受信信号を処理する受信信号処理装置において、
    前記受信信号に基づいて、当該信号の位相情報を表す矩形波のデジタル信号を生成する位相情報生成手段と、
    前記受信信号に基づいて、当該信号のレベル情報を表すレベル信号を生成するレベル情報生成手段と、
    前記位相情報生成手段で生成された矩形波のデジタル信号に対して、矩形波の基準信号との比較による相関処理を行う相関処理部と、
    前記レベル情報生成手段で生成されたレベル信号の移動平均を算出し、この結果得られた移動平均信号と前記相関処理部から出力される相関出力信号とを加算する加算手段とを備え、
    前記加算手段の出力に基づいて正規の受信信号を検出することを特徴とする受信信号処理装置。
  2. 請求項に記載の受信信号処理装置において、
    位相情報生成手段およびレベル情報生成手段は1つのログアンプから構成され、
    前記デジタル信号は、ログアンプで受信信号を飽和させて得られるリミット信号であり、前記レベル信号は、ログアンプで受信信号のエンベロープを検出して得られるエンベロープ信号であることを特徴とする受信信号処理装置。
  3. 請求項または請求項に記載の受信信号処理装置において、
    相関出力信号を正規化して前記移動平均信号と加算するとともに、加算された信号のエンベロープを抽出し、当該エンベロープ信号が所定の基準レベルを超える場合に受信信号を正規の受信信号と判定することを特徴とする受信信号処理装置。
  4. 水中へ超音波を発射する送受波器と、この送受波器に送信信号を与えるとともに、前記送受波器で受信された受信信号を信号処理する送受信部と、この送受信部で受信された受信信号に基づいて距離の演算を行う演算処理部とを備えた距離測定装置において、
    前記送受信部は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の受信信号処理装置を備え、
    前記演算処理部は、受信信号処理装置で相関出力信号に基づき正規の受信信号が検出されたことに応答して、距離の演算を行うことを特徴とする距離測定装置。
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