JP3969599B2 - インジゴ染料使いのブラック染め方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インジゴ染料を用いるブラック染め方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
藍染め商品は、今も昔も基本的には洗い込んである。藍染めは、洗えば洗うほど味がでる。独特の落ち着いた雰囲気をもった色に段階的に変身していくわけである。本来の濃色の藍染めの色は、限りなく黒に近い色をしているが、洗い込んでいくたびに、表面の黒っぽい色が少しずつ脱落し、内からきれいで鮮明なブルーが浮かび上がり、そのブルーと、まだ残っている黒に限りなく近い部分の色とが、人間の目にミックスされて見え、あの落ち着いた人間の目に優しい色・風合い・雰囲気をつくりだしていく。本来の天然藍で染め上げられた藍の色に近づける染色性の問題、あるいは、何百年もの昔の藍染めの色を合成された化学インジゴ染料を使って再現する問題は未だ解決されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は天然藍染めの色に近づける染色方法の提供を目的とする。本発明は昔の藍染めの色を合成された化学インジゴ染料を使って再現することを目的とする。本発明は、インジゴ染料を用いるブラック染め方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、合成された化学インジゴ染料を使って本来の天然藍で染め上げられた藍の色に近づけるためには、あるいは、何百年もの昔の藍染めの色を再現するためには、インジゴブルーをブラックの色に変えなければならない、と発想した。しかしながら、先染めあるいは後染めのインジゴ染料使いによる従来の染色では、基本的にはブルー系統の色になり、ブラックの色にはならない。
【0005】
本発明は、繊維にタンニン鉄を付着させることを特徴とするインジゴ染料使いのブラック染め方法である。
【0006】
本発明に使用される繊維は、インジゴ染料で染色可能な素材であれば何でもよく、綿、レーヨン、テンセル、麻が例示される。また、その形状が糸状、布状あるいは塊状でもその内容がインジゴ染料で染色可能な素材から構成されていれば構わない。したがって、糸は原綿を含むし、生地は製品を含む。
【0007】
インジゴは天然藍と合成藍に分けられるが、本発明に使用されるインジゴ染料は、天然藍でも合成藍でもよい。本発明は昔の藍染めの色を合成された化学インジゴ染料を使って再現することを目的としており、好ましくは合成藍を用いる。天然藍は蓼(タデ)藍など、藍草に含まれているインジゴであり、合成藍は化学的に合成して作ったインジゴである。インジゴ分の純度は天然藍では2〜5%、合成藍では98%以上であるとされている。
【0008】
先染めあるいは後染めのインジゴ染料使いについて説明する。「建てる」とは、要約すると、「還元溶解」することである。「建てる」方法としては、「醗酵建て」と「化学建て」がある。インジゴは水に不溶のため、そのままでは染着力はない。染着力を持たせるためには、(1)インジゴを還元すること、(2)還元したインジゴを水に溶ける様にすることが必要である。この基本は、古くから行なわれている「醗酵建て」でも、現在用いられている「化学建て」でも同様である。
【0009】
現在広く行なわれている「化学建て」は緑バン建て、亜鉛末・石灰建て、ハイドロ建てがあり、もっとも強力な還元剤であるハイドロサルファイトと、強力なアルカリ剤である苛性ソーダを用いる「ハイドロ建て」が、一般的である。
ハイドロ建てによるインジゴの還元機構は表1に示されるとおりである。
【0010】
【表1】
【0011】
タンニン鉄を、インジゴ染めの前、後あるいは途中で、繊維に付着させることによって仕上がりの色がブラックになる。この場合、インジゴブルーの濃度を濃くしておくことが好ましい。タンニン鉄はタンニンと鉄との着色反応(青〜黒)の生成物である。例えば、タンニン酸(C14H10O9・2H2O)と硫酸第一鉄(FeSO4)は化1の反応によりタンニン鉄〔Fe(C14H10O9)2〕を生成する。
【0012】
【化1】
【0013】
タンニン鉄の付着は、タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程を経て行われる。上記のタンニン酸処理工程はタンニン酸溶液に浸漬する工程であり、硫酸第一鉄処理工程は、硫酸第一鉄溶液に浸漬する工程である。タンニン酸処理をした繊維を硫酸第一鉄溶液に入れる時は、繊維にタンニン鉄が生成されて黒色に染まる。鉄化合物としては硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄が例示される。例えば、インジゴ染めの前にタンニン鉄を付着させる場合には、タンニン鉄による黒色はインジゴ染料による繊維の藍染めの下染として使用されていることになる。好ましくは、タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程の後、ソーダ灰溶液に浸漬する。
【0014】
化1の反応で生成したタンニン鉄は、繊維とイオン結合すると思われる。また、インジゴ染料とは、分子間引力により相互に引き合って、通常のインジゴ染色で得られる堅牢度よりはるかに向上する。これはタンニン鉄が付着することにより、インジゴ分子がより大きくなるためと考えられる。なお、ここでいう堅牢度は特に日光・洗濯・摩擦に対する堅牢度を指す。
【0015】
連続染色機による先染めの染法は、タンニン酸処理、鉄化合物処理、水洗、インジゴ染色、インジゴ染色、水洗の工程からなる。ここでタンニン酸処理と鉄化合物処理の工程を逆にしても、染め上がりの色には影響がほとんど出ない。
タンニン酸処理と鉄化合物処理を逆にして、鉄化合物処理を先に行い、その後ソーダ灰で処理、そしてタンニン酸処理を行うと、より深いブラックの色が得られる。ソーダ灰処理を行うことによって、鉄化合物が、繊維に固着され、鉄化合物の溶出を防ぐと考えられる。
【0016】
本発明のインジゴ染料使いの染色工程そのものは、天然藍または合成藍を使用する通常の染色工程を採用する。したがって、本発明に使用される染色液は、一般浸染法で使用される染色液または伝統的な技法における藍建液である。
【0017】
一般浸染法で使用される染色液において、インジゴブルーの濃度を濃くした濃厚溶液(ストックバット)は例えば以下のようにして調整される。薬剤量は染料100に対する値(重量%)で表す。インジゴ100、アルコール適量、苛性ソーダ60〜80およびハイドロサルファイト80〜100を還元温度60〜65℃、還元時間15〜30分で還元処理をする。濃度限界は約50〜80g/lである。
【0018】
次に、染浴を調製する。例えば、上記濃厚溶液を、水1lに対し苛性ソーダ0.5gおよびハイドロサルファイト1gを含む水を散水してうすめ、3〜5g/lの濃度になるように調製する。この時のアルカリ度はpH約10.0〜11.5、還元状態(0.R.P)の適正値は約700〜780(−mV)である。
【0019】
染色は上記のとおり調製した染浴にて、浸漬、絞る、空気酸化の操作を1回以上繰り返し行なって染色する。浸漬温度は20〜25℃(常温)、浸漬時間は10〜60秒、染色終了後水洗いを十分に行ない、乾燥させる。
【0020】
すなわち、上記のとおり調製した染浴中の染色液を20〜25℃(常温)に保ち、その染色液中に繊維の布あるいは糸を10〜60秒浸漬し、絞り、空気酸化する。これらの操作を1回以上繰り返し行なって染色する。
【0021】
伝統的な技法における藍建は、藍瓶の中にすくもと水・灰・麸(小麦を粉にする時に出る皮のくず)などを入れてかき混ぜ、液の温度を25℃くらいに保って2週間ほどすると染められる状態になる工程をいう。すくもは、2〜3月ごろに種を播き、春に苗を畑に移し、開花直前の7月中ごろに収穫した藍の葉(さらに8月に再生した葉を収穫する場合もある)を刻んで乾燥・堆積させ、これに水を掛けては混ぜ返して2〜3カ月間発酵させできた腐葉土状のものがすくもで、染液の材料となる。通常、十分染められる状態になった染液の表面は光沢のある膜でおおわれ、混ぜ返すと緑がかった泡がたち、その泡は中の色素が空気中の酸素により酸化されてすぐに青色に変わる。染色は糸や布を染液に浸し、しばらくおいてから引き上げて固く絞り空気に触れさせる。この作業の回数により、「瓶のぞき」と呼ばれる薄い青色から紺まで濃淡の違いが出る。染め上がった糸・布は水洗したあと、乾燥させる。藍瓶中の藍建液を色相の濃淡に応じて調整することが望ましい。
【0022】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1
連続染色機による先染めの染法は、タンニン酸処理、鉄化合物処理、水洗、インジゴ染色、インジゴ染色、水洗の工程からなる。
【0024】
タンニン鉄の付着は、タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程を経て行われる。タンニン酸(C14H10O9・2H2O)と硫酸第一鉄(FeSO4)は下記の反応によりタンニン鉄〔Fe(C14H10O9)2〕を生成する。
【0025】
(1)濃厚溶液(ストックバット)の調製
表2にまとめたとおりである。
【0026】
【表2】
【0027】
(2)染浴調製
上記(1)の溶液を敷水(水1lに対し苛性ソーダ0、5g、ハイドロサルファイト1gを含む)でうすめて、3〜5g/lでの濃度になるように調製する。この時のアルカリ度(pH)、還元状態(0.R.P)の適正値は表3のとおりである。
【0028】
【表3】
【0029】
(3)染色
調製した染浴にて、浸漬→絞る→空気酸化の操作を1回以上繰り返し行なって染色する。
すなわち、上記のとおり調製した染浴中の染色液を20〜25℃(常温)に保ち、その染色液中に繊維の布あるいは糸を10〜60秒浸漬し、絞り、空気酸化する。これらの操作を1回以上繰り返し行なって染色する。染色終了後水洗いを十分に行ない、乾燥させる。
得られた染色布あるいは染色糸の色相は目及び色差計で確認する。
【0030】
【発明の効果】
タンニン鉄を付着させることにより、インジゴ染めの堅牢度を一層向上するこできる。天然藍染めの色に近づける染色方法を提供することができる。昔の藍染めの色を合成された化学インジゴ染料を使って再現することができる。連続染色法で均一な製品を得ることができる。
Claims (3)
- タンニン鉄を、インジゴ染めの前、後あるいは途中で、繊維に付着させること、繊維が、綿、レーヨン、テンセルおよび麻からなる群から選ばれる、インジゴ染料で染色可能な糸素材あるいは生地素材の繊維であること、タンニン鉄の付着は、タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程を経て行われること、インジゴ染料使いの染色工程は連続染色機によること、該染色工程で使用される染色液において、インジゴ100重量%、アルコール適量、苛性ソーダ60〜80重量%およびハイドロサルファイト80〜100重量%の濃度の濃いインジゴ染料を使って、水1lに対し苛性ソーダ0.5gおよびハイドロサルファイト1gを含む水を散水してうすめ、3〜5g/lの濃度になるように染浴を調製し、上記のとおり調製した染浴にて、浸漬温度は20〜25℃(常温)、浸漬時間は10〜60秒浸漬して、本来の濃色の藍染めの色であって、限りなく黒に近い色をしているが、洗い込んでいくたびに、表面の黒っぽい色が少しずつ脱落し、内からきれいで鮮明なブルーが浮かび上がり、そのブルーと、まだ残っている黒に限りなく近い部分の色とが、人間の目にミックスされて見え、人間の目に優しい色・風合い・雰囲気をつくりだしていく天然藍染めの色を再現することを特徴とする、インジゴ染料を用いるブラック染め方法。
- タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程は、その後に、ソーダ灰溶液に浸漬す工程を入れる請求項1のインジゴ染料を用いるブラック染め方法。
- タンニン酸処理工程および鉄化合物処理工程は、鉄化合物処理工程を先に行い、その後に、ソーダ灰溶液に浸漬す工程、そしてタンニン酸処理工程を入れる請求項1のインジゴ染料を用いるブラック染め方法。
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