JP3969579B2 - 電磁流量計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁流量計に関し、特に流量計測時に用いる励磁電流を切替制御する電磁流量計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電磁流量計では、被計測流体が流れる管内に対向配置された1対の電極間に磁界を印加することにより、被計測流体の流速に応じた信号起電力を検出し、この信号起電力に基づいて被計測流体の流量を計測している。
この信号起電力の大きさは、印加される磁界の強さに比例する。このため計測された流量に応じて変化する限られた電源電流(最低4mA)で動作しなければならない2線式電磁流量計では、被計測流体の速度すなわち流量に応じた計測スパンに最適な磁界を切り替えて印加することにより、高精度な流量計測を実現している。この磁界の切り替えは、電極の周囲に配置された励磁コイルに供給する励磁電流を切り替えることにより実現できる。
【0003】
このような電磁流量計では、制御部で所望の励磁電流へ切替制御する場合、その励磁電流に対応したデューティー比をメモリから読み出し、そのデューティー比を持つパルス信号列からなる切替制御信号を生成して出力し、励磁部で、その切替制御信号を平滑化し、得られた直流電圧に応じた大きさの励磁電流を励磁コイルへ供給するものとなっている。
したがって、製品製造時や設置保守時に、切替制御信号に用いるデューティー比と励磁電流の大きさとを調整し、段階的に切り替える各励磁電流ごとに、その励磁電流が得られるデューティー比をメモリに記憶させておく必要がある。
【0004】
従来、このような励磁電流の調整については、電磁流量計の設定保守機能として、キー操作に応じてデューティー比を微調整する機能を制御部に予め設けておき、その電磁流量計から出力される励磁電流の実測結果が所望の電流値となるよう保守作業者が上記キー操作を繰り返し実行し、所望の電流値が得られた時点のデューティー比を当該励磁電流値に対応付けてメモリへ記憶させるという調整作業を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の電磁流量計では、高精度の流量計測を実現するために励磁電流の切替段数は増加傾向にあり、前述した励磁電流の調整回数も増加するため、これに必要な作業負担が増加するという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、励磁電流の調整に要する作業負担を大幅に削減できる電磁流量計を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電磁流量計は、励磁コイルへ所定の励磁電流を供給することにより被計測流体が流れる管内に対向配置された1対の電極間に磁界を印加して、被計測流体の流速に応じた振幅を有する信号起電力を検出し、その信号起電力に基づいて被計測流体の流量を算出する電磁流量計において、励磁電流として切り替えて用いる複数の励磁電流値ごとにデューティー比を記憶するメモリと、各励磁電流値のうちの所望の励磁電流値に対応するデューティー比をメモリから取得し、そのデューティー比を持つパルス信号列からなる切替制御信号を出力することにより、励磁電流の切り替えを指示する制御部と、切替制御信号を平滑化しそのデューティー比に応じた直流電圧値を出力する平滑回路と、直流電圧値に応じた大きさの励磁電流を励磁コイルへ出力する定電流回路とを備え、制御部は、所望の励磁電流値に対応して出力した切替制御信号に応じて定電流回路から出力されている励磁電流値を示す実測値を取得し、その実測値が所望の励磁電流値のものと一致するように切替制御信号のデューティー比を調整するとともに、調整後のデューティー比を所望の励磁電流値と対応付けてメモリへ格納する励磁電流調整手段を有するものである。
【0007】
励磁電流調整手段では、デューティー比を調整する際、実測値と当該励磁電流値との差に応じた分だけデューティー比を調整するようにしてもよい。
さらに、制御部では、励磁電流調整手段により調整済みのメモリに格納されている複数の励磁電流値とそれに対応するデューティー比を参照して、メモリに格納されている値以外の任意の励磁電流値に対応するデューティー比を求め、求めたデューティー比を持つパルス信号列を出力することにより、任意の励磁電流値の供給を指示するようにしてもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態にかかわる電磁流量計の構成を示すブロック図である。
この電磁流量計は、検出器1と変換器10とから構成されている。
検出器1では、変換器10からの矩形波の交流励磁電流に基づいて励磁コイル4により管2内の被測定流体に磁界を印加し、その流体に発生した信号起電力を電極3A,3Bにより検出して出力する。
【0009】
変換器10には、増幅部11、サンプルホールド部12、A/D変換部13、制御部14、出力部15および励磁部16が設けられている。
励磁部16は、検出器1の励磁コイル4に対して交流励磁電流を出力する。増幅部11は、検出器1からの信号起電力を交流増幅し、被計測流体の流速に応じた振幅を有する交流流量信号21を出力する。サンプルホールド部12は、交流流量信号21を交流励磁電流と同期した所定のタイミングでサンプリングして積分し、被計測流体の流速に応じた直流レベルを示す直流流量信号22を出力する。A/D変換部13は、直流流量信号22を所定のタイミングでA/D変換し、そのデジタル値をサンプル値23として出力する。
【0010】
制御部14は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路からなり、予め設定されたプログラムを実行することにより、変換器10の各部を制御するとともに、サンプル値23から計測流量値24を算出する。
出力部15は、計測流量値24に応じた流量信号25を出力する。例えば当該電磁流量計が2線式の場合、現在選択されている計測スパンにおける計測流量値の大きさを、その計測スパンの0〜100%に対応する4mA〜20mAの電流値で出力する。
【0011】
本実施の形態では、上記制御部14に励磁電流調整手段14Aを設け、この機能手段を用いて、段階的に切り替える各励磁電流ごとに、その励磁電流が得られる切替制御信号26のデューティー比を自動的に検出してメモリ14Bに記憶させるようにしたものである。励磁電流調整手段14Aは、制御部14における流量算出処理と同様に、制御部14を構成するプロセッサなどのハードウェアとプログラムとが協働することにより実現される。
【0012】
励磁部16には、制御部14から出力された、所定のデューティー比のパルス信号列からなる切替制御信号26を平滑化して直流電圧値27を出力する平滑回路16A、この直流電圧値27に応じた大きさの励磁電流を励磁コイル4へ供給する定電流回路16B、および励磁電流調整時に定電流回路16Bから出力される励磁電流の大きさすなわち励磁電流値28をA/D変換し制御部14へ実測値29として出力するA/D変換器16Cが設けられている。
【0013】
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかわる電磁流量計の励磁電流調整動作について説明する。図2は励磁電流調整手段での励磁電流調整処理を示すフローチャートである。
【0014】
電磁流量計の製品製造時や設置保守時における所定操作に応じて、制御部14は励磁電流調整手段14Aを用いて、図2の励磁電流調整処理を実行する。
励磁電流調整手段14Aでは、まず、段階的に切り替えられる各励磁電流値のうち調整処理がまだ行われていない未処理の励磁電流値を選択する(ステップ100)。そして、その励磁電流値に対応してメモリ14Bに予め設定されている初期デューティー比を取得し(ステップ101)、その初期デューティー比に基づき切替制御信号26を生成して出力する(ステップ102)。
【0015】
この切替制御信号26は、励磁部16の平滑回路16Aで平滑化されて直流電圧値27として出力される。これに応じて、定電流回路16Bから、この直流電圧値27に応じた大きさの励磁電流が励磁コイル4へ供給される。この励磁電流の励磁電流値28は、A/D変換器16CによりA/D変換され、実測値29として制御部14へ出力される。
励磁電流調整手段14Aでは、この実測値29を取得し(ステップ103)、ステップ100で選択した励磁電流値と実測値29との差を算出する(ステップ104)。
【0016】
次に、上記差としきい値(許容誤差範囲)とを比較し、差の大きさがしきい値を上回る場合には(ステップ105:NO)、その差に相当する分だけデューティー比を調整する(ステップ106)。そして、調整後のデューティー比に基づき切替制御信号26を生成して出力し(ステップ107)、ステップ103へ戻る。
一方、ステップ105において、差がしきい値以下である場合(ステップ105:YES)、現在のデューティー比を当該励磁電流値と対応付けてメモリ14Bへ格納する(ステップ108)。
【0017】
そして、未処理の励磁電流値が残っている場合には(ステップ109:YES)、ステップ100へ戻って次の未処理の励磁電流値の調整処理を行う。
また、すべての励磁電流値に対する調整処理が終了した場合には(ステップ109:NO)、一連の励磁電流調整処理を終了する。
したがって、各励磁電流値ごとに最適なデューティー比が自動的に選択され、メモリ14Bへ自動的に格納される。
【0018】
このように、制御部14の励磁電流調整手段14Aで、所望の励磁電流値に対応して出力した切替制御信号26に応じて定電流回路16Bから出力されている励磁電流値を示す実測値29をA/D変換器16Cから取得し、その実測値29が当該励磁電流値のものと一致するように切替制御信号26のデューティー比を調整するとともに、調整後のデューティー比を当該励磁電流値と対応付けてメモリ14Bへ格納するようにしたので、従来のように、保守作業者が手作業で各励磁電流値ごとにデューティー比を調整する場合と比較して、励磁電流の調整に要する作業負担を大幅に削減できる。
【0019】
また、デューティー比を調整する際、実測値と当該励磁電流値との差に応じた分だけデューティー比を一度に調整するようにしたので、デューティー比を徐々に調整する場合と比較して、その調整に要する時間を大幅に短縮できる。
なお、実測値と当該励磁電流値の差と、デューティー比の調整量との関係については、予め求めておいたもの、例えば関数やテーブルを用いればよい。
【0020】
さらに、制御部14で、励磁電流調整手段14Aにより調整が済んだ後、メモリ14Bに格納されている複数の励磁電流値とそれに対応するデューティー比を参照して、メモリ14Bに格納されている値以外の任意の励磁電流値に対応するデューティー比を求め、この求めたデューティー比を持つパルス信号列を出力するようにしてもよく、任意の励磁電流値を高精度で供給することができる。
例えば、励磁電流が4mAのときデューティー比が25%、励磁電流が8mAのときデューティー比が50%、励磁電流が12mAのときデューティー比が75%、励磁電流が16mAのときデューティー比が100%であることがメモリ14Bに格納されていれば、これらの励磁電流とデューティー比との関係を参照し、これら関係について回帰分析演算や補間演算などの処理を行うことにより、例えば新たな励磁電流6mAの場合のデューティー比として37.5%を求めることができる。
【0021】
以上では、実測値29として、定電流回路16Bから励磁コイルへ出力される励磁電流値をA/D変換器16Cから取得して用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、励磁電流値に対応する信号値であれば他のものを実測値29として用いてもよい。
例えば、平滑回路16Aから定電流回路16Bへ出力される直流電圧値27は、励磁電流値に応じた値を示す。したがって、励磁電流値に代えて直流電圧値27をA/D変換器16CでA/D変換して実測値29として制御部14へ出力してもよい。この場合には、励磁電流調整手段14Aで、A/D変換器16Cからの実測値29を励磁電流値へ変換して所望の励磁電流値と比較してもよく、逆に所望の励磁電流値を対応する直流電圧値へ変換して比較してもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、励磁電流調整手段で、所望の励磁電流値に対応して出力した切替制御信号に応じて定電流回路から出力されている励磁電流値を示す実測値を取得し、その実測値が当該励磁電流値のものと一致するように切替制御信号のデューティー比を調整するとともに、調整後のデューティー比を当該励磁電流値と対応付けてメモリへ格納するようにしたので、従来のように、手作業で各励磁電流値ごとにデューティー比を調整する場合と比較して、励磁電流の調整に要する作業負担を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態にかかる電磁流量計の構成を示すブロック図である。
【図2】 励磁電流調整処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…検出器、2…管、3A,3B…電極、4…励磁コイル、10…変換器、11…増幅部、12…サンプルホールド部、13…A/D変換部、14…制御部、14A…励磁電流調整手段、14B…メモリ、15…出力部、16…励磁部、16A…平滑回路、16B…定電流回路、16C…A/D変換器、21…交流流量信号、22…直流流量信号、23…サンプル値、24…計測流量値、25…流量信号、26…切替制御信号、27…直流電圧値、28…励磁電流値、29…実測値。

Claims (3)

  1. 励磁コイルへ所定の励磁電流を供給することにより被計測流体が流れる管内に対向配置された1対の電極間に磁界を印加して、前記被計測流体の流速に応じた振幅を有する信号起電力を検出し、その信号起電力に基づいて被計測流体の流量を算出する電磁流量計において、
    前記励磁電流として切り替えて用いる複数の励磁電流値ごとにデューティー比を記憶するメモリと、
    前記各励磁電流値のうちの所望の励磁電流値に対応するデューティー比を前記メモリから取得し、そのデューティー比を持つパルス信号列からなる切替制御信号を出力することにより、前記励磁電流の切り替えを指示する制御部と、
    前記切替制御信号を平滑化しそのデューティー比に応じた直流電圧値を出力する平滑回路と、
    前記直流電圧値に応じた大きさの励磁電流を前記励磁コイルへ出力する定電流回路とを備え、
    前記制御部は、所望の励磁電流値に対応して出力した切替制御信号に応じて前記定電流回路から出力されている励磁電流値を示す実測値を取得し、その実測値が前記所望の励磁電流値のものと一致するように前記切替制御信号のデューティー比を調整するとともに、調整後のデューティー比を所望の励磁電流値と対応付けて前記メモリへ格納する励磁電流調整手段を有することを特徴とする電磁流量計。
  2. 請求項1に記載の電磁流量計において、
    前記励磁電流調整手段は、前記デューティー比を調整する際、前記実測値と当該励磁電流値との差に応じた分だけ前記デューティー比を調整することを特徴とする電磁流量計。
  3. 請求項1または2に記載の電磁流量計において、
    前記制御部は、前記励磁電流調整手段により調整済みの前記メモリに格納されている複数の励磁電流値とそれに対応するデューティー比を参照して、前記メモリに格納されている値以外の任意の励磁電流値に対応するデューティー比を求め、求めたデューティー比を持つパルス信号列を出力することにより、任意の励磁電流値の供給を指示することを特徴とする電磁流量計。
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