JP3969112B2 - リクライニング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用シートのシートバックを無段階に倒すことができる形式のリクライニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のリクライニング装置としては、例えば特開平5-92733号公報に開示されている技術が公知である。このリクライニング装置は、シートのクッションフレームに固定される固定ハウジングとバックフレームに固定される可動ハウジングとによって構成された内部スペースに駆動歯車が組み込まれている。駆動歯車は径の異なる二種類の外周歯を備えており、これらが両ハウジングの内周歯に個別に噛み合うようになっている。また可動ハウジングの内周歯の歯数は、固定ハウジングの内周歯よりも1歯だけ多く設定されている。
【0003】
駆動歯車を両ハウジングの内部で偏心回転させることにより、両外周歯が両ハウジングの内周歯にそれぞれ噛み合いながら回転し、内周歯の歯数が多い可動ハウジングを回転させてシートバックの傾きが調整される。なおリクライニング装置のロック状態では、両ハウジングの内周歯と駆動歯車の外周歯との噛み合いによってシートバックが倒れないように保持する。この噛み合い強度(ロック強度)は、内周歯および外周歯の歯数あるいは噛み合い部の面積などで決まる。
【0004】
内周歯および外周歯の歯数はリクライニング装置の外形寸法によって制約を受け、噛み合い部の面積は両ハウジングの板厚によって制約を受け、結果としてロック強度にも限界がある。しかしながら一方ではシートベルトにかかる負荷をシートで支えるベルト組み込み式シートのように、ベルトを通じてシートバックに大きな力が加わり、リクライニング装置に高いロック強度が要求される。この対策として、従来はリクライニング装置を二つ一組で用いることが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
リクライニング装置を二つ一組で使用した場合、ロック強度を高めることはできるものの、リクライニング装置の構成部品数が増え、重量やコストの増加を招くことになる。
本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、リクライニング装置に要求される高いロック強度(内周歯と外周歯との噛み合い強度)を、重量やコストを抑えて確保可能とすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、固定ハウジングに対して可動ハウジングが摺動回転可能に組み付けられ、これらの両ハウジングによって構成された内部スペースに駆動歯車が設けられ、この駆動歯車が、その外周歯を前記の両ハウジングに形成された内周歯に噛み合わせながら偏心回転することにより、その内周歯の歯数が前記固定ハウジングの内周歯よりも多く設定されている前記可動ハウジングを回転させる形式のリクライニング装置であって、前記の両ハウジングは、径の異なる二種類の内周歯をそれぞれ備えている。また前記駆動歯車は最も外周側に形成された大径の最外周歯と、その両側にそれぞれ位置する小径の外周歯とを備え、最外周歯に対し、その歯幅の中央を境にして前記両ハウジングにおける個々の大径の内周歯が共に噛み合い、小径の両外周歯に対して前記両ハウジングにおける個々の小径の内周歯が個別に噛み合うように構成されている。
このように、両ハウジングにおける二種類の内周歯を、駆動歯車の外周歯にそれぞれ個別に噛み合わせることにより、リクライニング装置の構成部品数を増やすことなく、内周歯と外周歯との噛み合い強度(ロック強度)を高めることができる。特に駆動歯車の最も外周側に形成された大径の最外周歯に対し、両ハウジングにおける個々の大径の内周歯が共に噛み合っていることから、両ハウジングの内周歯を駆動歯車に対して共に大きな径で噛み合わせることができ、歯車の噛み合い強度をさらに高めることができる。
この結果、例えばシートベルトにかかる負荷をシートバックで受け持つ形式のシートにおいて、リクライニング装置に要求される高い噛み合い強度を重量やコストを抑えつつ確保することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたリクライニング装置であって、前記駆動歯車における小径の両外周歯の一方が別体に成形され、この外周歯が前記駆動歯車の側面に回り止め状態で結合されている。
これにより、駆動歯車を例えば冷間鍛造で成形する場合に、二つの鍛造ラインによる分業で成形することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1はリクライニング装置の断面図、図2は図1のA-A矢視方向の断面図、図3は図1のB-B矢視方向の断面図である。リクライニング装置における円盤形状の固定ハウジング10および可動ハウジング20は、それぞれの表裏に貫通した中心孔12,22を備えている。両ハウジング10,20は互いに突き合わされた状態で、それぞれの外周部がリング部材30をカシメることによって組み付けられている。ただし両ハウジング10,20は、中心孔12,22の軸線まわりに相対的に回転できるようになっている。
【0010】
固定ハウジング10は車両用シートのクッションフレーム(図示外)に、また可動ハウジング20はバックフレーム(図示外)に固定される。そして両ハウジング10,20は、個々の中心孔12,22を中心とする円周上において外側に突出した複数個の凸部14,24を備えている。これらの凸部14,24がクッションフレームあるいはバックフレームの孔にそれぞれはめ込まれることで、これらのフレームに対して固定ハウジング10あるいは可動ハウジング20が位置決め(回り止め)される。
【0011】
両ハウジング10,20におけるそれぞれの内周は、大径の内周歯16,26と、それより小径の内周歯18,28とが形成された二段形状になっている。なお可動ハウジング20における両内周歯26,28の歯数は、固定ハウジング10の両内周歯16,18の歯数よりも1歯だけ多く設定されている(図2,3)。ちなみにこの実施の形態では、内周歯16,18の歯数が「39」、内周歯26,28の歯数が「40」であり、つぎに説明する駆動歯車40の各外周歯44,46,48の歯数は共に「37」である。
【0012】
両ハウジング10,20によって構成された内部スペースには、駆動歯車40が組み込まれている。この駆動歯車40の中心部にはカム孔42が形成されていて、ここには図1の仮想線で示すように円形のカム34が位置している。このカム34の外周とカム孔42の内周との間にはブッシュやベアリングを介在させており、カム34と駆動歯車40とが相対的に回転できるようになっている。またカム34に対しては、その偏心位置において中心孔12,22と同軸上に位置する駆動軸32を貫通させている。この駆動軸32はカム34に対してセレーションなどの手段で回転伝達可能に結合されている。なお駆動軸32は、固定ハウジング10の中心孔12を通じてクッションフレーム側(図1の左側)に延びており、リクライニング装置の駆動源であるモータ(図示外)から回転駆動を受けるようになっている。
【0013】
駆動歯車40の外周は、大径の外周歯44と、その両側にそれぞれ位置する小径の外周歯46,48とが形成された三段形状となっている。大径の外周歯44に対しては、両ハウジング10,20における大径の内周歯16,26が共に噛み合い可能である。また小径の両外周歯46,48に対しては、両ハウジング10,20における小径の内周歯18,28がそれぞれ個別に噛み合うことが可能である。なお、当然のことながら駆動歯車40およびカム34は、両ハウジング10,20を組み付ける前にその内部スペースに組み込まれる。
【0014】
このように構成されたリクライニング装置において、駆動軸32を通じてカム34が回転駆動されると、駆動歯車40が両ハウジング10,20の内部で偏心回転を繰り返す。これにより駆動歯車40の各外周歯44,46,48は、固定ハウジング10の両内周歯16,18および可動ハウジング20の両内周歯26,28に噛み合っては外れるといった回転を繰り返す。そして既に説明したように、可動ハウジング20における両内周歯26,28の歯数は、固定ハウジング10の両内周歯16,18の歯数よりも1歯だけ多く設定されている。このため駆動歯車40が1回転する毎に、可動ハウジング20が固定ハウジング10に対して1歯分だけ駆動歯車40と同方向に回転する。したがってモータの駆動制御によって駆動歯車40を正逆方向へ回転させれば、シートバックにおける前後への傾きを無段階に調整できる。
【0015】
シートバックが倒れないように保持するリクライニング装置のロック状態は、両ハウジング10,20の各内周歯と駆動歯車40の外周歯44,46,48との噛み合いに頼っている。つまり駆動歯車40との噛み合いを通じて固定ハウジング10に対する可動ハウジング20の回転をロックしている。そして、このリクライニング装置では内周歯と外周歯との噛み合い強度(ロック強度)を高めるために、固定ハウジング10の両内周歯16,18および可動ハウジング20の両内周歯26,28を、駆動歯車40の外周歯44,46,48にそれぞれ個別に噛み合わせている。この結果、ベルト組み込み式シートのようにベルトを通じてシートバックに大きな負荷が加わる場合であっても、要求される高い噛み合い強度を一つのリクライニング装置だけで確保できる。
【0016】
一般にハウジング10,20はプレスで成形され、駆動歯車40は冷間鍛造で成形される。そこで駆動歯車40については、小径の外周歯46,48のうちのいずれかを有する部分を他の部分とは別体に成形し、後で一体的に組み付ける構造とすることにすれば、駆動歯車40の成形を二つの鍛造ラインによる分業にすることができる。
その一例を表した図4においては駆動歯車40が、大径の外周歯44および小径の外周歯46を有するピース40Aと、小径の外周歯48だけを有するピース40Bとに分割して成形されている。そして両ピース40A,40Bの側面が互いに接合され、かつボルト50によって一体的に結合されている。このボルト50による結合は、駆動歯車40の周方向に沿った複数箇所で行われる。
【0017】
なお可動ハウジング20における内周歯26,28と固定ハウジング10における内周歯16,18との歯数の差は1歯に限るものではない。また本実施の形態におけるリクライニング装置はモータを駆動源とする形式であったが、手動タイプであってもよい。その場合はカム34に回転を伝える駆動軸32の端部にハンドルを結合し、そのハンドルを手動で回転操作する。
【図面の簡単な説明】
【図1】リクライニング装置の断面図
【図2】図1のA-A矢視方向の断面図
【図3】図1のB-B矢視方向の断面図
【図4】二分割構造の駆動歯車の一部を表した断面図
【符号の説明】
10 固定ハウジング
16,18 内周歯
20 可動ハウジング
26,28 内周歯
40 駆動歯車
44,46,48 外周歯
Claims (2)
- 固定ハウジングに対して可動ハウジングが摺動回転可能に組み付けられ、これらの両ハウジングによって構成された内部スペースに駆動歯車が設けられ、この駆動歯車が、その外周歯を前記の両ハウジングに形成された内周歯に噛み合わせながら偏心回転することにより、その内周歯の歯数が前記固定ハウジングの内周歯よりも多く設定されている前記可動ハウジングを回転させる形式のリクライニング装置であって、
前記の両ハウジングは、径の異なる二種類の内周歯をそれぞれ備え、前記駆動歯車は最も外周側に形成された大径の最外周歯と、その両側にそれぞれ位置する小径の外周歯とを備え、最外周歯に対し、その歯幅の中央を境にして前記両ハウジングにおける個々の大径の内周歯が共に噛み合い、小径の両外周歯に対して前記両ハウジングにおける個々の小径の内周歯が個別に噛み合うように構成されているリクライニング装置。 - 請求項1に記載されたリクライニング装置であって、前記駆動歯車における小径の両外周歯の一方が別体に成形され、この外周歯が前記駆動歯車の側面に回り止め状態で結合されているリクライニング装置。
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