JP3968227B2 - 情報処理方法および情報処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の情報処理装置をデータ通信網で接続して、データ処理を多重化して信頼性を向上させるシステムに用いられる手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
課金情報を有する顧客管理システムや化学、鉄鋼プラントのような産業システム、交通制御システム、電力システムにおいては、システムに異常が発生した場合のデータの収集、保持、更新作業の中断や、データの一貫性の喪失は避けなければならない。そのために、たとえば、データ処理の二重化などにより、データの収集、保持、更新作業の中断回避や、データの一貫性保持するための、高信頼化処理手段を講じている。
【0003】
上記システムにて講じられる従来の高信頼化処理手段においては、二重化処理専用のシステム構成を採用している。たとえば、従来の高信頼化システムでは、据え置き型コンピュータからなる情報処理装置を2台設置して、相互を監視用ハードウェアで接続している。監視用ハードウェアが、稼動中の一方の情報処理装置(主系コンピュータ)のシステムダウンなど、異常状態を検出すると、待機していた他方の情報処理装置(従系コンピュータ)に処理を引き継がせている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の高信頼化システムにおいては、2台の情報処理装置は隣接して配置されており、これらを物理的に離れた場所に設置して運用する形態になっていない。近年の無線通信を用いた携帯情報端末の爆発的な普及と処理能力の向上に伴い、これら携帯情報端末を用いた柔軟な高信頼化システムの構築が望まれるが、従来の高信頼化システムを利用することは困難であるという問題点があった。
【0005】
また、2台以上の情報処理装置を相互に接続してアプリケーションの多重化処理を行うために、高信頼化処理専用のOS(オペレーティングシステム)を情報処理装置に搭載する必要があった。高信頼化処理専用のOSは、特定制御用に機能が限定された特殊なもの、あるいは、通常のOS機能に高信頼機能を組み込んだ大掛かりな構造を有するものとなるのが一般的であった。したがって、上記高信頼化処理専用のOSは、PC(パーソナルコンピュータ)や携帯情報処理端末のような小型情報処理装置にて稼動させるのには不向きであった。
【0006】
さらに、情報処理装置において、一般的には、データ処理の高信頼性が要求されるアプリケーション、および、要求されないアプリケーションが混在して、動作しているのが通常である。たとえば、顧客管理データの中でも課金情報や顧客販売情報は、データの欠落や矛盾があってはならない。その一方、顧客向けバーゲンセール等のイベント管理情報は、データ欠落があっても顧客への影響は少なく、敢えて二重化による管理は不要である。
【0007】
同様に、産業プラントにおいても、機器の制御・監視を行うアプリケーションは無停止を要求されるとともに、データの欠落や矛盾があってはならない。その一方、産業プラントシステムでも、監視情報の帳票出力処理などは二重化の必要はなく、情報処理装置の異常状態からの回復後に出力すればよい。
【0008】
このように、従来の高信頼化システム構成では、情報処理装置の設置制約や高信頼アプリケーションのみの多重化処理が困難であった。そのため、携帯情報端末のような情報処理装置を利用したデータ処理の高信頼化や、前記情報処理装置による必要なアプリケーションのみを多重化して高信頼化することは困難であった。
本発明の目的は、所望のときに所望の場所にて、アプリケーションに必要な高信頼処理を施すことができるシステムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を用いて、高信頼化処理を実現する情報処理方法であって、少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションを、ある情報処理装置にて動作させるステップと、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントを保持していない場合に、ネットワークを介して他の情報処理装置から前記情報処理装置に、前記エージェントの複製を移動させるステップと、前記エージェントと協働して前記アプリケーションが動作するステップとを備えたことを特徴とする情報処理方法により達成される。
【0010】
本発明においては、並列多重化処理や待機冗長処理を司るエージェントを、移動可能にしている。したがって、PDAなど携帯端末においても、ネットワークを介して、他のコンピュータからエージェントを受理し、当該エージェントと協働してアプリケーションを実行することにより、任意の場所で任意のときにアプリケーションに高信頼化処理を施すことが可能となる。
【0011】
好ましい実施態様においては、アプリケーションの動作終了後に、前記エージェントを解放するステップを備えている。このように、本発明によれば、エージェントをダイナミックに発生させ、また、消去することが可能となる。
【0012】
たとえば、エージェントの複製を移動させるステップは、前記情報処理装置において、前記アプリケーションからの、エージェントが必要であることを示す情報を受理するステップと、前記情報の受理に応答して、前記エージェントを保持する他の情報処理装置を見出すステップと、前記情報処理装置から前記エージェントを保持する他の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するステップを含んでもよい。これは、アプリケーションの要求によりエージェントが移動される場合である。或いは、エージェントの複製を移動させるステップは、情報処理装置において、アプリケーションを監視して、高信頼化処理の必要なものを検出するステップと、検出に応答して、前記エージェントを保持する他の情報処理装置を見出すステップと、情報処理装置から前記エージェントを保持する他の情報処理装置に対して、エージェントの移動を要求するステップとを含んでいても良い。
【0013】
別の実施態様においては、アプリケーションの高信頼化処理の種別に応じたエージェントが、前記情報処理装置に移動させるステップを備えている。前記種別には、たとえば、並列多重化処理、待機冗長処理、および、リカバリーブロック方式による処理、認証処理などが含まれる。
【0014】
また、本発明の目的は、ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を用いて、高信頼化処理を実現する情報処理方法であって、少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションを、ある情報処理装置にて動作させるステップと、前記情報処理装置において、高信頼化処理の必要性に応じて、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントを所持しているか否かを判断するステップと、前記所持している場合に、これをロードし、その一方、所持していない場合に、ネットワークを介して、前記エージェントを所持している他の情報処理装置を見出すステップと、前記アプリケーションを、他の情報処理装置に移動させるステップと、前記他の情報処理装置から、前記エージェントの複製を移動させるステップと、前記情報処理装置および前記他の情報処理装置の各々において、前記エージェントと協働して前記アプリケーションが動作するステップとを備えたことを特徴とする情報処理方法により達成される。
【0015】
これにより、複数のコンピュータ(たとえば、PDAおよび他の据え置きコンピュータ、或いは、複数のPDA)において、並列多重処理や待機冗長処理を実現できる。無論、情報処理装置および他の情報処理装置の各々において、アプリケーションの動作終了後に、前記エージェントを解放することができる。
【0016】
また、本発明の目的は、ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を用いて、高信頼化処理を実現する情報処理方法であって、少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションの起動を、ある情報処理装置にて求めるステップと、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントが存在しない場合に、ネットワークを介して、前記エージェントを保持する他の情報処理装置を検索するステップと、前記他の情報処理装置に、前記アプリケーションの実行依頼および前記アプリケーションを伝達するステップと、前記他の情報処理装置において、前記エージェントと協働して前記アプリケーションが動作するステップとを備えたことを特徴とする情報処理方法により達成される。この発明においては、エージェントを動的に生成するのではなく、エージェントを所持する情報処理装置に、高信頼化処理を施すべきアプリケーションを動的に生成している。
【0017】
さらに、本発明の目的は、ネットワークを介して少なくとも1以上の他の情報処理装置と接続された情報処理装置であって、少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションを、ある情報処理装置にて動作させるアプリケーション実行手段と、前記他の情報処理装置の何れかから、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントの複製を受け入れるエージェント移動処理手段を備え、前記エージェント受理手段により受理されたエージェントと協働して、前記アプリケーションが実行されるように構成されたことを特徴とする情報処理装置によっても達成される。前記アプリケーションの動作終了後に、前記エージェントを解放するエージェント解放手段を備えているのが望ましい。
【0018】
好ましい実施態様においては、前記エージェント移動処理手段が、前記アプリケーションから、エージェントが必要であることを示す情報の受理に応答して、前記エージェントを保持する他の情報処理装置を見出し、当該他の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するように構成されている。別の好ましい実施態様においては、前記エージェント移動処理手段が、アプリケーションを監視して、高信頼化処理の必要なものを検出し、前記検出に応答して、前記エージェントを保持する他の情報処理装置を見出し、当該他の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するように構成されている。
【0019】
また、本発明の目的は、上記情報処理装置と、ネットワークを介して接続された情報処理装置であって、前記要求元の情報処理装置からのエージェントの移動要求に応答して、前記エージェントを記憶装置から取り出して、前記ネットワークを介して、前記要求元の情報処理装置の情報処理装置に伝達するように構成されたことを特徴とする情報処理装置によっても達成される。
【0020】
さらに、本発明の目的は、ネットワークを介して少なくとも1以上の他の情報処理装置と接続された情報処理装置であって、少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションの実行を、高信頼化処理によりなす指示を受理する指示受理手段と、前記指示の受理に応答して、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントを保持する他の情報処理装置を検索する検索手段と、前記エージェントを保持する他の情報処理装置に対して、前記アプリケーションおよびアプリケーションの実行依頼を、ネットワークを介して伝達するアプリケーション伝達手段とを備えたことを特徴とする情報処理装置によっても達成される。
【0021】
上記情報処理装置を要求元の情報処理装置とすれば、要求元の情報処理装置と、ネットワークを介して接続された情報処理装置は、要求元の情報処理装置からのアプリケーションおよびアプリケーションの実行依頼に応答して、必要なエージェントを記憶装置から取り出して、前記エージェントと協働して前記アプリケーションを実行するように構成されているのが望ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき説明を加える。図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムの一例を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、本実施の形態にかかるシステムにおいては、広域通信網12に、企業の本社に設置されたシステム(以下、「本社システム」と称する。)14、上記企業の製造工場に設置されたシステム(以下、「製造工場システム」と称する。)20、および、企業の支社に設置されたシステム(以下、「支社システム」と称する。)26が接続されている。また、広域通信網12には、当該企業の社員等が携帯しているPDAなどの携帯情報端末30−1、30−2、・・・が接続可能となっている。
【0023】
本社システム14には、たとえば、企業の取り扱う製品の販売実績、在庫状況などを含む種々の販売情報を記憶した販売情報データベース(DB)16、および、経理関係の情報を記憶した経理情報DB18が接続されている。製造工場システム20には、工場内のラインなどを制御・監視するプラント制御・監視システム22や、当該工場内の上記制御などに必要な種々の情報を記憶したプラント情報DB24が接続されている。また、支社システム26にも、支社における製品の販売実績、売上などを含む種々の販売情報を記憶した支社販売情報DB28が接続されている。
【0024】
このようなシステムにおいて、携帯情報端末を所持している使用者(社員)は、これを操作して、本社システム14などにアクセスして、当該使用者のアクセス権限の下、必要な情報を収集し、或いは、DB中のデータを更新することができる。なお、本明細書において、各システム16、20、22或いはシステムに含まれるクライアントマシンなどを、場合によって、単に、コンピュータ32と称する。
【0025】
本実施の形態においては、図2に示すように、複数種類の処理ステップのそれぞれにおいて、並列多重化処理や待機冗長処理を採用して、フォルトトレラントな処理構造を実現している。図2において、それぞれの楕円はアプリケーションを示し、たとえば、アプリケーションA1〜A3は、同一のアプリケーションとなっている。また、内側が白色のもの(たとえば、アプリケーションA1、A2、B1など)は稼動中、つまり、アクティブであることを示し、その一方、内側にハッチングを施したもの(たとえば、アプリケーションA3、C2)は待機中、つまり、パッシブであることを示している。
【0026】
本実施の形態においては、上記フォルトトレラントな処理構造を実現するために、PDA30やコンピュータ32に、高信頼化処理を実行するためのエージェント(以下、「FT(Fault-tolerant)エージェント」と称する。)を動的に設け、当該FTエージェントを作動させている。たとえば、FTエージェントを不揮発性の記憶装置に記憶しているコンピュータ32であれば、必要なアプリケーションを移動することにより、フォルトトレラントなシステムの一部として機能できる。その一方、FTエージェントを保持していないコンピュータ、たとえば、PDA30であれば、FTエージェントの複製を、他のコンピュータ32から伝達してもらうことで、フォルトトレラントなシステムの一部として機能可能となる。なお、本明細書において、パーソナルコンピュータ、サーバ、コンピュータ群からなるシステム、或いは、PDAなどを、場合によっては「情報処理装置」とも称する。
【0027】
図2に示すような並列多重処理および待機冗長処理の組み合わせを、図3に示すように、複数のPDA30およびコンピュータ32により実現できる。図3においては、第1のPDA30−1にて、アクティブFTエージェント34−1が機能し、ここで、アクティブなアプリケーションA1、B1が作動している。また、第2のPDA30−2においては、アクティブFTエージェント34−2およびパッシブFTエージェント34−3が機能し、前者においては、アクティブなアプリケーションB2が作動し、後者においては、パッシブな(待機系の)アプリケーションA3、C3が作動している。同様に、コンピュータ32においては、アクティブFTエージェント34−4およびパッシブFTエージェント34−5が機能し、前者においては、アクティブなアプリケーションA2、C1、D1が作動し、後者においては、パッシブな(待機系の)アプリケーションC2、D2が作動している。
【0028】
次に、並列多重処理を実行するためのFTエージェントについてより詳細に説明を加える。なお、本明細書において、FTエージェントを、場合により、フォルトトレラントな処理つまり高信頼化処理を実現するための構成部分であるため、高信頼化処理部とも称する。
【0029】
図4(a)は、本実施の形態において、フォルトトレラントなシステムとして機能するための情報処理装置の概略を示すブロックダイヤグラムである。図4(a)に示すように、情報処理装置には、FTエージェント34を設けることが可能となっている。また、情報処理装置は、他の情報処理装置からのアプリケーションやFTエージェント34の受け入れを処理する受け入れ要求処理部38と、FTエージェントの移動に関する処理を実行する移動処理部40とを備えている。
【0030】
なお、前述したように、図4(a)において、FTエージェント(高信頼化処理部)34は、情報処理装置に常駐している必要は無く、フォルトトレラントな処理を実行すべき場合に、他のコンピュータからロードし、また、上記フォルトトレラントな処理の終了の後には、これを解放して、情報処理装置から消去するようにしても良い。
【0031】
図4(b)は、並列多重処理を実行するためのFTエージェント34をより詳細に示すブロックダイヤグラムである。図4(b)において、他の情報処理装置のFTエージェントにて動作しているアプリケーションから、自己のFTエージェント34が管轄するアプリケーションに送信されるメッセージを単一化して、受け渡す処理を実行するメッセージ単一化処理部42を有している。メッセージを単一化することとは、多重化されたアプリケーションからの同一メッセージを集約して1つのものとして、宛先のアプリケーションに受け渡す処理をいう。この単一化処理により、メッセージの宛先となるアプリケーションは、送信元のアプリケーション群による多重化を意識する必要が無い。
【0032】
また、FTエージェント34は、自己が掌握するアプリケーション宛てに受信したメッセージの履歴を管理し、受信漏れしたメッセージの有無を判断し、受信漏れしたメッセージがある場合には、その再送信を送信元の情報処理装置に要請する処理を実行するメッセージ監視・再送制御部44と、FTエージェント34と、掌握しているアプリケーションとの間のメッセージの受け渡す処理を実行するインタフェース部46とを有している。
【0033】
図5は、本実施の形態にかかる受け入れ要求処理部38における処理を示すフローチャートである。受け入れ要求処理部38は、他の情報処理装置から、ネットワークを介して、アプリケーションの受け入れやFTエージェントの移動の要求があった場合に、これに応答して起動される。図5に示すように、受け入れ要求処理部38が、他の情報処理装置から、上記アプリケーションやFTエージェントの受け入れ要求を受理すると(ステップ501)、受け入れ可否が判断される(ステップ502)。ステップ502において受け入れ可能(OK)である場合には、受け入れを準備した後に(ステップ503)、準備完了通知を、他の情報装置にネットワークを介して伝達する(ステップ505)。その一方、受け入れ不可能(NG)である場合には、受け入れ拒否を示す通知が、他の情報処理装置に伝達される(ステップ504)。
【0034】
たとえば、アプリケーションの受け入れの場合には、当該アプリケーション名などを含む書誌的情報とともに、アプリケーションが、他の情報処理装置から伝達され、受け入れ要求処理部38は、アプリケーションを受け入れ、また、書誌的情報を管理テーブル(図示せず)に記憶する(ステップ506)。
本実施の形態においては、アプリケーション自体の要求により、或いは、移動処理部40が、高信頼化処理が必要なアプリケーションを発見することにより、FTエージェント34の移動処理が実行される。図6は、移動処理部40にて実行される処理を示すフローチャートである。
【0035】
図6に示すように、アプリケーションからの移動要求があった場合(ステップ601でイエス(Yes))、或いは、移動要求が無くとも(ステップ601でノー(No))、高信頼化処理が必要なアプリケーションの探索(ステップ602)により、他プリケーションが見出された場合(ステップ603でイエス(Yes))には、移動処理部40は、高信頼化処理の種別に応じて、移動すべきFTエージェントを特定し、当該FTエージェントの移動を準備する(ステップ604)。
【0036】
本実施の形態においては、FTエージェントとして、並列多重化処理を実現するためのもの(図4(b)参照)、待機冗長処理を実現するためのもの、リカバリーブロック方式による高信頼化処理を実現するためのもの、認証処理を実現するためのものなどが含まれる。したがって、FTエージェントには、上記処理種別を示す種別情報が付加され、移動処理部40は、処理形態に応じた種別情報が付加されたFTエージェントを用意する。
【0037】
次いで、移動処理部40は、移動先の候補となった他の情報処理装置に対して、ネットワークを介して、FTエージェントの移動要求を送信する(ステップ605)。移動要求を受理した他の情報処理装置においては、先に説明した図5の処理が実行される。移動先の候補となった他の情報処理装置から、準備完了通知を受理すると(ステップ606)、移動処理部40は、移動すべきFTエージェントの複製を、ネットワークを介して、他の情報処理装置に送信する(ステップ607)。これにより、所定の高信頼化処理を実現するためのFTエージェントが、他の情報処理装置にも配置される。
【0038】
図4(b)に示す並列多重化処理を実行する際に、あるコンピュータ32とPDA30との間で実行される処理や通信手順を、より具体的に説明する。図7は、上記手順の一例を示すフローチャートである。これを利用すると、たとえば、営業担当者が顧客先にて、契約内容を更新し、或いは、新規に契約するときに、携帯したPDAを利用して、アプリケーションを動作させ、契約内容を本社や支社のシステムのデータベースおよびPDA中のメモリの双方に記憶させて、信頼性を向上させることが可能となる。
【0039】
まず、ユーザの操作により、PDA30において、アプリケーションが選択され、これが起動される(ステップ701)。PDA30の表示装置の画面上には、たとえば、図8(a)に示すようなメニューウィンドウ800が表示される。本実施の形態においては、メニューウィンドウに、「アプリケーション選択・探索・取得」ボタン(符号801)や、並列多重化などの高信頼化処理を必要とする際に指定されるボタン(たとえば、符号802)が設けられている。
たとえば、ボタン801をユーザが指定することで、PDAのメモリ中に記憶されたアプリケーションのリスト、ネットワークを介してアクセス可能な他のコンピュータを探索したリスト、探索の結果取得可能なアプリケーションのリストなどを表示することが可能である。
【0040】
ユーザがアプリケーションを高信頼化処理にて実行したい場合には、メニュー800を参照して、所望の処理形態を選択する。たとえば、並列多重化処理にてアプリケーションを実行したければ、ユーザは入力装置を操作して、ボタン802をオンすればよい。なお、「雛型」とは指定された形態の高信頼化処理を実現するためのFTエージェントをいう。
たとえば、PDA30自体のメモリに指定された雛型つまりFTエージェントが格納されていれば、これをロードすれば足りる。その一方、PDA30自体に指定された雛型が存在しない場合には、他のコンピュータ32に雛型を要求する(ステップ703)。コンピュータ32においては、データベース(DB)を検索し(ステップ704)、指定された雛型の複製をPDA30に送信する(ステップ705)。
【0041】
コンピュータ32が、PDA30からアプリケーション受け入れ要求(ステップ706)を受理すると、図5に示した受け入れ要求処理を実行し(ステップ707)、アプリケーションを受け入れ可能であればアプリケーションを受け入れる(ステップ708)。次いで、PDA30において、図6に示す移動処理にしたがって、アプリケーションの要求或いはPDA30自体がアプリケーションを見つけ出すことにより、FTエージェントの移動要求が、コンピュータ32に伝達される(ステップ709)。コンピュータ32において、移動要求にかかるFTエージェントを有していれば、FTエージェントを移動させることなく、データベースから対応する雛型(FTエージェント)をロードすればよい(ステップ710、711)。
【0042】
このようにして、PDA30およびコンピュータ32において、並列多重処理にてアプリケーションが動作する(ステップ712〜713、図8(b)参照)。ここでは、並列多重処理用のFTエージェント中のメッセージ単一化処理部42、メッセージ監視・再送制御部、インタフェース部46が機能して、PDA30やコンピュータ32にて実行される同一のプログラムによる動作の整合性を図っている。必要な処理が終了すると、PDA30およびコンピュータ32の双方において、アプリケーションおよびFTエージェントが開放される(ステップ715、716)。
【0043】
上記例においては、並列多重処理を実現するためのFTエージェント34について説明を加えた。本実施の形態においては、さらに、待機冗長処理、リカバリーブロック方式、認証処理などを実現することができる。待機冗長処理とは、アプリケーションが2重化されており、2重化されたアプリケーションの一方が動作して、一連の動作を行い、他方のアプリケーションは、動作中のアプリケーションの異常などによる停止の場合や、異常動作を引き起こしたと判断された場合に、処理を引き継いでシステムを継続させるものである。待機冗長処理は、一般に、処理の引継ぎに多少の時間を要しても許容される場合や、並列多重処理が困難な場合に適用される。
【0044】
図9(a)は、待機冗長処理のためのFTエージェントを示すブロックダイヤグラムである。FTエージェント134は、メッセージ単一化部42、メッセージ監視・再送制御部44、インタフェース部46のほか、アプリケーションの内部状態を示す情報を収集する内部状態収集部48と、他のアプリケーションから与えられたメッセージを受信し、受信履歴情報を更新する受信メッセージ更新部50と、必要に応じて動作モードを切り替える稼動/待機モード切替部52とを有している。このFTエージェントにおいては、待機状態のアプリケーションを掌握するFTエージェント(パッシブFTエージェント)の受信メッセージ更新部50は、他のアプリケーションから送信されたメッセージを受信すると、その受信履歴情報を更新する。また、内部状態収集部48は、一定時間ごと或いは一定条件が成立するごとに、主系(稼動系)のアプリケーションの内部状態を収集する。収集された主系のアプリケーションの内部状態は、待機系のアプリケーションの内部状態として更新される。
【0045】
図9(b)は、リカバリーブロック方式による高信頼化処理を実現するためのFTエージェントを示すブロックダイヤグラムである。リカバリーブロック方式とは、動作中のアプリケーションが出力する処理結果を評価して、評価の結果の妥当性を判定し、妥当であれば処理が継続され、その一方以上と判定されると、動作中のアプリケーションの処理を中断して、待機しているアプリケーションに処理を引き継ぐものである。
【0046】
図9(b)に示すように、このFTエージェント234は、メッセージ単一化部42、メッセージ監視・再送制御部44、インタフェース部46のほか、アプリケーションの出力する処理結果を受理して、その妥当性を評価する受け入れテスト部54と、必要に応じて動作モードを切り替える稼動/待機モード切替部52とを有している。
【0047】
図9(c)は、アプリケーションの認証処理を実行するためのFTエージェントのブロックダイヤグラムである。たとえば、認証処理は公開暗号鍵の手法を用いて実現できる。このFTエージェント334は、インタフェース部46のほか、認証処理部56を備えている。
これら図9(a)〜(b)に示すFTエージェントに関して、アプリケーションの移動や、FTエージェント134、234、334の移動は、並列多重化処理の場合と同様に実現できる。
【0048】
本実施の形態においては、上記高信頼化処理の形態に応じたFTエージェントの複製を、必要に応じて、PDAが本社システム等からロードし、或いは、自己のメモリ中に格納してあればそれをロードし、所定の高信頼化処理を実現している。また、処理が終了すれば、上記ロードしたFTエージェントを解放することができる。ここでは、実際にメモリから消去してしまっても良い。
このように、本実施の形態によれば、FTエージェントを、たとえば、他のコンピュータからロードすることにより、高信頼化処理を実現できる。したがって、以下のように使用することができる。
【0049】
前述したように、営業担当者が顧客先にて、契約内容を更新し、或いは、新規に契約するときに、携帯したPDAを利用して、アプリケーションを動作させ、契約内容を本社や支社のシステムのデータベースおよびPDA中のメモリの双方に記憶させて、信頼性を向上させることが可能となる。また、いちいち、本社データベースとの接続をしなくとも、PDAに保持した顧客データを利用することができ、業務効率を向上させることが可能となる。さらに、高性能のパーソナルコンピュータを多数分散配置し、顧客管理データの分散化や多重化を実現でき、危険分散の上で好適である。
【0050】
或いは、化学プラントなどの制御機器の監視や制御を、所望のときに所望の場所から高信頼性をもって実行することが可能となる。たとえば、プラント制御・監視システム(図1の符号22参照)の制御コンソールの前でプラント状況を監視しなくとも、遠隔地で手持ちのPDAやパーソナルコンピュータにて、監視や機器制御を行うことができる。また、機器制御用計算機の不具合の発生を想定して、制御ソフトウェアを並列多重処理や待機冗長処理の形態で、任意の場所に配置でき、危険分散上好適である。
【0051】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
たとえば、前記実施の形態において、FTエージェントを高信頼化処理の種別ごとに用意しているがこれに限定されるものではなく、並列多重処理、待機冗長処理、リカバリーブロック方式の処理を実現する必要なコンポーネントを含むようなFTエージェントを用意し、これをPDA等に移動して、処理の形態に応じて必要なコンポーネントが作動するように構成しても良い。
【0052】
たとえば、図2および図3に示すように、異なる高信頼化処理が混在する場合であっても、一つのFTエージェント(たとえば、アクティブFTエージェント34−1)が複数のアプリケーション(たとえば、「A1」および「B1」)を掌握して、必要な高信頼化処理を実現することが可能となる。
また、図7に示す処理手順は一例であり、他の手順にて高信頼化処理が実現される場合もある。また、アプリケーションが移動した後に、FTエージェントが移動するのであっても、FTエージェントが移動した後に、アプリケーションが移動するのであっても良い。また、FTエージェントが存在すれば、他の情報処理装置ロードする必要もない。
【0053】
さらに、本発明において、アプリケーションが、FTエージェントが存在する情報処理装置に移動するように構成しても良い。図10は、このような場合の処理手順を示すフローチャートである。図10において、ユーザがPDA30を操作して、アプリケーションを選択し(ステップ1001)、次いで、高信頼化処理の形態の選択に伴って、PDA30は、FTエージェントを持つ他の情報処理装置を検索する(ステップ1002)。上記他の情報処理装置として、コンピュータAが見出されると、アプリケーションの受け入れ要求が、当該コンピュータAに伝達される(ステップ1003)。コンピュータAにおいては受け入れ要求処理が実行され(ステップ1004)、アプリケーションがロードされる(ステップ1005)。
【0054】
同様に、コンピュータAからFTエージェントを持つ他のコンピュータBに対して、アプリケーション受け入れ要求が伝達され(ステップ1006)、受け入れ要求処理(ステップ1007)が実行されて、アプリケーションが受理される(ステップ1008)。コンピュータAおよびコンピュータBにおいては、それぞれ、データベース(DB)から高信頼化処理に必要な雛型(FTエージェント)が取り出され(ステップ1009、1010)、アプリケーションが動作する(ステップ1011〜1013)。また、アプリケーションの動作が終了すると、これらが解放される(ステップ1014、1015)。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、所望のときに所望の場所にて、アプリケーションに必要な高信頼処理を施すことができるシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムの一例を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】 図2は、本実施の形態にかかるフォルトトレラントな処理の一例を示す図である。
【図3】 図3は、図2に示す高信頼化処理を実現するための情報処理装置の構成例を示す図である。
【図4】 図4(a)は、本実施の形態にかかる情報処理装置の概略を示すブロックダイヤグラム、図4(b)は、本実施の形態にかかるFTエージェントの構成例を示すブロックダイヤグラムである。
【図5】 図5は、本実施の形態にかかる受け入れ要求処理部における処理を示すフローチャートである。
【図6】 図6は、本実施の形態にかかる移動処理部における処理を示すフローチャートである。
【図7】 図7は、本実施の形態において、高信頼化処理(並列多重化処理)を実現するための手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】 図8(a)は、本実施の形態にかかるPDAの表示装置の画面上に表示されるウィンドウの例を示す図、図8(b)は、図7の処理により高信頼化処理を実行する情報処理装置の構成例を示す図である。
【図9】 図9は、本実施の形態にかかるFTエージェントの他の構成例を示すブロックダイヤグラムである。
【図10】 図10は、本実施の形態において、高信頼化処理を実現するための手順の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
12 広域通信網
14 本社システム
20 製造工場システム
26 支社システム
30 PDA
34 高信頼化処理部(FTエージェント)
38 受け入れ要求処理部
40 移動処理部
42 メッセージ単一化処理部
44 メッセージ監視・再送制御部
46 インタフェース部
Claims (11)
- ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を用いて、高信頼化処理を実現する情報処理方法であって、
少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションを、第1の情報処理装置にて動作させるステップと、
前記第1の情報処理装置において、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントを保持していない場合に、ネットワークを介して,
前記エージェントを保持している他の第2の情報処理装置から前記第1の情報処理装置に、前記エージェントの複製を移動させるステップと、
前記ネットワークを介して、前記第1の情報処理装置から前記第2の情報処理装置に、前記アプリケーションの複製を移動させるステップと、
前記第1の情報処理装置において、前記移動したエージェントと協働して前記アプリケーションを動作させるステップと、
前記第2の情報処理装置において、前記エージェントと協働して前記移動したアプリケーションを動作させるステップと、を備えたことを特徴とする情報処理方法。 - 前記第1の情報処理装置において、アプリケーションの動作終了後に、前記エージェントを解放するステップを備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
- 前記エージェントの複製を移動させるステップが、
前記第1の情報処理装置において、前記アプリケーションからの、エージェントが必要であることを示す情報を受理するステップと、
前記情報の受理に応答して、前記エージェントを保持する他の第2の情報処理装置を見出すステップと、
前記第1の情報処理装置から前記エージェントを保持する前記第2の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するステップと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。 - 前記エージェントの複製を移動させるステップが、
前記第1の情報処理装置において、アプリケーションを監視して、高信頼化処理の必要なものを検出するステップと、
前記検出に応答して、前記エージェントを保持する他の第2の情報処理装置を見出すステップと、
前記第1の情報処理装置から前記エージェントを保持する前記第2の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するステップと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。 - 前記エージェントの複製を移動させるステップにおいて、
前記アプリケーションの高信頼化処理の種別に応じたエージェントを、前記第1の情報処理装置に移動させるステップを含むことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の情報処理方法。 - 前記種別が、並列多重化処理、待機冗長処理、および、リカバリーブロック方式による処理の少なくとも何れかを示すことを特徴とする請求項5に記載の情報処理方法。
- ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を用いて、高信頼化処理を実現する情報処理方法であって、
少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションの起動を、第1の情報処理装置にて求めるステップと、
前記第1の情報処理装置において、前記高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントが存在しない場合に、ネットワークを介して、前記エージェントを保持する他の第2の情報処理装置を検索するステップと、
前記第2の情報処理装置に、前記アプリケーションの実行依頼および前記アプリケーションを伝達するステップと、
前記第2の情報処理装置において、前記エージェントと協働して前記移動されたアプリケーションを動作させるステップと、
前記第2の情報処理装置において、前記エージェントを保持する第3の情報処理装置に、前記アプリケーションの実行依頼および前記アプリケーションを伝達するステップと、
前記第3の情報処理装置において、前記エージェントと協働して前記移動されたアプリケーションを動作させるステップと、を備えたことを特徴とする情報処理方法。 - ネットワークを介して相互に接続された複数の情報処理装置を有するシステムにおいて、
第1の情報処理装置が、
少なくともデータを保持し処理する個別プログラムであるアプリケーションを、ある情報処理装置にて動作させるアプリケーション実行手段と、
前記ネットワークを介して接続された第2の情報処理装置から、高信頼化処理を実現するための種々の処理を実行するエージェントの複製を受け入れるとともに、前記第2の情報処理装置に、前記アプリケーションの複製を送信する移動処理手段と、を備え、
前記移動処理手段により受理されたエージェントと協働して、前記アプリケーションが実行されるように構成され、
前記第2の情報処理装置が、
前記アプリケーションの複製を受け入れるとともに、前記エージェントの複製を送信する移動処理手段を備え、
前記移動処理手段により受理されたアプリケーションが、前記エージェントと協働して実行されるように構成されたことを特徴とするシステム。 - 前記第1の情報処理装置が、
前記アプリケーションの動作終了後に、前記エージェントを解放するエージェント解放手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載のシステム。 - 前記第1の情報処理装置の前記移動処理手段が、前記アプリケーションから、エージェントが必要であることを示す情報の受理に応答して、前記エージェントを保持する他の第2の情報処理装置を見出し、当該第2の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するように構成されたことを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
- 前記第1の情報処理装置の前記移動処理手段が、前記アプリケーションを監視して、高信頼化処理の必要なものを検出し、前記検出に応答して、前記エージェントを保持する他の第2の情報処理装置を見出し、当該第2の情報処理装置に対して、前記エージェントの移動を要求するように構成されたことを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
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