JP3967828B2 - 接着複合体およびそれに用いる封止用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属体と熱可塑性樹脂からなる接着複合体およびそれに用いる封止用樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、金属体、好ましくはトリアジンチオール類化合物により表面処理した金属体に、金属表面または前記のトリアジンチオール類化合物との間で水素結合や化学結合等の相互作用を生ずる含酸素炭化水素樹脂などを含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で接触させて接着強さを高めた、封止性の高い接着複合体に関する。得られた接着複合体は、電気部品、電子部品、光学部品を中心に、各種工業部品の構成部材として使用される。例えば、金型のキャビティ内に被接着部材または被封止部材としての金属体を置き、残余の空隙部へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を射出する方法を採用することができる。このような電気電子部品の最も代表的な樹脂封止部品(樹脂により封止された部品)としては、例えば、金属製のリードフレームを被封止部材として用い、熱可塑性樹脂としてサーモトロピック液晶樹脂(以下、「LCP」または単に「液晶樹脂」ということがある)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、芳香族ナイロンなどで代表される耐熱性エンジニアリングプラスチックを封止材として形成したリードフレーム封止部品が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料と金属体の複合体は、電気電子産業を初めとする各種産業分野で使用される産業部材である。このような複合体に対して近年の高機能化および高集約化の要求が高まるにつれ、樹脂材料として製品設計の自由度に優れた熱可塑性樹脂を用いて、超音波融着、誘電融着、インサート成形、アウトサート成形等の各種の成形方法による樹脂材料と金属体との複合体の製造方法が検討されている。
従来、電気電子分野、特に半導体装置で使用されるリードフレームの樹脂封止部品においては、熱硬化性樹脂が主材料として使用されてきた。しかし、工程の簡略化や材料のリサイクル化の要求も加わり、熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を材料として用いインサート成形やアウトサート成形等により封止を行った封止部品が、信頼性の高い複合体として強く要望されている。
その中でも、サーモトロピック液晶樹脂を封止用樹脂材料として用いると、封止後のハンダ処理等の各種加熱工程において安定な耐熱複合体が得られるので、LCPと金属体との接着複合体に対する要求は特に高い。
また電気電子部品には、リード線などの導線が接続されており、電気電子部品の樹脂封止に際してはこれら導線部分についても封止が必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来、金属材料と熱可塑性樹脂、例えば液晶樹脂とは接着が困難であり、信頼性が高い接着複合体は得られていない。
例えば、樹脂材料と金属体との接着複合体に関する技術としては、トリアジンチオール類化合物により表面処理した銅材料とポリエチレンとの射出接着に関する技術が、特公平1―60051号公報に提案されている。しかしながら、当該技術は接着相手材としての金属が銅材料に限定されているのみならず、改良したとされている接着性が必ずしも十分ではない。
ゴムと金属との接着体を開示する特公昭60―41084号公報やプラスチックと金属との複合体を開示する特公平8―856号公報に記載された方法も同様である。
すなわち、従来の発明は、高い信頼性のある広範な熱可塑性樹脂と金属との接着複合体への応用、特に、金属/サーモトロピック液晶樹脂の接着複合体への応用に関して不十分なものであった。
そこで、本発明においては、熱可塑性樹脂と金属との接着複合体、特に、金属/サーモトロピック液晶樹脂の接着複合体への広範な応用を可能にし、高い信頼性を有する接着複合体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、高い信頼性を有する、金属/熱可塑性樹脂の広範な接着複合体およびその製造技術を見出したことにある。
すなわち、本発明の第1は、金属体と、含酸素炭化水素樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物とを接着してなる接着複合体に関するものである。
本発明の第2は、本発明の第1において、金属体がトリアジンチオール類化合物により表面処理されてなる接着複合体に関する。
本発明の第3は、本発明の第1において、熱可塑性樹脂がサーモトロピック液晶樹脂である接着複合体に関する。
本発明の第4は、トリアジンチオール類化合物により表面処理を施した金属体と、サーモトロピック液晶樹脂とを接着してなる接着複合体に関するものである。
本発明の第5は、本発明の第4において、サーモトロピック液晶樹脂が、含酸素炭化水素樹脂を含有する接着複合体に関する。
本発明の第6は、本発明の第1または第5において、含酸素炭化水素樹脂が含酸素テルペン類樹脂またはその水素添加処理物である接着複合体に関する。
本発明の第7は、本発明の第6において、含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とフェノール類との反応物またはその水素添加処理物である接着複合体に関する。
本発明の第8は、本発明の第6において、含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物またはその水素添加処理物である接着複合体に関する。
本発明の第9は、本発明の第6において、含酸素テルペン類誘導体が、環状テルペン化合物とフェノール類との反応物であるテルぺン骨格含有多価フェノール系樹脂またはその水素添加処理物である接着複合体に関する。
【0005】
本発明の第10は、少なくとも一部が金属からなる被封止部材を封止するための、含酸素炭化水素樹脂を含有する熱可塑性樹脂からなる封止用樹脂組成物に関するものである。
本発明の第11は、本発明の第10において、金属の表面の少なくとも一部がトリアジンチオール類化合物により表面処理されていることを特徴とする封止用樹脂組成物に関する。
本発明の第12は、本発明の第10において、熱可塑性樹脂がサーモトロピック液晶樹脂である封止用樹脂組成物に関する。
本発明の第13は、本発明の第10において、含酸素炭化水素樹脂が、含酸素テルペン類樹脂またはその水素添加処理物である封止用樹脂組成物に関する。
本発明の第14は、本発明の第13において、含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とフェノール類との反応物またはその水素添加処理物である封止用樹脂組成物に関する。
本発明の第15は、本発明の第13において、含酸素テルペン類樹脂がテルペン単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物またはその水素添加処理物である封止用樹脂組成物に関する。
本発明の第16は、本発明の第13において、含酸素テルペン類誘導体が、環状テルペン化合物とフェノール類との反応物であるテルぺン骨格含有多価フェノール系樹脂またはその水素添加処理物である封止用樹脂組成物に関する。
【0006】
本発明は、金属と樹脂との接着性(密着性)を向上させるために、金属と、含酸素炭化水素樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物、特にサーモトロピック液晶樹脂組成物との相互作用、またはトリアジンチオール類化合物とサーモトロピック液晶樹脂との相互作用を利用するものである。
以下、本発明をさらに説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
金属体の材料は特に限定されないが、例えば銅および銅合金、鋼材、冷間圧延鋼板、鋳鉄およびステンレス鋼等の鉄―ニッケル系合金ならびにアルミニウムやその合金などを例示することができる。金属体の形態も板状、線状等の任意の形状のものを用いることができる。また、適宜にやすり仕上げや酸化皮膜形成処理等の前処理を施した金属を用いることもできる。
金属製品のより具体的な形態としては、例えば半導体製造に用いるリードフレーム等を挙げることができる。通常、電気電子部品に接続される回路導体または電源導体としてのリード線もまた具体的な形態の例である。これらは通常、電気電子部品を封止する際に併せて封止を行う必要がある。したがって、これら金属体の金属材料である、銅、アルミニウム、金、銀、錫、ニッケルおよびこれらの金属を含む合金などもまた本発明の金属として例示される。またその形状も線状のほか、開孔部を有する平面など任意のものが用いられる。
【0008】
金属体は、特に前処理等を行う必要はなく、通常の溶剤洗浄を適宜に行うのみで接着操作に供することができる。しかしながら、トリアジンチオール類化合物によりあらかじめ金属体表面に前処理を施すことにより、熱可塑性樹脂との接着性(密着性)をさらに向上させることが可能である。
ここで、トリアジンチオール類化合物は、トリアジン基本骨格が1個から3個のチオール基またはその誘導基で置換されたトリアジン類化合物であり、通常は水溶性である。より具体的には、下記式〔I〕に示す構造式で表される。
【0009】
【化1】
【0010】
式〔I〕において、置換基Rは−OR'、−SR'、−NHR'および−N(R')2である。また、Rの置換基R'は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基、またはシクロアルキル基などである。Rにおける炭素原子数の合計は好ましくは36以下である。36を超える炭素数を有するものは水に不溶性となり好ましくない。Mは、H、Na、Li、K、Rb、Cs、1/2 Ba、1/2Ca、または脂肪族の第一級、第二級もしくは第三級アミン類、または第四級アンモニウム塩などである。2個のMは同一でも異なってよい。
Rを具体的に示すと、−SH、−NHC6H5、−NHC8H17、
−NHC12H25、―NHC18H35、―NHC18H37、−N(C4H9)2、
−N(C8H17)2、−N(C12H25)2などが挙げられる。
【0011】
トリアジンチオール類化合物による金属体の表面処理は、金属体をトリアジンチオール類化合物の溶液または分散液に接触させることにより行うことができる。これらの処理は、例えば特公平1―60051号公報や特公平8―856号公報に記載された方法に準じて行うことができる。
具体的なトリアジンチオール類化合物の溶液または分散液は、水;トリエチレングリコールなどの水溶性溶媒;メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどのケトン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの低級芳香族炭化水素、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアルデヒド、酢酸エチルなどのエステル、ジメチルエーテルなどのエーテル等の有機溶媒;デカリン、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル等の水に不溶または難溶性の非水性溶媒;これらの適宜の割合による混合溶媒等に、トリアジンチオール類化合物を溶解または分散させることにより得られる。
溶液の調製時には溶媒を適宜に加温し、0.0001〜30重量%のトリアジンチオール類化合物を溶解または分散させる。
【0012】
表面処理は、例えば金属体を上記溶液または分散液に浸漬することにより行うことができる。その他塗布などによって行うこともできる。表面処理の時間は 0.1秒以上であればよい。すなわち、適宜に脱脂、酸洗浄、アルカリ洗浄および水洗浄を行った後、乾燥した金属体を、所定の時間、上記溶液もしくは分散液に浸漬し、または金属体に上記溶液もしくは分散液を塗布し、その後アルコールやアセトン等の有機溶剤で洗浄し、適宜に水洗して乾燥する。処理時には溶媒の沸点範囲内において適宜に加温することができる。具体的には常温から300℃の温度範囲で行う。
【0013】
また、表面処理は電気化学的に行うこともできる。例えば特公平5―51671号公報に記載された方法に準じて行うことができる。具体的には、トリアジンチオールの水溶液または有機溶媒溶液を電着液として用い、金属体の金属を陽極とし、陰極には適宜の導体、例えば白金板やチタン板を用いて、例えば20V以下の電圧、0.1mA/dm2以上の電流密度で、0.1秒以上直流電流を印加して行うことができる。
【0014】
金属体に接着すべき熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;EVA、EEAなどのオレフィンと酢酸ビニルなどの極性モノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;PETなどのポリエステル等が例示される。特に好ましくは、サーモトロピック液晶樹脂(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA66)等で代表される耐熱性エンジニアリングプラスチックなどが用いられる。さらに好ましくは、全芳香族ポリエステルで代表されるLCPが挙げられる。
封止材として用いる場合には、上記耐熱性エンジニアリングプラスチックが半田耐性を有するので好ましい。その中でも、耐熱性のほかに応力下の溶融粘度が低い点においてLCPが好ましい。
【0015】
ここでいうサーモトロピック液晶樹脂とは、溶融時に光学的異方性を示し、かつ熱可塑性を有するポリマーである。このように溶融時に光学的異方性を示すポリマーは、溶融状態でポリマー分子鎖が規則的な平行配列をとる性質を示す。光学的異方性の溶融相であることは、直交偏光子を利用した通常の偏光検査法により確認することができる。
上記液晶樹脂としては、例えば、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルイミド等、具体的には(全)芳香族ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。好ましくはサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂であって、分子内にエステル結合を複数個含む限り、本発明のポリエステルの範疇に含まれる。さらに好ましいポリエステルは、芳香族ポリエステルである。
本発明において好ましく用いられるサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂には、一つの高分子鎖の一部が異方性溶融相を形成するポリマーのセグメントで構成され、残りの部分が異方性溶融相を形成しないポリマーのセグメントから構成されるポリマーも含まれる。また、複数のサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂を複合したものも含まれる。
【0016】
サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂を構成するモノマーの代表例としては、
(a)芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種、
(b)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物の少なくとも1種、
(c)芳香族ジオール系化合物の少なくとも1種、
(d)(d1)芳香族ジチオール、(d2)芳香族チオフェノ−ルおよび(d3)芳香族チオールカルボン酸化合物の少なくとも1種、
(e)芳香族ヒドロキシルアミンおよび芳香族ジアミン系化合物の少なくとも1種、
等の芳香族化合物が挙げられる。
これらは単独で用いられる場合もあるが、多くは(a)および(c);(a)および(d);(a)、(b)および(c);(a)、(b)および(e);あるいは(a)、(b)、(c)および(e)等のように組合せて構成される。
【0017】
上記(a)芳香族ジカルボン酸系化合物としては、テレフタル酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−テルフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4'−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−3,3'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3'−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3'−ジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、またはクロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等で代表される上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0018】
(b)芳香族ヒドロキシカルボン酸系化合物としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、または3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0019】
(c)芳香族ジオールとしては、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジヒドロキシテルフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ナフタレンジオール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,6−ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等の芳香族ジオール、またはクロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシン等の芳香族ジオールのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0020】
(d1)芳香族ジチオールとしては、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール等が挙げられる。
(d2)芳香族チオフェノールとしては、4−メルカプトフエノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプトフェノール等が挙げられる。
(d3)芳香族チオールカルボン酸としては、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、6−メルカプト−2−ナフトエ酸、7−メルカプト−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0021】
(e)芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族ジアミン系化合物としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4'−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4'−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4'−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4'−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4'−エチレンジアニリン、4,4'−ジアミノジフェノキシエタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いるサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂は、上記モノマーから溶融アシドリシス法やスラリー重合法等の多様なエステル形成法等により製造することができる。
本発明に用いる好適なサーモトロピック液晶樹脂の分子量は、約2,000〜200,000、好ましくは約4,000〜100,000である。上記分子量の値は、例えば圧縮フィルムについて赤外分光法により末端基を測定して求めることができる。また溶液状態で行う一般的な測定法であるGPCを用いることもできる。
【0023】
これらのモノマーから得られるサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂のうち、p―ヒドロキシ安息香酸から誘導される下記式〔II〕で表される繰返し単位を必須成分として含む(共)重合体である芳香族ポリエステルが好ましい。上記モノマー単位を約30モル%以上含むものが好ましい。より好ましくは、約50モル%以上含むものである。
【0024】
【化2】
【0025】
本発明に用いる上で特に好ましい芳香族ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸、フタル酸およびジヒドロキシビフェニルの3種の化合物からそれぞれ誘導される構造の繰返し単位を有する下記式〔III〕で表わされるポリエステルである。式〔III〕で表されるポリエステルにおいて、ジヒドロキシビフェニルから誘導される構造の繰返し単位は、その一部または全部をジヒドロキシベンゼンから誘導される繰返し単位で置換することもできる。
また、好ましい芳香族ポリエステルとして、p−ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシナフタレンカルボン酸の2種の化合物からそれぞれ誘導される構造の繰返し単位を有する下記式〔IV〕で表されるポリエステルも挙げることができる。
【0026】
【化3】
【化4】
【0027】
本発明におけるサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂は、単独で用いてもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
上記の熱可塑性樹脂に配合すべき含酸素炭化水素樹脂として、第一には、オレフィンをカルボン酸、フェノール、アルコール等の含酸素化合物と共重合するか、またはオレフィンの重合により得られる炭化水素樹脂をこれら含酸素化合物により変性して得られる、酸素原子を含有する炭化水素樹脂が挙げられる。酸素原子は1分子中に平均0.1〜3個の割合で含まれていることが好ましい。具体的には、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、l−リモネン等の不飽和のテルペン類単量体から誘導される含酸素テルペン類炭化水素樹脂が例示される。また好ましくは遊離のカルボン酸または水酸基含有炭化水素樹脂である。遊離のカルボン酸または水酸基は、炭化水素樹脂1分子中に平均0.1〜3個の割合で含まれていることが好ましい。より具体的には、含酸素テルペン類炭化水素樹脂として、テルペン単量体とフェノール、クレゾール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のフェノール類との反応物またはその反応物の水素添加処理物が例示される。
その他、含酸素テルペン類炭化水素樹脂は、テルペン単量体とマレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物またはその水素添加処理物であってもよい。
さらに、含酸素テルペン類炭化水素樹脂として、環状テルペン化合物1分子に、フェノール、クレゾール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のフェノール類を2分子以上の割合で付加して得られるテルぺン骨格含有フェノール系多価化合物またはその水素添加処理物を用いることもできる。
【0029】
上記テルペン単量体とフェノール類との反応物は、例えば、これらの化合物を用いてフリーデル−クラフツ反応を行うことにより、またその水素添加物は、この化合物を公知の方法で水素添加することにより得られる。これらは、市場において、テルペンジフェノール、テルペンフェノール系樹脂、あるいは、テルペン−フェノール共重合体樹脂等と呼ばれており、例えば、市販品としては「YSポリスター」および「マイティエース」(いずれも商品名、ヤスハラケミカル(株)製)などがこれに相当する。
【0030】
また、上記テルペン単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物は、例えば、テルペン単量体類とα,β−不飽和ジカルボン酸類をディールス−アルダー(Diels-Alder)反応により反応させることにより、また水素添加物は、これらの化合物を公知の方法で水素添加することにより得られる。これらは、市場において、酸変性テルペン系樹脂、あるいは、酸変性テルペン共重合体樹脂と呼ばれており、例えば、市販品としては「TM−60」(商品名、ヤスハラケミカル(株)製)がこれに相当する。
【0031】
さらに、上記環状テルペン化合物1分子にフェノール類を2分子以上の割合で付加して得られるテルぺン骨格含有フェノール系多価化合物は、例えば、テルペン単量体類とフェノール類とを当量比1:2でフリーデル−クラフツ反応を行うことにより、また水素添加物は、これら化合物を公知の方法で水素添加することにより得られる。例えば、市販品としては「YP−90」(商品名、ヤスハラケミカル(株)製)がこれに相当する。
【0032】
また、上記の熱可塑性樹脂に配合すべき含酸素炭化水素樹脂として、第二には、含酸素炭化水素ワックス、例えば水酸基含有炭化水素ワックスが挙げられる。このワックスは、ポリオレフィン系炭化水素骨格を有し、その側鎖または末端に水酸基を有する常温固体のものである。すなわち、主鎖の炭素数が約100〜 500のアルコールである。これらのワックスは、例えば、末端に水酸基を有するポリブタジエンを水素添加することにより製造することができる。市販品としては、「ポリテールH」(商品名、三菱化学(株)製)などがこれに相当する。その他、含酸素ワックスは、炭化水素ワックスに過酸化物処理を行い酸素原子を導入することによっても製造することができる。
【0033】
本発明においては、金属体、好ましくはトリアジンチオール類化合物で表面処理を施した金属体に、熱可塑性樹脂を接着させる。熱可塑性樹脂には、好ましくは前記含酸素炭化水素樹脂を配合する。含酸素炭化水素樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0034】
本発明においては、上記のように、金属表面と熱可塑性樹脂中に含まれる含酸素炭化水素樹脂との相互作用、金属表面に存在するトリアジンチオール類化合物と熱可塑性樹脂との相互作用、または金属表面に存在するトリアジンチオール類化合物と熱可塑性樹脂中に含まれる含酸素炭化水素樹脂との相互作用に起因して接着効果が得られる。したがって、これらの相互作用を十二分に発揮させるためには、溶融状態にある熱可塑性樹脂と、金属体、好ましくはトリアジンチオール類化合物により処理した金属体とを接触させることが必要である。特に、熱可塑性樹脂中に含まれる各種添加樹脂を利用する場合には、分子運動を積極的に行わせて添加樹脂を熱可塑性樹脂内部から表面に移行させ、金属表面と接触させることによって、前記相互作用をさらに増大させることができる。このように、本発明においては、熱可塑性樹脂を溶融状態において金属体と接触させ接着することがきわめて重要である。
【0035】
しかしながら、熱可塑性樹脂として半田耐性を有する耐熱性の樹脂、例えばLCPなどを採用する場合には、樹脂のガラス転移温度が高いために、活発な分子運動を行う溶融状態の期間(時間)が必然的に短くなる。
したがって、熱可塑性樹脂、好ましくは含酸素炭化水素樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の見かけのガラス転移温度を降下させる目的で、熱可塑性樹脂に比べて低い融点あるいは低いガラス転移点を有する別の熱可塑性樹脂を、接着効果増強剤として含有させることが好ましい。このような別の熱可塑性樹脂として具体的には、熱可塑性樹脂と高い親和性を有する熱可塑性エラストマーが好ましい。より具体的には、例えば、熱可塑性樹脂がポリエステル系耐熱性樹脂である場合にはポリエステル系熱可塑性エラストマーを、また熱可塑性樹脂がポリアミド系耐熱性樹脂である場合にはポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有させることが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂と同種の繰り返し構成単位を有する熱可塑性エラストマーを配合することが上記の目的を達成する上で望ましい。
【0036】
ただし、スチレンとブタジエンもしくはイソプレンとのブロック共重合体の水素添加処理物である水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)その他は、分子内に未水添の芳香族環を有するために広範な相溶性を有しており、かつ、熱可塑性エラストマーの中でもガラス転移点が極めて低いことから、前記の目的を達成する上では、ポリマーの繰り返し構成単位の構造にかかわらず好ましい熱可塑性エラストマーである。さらに、上記水添スチレン系熱可塑性エラストマーの無水マレイン酸等による酸変性物は、ガラス転移温度を低下させる効果のほか、酸基に由来するそれ自体の接着能力も寄与するので、好ましい熱可塑性エラストマーである。
上記の目的のために配合する熱可塑性エラストマーの量は、熱可塑性樹脂 100重量部当たり0.1〜30重量部である。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的に応じて種々の添加物を配合することができる。例えば、無機または有機充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレー、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、黒鉛、木粉、各種ウィスカー、金属粉、金属繊維等)、各種安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤等)、顔料、染料、可塑剤、オイル、滑剤、造核剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。
充填剤の配合量は、一般に上記各種の添加物を含む樹脂組成物の合計重量に対して1〜90重量%、好ましくは5〜85重量%の範囲である。
【0038】
なお、熱可塑性樹脂、特に液晶樹脂のような固化時の収縮の異方性が大きい熱可塑性樹脂においては、収縮の異方性を緩和することも接着性(密着性)を向上させる上で有効である。すなわち、熱可塑性樹脂の収縮異方性は、等方性の収縮を示す金属体との相対的関係において必然的に剥離力として作用するため、熱可塑性樹脂の収縮異方性を抑制あるいは緩和すれば、接着性(密着性)の向上が期待される。上記の収縮異方性を抑制あるいは緩和するため、収縮異方性の小さい別の熱可塑性樹脂をブレンドする手法、またはアスペクト比の小さい充填剤を配合する方法が有効である。
収縮異方性の高い特徴を有する液晶樹脂を例にとれば、これに接着効果増強剤としてブレンドする収縮異方性の小さい別の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂100重量部当たり、これら収縮異方性の小さい別の熱可塑性樹脂を1〜30重量部配合することができる。
【0039】
収縮異方性を抑制あるいは緩和する目的のために配合するアスペクト比の小さい充填剤としては、具体的には、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の粒状の充填剤が挙げられる。アスペクト比は、好ましくは10以下である。これらのアスペクト比の小さい充填剤の配合量は、上記各種の添加物を含む樹脂組成物の合計重量に対して1〜90重量%、好ましくは5〜85重量%の範囲である。
【0040】
前記のように、接着効果増強剤として熱可塑性エラストマーを配合して見かけのガラス転移温度を低下させるほか、実質的に活発な分子運動の期間(時間)を延長させるためには、金型冷却温度を通常設定する温度よりも高くする方法がある。具体的には、金型冷却温度を、「(熱可塑性樹脂のガラス転移点−20℃)〜(熱可塑性樹脂の融点+20℃)」の範囲に設定することが好ましい。なお、この温度範囲は、一般には通常設定される金型冷却温度よりも高い温度である。
【0041】
また、インサート成形等においてはインサート部材を予備加熱することが多い。この予備加熱温度を通常設定する温度より高くすることも、上記の目的のために有効である。具体的には、上記と同様に、インサート部材の予備加熱温度を、「(熱可塑性樹脂のガラス転移点−20℃)〜(熱可塑性樹脂の融点+20℃)」の範囲に設定することが好ましい。なお、このような温度範囲は、一般には通常設定される予備加熱温度よりも高い温度である。
【0042】
熱可塑性樹脂に含酸素炭化水素樹脂を配合するには、公知の方法を採用することができる。例えば、適宜の押出機を用いて熱可塑性樹脂を押出すとき、同時に含酸素炭化水素樹脂を投入して配合することができる。そのほか、公知の方法によりあらかじめ熱可塑性樹脂と含酸素炭化水素樹脂とを混合した後、ペレット化することにより配合することもできる。
【0043】
得られた熱可塑性樹脂組成物は、適宜の溶融成形機、例えば射出成形機により溶融射出し、金属体、好ましくはトリアジンチオール類化合物により表面処理を施した金属体と、樹脂の溶融下で接着させる。具体的な部材としてリードフレームを例にとると、金属製リードフレームに、好ましくはあらかじめトリアジンチオール類化合物により表面処理を施して、封止成形におけるインサート部材とする。これを常法により金型内にセットし(はめ込み)、樹脂を溶融射出することにより封止成形を行い、封止部品としての接着複合体を得る。
また、金属体または表面処理を施した金属体をアウトサート部材として、アウトサート成形により樹脂を溶融射出して接着複合体を得ることもできる。その外、樹脂と金属体、または表面処理を施した金属体とを接触させ、樹脂を加熱溶融して熱プレス成形等を行うことにより接着複合体を得ることもできる。
【0044】
本発明の接着複合体は、一般工業部品、および電気、電子、光学等の各種部品として用いられる。これらの部品の代表的な形態としては、ランプソケット、ディストリビューターキャップ、イグニションコイル、ヒューズケース、各種スイッチ、ブラケット、ボビン、インテークテンペラチャーコントロールパネル、バイメタルバキュームスイッチングバルブ、ガソリンタンク等の自動車部品、樹脂被覆鋼板、樹脂被覆金属管、コネクタ、ブラケット端子台座、コイルボビン、チューナ部品リレー、ソケット、スイッチ、ミシンモーターケース、中継端子取付けターミナル、ヒューズケース、コンデンサーケース、CDプレーヤーシャーシ、HDDシャーシ等の電気部品、ポンプケーシングやカメラ等の外装部品等の一般工業部品、および電気、電子、光学の各分野で使用されるリードフレーム封止部材等が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
<金属体の表面処理>
所定の金属板(50mm×50mm×0.5mm)を脱脂乾燥した後、トリアジンチオール類化合物により表面処理を施し、乾燥して使用した。
使用したトリアジンチオール類化合物の種類および表面処理の方法は以下の通りである。
(1)1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールモノナトリウム塩(TTN)
TTNの0.4%水溶液に所定の金属板を80〜90℃で30秒間浸漬した後、40℃で乾燥した。
(2)1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールトリエタノールアミン
(TEA)
TEAの1%水溶液を電解槽に入れて20℃に保ち、所定の金属板を入れて一定電圧(0.6V以下)で2分間印加することにより電気化学的処理を行った。
【0046】
<テルペン類誘導体と樹脂との混合>
乳鉢で粉体化した所定のテルペン誘導体と、所定の熱可塑性樹脂からなるペレットとを撹拌混合して使用した。
テルペン化合物は、射出成形の可塑化工程において、熱可塑性樹脂中に溶融混練した。
【0047】
<成形方法>
図を参照して金属体と樹脂との接着方法を説明する。図1(a)は、成形に用いる金型1の略示断面図であり、図1(b)は、金属体2の平面図である。
(1)あらかじめ表面処理を施した金属体2(板状体、50mm×50mm×0.5 mm)の片面の一部に両面テープ3を貼り、これを片開き射出成形用金型1のキャビティ4(100mm×100mm×1mm)内の壁に貼り付ける。
(2)移動金型5を閉じ、所定の熱可塑性樹脂をゲート(図示せず)からキャビティ4内へ射出し射出成形を行う。金型の冷却温度は50℃である。
(3)移動金型5を開き、突出ピン6で成形品(接着複合体)を突出して取り出す。
【0048】
<接着性の評価方法>
接着性は、下記に示すAおよびBの比(A/B)により表す。すなわち、3/5は、合計5回の成形実験のうち、3回において良好な接着が得られたことを意味する。
A:成形品の取り出し操作において、金属体と樹脂との一体化した複合体が金型から取り出された回数。接着不良の場合は、金属が金型側に接着し、成形された樹脂板のみが取り出されるので、一体化した複合体が取り出されたことは、接着が十分であることを意味する。
B:合計の成形実験回数。
【0049】
<実験例101〜1112>
表1および表2に、粒状シリカを40重量%含有するサーモトロピツク液晶樹脂(LCP)を熱可塑性樹脂として使用し、含酸素炭化水素樹脂として下記のテルペン化合物を添加した場合の効果を示す。
(1)マイティエースG150(商品名):テルペン−フェノール共重合体樹脂、ヤスハラケミカル(株)製
(2)TM−60(商品名): 酸変性テルペン共重合体樹脂、ヤスハラケミカル(株)製
(3)YP−90(商品名):テルぺン骨格含有フェノール系多価化合物、ヤスハラケミカル(株)製
【0050】
【表1】
【表2】
【0051】
<実験例201〜230>
表3から表8に、ガラス繊維充填のポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびサーモトロピツク液晶樹脂(LCP)の熱可塑性樹脂と、トリアジンチオール類で表面処理を施した各種金属体とを接着させる際に、含酸素炭化水素樹脂として各種テルペン化合物の添加した場合の効果を示す。
【0052】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0053】
<実験例301〜319>
表9から表12に、サーモトロピツク液晶樹脂を熱可塑性樹脂として使用し、含酸素炭化水素樹脂として各種テルペン化合物を添加したほか、各種トリアジンチオール類で表面処理を施したKFC(商品名、鉄−ニッケル合金製リードフレーム材;神戸製鋼(株)製)を金属体として用い、さらに各種の接着効果増強剤を使用した結果を示す。
使用した接着効果増強剤は以下の通りである。
(1)SEBS(水添スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体):タフテックH1295(商品名)、旭化成工業(株)製
(2)マレイン化変性SEBS(無水マレイン酸変性水添スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体):タフテックM1953(商品名)、旭化成工業(株)製
(3)ポリアミド系熱可塑性エラストマー:UBEPAE1210U(商品名)、宇部興産(株)製
(4)ポリエステル系熱可塑性エラストマー:ペルプレンP−30B(商品名)、東洋紡績(株)製
(5)PC:ポリカーボネート樹脂
さらに、金型冷却温度を通常の値よりも高い150℃に設定した結果も示す。
【0054】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0055】
<実験例401〜415>
表13から表15に、サーモトロピツク液晶樹脂を熱可塑性樹脂として使用し、含酸素炭化水素樹脂として水酸基変性ポリオレフィンワックスとしてポリテールH(商品名、三菱化学(株)製)を添加した場合の添加効果のほか、トリアジンチオール類による表面処理の効果および接着効果増強剤の添加効果を示す。
【0056】
【表13】
【表14】
【表15】
【0057】
なお、上記表中において、サーモトロピツク液晶ポリエステル樹脂(LCP)としては、フタル酸/イソフタル酸/p−ヒドロキシ安息香酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルからそれぞれ誘導される繰返し単位を有するサーモトロピツク液晶樹脂を使用して本発明の効果を示した。各モル比は、0.75/0.25/3/1である。この樹脂は、ホットステージを装着した偏光顕微鏡を用いて光学的異方性を観察したところ、340℃以上の溶融状態において光学的異方性を示した。
【0058】
【発明の効果】
トリアジンチオール類化合物により金属体に表面処理を施すか、または含酸素炭化水素樹脂を熱可塑性樹脂に配合することにより、両者を溶融接着してなる接着複合体の金属/樹脂間の接着性(密着性)が向上する。この効果は、含酸素炭化水素樹脂、具体的には含酸素テルペン類炭化水素樹脂または含酸素炭化水素ワックスが、金属体表面または金属体表面に存在するトリアジンチオール類化合物に対して水素結合、化学結合等の化学作用を生じ得る化合物であること、および、上記含酸素炭化水素樹脂が、配合された熱可塑性樹脂内で溶融状態下において次の特性を発揮することによると考えられる。
(1)熱可塑性樹脂組成物内で良好な分散を示す。
(2)熱可塑性樹脂が溶融状態から固化状態に変化する過程で表面に移行する。
(3)表面に移行後も、一部がアンカー効果で樹脂材料中に捕獲され、容易に遊離しない。
(4)樹脂材料の製造工程および接着複合体の製造工程において、揮発、分解、変性等を起こさない。
また、本発明の含酸素炭化水素樹脂を配合してなる熱可塑性樹脂組成物は、金属との接着性(密着性)に優れているため、リード線などの導体を具備する電気電子部品などの封止材として好適である。さらにこの際、金属体がトリアリジンチオール類化合物によりあらかじめ前処理されているときは、接着性(密着性)がさらに向上するために封止に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は金型の略示断面図であり、図1(b)は金属体の平面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 金属体
3 両面テープ
4 キャビティ
5 移動金型
6 突出ピン
Claims (12)
- 金属体と、含酸素炭化水素樹脂を含有するサーモトロピック液晶樹脂とを接着してなる接着複合体。
- 前記金属体がトリアジンチオール類化合物により表面処理されてなる請求項1に記載の接着複合体。
- 前記含酸素炭化水素樹脂が含酸素テルペン類樹脂またはその水素添加処理物である請求項1または請求項2に記載の接着複合体。
- 前記含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とフェノール類との反応物またはその水素添加処理物である請求項3に記載の接着複合体。
- 前記含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物またはその水素添加処理物である請求項3に記載の接着複合体。
- 前記含酸素テルペン類誘導体が、環状テルペン化合物とフェノール類との反応物であるテルぺン骨格含有多価フェノール系樹脂またはその水素添加処理物である請求項3に記載の接着複合体。
- 少なくとも一部が金属からなる被封止部材を封止するための、含酸素炭化水素樹脂を含有するサーモトロピック液晶樹脂からなる封止用樹脂組成物。
- 前記金属の表面の少なくとも一部がトリアジンチオール類化合物により表面処理されていることを特徴とする請求項7に記載の封止用樹脂組成物。
- 前記含酸素炭化水素樹脂が、含酸素テルペン類樹脂またはその水素添加処理物である請求項7または請求項8に記載の封止用樹脂組成物。
- 前記含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とフェノール類との反応物またはその水素添加処理物である請求項9に記載の封止用樹脂組成物。
- 前記含酸素テルペン類樹脂が、テルペン単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸類との反応物またはその水素添加処理物である請求項9に記載の封止用樹脂組成物。
- 前記含酸素テルペン類誘導体が、環状テルペン化合物とフェノール類との反応物であるテルぺン骨格含有多価フェノール系樹脂またはその水素添加処理物である請求項10に記載の封止用樹脂組成物。
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