JP3967461B2 - 4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(1)
【0002】
【化6】
【0003】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R1は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類はビタミンAや各種の香料製品の合成中間体として有用である。
【0004】
【従来の技術】
4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンは、上記の式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類の1種であり、その製造方法として、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンをロジウム触媒存在下にヒドロホルミル化することによって1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンを得、次いで得られた1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンを脱酢酸反応により4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンに変換する方法(特開昭51−146413号公報参照)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の製造方法では、原料である1,4−ジアセトキシ−2−ブテンが高価であり、入手が困難である。従って、上記の方法は、ヒドロホルミル化反応を20〜150気圧といった高い圧力下で行う必要があることとも相挨って4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンの工業的製法として適しているとはいい難い。
【0006】
しかして、本発明は、4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンを含む上記の式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類を安価かつ工業的に有利に製造することのできる方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行なった結果、2−ヒドロキシテトラヒドロフランとホルムアルデヒドを反応させることによって得られる2−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ブテンをアセチル化することにより4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンを製造できることを見出し、さらに検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、式(2)
【0009】
【化7】
【0010】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す)
で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドをカルボン酸および一級または二級アミンの存在下に反応させることによって式(3)
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、Rは上記定義のとおりである)
で示される化合物を得、得られた式(3)で示される化合物をアシル化することからなる、式(1)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、Rは上記定義のとおりであり、R1は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において出発原料となる、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類は、具体的には、2−ヒドロキシテトラヒドロフランまたは2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランである。2−ヒドロキシテトラヒドロフランは、アリルアルコ−ルをヒドロホルミル化する(例えば、特開平3−261775号公報、特開平3−261776号公報、特開平9−176076号公報などを参照)ことによって製造できる。また、2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランは、メタリルアルコ−ル(2−メチル−2−プロペン−1−オール)をヒドロホルミル化する(特開平9−52888号公報参照)ことによって製造できる。このように、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類は工業的規模で安価に入手可能な化合物である。
なお、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類は、それらの互変異性体である4−ヒドロキシブタナールまたは4−ヒドロキシ−3−メチルブタナールを含有していても差し支えない。
【0016】
また、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類との反応に使用するホルムアルデヒドとしては、ガス状のもの、水溶液(ホルマリン)、固体状のもの〔パラホルムアルデヒドまたはトリオキサン(ホルムアルデヒドの3量体)〕のいずれを使用してもよい。
ホルムアルデヒドの使用量は、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類1モル当たり、通常0.5〜10モルとなる量であり、好ましくは0.9〜3モルとなる量である。
【0017】
式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応に際して使用されるカルボン酸としては、例えば、酢酸、酪酸、吉草酸、2−エチル酪酸、シクロヘキサンカルボン酸、アジピン酸等の飽和脂肪酸類;クロトン酸、4−ペンテン酸、セネシオン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和脂肪酸類;安息香酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。
カルボン酸の使用量は、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類1モル当たり、通常0.001〜20モルとなる量であり、好ましくは0.01〜5モルとなる量である。
【0018】
また、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応に際して使用される一級または二級アミンとしては、例えば、エチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン類;ベンジルアミン等のアラルキルアミン類;ベンジルメチルアミン等のアラルキルアルキルアミン類;ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、モルホリン等の環状アミン類などが挙げられる。
一級または二級アミンの使用量は、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類1モル当たり、通常0.001〜20モルとなる量であり、好ましくは0.01〜5モルとなる量である。
なお、上記のカルボン酸と一級または二級アミンは、反応系中で塩を形成しても構わない。また、所望により、上記のカルボン酸と一級または二級アミンを予め塩の形とした上で使用することも可能である。
【0019】
式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応は、反応に悪影響を及ぼさない範囲内であれば、溶媒の存在下に実施することができる。使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。溶媒は1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
溶媒の使用量は、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類に対し、通常50倍重量以下であり、好ましくは10倍重量以下である。
【0020】
式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応は、通常30〜250℃、好ましくは50〜150℃の範囲の温度で実施される。また、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応は、通常、常圧〜10気圧、好ましくは、常圧〜3気圧の範囲の圧力下で実施される。
【0021】
式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応(マンニッヒ反応)により、上記の式(3)で示される化合物が生成する。ここで、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類として2−ヒドロキシテトラヒドロフランを使用した場合には、2−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ブテンが生成し、一方、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類として2−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロフランを使用した場合には、2−ホルミル−3−メチル−4−ヒドロキシ−1−ブテンが生成する。
【0022】
式(3)で示される化合物は、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応混合物から、蒸留などの常法に従って分離取得することができる。得られた式(3)で示される化合物は、所望により、減圧蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法によりさらに純度を高めることができる。
【0023】
次に、本発明では、上記で得られる式(3)で示される化合物をアシル化することによって式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類に変換する。
【0024】
式(1)において、R1が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキサデシル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、また、R1が表す芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、4−メチルフェネチル基等のアラルキル基;シンナミル基などが挙げられるが、本発明において好ましいものは、メチル基、ヘキサデシル基等のアルキル基である。
これらの脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子などの置換基を有していてもよい。
【0025】
また、原料となる式(3)で示される化合物としては、式(2)で示されるヒドロキシテトラヒドロフラン類とホルムアルデヒドの反応混合物から分離取得したものを使用してもよいし、また、所望により上記反応混合物をそのまま使用することも可能である。
【0026】
式(3)で示される化合物のアシル化に際しては、通常使用されているアシル化剤を使用することができるが、下記の式(4)および/または(5)
(R1CO)2O (4)、
R1COX (5)
(式中、R1は上記定義のとおりであり、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す)で示される化合物をアシル化剤として使用することが好ましい。式(4)および/または(5)で示される化合物としては、例えば、ギ酸無水物、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸、塩化アセチル、臭化アセチル、安息香酸クロリド、塩化パルミトイルなどが挙げられる。
【0027】
アシル化剤の使用量は、式(3)で示される化合物1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは1〜3モルとなる量である。
【0028】
式(3)で示される化合物のアシル化は、塩基性物質の存在下に実施することが好ましい。使用可能な塩基性物質としては、例えば、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;キノリン、2−メチルキノリン等のキノリン類;ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の芳香族アミン類;テトラメチル尿素などの尿素類;トリエチルアミン等の脂肪族アミン類;ピペリジン等の環状アミン類などが挙げられる。
塩基性物質の使用量は、式(3)で示される化合物1モルに対し、通常0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.3モルとなる量である。
【0029】
式(3)で示される化合物のアシル化は、溶媒の不存在下に実施することもできるが、溶媒の存在下に実施することが好ましい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば使用可能であり、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。溶媒は1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は、式(3)で示される化合物に対し、通常50倍重量以下、好ましくは10倍重量以下である。
【0030】
式(3)で示される化合物のアシル化は、通常−30〜200℃、好ましくは20〜100℃の範囲の温度で実施される。
【0031】
反応終了後、式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類は、所望により反応混合物を中和した後、蒸留する方法などの常法に従って、反応混合物から分離取得することができる。
かくして得られた、式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類は、所望により、減圧蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法によりさらに純度を高めることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
(a)2−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ブテンの製造
内容積300mlの三口フラスコにジブチルアミン0.75g(5.8ミリモル)および酪酸0.5g(5.7ミリモル)を2−プロパノール50mlに溶解してなる溶液を仕込み、内温を80℃に上昇させた。次いで得られた混合物に、フラスコ内の温度を80℃に保ったままで、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン23.5g(267ミリモル)およびホルムアルデヒド水溶液50g(濃度36%、600ミリモルのホルムアルデヒドを含有する)をそれぞれ1時間かけて同時に滴下した後、さらに同温度で1時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を減圧蒸留することにより、2−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ブテン(無色液体、沸点:86〜96℃/15mmHg)を20.6g(206ミリモル、収率:77.2%)得た。この化合物の物性値を以下に示す。
【0034】
1 H−NMR(400MHz,CDCl 3 ,TMS)
δ(ppm): 2.48〜2.55(m,2H)、3.67〜3.70(m,2H)、6.16(s,1H)、6.44(s,1H)、9.53(s,1H)
EIMS(m/z): 100(M+)
【0035】
(b)4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンの製造
内容積50mlのフラスコに無水酢酸1.0ml(10.6ミリモル)および4−ジメチルアミノピリジン50mg(0.4ミリモル)を塩化メチレン10mlに溶解してなる溶液を仕込み、20℃で、上記(a)で得られた2−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ブテン0.5g(5.0ミリモル)を塩化メチレン3mlに溶解してなる溶液を滴下した。得られた反応混合物を3時間撹拌した後、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンが定量的に生成していることが分かった(特開昭51−146413号公報に記載の方法で調製した標品と生成物の保持時間が一致した)。
【0036】
上記で得られた反応混合物から塩化メチレンを減圧下に留去し、得られた残渣を減圧蒸留によって精製して、4−アセトキシ−2−ホルミル−1−ブテンを0.65g得た(収率:91.5%)。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、式(1)で示される4−アシロキシ−2−ホルミル−1−ブテン類を安価かつ工業的に有利に製造できる方法が提供される。
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