JP3966533B2 - 飲料もしくはペースト状食品、及び塩基性炭酸マグネシウム懸濁液 - Google Patents

飲料もしくはペースト状食品、及び塩基性炭酸マグネシウム懸濁液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難溶性マグネシウム塩が分散されている飲料もしくはペースト状食品、及び飲料もしくはペースト状食品の添加に有利に用いることのできる難溶性マグネシウム塩懸濁液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウムは、生体内で酵素反応段階の補因子として働くなど、人体にとって重要な元素の一つであることが、最近の研究で明らかになっている。そして、マグネシウムの欠乏は、血圧上昇、動脈硬化、心疾患、脳血管障害及び骨粗しょう症などのさまざまな弊害の原因の一つであるといわれている。ところが、第六次改訂「日本人の栄養所要量」によれば、18〜29歳の男子のマグネシウムの栄養所要量は310mgとされているにもかかわらず、日本人の平均的なマグネシウムの摂取量は230mg/日であり、多くの日本人はマグネシウムの摂取量がやや不足ぎみである。このような理由から、近年マグネシウムを積極的に添加した、いわゆるマグネシウム強化飲料やマグネシウム強化食品の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
一般に、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムなどの水溶性のマグネシウム塩をマグネシウム供給源として添加した飲料や食品は、マグネシウム特有の苦みを呈することが知られており、マグネシウム強化飲料やマグネシウム強化食品には、水溶性のマグネシウム塩を使用することができない。
【0004】
一方、炭酸マグネシウムなどの難溶性マグネシウム塩は、飲料や食品に分散・添加してもマグネシウム特有の苦みを呈しない点で、マグネシウム供給源として好ましい材料である。しかしながら、炭酸マグネシウムは難溶性であるがために、例えば飲料やペースト状食品など流動性の食品に添加した場合に、炭酸マグネシウム粒子が凝集して沈殿することがあり、一旦凝集沈殿した炭酸マグネシウム粒子を再分散させることは難しいという問題がある。
【0005】
このような問題に対して、特開平11−21123号公報では、炭酸マグネシウム懸濁液に、分散剤として乳化剤又は安定剤を溶解した後に、ダイノーミルなどを用いて湿式粉砕処理する炭酸マグネシウム分散液の製造方法及びこの方法により得た炭酸マグネシウム分散液を含む飲料が提案されている。この公報によれば、炭酸マグネシウム懸濁液に分散剤を添加して湿式粉砕処理することにより、分散性が良好で、沈殿を生じない炭酸マグネシウム分散液を得ることができるとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平11−21123号公報に記載されているように、分散剤を懸濁液に添加することは、懸濁液中の粒子の凝集沈殿を抑制するには有効な手段であると考えられる。しかし、飲料や食品に過剰に分散剤を添加することは味覚や食感などに影響を与えるために好ましくはなく、また材料コストが高くなるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、分散剤の使用を特には必要とせず、長期間にわたって沈殿が生じることなく難溶性のマグネシウム塩が分散されている飲料もしくはペースト状食品を提供することにある。さらに本発明は、分散剤の使用を特には必要とせず、長期間にわたって沈殿が生じることなく難溶性のマグネシウム塩が分散されている飲料もしくはペースト状食品添加用の難溶性マグネシウム塩懸濁液を提供することもその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、難溶性マグネシウム塩の中でも、塩基性炭酸マグネシウム(化学式:4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O)が、炭酸マグネシウム(化学式:MgCO3)よりも比重が小さいことに着目し、この塩基性炭酸マグネシウムをマグネシウム供給源として用いることにより、分散剤を使用しなくても、凝集沈殿の起こりにくいマグネシウム強化飲料やマグネシウム強化食品を製造することができると考えた。そして、塩基性炭酸マグネシウム粒子を分散したマグネシウム強化飲料やマグネシウム強化食品の研究を重ねた結果、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある塩基性炭酸マグネシウム粒子が分散された飲料やペースト状食品は、長期間にわたって保存しても塩基性炭酸マグネシウム粒子の凝集沈殿が起こりにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明は、4MgCO3・Mg(OH)2・4H2Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として分散されている飲料にある。
【0010】
また、本発明は、4MgCO3・Mg(OH)2・4H2Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として分散されているペースト状食品にもある。
【0011】
さらに、本発明は、4MgCO3・Mg(OH)2・4H2Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として、2〜30重量%の範囲の量で分散されている飲料もしくはペースト状食品添加用の塩基性炭酸マグネシウム懸濁液にもある。
【0012】
なお、本発明における塩基性炭酸マグネシウム粒子の平均体積粒子径は、レーザー回折法により測定した値である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の飲料もしくはペースト状食品に分散されている塩基性炭酸マグネシウム粒子は、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内になるように調製されていなければならない。塩基性炭酸マグネシウム粒子の平均体積粒子径を0.1μm未満に調製するのは難しく、却って材料コストが高くなり、また、塩基性炭酸マグネシウム粒子の平均体積粒子径が0.5μmを超えると塩基性炭酸マグネシウム粒子の凝集沈殿が起こりやすくなる。
【0014】
本発明の飲料もしくはペースト状食品において、体積粒子径が1μm以上の塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量は、5%を超えないことが好ましく、1%を超えないことがより好ましく、0.1%を超えないことがさらに好ましい。体積粒子径が1μm以上の塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量が多すぎる飲料もしくはペースト状食品は、喉ごしや舌触りに違和感を感じやすくなる。
【0015】
本発明の飲料もしくはペースト状食品は、飲料もしくはペースト状食品の原料に、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内に調製された塩基性炭酸マグネシウム粒子が分散されている塩基性炭酸マグネシウム懸濁液を加え、混合することにより製造することができる。通常の飲料(例えば、乳飲料)もしくはペースト状食品(例えば、ヨーグルト)の場合、塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量は、0.08〜0.8重量%の範囲内にあることが好ましい。また、本発明の飲料もしくはペースト状食品の製造に用いる塩基性炭酸マグネシウム懸濁液の塩基性炭酸マグネシウム粒子含有量は、2〜30重量%(マグネシウムとして0.5〜7.7重量%)の範囲内であることが好ましい。
【0016】
塩基性炭酸マグネシウム粒子の粒子径の調整は水に分散されている状態で行う、いわゆる湿式粉砕により行うことが好ましい。湿式粉砕法は、ビーズミルを用いるのが一般的である。具体的には、塩基性炭酸マグネシウム粒子を、水に分散して直径が0.5〜2mmの範囲内のジルコニアビーズを用いて予備粉砕し、次いで、直径が0.05〜0.3mmの範囲内の小さなジルコニアビーズを用いて微粉砕することにより塩基性炭酸マグネシウム粒子の平均体積粒子径を0.1〜0.5μmの範囲内の値にすることが好ましい。特に平均体積粒子径が5μm以上の塩基性炭酸マグネシウム粒子を湿式粉砕する場合には、予備粉砕を行うことにより、粉砕の効率が高くなる。
【0017】
湿式粉砕する前の塩基性炭酸マグネシウム粒子は、一次粒子であっても二次粒子であっても良く、その平均体積粒子径に特には制限はないが、厚さ0.005〜0.02μm、長さ数μmの薄片状一次粒子からなる二次粒子であることが好ましい。このような塩基性炭酸マグネシウム二次粒子は、例えば、水酸化マグネシウム懸濁液に、炭酸ガス(二酸化炭素)を加えて、懸濁液中の水酸化マグネシウム粒子を炭酸マグネシウム粒子とし、次いで、分解熟成により炭酸マグネシウム粒子を塩基性炭酸マグネシウム粒子にすることにより製造することができる。
【0018】
本発明の飲料もしくはペースト状食品は、特に乳化剤の添加を必要とするものではないが、特に長期間にわたって保存する飲料もしくはペースト状食品であれば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤が添加されていても良い。乳化剤の添加量は、5%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の飲料の例としては、乳飲料(牛乳など)、果汁飲料、豆乳などの各種飲料を挙げることができる。また、ペースト状食品の例としては、ヨーグルト、クリーム、ソース、マヨネーズなどの各種の流動性あるいは高粘度食品を挙げることができる。
【0020】
【実施例】
(マグネシウム強化乳飲料の製造)
[実施例1]
平均体積粒子径が13.3μmの塩基性炭酸マグネシウム粒子を、水に10.6重量%の濃度で分散させ、直径2mmのジルコニアビーズと粉砕機(アペックスミルAMV−1型、コトブキ技研工業(株)製)を用いて55秒間湿式粉砕し、さらに、直径0.1mmのジルコニアビーズと粉砕機(スパーアペックスミルSAM−1型、コトブキ技研工業(株)製)を用いて80秒間湿式粉砕し、平均体積粒子径が0.2μmの塩基性炭酸マグネシウム粒子にした。この塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量が、マグネシウムとして1.36重量%になるように水を加え、塩基性炭酸マグネシウム懸濁液を調製した。
こうして調製した塩基性炭酸マグネシウム懸濁液を、脱脂粉乳を10.0%溶解した還元脱脂乳に、6.2重量%の濃度になるように添加し、TKホモミキサーで9000rpm×10分間処理して、マグネシウム強化乳飲料を製造した。
【0021】
[実施例2]
実施例1で製造したマグネシウム強化乳飲料に、生クリームを4.0重量%配合し、高圧ホモゲナイザーにより均質圧15MPaで均質化した後、130℃で2秒間殺菌処理を行って、マグネシウム強化低脂肪乳飲料を製造した。
【0022】
[比較例1]
炭酸マグネシウム粉末を、水に分散させ実施例1と同様の方法で湿式粉砕し、平均体積粒子径が0.2μmの炭酸マグネシウム粒子にし、これをマグネシウムとして1.36重量%になるように、水を加え炭酸マグネシウム懸濁液を調製した。そして、この炭酸マグネシウム懸濁液を用いて実施例1と同様にしてマグネシウム強化乳飲料を製造した。
【0023】
(マグネシウム強化乳飲料に分散されている塩基性炭酸マグネシウム粒子の沈降性の評価)
実施例1、2及び比較例1で製造したマグネシウム強化乳飲料に分散されている塩基性炭酸マグネシウム粒子の沈降のしにくさを遠心処理による加速試験により評価した。すわなち、実施例1、2及び比較例1で製造したマグネシウム強化乳飲料を1000rpmで5分間遠心処理し、遠心処理後の上澄み中のマグネシウム含有量をキシリジルブルー法で測定した。また、実施例1、2で製造したマグネシウム強化乳飲料については、製造から2週間静置保存し、保存後のマグネシウム強化乳飲料についても同様にマグネシウム含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003966533
【0025】
塩基性炭酸マグネシウムが分散されているマグネシウム強化乳飲料(実施例1)及びマグネシウム強化低脂肪乳飲料(実施例2)では、遠心処理の前後、及び製造直後と2週間静置保存後とを比較しても上澄み中のマグネシウム含有量に変化はほとんど見られなかった。一方、炭酸マグネシウムが分散されているマグネシウム強化乳飲料(比較例1)は、遠心処理前と遠心処理後とを比較すると、遠心処理後ではマグネシウム含有量が著しく低下している。以上のことから、塩基性炭酸マグネシウムが分散されているマグネシウム強化乳飲料は、塩基性炭酸マグネシウム粒子が沈降しにくく、長期間にわたって保存しても塩基性炭酸マグネシウム粒子の沈降のしにくさが維持されていることがわかる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある塩基性炭酸マグネシウム粒子が分散されている飲料もしくはペースト状食品は、塩基性炭酸マグネシウムが難溶性であることからマグネシウム特有の苦みがなく、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にあることから喉ごしや舌触りに違和感を感じることが少ない。また、本発明の飲料もしくはペースト状食品は、分散剤の添加を特には必要としないので、飲料もしくはペースト状食品本来の味覚や食感を損なうこともない。さらに、本発明の飲料もしくはペースト状食品は、長期間にわたって塩基性炭酸マグネシウム粒子の分散状態を維持することができる。以上のことから本発明の飲料もしくはペースト状食品は、マグネシウム強化飲料もしくは食品として優れたものであり、これらを飲食することにより、マグネシウムの欠乏による様々な弊害を予防することができる。また、本発明の平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある塩基性炭酸マグネシウム粒子が分散されている塩基性炭酸マグネシウム懸濁液を用いることにより、マグネシウム強化飲料もしくはペースト状食品を有利に製造することができる。

Claims (7)

  1. 4MgCO3・Mg(OH)2・4H2Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として分散されている飲料。
  2. 体積粒子径が1μm以上の塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量が5%を超えないことを特徴とする請求項1に記載の飲料。
  3. 塩基性炭酸マグネシウムの粒子の含有量が、0.08〜0.8重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の飲料。
  4. 4MgCO 3 ・Mg(OH) 2 ・4H 2 Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として分散されているペースト状食品。
  5. 体積粒子径が1μm以上の塩基性炭酸マグネシウム粒子の含有量が5%を超えないことを特徴とする請求項4に記載のペースト状食品。
  6. 塩基性炭酸マグネシウムの粒子の含有量が、0.08〜0.8重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載のペースト状食品。
  7. 4MgCO 3 ・Mg(OH) 2 ・4H 2 Oの化学式で表わされる塩基性炭酸マグネシウムが、平均体積粒子径が0.1〜0.5μmの範囲内にある粒子として、2〜30重量%の範囲の量で分散されている飲料もしくはペースト状食品添加用の塩基性炭酸マグネシウム懸濁液。
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