JP3966166B2 - 有機el発光素子およびその製造方法 - Google Patents

有機el発光素子およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL発光素子の構造およびその製法に関する。より詳細には、トップエミッション方式の有機EL発光素子における、上部電極の構造およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1987年にイーストマンコダック社のC. W. Tangらにより2層積層構成の高効率有機EL発光素子が発表されて以来(非特許文献1参照)、現在に至るまでにさまざまな有機EL発光素子が開発され、その一部は実用化され始めている。こうした中で、有機EL発光素子の発光効率を向上させることは、実用上きわめて重要な課題の1つである。
【0003】
一方、近年、有機EL発光ディスプレイにおいて、アクティブマトリクス駆動方式のディスプレイの開発が盛んに行われている。アクティブマトリクス駆動方式を用いる場合、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)を設けた基板の上に複数の有機EL発光素子を形成し、該素子をディスプレイの光源として使用する。現状におけるアクティブマトリクス駆動方式ディスプレイの問題点の1つは、個々のTFTおよび有機EL発光素子の特性のバラツキが大きく、そのバラツキ補正のために複雑な駆動回路が必要になることである。しかし、そのような複雑化した駆動回路を設けることは、1画素を駆動するのに必要なTFT数を増加させてしまう。
【0004】
一般的な有機EL発光素子では、ガラス基板上に透明電極を設けて、その上に有機EL発光層を設けて、さらに外部に取り出す光の量を大きくするために裏面に反射膜と電極の機能を併せ持つ上部電極をアルミや銀を用いて形成して、光をガラス面から取り出す、いわゆるボトムエミッション方式を採るのが一般的である。しかし、前述のように1画素を駆動するためのTFTの数が増加すると、光を透過させないTFTの面積が増大してしまい、光を取り出すための面積が減少してしまう。このような状況においては、上部電極を透明電極として光を上部電極から取り出すトップエミッション方式の方が有利であり、開発が進められてきている(特許文献1〜3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2689917号明細書
【0006】
【特許文献2】
特許第3203227号明細書
【0007】
【特許文献3】
特開2001−176660号公報
【0008】
【非特許文献1】
C. W. Tang, S. A. VanSlyke, Appl. Phys. Lett., 51, 913 (1987)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
トップエミッション方式の有機EL発光素子における問題点の1つに、発光した光の一部が上部透明電極内を横方向に伝播することによる発光の取り出し効率の低下がある。すなわち、有機EL発光層における発光は方向特異性がなく、あらゆる方向に発せられる。このとき、上部透明電極の屈折率のために、ある角度をもって上部透明電極に入射した光は、上部透明電極と他の材料との界面において全反射を起こす。その結果として光が横方向に伝播し、一部の発光が外部へ取り出すことができなくなる。
【0010】
別の問題点は、上部透明電極の抵抗値が、透明導電性酸化物などで構成されるために、ボトムエミッション方式の上部電極に用いられるアルミニウムと比較して高いことである。アクティブマトリクス駆動方式ディスプレイにおいては、TFTと接続されない上部電極は共通電極であり、素子の発光に用いられる全ての電流が上部電極に集中する。したがって、上部電極における電圧降下および発熱を抑制し、有機EL発光層の発光効率を向上させるために、上部透明電極の抵抗値をできる限り小さくすることが求められている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の2つの問題点を解決するために、本発明の有機EL素子は、基板上に反射性電極、有機EL発光層、上部透明電極および反射層を有する有機EL発光素子において、前記上部透明電極および反射層が前記有機EL発光層の上に配置され、前記上部透明電極が前記有機EL発光層からの発光を透過させる領域に設けられ、前記領域の周囲に反射層が配置され、前記反射層の厚さは前記上部透明電極の厚さよりも大きいことを特徴とする。該反射層により、上部透明電極内を横方向に伝播した光を反射して外部へと取り出すことが可能となる。また、該反射層は、前記上部透明電極を形成する材料よりも低い抵抗率を有する材料で形成されるので、上部電極の低抵抗化が可能となる。さらに、前記上部透明電極の発光領域に位置する部分は、反射層によってその周囲を完全に取り囲むように形成されているか、または、反射層を形成するために用いられるマスクの一体性を保つために必要な部分を除いて反射層によってその周囲を取り囲むように形成されている。
上述の本発明の有機EL発光素子において、有機EL発光層からの光を透過させる領域に隣接する反射層の側壁は、45〜90°のテーパ角を有することが望ましい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、有機EL発光素子の製造方法であり、反射性電極および有機EL発光層を形成された基板に、金属マスクを用いて前記有機EL発光層の所定の領域の上に反射層を積層する工程と、前記反射層よりも薄い上部透明電極を積層する工程とを具え、前記上部透明電極が前記有機EL発光層からの発光を透過させる領域に設けられ、前記反射層が前記領域の周囲に形成されることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の有機EL発光素子を詳細に説明する。本発明の有機EL発光素子を、図1に示す。図1(a)に示される有機EL発光素子は、基板1と、反射性電極2と、有機EL発光層3と、上部透明電極4と、反射層5とを含む。図1(b)は、本発明の有機EL発光素子の作用効果を説明するための図である。
【0015】
基板1は、ガラス基板上にアクティブマトリクス駆動用の1つまたは複数のTFTが既に形成されているTFT基板である。図1は、1つの発光部(画素)を有する有機EL発光素子を示し、基板1には1つの発光部(画素)を駆動するのに必要な数のTFTが形成されている。
【0016】
本発明の反射性電極2は、導電性を有する金属(Al、Ag、Mo、Wなど)、合金、酸化物から形成することができ、基板1上のTFTと電気的に接続されている。用いることができる合金は、遷移金属−リン合金、遷移金属−ボロン合金、および遷移金属−ランタノイド合金を含む。なお、本明細書において遷移金属とは、ランタノイドおよびアクチニウム系列を除く周期表第3族〜第12族の元素を意味する(例えば、周期表の第4周期でいえば、Sc〜Znの元素である)。また、本明細書において、ランタノイドとは、原子番号57(La)〜71(Lu)までの元素を意味する。遷移金属として1つの元素を用いることもできるし、あるいは2つ以上の元素を用いることもできる。本発明において好ましい遷移金属は、Ni、Cr、Pt、Ir、Rh、Pd、Ruを含み、特に好ましいものはNiおよびCrである。遷移金属−リン合金を用いる場合、該合金は、10〜50原子%、好ましくは12〜30原子%のリンを含有することができる。遷移金属−ボロン合金を用いる場合、該合金は、10〜50原子%、好ましくは12〜30原子%のボロンを含有することができる。遷移金属−ランタノイド合金を用いる場合、該合金は、10〜50原子%、好ましくは25〜50原子%のランタノイドを含有することができる。
【0017】
有機EL発光層3へのキャリア注入効率を高めるための層を、反射性電極2上に設けてもよい。例えば、反射性電極2を陽極として用いる場合、仕事関数が大きい材料の層を設けてホール注入効率を向上させることができる。仕事関数が大きい材料としては、ITO、IZOなどのような導電性金属酸化物を用いることができる。逆に、反射膜2を陰極として用いる場合には、仕事関数が小さい材料の層を設けて電子注入効率を向上させることができる。仕事関数が小さい材料としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物を用いることができる。これらのキャリア注入効率を高めるための層の厚さは、10nm以下で充分である。
【0018】
本発明の反射性電極2は、20nm以上、好ましくは70〜150nmの厚さを有する。このような厚さを有することにより、良好な反射性と、TFTへの遮光性とを実現することができる。
【0019】
以上のように形成された反射性電極2上に、有機EL発光層3が形成される。本発明の有機EL発光素子においては、有機EL発光層3は、少なくとも有機発光層を含み、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。具体的には、たとえば下記のような層構成からなるものが採用される。
【0020】
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子注入層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(ここで、陽極は有機発光層または正孔注入層に接続され、陰極は有機発光層または電子注入層に接続される)。
【0021】
上記各層の材料としては、公知のものが使用される。青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層中に、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。また、電子注入層としては、キノリン誘導体(たとえば、8−キノリノールを配位子とする有機金属錯体)、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体などを用いることができる。あるいはまた、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物のような仕事関数が小さい無機材料を、電子注入層に隣接して積層して電子注入効率のさらなる向上を図ることができる。無機材料を用いる場合、電子注入効率を向上させるためには、10nm以下の厚さの無機材料の層があれば充分であり、かつ必要とされる透明性を維持する観点からも好ましい。
【0022】
次に、有機EL発光層3の上の、発光領域22の周囲に反射層5が積層される。本明細書において、「発光領域」とは、有機EL発光層3からの光を透過させて、外部に放射する領域を意味し、特にディスプレイを形成する場合には、いわゆるピクセルないしサブピクセルに相当する。反射層5は、薄い透明導電性酸化物(ITO、IZO等)の層4’を介して、有機EL発光層3の上に積層されてもよい。反射層5は、近紫外域〜可視域の光、特に有機EL発光層が発光する光に対して70%以上の反射率を有する。さらに、反射層5は、低い電気抵抗性を有することが必要であり、金属または他の低抵抗性材料を用いて形成される。前述の反射性電極2を形成するための材料を用いて反射層を形成してもよい。反射層5を形成する材料は、4×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有することが望ましい。反射層5は上部透明電極4よりも厚いことが好ましく、その厚さは300〜1000nmの範囲内である。
【0023】
反射層5の発光領域に隣接する側壁は、有機EL発光層3の表面に対して垂直であってもよいが、より好ましくは図1(a)に示すようなテーパ形状を有する。すなわち、テーパ角21は、90゜以下であり、好ましくは45〜90゜である。このようなテーパ形状を有することにより、有機EL発光素子の発光効率をより向上させることが可能となる(後述)。
【0024】
最後に、上部透明電極4が形成される。上部透明電極4の発光領域に位置する部分は、反射層5によってその周囲を完全または実質的に取り囲まれるように形成される。本明細書において「実質的に取り囲まれる」とは、その周縁の相対的に小さい部分を除いて、上部透明電極4が反射層5に取り囲まれていることを意味する。なお、反射層5の上に、上部透明電極4の材料が形成されていてもよい。反射性電極2を陽極として用いる場合には上部透明電極4は陰極であり、逆に反射性電極2を陰極として用いる場合には上部透明電極4は陽極である。本発明の素子においては、上部透明電極4を通して光を取り出すので、上部透明電極4が透明であることが必要である。したがって、本発明の上部透明電極4としては、ITO、IZO等の透明導電性酸化物が好ましい。上部透明電極4は、反射層5より薄く、かつ所望される抵抗率を与えるような厚さを有する。上部透明電極4の厚さは、30nm以上、より好ましくは100〜300nmの範囲内である。
【0025】
図1(b)を参照して、本発明の有機EL発光素子の作用効果を説明する。有機EL発光層3における発光は無方向性であるので、種々の方向への発光が起こる。例えば、光線11bはそのままでは外部に放射されない方向への発光であるが、反射層5によって反射されて、発光領域から外部に放射されるようにされる。また、臨界角(上部透明電極4および該電極が接している材料の屈折率により規定される)以上の角度をもって上部透明電極4に入射して上部透明電極4内を横方向に伝播する光線11cも、同様に反射層5によって反射されて、発光領域から外部に発せられるようにされる。ここで、反射層5によって反射された光線11bおよび11cは、発光時よりも垂直に近い角度をもって外部に放射されることに注意されたい。この効果は反射層5のテーパ形状によりもたらされ、さらに上部透明電極4の上に追加の層を設けた場合においても、追加の層内にて光が横方向に伝播する可能性を低くする効果も奏するものである。以上のように、直接的に外部へと放射される光線11aに加えて、光線11bおよび11cも発光領域から外部に放射されるようになるために、有機EL発光層3を通過する単位電流密度当たりの有機EL発光素子の輝度(すなわち発光効率)を向上させることが可能となる。
【0026】
また、反射層5は導電性を有し、かつ上部透明電極4に電気的に接続されているので、上部透明電極4と反射層5とが一体となって「上部電極」として機能する。ここで、反射層5を形成する材料は上部透明電極4を形成する透明導電性酸化物よりも低い抵抗率を有するので、図1の構成とすることにより「上部電極」全体としての抵抗値を低下させることが可能となる。
【0027】
次に、本発明の有機EL発光素子を製造するための方法について説明する。TFTを形成された基板1、反射性電極2および有機EL発光層3は、当該技術において知られている方法により製造することが可能である。例えば、基板上のTFTは、慣用の半導体製造技術により作製することができる。本発明の反射性電極2は、蒸着、スパッタ等の方法を用いて基板1上に形成することができる。また、有機EL発光層3も、蒸着などの方法を用いて反射性電極2の上に積層することができる。
【0028】
本発明の製造方法の第1の態様を、図2および図3を参照して説明する。反射性電極2および有機EL発光層3が積層された基板1に対して、マスク6を位置を合わせて密着させ、そして蒸着、スパッタまたはイオンプレーティングなどによって反射層5を積層させる(図3(a))。この際に用いられるマスク6の1つの例を図2に示した。マスク6は、成膜条件に耐える材料により形成することができるが、好ましくはメタルマスクを用いる。図2に示したマスク6は、マスク6の一体性を保つために必要な部分を除く発光領域の周囲に開口部を有するものである。反射層3の発光領域に隣接する側壁のテーパ形状(テーパ角21)は、メタルマスクと基板との距離を変更することにより、あるいは基板を斜めに配置することにより制御することができる。
【0029】
次に、マスク6を除去した後に、スパッタ(対向式およびECR)またはイオンプレーティングなどの方法を用いて、透明導電性酸化物(ITOまたはIZO)を堆積させ、上部透明電極4を形成する(図3(b))。
【0030】
得られた有機EL発光素子(図3(c))は、前述のように発光の取り出し効率の向上および「上部電極」の抵抗値を減少という効果を奏するものである。
【0031】
本発明の参考例である製造方法の第2の態様を、図4を参照して説明する。反射性電極2および有機EL発光層が積層された基板1に対して、10nm以下の厚さを有する薄い透明導電性酸化物層4’をスパッタなどにより積層させ、そして反射層5を蒸着、スパッタまたはイオンプレーティングなどによって積層させる。透明導電性酸化物層4’は、反射層5のエッチングの際のエッチストップ層として機能し得る最低限の厚さを有するべきであり、好ましくは50nm以下、より好ましくは10〜50nmの厚さを有する。そして、有機EL発光素子の発光領域を確定するようなパターンを有するレジスト7を積層させる(図4(a))。レジスト7は、均一に積層した後にフォトリソグラフ法によりパターニングをしてもよいし、あるいは別の基板上に所望のパターンのレジストを形成し、それを反射層5の上に転写してもよい。
【0032】
次に、レジスト7をマスクとして反射層5をエッチングして、発光領域を画定する(図4(b))。このとき透明導電性酸化物層4’はエッチストップ層として利用する。したがって、エッチャントとしては、反射層5の材料をエッチングするが、透明導電性酸化物層4’をエッチングしないようなものを選択する。エッチングは、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチングなどのドライエッチングであってもよいし、あるいはウェットエッチングであってもよい。例えば、反射層5がAlであり、透明導電性酸化物層4’がITOである場合、NaOH、KOH等のアルカリ性水溶液を用いてウェットエッチングを行うことができる。この工程において、反射層5の発光領域に隣接する側壁のテーパ形状(テーパ角21)は、エッチャントの種類、エッチング時の温度、エッチング時間、作働圧力(ドライエッチングの場合)などによって制御することができる。
【0033】
そして、レジスト7を除去し、上部透明電極4を積層する(図4(c))。レジスト7の除去は、慣用の方法によって実施することができる。上部透明電極4の形成は、前述の第1の態様と同様に実施することができる。本方法により得られる有機EL発光素子(図4(d))においては、透明導電性酸化物層4’、上部透明電極4および反射層5が一体となって、「上部電極」として機能する。この構造の有機EL発光素子においても、透明導電性酸化物層4’の厚さが反射層5の厚さに比べて充分に薄く、広がっている光をあまり捕捉しないので、発光の取り出し効率の向上および「上部電極」の抵抗値を減少という効果を奏する。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
TFTが既に形成されている厚さ0.7mmの50mm角ガラス基板上に、対向式スパッタ装置を用いて厚さ100nmのCrBを堆積させた。スパッタガスとしてArを用い、300Wのスパッタパワーを印加した。次に、フォトリソグラフ法によりパターニングして、寸法100μm×300μmの反射性電極2を得た。
【0035】
次に、反射性電極2を形成した基板をArプラズマ(2.4Pa、100W、1分間)にて処理し、その後真空を破ることなく基板を有機層蒸着用チャンバーに移動させた。そして、圧力1×10−5Pa以下において、反射性電極2の上に、正孔輸送層として厚さ40nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を成膜速度0.5nm/sにて蒸着させ、発光層として厚さ60nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)を、成膜速度0.5nm/sにて蒸着させて有機EL発光層3を得た。さらに、真空を破ることなしに連続して、厚さ1nmのLiFおよび厚さ10nmのAlを蒸着して、電子注入性を向上させた。このとき、Alは、1×10−5Pa以下の圧力において、成膜速度0.3nm/sにて蒸着させた。
【0036】
次に、有機EL発光層3を形成した基板を別の成膜真空チャンバーに移し、有機EL発光層3と1mmの間隔をおいてマスクを配置し、1×10−5Pa以下の圧力および成膜速度0.1nm/sにおいて厚さ200nmのAlを蒸着して、反射層5とした。このとき、得られる反射層5の発光領域に面する側壁が45度のテーパ角を有するように、蒸発源と基板との位置を調整した。
【0037】
最後に、対向式スパッタ装置において、スパッタ粒子のエネルギーが10eV以下になるような条件において、厚さ100nmのIZOを堆積させ上部透明電極4を形成して、有機EL発光素子を得た。
【0038】
参考例2)
実施例1と同様の方法により、反射性電極2および有機EL発光層3を形成した。次に対向式スパッタ装置において、スパッタ粒子のエネルギーが10eV以下になるような条件において、厚さ10nmのITOを堆積させ透明導電性酸化物層4’を形成した。そして、蒸着法により厚さ200nmのAlを全面に積層した。
【0039】
次に、レジストをスピンコートにより成膜し、フォトリソグラフ法によりパターニングして、反射性電極2のパターンと位置合わせをした寸法100μm×300μmの開口部を有するパターンを有する厚さ3μmのレジスト7を得た。
【0040】
レジスト7をマスクとして用い、1MのNaOH水溶液を用いてAlをエッチング(60℃、5分間)して、所望の形状の反射層5を得た。得られた反射層5の発光領域に面する側壁は、50度のテーパ角を有した。
【0041】
最後に、対向式スパッタ装置において、スパッタ粒子のエネルギーが10eV以下になるような条件において、厚さ100nmのIZOを堆積させ上部透明電極4を形成して、有機EL発光素子を得た。
【0042】
(実施例3)
反射層5の厚さを500nmに変更したことを除いて実施例1を繰り返して、有機EL発光素子を得た。
【0043】
(比較例1)
反射層5を透明導電性酸化物であるIZOにより形成したことを除いて実施例1を繰り返して、有機EL発光素子を得た。
【0044】
(評価)
各実施例および比較例1の発光素子に対して、0.1A/mの電流密度の電流を印加し、その際の輝度および印加電圧を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003966166
【0046】
表1から明らかなように、本発明にしたがう実施例1、実施例3と参考例2の有機EL発光素子は、同一の電流密度において、比較例1の2倍以上の輝度を示した。また、同一の電流密度を得るための印加電圧を著しく低下させることができ、反射性電極および有機EL発光層における電圧降下を考慮すると、表1の結果は上部電極の抵抗値が一桁以上低下したことに相当する。さらに、上部電極の抵抗値は、反射層5の厚さを変更することにより調整可能であることが明らかとなった。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、有機EL発光素子の発光領域の周囲に反射層を設けることにより、発光の外部取り出し効率を向上させて、高輝度の有機EL発光素子を得ることができた。同時に、反射層を低抵抗率の材料から形成することにより、上部電極の抵抗値を低下させ、単位電流密度当たりの輝度を増加させることができた。本発明によって得られる有機EL発光素子は、高輝度を必要とする条件下での使用、たとえばアウトドアにおける使用に特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL発光素子を示す図であり、(a)は概略断面図であり、(b)はその機能を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL発光素子の製造方法において用いられるマスクの一例を示す概略上面図である。
【図3】本発明の有機EL発光素子の製造方法の第1の態様の工程を示す図である。
【図4】 本発明の参考例である有機EL発光素子の製造方法の第2の態様の工程を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 反射性電極
3 有機EL発光層
4 上部透明電極
4’ 透明導電性酸化物層
5 反射層
6 マスク
7 レジスト
11a、11b、11c 光線
21 テーパ角
22 発光領域

Claims (3)

  1. 基板上に反射性電極、有機EL発光層、上部透明電極および反射層を有する有機EL発光素子において、前記上部透明電極および反射層が前記有機EL発光層の上に配置され、前記上部透明電極が前記有機EL発光層からの発光を透過させる領域に設けられ、前記領域の周囲に反射層が配置され、前記反射層の厚さは前記上部透明電極の厚さよりも大きく、かつ、前記反射層は、前記上部透明電極を形成する材料よりも低い抵抗率を有する材料で形成され、前記上部透明電極の発光領域に位置する部分は、反射層によってその周囲を完全に取り囲むように形成されているか、または、反射層を形成するために用いられるマスクの一体性を保つために必要な部分を除いて反射層によってその周囲を取り囲むように形成されている、ことを特徴とする有機EL発光素子。
  2. 前記反射層の前記領域に隣接する側壁は45〜90°のテーパ角を有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 反射性電極および有機EL発光層が形成された基板に、マスクを用いて前記有機EL発光層の所定の領域の上に反射層を積層する工程と、前記反射層よりも薄い上部透明電極を積層する工程と、を具え、前記上部透明電極が前記有機EL発光層からの発光を透過させる領域に設けられ、前記反射層が、前記領域の周囲に形成されることを特徴とする有機EL発光素子の製造方法。
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