JP3965644B2 - 造成コンクリート壁及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築現場または工場において造成したコンクリート壁を建築物の壁部材に用いるようにした造成コンクリート壁及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄筋又は鉄骨等を配設したコンクリート建築物を構築する場合、鉄筋等を組んだ後、仮枠を付設してその間にコンクリートを流し込み、コンクリートの硬化後に仮枠を外して建物の床部や壁部を構築するようにしていたが、特に壁部を構築する場合、壁部の鉄筋等を挟んで両側に仮枠を設ける必要があるため、狭隘な建築現場ではこの仮枠の付設が困難であり、仮枠材料の使用量が多くなると同時に、多大な作業時間を要し、生産コストが高騰するものであった。
【0003】
加えて壁部を構築する場合、足場を組んでの高所作業がほとんどであるため、作業の危険率が高くなり、作業性が極めて悪いものであった。
【0004】
また、従来のコンクリート壁においては、冬期において室内を暖めると、外気によって冷やされたコンクリート壁に高温の室内空気が触れて、室内空気の湿気が水滴化するという結露の問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解消するために成されたもので、コンクリート壁を建築現場または工場において予め造成すると共に、コンクリート壁における結露の問題点を解消し、コンクリート壁の軽量化、防温、防湿、防音効果をさらに向上するようにした造成コンクリート壁及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の造成コンクリート壁は、予め造成したコンクリート壁を用いて他の部材に結合するようにした造成コンクリート壁において、室内側壁板の外側に波型板を接合することによって該波型板と前記室内側壁板との間に空間を設け、さらに前記波型板に固定したアンカーを外側に突出して前記波型板の外側に所定厚さのコンクリートを打設したことを特徴とする。
【0007】
また、前記波型板の外側に打設したコンクリートは鉄筋によって補強されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記コンクリート壁にはアンカーを結合した窓枠或は扉枠等の開口枠が設けられ、該開口枠が前記アンカーによって前記コンクリートに結合されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記コンクリート壁の内部には、電気配線等を挿通した管、水道管又はガス管等の配管が収納されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記コンクリート壁の外面にタイルが施されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の造成コンクリート壁の製造方法は、予め造成したコンクリート壁を用いて他の部材に結合するようにした造成コンクリート壁の製造方法において、水平状に横設した室内側壁板の上側に波型板を接合することによって該波型板と前記室内側壁板との間に空間を設け、さらに前記波型板に固定したアンカーを上側に突出する一方、前記波型板の上方に鉄筋を配置すると共に、前記波型板の周囲に仮枠を固定して、該仮枠の内側の前記波型板の上側に所定厚さのコンクリートを打設したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施例は、予め造成したコンクリート壁1を用いて他の部材に結合するようにした造成コンクリート壁を構成したもので、図1に示すように、室内側壁板2の外側に波型板3を接合することによって波型板3と室内側壁板2との間に空間4を設け、さらに波型板3に固定したアンカー5を外側に突出して波型板3の外側に所定厚さのコンクリート6を打設したものである。
【0014】
上記の造成コンクリート壁の構成について、その製造工程を説明しながら詳細に述べると、図2に示すように、建築現場または工場等の地盤または作業台、或は床等を水平状の土台7として、この土台7の上面に室内側壁板2を横設する。この室内側壁板2としては、化粧板等の壁部材を用いてもよい。
【0015】
次いで、図3に示すように、上記の室内側壁板2の上に波型板3を横設して、この波型板3を室内側壁板2の上面(外面)に接着剤8等で固定する。この波型板3としては、不燃性部材による各種の波型部材を用いるのがよい。
【0016】
このような構成によって、波型板3の形状に応じて該波型板3と室内側壁板2との間には複数の空間4、4…が生じる。この空間4が、後述するコンクリート壁1の完成品において、防温、防湿、防音、さらには外気と室内温度の干渉を行う結果、結露の発生を緩和する効果を有することとなる。
【0017】
また、上記の波型板3の複数箇所には間隔をあけてアンカー5、5…が固定されている。このアンカー5は、波型板3の所要箇所にアンカー部5aを上方へ突出した状態で係止されている。アンカー部5aの形状はU字形に形成してあるが、アンカー部5aが打設コンクリート6に良好に結合する形状であれば他のものでもよい。
【0018】
次いで、図4に示すように、波型板3の所要箇所にスペーサ9、9…を介して鉄筋10を配置する。なお、10aは横筋と縦筋を結束する番線である。
【0019】
さらに、上記の横設した室内側壁板2の周囲に仮枠11、11…を設けて互いに固定する。この仮枠11の高さは、コンクリート壁1の厚さを規定するものである。
【0020】
そして、図5に示すように、仮枠11、11…の中にコンクリート6を打設し、仮枠11、11…の上端の高さでコンクリート6の上面を平坦に均す。この時、打設したコンクリート6は波型板3に付着すると共に、アンカー5に結合されることによって波型板3との結合を十分なものとする。
【0021】
このようなコンクリート打設においては、横設した波型板3の上部に対してコンクリート6を打設すると共に、周囲は仮枠11、11…によって囲繞され、この仮枠11、11…内に水平状にコンクリート6を打設すればよく、垂直壁に対してコンクリート打設の作業性が向上する。
【0022】
また、この打設コンクリート6の上面(外面)に、壁面の仕上げ材としてタイル13を張り付けるようにしてもよい。さらに、タイル13を設けない場合、外壁の塗装を行うようにしてもよい。
【0023】
いずれにしても、コンクリート6が固まった後、仮枠11、11…を取り除くことによって、本実施例の一体的なコンクリート壁1(図9参照)が完成する。
【0024】
図6に示すものは、上記の造成コンクリート壁1に、窓枠或は扉枠等の開口枠14を設けたものである。この場合、コンクリート壁1の室内側壁板2と波型板3との開口枠部分を開設し、この部分に窓枠或は扉枠等の開口枠14を取付ける。これらの開口枠14にはアンカー5が固定されており、上記の仮枠11内にコンクリート6が打設された際に、コンクリート壁1に対して窓枠或は扉枠等の開口枠14が一体的に結合され、図9に示すような完成品となる。
【0025】
さらに、図6に示すように、コンクリート打設の前に波型板3の上方の所定箇所に電気配線等を挿通した管、水道管又はガス管等の配管15等をスペーサ9を介して配置し、上記のコンクリート打設によって、コンクリート壁1の内部にこれらの配管15を収納した状態にする。なお、この配管15として、蛇腹式の屈曲性に富むプラスチック管を使用すれば、内部の鉄筋10等を避けて配置することができる。
【0026】
上記のコンクリート壁1の継手構造は、コンクリート壁1を造成する際に、他のコンクリート壁1との接合箇所に、図7(a) に示すような蟻溝16を形成しておくとよい。
【0027】
この蟻溝16の形成方法は、蟻溝形の板材を形成箇所に配置しておき、コンクリート硬化後にこれを抜き取る。そして、図7(b) に示すように、互いに接合されたコンクリート壁1、1の蟻溝16、16同士を突合せて一対の蟻溝16、16による空所に縦筋17aを複数の横筋17bで連結した補強筋17を挿入し、図7(c) に示すように、コンクリート6を流し込んで硬化させることにより、コンクリート壁1、1同士を結合する。
【0028】
なお、コンクリート壁1、1相互の接合面を接着剤或はシーリング剤等を介して接合すれば、互いの接合面の結合力が増強するうえ、水分の浸透を防止することができる。
【0029】
さらに、コンクリート壁1をコンクリート床18に結合する場合も、図8(a) に示すように、互いの接合箇所に蟻溝16、16を形成し、図8(b) に示すように、互いに接合されたコンクリート部材の蟻溝16、16同士を突合せ、一対の蟻溝16、16による空所に縦筋17aを複数の横筋17bで連結した補強筋17を挿入し、図8(c) に示すように、コンクリート6を流し込んで硬化させることにより、コンクリート壁1とコンクリート床18とを結合する。
【0030】
この場合も、コンクリート壁1とコンクリート床18との接合面を接着剤或はシーリング剤等を介して接合すれば、互いの接合面の結合力が増強するうえ、水分の浸透を防止することができる。
【0031】
なお、本発明による造成コンクリート壁は、コンクリート建築のみならず、木造建築の一部として使用することも可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の造成コンクリート壁は、室内側壁板の外側に波型板を接合することによって該波型板と室内側壁板との間に空間を設け、さらに波型板に固定したアンカーを外側に突出して波型板の外側に所定厚さのコンクリートを打設した構成により、このコンクリート壁を建築現場または工場において予め造成することができるため、建築物の壁部材として多様に使用することができ、コンクリート壁造成時の安全性の確保、生産コストの低減等を実現することができる。
【0033】
さらに、上記の構成により、波型板と室内側壁板との間には複数の空間が生じる。この空間によって、本発明のコンクリート壁の軽量化、防温、防湿、防音、さらには外気と室内温度の干渉を行うことによる結露の発生を緩和する効果を発揮することが可能となる。
【0034】
また、本発明のコンクリート壁を造成する際に窓枠或は扉枠等の開口枠をアンカーによって打設コンクリート中に埋め込んでおくことができ、また、電気配線を挿通した管、水道管又はガス管等の必要な配管をすべて埋め込んでおくようにすると、驅体完成後の配管施行の手間が省け、床又は壁内配管の施行をもコンクリート床及びコンクリート壁の造成時に一括して行うことができる。
【0035】
本発明の造成コンクリート壁の製造方法においては、水平状に横設した室内側壁板の上側に接合した波型板の上部に、周囲を仮枠によって囲繞した状態でコンクリートを打設するようにしてあるため、コンクリートの打設は仮枠内に水平状態で行えば良く、垂直壁に対して仮枠の使用数が大幅に軽減し、コンクリート打設の作業性が向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の造成コンクリート壁の部分断面図である。
【図2】本発明の造成コンクリート壁の製造工程において室内側壁板2を横設した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の造成コンクリート壁の製造工程において波型板を設けた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の造成コンクリート壁の製造工程において鉄筋を設けた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の造成コンクリート壁の製造工程において仮枠内にコンクリート6を打設した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の造成コンクリート壁に開口枠と配管を収納した状態を示す断面図である。
【図7】(a) 乃至(c) は、本発明による造成コンクリート壁同士の継手構造の一例を示す部分的斜視図である。
【図8】(a) 乃至(c) は、本発明による造成コンクリート壁とコンクリート床の継手構造の一例を示す部分的斜視図である。
【図9】本発明のコンクリート壁の完成品の一例を示す斜視図である。
【符合の説明】
1…コンクリート壁
2…室内側壁板
3…波型板
4…空間
5…アンカー
6…コンクリート
7…土台
8…接着剤
9…スペーサ
10…鉄筋
11…仮枠
12…コンクリート
13…タイル
14…開口枠
15…配管
16…蟻溝
17…補強筋
18…コンクリート床

Claims (6)

  1. 予め造成したコンクリート壁を用いて他の部材に結合するようにした造成コンクリート壁において、室内側壁板の外側に波型板を接合することによって該波型板と前記室内側壁板との間に空間を設け、さらに前記波型板に固定したアンカーを外側に突出して前記波型板の外側に所定厚さのコンクリートを打設したことを特徴とする造成コンクリート壁。
  2. 前記波型板の外側に打設したコンクリートは鉄筋によって補強されていることを特徴とする請求項1記載の造成コンクリート壁。
  3. 前記コンクリート壁にはアンカーを結合した窓枠或は扉枠等の開口枠が設けられ、該開口枠が前記アンカーによって前記コンクリートに結合されていることを特徴とする請求項1記載の造成コンクリート壁。
  4. 前記コンクリート壁の内部には、電気配線等を挿通した管、水道管又はガス管等の配管が収納されていることを特徴とする請求項1記載の造成コンクリート壁。
  5. 前記コンクリート壁の外面にタイルが施されていることを特徴とする請求項1記載の造成コンクリート壁。
  6. 予め造成したコンクリート壁を用いて他の部材に結合するようにした造成コンクリート壁の製造方法において、水平状に横設した室内側壁板の上側に波型板を接合することによって該波型板と前記室内側壁板との間に空間を設け、さらに前記波型板に固定したアンカーを上側に突出する一方、前記波型板の上方に鉄筋を配置すると共に、前記波型板の周囲に仮枠を固定して、該仮枠の内側の前記波型板の上側に所定厚さのコンクリートを打設したことを特徴とする造成コンクリート壁の製造方法。
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