JP3965346B2 - 電動補助動力付き車椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、駆動輪を回すための力を、電動モータによって補助する電動補助動力付き車椅子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動補助動力付き車椅子は、駆動輪の外側に設けたハンドリムを回したときの入力トルクを検知して、その入力トルクに応じたアシスト力を電動モータに出力させることによって、駆動輪を回す力を軽減するものである。
【0003】
図5は、上記電動補助動力付き車椅子を示した側面図であり、図6は、この車椅子の背面図である。
座席を固定したフレーム1の両側に、一対の駆動輪3,4を配置している。これら駆動輪3,4の外側には、それぞれハンドリム5,6を設けるとともに、これらハンドリム5,6を、動力伝達機構7,8を介して上記駆動輪3,4にそれぞれ連結している。そして、上記ハンドリム5,6を回転させると、その回転力が動力伝達機構7,8を介して駆動輪3,4に伝達される。また、このとき生じる入力トルクを、動力伝達機構7,8内に組み込んだトルクセンサが検出するようにしている。
【0004】
上記動力伝達機構7,8には、電動モータ9,10をそれぞれ組み付けるとともに、これら電動モータ9,10の出力軸を、図示していない減速機構を介して駆動輪3,4に連係させている。そして、上記電動モータ9,10を駆動させると、その出力が減速機構を介して駆動輪3,4に伝達されて、各駆動輪3,4が回転するようにしている。
なお、上記動力伝達機構7と電動モータ9とによって右側アシスト機構Aを構成し、動力伝達機構8と電動モータ10とによって左側アシスト機構Bを構成している。
【0005】
上記各電動モータ9,10は、フレーム1に固定した制御機構Cに接続している。この制御機構Cは、トルクセンサで検知したハンドリム3,4からの入力トルクに基づいて、各電動モータ9,10の出力を制御する。例えば、検知した入力トルクが大きいと、制御機構Cが電動モータ9,10の出力を大きくする。逆に検知した入力トルクが小さければ、制御機構Cが電動モータ9,10の出力を小さくする。つまり、入力トルクに比例した出力を、電動モータ9,10が出力するようにしている。そして、この電動モータ9,10の出力が、駆動輪3,4に伝達されることによって、駆動輪3,4を回転する力を軽減するようにしている。
なお、図中符号11は右側キャスターであり、符号12は左側キャスターである。
【0006】
以上のように、電動補助動力付き車椅子は、左右のアシスト機構A、Bによって、各駆動輪3,4にそれぞれ独立してアシスト力を付与しているが、両アシスト機構A,Bのアシスト比率が等しいと、腕力に左右差がある場合に、直進走行が難しくなる。そこで、左右の腕力の差を考慮して、アシスト比率を左右で調節可能にした車椅子が特開平9−99017号公報(特許文献1)に記載されている。
この公報に記載された従来の車椅子は、左右の駆動輪に対するアシスト比率を使用する者の腕力に基づいて調節可能にしている。左右のアシスト比率を予め調節しておけば、各駆動輪3,4に与えられる回転力がバランスするので、直進走行が維持される。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−99017号公報(第4頁〜第6頁、図6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように左右のアシスト比率を調節可能にした従来の車椅子は、左右の腕力に差がある場合でも、直進走行性が維持される。しかし、この従来の車椅子は、入力トルクがゼロの場合、すなわちハンドリム5,6を操作しない場合、アシスト力を発揮しない。言い換えれば、直進走行するためには、常に左右のハンドリム5,6を回転させなければならない。したがって、走行中に扉などを開けるために一方のハンドリム5、6から片手を放すと、その瞬間に左右のアシスト力のバランスが悪くなり、直進走行性が維持できなくなるという不都合があった。この発明の目的は、片手操作でも、直進走行性を維持することのできる電動補助動力付き車椅子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、左右の駆動輪にそれぞれ動力伝達機構を介して連結した左右のハンドリムと、各動力伝達機構にそれぞれ設けたトルクセンサと、各駆動輪にそれぞれ回転力を付与する左右の電動モータと、これら左右の電動モータの出力を制御する制御機構とを備え、上記制御機構は、各トルクセンサが検出した入力トルクに基づいて、各電動モータの出力を制御する電動補助動力付き車椅子において、上記制御機構に、直進走行状態を検知する直進走行検知センサを接続するとともに、この直進走行検知センサは、右側駆動輪の回転数を検知する右側回転数センサと、左側駆動輪の回転数を検知する左側回転数センサとからなり、上記制御機構は、これら両回転数センサの検知した回転数がほぼ同一の範囲内にあるときに、直進走行状態と判断して直進走行モードに切り換わるとともに、いずれか一方のハンドリムの入力トルクに基づいて両駆動輪を同じ回転速度で制御する一方、上記直進走行モード中に、ハンドリムから逆方向の入力トルクを検知したとき、非直進走行状態と判断して、ノーマル走行モードに切り換わるとともに、各ハンドリムからの入力トルクに基づいて各駆動輪を独立して制御する構成にしたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記直進走行検知センサは、フレームに設けた右側キャスターの舵角を検知する右側転舵角センサと、フレームに設けた左側キャスターの舵角を検知する左側転舵角センサとを備え、上記制御機構は、これら両転舵角センサの検知した舵角が直進状態に相当する0度およびほぼ0度の範囲内にあり、しかも、上記両回転数センサの検知した回転数がほぼ同一の範囲内にあるとき、直進走行状態と判断することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1〜図4に示すこの発明の実施形態は、左右の駆動輪3,4の回転数をそれぞれ検出する回転数センサ13、14と、左右のキャスター11,12の舵角をそれぞれ検出する舵角センサ15、16とを設けた点及び制御機構Cによって直進走行モードとノーマル走行モードとに切り換え制御する点に特徴を有し、それ以外の構造については図5,6に示した従来例と同じである。したがって、図1,図2において、従来と同じ構成要素については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0014】
図1、図2に示すように、フレーム1には、右側駆動輪3の回転数および回転方向を検出する右側回転数センサ13と、左側駆動輪4の回転数および回転方向を検出する左側回転数センサ14とを設けている。そして、これら両回転数センサ13,14を、制御機構Cに接続している。
また、フレーム1の下部には、右側キャスター11の舵角を検出する右側舵角センサ15と、左側キャスター12の舵角を検出する左側舵角センサ16とを設けるとともに、これら両舵角センサ15,16を制御機構Cに接続している。
そして、上記回転数センサ13,14及び舵角センサ15,16によって、この発明の直進走行検知センサを構成している。
【0015】
図3に示すように、直進走行センサSを接続した制御機構Cは、直進走行判定部20と、右側駆動輪制御回路21と、左側駆動輪制御回路22とを備えている。上記直進走行判定部20は、直進走行センサSである回転数センサ13,14及び舵角センサ15,16からの信号に基づいて、直進走行状態か非直進走行状態かを判断するようにしている。具体的には、左右の回転数センサ13,14によって検出した駆動輪3,4の回転数を比較して、両駆動輪3,4の回転数に差があれば、非直進状態と判断し、両駆動輪3,4の回転数の差がなければ直進走行状態と判断するようにしている。また、この直進走行判定部20は、両舵角センサ15,16によって検出した左右のキャスター11,12の舵角が、車体の前後方向に対して平行となる0度およびほぼ0度以外の場合に非直進走行状態と判断し、舵角が直進状態に相当する0度およびほぼ0度の場合に直進走行状態と判断するようにしている。
【0016】
例えば、両駆動輪3,4の回転数に基づく判断とキャスター11,12の舵角に基づく判断のいずれか一方が、非直進走行状態である場合、直進走行判定部20は、ノーマル走行モードを保つ。このノーマル走行モードでは、前記従来例と同様に、各トルクセンサが検知した入力トルクに基づいて、各アシスト機構A,Bがそれぞれ駆動輪3,4に適したアシスト力を発揮する。すなわち、右側駆動輪制御回路21が右側のハンドリム5の入力トルクに基づいて電動モータ9の出力を制御し、左側駆動輪制御回路22が左側のハンドリム6からの入力トルクに基づいて電動モータ10の出力を制御する。
【0017】
一方、左右の回転数センサ13,14によって検出した駆動輪3,4の回転数がほぼ等しいとき、すなわち、回転数にある程度差があっても、その差が僅かであってほとんど等しいというな場合には、直進走行判定部20が直進走行状態にあると判断する。つまり、直進走行中は、左右の駆動輪3,4が同じ回転数になるので、このような状態にあるときに、直進走行判定部20が、直進走行状態とみなすようにしている。
また、この直進走行判定部20は、両舵角センサ15,16によって検出した左右のキャスター11,12の舵角がほぼ0度のとき、すなわち、直進状態である0度またはほとんど0度に等しい微少舵角にあるときに、直進走行状態とみなすようにしている。
そして、上記回転数に基づいた判断と舵角に基づいた判断が、両方とも直進走行状態となった場合に、直進走行モードに切り換える。
【0018】
直進走行モードに切り換わると、左右の駆動輪3,4の回転速度が等しくなるように、電動モータ9,10の出力を制御する。具体的には、トルクセンサで検出した左右の入力トルクのうち、いずれか大きい方の入力トルクに基づいて、左右両方の電動モータの出力を制御する。このようにいずれか大きい方の入力トルクを基準にして左右の駆動力を制御すれば、片方の手をハンドリムから離した状態でも、直進走行することができる。
なお、この実施形態では、いずれか大きい方の入力トルクに基づいて両電動モータ9,10の出力を制御しているが、小さい方の入力トルクに基づいて両電動モータ9,10の出力を制御するようにしてもよい。
【0019】
上記直進走行モードにある状態から、直進走行判定部20に逆トルクが入力されると、ノーマル走行モードに切り換わる。すなわち、直進走行している状態において、いずれか一方または両方のハンドリムの回転にブレーキを掛けると、逆トルクが発生する。このように逆トルクが発生したことをトルクセンサからの信号によって直進走行判定部20が検知すると、この直進走行判定部20が非直進走行状態と判断して、ノーマル走行モードに切り変える。そして、各駆動輪3,4の制御を、各駆動輪制御回路21,22による独立した制御に切り換える。
【0020】
上記逆入力が発生する場合というのは、曲がる場合や止まる場合である。例えば、直進走行状態から右方向に曲がる場合には、右側駆動輪3の回転数を下げる必要があるので、右側のハンドリム5にブレーキをかける。これに対して左方向に曲がる場合には、左側駆動輪4の回転数を下げる必要があるので、左側のハンドリム6にブレーキを掛ける。つまり、曲がるために掛けるブレーキによって生じる逆入力を検知すると、その時点で直進走行モードを解除して、ノーマル走行モードに自動的に復帰させるようにしている。このように逆トルクに基づいて自動的にノーマル走行モードに復帰させるようにしているので、モード切り換えが原因で操作しにくくなるといった不都合は生じない。
【0021】
図4は、上記制御機構Cの制御フローを示したものである。
ステップ1で検出した直進走行検知センサSからの信号に基づいて、ステップ2で直進走行状態か否かを判断する。このステップ2で非直進走行状態と判断した場合には、ステップ6に移りノーマル走行モードを維持する。そして、ステップ1に戻る。
一方、ステップ2で直進走行状態と判断した場合には、ステップ3に移り、直進走行モードに切り換える。すなわち、左右の入力トルクのうち、いずれか大きい方の入力トルクに基づいて、左右の駆動輪3,4を等しい回転数になるように電動モータ9,10の出力を制御する。
【0022】
次に、ステップ4に移り、逆トルクが入力されたか否かを判断する。逆トルクが入力されたと判断した場合にはステップ7に移り、ノーマル走行モードに復帰させる。そして、ステップ1に戻る。
一方、ステップ4で逆トルクが入力されないと判断した場合には、ステップ5に移り、直進走行モードを維持する。そして、再びステップ3に戻り、左右いずれか大きい方の入力トルクに基づいて、左右の駆動輪3,4を等しい回転数に制御することになる。
【0023】
以上のように、この実施形態によれば、直進走行状態にあるか否かを、駆動輪3,4の回転数の差や、キャスター11,12の舵角に基づいて判断し、直進走行状態にあると判断した場合には、両駆動輪3,4の回転速度が等しくなるように制御しているので、片方の手だけで直進走行を維持することができる。
【0024】
なお、この実施形態では、駆動輪3,4の回転数とキャスター11,12の舵角とに基づいて、直進走行状態か否かを判断するようにしているが、いずれか一方の信号に基づいて、直進走行状態か否かを判断するようにしてもよい。ただし、キャスター11,12の舵角というのは、路面の影響を受けやすく不安定なので、駆動輪3,4の回転数を基準として判断した方が信頼性の高い制御ができる。また、この実施形態のように、両方の信号を採用すれば、より確実に直進走行状態か否かを判断することができるので、その分、信頼性の高い制御が可能となる。
【0025】
一方、直進走行モードとノーマル走行モードとの切り換えは、駆動輪3,4の回転数とキャスター11,12の舵角とに基づいて行っているが、直進走行状態と判断するときの回転数及び舵角の許容差があまりにも小さいと、直進走行モードにほとんど切り換わらないという不都合が生じる。
そこで、この実施形態では、直進走行状態と判断する場合の回転数及びキャスター角の許容差を、車椅子の操縦安定性が損なわれないように予め設定した範囲で決めている。
【0026】
【発明の効果】
第1の発明によれば、直進走行モードに切り換わると、いずれか一方の駆動輪の入力トルクに基づいて、電動モータが制御されるとともに、両駆動輪が同じ速度で回転する。したがって、片手で直進走行を維持することができる。
【0027】
また、右側駆動輪の回転数と、左側駆動輪の回転数とが、ほぼ同一の範囲内にあるときに、制御機構が直進走行状態と判断する構成にしたので、直進走行状態を精度良く判断することができる。
【0028】
さらに、制御機構は、直進走行モードにおいて、ハンドリムから逆方向の入力トルクを検知すると非直進走行状態と判断して、ノーマル走行モードに切り換える構成にしたので、滑らかなモード切り換えができる。
【0029】
第2の発明によれば、右側キャスターの舵角と、左側キャスターの舵角が、直進状態であるほぼ0度の範囲内にあり、しかも、上記両回転数センサの検知した回転数がほぼ同一の範囲内にあるときに、制御機構が直進状態と判断する構成にしたので、直進走行状態を精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の車椅子の側面図である。
【図2】実施形態の車椅子の背面図である。
【図3】実施形態の制御ブロック図である。
【図4】実施形態の制御フローである。
【図5】電動補助動力付き車椅子の側面図である。
【図6】電動補助動力付き車椅子の背面図である。
【符号の説明】
S 直進走行検知センサ
C 制御機構
3 右側駆動輪
4 左側駆動輪
5,6 ハンドリム
7,8 動力伝達機構
9,10 電動モータ
11 右側キャスター
12 左側キャスター
13 右側回転数センサ
14 左側回転数センサ
Claims (2)
- 左右の駆動輪にそれぞれ動力伝達機構を介して連結した左右のハンドリムと、各動力伝達機構にそれぞれ設けたトルクセンサと、各駆動輪にそれぞれ回転力を付与する左右の電動モータと、これら左右の電動モータの出力を制御する制御機構とを備え、上記制御機構は、各トルクセンサが検出した入力トルクに基づいて、各電動モータの出力を制御する電動補助動力付き車椅子において、上記制御機構に、直進走行状態を検知する直進走行検知センサを接続するとともに、この直進走行検知センサは、右側駆動輪の回転数を検知する右側回転数センサと、左側駆動輪の回転数を検知する左側回転数センサとからなり、上記制御機構は、これら両回転数センサの検知した回転数がほぼ同一の範囲内にあるときに、直進走行状態と判断して直進走行モードに切り換わるとともに、いずれか一方のハンドリムの入力トルクに基づいて両駆動輪を同じ回転速度で制御する一方、上記直進走行モード中に、ハンドリムから逆方向の入力トルクを検知したとき、非直進走行状態と判断して、ノーマル走行モードに切り換わるとともに、各ハンドリムからの入力トルクに基づいて各駆動輪を独立して制御する構成にしたことを特徴とする電動補助動力付き車椅子。
- 上記直進走行検知センサは、フレームに設けた右側キャスターの舵角を検知する右側転舵角センサと、フレームに設けた左側キャスターの舵角を検知する左側転舵角センサとを備え、上記制御機構は、これら両転舵角センサの検知した舵角が直進状態に相当する0度およびほぼ0度の範囲内にあり、しかも、上記両回転数センサの検知した回転数がほぼ同一の範囲内にあるとき、直進走行状態と判断することを特徴とする請求項1記載の電動補助動力付き車椅子。
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