JP3965249B2 - リン酸カルシウムセメント及びリン酸カルシウムセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン酸カルシウム粉末に多糖類を含有させることにより、有機酸等を含まない水のみによって、容易に、且つ比較的短時間で硬化させることができるリン酸カルシウムセメントに関する。また、本発明は、リン酸カルシウム粉末と、多糖類と、水とを含み、特に、多糖類を含有する水溶液を混練液とすることにより、容易に、且つ比較的短時間で硬化させることができるリン酸カルシウムセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体に用いられる医療用セメントとしては、現在までに各種の組成のものが数多く提案されている。特に、リン酸カルシウム系の生体用セメントでは、このセメントが硬化とともに生体活性な水酸アパタイトに転化するため、生体親和性に優れた硬化体を得ることができる。
【0003】
このリン酸カルシウム系の生体用セメントとしては、米国特許明細書第4612053号等に開示されているように、リン酸四カルシウムを主成分とするものが多い。しかし、このセメントは硬化に比較的長時間を要するため、実用上、問題がある。更に、混練後、直ちに擬似体液と接触させると、混練体の内部に水が侵入し、崩壊してしまうとの問題もある。そのため、体液が多量に存在する生体内に補填する場合、混練後、直ちに補填せず、ある程度硬化したものを補填するか、或いは補填部の体液を除去し、止血等をした後、補填するなどの方法が採られている。しかし、ある程度硬化したものは取り扱い難く、作業性に劣り、また、体液の除去、止血等は人手と時間とを要する。
【0004】
これらの問題を解決するため、特開昭59−88351公報、特開昭62−83348号公報等には、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸或いはリン酸等の無機酸の水溶液を混練液として用いることにより、硬化時間を短縮する手法が提案されている。しかし、混練液に酸を添加し、混練したものを生体内に補填した場合、酸による生体刺激が強く、補填部の周囲に炎症反応等を生ずることがある。また、特開平2−77261号公報には、キトサン等を含む水溶液を硬化液として用い、セメントの崩壊を抑制する方法が記載されている。しかし、キトサンを溶解させるためには硬化液のpHを1〜2程度に低くする必要があり、硬化液に酸を添加することが避けられないため、上記と同様、炎症反応を生ずる等の問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するものであり、硬化に要する時間が比較的短く、混練後、直ちに補填し、体液と接触させても混練体が崩壊することのないリン酸カルシウムセメント及びリン酸カルシウムセメント組成物を提供することを目的とする。これらリン酸カルシウムセメント及びリン酸カルシウムセメント組成物では、混練液に酸を添加しpHを低くする必要がないため、生体刺激が抑えられ、炎症反応等の問題を生ずることもない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1発明のリン酸カルシウムセメントは、2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、第8発明のリン酸カルシウムセメント組成物は、2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類と、水とを含むことを特徴とする。更に、第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物は、2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類を含む水溶液からなる混練液とを含むことを特徴とする。尚、この組成物とは、リン酸カルシウム粉末と、多糖類と水とを含み、硬化前の組成物であることを意味する。また、実用上は、第9発明のように、予め多糖類を含有する混練液を調製し、これを粉末と混練する方法が採られる。
【0008】
リン酸カルシウム粉末の上記「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、型式「LA−500」等)により、分散媒として、水、メタノール、エタノール等のリン酸カルシウム粉末を溶解しない溶媒を用いて測定することができる。更に、リン酸カルシウム粉末の上記「タップ密度」は、下記の式(1)によって算出することができる。この式(1)において、Vtapは、リン酸カルシウム粉末を所定の容器に填入し、粉末の体積が一定になるまで繰り返し振動を与えた場合の粉末の体積である。尚、Wは粉末の重量であり、Dは粉末を構成するリン酸カルシウムの真比重である。
タップ密度=[W/(D×Vtap)]×100(%)
【0009】
リン酸カルシウム粉末の平均粒径を「20μm以下」とすることにより、粉末の粒子間の密着性が高くなり、硬化反応が促進される。また、タップ密度を「35%以上」とすることにより、混練時、粉末の粒子間がより緊密に接触した状態となり、硬化に要する時間がさらに短縮される。粉末の平均粒径が20μmを越える場合は、粉末が混練液に溶解し難くなり、硬化に要する時間が長くなる。更に、タップ密度が35%未満の場合は、混練時、粉末の粒子間の接触が不十分となり、硬化反応が促進されず、硬化に要する時間が長くなる。
【0010】
このリン酸カルシウム粉末の平均粒径を、第7発明のように、「15μm以下」、特に1〜10μmとすることにより、粉末の混練液に対する溶解性が十分に高くなり、硬化時間が短縮される。また、粉末のタップ密度を「40%以上」、特に45〜60%とすることによって、混練時、この粉末の粒子間がより接触し易くなり、硬化反応が促進され、硬化時間がさらに短縮される。第8及び第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物においても、リン酸カルシウム粉末の平均粒径及びタップ密度を上記の範囲とすれば、同様の効果が奏されるため好ましい。尚、リン酸カルシウム粉末の平均粒径の下限値は、通常、1μmであり、タップ密度の上限値は、通常、60%である。
【0011】
上記「リン酸カルシウム粉末」は、2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有する。上記「リン酸カルシウム粉末」としては、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、α−リン酸三カルシウム及びβ−リン酸三カルシウム等の粉末を使用することができる。これらの粉末は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、この粉末には、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス等のX線造影剤を配合することができる。更に、硬化時間を短縮するために水酸アパタイト或いはフッ化物等を種結晶として添加することもできる。
【0012】
リン酸カルシウム粉末としては、第3発明のように、「リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウム」の粉末を主成分とするものが好適である。これら2種類の粉末の量比は特に限定されないが、モル比で8/2〜2/8、特に6/4〜4/6、更には等量程度を使用することが好ましい。また、第8及び第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物においても、リン酸カルシウム粉末として、リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウムの粉末を主成分とし、特に、これらを上記のモル比で併用することが好ましい。
【0013】
尚、上記の「主成分」とは、リン酸カルシウム粉末の全量を100重量%とした場合に、上記の2種類の粉末の合計量が60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であることを意味する。これら2種類の粉末を主成分として併用することによって、混練体は、より崩壊し難く、所定の形状が容易に維持される。
【0014】
リン酸四カルシウム粉末の製法については特に限定されず、どのような方法によって製造した粉末も使用することができる。例えば、炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムとの等モル混合物を所定形状に成形した後、1450〜1550℃の温度範囲で焼成し、これを平均粒径が約100μm程度の粉末に整粒したものなどを使用することができる。また、リン酸水素カルシウム粉末としては、リン酸水素カルシウム二水和物或いは無水物として市販されているものをそのまま使用することができる。更に、この市販の二水和物を120℃程度の温度で加熱し、脱水したものを用いることもできるが、これらに特に限定されるものではない。
【0015】
また、上記「多糖類」としては、各種の単糖類がポリグリコシル化し、高分子化したものを用いることができる。多糖類としては、特に、第4、第10及び第11発明のように、デキストラン硫酸塩が好ましい。この「デキストラン硫酸塩」としては、デキストラン硫酸ナトリウム及びデキストラン硫酸カリウムがより好ましい。
【0016】
第1発明のリン酸カルシウムセメントにおいて、デキストラン硫酸塩としては、第5発明のように、その平均粒径が「0.1〜100μm」、特に1〜80μm、更には10〜60μmの範囲のものを使用することが好ましい。この平均粒径が0.1μm未満では、混練体の粘度が低すぎて、所定の形態を付与することができない場合がある。一方、平均粒径が100μmを越える場合は、デキストラン硫酸塩をリン酸カルシウム粉末に均一に分散、含有させることが容易ではなく、体液と接触した場合の混練体の崩壊を十分に抑えることができないことがある。尚、この平均粒径は、リン酸カルシウム粉末の場合と同様の装置、操作によって測定することができる。
【0017】
更に、デキストラン硫酸塩のリン酸カルシウム粉末に対する含有量は、第6発明のように、リン酸カルシウム粉末100重量部に対して「5〜25重量部」、特に、10〜20重量部とすることが好ましい。デキストラン硫酸塩の含有量が5重量部未満では、混練体の粘性が低く、形態付与が容易ではない。また、混練体が体液と接触した場合に、崩壊してしまって、所定の形態が維持されないことがある。一方、25重量部を越える場合は、過剰のデキストラン硫酸塩のために硬化反応が阻害され、硬化に長時間を要し、硬化体を得ることができないこともある。
【0018】
デキストラン硫酸塩は水に溶解し易く、このデキストラン硫酸塩をリン酸カルシウムセメントに含有させた場合は、混練液として使用される水、好ましくは純水に酸を添加しなくても硬化時間を短縮することができる。また、混練後、直ちに体液と接触させても混練体が崩壊することがない。更に、混練時、酸を併用する必要がないため、比較的高いpH域において混練し、硬化させることができ、混練、硬化時のpHが炎症反応を生ずるほどに低くはならない。そのため、硬化過程において補填部周縁が炎症反応等を生ずることがない。また、生成する硬化体が生体組織に悪影響を及ぼすこともない。更に、混練体の粘度が適度なものとなり、操作性に優れ、混練体を容易に所定の形態を有するものとすることができる。
【0019】
第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物において、デキストラン硫酸塩の含有量は、第11発明のように、混練液を100重量部とした場合に、「30〜60重量部」、特に35〜55重量部、更には40〜50重量部とすることが好ましい。デキストラン硫酸塩の含有量が30重量部未満では、混練後、直ちに混練体を体液と接触させた場合に、崩壊してしまって所定の形態が維持されない。一方、60重量部を越える場合は、混練体の粘性が高く、形態付与が容易ではない。尚、第8発明における多糖類と水との量比も、上記と同様の範囲とすることが好ましく、それによって同様の効果を得ることができる。
【0020】
適量のデキストラン硫酸塩等、多糖類を含む組成物、及びこの多糖類を含有する水溶液を混練液とする組成物では、混練時の操作性に優れ、取り扱いが容易である。また、このデキストラン硫酸塩等が溶解した水溶液は、その粘性が相当に高く、リン酸カルシウム粉末の粒子間を接合する作用を有するため、優れた形態付与性を備える混練体を得ることができる。更に、デキストラン硫酸塩は水に容易に溶解し、均質な水溶液となり、この水溶液はpHが5〜8と中性であるため、生体刺激性が弱く、炎症反応を生ずることがない。また、セメント組成物が硬化するまで、リン酸カルシウム粉末の粒子間の接触、接合が維持されるため、混練体を体液に接触させても崩壊し難く、所定の形状を維持したまま補填部に留めることができる。更に、このセメント組成物において用いられる多糖類と水とは、硬化過程において混練体から徐々に放出されるため、硬化反応が妨げられることもない。
【0021】
また、第1発明のリン酸カルシウムセメント、並びに第8及び第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物において、リン酸カルシウム粉末は、硬化後、水酸アパタイトに転化し、形成される硬化体は骨補填材等として十分な強度を有するものであり、且つ生体親和性、生体活性などに優れる。そのため、特に、優れた強度と生体活性とを併せ有する人工骨、人工関節及び人工歯根等を形成する用途において有用である。尚、上記の形態の付与とは、初期形状の付与及び補填後などにおける形状の修正、調整を併せ意味する。
【0022】
混練体の粘度は、第1発明におけるリン酸カルシウムセメント、又は第8及び第9発明におけるリン酸カルシウム粉末と、混練液である水或いは混練液の主成分である水との量比によって調整することもできる。このセメント又は粉末と水との量比は、リン酸カルシウムセメント又はリン酸カルシウム粉末100重量部に対して水を10〜40重量部程度とすることが好ましい。この水の量比は、特に15〜35重量部、更には20〜30重量部とすることがより好ましい。
【0023】
水の量比が低すぎる場合は、混練体の粘度が高くなりすぎて所定の形態を付与することが難しくなる。また、水の量比が高くなりすぎると、混練体の粘度が低くなって取り扱い易くはなるが、混練体が、体液との接触によって崩壊し易くなるため好ましくない。更に、この水の量比を高くして混練体の粘度を適度に下げることにより、骨欠損部或いは骨折部等への注射器による補填が可能となり、それによって患者への負担を軽減することができる。
【0024】
また、第1発明のリン酸カルシウムセメント、並びに第8及び第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物を用いた混練体は、これのみを生体内に補填して人工骨、人工歯根等の用途に用いることができる。また、セメントと水とを混練する際に、骨形成因子、抗ガン剤及び抗生物質等を添加し、薬物徐放のための担体として利用することもできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、 本発明の具体的な実施例を示す。
[1]第1発明のリン酸カルシウムセメントに対応する実施例
実施例1
リン酸四カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル混合物(平均粒径;5.5μm、タップ密度;52%)100gに、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均粒径;50μm、平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)10gを配合し、樹脂ポットによって1時間混合して、リン酸カルシウムセメントを調製した。これをセメントAとする。
【0026】
実施例2
リン酸四カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル混合物(平均粒径;3.2μm、タップ密度;46%)100gに、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均粒径;20μm、平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)20gを配合し、樹脂ポットによって1時間混合して、リン酸カルシウムセメントを調製した。これをセメントBとする。
【0027】
比較例1
リン酸四カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル混合物(平均粒径;2.2μm、タップ密度;34%)100gに、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均粒径;50μm、平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)10gを配合し、樹脂ポットによって1時間混合して、リン酸カルシウムセメントを調製した。これをセメントCとする。
【0028】
比較例2
リン酸四カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル混合物(平均粒径;22μm、タップ密度;55%)100gに、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均粒径;50μm、平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)10gを配合し、樹脂ポットによって1時間混合して、リン酸カルシウムセメントを調製した。これをセメントDとする。
【0029】
実験例1
各1gのセメントA〜Dに対して純水0.25gをそれぞれ添加して混練し、JIS T 6602によって硬化時間を測定した。その結果、セメントAでは12分、セメントBでは15分であった。また、セメントCでは39分、セメントDでは50分であった。このように、本発明のリン酸カルシウムセメントは、有機酸等を含まない水のみによって混練することにより、速やかに硬化する。一方、リン酸カルシウム粉末のタップ密度が第1発明の下限値未満であるセメントCでは、セメントA、Bに比べて硬化に要する時間が2〜3倍であることが分かる。また、リン酸カルシウム粉末の平均粒径が第1発明の上限値を越えているセメントDでは、セメントCの場合に比べて、さらに長い硬化時間を要することが分かる。
【0030】
実験例2
1gのセメントAに、0.23gの純水を添加し、2分間混練した。得られた混練体は適度な粘性を有し、形態付与が容易であった。また、この混練体を内径6mm、深さ5mmのキャビティを有する金型に充填して成形した後、成形体を金型より取り出して疑似体液中に浸漬した。その結果、崩壊を生ずることなく形状はそのまま維持された。更に、成形体を37℃の擬似体液に24時間浸漬して硬化体を得た。この硬化体の構成結晶相をX線回折によって確認したところ、水酸アパタイトとリン酸四カルシウムであることが分かった。
【0031】
実験例3
1gのセメントAに、0.3gの純水を添加し、5分間混練した。得られた混練体は粘度が低く、18ゲージの注射器によって注出することができた。この注出物を37℃の擬似体液に24時間浸漬して硬化体を得た。この硬化体の構成結晶相をX線回折によって確認したところ、水酸アパタイトとリン酸四カルシウムであることが分かった。
【0032】
[2]第8発明のリン酸カルシウムセメント組成物に対応する実施例
(1)リン酸カルシウム粉末の製造
製造例1
平均粒径90μmのリン酸四カルシウム粉末と、平均粒径20μmのリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル量を、ライカイ機によって30分間混合し、平均粒径5.5μm、タップ密度52%のリン酸カルシウム粉末を得た。これを粉末Aとする。
【0033】
製造例2
平均粒径30μmのリン酸四カルシウム粉末と、平均粒径20μmのリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル量を、ライカイ機によって30分間混合し、平均粒径3.2μm、タップ密度46%のリン酸カルシウム粉末を得た。これを粉末Bとする。
【0034】
製造例3
平均粒径5μmのリン酸四カルシウム粉末と、平均粒径20μmのリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル量を、ライカイ機によって30分間混合し、平均粒径2.2μm、タップ密度32%のリン酸カルシウム粉末を得た。これを粉末Cとする。
【0035】
製造例4
平均粒径90μmのリン酸四カルシウム粉末と、平均粒径20μmのリン酸水素カルシウム無水物の粉末との等モル量を、ライカイ機によって10分間混合し、平均粒径22μm、タップ密度60%のリン酸カルシウム粉末を得た。これを粉末Dとする。
尚、実施例1〜2、比較例1〜2及び製造例1〜4におけるリン酸カルシウム粉末のタップ密度は、各粉末10gを、容量25mlのメスシリンダーに投入し、高さ約3cmから100回タッピングした後の体積をVtapとし、前記の式(1)によって算出した。
【0036】
実験例4
各1gのリン酸カルシウム粉末A〜Dに対し、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)の50重量%水溶液からなる混練液0.25gをそれぞれ添加して混練し、JIS T 6602によって硬化時間を測定した。その結果、粉末Aでは8分、粉末Bでは12分であった。また、粉末Cでは36分、粉末Dでは42分であった。
【0037】
このように、第8発明のリン酸カルシウムセメント組成物では、その混練液は有機酸等を含んではいないが、配合されているデキストラン硫酸塩の作用によって速やかに硬化する。一方、リン酸カルシウム粉末のタップ密度が第8発明の下限値未満である粉末Cでは、粉末A、Bに比べて硬化に要する時間が3〜4倍強であることが分かる。また、リン酸カルシウム粉末の平均粒径が第8発明の上限値を越えている粉末Dでは、粉末Cの場合に比べて、さらに長い硬化時間を要することが分かる。
【0038】
実験例5
1gの粉末Aに、上記の混練液0.23gを添加し、2分間混練した。得られた混練体は適度な粘性を有するパテ状のものであり、形態付与が容易であった。また、この混練体を内径6mm、深さ5mmのキャビティを有する金型に充填して成形した後、成形体を金型より取り出して疑似体液中に浸漬した。その結果、崩壊を生ずることなく形状はそのまま維持された。更に、成形体を37℃の擬似体液に24時間浸漬して硬化体を得た。この硬化体の構成結晶相をX線回折によって確認したところ、水酸アパタイトとリン酸四カルシウムであることが分かった。
【0039】
実験例6
1gの粉末Aに、デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5(平均分子量;2000、名糖産業株式会社製)の40重量%水溶液からなる混練液0.3gを添加し、5分間混練した。得られた混練体は粘度が低く、18ゲージの注射器によって注出することができた。この注出物を37℃の擬似体液に24時間浸漬して硬化体を得た。この硬化体の構成結晶相をX線回折によって確認したところ、水酸アパタイトとリン酸四カルシウムであることが分かった。
【0040】
【発明の効果】
第1発明のリン酸カルシウムセメントは、水のみによって比較的短時間のうちに硬化させることができ、混練後、直ちに擬似体液と接触させても崩壊することなく、形状が維持される。また、混練時、適度な粘性を有し、形態付与性に優れる。更に、硬化促進のための有機酸等の添加を必要としないため、混練時及び硬化反応の過程における炎症反応等、生体への悪影響もない。
【0041】
また、第8及び第9発明のリン酸カルシウムセメント組成物は、比較的短時間のうちに硬化させることができ、混練後、直ちに擬似体液と接触させても崩壊することなく、形状が維持される。また、混練時、適度な粘性を有し、形態付与性に優れる。更に、硬化促進のための有機酸等の添加を必要としないため、混練時及び硬化反応の過程における炎症反応等、生体への悪影響もない。
Claims (12)
- 2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類とを含むことを特徴とするリン酸カルシウムセメント。
- 上記リン酸カルシウム化合物が、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、α−リン酸三カルシウム及びβ−リン酸三カルシウムである請求項1記載のリン酸カルシウムセメント。
- 上記リン酸カルシウム粉末の主成分が、リン酸四カルシウム及びリン酸水素カルシウムである請求項1又は2記載のリン酸カルシウムセメント。
- 上記多糖類がデキストラン硫酸塩である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリン酸カルシウムセメント。
- 上記デキストラン硫酸塩の平均粒径が0.1〜100μmである請求項4記載のリン酸カルシウムセメント。
- 上記デキストラン硫酸塩が、上記リン酸カルシウム粉末100重量部に対して5〜25重量部である請求項4又は5記載のリン酸カルシウムセメント。
- 上記リン酸カルシウム粉末の平均粒径が15μm以下であり、且つタップ密度が40%以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のリン酸カルシウムセメント。
- 2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類と、水とを含むことを特徴とするリン酸カルシウムセメント組成物。
- 2種以上のリン酸カルシウム化合物を含有し、平均粒径が20μm以下であり、且つタップ密度が35%以上であるリン酸カルシウム粉末と、多糖類を含有する水溶液からなる混練液とを含むことを特徴とするリン酸カルシウムセメント組成物。
- 上記多糖類がデキストラン硫酸塩である請求項8記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
- 上記多糖類がデキストラン硫酸塩であり、上記混練液を100重量部とした場合に、上記デキストラン硫酸塩が30〜60重量部である請求項9記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
- 上記リン酸カルシウム化合物が、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、α−リン酸三カルシウム及びβ−リン酸三カルシウムである請求項8乃至11のいずれか1項に記載のリン酸カルシウムセメント組成物。
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