JP3964636B2 - 燃料電池の膜・電極接合体搬送装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリム処理以降に膜・電極接合体を位置ずれのない状態で搬送することで、膜・電極接合体積層時の位置ずれを防止する燃料電池の膜・電極接合体搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水の電気分解の逆の原理を利用し、水素と酸素とを反応させて水を得る過程で電気を得ることができる電池である。一般に、水素に燃料ガスを置き換え、酸素に空気や酸化剤ガスを置き換えるので、燃料ガス、空気、酸化剤ガスの用語を使用することが多い。
【0003】
このような燃料電池としては、例えば、特開2000−123848公報「燃料電池」が知られている。
同公報の図1及び図2を基に作成した次図で燃料電池のセルについて説明する。なお、符号は振り直した。
【0004】
図11は燃料電池のセルの断面図であり、セル100は、電解質膜101の両面に、アノード側電極102とカソード側電極103とを貼り合わせ、これらのアノード側電極102及びカソード側電極103を2枚のセパレータ104,105で挟み込み、セパレータ104に、アノード側電極102へ燃料である水素ガスを供給するための複数の流路溝106を形成し、セパレータ105に、カソード103へ酸化剤である酸素ガスを供給するための複数の流路溝107を形成した構造のものであり、このセル100を多数積層することで、所望の電圧を得る。
ここで、111,112は電解質膜101と各セパレータ104,105との間をシールするためのシール材(ガスケット)である。
【0005】
電解質膜101は、高分子化合物からなる高分子電解質膜(PEM:Polymer Electrolyte Membrane)である。この電解質膜101を以下PEM101と記す。
また、PEM101、アノード側電極102及びカソード側電極103は、膜・電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)108を構成するものである。この膜・電極接合体108を以下MEA108と記す。
【0006】
MEA108は、縁を所定の大きさに切断し、この縁切りの後にセパレータと積層するために、縁切りを行うトリムステーションから積層ステーションまで搬送される。
上記公報には、MEA108の搬送方法については記載されていないが、MEA108が膜状であるために、吸着装置で吸着しながら搬送する方法が一般的である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、MEA108の上記搬送を試みたが、図12に示すような課題が発生した。
図12(a)〜(c)はMEAのトリム工程に続く搬送工程を説明する説明図であり、(a)において、載置台121に電極102,103を貼り合わせたPEM101aを載せ、図示せぬ位置決め手段で位置決めした状態で、トリム刃122を取付けたプレス装置123を白抜き矢印のように下降させ、PEM101aを切断する。(切断後のPEM101と区別するために切断前のPEMの符号を便宜上101aとする。)
【0008】
(b)において、PEM101の切断を終了した後、プレス装置123(図(a)参照)とは別体の吸着装置124を白抜き矢印のように下降させ、MEA108を吸着する。
(c)において、吸着装置124で吸着したMEA108を白抜き矢印dのように上昇させ、白抜き矢印eのように次の積層工程に搬送する。
【0009】
上記(a),(b)では、プレス装置123でPEM101aを切断してから吸着装置124で吸着するまでの間に、例えば、MEA108の位置がずれると、位置がずれたまま吸着装置124でMEA108を搬送することになり、積層工程では、MEA108の位置を修正しなければならない。この結果、燃料電池の製造工数が増え、燃料電池の生産性が低下することが考えられる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、燃料電池の膜・電極接合体搬送装置において、トリム処理以降に膜・電極接合体を位置ずれのない状態で搬送することにより、膜・電極接合体積層時の位置ずれを防止することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、トリムステーションで、高分子電解質膜の両面にこれより小面積のカーボン電極を貼り合わせてなる膜・電極接合体の縁切りを行い、この縁切りを行った膜・電極接合体を積層ステーションで積層処理する際に、トリムステーションから積層ステーションへ膜・電極接合体を搬送する燃料電池用膜・電極接合体搬送装置において、この搬送装置は、一方のカーボン電極を吸着するとともに横ずれしないように保持するために、縁切りのためのトリム刃を備えたトリム上型に取付けた吸着保持手段と、この吸着保持手段をトリムステーションから積層ステーションまで移動させる水平移動機構と、吸着保持手段を昇降させる鉛直移動機構とからなる。
【0012】
膜・電極接合体を縁切りするトリム上型に、カーボン電極を吸着保持する吸着保持手段を取付けた構造であるため、膜・電極接合体をトリム時から搬送時まで吸着保持手段で吸着しておけば、膜・電極接合体をトリム時の状態を保ったまま横ずれせずにトリムステーションから積層ステーションまで搬送することができ、積層ステーションで膜・電極接合体をセパレータと積層する際に、膜・電極接合体の積層位置のずれを防止することができる。
従って、膜・電極接合体を積層するときに、膜・電極接合体の位置を修正する必要がなく、搬送工程から積層工程にスムーズに移行することができる。
【0013】
請求項2は、水平移動機構を、レール部と、このレール部を水平移動する移動体と、この移動体の駆動源となる水平駆動用モータとから構成し、移動体にポストを介してアームを取付け、このアームで吸着保持手段を支持し、鉛直移動機構を、アームと、このアームを昇降させるアーム昇降用モータと、ポストとから構成し、水平駆動用モータとアーム昇降用モータとはアーム移動手段を構成することを特徴とする。
【0014】
鉛直移動機構と水平移動機構とを備えたことで、アームの移動が鉛直方向と水平方向との2方向にそれぞれに直線状になって、アームの移動距離が短くなり、搬送時間を短縮することができる。従って、燃料電池の生産性を向上させることができる。
【0015】
更に、移動方向が2方向のために、膜・電極接合体に作用する力の方向を常に一定の方向にすることができ、搬送する膜・電極接合体に衝撃が作用しにくくすることができ、搬送中の膜・電極接合体のずれを防止することができる。
【0016】
請求項3は、水平移動機構が、アームを水平に且つ直線状に移動させることを特徴とする。
水平移動を直線状にしたことで、水平移動を、例えば平面状にした機構に比べて、アーム移動手段を簡素な構造にすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
ここでは、燃料電池の膜・電極接合体搬送装置を説明する前に、搬送の前工程である膜・電極接合体の縁切り工程(即ち、トリム工程)で使用する膜・電極接合体トリム装置について説明する。
図1は本発明に係る燃料電池の膜・電極接合体搬送装置と組合わせる膜・電極接合体トリム装置の断面図であり、トリムステーションとしての膜・電極接合体トリム装置10(以下「MEAトリム装置10」と記す。)は、カーボンペーパーからなるカーボン電極11,12を各面に圧着した高分子電解質膜13a(以下「PEM13a」と記す。後述する切断後のPEM13と区別するために切断前のPEMをこのようにPEM13aとする。)を載せるトリム下型14と、上記のPEM13aの縁を切り取る、即ちトリムを行うトリム刃15を備えたトリム上型16と、カーボン電極12及びPEM13aを吸着・保持するためにトリム上型16に連結した吸着保持手段としての吸着保持装置17と、トリム上型16を下降させるシリンダ装置18とからなる。なお、膜・電極接合体搬送装置については以降、「MEA搬送装置」と記す。
2枚のカーボン電極11,12は、同一のものであるが、便宜上、符号を別にした。
【0018】
トリム下型14は、PEM13aの位置決め部を兼ねる載置部21と、この載置部21を支持する下型支持部22と、PEM13aの周縁部を吸着する下型用吸着部23とからなる。
【0019】
載置部21は、下部支持部22の底部22aに設けた下部受け部材25と、この下部受け部材25の上方に配置することでPEM13aを載せる上部受け部材26とからなり、この上部受け部材26の中央部にカーボン電極11の位置決めを行うための位置決め収納部27を設け、下部受け部材25の上部で且つ位置決め収納部27の下方に樹脂板28を配置したものである。
【0020】
下部受け部材25は、材質をポリウレタン等のフォーム状弾性体とし、上部受け部材26は、材質をPET(ポリエチレンテレフタレート)材等の軟質材としたものである。樹脂板28は、カーボン電極11が下部受け部材25に接触しないようにして、下部受け部材25に金属イオンが付着していた場合に、金属イオンがカーボン電極11に付着しないようにするための部材である。
【0021】
もし、カーボン電極11に金属イオンが付着すると、この金属イオンと電子とが結合し、カーボン電極11に金属が析出する。これにより、析出した金属が水素と酸素との反応を妨げ、燃料電池の性能を低下させることがある。
【0022】
下型用吸着部23は、載置部21に開けた吸着孔31…(…は複数個を示す。以下同様。)と、この吸着孔31…にそれぞれジョイント32…を介して連結させた連結管33…とからなり、これらの連結管33…を図示せぬ吸引装置に接続することで、吸着孔31…から空気を吸引し、PEM13aを吸着するものである。
【0023】
トリム刃15は、平面視略矩形状のものであり、カーボン電極11,12より外側のPEM13aの周縁部を切り落とす部材である。
トリム上型16は、トリム刃15と、このトリム刃15を固定するトリム刃固定部35とからなる。
【0024】
吸着保持装置17は、PEM13aのトリム時にPEM13aを押えて位置決めしたり、PEM13aのトリム中やトリム後の横ずれを防止するために、トリム刃固定部35にロッド36…を介して連結するとともにトリム刃固定部35との間にスプリング37…を介在させて下方に押圧するようにしたものであり、トリム時にPEM13aを押える押え部41と、この押え部41の内側に設けた第1凹部42と、この第1凹部42内に配置した多孔質材からなるパッド43と、このパッド43を介してカーボン電極12を吸着する上型用第1吸着部44と、上記した押え部41の位置でPEM13aを吸着する上型用第2吸着部45とからなる。なお、17a…はロッド36…をガイドするためにトリム刃固定部35に設けたガイド孔、17b…は後述する連結管48,52…を通すための通孔、43aはカーボン電極12を収納するためにパッド43の下部に設けた第2凹部である。
【0025】
パッド43は、多孔質樹脂材料であり、通気性を有するもので、しかも上記したトリム下型14の樹脂板28と同様に、カーボン電極12に金属イオンが付着しないようにするためのものでもある。
上型用第1吸着部44は、第1凹部42の底に開けた吸着孔47と、この吸着孔47にジョイント32を介して連結させた連結管48とからなり、この連結管48を図示せぬ吸引装置に接続することで、第1凹部42内の空気をパッド43及び吸着孔47を通じて吸引し、カーボン電極12を吸着するものである。
【0026】
上型用第2吸着部45は、押え部41に開けた吸着孔51…と、これらの吸着孔51…にそれぞれジョイント32…を介して連結させた連結管52…とからなり、これらの連結管52…を図示せぬ吸引装置に接続することで、吸着孔51…から空気を吸引し、PEM13aを吸着するものである。
【0027】
シリンダ装置18は、シリンダ本体61と、このシリンダ本体61に移動可能に収納した図示せぬピストンと、このピストンに取付けたピストンロッド62と、このピストンロッド62の下端に取付けた押圧部63とからなる。
【0028】
以上に述べたMEAトリム装置10によるMEAのトリム処理を含む燃料電池の製造の要領を次に説明する。
図2は本発明に係る燃料電池の製造の流れを説明するフロー図である。なお、ST××はステップ番号を示す。
ST01…カーボン電極を貼り付けたPEMをトリムステーションのトリム下型に載置する。
ST02…PEMを位置決めする。
ST03…PEMをトリムし、MEAを造る。
【0029】
ST04…MEAを積層ステーションに搬送する。
ST05…セパレータにシール材を塗布する。
ST06…シール材を塗布したセパレータとMEAとを積層し、セルを造る。そして、このセルを複数積層することで所望電圧の燃料電池ができあがる。
上記したST01〜ST06(但し、ST05は省略する。)の各工程を以下で詳述する。
【0030】
図3(a)〜(c)は本発明に係る燃料電池のMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第1作用図であり、(a),(b)は平面図、(c)は(b)のc−c線断面図である。
まず、(a)において、トリム下型14の載置部21にカーボン電極11,12(カーボン電極11はPEM13aの奥側)を貼り付けたPEM13aを載せる。
【0031】
(b)及び(c)において、載置部21の位置決め収納部27の2つの側壁27a,27bにカーボン電極11の二辺を当てて、載置部21に対するカーボン電極11の位置決め、即ち、載置部21に対するPEM13aの位置決めを行う。((b)では説明の都合上、カーボン電極12は図示していない。)
【0032】
図4(a),(b)は本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第2作用図である。
載置部21に対するPEM13aの位置決めを行った後に、図1の状態から、図4(a)において、下型用吸着部23でPEM13aの周縁部の吸着を開始し、この吸着の状態で、シリンダ装置18を作動させ、このシリンダ装置18の押圧部63を白抜き矢印のように下降させて、トリム上型16のトリム刃固定部35を下方へ押し下げる。
これにより、カーボン電極12を第2凹部43a内に収納するとともに、吸着保持装置17の押え部41でスプリング37の弾性力によりPEM13aを押え付け、この後に、トリム刃15でPEM13aの周縁部を切断する。
【0033】
PEM13aの周縁部を切断中及び切断後は、上型用第1吸着部44でカーボン電極12を吸着するとともに、上型用第2吸着部45でPEM13aを吸着する。この後、(b)において、シリンダ装置18の押圧部63を白抜き矢印のように上昇させ、トリム上型16を上昇させる。上型用第1吸着部44及び上型用第2吸着部45では、カーボン電極11,12及びPEM13の搬送を行うために吸着を継続する。
【0034】
PEM13aを切断して不用になった枠状部材13bは、下型用吸着部23での吸着を止めてトリム下型14から取除く。
ここでは、周縁部を切断したPEM13及びカーボン電極11,12の接合体を膜・電極接合体65、即ちMEA65とする。なお、周縁部を切断する前のMEAをMEA65と区別するためにMEA65aとする。
【0035】
図5は本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第3作用図であり、PEM13aを示す平面図において、想像線67で示す位置を図4(a)に示したトリム刃15で切断することを示す。
上記切断位置は、カーボン電極11,12(奥側のカーボン電極11は不図示)の輪郭よりも外側の部分である。
【0036】
図6は本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第4作用図である。
PEM13aの周縁部を切断する場合、トリム刃15の刃先15aに、例えばうねりが生じていても、トリム下型14の上部受け部材26が軟質材であるために、トリム刃15の刃先15aが上部受け部材26に食い込み、刃先15aのうねりの最上部、例えば点AをPEM13aの下面よりも下位にすることができ、刃先15aの全体でPEM13aを切断することができる。
従って、比較的小荷重でもPEM13aを確実に切断することができる。
【0037】
図7(a),(b)は本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第5作用図である。
(a)において、例えば、トリム下型14の載置部21の上面(上部受け部材26の上面)に対して、トリム上型16のトリム刃15の刃先15aが角度θだけ傾き、且つ刃先15aが直線的である場合、即ち載置部21とトリム刃15の刃先15aとの平行度が大きい場合に、(b)に示すように、PEM13aを切断するときに、弾性体である下部受け部材25の圧縮が部分的に大きくなって上部受け部材26及びPEM13aのそれぞれの上面がトリム刃15の刃先15aに倣い、刃先15aがPEM13aの全面に当たるようになる。従って、PEM13aを小荷重で確実に切断することができる。
【0038】
図8は本発明に係るMEA搬送装置及びMEAトリム装置を備えた燃料電池製造装置の正面図であり、燃料電池製造装置70は、トリムステーションとしてのMEAトリム装置71と、MEA搬送装置72と、積層ステーションとしての積層部73と、これらを載せるベース部74とからなる。MEAトリム装置71については、図1に示したMEAトリム装置10と一部の構成が異なるが、基本構造を同一にしたものであり、同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
【0039】
MEAトリム装置71は、トリム下型14と、トリム上型16と、吸着保持手段としての吸着保持装置17と、トリム上型16を下降させるシリンダ装置76とからなる。
シリンダ装置76は、シリンダ本体61と、図示せぬピストンと、ピストンロッド62と、このピストンロッド62の下端に取付けた押圧部77とからなる。
トリム上型16は、吸着保持装置17にロッド36…及びスプリング37…を介して浮かせたものである。
【0040】
MEA搬送装置72は、MEAトリム装置71の位置から積層部73まで移動する水平移動機構としてのスライダ78と、このスライダ78にポスト79を介して取付けたアーム81,81と、これらのアーム81,81を昇降させるアーム昇降用モータ82とからなる。
【0041】
積層部73は、セパレータ91及びMEA65を積層する台である積層台93を備え、この積層台93にセパレータ91を位置決めする図示せぬ位置決め部を設けたものである。
スライダ78は、ベース74に敷いたレール部84と、このレール部84を移動する移動体85と、この移動体85の駆動源となる水平駆動用モータ86とからなる。
【0042】
アーム81は、吸着保持装置17を介してトリム上型16を吊り下げたものである。
アーム昇降用モータ82は、ポスト79の上部後部に取付けたものである。
【0043】
上記したポスト79、アーム81及びアーム昇降用モータ82は、鉛直移動機構87を構成するものである。
また、アーム昇降用モータ82及び水平駆動用モータ86は、アーム移動手段88を構成するものである。
【0044】
図9は本発明に係るMEA搬送装置及びMEAトリム装置を備えた燃料電池製造装置の平面図であり、ポスト79の後部にアーム昇降用モータ82を取付け、レール部84の端部後部に水平駆動用モータ86を取付けたことを示す。
【0045】
アーム昇降用モータ82は、その出力軸に送りねじ及びナットで構成する送り機構等を介してアーム81,81に連結したものである。
水平駆動用モータ86は、その出力軸に送りねじ及びナットで構成する送り機構等を介して移動体85に連結したものである。
【0046】
以上に述べたMEA搬送装置71の作用を次に説明する。
図10は本発明に係るMEA搬送装置の作用を説明する作用図である。
MEAトリム装置71でMEA65a(図8参照)のトリムを終了した後、上型用第1吸着部44でMEA65のカーボン電極12を吸着するとともに、上型用第2吸着部45でPEM13を吸着する、即ち、MEA65を吸着した状態で、アーム昇降用モータ82を作動させ、アーム81,81と共に吸着保持装置17及びトリム上型16を白抜き矢印hのように上昇させる。
【0047】
次に、水平駆動用モータ86を作動させ、スライダ78によって、ポスト79、アーム81,81、吸着保持装置17及びトリム上型16を白抜き矢印j,kのように水平移動させる。
【0048】
そして、吸着保持装置17及びトリム上型16を積層部73の上方まで移動させたら、アーム昇降用モータ82を作動させ、アーム81,81と共に吸着保持装置17及びトリム上型16を白抜き矢印mのように下降させ、積層台93に載せておいたセパレータ91にMEA65を載せ、上型用第1吸着部44及び上型用第2吸着部45によるMEA65の吸着を解除して、セパレータ91にMEA65を積層する。
このようにして、2枚のセパレータ91(一方のセパレータ91は不図示)とMEA65とからセルを造り、セルを複数積層して燃料電池を造る。
【0049】
以上の図8で説明したように、本発明は第1に、MEAトリム装置71で、PEM13aの両面にこれより小面積のカーボン電極11,12を貼り合わせてなるMEA65aの縁切りを行い、この縁切りを行ったMEA65を積層部73で積層処理する際に、MEAトリム装置71から積層部73へMEA65を搬送する燃料電池用MEA搬送装置72において、この搬送装置72は、MEAトリム装置71から積層部73まで移動するスライダ78と、このスライダ78からポスト79を介して延ばしたアーム81,81と、これらのアーム81,81に吸着保持装置17を介して吊り下げるとともに縁切りのためのトリム刃15を備えたトリム上型16と、アーム81,81を移動させるアーム移動手段88と、一方のカーボン電極12を吸着するとともに横ずれしないように保持するためにトリム上型16に取付けた吸着保持装置17とからなる。
【0050】
MEA搬送装置72は、MEA65aを縁切りするトリム上型16に、カーボン電極12を吸着保持する吸着保持装置17を取付けた構造であるため、MEA65a(又はMEA65)をトリム時から搬送時まで吸着保持装置17で吸着しておけば、MEA65をトリム時の状態を保ったまま横ずれせずにトリムステーションであるMEAトリム装置71から積層ステーションである積層部73まで搬送することができ、積層部73でMEA65をセパレータ91と積層する際に、MEA65の積層位置のずれを防止することができる。
【0051】
従って、MEA65を積層するときに、MEA65の位置を修正する必要がなく、搬送工程から積層工程にスムーズに移行することができる。
この結果、燃料電池の生産性を向上させることができる。
【0052】
本発明は第2に、アーム移動手段88に、アーム81を鉛直方向に移動させる鉛直移動機構87と、アーム81を水平に且つ直線状に移動させるスライダ78、即ち水平移動機構78とを備えたことを特徴とする。
【0053】
鉛直移動機構87と水平移動機構78と備えたことで、アーム81の移動が鉛直方向と水平方向との2方向にそれぞれに直線状になって、アーム81の移動距離が短くなり、搬送時間を短縮することができる。従って、燃料電池の生産性を向上させることができる。また、水平移動を直線状にしたことで、水平移動を、例えば平面状に(即ち、二次元的に)した機構に比べて、アーム移動手段88を簡素な構造にすることができる。
【0054】
更に、移動方向が2方向のために、MEA65に作用する力の方向を常に一定の方向にすることができ、搬送するMEA65に衝撃が作用しにくくすることができ、搬送中のMEAの横ずれを防止することができる。
従って、MEA65を積層するときに、MEA65の位置を修正する必要がなく、搬送工程から積層工程にスムーズに移行することができる。
【0055】
また、本発明に係る燃料電池製造装置70は、上記したように、トリムステーションとしてのMEAトリム装置71、MEA搬送装置72及び積層ステーションとしての積層部73を一体的に備えるため、トリム工程、搬送工程及び積層工程を一連の動作でスムーズに実施することができ、燃料電池の製造を効率的に行うことができる。従って、燃料電池の生産性を高め、燃料電池の製造コストを低減することができて、例えば、燃料電池で電動モータを駆動して走行する車両や家庭用発電システムの普及に貢献することができる。
【0056】
尚、本発明では、MEA搬送装置により、MEAをトリムステーションから積層ステーションへ移動するようにしたが、これに限らず、MEAトリム装置のトリム下型と、積層部とを水平移動機構で直線状に移動できるように構成し、MEAのトリム後に吸着保持手段でMEAを吸着しつつ鉛直移動機構で上昇させ、トリム下型をMEAの下方から他へ移動させるとともに積層部をMEAの直下へ移動し、吸着保持手段で吸着していたMEAを鉛直移動機構で下降させることで、セパレータとMEAとを積層する構造にしてもよい。
このように構成すれば、MEAを吸着した吸着保持手段を鉛直方向にのみ移動させるので、移動方向を一方向とすることができ、MEAの位置ずれをより一層防止することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の燃料電池の膜・電極接合体搬送装置は、一方のカーボン電極を吸着するとともに横ずれしないように保持するために、縁切りのためのトリム刃を備えたトリム上型に取付けた吸着保持手段と、この吸着保持手段をトリムステーションから積層ステーションまで移動させる水平移動機構と、吸着保持手段を昇降させる鉛直移動機構とからなるので、膜・電極接合体を縁切りするトリム上型に、カーボン電極を吸着保持する吸着保持手段を取付けた構造であるため、膜・電極接合体をトリム時から搬送時まで吸着保持手段で吸着しておけば、膜・電極接合体をトリム時の状態を保ったまま横ずれせずにトリムステーションから積層ステーションまで搬送することができ、積層ステーションで膜・電極接合体をセパレータと積層する際に、膜・電極接合体の積層位置のずれを防止することができる。
【0058】
従って、膜・電極接合体を積層するときに、膜・電極接合体の位置を修正する必要がなく、搬送工程から積層工程にスムーズに移行することができ、燃料電池の生産性を向上させることができる。
【0059】
請求項2の燃料電池の膜・電極接合体搬送装置は、水平移動機構を、レール部と、このレール部を水平移動する移動体と、この移動体の駆動源となる水平駆動用モータとから構成し、移動体にポストを介してアームを取付け、このアームで吸着保持手段を支持し、鉛直移動機構を、アームと、このアームを昇降させるアーム昇降用モータと、ポストとから構成し、水平駆動用モータとアーム昇降用モータとはアーム移動手段を構成するので、アームの移動が鉛直方向と水平方向との2方向にそれぞれに直線状になって、アームの移動距離が短くなり、搬送時間を短縮することができる。従って、燃料電池の生産性を向上させることができる。
【0060】
更に、移動方向が2方向のために、膜・電極接合体に作用する力の方向を常に一定の方向にすることができ、搬送する膜・電極接合体に衝撃が作用しにくくすることができ、搬送中の膜・電極接合体のずれを防止することができる。
従って、膜・電極接合体を積層するときに、膜・電極接合体の位置を修正する必要がなく、搬送工程から積層工程にスムーズに移行することができる。
【0061】
請求項3の燃料電池の膜・電極接合体搬送装置は、水平移動機構が、アームを水平に且つ直線状に移動させるので、水平移動を直線状にしたことで、水平移動を平面状にした機構に比べて、アーム移動手段を簡素な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る燃料電池の膜・電極接合体搬送装置と組合わせる膜・電極接合体トリム装置の断面図
【図2】 本発明に係る燃料電池の製造の流れを説明するフロー図
【図3】 本発明に係る燃料電池のMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第1作用図
【図4】 本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第2作用図
【図5】 本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第3作用図
【図6】 本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第4作用図
【図7】 本発明に係るMEA搬送装置と組合わせるMEAトリム装置の作用を説明する第5作用図
【図8】 本発明に係るMEA搬送装置及びMEAトリム装置を備えた燃料電池製造装置の正面図
【図9】 本発明に係るMEA搬送装置及びMEAトリム装置を備えた燃料電池製造装置の平面図
【図10】 本発明に係るMEA搬送装置の作用を説明する作用図
【図11】 燃料電池のセルの断面図
【図12】 MEAのトリム工程に続く搬送工程を説明する説明図
【符号の説明】
10,71…トリムステーション(膜・電極接合体トリム装置)、11,12…カーボン電極、13…高分子電解質膜、13a…トリム前の高分子電解質膜、15…トリム刃、16…トリム上型、17…吸着保持手段(吸着保持装置)、65…膜・電極接合体、65a…トリム前の膜・電極接合体、72…膜・電極接合体搬送装置、73…積層ステーション(積層部)、78…水平移動機構(スライダ)、79…ポスト、81…アーム、82…アーム昇降用モータ、84…レール部、85…移動体、86…水平駆動用モータ、87…鉛直移動機構、88…アーム移動手段。
Claims (3)
- トリムステーションで、高分子電解質膜の両面にこれより小面積のカーボン電極を貼り合わせてなる膜・電極接合体の縁切りを行い、この縁切りを行った膜・電極接合体を積層ステーションで積層処理する際に、トリムステーションから積層ステーションへ膜・電極接合体を搬送する燃料電池用膜・電極接合体搬送装置において、
この搬送装置は、一方のカーボン電極を吸着するとともに横ずれしないように保持するために、前記縁切りのためのトリム刃を備えたトリム上型に取付けた吸着保持手段と、この吸着保持手段を前記トリムステーションから積層ステーションまで移動させる水平移動機構と、前記吸着保持手段を昇降させる鉛直移動機構とからなる燃料電池の膜・電極接合体搬送装置。 - 前記水平移動機構は、レール部と、このレール部を水平移動する移動体と、この移動体の駆動源となる水平駆動用モータとからなり、前記移動体にポストを介してアームが取付けられ、このアームで前記吸着保持手段が支持され、
前記鉛直移動機構は、前記アームと、このアームを昇降させるアーム昇降用モータと、前記ポストとからなり、
前記水平駆動用モータと前記アーム昇降用モータとはアーム移動手段を構成することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の膜・電極接合体搬送装置。 - 前記水平移動機構は、前記アームを水平に且つ直線状に移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池の膜・電極接合体搬送装置。
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