JP3963816B2 - 屋根板支持具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、折板と称される金属製の屋根板を支持して屋根を形成するための屋根板支持具に関し、より詳しくは、断熱機能を有する屋根板支持具に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋根板支持具は、H鋼やC型鋼、既設の屋根、下葺屋根等の下地材の上に固定してから、屋根板を固定(支持)する。そして、断熱性を持たせるときには、支持した屋根板の熱が下地材に伝わらないように、上下方向での熱伝導を遮断する断熱部を有した屋根板支持具を使用する。
【0003】
この断熱部は合成樹脂で形成しており、その成形の自由度の高さゆえに、様々に形成されている。
【0004】
例えば、下地材に固定する横方向2分割のサドルで構成された支持具がある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この支持具ではそのものの上部、すなわちサドルの上部に、屋根板を固定する屋根板支持金具を保持した構成である。上記サドルはすべて合成樹脂製であり、合成樹脂の塊で屋根板を支持することになる。
【0006】
このように構成した支持具では、充分な強度が得にくい上に、合成樹脂を多く使用するので、資源の有効利用等の点で難点がある。
【0007】
また上記支持具は、固定した金属製の屋根板が、温度変化により伸縮するときに生じる歪を吸収するために、屋根板を支持する支持部を屋根板の伸縮方向に摺動可能に構成したもので、上記サドルの上部に逆T字形溝を形成して、この逆T字形溝に、屋根板を固定する屋根板支持金具を摺動自在に支持している。
【0008】
しかし、上述のように上記サドルは、合成樹脂の塊であるので、火事になれば全てが焼失してしまい、屋根が飛んでしまうことになる。
【0009】
そこで、下地材の上に固定する下部材上に、屋根板係止用の係止部材を有した上部材を屋根板の長さ方向、すなわち前後方向に摺動可能に載置し、上部材と下部材の相互間に、合成樹脂製の断熱部材を組み込んだ構成のものを案出した(特許文献2参照)。この屋根板支持具によれば、上述のような問題点は解決できるが、この場合も合成樹脂特有の成形性のよさに依存しがちであり、強度や美感の点から、比較的大きな形の断熱部材を使用する傾向があった。
【0010】
このため、断熱機能を果たすための材料、すなわち合成樹脂や合成ゴムの使用量を極力抑えることができるとともに、充分な強度も得られるようにする屋根板支持具をさらに案出した(参考文献3参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−328869号公報
【特許文献2】
特許第3019993号公報
【特許文献3】
特願2002−111576号
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上述のように合成樹脂等の使用量を少なくしながらも高い断熱性を得られるようにすることを主たる課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そのための手段は、下地材の上に固定する固定金具と、該固定金具に一体的に取り付けられて上下方向での熱伝導を遮断する断熱部材と、該断熱部材上に取り付けられ、屋根板を支持する上金具とを有した屋根板支持具であって、上記固定金具は、左右一対の挟持部材を用いて構成するとともに、これら挟持部材には、垂直に立ち上がる垂直片と、該垂直片の上端から左右方向の外方に延びる受け片とを設け、上記断熱部材は、左右に2分割した断熱部材担体で構成し、これら断熱部材担体の上部には、上記受け片と同様に外方へ張り出す張り出し部を形成するとともに、これら断熱部材担体の対向面には、相互に組み合わせたときに上記垂直片を収める収容凹部と、該収容凹部の上側であって上記張り出し部対応位置に、上記受け片を差し込む差込溝を形成し、上記上金具の下部に、上記張り出し部に係合して上下方向での分離を不可にする係合部を形成するとともに、上記張り出し部の上下両縁部に、上記上金具を取り付けた状態で断熱部材担体の対向面における上端側を 中心にしての回動を許容する曲面部を形成した屋根板支持具であることを特徴とする。
【0013】
すなわち、左右2分割に形成した断熱部材は、固定金具の垂直片を収容凹部に収め、また受け片を差込溝に差し込んだ状態で固定金具に対して一体的に取り付けられる。このため固定金具の上部を断熱部材で包み込むことになり、コンパクトにまとめられるとともに両者の一体性が高まる。また、固定金具の上部を断熱部材で包み込むことにより、固定金具と上金具との間には必ず断熱部材が介在する構造とすることができる。さらに、断熱部材の張り出し部は、固定金具の受け片を芯として補強される。
【0014】
また、前記上金具の下部に、前記張り出し部に係合して上下方向での分離を不可にする係合部を形成しているので、断熱部材の張り出し部には固定金具の受け片が存在していることになる。このため、係合部は上記受け片に対して断熱部材を介して噛合することになり、正圧にも負圧にも高い強度を発揮できるとともに、万が一火災で断熱部材が焼失しても上金具が飛んでしまうことを防止できる。
【0015】
さらに、前記張り出し部の上下両縁部に、前記上金具を取り付けた状態で断熱部材担体の対向面における上端側を中心にしての回動を許容する曲面部を形成しているので、上金具を取り付けた状態でも断熱部材担体同士を相対回動して下端部を開けば、曲面部が係合部の内面を摺動してその回動を許容する。このため、固定金具が下地材に対して挟持固定する構造であっても、固定金具を開くことができ、容易に取り付けることが可能となる。なお、上金具を取り付けた状態は、上金具が左右一対の金具からなりボルトナットで固定する構造である場合、ボルトを締めた時も緩めた時もいずれも含む。
【0016】
より好ましくは、前記差込溝を袋状に形成するとよい。差込溝の差込口を除く全ての部分が閉塞された袋状にすることで、固定金具と上金具との間を断熱部材で全て遮断することができる。
【0017】
また、前記対向面相互間に、上記回動を許容しながらも上下方向での位置ずれを防止すべく相互に嵌合対応する形状の凸部と凹部を形成するとよい。凸部と凹部は一方の断熱部材担体に双方を形成するも、一方の断熱部材担体には凸部のみを、他方の断熱部材担体には凹部のみを形成するもよい。
【0018】
凸部と凹部が相互に嵌合し、断熱部材担体同士の上下方向でのずれを阻止するので、断熱部材の一体性が高まるとともに、外力に対して高い強度を有する。
【0019】
さらに、係合部は断熱部材に対して相対移動不可に固定的に取り付けるもよいが、前記係合部を、断熱部材よりも前後方向に長く形成するとともに、前記張り出し部を、上記係合部が前後方向に沿って摺動するための摺動部に設定するとよい。係合部が摺動部上を摺動するので、上金具が支持した屋根板の伸縮に伴って摺動することかでき、屋根板の伸縮による歪を吸収することができる。
【0020】
別の手段は、前記屋根板支持具を用いる屋根構造であることを特徴とする。
【0021】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、固定金具と断熱部材との一体的な取り付け部分の構造をコンパクトにまとめることができ、合成樹脂等の使用量を抑えることができ、資源等の有効利用に資するとともに、万が一火災で燃えても有害ガスの発生を抑えることができて環境保全にも資する。
【0022】
また、固定金具の受け片を断熱部材の張り出し部内の差込溝に差し込んだ状態で一体化するので、高い一体性が得られ、強度を向上できるとともに、上金具との干渉を防止でき、高い断熱性を得ることができる。特に差込溝を袋状に形成することにより、負圧に対しても充分に高い強度を得られるうえに、受け片を全て覆ってしまうので、上金具との干渉を防止でき、高い断熱性を得ることができる。
【0023】
さらに、上金具と断熱部材との取り付けを、上金具の下部に形成した係合部の張り出し部に対する係合で行うので、断熱部材を介して固定金具と上金具とが噛み合った状態になり、合成樹脂等からなる断熱部材のみに頼らない構造となる。すなわち、荷重を断熱部材のみではなく、上金具と固定金具でも支持するとともに、万が一火災で断熱部材が焼失しても上金具と固定金具とが分離しない状態を得られる。強度を高められる上に、安全性も得られる。
【0024】
しかも、上金具に係合部を有した構造の場合、断熱部材の張り出し部の上下両縁部に曲面部を形成しているので、上金具を取り付けた状態でも断熱部材担体を回動して下部を開くことができ、固定金具が左右一対の挟持部材からなるものであっても構成部材がばらばらにならずに、容易な取り付けをすることができる。
【0025】
また上記回動を許容しながらも上下方向での位置ずれを防止する凸部と凹部を形成すると、断熱部材担体同士の一体性が高まり、強度が高く、また取り付け作業を容易にすることができる。
【0026】
さらにまた、係合部を断熱部材よりも長く形成して、張り出し部を係合部が摺動する摺動部に設定すると、屋根板の熱による収縮に起因する歪を吸収して、音なり防止が行える屋根板支持具とすることができる。
【0027】
このような屋根板支持具を用いる屋根構造によれば、上述のように合成樹脂等の使用量を少なくして資源や環境の面から有用である上に、強度、断熱性能に優れた良好な屋根を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、屋根板支持具1(支持具)の斜視図であり、この支持具1は、図2に示したように、下葺屋根2の上に上葺屋根3を形成して、断熱・防音性を有した屋根4を得るのに使用するものである。そしてこの支持具1は、下地材としての下葺屋根2に固定する固定金具5の上に、上下方向での熱伝導を遮断する断熱部材6を一体的に取り付け、この断熱部材6の上に、屋根板3aを支持して前後方向に摺動する上金具7を取り付けて構成している。
【0029】
固定金具5は、図3、図4にも示したように、左右一対の金属製の第1挟持部材8および第2挟持部材9と、これらの間に挟まる補助挟持部材10とからなる。これら第1挟持部材8、第2挟持部材9、および補助挟持部材10は、下葺屋根2の馳締部2aを挟み込んで締め付けることにより、下葺屋根2に固定するものである。
【0030】
すなわち、第1挟持部材8は、その下端に、略水平に延びる接地片8aを設け、この接地片8aの内側縁から垂直に立ち上がる立ち上がり部8bを形成している。第2挟持部材9も下端に、略水平に延びる接地片9aを設け、この場合には接地片9aの内側縁から垂直に立ち上がる立ち上がり部9bを逆L字形に形成して、内側に上記補助挟持部材10を収めるぬすみ部9cを形成している。補助挟持部材10は、上記下葺屋根2の馳締部2aに外側から嵌合対応する三角形の挟圧部10aを有している。
【0031】
そして、上記第1挟持部材8と第2挟持部材9の立ち上がり部8b,9bより上には、垂直に立ち上がる垂直片8d,9dを形成するとともに、該垂直片8d,9dの上端からは、外側に向けて左右方向水平に延びる受け片8e,9eを形成している。上記補助挟持部材10の場合には、垂直片10dのみを形成して、これら3つの部材8,9,10の垂直片8d,9d,10dには、締結のためのボルト11を通す挿通孔8f,9f,10fを形成している。なお、垂直片8d,9d,10dと受け片8e,9eは、その下側部分よりも幅狭の同一幅に形成する。
【0032】
上記断熱部材6は合成樹脂で形成され、正面視T字形をなし、上記固定金具5の垂直片8d,9d,10dと受け片8e,9eを包み込む形である。すなわち、前後方向の幅は、垂直片8d,9d,10dと受け片8e,9eのそれよりも断熱に必要なだけ幅広とした寸法に設定している。そしてこの断熱部材6は、T字を左右に2分割した2つの断熱部材担体6aで構成し、これら断熱部材担体6aは、同一の形状である。
【0033】
すなわち、上部には上記受け片8e,9eと同様に外方へ張り出す張り出し部12を形成するとともに、内側面の対向面の外周部位に、相互に当接する当接面13を形成し、該当接面13の内側に、当接面13同士を当接する組み合わせ状態において上記固定金具5の垂直片8d,9d,10dを収める深さの収容凹部14と、該収容凹部14の上側であって上記張り出し部12対応位置に、上記受け片8e,9eを差し込む差込溝15を形成している(図5参照)。この差込溝15は、張り出し部12の厚み(上下)方向の中間部に形成し、差込溝15の差込口を除く他の部分がすべて閉塞された袋状である。
【0034】
また、上記当接面13のうちの上端部には、左右に一つずつ、相互に嵌合対応する形状の凸部16と凹部17を形成している。凹部17は、直方体状の穴で、凸部16は、その凹部17に嵌合する直方体形状の先端部下側に円弧状の湾曲面16aを形成した形状で、凸部16を凹部17に差し込んだ状態での回動を許容する。この回動は対向面における上端側を中心としての回動である。換言すれば、下側を開く回動である。凸部16の上面には、凹部17に対してカチッと嵌まった状態を保持するために凸部16よりも若干幅広の節度部16bを形成している。
【0035】
また、この断熱部材担体6aでは、張り出し部12の上下両側縁に、円弧状の曲面部18を形成して、上金具7を取り付けた状態でも断熱部材担体6aの対向面の上端側を中心にしての回動を許容可能にしている。
【0036】
さらに、各断熱部材担体6aの垂直部分19の外側面には、肉厚を出すために板状の突出部20を形成して、外側から順に角孔20aと丸孔20bを順に形成している。角孔20aは、上記ボルト11の根元の根角部11aを収める。
【0037】
この断熱部材6と上記固定金具5との組み付けは、図4に示したように第1挟持部材8と補助挟持部材10と第2挟持部材9とを順に並べたうえで、断熱部材担体6aの差込溝15に第1挟持部材8と第2挟持部際9の受け片を8e,9e差し込んで、断熱部材担体6aの凸部16と凹部17を相互に嵌合する。そして、ボルト11を挿通するとともに、ナット21を螺合する。
【0038】
上記上金具7は、左右一対の上金具担体22,22で構成し、この上金具担体22はその下部に、上記断熱部材6の張り出し部12に左右から摺動可能に係合する断面コ字形の係合部23を有している。すなわち、上記張り出し部12が特許請求の範囲における摺動部に相当する。
【0039】
上記係合部23は、左右方向内側に向けて開口しているもので、上記固定金具5の第1挟持部材8および第2挟持部材9の受け片8e,9eと、上記断熱部材6を介して上下方向で噛み合う。
【0040】
上述のように係合部23はコ字形であるので、断熱部材6の曲面部18は係合部23と図6に示したような関係になる大きさであればよい。具体的には、断熱部材担体6aの幅が約40〜30mm程度で、張り出し部の厚みが15〜23mm程度である場合、曲面部18の半径は4〜7mmほどであればよい。
【0041】
上記上金具担体22は、屋根板3aを係止するための吊り子24(図2参照)を挟んで保持するように形成しており、吊子24を挟んだときに、上金具7が前後方向に摺動できるように、係合部23における上側の接地片23aの幅を設定している。
【0042】
この接地片23aからは、吊子24を挟む挟持片25を立設し、挟持片25の上端からは、屋根板3aを受ける屋根板受け片26を外方に向けて折曲して形成している。上記挟持片25は、吊子24を固定するために締め付ける部位であり、ボルト27による締結を可能とするため、挿通孔28,29を形成している。
【0043】
この例では、吊子24に角馳タイプのものを使用しているので、施工に際しては屋根板3aを係止した吊子24を差し込んだ上でボルト27を締める必要がある。しかし、ナットを保持する充分なスペースを確保できないので、一方の上金具担体22の挿通孔29は、バーリングで形成して、内周面にネジを形成している。
【0044】
また、挟持片25の形状は、末広がり状に形成している。このように、締結を行う部分を、末広がり状に形成して幅広に設定すると、締め付け強度を高くすることができる。すなわち、挟持片25の下側が開くことを防止して、張り出し部12に対しての取り付け状態を強力に維持できる。
【0045】
さらに、係合部23の前後方向の長さは、前後方向への摺動距離の必要性に応じ、張り出し部12の長さを考慮して適宜設定する。また、係合部23の前後方向の端部には、下へ折り曲がるストッパ30を形成し、摺動によって上金具7が断熱部材6から脱落することを阻止している。
【0046】
このように構成した支持具1では、断熱部材6と固定金具5を一体化するボルト11ナット21を締め付けて、下葺屋根2の上に固定する。この固定は、屋根板3aを係止する吊子24が角馳タイプであるので、屋根板3aの係止に当たっては結局上金具7のボルト27を外すことにはなるが、図7に示したように上金具7を取り付けた状態でも、ボルト11ナット21を緩めて固定金具5の第1挟持部材8と第2挟持部材9を開けば、下葺屋根2に対して容易に固定できる。断熱部材6に曲面部18を形成したため、断熱部材6が上金具7内で回動可能だからである。
【0047】
そして固定後は、上金具7に吊子24を保持しこの吊子27を利用して、屋根板3aを順次固定し、上葺屋根3を形成する。吊子24が角馳タイプであるので、施工方向前段の屋根板3aを置いた後、一方の上金具担体22の屋根板受け片26でその屋根板3aを受けて、吊子24を屋根板3aに係止しながら吊子24を挟み込んでボルト27で締め付けて上金具7に取り付ける。
【0048】
このとき上金具7の断熱部材6上での位置を、上金具7が前後に等距離摺動できるように設定する。施工時の気温、日差し等によっては、一方に偏らせる。例えば上金具に予め適宜の目印を形成しておけば、その位置設定は容易に行える。
【0049】
この状態で、上葺屋根3に温度変化が起こって伸縮すると、上金具7は、吊子24を介して上葺屋根3と一体であるので、屋根板3aの伸縮に伴って、断熱部材6上を摺動する(図8参照)。この摺動により、屋根板3aに溜まる歪を吸収できるので、音鳴りを防止できる。
【0050】
しかも、固定金具5と断熱部材6との一体的な取り付け部分を、固定金具5の上部を断熱部材6で包み込むコンパクトな構造にまとめているので、合成樹脂の使用量を抑えることができ、資源等の有効利用に資するとともに、万が一火災で燃えても有害ガスの発生を抑えることができて環境保全にも資する。
【0051】
また、固定金具5の受け片8e,9eを、断熱部材6の張り出し部12内に袋状に形成した差込溝15に対して差し込んだ状態で一体化するので、高い一体性が得られ、特に負圧に対しても強度を得られる。また、上金具7との干渉を防止でき、高い断熱性を得ることができる。
【0052】
さらに、上金具7と断熱部材6との取り付けを、上金具7の下部に形成した係合部23の張り出し部12に対する係合で行うので、断熱部材6を介して固定金具5と上金具7とが噛み合った状態になる。このため、合成樹脂からなる断熱部材6のみに頼らない構造となり、荷重を断熱部材6のみではなく、上金具7と固定金具5でも支持するとともに、万が一火災で断熱部材が焼失しても上金具7と固定金具5とが分離しない状態を得られる。強度を高められる上に、安全性も得られる。
【0053】
また上金具7を取り付けた状態でも断熱部材担体6aを回動して下部を開くことができるので、固定金具5が左右から挟持して締め付ける構造であっても、構成部材がばらばらにならずに、容易な取り付けをすることができる。
【0054】
さらにまた断熱部材担体6aには、上記回動を許容しながらも上下方向での位置ずれを防止する凸部16と凹部17を形成しているので、断熱部材担体6a同士の一体性が高く、強度が高い。
【0055】
以下に、若干の他の例を説明する。なお、上述と同一の構成については同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0056】
図9、図10は、固定金具5の第1挟持部材8および第2挟持部材9における垂直片8d,9dの下部に末広がり状の立ち上がり片31を形成して、固定強度の向上と意匠感の多様化を図った例である。すなわち、図9の支持具1は、第1挟持部材8と第2挟持部材9の垂直片8d,9dの外側に、断熱部材担体6aの当接面13の幅に対応する間隔を隔てて立ち上がり片31を形成した例である。
【0057】
図10の支持具は、立ち上がり片31を、断熱部材担体6aの当接面13の幅に対応する間隔を隔てずに連設した例で、立ち上がり片31の一部を収容する分、断熱部材担体6aの下端部には、ぬすみ部32を形成している。
【0058】
図11は、吊子33に丸馳タイプのものを使用する支持具1の例である。すなわち、固定金具5は、左右一対の金属製の挟持部材34からなる。これら挟持部材34は、下端部には、略水平に延びる接地片34aを設け、この接地片34aの左右方向内側縁から上へ、左右方向外方に略半円形に膨出するように延設して、ぬすみ部34bを形成し、該ぬすみ部34bの上端から、垂直に立ち上がる挟持片3cを延設している。これより上は、上述の構成と同一である。
【0059】
丸馳タイプの吊子33の場合は、角馳タイプの吊子24の場合と異なり、屋根板3aの固定に際していちいち吊子33を外す必要がないので、ボルト27ナット35で予め固定しておく。予め固定するので、締結具としてはボルト27以外にリベット等を用いるもよい。また締結具36による締結は、上述のように前後方向の中間部のほかに、図11に仮想線で示したように、前後両端部位置など、複数箇所に行うもよい。
【0060】
固定に際しては、挟持部材34の下部を持って開けば、前述の如く断熱部材担体6aが上金具7の係止部23内で回動し、図12に示したように固定金具5の下が開くので、容易に固定作業が行える。
【0061】
図13は、上金具7に他の構成を採用した支持具1を示す。この支持具1の上金具7は、左右一対の上金具担体で構成するも、これらの間に挟持しないで吊子24の取り付けを行うように構成している。
【0062】
すなわち図14にも示したように、係合部23と垂直片25のみからなる一方(図面左側)の第1上金具担体37、および、係合部23と垂直片25とを有するとともに、垂直片の上端から上述例の構成とは反対の方向(図面左側)に向けて水平に延びる屋根板受け片26を有する第2上金具担体38で上金具7を構成する。
【0063】
そして吊子24は、その下部を上記第2上金具担体38の側面と上面の一部に沿うL字形に形成している。
【0064】
また上金具7の垂直片25に左右方向の一方(図面左側)から挿通したボルト39を用いて締結するため、上記吊子24の側面には、補助金具40を当てる。補助金具40は、逆L字形で、上端に屋根板3aを受ける屋根板受け片40aを有している。
【0065】
上金具7は、上記ボルト39からなる締結具36で、断熱部材6に対して予め一体化しておく。
【0066】
すなわち、この構成の支持具1によれば、吊子24を外しても一体性が保てるので、上金具7がバラバラになることなく、取り付け作業がしやすい。
【0067】
吊子24の取り付けに際しては、上記ボルト39をいちいち外す必要はないので、上記ボルト39に代えて、図15に示したように頭部をカシメ止めしたボルト41を用いると、作業性はより一そう向上する。
【0068】
図16は、吊子24の止め方の他の例を示し、この例では、左右方向ではなく下から上へ向けて立設したボルト41で吊子24を固定する。すなわち、第2上金具担体38の係合部23の上面に、上へ盛り上がる膨出部42を形成し、ボルト41の頭部をカシメ止めする。吊子24は、図13の例の吊子24よりも下の片を横に長く形成し、中央部に、上記膨出部42に嵌合対応可能な被嵌部43を形成し、上面の中央部には、上記ボルト41挿通用の貫通孔43aを形成している。
【0069】
図中44は補助板で、長方形板状の中間部に貫通孔44aを形成し、上記吊子24の水平に延びる下の片に上から当てたときに、下面が吊子24の上面に圧接可能なように、両端部より盛り上がる隆起部44bを中間部に形成している。
【0070】
図13から図17においては角馳タイプの吊子24を例示したが、丸馳タイプの吊子24を用いるもよい。またこの場合には、ボルト39,41ではなくリベットで固定するもよい。
【0071】
また、図示はしないが、上金具7は、吊子のみで構成するもよく、この場合には、断熱部材6の張り出し部12部分の上部に、固定金具5とは非接触の状態にして取り付ければよい。取り付けは、正面視逆T字形やレ字形等の溝を形成して、この溝に吊子の下部を取り付ければよい。前後方向に摺動可能に取り付けるも、摺動不可に取り付けるもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 屋根板支持具の斜視図。
【図2】 屋根の構造図。
【図3】 屋根板支持具の分解斜視図。
【図4】 固定金具と断熱部材の分解斜視図。
【図5】 断熱部材担体の側面図。
【図6】 屋根板支持具の断面図。
【図7】 作用状態の断面図。
【図8】 作用状態の側面図。
【図9】 他の例に係る屋根板支持具の側面図。
【図10】 他の例に係る屋根板支持具の側面図。
【図11】 他の例に係る屋根板支持具の斜視図。
【図12】 他の例に係る屋根板支持具の作用状態の断面図。
【図13】 他の例に係る屋根板支持具の斜視図。
【図14】 他の例に係る屋根板支持具を用いた屋根の構造図。
【図15】 他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図16】 他の例に係る屋根板支持具の斜視図。
【図17】 他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【符号の説明】
1…屋根板支持具
2…下葺屋根
3a…屋根板
4…屋根
5…固定金具
6…断熱部材
6a…断熱部材担体
7…上金具
8…第1挟持部材
9…第2挟持部材
8d,9d…垂直片
8e,9e…受け片
12…張り出し部
14…収容凹部
15…差込溝
16…凸部
17…凹部
18…曲面部
23…係合部
34…挟持部材
Claims (5)
- 下地材の上に固定する固定金具と、該固定金具に一体的に取り付けられて上下方向での熱伝導を遮断する断熱部材と、該断熱部材上に取り付けられ、屋根板を支持する上金具とを有した屋根板支持具であって、
上記固定金具は、左右一対の挟持部材を用いて構成するとともに、これら挟持部材には、垂直に立ち上がる垂直片と、該垂直片の上端から左右方向の外方に延びる受け片とを設け、
上記断熱部材は、左右に2分割した断熱部材担体で構成し、これら断熱部材担体の上部には、上記受け片と同様に外方へ張り出す張り出し部を形成するとともに、
これら断熱部材担体の対向面には、相互に組み合わせたときに上記垂直片を収める収容凹部と、該収容凹部の上側であって上記張り出し部対応位置に、上記受け片を差し込む差込溝を形成し、
上記上金具の下部に、上記張り出し部に係合して上下方向での分離を不可にする係合部を形成するとともに、
上記張り出し部の上下両縁部に、上記上金具を取り付けた状態で断熱部材担体の対向面における上端側を中心にしての回動を許容する曲面部を形成した
屋根板支持具。 - 前記差込溝を袋状に形成した
請求項1に記載の屋根板支持具。 - 前記対向面相互間に、上記回動を許容しながらも上下方向での位置ずれを防止すべく相互に嵌合対応する形状の凸部と凹部を形成した
請求項1または請求項2に記載の屋根板支持具。 - 前記係合部を、断熱部材よりも前後方向に長く形成するとともに、
前記張り出し部を、上記係合部が前後方向に沿って摺動するための摺動部に設定した
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の屋根板支持具。 - 前記請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の屋根板支持具を用いる
屋根構造。
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