JP3961748B2 - 振動減衰装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の地震等による振動エネルギを減衰させる目的で使用される振動減衰装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
地震対策のために、新築ビルやマンション、タワー等には様々な耐震構造が採用されている。また、既存の建築物にも耐震構造を施すための追加工事が広く進められている。地震の際に建築物が大きく横揺れをし、共振等によりこの横揺れが長く続くと、家具が倒れたり建築物そのものが倒壊する危険性が高まる。そこで、特にこの横揺れを緩和し、そのエネルギを吸収するために免震装置と振動減衰装置が使用される。
【0003】
図2は、従来一般の免震装置と振動減衰装置の動作を説明する図で、(a)は免震装置のない建築物の概略側面図、(b)は免震装置を設けた建築物の概略側面図である。
同図(a)に示すように、通常の建築物1の柱2の下端は基礎3に固定されている。ここで、地震によって基礎3が地盤と共に横揺れすると、建築物1はその上部ほど大きく横揺れする。揺れの程度は図の左側に示した応答加速度により理解できる。このために、建築物1の上階ほど揺れが激しく、またこうして柱2に応力が加わることで柱2の折損等が発生する。
【0004】
図2(b)に示す例では、建築物1は基礎3の上に免震アイソレータ4を介して支持されている。この免震アイソレータ4は、建築物1の荷重を支持し、かつ、水平方向に自由に変形するように構成されている。従って、基礎3が地震によって横揺れしても、その横揺れは免震アイソレータ4によって緩和される。建築物1は丁度、免震アイソレータ4上で柔らかく支持されて浮いた状態になり、建築物1には図2(b)の左側に示したような応力加速度が加わるのみで、柱2に大きな曲げ応力が加わらない。
【0005】
建築物1が柔らかく支持されていると、建築物1に横揺れが発生した後、その横揺れがなかなか治まらないおそれがある。そこで、この横揺れによる振動エネルギを吸収するために振動減衰装置5が使用される。この振動減衰装置5には、例えば免震アイソレータ4と別置きに設置される、減衰液に浸された抵抗部材からなるもの、あるいは免震アイソレータと一体に構成されたもので、減衰を高める材料を配合した高減衰ゴムブロックや積層ゴム内に鉛プラグを圧入したものも使用される。いずれの振動減衰装置5も、アイソレータ4と共に基礎3上で建築物1を支持し、基礎3上で建築物1が横揺れしたときに屈伸して、その振動エネルギを吸収するものである。
【0006】
図3は、免震アイソレータの機能を説明する図で、(a)は免震アイソレータの斜視図、(b)はその水平変位と水平荷重との関係を示すグラフ、(c)は振動減衰装置の水平変位と水平荷重との関係を示すグラフである。
図3(a)に示すように、免震アイソレータ4は、上板6と下板8との間に積層ゴム層7を挟んだ構造をしている。この積層ゴム層7は、垂直方向の荷重に対する剛性が比較的強く、水平方向には柔らかく変形する特性を持つ。そして、同図(b)に示すように、免震アイソレータ4は水平荷重に対してほぼ弾性変形をする。一方、振動減衰装置は、同図(c)に示すようにヒステリシスを持つように変形して、屈伸により振動エネルギを吸収する機能を持つ。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
新築建築物ばかりでなく、既存の建築物にも、地震対策を施す工事が進められている。耐震構造の新築建築物を設計する場合には、上記のような免震アイソレータや振動減衰装置を取り付けるために、基礎と建築物の床との間に予め所定の空間を設けるようにしている。既存の建築物の場合には、その柱を切断して免震アイソレータを挟み込む工事が行われる。ところが、既存の建築物の場合、免震アイソレータに加えて、いくつもの振動減衰装置を挟み込むためのスペースを確保するのは非常に難しい。
【0008】
また、新築建築物も既存の建築物も、十分な振動減衰効果を得るには、多数の振動減衰装置を設置することが好ましいが、土地の有効利用を考慮すると、免震アイソレータを挟み込んだ場所以外の空間は、できるだけ、倉庫や駐車場等として活用したい。同時に、設置後の定期点検も、振動減衰装置が分散配置されていると作業性が悪い。また、振動減衰装置の中には特定の方向の振動のみを減衰する方向性を持つものがある。このような振動減衰装置はどの方向性を持つものはどの位置に設置しなければならない、といった、設置位置上の制約もある。
【0009】
なお、例えば特開平9−242371号公報に示されるように、多数の鋼板と粘弾性体とを積層させた制振装置を建物に設置する技術が既に知られている。これは粘弾性体の各層を上下から挟み込む鋼板をそれぞれ設置床と壁に結合させることで、建物の微小振動を吸収するものである。もし、免震建物にこのような制振装置を設置する場合は、大きな変形をする免震アイソレータの設置層とは別のフロアに制振装置を設置する必要があり、設計、施工、保守点検が非常に煩雑になる。
【0010】
また、粘弾性体のせん断変形可能領域はその層厚さによって決定される。従って粘弾性体層厚さが大きいほど大きなせん断変形が可能になる。ところが粘弾性体のせん断面積に対して層厚さを大きくし過ぎると粘弾性体が純粋なせん断変形を起こさなくなり、その結果、粘弾性体が変形することで発生する減衰力が減少することが知られている。従って、粘弾性体を用いた制振装置を変形量が大きく、かつ大きな減衰力を必要とする免震層に設置するのは困難であった。
本発明では、振動減衰装置の設置場所を免震アイソレータの周囲に集中させると共に方向性を無くして、これらの問題点の解決を図る。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
建築物の柱を支承する免震アイソレータの周囲を取り囲むように配置され、上板が前記建築物の柱下端側に固定され、下板が前記柱を支持する支持体の上端側に固定され、前記上板と前記下板との間に粘弾性ダンパ層を配置して成ることを特徴とする振動減衰装置。
【0012】
〈構成2〉
構成1に記載の振動減衰装置において、前記粘弾性ダンパ層は、前記上板と前記下板との間において、複数の粘弾性体層と非圧縮性の中板とを積層して成ることを特徴とする振動減衰装置。
【0013】
〈構成3〉
構成2に記載の振動減衰装置において、前記粘弾性体層を挟んで互いに別々に変位する前記上、下板及び前記中板のうち、いずれか一方を前記建築物の柱側に固定し、他方を前記支持体に固定したことを特徴とする振動減衰装置。
【0014】
〈構成4〉
構成3に記載の振動減衰装置において、前記上板と前記下板とがスペーサを用いて一体化され、これら上、下板と前記中板とが相対的に変位できるようにしたものであって、
前記中板には、前記スペーサ部分を避けるように張り出した延長部分が設けられ、前記中板はこの延長部分と一体化されたことを特徴とする振動減衰装置。
【0015】
〈構成5〉
構成1から構成4のうちのいずれか1項に記載の振動減衰装置において、前記上、下板と前記粘弾性ダンパ層とは、前記免震アイソレータの周囲で、略円弧の一部を構成するように複数に分割されていることを特徴とする振動減衰装置。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明する。
〈具体例1〉
図1は、本発明の振動減衰装置を説明する図で、(a)は振動減衰装置の平面図、(b)はそのA−A線に添う断面図である。
なお、この振動減衰装置10は上からみたとき円形でA−A線を境にして対称のため、2分の1のみを図示して残りの部分の図示を省略した。また、以下のいずれの図も、図が煩雑になるのを避けるために、同一形状の同一部品の場合、そのうちの代表的なものにのみ符号を付して他の部品に対する符号は省略した。
【0017】
図1において、(b)には、建築物の柱の下端11と、基礎3上に構築された支持体12の部分のみが現れている。この柱の上方には、例えば図2に示したような建築物が存在する。ここに、図2や図3を用いて説明をしたとおりの免震アイソレータ4が挟み込まれる。免震アイソレータ4の上板6は柱の下端11の下面にボルト9を用いて固定される。この周囲を円環状に取り巻くように、本発明の振動減衰装置10が配置されている。
また、後で説明するように、横揺れ時に免震アイソレータ4の動きを振動減衰装置10が妨げないように、振動減衰装置10と免震アイソレータ4との間には所定の空間20が形成されている。
【0018】
この振動減衰装置10は、上板13と下板14との間に粘弾性ダンパ層を設けてなる環状構造を呈している。粘弾性ダンパ層は、上板13と下板14との間に、複数の粘弾性体層15、17と非圧縮性の中板16とを積層して構成されている。
上板13は建築物の柱下端11の側面に固定されている。下板14は上記柱を支持する支持体12の上端側面に固定されている。上板13も下板14も、その固定には、三角形のアングル18を使用している。上板13に一方の縁を溶接されたアングル18は、他方の縁がボルト19によって、建築物の柱下端11に固定されている。また、下板14に一方の縁を溶接されたアングル18は、他方の縁がボルト19によって、支持体12の上端側面に固定されている。
図1(a)に示すように、振動減衰装置10は、免震アイソレータ4の周囲で、略円弧の一部を構成するように複数に分割されている。アングル18は分割された各ブロックを柱の下端11にしっかりと固定することができるようにそれぞれ3個ずつ使用されている。
【0019】
図4は、免震アイソレータと本発明の振動減衰装置との位置関係を示す図で、(a)は柱を取り除いた状態の両者の斜視図、(b)は振動減衰装置の1ブロックの斜視図である。
図4に示されるように、本発明の振動減衰装置10は円環状であって、免震アイソレータ4の周囲の支持体12の上に配置される。従って、免震アイソレータ4と共にセットで取り付け工事をすれば、図4(a)の状態での取り付けも可能である。しかしながら、予め免震アイソレータ4を取り付けた後から振動減衰装置10を取り付けるには、図1(b)に示すように、分割されていることが好ましい。また、免震アイソレータ4の直径は例えば約1m、振動減衰装置10の直径は約2mもあることから、振動減衰装置10を分割して1ブロックの重量を適当に調整し、運搬し易くすることが好ましい。
【0020】
図5は、上記の振動減衰装置の具体的な動作を説明する図で、(a)と(b)はそれぞれ免震アイソレータ上の柱が支持体に対して異なる変位量で相対変位した状態を示す断面図である。
具体的には、免震アイソレータ4が直径800mm、振動減衰装置10が直径2000mmとし、(a)はその変位量が200mm、(b)はその変位量が470mmの状態を示す。図のように免震アイソレータ4が変形しても、振動減衰装置10との間の空間20によって、実効範囲での変形は妨げられない。
この空間が大き過ぎると振動減衰装置10のサイズが大きくなり過ぎる。逆にこの空間が小さ過ぎると、免震アイソレータ4の自由な変形を妨げる。故に、この空間は、免震アイソレータ4の実効範囲での変形を妨げない最小限の広さに選定することが好ましい。
なお、この上板13と下板14の間の粘弾性体層15、17によって、復元力が与えられる。同時にこの変形が繰り返されて、横揺れのエネルギが吸収されて、振動減衰効果が発揮される。
【0021】
上記の振動減衰装置10に使用した粘弾性体層15、17には、既知の粘弾性体、ブチルゴム、高減衰天然ゴム等の材料が適する。また振動を長周期化するために剛性が比較的小さいものが好ましい。せん断弾性率Gは1.0〜3.0の範囲の粘弾性体が好適である。中板16は、粘弾性ダンパ層15、17と全く同一の形状の円環状鋼板等により構成される。この中板16を粘弾性体がせん断変形し易い形状、つまり具体的には各部の寸法が、理想的には、
((粘弾性体層の外径−粘弾性体層の内径)/2)/粘弾性体1層分の厚さ≧10
という関係を満たすような枚数だけ挿入することで、大変形時でも粘弾性体層は純粋なせん断変形を起こし、また減衰力が減少することなく安定して発生させることができる。
【0022】
建築物としては、ビルその他の免震対策を必要とするものならばなんでもよい。当初よりその柱へ免震アイソレータ4を組み込むように設計された新築のビルには、免震アイソレータ4と共に、この振動減衰装置10を取り付ける。既存のビルは、その柱を切断して免震アイソレータ4を取り付ける。その際に同時にこの振動減衰装置10を取り付ける。柱を支える免震アイソレータ4の周囲にこの振動減衰装置10を配置するのは、こうした免震構造体が集中して配置され、取り付け工事や保守点検が容易になるからである。また、既存の建築物の柱部分に一括して取り付けることができ、他に振動減衰装置用の取付場所を確保する必要がないからである。
【0023】
この振動減衰装置10を免震アイソレータ4の周囲を取り囲むように配置するのは、柱の部分に免震アイソレータ4と振動減衰装置10とを集中的に配置するためである。また、振動減衰装置10がいずれの方向の横揺れに対してもほぼ同等に振動減衰効果を持つようにするためである。上板13を建築物の柱下端11側に固定し、下板14を、柱を支持する支持体12の上端側に固定するのは、建築物の柱と、柱を支持する支持体との間の相対的な振動を吸収するためだからである。柱を支持する支持体12は、柱の一部であってもよいし、建築物の基礎であってもよい。
振動減衰装置10を分割構造にしたのは、既に説明したように、免震アイソレータ4の取り付け後に免震アイソレータ4の周囲を囲むように設置するための施工が容易だからである。これにより既存の建築物への追加工事も簡便になる。故に、免震アイソレータ4と共に同時に施工が可能であれば、図4(a)に示すように一体の環状構造であっても構わない。
【0024】
上板13を柱の下端11側に固定するというのは、柱の下面や側面に直接あるいは間接的に固定する場合全てを含む。例えばこの上板13を免震アイソレータ4の上板6に固定するようにしてもよい。免震アイソレータ4の上板6は柱の下端11に固定されるからである。また、下板14は支持体12側に固定されればよく、後で説明するように、支持体12とは別に設けた基礎の一部に固定するようにしてもよい。要するに、地盤側に下板14を固定して、建築物の柱側に上板13を固定すればよい。上板13と下板14との間に配置するのは、一層の粘弾性体層でもよいし、複数の粘弾性体層と鋼板のような非圧縮性の中板を任意の枚数積層したものでもよい。
【0025】
例えば、ビル等の建築物には、地震による横揺れ振動の周波数が0.5Hzで、振幅が±150mmのとき、振動減衰係数Ceq=25tonf/kineの振動減衰能力が要求されている。建築物の柱にアイソレータを設置した場合に、この基準を満たすだけの振動減衰装置を取り付ければ良い。従って、全ての免震アイソレータの周りに本発明の振動減衰装置を設置してもよいし、一部の免震アイソレータの周りにだけ設置してもよい。
【0026】
〈具体例2〉
具体例1では、振動減衰装置の上板が建築物の柱下端側に固定され、下板が支持体側に固定された。これに対してこの具体例2では、中板を建築物の柱下端側に固定する。そして、上板と下板を支持体側に固定する。
図6は、具体例2の振動減衰装置の平面図である。この装置も対称形のため2分の1のみを表示した。図7は、図6のA−O−C線に添う断面図である。図8は、具体例2の装置の部品図で、(a)は上板の平面図、(b)は下板の平面図である。
【0027】
この振動減衰装置は、図7に示すように、上板21と粘弾性体層24と中板22と粘弾性体層24と下板23とが順に積層され、具体例1と同様の円環状をしている。ここで、この具体例では、上板21と下板23とが、基礎26にボルト27を用いて固定されている。スペーサ28は、上板21と下板23とをボルト27で締め付けて連結一体化するためのものである。こうして、上板21と下板23とが、基礎26を通じて支持体12の側、即ち、地盤側に固定される。
【0028】
一方、中板22は、建築物の柱の下端11側に、ボルト29を用いて固定される。また、この振動減衰装置は円周方向にみて4つのブロックに分割されている。
図8(a)において、上板21と下板23とは同一の形状のため上板21のみを図示している。上板21のボルト孔31は、下板23と共にスペーサ28を挟んで基礎26に固定するためのものである。また、図8の(b)に示すように、中板22のボルト孔32は、隣り合う別のブロックの中板22と継板35を介して連結するためのものである。中板22のボルト孔33は、隣り合う別のブロックの中板と継板36を介して連結するためのものである。中板22のボルト孔34は、この中板22を免震アイソレータ4の上板とボルトにより連結するためのものである。
【0029】
なお、上記の各ブロックの中板22は、図8の(a)に示すように、スペーサ25や28を用いて一体化した上板21と下板23の連結部分(スペーサ25や28の近傍)を避けるように張り出した延長部分22Aと22Bを相互に連結して環状に一体化されている。こうして、上板21と中板22を含む一群の板を柱の下端11側に固定し、中板22を支持体12側に固定することができる。
【0030】
具体例1は図1に示したように、上板13と下板14とが互いに相対的に変位できるようにした振動減衰装置である。これに対して具体例2は、上板21と下板23とが一体で、これらと中板22とが相対的に変位できるようにした振動減衰装置である。故に、例えば上板13と下板14とを支持体12側に固定したとき、中板22を柱の下端11側に固定する工夫が必要になる。本発明では、中板22に延長部分12Aや12Bを設けたことにより、施工上の問題を解決している。
【0031】
なお、この例では中板は1枚であるが、中板が複数枚あってもよい。中板は奇数枚とし、上から数えて偶数番目の中板は、上板21や下板23と一体化するとよい。このようにするのは、相対的に変位できるようにした2群の板に挟まれた粘弾性体層の実効的な面積を拡大して、粘弾性ダンパ層の剛性を高めるためである。粘弾性体層の厚みを増せば剛性が低くなり、面積を増せば剛性が高くなる。この関係を利用して、免震アイソレータ上の柱の変位量を制御し、適正な免震設計をすればよい。
【0032】
以上のようにして、各ブロックの上板21と下板23は全てスペーサ28を利用して一体化されて支持体12側に固定される。また、各ブロックの中板22は、円環状に連結されて柱の下端11側に固定される。従って、建築物が横揺れした場合には,中板22が建築物と共に横揺れし、上板21及び下板23と中板22との間に挟まれた粘弾性体層24がその横揺れのエネルギを吸収する。
【0033】
上記具体例2では、上板と下板とを一体化して建築物の柱側に固定し、中板を支持体に固定したが、その反対であってもよい。即ち、中板を建築物の柱側に固定し、上板と下板とを一体化して支持体に固定するようにしてもよい。粘弾性体層を挟んで互いに別々に変位する板もしくは一体化された複数の板の一方を建築物の柱側に固定し、他方を支持体に固定すれば、具体例1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
図9は、本発明の振動減衰装置の特性を示す図である。
図の横軸は、振動減衰装置の歪み振幅(%)、縦軸はせん断応力(単位:kgf/cm2)を示す。即ち、図1に示した免震アイソレータ4と振動減衰装置10に対して縦軸に示すようなせん断応力(水平方向の応力)が加わったとき、これらが歪みのない状態に対して何%歪みを増加させたかというデータを表示している。地震の横揺れによるせん断応力は周期的に変化するが、例えば積層ゴムを使用した免震アイソレータ4は、図の実線の直線に示すような特性となる。
【0035】
一方、粘弾性ダンパ層を使用した振動減衰装置10は図の破線の楕円に示すような特性となる。このように特性曲線がループを描くとき、そのループの面積は、振動減衰能力に比例する。そして、図1に示したように、柱の下側に配置した免震アイソレータ4と振動減衰装置10による合成特性は、図の実線の楕円に示すような特性となる。こうして、柱の部分に集中的に設けた本発明の振動減衰装置10は、十分な振動減衰効果を発揮することが実証された。
【0036】
【発明の効果】
以上説明した本発明の振動減衰装置は、建築物の柱を支承する免震アイソレータの周囲に配置するので、特に、既存の建築物であって、床下部分に十分なスペースを確保できない場合の地震対策に極めて有効である。即ち、既設の建築物の床スラブに手を加えず、柱の部分の工事のみで済むという効果がある。また、設置スペースが小さくても大きな変形能力と振動減衰能力を得ることが可能である。さらに、方向性がないので、方向性のある振動減衰装置を、それぞれ向きを考慮しながら分散配置するといった必要がない。従って、設置箇所を比較的自由に選定出来るという効果がある。また、免震アイソレータの周囲で分割されていれば免震アイソレータと共に点検や交換が容易であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動減衰装置を説明する図で、(a)は振動減衰装置の平面図、(b)はそのA−A線に添う断面図である。
【図2】従来一般の免震装置と振動減衰装置の動作を説明する図で、(a)は免震装置のない建築物の概略側面図、(b)は免震装置を設けた建築物の概略側面図である。
【図3】免震アイソレータの機能を説明する図で、(a)は免震アイソレータの斜視図、(b)はその水平変位と水平荷重との関係を示すグラフ、(b)は振動減衰装置の水平変位と水平荷重との関係を示すグラフである。
【図4】免震アイソレータと本発明の振動減衰装置との位置関係を示す図で、(a)は柱を取り除いた状態の両者の斜視図、(b)は振動減衰装置の1ブロックの斜視図である。
【図5】上記の振動減衰装置の具体的な動作を説明する図で、(a)と(b)はそれぞれ免震アイソレータ上の柱が支持体に対して異なる変位量で変位した状態を示す断面図である。
【図6】具体例22の振動減衰装置の平面図である。
【図7】図6のA−O−C線に添う断面図である。
【図8】具体例2の装置の部品図で、(a)は上板の平面図、(b)は下板の平面図である。
【図9】本発明の振動減衰装置の特性を示す図である。
【符号の説明】
4 免震アイソレータ
6 免震アイソレータの上板
8 免震アイソレータの下板
10 振動減衰装置
11 柱の下端
12 支持体
13 振動減衰装置の上板
14 振動減衰装置の下板
15、17 粘弾性ダンパ層
16 中板
18 アングル
20 空間
Claims (5)
- 建築物の柱を支承する免震アイソレータとは別に構成されるものであって、
前記免震アイソレータの周囲を取り囲むように配置されて前記免震アイソレータの外周面との間に空間が設けられ、上板が前記建築物の柱下端に固定され、下板が前記柱を支持する支持体の上端に固定され、前記上板と前記下板との間に粘弾性ダンパ層を配置して成ることを特徴とする振動減衰装置。 - 請求項1に記載の振動減衰装置において、前記粘弾性ダンパ層は、前記上板と前記下板との間において、複数の粘弾性体層と非圧縮性の中板とを積層して成ることを特徴とする振動減衰装置。
- 請求項2に記載の振動減衰装置において、前記粘弾性体層を挟んで互いに別々に変位する前記上、下板及び前記中板のうち、いずれか一方を前記建築物の柱側に固定し、他方を前記支持体に固定したことを特徴とする振動減衰装置。
- 建築物の柱を支承する免震アイソレータとは別に構成されるものであって、
前記免震アイソレータの周囲を取り囲むように配置されて前記免震アイソレータの外周面との間に空間が設けられた粘弾性ダンパ層を備え、
前記粘弾性ダンパ層は、上板と下板との間に、複数の粘弾性体層と非圧縮性の中板とを積層してなり、
前記上板と前記下板とがスペーサを用いて一体化され、これら上、下板と前記中板とが相対的に変位できるようにしたものであって、前記中板には、前記スペーサ部分を避けるように張り出した延長部分が設けられ、前記延長部分が前記支持体に固定され、前記一体化された上、下板が前記建築物に固定されたことを特徴とする振動減衰装置。 - 請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の振動減衰装置において、前記上、下板と前記粘弾性ダンパ層とは、前記免震アイソレータの周囲で、略円弧の一部を構成するように複数に分割されていることを特徴とする振動減衰装置。
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