JP3960705B2 - 帽子枠装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帽子に刺繍加工するためのミシンの帽子枠装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように従来の帽子枠装置105は、ミシンフレームの前方において帽子1をその周面部5の周方向に回動させる筒状の回転駆動枠106と、回転駆動枠106に脱着可能に取り付けられる帽子枠100とを備えている。
【0003】
回転駆動枠106の外周面には、帽子枠100を固定するための3つの押さえローラ107が周方向に略均等間隔をおいて設けられている。この押さえローラ107はバネ(図示略)で回転駆動枠106の外周面を押さえるように付勢されている。
【0004】
帽子枠100の受け枠101には、各押さえローラ107に対応する3つの係合穴108が設けられている。この帽子枠100を回転駆動枠106に取り付けるときは、帽子枠100の受け枠101を回転駆動枠106に外挿して強く押し込むと、各押さえローラ107が係合穴108に係合し、帽子枠100が固定されるようになっている。また、帽子枠100を取り外すときは、帽子枠100を回転駆動枠106から強く引っ張ると、各押さえローラ107と係合穴108との係合が外れるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、回転駆動枠106に帽子枠100をがたつきなく固定するためには、押さえローラ107の押圧力を強くする必要があるが、こうすると、帽子枠100を脱着するとき、押さえローラ107と係合穴108とを係合させたり、係合を外したりするために、帽子枠100を強い力で押し込んだり、引っ張ったりしなければならない。このため、非力な作業者には、この脱着作業が困難であった。
【0006】
また、帽子枠100を取り外すとき、押さえローラ107と係合穴108との係合が外れるまでは強い力で引っ張る必要があるが、該係合が外れた後は、帽子枠100の受け枠101が回転駆動枠106に外挿されているだけの状態になり、弱い力で簡単に外れる状態となる。従って、帽子枠100を強く引っ張りすぎると、押さえローラ107と係合穴108との係合が外れると同時に回転駆動枠106から帽子枠100がすっぽ抜けるおそれがある。このため、帽子枠100を引っ張るときの力加減が難しかった。
【0007】
さらに、帽子枠100が確実に取り付けられていることを確認するには、押さえローラ107と係合穴108との係合状態を肉眼で確認しなければならず、面倒であった。
【0008】
このように、帽子枠100を、ミシン側に設けられた回転駆動枠106に対して脱着する際の操作性が良くなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、帽子枠を回転駆動枠に脱着しやすくした帽子枠装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明においては、上記目的を達成するために、次のような手段をとった。これらの各手段を図1〜図5に基づいて説明する。
【0011】
帽子1を挟持する帽子枠10と、ミシン(例えば刺繍ミシン)側において該帽子枠10を取替可能に外嵌する回転駆動枠30とを備えた帽子枠装置において、
帽子枠10の外周にさらに外周側へ突出するつば部23を設け、
回転駆動枠30の外周に該回転駆動枠30に向かって突出する掛止爪31を有したレバー32を傾動可能に軸33着するとともに、該掛止爪31が回転駆動枠30に向かう方向に該レバー32をバネ34により付勢し、
回転駆動枠30に帽子枠10を外嵌するときに、つば部23が一旦掛止爪31を回転駆動枠30から離れる方向に押し上げ、掛止爪31がつば部23を乗り越えた後、バネ34による付勢により掛止爪31がつば部23に掛止するようにしたことを特徴とする帽子枠装置9。
図示例では、前記各部材23,31,32,33,34が、帽子枠10及び回転駆動枠30の左右にかつ対称に設けられている。
【0012】
図示例のように、掛止爪31がつば部23に掛止するときに、レバー32がつば部23に当接する手前で該レバー32に当接して当接音を発生させるとともに該レバー32を止める当接用突起35を回転駆動枠30に設けることが好ましい。
【0013】
図示例のように、掛止爪31がつば部23に掛止した状態から、該掛止が外れるようにレバー32を傾動させたときに、帽子枠10の回転駆動枠30への外嵌が外れる方向へつば部23を押圧するバネ式プランジャ36を回転駆動枠30に設けることが好ましい。
【0014】
図示例のように、バネ式プランジャ36は、掛止爪31がつば部23の外周面23aに乗り上げたところで帽子枠10が停止するように、つば部23を押圧するものであることが好ましい。
【0015】
この帽子枠装置9において、回転駆動枠30に帽子枠10を取り付けるには、次のようにする。
・ミシン側に設けられた回転駆動枠30に対して、帽子1付きの帽子枠10を外嵌(外周に挿入)する。
・帽子枠10を奥まで挿入していくと、つば部23が一旦掛止爪31を回転駆動枠30から離れる方向に押し上げ、掛止爪31がつば部23を乗り越えた後、バネ34による付勢により掛止爪31がつば部23に掛止する。
・掛止爪31がつば部23に掛止するときに、レバー32がつば部23に当接する手前で該レバー32に当接用突起35が当接して当接音を発生させる(例えばカチと音がする)ので、掛止したことが確認できる。
【0016】
また、回転駆動枠30から帽子枠10を取り外すには、次のようにする。
・両手で帽子枠10を抱えるように持ち、両手の指で左右のレバー32の作用端を押して傾動させる。
・レバー32先端の掛止爪31がつば部23から外れると、バネ式プランジャ36は、帽子枠10の回転駆動枠30への外嵌が外れる方向へつば部23を押圧し、掛止爪31がつば部23の外周面23aに乗り上げたところで帽子枠10を停止させる。
・そこで、もはやレバー32を押し続ける必要はなくなるため、帽子枠10を引っ張るだけで容易に回転駆動枠30から取り外すことができる。
【0017】
この帽子枠装置9によれば、次のような効果が得られる。
・帽子枠10の脱着をワンタッチで行うことができる。
・掛止爪31は、帽子枠10の外周にさらに外周側へ突出するように設けられたつば部23に掛止するので、掛止爪31の先端が帽子枠10の内周に飛び出すおそれがない。
・掛止爪31が掛止するつば部23は、十分な厚みに形成することができるので、摩耗による掛止不良のおそれがない。
・回転駆動枠30(本体枠)と帽子枠10(替え枠)の固定(ロック)が確実に出来るのでガタが無く、仕上がりもきれい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は本発明を実施したミシンの帽子枠装置9を示している。本ミシンは、図1に示すようにミシンフレーム90から矢印Y方向と平行に突設された筒状ベッド91を備えている。筒状ベッド91の基端側の下部には筒状ベッド91と平行にガイドレール62が突設されており、ガイドレール62には帽子枠10を含む帽子枠装置9がY方向に移動可能に支持されている。また、筒状ベッド91上には水平面内においてY方向と直角に交差するX方向(図示略)に延びる水平駆動枠60を備えており、水平駆動枠60によって帽子枠装置9が移動されるようになっている。
【0019】
筒状ベッド91の先端側上面には、針孔92aが設けられた針板92が配設されており、その下側には下糸が巻かれた釜(図示略)が内蔵されている。また、筒状ベッド91の上方にはミシンヘッド(図示略)に上下動自在に針93が設けられている。そして、刺繍データに基づいて駆動される針93と前記釜との協働によって帽子枠装置9に保持された帽子1に刺繍加工がされるようになっている。
【0020】
帽子枠装置9は、帽子1の刺繍加工範囲を筒状ベッド91の直上に適正な形態で支持するためのもので、ガイドレール62に沿ってY方向にスライド移動自在に設けられた支持枠40と、Y方向と平行な軸に対して回転可能に支持枠40に支持された回転駆動枠30と、帽子1を挟持し、回転駆動枠30に取替可能に外嵌される帽子枠10と、支持枠40から前方に突設されたステー45に設けられて筒状ベッド91の側方(図示例では左右両側方)まで延びる弾性板41と、弾性板41の先端に回転可能に設けられて、帽子枠10に挟持された帽子1の周面部5と頂面部6との境界コーナー部7に当接して回転する補助ローラ42とを備えている。
【0021】
帽子枠10は、図1〜図3に示すように帽子1の内側に挿入される筒状の受け枠11と、帽子1の外側から巻き付けられて受け枠11との間で帽子1を挟持する押さえバンド12とを備えている。帽子枠10の受け枠11の外周には、さらに外周側へ突出するつば部23を設けている。
【0022】
回転駆動枠30の外周には、該回転駆動枠30に向かって突出する掛止爪31を有したレバー32を傾動可能に軸33着しており、掛止爪31が回転駆動枠30に向かう方向に該レバー32をバネ34により付勢している。そして、回転駆動枠30に帽子枠10を外嵌するときに、つば部23が一旦掛止爪31を回転駆動枠30から離れる方向に押し上げ、掛止爪31がつば部23を乗り越えた後、バネ34による付勢により掛止爪31がつば部23に掛止するようにしている。図示例では、前記各部材23,31,32,33,34が、帽子枠10及び回転駆動枠30の左右にかつ対称に設けられている。
【0023】
図1、図3及び図5に示すように、掛止爪31がつば部23に掛止するときに、レバー32がつば部23に当接する手前で該レバー32に当接して当接音を発生させるとともに該レバー32を止める当接用突起35を回転駆動枠30に設けている。
【0024】
図1、図3、図4及び図5に示すように、掛止爪31がつば部23に掛止した状態(図5(a))から、該掛止が外れるようにレバー32の作用端32aを押してレバー32を傾動させたときに、帽子枠10の回転駆動枠30への外嵌が外れる方向(図5(b))へ、つば部23を押圧するバネ式プランジャ36を回転駆動枠30に設けている。
【0025】
図4及び図5(b)に示すように、バネ式プランジャ36は、掛止爪31がつば部23の外周面23aに乗り上げたところで帽子枠10が停止するように、つば部23を押圧するものとしている。
【0026】
なお、以上において、つば部23に代えて係合穴を受け枠11に設け、掛止爪31が該係合穴に掛止するようにすることも考えられるが、こうすると、掛止爪31の先端が帽子枠10の内周に飛び出すおそれがある。また、この飛び出しを防止するために、例えば、掛止爪31の先端を短くすることも考えられるが、こうすると、前記係合穴の周縁の摩耗による掛止不良が発生しやすくなるという問題がある。
【0027】
この帽子枠装置9において、回転駆動枠30に帽子枠10を取り付けるには、次のようにする。
(1)ミシン側に設けられた回転駆動枠30に対して、帽子1付きの帽子枠10を外嵌(外周に挿入)する。
(2)帽子枠10を奥まで挿入していくと、つば部23が一旦掛止爪31を回転駆動枠30から離れる方向に押し上げ(図4及び図5(b))、掛止爪31がつば部23を乗り越えた後、バネ34による付勢により掛止爪31がつば部23に掛止する(図5(a))。
(3)掛止爪31がつば部23に掛止するときに、レバー32がつば部23に当接する手前で該レバー32に当接用突起35が当接して当接音を発生させる(例えばカチと音がする)ので、掛止したことが確認できる。
【0028】
また、回転駆動枠30から帽子枠10を取り外すには、次のようにする。
(1)両手で帽子枠10を抱えるように持ち、両手の指で左右のレバー32の作用端32aを押してレバー32を傾動させる。
(2)レバー32先端の掛止爪31がつば部23から外れると、バネ式プランジャ36は、帽子枠10の回転駆動枠30への外嵌が外れる方向へつば部23を押圧し、掛止爪31がつば部23の外周面23aに乗り上げたところで帽子枠10を停止させる(図4及び図5(b))。
(3)そこで、もはやレバー32を押し続ける必要はなくなるため、帽子枠10を軽く引っ張るだけで容易に回転駆動枠30から取り外すことができる。
【0029】
この帽子枠装置9によれば、次のような効果が得られる。
(a)レバー32に設けた掛止爪31がつば部23に掛止することにより回転駆動枠30に帽子枠10を固定するように構成しているため、掛止爪31を付勢するバネ34の力は、掛止爪31がつば部23に掛止した状態で縫製しているときに、その掛止が外れない程度のものでよい。従って、従来とは異なり、非力な作業者でも回転駆動枠30に帽子枠10をワンタッチで容易に脱着することができる。
【0030】
(b)帽子枠10の回転駆動枠30への外嵌が外れる方向へつば部23を押圧するバネ式プランジャ36を設けているので、帽子枠10を取り外すときに、左右のレバー32の作用端32aを押して、レバー32先端の掛止爪31をつば部23から外すだけで、掛止爪31がつば部23に掛止しない位置までつば部23を介して帽子枠10が移動される。このため、作業者は、レバー32の作用端32aを押す動作と、掛止爪31がつば部23に掛止しない位置まで帽子枠10を移動させる動作とを同時に行う必要がなく、帽子枠10をワンタッチで容易に取り外すことができる。
【0031】
(c)バネ式プランジャ36は、掛止爪31がつば部23の外周面23aに乗り上げたところで帽子枠10が停止するように、つば部23を押圧するものとしているので、帽子枠10を取り外すときに、左右のレバー32の作用端32aを押して、レバー32先端の掛止爪31をつば部23から外しても、つば部23の外周面23aに乗り上げた掛止爪31によって帽子枠10が依然として回転駆動枠30に保持されるようになっている。従って、帽子枠10が回転駆動枠30から抜け落ちたり、飛び出したりすることはない。そして、この状態においては、軽く引っ張るだけで帽子枠10を回転駆動枠30から容易に取り外すことができる。
【0032】
(d)掛止爪31は、帽子枠10の外周にさらに外周側へ突出するように設けられたつば部23に掛止するので、掛止爪31の先端が帽子枠10の内周に飛び出すおそれがない。
【0033】
(e)掛止爪31が掛止するつば部23は、十分な厚みに形成することができるので、摩耗による掛止不良のおそれがない。
【0034】
(f)掛止爪31がつば部23に掛止するときに、レバー32がつば部23に当接する手前で当接用突起35がレバー32に当接して当接音を発生させるので、この音を確認することにより、回転駆動枠30と帽子枠10の固定(ロック)が確実に出来る。このため、取り付けミスによる回転駆動枠30と帽子枠10間のガタが発生することは無く、縫製の仕上がりもきれいになる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、つば部23、掛止爪31、レバー32、軸33及びバネ34を帽子枠10及び回転駆動枠30に一箇所又は3箇所以上設けるなど、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るミシンの帽子枠装置によれば、帽子枠を回転駆動枠に脱着しやすくすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態のミシンの帽子枠装置を示す右側面図である。
【図2】同帽子枠装置の帽子枠の正面図である。
【図3】同帽子枠装置の正面図である。
【図4】同帽子枠装置に帽子枠と回転駆動枠との掛止部位の斜視図である。
【図5】同掛止部位の側面図である。
【図6】従来のミシンの帽子枠装置を示す右側側面図である。
【符号の説明】
1 帽子
1a 布片
2 対応部位
3 汗取り部分
4 ひさし
5 周面部
6 頂面部
7 境界コーナー部
8 突条部
9 帽子枠装置
10 帽子枠
11 受け枠
12 押さえバンド
12a 一端
12b 他端
13 押付片
14 突起部分
15 開口
15a 突起部分
16 軸着部
17 掛止部
18 掛止片
19 規制片
20 側面V字角
21 リング
22 コ字状部
23 つば部
23a 外周面
24 嵌合片
25 保持クリップ
26 湾曲板
30 回転駆動枠
31 掛止爪
32 レバー
32a 作用端
33 軸
34 バネ
35 当接用突起
36 バネ式プランジャ
40 支持枠
41 弾性板
42 補助ローラ
43 半球面
44 接触ピット面
45 ステー
46 ねじ
47 前側部材
47a ガイド穴
47b ベッド穴
48 後側部材
49 前側ベアリングローラ
50 後側ベアリングローラ
52 結合ねじ
53 ねじ
54 取付部
55 水平板部
56 ねじ穴
57 ベース板部
58 連結板部
60 水平駆動枠
61 ワイヤ
62 ガイドレール
90 ミシンフレーム
91 筒状ベッド
92 針板
92a 針孔
93 針
Claims (4)
- 帽子を挟持する帽子枠と、ミシン側において該帽子枠を取替可能に外嵌する回転駆動枠とを備えた帽子枠装置において、
前記帽子枠の外周にさらに外周側へ突出するつば部を設け、
前記回転駆動枠の外周に該回転駆動枠に向かって突出する掛止爪を有したレバーを傾動可能に軸着するとともに、該掛止爪が回転駆動枠に向かう方向に該レバーをバネにより付勢し、
前記回転駆動枠に帽子枠を外嵌するときに、つば部が一旦掛止爪を回転駆動枠から離れる方向に押し上げ、掛止爪がつば部を乗り越えた後、前記バネによる付勢により掛止爪がつば部に掛止するようにしたことを特徴とする帽子枠装置。 - 前記掛止爪がつば部に掛止するときに、前記レバーがつば部に当接する手前で該レバーに当接して当接音を発生させるとともに該レバーを止める当接用突起を回転駆動枠に設けた請求項1記載の帽子枠装置。
- 前記掛止爪がつば部に掛止した状態から、該掛止が外れるように前記レバーを傾動させたときに、前記帽子枠の回転駆動枠への外嵌が外れる方向へ前記つば部を押圧するバネ式プランジャを回転駆動枠に設けた請求項1又は2記載の帽子枠装置。
- 前記バネ式プランジャは、前記掛止爪がつば部の外周面に乗り上げたところで前記帽子枠が停止するように、前記つば部を押圧するものである請求項3記載の帽子枠装置。
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