JP3959969B2 - 船外機用機関における燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、機関から離れた位置に配置される燃料タンク内の燃料が低圧燃料ポンプによって昇圧され、低圧燃料流路を介してベーパーセパレータ内へ供給されるとともに定液面制御機構によってベーパーセパレータ内に一定液面が形成され、一方、ベーパーセパレータ内において気液分離された燃料が、高圧燃料ポンプによって昇圧されて燃料分配管に装着された燃料噴射弁に向けて供給され、燃料噴射弁より機関に連なる吸気管内に制御された燃料を噴射供給する船外機用機関における燃料噴射装置に関し、そのうち特にベーパーセパレータ内に一定液面を形成する定液面制御機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
船外機用機関(以下単に機関という)の燃料噴射装置について図2により説明する。Tは内部に燃料が貯溜される燃料タンクであり、機関より離れた位置に配置される。Vは内部に燃料が一定液面X−X形成されるベーパーセパレータであり、以下よりなる。ベーパーセパレータVはエヤベント(図示せず)を備える筐体Fをなし、内部に定液面制御機構Nが配置される。定液面制御機構Nは、ベーパーセパレータV内に開口配置されるバルブシート1と、バルブシート1を開閉するフロートバルブ2と、一端が軸3に回転自在に支持され、フロートバルブ2を操作するフロートアーム4とを備えるフロート5とによって構成される。Jは一端が燃料分配管6に装着され、他端が機関に連なる吸気管7内に向かって開口配置される燃料噴射弁である。そして、燃料タンクT内の燃料は、例えばダイヤフラムポンプ等の低圧燃料ポンプPLによって吸入されて昇圧され、この低圧燃料は低圧燃料流路8を介してバルブシート1に向けて供給される。ベーパーセパレータV内に燃料が貯溜されていない状態(いいかえると一定液面X−X迄燃料が貯溜されていない)において、フロートアーム4を含むフロート5は軸3を中心に図において反時計方向へ回動するもので、これによるとフロートアーム4と同期的に移動するフロートバルブ2は下方向へ移動してバルブシート1を開口保持し、低圧燃料流路8内の燃料がバルブシート1を介してベーパーセパレータVの筐体F内へ供給される。前記によってベーパーセパレータV内へ継続的に燃料が供給されると、ベーパーセパレータV内には徐々に燃料が貯溜されて液面が上昇するもので、これによるとフロートアーム4を含むフロート5は軸3を中心に図において時計方向に回動し、燃料液面が一定液面X−Xに達するや、フロートアーム4はフロートバルブ2をバルブシート1に向けて押圧してバルブシート1を閉塞し、バルブシート1からベーパーセパレータV内への燃料の供給が停止され、もってベーパーセパレータV内に一定液面X−Xが形成保持される。そして、液面変化に応じてフロート5が前記動作をくり返し行なうことによってベーパーセパレータV内には常に一定液面X−Xが形成され、低圧燃料流路8から気泡が含まれる燃料が供給されたとしても、ベーパーセパレータV内において完全に気液分離される。ベーパーセパレータV内に貯溜される燃料は、一定液面X−Xの下方位置に開口する燃料吸入孔9から電動ポンプ等の高圧燃料ポンプPHに吸入され高圧燃料ポンプPHにて高圧に昇圧された燃料は、高圧燃料流路10を介して燃料分配管6へと供給される。そして、燃料分配管6内の高圧燃料は、図示せぬECUからの出力信号によって駆動される燃料噴射弁Jを介して吸気管7内へ噴射供給され、もって機関の運転が行なわれる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の燃料噴射装置のベーパーセパレータVにおける定液面制御機構Nによると以下の課題を有する。すなわち、ベーパーセパレータV内に貯溜される燃料が少なく、未だベーパーセパレータV内に一定液面X−Xが形成されない低液面状態時における運転時において問題が生ずる。図3によって詳述すると、ベーパーセパレータV内に未だ一定液面X−Xが形成されない低液面状態において、フロート5は軸3を中心に大きく反時計方向へ回動し、ベーパーセパレータVの底部より立設される規制部11に当接され、フロート5は低液面より上方に位置することになる。以上によると、フロートアーム4と同期的に移動するフロートバルブ2はもっとも下方位置に配置されてバルブシート1は大きく開口し、低圧燃料流路8内の低圧燃料はバルブシート1を介してベーパーセパレータV内へ流入する。ここでバルブシート1からベーパーセパレータV内へ流入する燃料の挙動について着目すると、バルブシート1からベーパーセパレータV内へ流入する燃料は、バルブシート1の内周とフロートバルブ2の外周との間隙を介してベーパーセパレータV内へ流入するもので、このときその燃料の一部はフロートアーム4からフロート5に伝わって流下するもので、フロート5を伝わる燃料はフロート5の外周あるいは底部から「しずく」となって下方の液面に向かって滴下する。そして、この「しずく」が液面に滴下することによると、それぞれの「しずく」はすでに貯溜される燃料中に気泡を巻きこむことになる。この気泡を巻きこんだ状態は図3に示される。そして、かかる状態にあるベーパーセパレータV内の燃料が燃料吸入孔9を介して高圧燃料ポンプPHに吸入されて吐出されることによると、燃料噴射弁Jより噴射される燃料中に気泡が含まれることになる。従って燃料噴射弁Jより吸気管7内に噴射される燃料量に「バラツキ」が生じたり、「燃料の断続」が生じ、機関の運転性が阻害される恐れがある。又、特に高圧燃料ポンプPHとして、インペラを回転し、インペラの外周にある羽根溝前後で圧力差を発生して燃料を昇圧して吐出するウエスコ式ポンプを用いた場合、前記気泡はポンプの吐出性能を大きく低下させることがある。
【0004】
本発明になる船外機用機関における燃料噴射装置は前記不具合に鑑み成されたもので、特にベーパーセパレータ内に一定液面が未だ形成されない低液面状態において、フロートから滴下する「しずく」によってベーパーセパレータ内の燃料中に生起する気泡を高圧燃料ポンプの燃料吸入孔より引離し、この気泡が高圧燃料ポンプの燃料吸入孔より吸入されにくくし、もって燃料噴射弁より正確にして安定した燃料を連続的に噴射供給し、機関の運転性を向上することを目的とする。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明になる船外機用機関における燃料噴射装置は前記目的の為に、燃料タンク内の燃料が低圧燃料ポンプによって昇圧され、低圧燃料流路を介してベーパーセパレータ内へ供給されるとともにベーパーセパレータ内に定液面制御機構によって一定液面が形成されて気液分離され、ベーパーセパレータ内の燃料が高圧燃料ポンプによって昇圧されて、燃料噴射弁に向けて供給される船外機用機関における燃料噴射装置において、ベーパーセパレータに配置される定液面制御機構は、低圧燃料流路の端部に配置されてベーパーセパレータ内に開口するバルブシートと、前記バルブシートを開閉するフロートバルブと、一端が軸に回転自在に支持され、フロートバルブを開閉動作するフロートアームを備えるフロートとよりなり、前記バルブシートは、シート部から下方に向かって開口するフロートバルブガイド孔を備えるフロートバルブガイド筒部とフロートバルブガイド孔からフロートバルブガイド筒部の外周に向かい略水平方向に穿設される複数の燃料排出孔と、を備え、
又、バルブシートを支持するバルブシート支持ボスには、下方に向かって開口する環状室と、環状室からフロートと反対方向のバルブシート支持ボスの外周に向けて穿設される切欠き孔とが形成され、前記バルブシートをバルブシート支持ボスに圧入支持し、バルブシートの一部の燃料排出孔を環状室、切欠き孔に臨んで配置するとともに他の一部の燃料排出孔を環状室に臨んで配置し、更に高圧燃料ポンプの燃料吸入孔を、筐体の底部であって、フロートの基部側に臨んで立設された隔壁よりフロートの先端側に開口したことを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明によると、バルブシートのシート部を通過する燃料は、バルブシートの外周とフロートバルブガイド孔とによって形成される間隙と、燃料排出孔よりベーパーセパレータの筐体内に流れこむ。一部の燃料排出孔より流出する燃料の一部は、環状室、バルブシート支持ボスの切欠き孔を介して直接的にフロートと反対方向の筐体の壁部に衝突した後に筐体内に落下するもので、これによると燃料の流速は、前記筐体の壁部との衝突によって低下するもので、ベーパーセパレータ内における気泡の発生を抑止できる。又、他の一部の燃料排出孔より流出する燃料の一部は、環状室から隔壁よりフロートの基部側の筐体内に落下する。一方、高圧燃料ポンプの燃料吸入路は隔壁よりフロートの先端側に開口されるので、隔壁よりフロートの基部側の筐体内に生起する気泡を吸入することが効果的に抑止される。
【0007】
【実施例】
以下、本発明になる船外機用機関における燃料供給装置の一実施例を図により説明する。図1にはベーパーセパレータVが示される。尚、図3と同一構造部分は同一符号を使用する。バルブシート1はシート部1Aと、シート部1Aから下方に向かって連設されて開口するフロートバルブガイド孔1Bを備え、これらはフロートバルブガイド筒部1Cの内方に穿設される。又、シート部1Aの近傍のフロートバルブガイド孔1Bにはフロートバルブガイド筒部1Cの外周に向かう複数の燃料排出孔1Dが穿設されるもので、この燃料排出孔1Dは略水平方向に穿設される。このバルブシート1はその先端部がバルブシート支持ボスFAに圧入支持されるもので、このときバルブシート1の燃料排出孔1Dはバルブシート支持ボスFAに形成され、下方に向かって開口する環状室FB内に開口する。そして、バルブシート支持ボスFAのフロート5と反対方向(図1において右側)のボス部に切欠き孔FCが穿設される。前述の如く、バルブシート1の先端は、バルブシート支持ボスFAに圧入配置されるものであるが、このときバルブシート1に穿設される一部の燃料排出孔1Dはバルブシート支持ボスFAの切欠き孔FCに臨んで配置され、他の一部の燃料排出孔1Dは環状室FBに臨んで配置される。すなわち、バルブシート1の一部の燃料排出孔1Dは、環状室FBから切欠き孔FCを介してフロート5と反対方向の筐体Fの壁部FDに臨んで開口し他の一部の燃料排出孔1Dは環状室FBに臨んで開口する。以上の如く、配置されたバルブシート1内にフロートバルブ2が挿入配置される。
又、筐体Fの底部に、フロート5の基部5A側に臨む隔壁FEを立設し、この隔壁FEよりフロート5の先端5B側に高圧燃料ポンプPHの燃料吸入孔9を開口する。
【0008】
次にその作用について説明する。筐体F内に形成される液面が一定液面にまで上昇していない低液面状態において、フロートバルブ2はフロート5のフロートアーム4と同期して下方位置にありフロートバルブ2は、シート部1Aを開放保持する。ここで低圧燃料流路8より低圧燃料がシート部1Aに向かって供給されると、シート部1Aを通過した燃料は、第1の燃料流れとしてフロートバルブ2とフロートバルブガイド孔1Bとの間隙を介して筐体F内に流入する。第2の燃料流れとして燃料排出孔1D、環状室FBを介して筐体F内に流入する。ここで前記第1の燃料流れと第2の燃料流れとを比較すると、燃料流れに対する抵抗は第2の燃料流れが小なるものである。これは第1の燃料流れに対する抵抗が、フロートバルブ2の外周とフロートバルブガイド孔1Bとの微少なる間隙によって決定されるのに対し、第2の燃料流れに対する抵抗が、孔形状をなす燃料排出孔1Dと環状室FBとによって決定されることによるもので、これによると、第2の燃料流れを通過する流出燃料が第1の燃料流れを通過する燃料流れより多くなる傾向が理解される。一方、第2の燃料流れにおいて、複数の燃料排出孔1Dから環状室FB内へ流出する燃料流れについて着目すると、切欠き孔FCに臨んで開口する一部の燃料排出孔1Dから流出する燃料が他の一部の燃料排出孔1D(切欠き孔FCに臨むことなく単に環状室FB内に開口する燃料排出孔)から流出する燃料より多くなる傾向がある。これは、他の一部の燃料排出孔1Dの開口の近傍に環状室FBの壁が配置されるのに対し、切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dの開口の近傍に切欠き孔FCが配置されて開放保持されるからである。以上によると、第2の燃料流れにおいて、切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dより多量の燃料が排出されることになる。
【0009】
以上をまとめて再述すると、シート部1Aからフロートバルブガイド孔1B内に流入する燃料は第1の燃料流れと第2の燃料流れとに分流され、このとき第1の燃料流れに対して第2の燃料流れが多くの燃料を流すことになる。又、第2の燃料流れにあっては、単に環状室FBに臨む他の一部の燃料排出孔1Dを通過する燃料に対し、切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dより多くの燃料を流すことになる。
【0010】
ここで切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dより流出する燃料について着目すると、この燃料流れは、切欠き孔FCを通過した後に筐体Fのフロート5と反対側の壁部FDに衝突した後に、流れ方向を略直角方向変換されて筐体F内に落下流入する。以上によると、切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dより流出する多量の燃料は、フロート5と反対方向の壁部FDに衝突することによってその燃料の流速が低減されて筐体F内の低液面に向かって落下するもので、これによると液面内に気泡を巻きこむことが制御される。一方、環状室FBの下方の開口及びフロートバルブ2とフロートバルブガイド孔1Bとの間隙を介して燃料が筐体F内に流出するものであり、これによって低液面内に気泡が巻きこまれるものであるが、この気泡は隔壁FEよりフロート5の基部5A近傍の液面内に限定される。すなわち、低液面状態において、切欠き孔FCに臨む一部の燃料排出孔1Dより排出される比較的多量の燃料によって生起される気泡を大きく減少できる。又、他の一部の燃料排出孔1D(単に環状室FB内に開口する)及びフロートバルブ2の外周から流出する燃料によって生起される気泡を隔壁FEよりフロート5の基部5Aの近傍に集めることができる。そして、高圧燃料ポンプPHの燃料吸入孔9を隔壁FEよりフロート5の先端5Bに臨むベーパーセパレータV内に開口したので、フロート5の基部5A側の低液面に生起する気泡をより効果的に高圧燃料ポンプPHの燃料供給孔9と区分することができ、高圧燃料ポンプPHが気泡を吸入することが大きく抑止される。以上によると、燃料噴射弁Jから吸気管7内に向けて噴射供給される燃料を正確にしてかつ安定して供給できるとともに連続的に供給でき、もって機関の運転性を大きく向上できたものである。又、高圧燃料ポンプPH内に吸入される燃料中に気泡が含まれにくくなったことによってポンプの吐出性能の低下を抑止できる。
【0011】
【発明の効果】
以上の如く、本発明によると、筐体内の液面が低液面状態において、切欠き孔に臨む一部の燃料排出孔より排出される比較的多量の燃料による気泡の発生を大きく減少できるとともに他の一部の燃料排出孔及びフロートバルブの外周を介して流出する燃料によって生起する気泡を隔壁よりフロートの基部側に集めることかでき、一方高圧燃料ポンプの燃料吸入孔を隔壁よりフロートの先端に臨んで開口させたので、フロートの基部側に集められる気泡と高圧燃料ポンプの燃料吸入孔とが隔壁によって確実に区分され、燃料噴射弁より正確にして安定した燃料を連続して噴射保持できるとともに高圧燃料ポンプの吐出性能の劣化が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明になる船外機用機関における燃料噴射装置に用いられるベーパーセパレータの一実施例を示す縦断面図。
【図2】 従来の船外機用機関における燃料噴射装置のシステム図。
【図3】 図2のシステムに用いられるベーパーセパレータの縦断面図。
【符号の説明】
1 バルブシート
1A シート部
1B フロートバルブガイド孔
1C フロートバルブガイド筒部
1D 燃料排出孔
2 フロートバルブ
5 フロート
5A 基部
5B 先端
F 筐体
FE 隔壁
PH 高圧燃料ポンプ
Claims (1)
- 燃料タンク内の燃料が低圧燃料ポンプによって昇圧され、低圧燃料流路を介してベーパーセパレータ内へ供給されるとともにベーパーセパレータ内に定液面制御機構によって一定液面が形成されて気液分離されベーパーセパレータ内の燃料が高圧燃料ポンプによって昇圧されて、燃料噴射弁に向けて供給される船外機用機関における燃料噴射装置において、ベーパーセパレータ(V)に配置される定液面制御機構(N)は、低圧燃料流路(8)の端部に配置されてベーパーセパレータ(V)内に開口するバルブシート(1)と、前記バルブシートを開閉するフロートバルブ(2)と、一端が軸(3)に回転自在に支持され、フロートバルブ(2)を開閉動作するフロートアーム(4)を備えるフロート(5)とよりなり、前記バルブシートは、シート部(1A)から下方に向かって開口するフロートバルブガイド孔(1B)を備えるフロートバルブガイド筒部(1C)とフロートバルブガイド孔(1B)からフロートバルブガイド筒部(1C)の外周に向かい略水平方向に穿設される複数の燃料排出孔(1D)と、備え、
又、バルブシート(1)を支持するバルブシート支持ボス(FA)には、下方に向かって開口する環状室(FB)と、環状室(FB)からフロート(5)と反対方向のバルブシート支持ボス(FA)の外周に向けて穿設される切欠き孔(FC)とが形成され、前記バルブシートをバルブシート支持ボス(FA)に圧入支持し、バルブシート(1)の一部の燃料排出孔(1D)を環状室(FB)、切欠き孔(FC)に臨んで配置するとともに他の一部の燃料排出孔(1D)を環状室(FB)に臨んで配置し、更に高圧燃料ポンプ(PH)の燃料吸入孔(9)を、筐体(F)の底部であって、フロート(5)の基部(5A)側に臨んで立設された隔壁(FE)よりフロート(5)の先端(5B)側に開口したことを特徴とする船外機用機関における燃料噴射装置。
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