JP3959871B2 - 光スターカプラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバを伝送媒体に用いた光通信ネットワーク等において、光信号を分配または結合させる際に使用される光スターカプラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光信号を分配または結合させる方法として、光学ミラーを使って光信号の進行方向を固定させたり、プリント基板のように光導波路を同一平面上に形成させて進行方向を制御させたりする方法があった。
【0003】
また、対のプラスチック光ファイバを互いに溶着接合して分岐結合部を構成し、その分岐結合部を通じて光信号を抽出する光カプラもある。
【0004】
例えば、特開昭62−299808号公報に開示の如くである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、分岐結合部を超音波溶着により形成する超音波溶着型の光カプラにおいては、主線側の出力光には入力光がそのまま直進して伝搬してくる光の成分が多く、分岐側の出力光には入力光が分岐結合部や光ファイバ内で反射して伝搬してくる光の成分が多くなる傾向にある。
【0006】
これは、光の損失を抑えるために元の光ファイバの形状をなるべく保とうとする超音波溶着型の光カプラ特有の問題であり、これに対し、溶着される分岐結合部を延伸させる溶着延伸型の光カプラでは、分岐結合部の光ファイバの太さが狭められているので、このような問題は起こりにくい。
【0007】
そして、この「偏り」のある光信号をさらに分岐する4×4の光スターカプラにおいては、「偏り」がさらに拡大していくことになる。
【0008】
また、前記特開昭62−299808号公報に開示のように、光カプラの分岐結合部をモードスクランブラに構成すると、出力光の「偏り」は是正されるが、モードスクランブラでの反射損失が増加し、分岐の段数に応じてその損失が積み重なっていく。
【0009】
従って、4×4の光スターカプラにおいては、モードスクランブラを兼ねた分岐結合部が2個直列状態となるため、モードスクランブラ2個分の光の損失が生じる。
【0010】
そこで、この発明は光の損失を有効に防止して、出力側での光信号の偏りを防止し、分配性能の向上を図った光スターカプラを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための第1の技術的手段は、2n本の光ファイバが、それぞれ対の互いに超音波溶着された分岐結合部を上流側から下流側に向けて複数段備えられてなる光スターカプラにおいて、上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバを最小曲げ半径よりも大きい円弧状に曲げた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備え、前記最小曲げ半径よりも大きい円弧状の光ファイバ装填溝が形成されたスクランブラ形成体における前記光ファイバ装填溝に、前記各分岐結合部間の各光ファイバが装填固定されて、前記モードスクランブラ部が構成された点にある。
【0013】
さらに、前記光ファイバ装填溝が8の字形状に形成された構造としてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するための第2の技術的手段は、2n本の光ファイバが、それぞれ対の互いに超音波溶着された分岐結合部を上流側から下流側に向けて複数段備えられてなる光スターカプラにおいて、上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバ全体に捻りを加えた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備えた点にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、第1発明にかかる第1の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1および図2において、10は4×4の光スターカプラで、4本の光ファイバ11のうち2本毎、互いに超音波溶着された分岐結合部12を上流側から下流側に向けて2段に備えられている。
【0016】
そして、従来における4×4の光スターカプラにあってはなるべく近接配置される上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との距離Lを、本実施形態にあってはより長い所定長さ離した構造とされ、この上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との間に位置する各光ファイバ11を、曲げによって光の損失が生じない最小曲げ半径よりも大きい円弧状に曲げた状態で保持するモードスクランブラ部13が備えられている。
【0017】
このモードスクランブラ部13は、前記最小曲げ半径よりも大きい曲げ半径Rを有する円弧状の光ファイバ装填溝14が形成されたスクランブラ形成体15を備え、スクランブラ形成体15の光ファイバ装填溝14に、前記上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との間に位置する各光ファイバ11が装填された状態で固定されている。
【0018】
従って、光ファイバ11を伝搬する光信号は、コアおよびクラッド層の界面で全反射を繰り返しながら進行し、また経路の屈曲などによって伝搬モードがその都度変えられながら伝搬する。そして、光ファイバ11の一部が接合された分岐結合部12から出射するいわゆる偏った分布を有する光信号は、下流側の分岐結合部12に至るまでに、円弧状に曲げられたモードスクランブラ部13で平坦な光強度分布とされ、その下流側の分岐結合部12では、その上流側の分岐結合部12と同様の特性で光信号の分配がなされる。
【0019】
以上のように、下流側の分岐結合部12に至る間に、モードスクランブラ部13によって光強度分布の平坦化が図られるため、従来のように各段の分岐結合部毎に光信号の偏りが拡大することもなく、出力側での光信号の偏りが有効に防止でき、分配性能の向上が図れる。
【0020】
また、前述従来公報に開示のように分岐結合部にモードスクランブラ機能を備えた構造の場合と比較して、上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12間にモードスクランブラ機能を備えたモードスクランブラ部13を備えた構造であり、モードスクランブラの数の低減が図れ、モードスクランブラによる光の損失も有効に防止できる。
【0021】
次に、上記実施形態における具体的実施例について説明する。
【0022】
使用する光ファイバは、1層クラッド型プラスチック光ファイバで、クラッドはフッ化アクリルレートで形成されている。また、直径は1.0mm、コア径は0.97mmであり、コア屈折率は1.495、クラッド屈折率は1.375、開口数は0.6である。
【0023】
そして、光ファイバを長手方向に平行に並べ、その一部を以下の条件で超音波溶着する。
【0024】
即ち、光ファイバ同士の互いに溶着される接合長は20mm、光ファイバの主線側を下段の不動アンビルに固定し、光ファイバの分岐側を上段の振動アンビルに固定する。なお、超音波接合用アンビル(固定治具)の光ファイバ接触面は滑らかに加工され、光ファイバ側面に傷などが転写されない構造とされている。
【0025】
また、超音波エネルギーは21KHz、100W以下とされ、接合時間は10秒以内に設定する。接合形態は、圧縮率で20%以下にする。
【0026】
以上の条件で2本の光ファイバの一部(20mm)を超音波溶着して、できあがったサンプルの形態は、超音波ホーンと振動/不動アンビルで固定されたままの状態で形状は安定していた。
【0027】
そして、その接合部分、即ち、分岐結合部12から距離L=60mm離したところに次の接合部分(分岐結合部12)を同様に形成し、図2に示される構造の光スターカプラ10を構成する。
【0028】
そして、上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との間に位置する各光ファイバ11が、スクランブラ形成体15における曲げ半径R=15mmの光ファイバ装填溝14に装填された状態で図示省略の蓋体等により固定される。
【0029】
次に、この光スターカプラ10の一方側(図2に示すA、B、C、D)より、700nm、38μWの安定化光源を入射光として入力し、他方側(図2に示すE、F、G、H)からの出力を測定した結果および、過剰損失=−10×log{(出力光トータル)/(入力光トータル)}を、以下の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
また、同一プラスチック光ファイバを使用した同様構成の光スターカプラで、上流側の分岐結合部と下流側の分岐結合部との距離Lが20mmで、その間の各光ファイバが曲げなしの場合(比較カプラ)の比較データを以下の表2に示し、従来の標準的なプラスチック光ファイバ(開口数0.5)を使用した同様構成の光スターカプラ(従来カプラ)の比較データを以下の表3に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
即ち、A〜Dの各入力ポートに38μWの測定光を入力した場合、E〜Hの各出力ポートから9.5μW〜6.73μWの光出力が得られ、本実施例におけるA入力ポートの場合、各出力ポート(E〜H)間の最大出力差は2.763μW(全体の7、3%)であり、比較カプラにおけるA入力ポートの場合、各出力ポート(E〜H)間の最大出力差は3.308μW(全体の8.7%)であった。
【0035】
従って、従来カプラと比較して過剰損失値も小さく、出力側では均等に近いレベルの光信号が得られ、比較カプラと比較しても出力側ではより均等に近いレベルの光信号が得られ、分配性能が向上したことが解る。
【0036】
即ち、光スターカプラ10を構成する場合、光ファイバ11同士を接合する分岐結合部12間の間隔の距離Lを大きくとり、その部分で最小曲げ半径より大きな円弧状に曲げるとよく、プラスチック光ファイバの接合形状を複雑に設計することなく光信号の出力差を小さく抑えることができる。
【0037】
図3は第1発明における第2の実施形態を示しており、スクランブラ形成体15に複数の光ファイバ装填溝14が形成され、上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との間の各光ファイバ11がいわゆるSの字形状に曲げられた構造とされている。
【0038】
そして、この場合も上記第1の実施形態と同様の効果が得られ、入出力ポートの位置が向かい合っている場合の光スターカプラ10に適する。
【0039】
図4は第1発明における第3の実施形態を示しており、スクランブラ形成体15に所定の曲げ半径Rの光ファイバ装填溝14が8の字形状に形成された構造とされている。
【0040】
そして、具体的には、上記第1の実施形態と同様のプラスチック光ファイバ11が使用され、図2に示される光スターカプラ10における上流側の分岐結合部12と下流側における分岐結合部12との距離Lを150mmとし、スクランブラ形成体15における曲げ半径R=15mmの8の字形状に形成された光ファイバ装填溝14に各光ファイバ11が装填された状態で図示省略の蓋体等により固定される。
【0041】
そして、第1の実施形態と同様に、光スターカプラ10の一方側(図2に示すA、B、C、D)より、700nm、38μWの安定化光源を入射光として入力し、他方側(図2に示すE、F、G、H)からの出力を測定した結果および、過剰損失を、以下の表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
従って、第1の実施形態と同様の結果が得られ、同様の利点が得られる。
【0044】
図5は第2発明における実施形態を示しており、第1発明における実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
即ち、本実施形態においては、上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12との間に、その間の各光ファイバ11全体に捻りを加えた状態で保持するモードスクランブラ部17を備えた構造とされている。また、モードスクランブラ部17はその捻り状態を保持すべく、例えば、保持ケース18に収容された構造とされている。
【0046】
従って、第1発明と同様、下流側の分岐結合部12に至る間に、モードスクランブラ部17によって光強度分布の平坦化が図られるため、従来のように各段の分岐結合部毎に光信号の偏りが拡大することもなく、出力側での光信号の偏りが有効に防止でき、分配性能の向上が図れる。
【0047】
また、前述従来公報に開示のように分岐結合部にモードスクランブラ機能を備えた構造の場合と比較して、上流側の分岐結合部12と下流側の分岐結合部12間にモードスクランブラ機能を備えたモードスクランブラ部17を備えた構造であり、モードスクランブラの数の低減が図れ、モードスクランブラによる光の損失も有効に防止できる。
【0048】
さらに、この捻りを加えたモードスクランブラ部17方式の場合、入出力ポートの位置が向かい合っている場合の光スターカプラ10に適し、過度な曲げを伴うモードスクランブラよりも低過剰損失を維持する上で好ましく、製品全体としての容積もコンパクトに構成できる利点がある。
【0049】
そして、具体的には、上記第1発明の第1の実施形態と同様のプラスチック光ファイバ11が使用され、図2に示される光スターカプラ10における上流側の分岐結合部12と下流側における分岐結合部12との距離Lを60mmとし、上流側の分岐結合部12と下流側における分岐結合部12との間における各光ファイバ11は、4本束ねて各分岐結合部12に負荷がかからないように全体を2回ひねってモードスクランブラ部17が構成されている。なお、この捻りによって生じる各光ファイバ11の曲げ状態は最小曲げ半径よりも大きい弧になるように構成される。
【0050】
そして、第1発明の第1の実施形態と同様に、光スターカプラ10の一方側(図2に示すA、B、C、D)より、700nm、38μWの安定化光源を入射光として入力し、他方側(図2に示すE、F、G、H)からの出力を測定した結果および、過剰損失を、以下の表5に示し、また、モードスクランブラ部17を形成しない場合(比較カプラ)の比較データを以下の表6に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
この場合も前述同様、A〜Dの各入力ポートに38μWの測定光を入力した場合、E〜Hの各出力ポートから9.5μW〜6.73μWの光出力が得られ、本実施例におけるA入力ポートの場合、各出力ポート(E〜H)間の最大出力差は2.763μW(全体の7、3%)であり、比較カプラにおけるA入力ポートの場合、各出力ポート(E〜H)間の最大出力差は3.308μW(全体の8.7%)であった。
【0054】
従って、比較カプラと比較しても出力側ではより均等に近いレベルの光信号が得られ、分配性能が向上したことが解る。
【0055】
上記第1発明および第2発明の各実施形態において、4×4の光スターカプラ10を使用した構造を示しているが、8×8の光スターカプラ10であっても上流側から第1段目の分岐結合部12とその次の下流側の第2段目の分岐結合部12との間にモードスクランブル部13、17を備え、第2段目の分岐結合部12とその次の下流側の第2段目の分岐結合部12との間にモードスクランブル部13、17を備えることによって同様に構成でき、同様の利点が得られる。また、さらにより多数の2n(この場合、nは4以上の整数)の光ファイバ11を使用した場合にも、上流側の分岐結合部12とその次の下流側の分岐結合部12との間にモードスクランブル部13、17を順次備えていけばよい。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光スターカプラによれば、上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバを最小曲げ半径よりも大きい円弧状に曲げた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備え、最小曲げ半径よりも大きい円弧状の光ファイバ装填溝が形成されたスクランブラ形成体における光ファイバ装填溝に、各分岐結合部間の各光ファイバが装填固定されて、モードスクランブラ部が構成されたものであり、また、上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバ全体に捻りを加えた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備えたものであり、光の損失を有効に防止して、出力側での光信号の偏りを防止し、分配性能の向上が図れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明の第1実施形態にかかる光スターカプラの説明図である。
【図2】同光スターカプラの説明図である。
【図3】第1発明の第2実施形態にかかる光スターカプラの説明図である。
【図4】第1発明の第3実施形態にかかる光スターカプラの説明図である。
【図5】第2発明の実施形態にかかる光スターカプラの説明図である。
【符号の説明】
10 光スターカプラ
11 光ファイバ
12 分岐結合部
13 モードスクランブラ部
14 光ファイバ装填溝
15 スクランブラ形成体
17 モードスクランブラ部
18 保持ケース
Claims (3)
- 2n本の光ファイバが、それぞれ対の互いに超音波溶着された分岐結合部を上流側から下流側に向けて複数段備えられてなる光スターカプラにおいて、
上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバを最小曲げ半径よりも大きい円弧状に曲げた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備え、
前記最小曲げ半径よりも大きい円弧状の光ファイバ装填溝が形成されたスクランブラ形成体における前記光ファイバ装填溝に、前記各分岐結合部間の各光ファイバが装填固定されて、前記モードスクランブラ部が構成されたことを特徴とする光スターカプラ。 - 前記光ファイバ装填溝が8の字形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の光スターカプラ。
- 2 n 本の光ファイバが、それぞれ対の互いに超音波溶着された分岐結合部を上流側から下流側に向けて複数段備えられてなる光スターカプラにおいて、
上流側の分岐結合部とその次の下流側の分岐結合部との間に、その間の各光ファイバ全体に捻りを加えた状態で保持するモードスクランブラ部を、それぞれ備えたことを特徴とする光スターカプラ。
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