JP3959357B2 - 受信システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のセンサで同時に観測された複数の信号を処理することにより所望の情報を得る受信システムに関し、特にその校正を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のセンサを備えた受信システムとして、各センサからのアナログ信号をアンプで増幅し、増幅された信号をサンプリング部でサンプリングすることによりデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号をデジタル信号処理部で処理することにより、信号の到来方向を測定するアレイ方向探知装置や、アダプティブな受信、つまり指向性を有する受信ビームパターンを形成しながら所望の信号を受信するアレイ受信システムが知られている。
【0003】
このような受信システムにおいては、信号の到来方向を測定したり、アダプティブな受信を行う原理上、複数のセンサからそれぞれアンプ及びサンプリング部を経由してデジタル信号処理部に至る複数の信号経路は、電気的な特性が均一であることが要求される。この特性が均一でないと、方向探知においては方位誤差が生じ、アダプティブな受信においては干渉波抑圧性能の低下や所望信号の感度低下につながる。
【0004】
そこで、従来の受信システムでは、その性能を維持するために、複数の信号経路間の電気的な特性の偏差を校正する手段を備えている。例えば、5基のアンテナを備えたアレイアンテナシステムにおいては、各信号経路の入力端に例えば正弦波信号からなる校正用信号を供給し、デジタル信号処理部において校正用信号の振幅と位相を検出する。これにより、5つの信号経路の相互間の偏差が求められるので、求められた偏差を偏差値として記録しておく。そして、実際の運用において信号が捕捉された際に、捕捉された信号を偏差値に相当する分だけ補正する。
【0005】
この従来の受信システムでは、校正用信号を信号経路に供給する方法として、例えば、図10に示すように、センサ10からの信号と校正用信号発生部160からの校正用信号とをスイッチ120で切り替えて信号経路に供給して信号処理回路150で処理する方法がある。また、図11に示すように、センサ10からの信号に校正用信号発生部160からの校正用信号を方向性結合器121により重畳させて信号経路に供給して信号処理回路150で処理する方法がある。
【0006】
また、校正用信号を信号経路に供給する従来の技術として、例えば特許文献1がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−121714号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した受信システムにおいて、センサからの信号と校正用信号とをスイッチで切り替える方法を採用する場合には、校正作業が行われている間は、センサからの信号が遮断されるので、受信システムの運用を停止する必要がある。
【0009】
一方、センサからの信号に校正用信号を方向性結合器により重畳させる方法を採用する場合には、校正用信号とセンサからの信号とが干渉し合い、校正及び運用にそれぞれ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
さらに、校正すべき周波数範囲が広い場合には、校正用信号の周波数を順次変更しながら校正作業を繰り返す必要があり、その校正作業に多大の時間が必要となる。
【0011】
そこで、本発明の第1の課題は、運用を停止することなく校正作業を行うことができる受信システムを提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の課題は、校正及び運用に悪影響を及ぼすことなく校正作業を行うことができる受信システムを提供することにある。
【0013】
更に、本発明の第3の課題は、校正作業を短時間で行うことができる受信システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る受信システムは、第1の課題を達成するために、複数のセンサを含むセンサ部と、校正用信号を発生する校正用信号発生部と、前記センサ部の中からセンサを順次選択し、選択されたセンサからの信号が流れる信号経路に前記校正用信号発生部で発生された校正用信号を供給する校正用信号供給部と、前記校正用信号供給部によって前記校正用信号が供給された前記信号経路の特性を所定の特性を基準として求める校正処理部と、前記センサ部の中から選択されたセンサ以外のセンサの信号経路から送られてくる信号を前記校正処理部で求めた特性に基づいて補正した後に処理するデジタル信号処理部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る受信システムは、複数のセンサを備えていることを利用し、全てのセンサの信号経路を同時に校正するのではなく、各センサを順次選択しながらその信号経路を校正し、或るセンサの校正中は残りのセンサからの信号を処理することにより、例えば方向探知や受信等を行う。より具体的には、校正は、所定の特性、例えば設計時に計算された信号経路の特性を基準にして、順次選択されたセンサの信号経路の特性を求めることにより行われる。そして、あるセンサの信号経路の校正中は、他のセンサの信号経路から送られてくる信号を既に求めた特性に基づいて補正した後に処理することにより運用を行う。これにより、受信システムの運用を停止することなく校正作業を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る受信システムにおいて、前記校正用信号供給部は、前記センサ部の中から一対のセンサの一方を固定的に他方を順次選択し、選択された一対のセンサからの信号が流れる一対の信号経路に前記校正用信号発生部で発生された校正用信号を供給し、前記校正処理部は、前記校正用信号供給部によって前記校正用信号が供給された前記一対の信号経路の一方の信号経路の特性を基準として他方の信号経路の特性を求め、前記デジタル信号処理部は、前記センサ部の中から選択された一対のセンサ以外のセンサの信号経路から送られてくる信号を前記校正処理部で求めた特性に基づいて補正した後に処理するように構成できる。
【0017】
この構成によれば、1つのセンサの信号経路の特性を基準として他のセンサの特性を求めることができるので、例えば設計時に計算された信号経路の特性が不知であっても、運用中の受信システムだけを用いて校正を行うことができる。この場合、2つのセンサを用いて校正が行われ、これと並行して、残りのセンサを用いた運用が行われることになる。
【0018】
また、本発明に係る受信システムは、第2の課題を達成するために、前記校正用信号供給部は、前記センサ部に含まれる各センサからの信号及び前記校正用信号発生部からの前記校正用信号の何れかを選択するスイッチから構成することができる。
【0019】
この構成によれば、センサの信号経路には、センサからの信号又は校正用信号発生部からの校正用信号の何れか一方しか流れないので、センサからの信号と校正用信号とが干渉し合うことはないので、校正及び運用にそれぞれ悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0020】
また、本発明に係る受信信号は、第3の課題を達成するために、前記校正用信号発生部で発生される校正用信号は、所定の周波数帯域の複数の周波数成分を含み、前記校正処理部は、前記校正用信号供給部から供給される前記校正用信号に含まれる周波数成分を抽出し、各周波数成分について前記特性を求めるように校正できる。
【0021】
この構成によれば、校正すべき周波数範囲が広い場合であっても、校正用信号の周波数を順次変更しながら校正作業を繰り返す必要はなく、1つの校正用信号を与えるだけで済むので、校正作業を短時間で行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る受信システムでは、センサとしてアンテナが使用される。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る受信システムの構成を示すブロック図である。この受信システムは、アンテナ部10、校正用信号供給部20、アナログ回路30、サンプリング部40、デジタル信号処理部50、校正用信号発生部60及び時分割制御部70から構成されている。
【0024】
アンテナ部10は、第1アンテナ101、第2アンテナ102、第3アンテナ103、・・・、第nアンテナ10nといったn個のアンテナから構成されている。校正用信号供給部20は、第1スイッチ201、第2スイッチ202、第3スイッチ203、・・・、第nスイッチ20nといったn個のスイッチから構成されている。
【0025】
アナログ回路30は、第1アナログ回路301、第2アナログ回路302、第3アナログ回路303、・・・、第nアナログ回路30nといったn個のアナログ回路から構成されている。サンプリング部40は、第1サンプリング部401、第2サンプリング部402、第3サンプリング部403、・・・、第nサンプリング部40nといったn個のサンプリング部から構成されている。
【0026】
なお、以下では、第1アンテナ101から第1スイッチ201、第1アナログ回路301及び第1サンプリング部401を経由してデジタル信号処理部50に至る経路を第1信号経路と呼ぶ。同様に、第2アンテナ102〜第nアンテナ10nから第2スイッチ202〜第nスイッチ20n、第2アナログ回路302〜第nアナログ回路30n及び第2サンプリング部402〜第nサンプリング部40nをそれぞれ経由してデジタル信号処理部50に至る経路を第2信号経路〜第n信号経路と呼ぶ。
【0027】
アンテナ部10に含まれる第1アンテナ101〜第nアンテナ10nとしては、バーチカルアンテナ、ダイポールアンテナといった無指向性のアンテナ、及び任意の指向性を有するアンテナを用いることができ、種々の方向からの電波を受信する。これら第1アンテナ101〜第nアンテナ10nの設置間隔や高さは任意である。
【0028】
第1アンテナ101は、空中からの複数の入射信号(電波)を受信し、これら入射信号が混合された信号をセンサ信号として第1スイッチ201に送る。同様に、第2アンテナ102〜第nアンテナ10nは、空中からの複数の入射信号(電波)を受信し、これら入射信号が混合された信号をセンサ信号として第2スイッチ202〜第nスイッチ20nにそれぞれ送る。
【0029】
校正用信号供給部20に含まれる第1スイッチ201〜第nスイッチ20nの各々は、図2に示すように、アンテナ部10からのセンサ信号及び校正用信号発生部60からの校正用信号の何れかを時分割制御部70からの選択信号に従って選択して出力する。
【0030】
具体的には、第1スイッチ201は、第1アンテナ101からのセンサ信号及び校正用信号発生部60からの校正用信号の何れかを、時分割制御部70からの第1選択信号S1に従って選択し、第1アナログ回路301に送る。同様に、第2スイッチ202〜第nスイッチ20nは、第2アンテナ102〜第nアンテナ10nからのセンサ信号及び校正用信号発生部60からの校正用信号の何れかを、時分割制御部70からの第2選択信号S2〜第n選択信号Snに従ってそれぞれ選択し、第2アナログ回路302〜第nアナログ回路30nに送る。
【0031】
第1アナログ回路301〜第nアナログ回路30nは、図示しない増幅器(アンプ)等から構成され、第1スイッチ201〜第nスイッチ20nからの信号をそれぞれ増幅して第1サンプリング部401〜第nサンプリング40nに送る。
【0032】
第1サンプリング部401〜第nサンプリング40nは、A/D変換器、デジタルフィルタ等から構成され、第1アナログ回路301〜第nアナログ回路30nから送られてくるアナログ信号をサンプリングすることによりデジタル信号に変換して、デジタル信号処理部50に送る。
【0033】
デジタル信号処理部50は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)から構成され、ソフトウェア処理によって実現される校正処理部51、受信処理部52及び方向探知処理部53を備えている。
【0034】
校正処理部51は、受信システムを校正するための校正処理を行う。この校正処理では、第1信号経路〜第n信号経路の特性を求める処理、具体的には、アンテナ部10から第1信号経路〜第n信号経路をそれぞれ経由して送られてきたセンサ信号の振幅及び位相の偏差を求める処理が行われる。この校正処理部51で行われる処理は、後に詳細に説明する。
【0035】
受信処理部52は、アンテナ部10から送られてくるセンサ信号を処理することにより、複数の入射信号が混合された信号から所望の入射信号を分離する処理を行う。受信処理部52では、所望の入射信号を分離するために、例えばブラインド信号分離或いは独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)と呼ばれるアルゴリズムが用られる。このアルゴリズムを用いることにより、アンテナの応答性や信号の性質、入射信号の予備知識なしでアンテナの数と同数までの入射信号を分離し、所望の入射信号を得ることができる。
【0036】
方向探知処理部53は、アンテナ部10から送られてくるセンサ信号を処理することにより入射信号の到来方向を求める。この入射信号の到来方向を求める処理の詳細は後で説明する。
【0037】
校正用信号発生部60は、デジタル信号処理部50からの制御信号に応答して校正用信号を発生する。時分割制御部70は、デジタル信号処理部50からの校正開始を表す制御信号に応答して、図3に示すような第1選択信号S1〜第n選択信号Snを発生し、第1スイッチ201〜第nスイッチ20nにそれぞれ供給する。第1選択信号S1は、校正の開始から終了までの間はオンにされる信号である。従って、校正が行われている間は、第1スイッチ201は、校正用信号発生部60からの校正用信号を出力し続ける。第2選択信号S2〜第n選択信号Snは、区間T1〜区間Tn−1の間でそれぞれオンにされる信号である。第2選択信号S2〜第n選択信号Snにより、第2スイッチ202〜第nスイッチ〜20nは、時分割で校正用信号を順次選択して出力する。
【0038】
次に、このように構成される本発明の第1の実施の形態に係る受信システムの動作を、図3に示したタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0039】
通常の運用状態では、デジタル信号処理部50は、時分割制御部70を駆動しない。従って、時分割制御部70は、インアクティブな第1選択信号S1〜第n選択信号Snを校正用信号供給部20に供給するので、校正用信号供給部20に含まれる第1スイッチ201〜第nスイッチ20nの全ては、第1アンテナ101〜第nアンテナ10nからのセンサ信号を第1信号経路〜第n信号経路をそれぞれ経由してデジタル信号処理部50に供給するように設定される。
【0040】
これにより、デジタル信号処理部50の受信処理部52は、アンテナ部10から送られてくるn個のセンサ信号を図示しない偏差値メモリに格納された偏差値に基づいて補正した後に処理し、複数の入射信号が混合された信号から所望の入射信号を分離する処理を行う。また、デジタル信号処理部50の方向探知処理部53は、アンテナ部10から送られてくるn個のセンサ信号を偏差値メモリに格納された偏差値に基づいて補正した後に処理し、入射信号の到来方向を求める。
【0041】
このような通常の運用状態において、図示しない操作パネル等から校正開始が指示されると、デジタル信号処理部50は、校正処理部51を起動する。起動された校正処理部51は、まず、校正開始を指示する制御信号を時分割制御部70に送る。
【0042】
制御信号を受け取った時分割制御部70は、まず区間T1において、図3(A)及び図3(B)に示すように、第1選択信号S1及び第2選択信号S2をアクティブにする。これにより、第1スイッチ201及び第2スイッチ202からなる一対のスイッチは、校正用信号発生部60からの校正用信号を出力するように設定され、その他のスイッチ、即ち第3スイッチ203〜第nスイッチ20nは、第3アンテナ103〜第nアンテナ10nからのセンサ信号をそれぞれ出力するように設定される。
【0043】
校正用信号発生部60からの校正用信号は、第1スイッチ201、第1アナログ回路301及び第1サンプリング部401からなる第1信号経路、並びに第2スイッチ202、第2アナログ回路302及び第2サンプリング部402からなる第2信号経路を、それぞれ経由してデジタル信号処理部50の校正処理部51に送られる。
【0044】
校正処理部51は、第1スイッチ201からの校正用信号を基準にして第2スイッチ202からの校正用信号の偏差を求め、これを第2信号経路の偏差値として偏差値メモリに格納する。具体的には、第1スイッチ201からの信号の振幅及び位相を基準にして第2スイッチ202からの信号の振幅及び位相の偏差が求められ、偏差値として偏差値メモリに格納される。
【0045】
一方、上記動作と並行して、第3アンテナ103〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号は、第3スイッチ203〜第nスイッチ20n、第3アナログ回路303〜第nアナログ回路30n及び第3サンプリング部403〜第nサンプリング部40nをそれぞれ経由してデジタル信号処理部50の受信処理部52及び方向探知処理部53に送られる。
【0046】
受信処理部52は、第3アンテナ103〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号を、偏差値メモリに格納されている偏差値に基づいて補正し、その後、n−2個の補正されたセンサ信号を処理することにより、複数の入射信号が混合された信号から所望の入射信号を分離する。
【0047】
また、方向探知処理部53は、第3アンテナ103〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号を、偏差値メモリに格納されている偏差値に基づいて補正し、その後、n−2個の補正されたセンサ信号を処理することにより、入射信号の到来方向を求める。
【0048】
上述したようにして区間T1が経過すると、次に、時分割制御部70は、区間T2において、図3(A)及び図3(C)に示すように、第1選択信号S1及び第3選択信号S3をアクティブにする。これにより、第1スイッチ201及び第3スイッチ203から成る一対のスイッチは、校正用信号発生部60からの校正用信号を出力するように設定され、その他のスイッチ、即ち第2スイッチ202、第4スイッチ204〜第nスイッチ20nは、第2アンテナ102、第4アンテナ104〜第nアンテナ10nからのセンサ信号をそれぞれ出力するように設定される。
【0049】
校正用信号発生部60からの校正用信号は、第1スイッチ201、第1アナログ回路301及び第1サンプリング部401からなる第1信号経路、並びに第3スイッチ203、第3アナログ回路303及び第3サンプリング部403からなる第3信号経路をそれぞれ経由してデジタル信号処理部50の校正処理部51に送られる。
【0050】
校正処理部51は、第1スイッチ201からの校正用信号を基準にして第3スイッチ203からの校正用信号の偏差を求め、これを第3信号経路の偏差値として偏差値メモリに格納する。具体的には、第1スイッチ201からの信号の振幅及び位相を基準にして第3スイッチ203からの信号の振幅及び位相の偏差が求められ、偏差値として偏差値メモリに格納される。
【0051】
一方、上記動作と並行して、第2アンテナ102、第4アンテナ104〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号は、第2スイッチ202、第4スイッチ204〜第nスイッチ20n、第2アナログ回路302、第4アナログ回路304〜第nアナログ回路30n及び第2サンプリング部402、第4サンプリング部404〜第nサンプリング部40nをそれぞれ経由してデジタル信号処理部50の受信処理部52及び方向探知処理部53に送られる。
【0052】
受信処理部52は、第2アンテナ102、第4アンテナ104〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号を、偏差値メモリに格納されている偏差値に基づいて補正し、その後、n−2個の補正されたセンサ信号を処理することにより、複数の入射信号が混合された信号から所望の入射信号を分離する。
【0053】
また、方向探知処理部53は、第2アンテナ102、第4アンテナ104〜第nアンテナ10nからのn−2個のセンサ信号を、偏差値メモリに格納されている偏差値に基づいて補正し、その後、n−2個の補正されたセンサ信号を処理することにより、入射信号の到来方向を求める。
【0054】
デジタル信号処理部50は、区間T3〜区間Tn−1についても順次同様の処理を実行し、第4アンテナ104〜第nアンテナ10nからのセンサ信号に基づいて第4信号経路〜第n信号経路の偏差値を求めて偏差値メモリに格納する。そして、区間Tn−1における処理が完了することにより、第n信号経路の偏差値を求めて偏差値メモリに格納すると校正処理を終了する。
【0055】
なお、第1アンテナ101の出力の振幅及び位相をa1∠φ1、第2アンテナ102の出力の振幅及び位相をa2∠φ2、・・・第nアンテナ10nの出力の振幅及び位相をan∠φnとすると、第1アンテナ101と第2アンテナ102との振幅比及び位相比である偏差値は、(a2/a1)×e(φ2−φ1)となる。第1アンテナ101と第3アンテナ10との振幅比及び位相比である偏差値は、(a3/a1)×e(φ3−φ1)となる。同様に、第1アンテナ101と第nアンテナ10との振幅比及び位相比である偏差値は、(an/a1)×e(φn−φ1)となる。
【0056】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る受信システムによれば、校正は、第1アンテナ101からデジタル信号処理部50に至る第1信号経路の特性を基準にして、他のアンテナ、即ち第2アンテナ102〜第nアンテナ10nの信号経路の特性を時分割で順次求めて偏差値メモリに格納すると共に、第2アンテナ102〜第nアンテナ10nの何れかのアンテナの信号経路を校正中(特性を求めている時)は、それ以外のアンテナからのn−2個のセンサ信号を、偏差値メモリに格納されている既に求めた特性に基づいて補正した後に処理することにより運用を行う。
【0057】
即ち、或る瞬間を見た場合、n個のアンテナの中の2個のみが校正処理に使用され、残りのn−2個のアンテナは、受信システムの本来の機能である受信処理及び方向探知処理に使用される。この構成により、受信システムの運用を停止することなく校正作業を行うことができる。
【0058】
なお、受信システムの運用において、校正のために2つのアンテナが使用できない状態になると、一般的には、受信性能が低下するが、ある程度以上のアンテナの数を有する受信システムでは、その影響は軽微なものであり、実用上の問題はない。
【0059】
また、本発明の第1の実施の形態に係る受信システムによれば、第1アンテナ101〜第nアンテナ10nからのセンサ信号と校正用信号発生部60からの校正用信号とを第1スイッチ201〜第nスイッチ20nでそれぞれ切り替えて信号経路に供給するように構成したので、センサ信号に校正用信号を重畳させる場合のように、センサ信号と校正用信号とが干渉し合うことがない。従って、校正及び運用に悪影響を及ぼすことがない。
【0060】
(到来方位測定)
次に、図4を参照して方向探知処理部53による信号の到来方位測定を説明する。方向探知処理部53は、第1〜第nサンプリング部401〜40nからの信号でMUSIC等のアルゴリズムを用いて入射信号の到来方位を測定する。
【0061】
MUSIC法は相関行列の固有値と固有ベクトルとを用いた推定法である。図4のようにセンサ間隔dのM素子等間隔リニアアレーに平面波がK波到来していて、各到来波の信号波形と到来角がFk(t),θk(k=1,2…K)と表されるとき、各センサにおける各到来波の位相応答を表す方向ベクトルa(θk)は、式(1)で与えられる。
【0062】
【数1】
Figure 0003959357
ここで、上添字Tは転置を表す。よって、入力ベクトルは式(2)〜式(6)で表される。
【0063】
【数2】
Figure 0003959357
上式においてN(t)は熱雑音ベクトルであり、その成分は平均が0で分散(電力)がσの独立な複素ガウス過程である。このとき、センサ間の相関特性を表す相関行列は式(7)〜式(8)で与えられる。
【0064】
【数3】
Figure 0003959357
ここで、上添字Hは複素共役転置を表す。到来波が互いに無関係であれば信号相関行列SのランクはKとなる。また、方向行列AもランクはKである。従って、この場合の相関行列RxxはランクKの非負定値エルミート行列となる。この行列の固有値λi(i=1,2…,M)は実数となり、下記の式(9)の関係を有する。
【0065】
【数4】
Figure 0003959357
従って、相関行列の固有値を求め、熱雑音電力σより大きい固有値の数から到来波数Kを推定することができる。また、固有値λi(i=1,2…,M)に対応する固有ベクトルをei(i=1,2…,M)とすると、M次元のエルミート空間の正規直交基底ベクトルとして扱われる。この空間は信号空間span{e1,…eK}と雑音空間span{eK+1,…eM}との二つの部分空間にわけることができ、信号空間と雑音空間とは互いに直交補空間の関係にある。
【0066】
span{e1,…eK}はベクトルei(i=1,2…,M)で張られる空間とする。また、信号空間は方向ベクトルを用いて、span{a(θ1),…,a(θk)}と表すことができる。従って、熱雑音電力に等しい固有値に対応する固有ベクトルは全て到来波の方向ベクトルと直交することになる。そこで、式(10)のような評価関数を定義する。
【0067】
【数5】
Figure 0003959357
これはMUSICスペクトラムと呼ばれ、到来角θに対するスペクトラムのK個のピークが到来方位θk(k=1,2…K)となる。なお、式(9)からもわかるように、熱雑音電力に等しい最小固有値が少なくとも一つ必要なので、アレーのセンサ数はM≧K+1が必要条件となる。
【0068】
(第2の実施の形態)
図5は本発明の第2の実施の形態に係る受信システムの構成を示すブロック図である。図5は本発明の第2の実施の形態に係る受信システムの構成を示すブロック図である。この受信システムは、図1に示す第1の実施の形態に係る受信システムに対して、校正用信号発生部60a及びデジタル信号処理部50a内の校正処理部51aのみが異なるので、この異なる構成についてのみ説明する。
【0069】
校正用信号発生部60aは、デジタル信号処理部50からの制御信号に応答して校正用信号を発生する。ここで、校正用信号の性質について説明する。信号の振幅と位相の偏差を求めるためには、一般に、単一の周波数を有する正弦波信号が用いられる。従って、信号経路を流れる信号が広範囲の周波数成分を含み、且つ周波数成分毎に信号経路の特性が線形でない場合には、正弦波信号の周波数を順次変更しながら繰り返し校正処理(振幅及び位相の測定)を行う必要がある。
【0070】
これに対し、本発明の第2の実施の形態に係る受信システムでは、図6の周波数スペクトラムに示すように、校正用信号として、下限周波数から上限周波数までの所定の周波数帯域Wの周波数成分を含む1つの信号が用いられる。所定の周波数帯域は、第1アンテナ101〜第nアンテナnの特性等に従って決定することができる。このような校正用信号は、複数の正弦波信号を合成して生成することができる。或いは、校正用信号として、ホワイトノイズのような広帯域信号を用いることができる。
【0071】
信号波形f(t)のフーリエ変換は、
f(t)=A+Σ{Acos(nωt)+Bsos(nωt)}と表される。但し、A={∫f(t)dt}/T、A=2{∫f(t)cos(nωt)}/T、B=2{∫f(t)sos(nωt)}/Tである。n=1,2,3・・・であり、ωは2π/T=2πfで表される。
【0072】
ここで、係数Aと係数Bとが全て0以外で同じ値の場合には、ホワイトノイズとなる。一方、上記係数の内、ある1つだけが値を持ち、他が0の場合には単一の正弦波となる。第2の実施の形態では、単一の正弦波ではなく複数の正弦波を用いるため、係数の内、複数が値を持ち、他は0である。
【0073】
校正処理部51aは、校正用信号を受け取り、校正用信号をソフトウェア処理によって周波数成分毎の正弦波信号に分離し、各周波数の正弦波信号毎に振幅及び位相を計測する。
【0074】
図7は本発明の第2の実施の形態に係る受信システムに設けられた校正処理部51aの構成を示す図である。校正処理部51aは、所定の周波数帯域Wの周波数成分を含む校正用信号を格納する偏差値メモリ55と、偏差値メモリ55からの所定の周波数帯域Wの周波数成分を含む校正用信号と中心周波数が指定された複素数正弦波信号とを複素乗算する複素乗算器56と、複素乗算器56からの複素乗算出力の低域周波数帯のみを通過させるローパスフィルタ57とを有している。
【0075】
このように構成された校正処理部51aによれば、複素乗算器56が、所定の周波数帯域Wの周波数成分を含む校正用信号と中心周波数(例えばW/2)が指定された複素数正弦波信号とを複素乗算すると、複素乗算器56の複素乗算出力は、図8に示すように、中心周波数を0とした両側にW/2の帯域を有する信号となる。そして、複素乗算器56からの複素乗算出力が、ローパスフィルタ57を通過すると、図9に示すように、中心周波数を0とした+Wfの帯域の信号となる。これにより、中心周波数の正弦波信号の振幅及び位相が得られる。
【0076】
そして、複素数正弦波信号の中心周波数を、前記所定の周波数帯域Wの下限周波数から上限周波数までf1、f2、f3・・・と周波数成分毎に可変させていくと、周波数成分毎の正弦波信号に分離され、各周波数の正弦波信号毎に振幅及び位相を計測することができる。
【0077】
より具体的には、第1スイッチ201及び第2スイッチ202からの校正用信号は、周波数成分毎の正弦波信号に分離され、各周波数の正弦波信号毎に第1スイッチ201からの信号の振幅及び位相を基準にして第2スイッチ202からの信号の振幅及び位相の偏差が求められ、偏差値として偏差値メモリに格納される。
【0078】
第1スイッチ201及び第3スイッチ203からの校正用信号は、周波数成分毎の正弦波信号に分離され、各周波数の正弦波信号毎に第1スイッチ201からの信号の振幅及び位相を基準にして第3スイッチ203からの信号の振幅及び位相の偏差が求められ、偏差値として偏差値メモリに格納される。以下、同様にして処理が行われる。
【0079】
このように、第2の実施の形態に係る受信システムによれば、校正用信号として所定範囲の周波数成分を含む信号が用いられるので、校正すべき周波数範囲が広い場合であっても校正用信号の周波数を順次変更しながら校正作業を繰り返す必要はなく、デジタル信号処理部50が校正用信号を取り込む処理は1回で済むので、校正作業を短時間で行うことができる。
【0080】
なお、本発明は上述した第1及び第2の実施の形態に係る受信システムに限定されるものではない。上述した本発明の第1及び第2の実施の形態に係る受信システムでは、第1アンテナ101からのセンサ信号が流れる第1信号経路の特性を基準にして、他の第2アンテナ102〜第nアンテナ10nからのセンサ信号が流れる第2信号経路〜第n信号経路の特性の偏差を求めるように校正したが、基準にする信号経路の特性は、第1アンテナ101からのセンサ信号が流れる第1信号経路の特性に限らず、例えば設計時に計算された信号経路の特性を基準にすることもできる。
【0081】
この場合、時分割制御部70は、校正用信号発生部60からの校正用信号を、第1スイッチ201〜第nスイッチ20nから順次出力するように制御する。この構成によれば、基準として使用する信号経路の特性が予め固定されているので、環境によって第1信号経路の特性が変化するような事態が発生するような場合であっても正確な偏差値を求めることができるので、正確な校正が可能になる。
【0082】
また、上述した本発明の第1及び第2の実施の形態に係る受信システムでは、センサとして電波を電気信号に変換するアンテナが用いられる場合を例に挙げて説明したが、センサとしては、アンテナに限らず、例えば音波を電気信号に変換するマクロフォンや人の脳波のような生体信号を検知するセンサを用いることができる。
【0083】
また、上述した本発明の第1及び第2の実施の形態に係る受信システムでは、アンテナの後段にスイッチを設け、アンテナからの信号又は校正用信号発生部からの校正用信号の何れかを選択して信号経路に供給するように構成したが、センサとして校正用信号を直接入力できるセンサが使用される場合は、センサ自体に校正用信号を供給するように構成できる。
【0084】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、校正作業には一部のセンサを用いて行い、他のセンサは本来の受信処理、方向探知処理等に使用されるので、運用を停止することなく校正作業を行うことができる受信システムを提供できる。
【0085】
また、本発明によれば、アンテナからの信号と校正用信号とをスイッチを用いて選択的に信号経路に流すようにしたので、校正及び運用に悪影響を及ぼすことなく校正作業を行うことができる受信システムを提供できる。
【0086】
更に、本発明によれば、校正用信号として複数の周波数成分を含む信号を用いたので、校正すべき周波数範囲が広い場合であっても校正用信号の周波数を順次変更しながら校正作業を繰り返す必要はなく、1つの校正用信号を与えるだけで済むので、校正作業を短時間で行うことができる受信システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る受信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る受信システムで使用される校正用信号供給部で使用されるスイッチの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る受信システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】MUSICによる到来方位推定を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る受信システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る受信システムで使用される校正用信号を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る受信システムに設けられた校正処理部の構成を示す図である。
【図8】図7に示す校正処理部に設けられた複素乗算器の出力特性を示す図である。
【図9】図7に示す校正処理部に設けられたローパスフィルタの出力特性を示す図である。
【図10】従来の複数の信号経路間の電気的な特性の偏差を校正する手段の一例を示す図である。
【図11】従来の複数の信号経路間の電気的な特性の偏差を校正する手段の他の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 アンテナ部
101〜10n 第1アンテナ〜第nアンテナ
20 校正用信号供給部
201〜20n 第1スイッチ〜第nスイッチ
30 アナログ回路
40 サンプリング部
50 デジタル信号処理部
51,51a 校正処理部
52 受信処理部
53 方向探知部
60,60a 校正用信号発生部
70 時分割制御部

Claims (4)

  1. 複数のセンサを含むセンサ部と、
    校正用信号を発生する校正用信号発生部と、
    前記センサ部の中からセンサを順次選択し、選択されたセンサからの信号が流れる信号経路に前記校正用信号発生部で発生された校正用信号を供給する校正用信号供給部と、
    前記校正用信号供給部によって前記校正用信号が供給された前記信号経路の特性を所定の特性を基準として求める校正処理部と、
    前記センサ部の中から選択されたセンサ以外のセンサの信号経路から送られてくる信号を前記校正処理部で求めた特性に基づいて補正した後に処理するデジタル信号処理部と、
    を備えたことを特徴とする受信システム。
  2. 前記校正用信号供給部は、前記センサ部の中から一対のセンサの一方を固定的に他方を順次選択し、選択された一対のセンサからの信号が流れる一対の信号経路に前記校正用信号発生部で発生された校正用信号を供給し、
    前記校正処理部は、前記校正用信号供給部によって前記校正用信号が供給された前記一対の信号経路の一方の信号経路の特性を基準として他方の信号経路の特性を求め、
    前記デジタル信号処理部は、前記センサ部の中から選択された一対のセンサ以外のセンサの信号経路から送られてくる信号を前記校正処理部で求めた特性に基づいて補正した後に処理することを特徴とする請求項1記載の受信システム。
  3. 前記校正用信号供給部は、前記センサ部に含まれる各センサからの信号及び前記校正用信号発生部からの前記校正用信号の何れかを選択するスイッチからなることを特徴とする請求項2記載の受信システム。
  4. 前記校正用信号発生部で発生される校正用信号は、所定の周波数帯域の複数の周波数成分を含み、
    前記校正処理部は、前記校正用信号供給部から供給される前記校正用信号に含まれる周波数成分を抽出し、各周波数成分について前記特性を求めることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の受信システム。
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