以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[第1実施例]
まず、本発明の第1実施例について、図1〜図12を参照して説明する。図1は、第1実施例に係る信号処理方法を実行する信号処理装置1と、センサアレイA1,A2,…,AM及びセンサアレイA1,A2,…,AMが受信する信号との関係を示す模式図である。信号処理装置1は、指向性を有する所定数(複数)のセンサアレイ(例えばM個のセンサアレイA1,A2,…,AM)により受信される信号を処理する。具体的には、例えば図1に示すように、信号処理装置1は、複数のセンサアレイと接続される。第1実施例の複数のセンサアレイは、少なくとも一方向に沿って等間隔で並ぶように設けられて、例えばアレイアンテナのような受信部2を構成する。具体的には、受信部2は、例えば複数のセンサアレイが行列方向に沿って二次元的に配置されたアレイアンテナである。行方向及び列方向のセンサアレイ同士の間隔は、等間隔である。
複数のセンサアレイで構成される受信部2と信号処理装置1とは、例えばA/D変換器3を介して接続される。A/D変換器3は、センサアレイにより得られる信号(アナログ信号x(t))をデジタル信号x(k)に変換する。以下、このデジタル信号を「受信信号」とする。すなわち、受信信号は、複数のセンサアレイにより得られる信号である。このデジタル信号x(k)には、検出対象の信号Sigのベースバンド信号と、不要信号Noiがデジタル化された信号とが混在する。検出対象の信号Sigのベースバンド信号は、検出対象の信号Sigの搬送波(アナログ信号)から復元された、この検出対象の信号Sigが搬送波に変換される前の信号(デジタル信号)である。
複数のセンサアレイは、そのセンサアレイにより構成されるものに応じた信号を受信する。具体的には、例えばアレイアンテナを構成する複数のセンサアレイは、所定の帯域(可聴域Sen)の電波を受信する。図1に示すように、複数のセンサアレイにより受信される電波には、受信することが意図された信号(検出対象の信号Sig)と、意図に反して受信されるノイズとしての信号(不要信号Noi)とが混在している。不要信号Noiは、検出対象の信号Sigの帯域よりも広帯域の信号である(図3参照)。図1では、検出対象の信号Sigの発信源P1及び不要信号Noiの発信源P2がそれぞれ一つであるが、一例であってこれに限られるものでなく、一方又は両方が二つ以上であり得る。図1等では、センサアレイA1,A2,…,AMに対する検出対象の信号Sigの到来方向をθd(k)としている。また、センサアレイA1,A2,…,AMに対する不要信号Noiの到来方向をθu(k)としている。なお、これらの到来方向は、例えば受信部2等に設けられたセンサアレイA1,A2,…,AMの角度により定められた基準軸Fに対する角度で表される。図1では、θd(k),θu(k)は2次元的な角度であるが、実際には3次元的角度である。θd(k),θu(k)はともに不変でなく、複数のセンサアレイ若しくは各々の信号の発信源又はその両方の移動により変化し得る。
信号処理装置1は、複数のセンサアレイの各々により得られる信号を個別に取り扱う。図1では、M個のセンサアレイA1,A2,…,AMにより得られる信号(アナログ信号)をx1(t),x2(t),…,xM(t)としている。ここで、Mは2以上の整数である。また、第1実施例では、これらのアナログ信号がA/D変換器3により変換された後の信号(デジタル信号)をx1(k),x2(k),…,xM(k)としている。x(t)は、x1(t),x2(t),…,xM(t)を全て含む。x(k)は、x1(k),x2(k),…,xM(k)を全て含む(他の関数についても同様である)。信号処理装置1は、図1に示すように、複数のセンサアレイの各々にウェイト(例えば図1に示すウェイトw1 *,w2 *,…,wM *)を設定することができる。ウェイトw1 *,w2 *,…,wM *を設定することで、複数のセンサアレイの指向性を任意に設定することができる。すなわち、信号処理装置1は、複数のセンサアレイに指向性を設定することで、複数のセンサアレイにより受信される信号に対して空間的なフィルタリングを施すことができる。具体的には、ウェイトは、センサアレイによる受信信号の振幅及び位相を調節する。受信信号に対してウェイトを適用すると、受信信号の振幅及び位相が調節されることで、ウェイトに対応した角度に対する信号の重み付けが得られる。このように、ウェイトは、センサアレイによる信号の受信角度の調節要素として機能する。
信号処理装置1は、複数のセンサアレイにより得られる信号に基づいた出力を行う。具体的には、信号処理装置1は、例えば図1に示すように、アレイ出力信号y(k)を出力する。このアレイ出力信号y(k)は、複数のセンサアレイにより得られる信号のうち不要信号Noiのみを抑制した信号である。すなわち、信号処理装置1は、検出対象の信号Sig及びこの検出対象の信号Sigの帯域よりも広帯域の不要信号Noiが混在した信号である受信信号に基づいて抑制信号を出力する機能を有する。また、信号処理装置1は、受信信号に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向を推定する機能を有する。
図2は、信号処理装置1の主要構成の一例を示すブロック図である。信号処理装置1は、記憶部11と、演算部12とを備える。記憶部11は、例えばRAM、ROM及びフラッシュメモリー等の記憶装置を有し、演算部12により処理されるソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等を記憶する。図2では、便宜上、これらのソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等をまとめて「プログラムPro」と図示している。また、記憶部11は、演算部12が処理結果等を一時的に記憶する記憶領域としても機能する。演算部12は、記憶部11からソフトウェア・プログラム等を読み出して処理することで、ソフトウェア・プログラムの内容に応じた機能を発揮する。具体的には、演算部12は、抑制信号取得部21、特定部22及び推定部23として機能する。抑制信号取得部21は、受信信号の帯域のうち不要信号のみが含まれる高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域に含まれる信号に基づいて受信信号に含まれる不要信号を抑制した抑制信号を得る。特定部22は、抑制信号にフーリエ変換(例えば、図7に示すフーリエ変換22a)を施して抑制信号に含まれる周波数成分のうち出力が最も大きい特定周波数の周波数成分を特定する。推定部23は、受信信号から抽出された特定周波数の周波数成分を含む一部範囲の信号成分を構成する複数の信号の到来方向と高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号の到来方向との比較結果に基づいて検出対象の信号の到来方向を推定する。
図3は、複数のセンサアレイの可聴域Senと、検出対象の信号Sig及び不要信号Noiの帯域と、参照信号の帯域との関係の一例を示す模式図である。図3に示すように、検出対象の信号Sigは、可聴域Senに含まれる所定の帯域を用いて送信されることから、複数のセンサアレイにより受信される検出対象の信号Sigの帯域も、この所定の帯域に対応した帯域になる。特に、複数のセンサアレイがあらかじめ検出対象の信号Sigを想定して設けられたものである場合、複数のセンサアレイの可聴域Senの中心周波数Cenを検出対象の信号Sigの中心周波数Cen又はその付近の周波数にすることができる。一方、不要信号Noiは、不特定の発生源からの信号であることから、複数のセンサアレイにより受信される不要信号Noiの帯域は、検出対象の信号Sigよりも広帯域になる。一般的に、不要信号Noiの帯域は、複数のセンサアレイの可聴域Sen全体に亘る。このように、複数のセンサアレイにより受信される信号は、検出対象の信号Sig及びこの検出対象の信号Sigの帯域よりも広帯域の不要信号Noiが混在した信号になる。また、検出対象の信号Sigの周波数よりも広い可聴域Senにおいて、ドップラーシフト等の影響を考慮して検出対象の信号Sigが含まれうると考えられる特定の周波数帯域よりも高周波数帯域側又は当該特定の周波数帯域よりも低周波数帯域側の信号は、不要信号Noiのみにより構成されると考えることができる。なお、図3では、検出対象の信号Sigの強度が不要信号Noiの強度よりも弱い場合を示しているが、これは一例であってこれに限られるものでない。本発明による信号処理装置1及び信号処理方法は、検出対象の信号Sigの強度及び不要信号Noiの強度の強弱関係の如何に関わらず用いることができる。
図4は、本発明における受信信号と抑制信号取得部21、特定部22及び推定部23との関係を示す模式図である。図5は、受信信号における検出対象の信号Sigのスペクトラム密度と不要信号Noiのスペクトラム密度との関係の一例を示す模式図である。図6は、抑制信号における検出対象の信号Sigのスペクトラム密度と抑制信号に残存する不要信号Noiのスペクトラム密度との関係の一例を示す模式図である。第1実施例の抑制信号取得部21は、後述する適応ビームフォーミングを行うことで抑制信号を得る。図5に示すように、不要信号Noiのスペクトラム密度が検出対象の信号Sigのスペクトラム密度を上回る場合であっても、抑制信号取得部21が適応ビームフォーミングを行うことで、図6に示すように、検出対象の信号Sigのスペクトラム密度が不要信号Noiのスペクトラム密度を上回る抑制信号を得ることができる。
図5に示すように、不要信号Noiのスペクトラム密度が検出対象の信号Sigのスペクトラム密度を上回る場合、短時間フーリエ変換(STFT:short-time Fourier transform又はshort-term Fourier transform)のようなフーリエ変換を用いた信号の周波数と位相との関係を解析するための処理によって検出対象の信号Sigを検出することは困難である。一方、図6に示すように、検出対象の信号Sigのスペクトラム密度が不要信号Noiのスペクトラム密度を上回る場合、上記のSTFTを用いた処理によって検出対象の信号Sigを検出することができる。特定部22は、抑制信号にフーリエ変換22a(例えばSTFT)を施して抑制信号に含まれる周波数成分のうち出力が最も大きい特定周波数の周波数成分、すなわち、検出対象の信号Sigによるスペクトラム密度のピークが存する周波数を特定する処理(スペクトラムのピーク特定22b)を行う。
なお、所定の周波数で発信源P1から送信された検出対象の信号Sigが、ドップラー効果によって矢印Shiで示すように異なる周波数の信号として受信部2に受信される現象(ドップラーシフト)が生じることがある。第1実施例では、ドップラーシフトが生じたとしても、抑制信号において検出対象の信号Sigによるスペクトラム密度のピークを検出することができるので、ドップラーシフト後の周波数で検出対象の信号Sigを検出することができる。
特定部22が検出対象の信号Sigが存する周波数を特定することで、受信信号の周波数帯のうち、検出対象の信号Sigを含む周波数帯を限定することができる。当該周波数帯の信号に対して、DOAアルゴリズム(例えば、MUSIC)を用いた信号の到来方向の推定処理(以下、単に「推定処理」)を行うことによって、当該周波数帯に含まれる検出対象の信号Sigの到来方向及び不要信号Noiの到来方向を推定することができる。また、図3に示すように、高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号には、不要信号Noiのみが含まれている。よって、高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号に対して推定処理を行うことによって、不要信号Noiの到来方向を推定することができる。推定部23は、受信信号から抽出された特定周波数の周波数成分を含む一部範囲の信号成分、すなわち、検出対象の信号Sigを含む周波数帯の信号成分を構成する複数の信号の到来方向と、高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号Noiの到来方向との比較処理23cを行う。推定部23は、比較処理23cの比較結果に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向を推定する。
例えば、検出対象の信号Sigを含む周波数帯の信号に対する推定処理(第1推定処理23a)によって推定された信号の到来方向の総数がnである場合について考える。この場合に、高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号に対する推定処理(第2推定処理23b)によって推定された信号の到来方向の数、すなわち、不要信号Noiの発信源P2の数がn−1であるとき、第1推定処理23a及び第2推定処理23bで共通するn−1の到来方向は、全て不要信号Noiの到来方向である。よって、この場合、第1推定処理23aで推定された到来方向であって、かつ、第2推定処理23bで推定されなかった一つの到来方向は、検出対象の信号Sigの到来方向である。
第1推定処理23aによって推定される信号の到来方向の総数と第2推定処理23bによって推定される信号の到来方向の数との差は、検出対象の信号Sigの到来方向の数、すなわち、検出対象の信号Sigの発信源P1の数に応じる。
なお、MUSICのようなDOAアルゴリズムには、受信部2によって受信される信号の到来数が予め定められていることが要求されるものがある。検出対象の信号Sigの到来数は、把握されている検出対象の信号Sigの発信源P1の数に基づいて予め定めることができる。不要信号Noiの到来数は、例えば、高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号、すなわち、不要信号Noiのみを含む帯域の信号の相関行列の固有値を算出し、固有値のうち大きい値の固有値を特定する不要信号発信源数特定処理によってことで求めることができる。よって、実際の処理では、先に高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を用いて演算部12が不要信号発信源数特定処理を行うことで、不要信号Noiの到来数を決定したうえで推定部23が第2推定処理23bを行うことができる。また、演算部12が、求められた不要信号Noiの到来数に予め定められている検出対象の信号Sigの発信源P1の数を加算する処理を行うことで、信号の到来方向の総数を決定したうえで推定部23が第1推定処理23aを行うことができる。
図7は、第1実施例における受信部2と抑制信号取得部21、特定部22及び推定部23との関係を示す模式図である。第1実施例の受信部2による受信信号、すなわち、複数のセンサアレイが個別に受信する信号の集合(デジタル信号x(k))は、特定の時間領域(受信信号が受信された一タイミング)における複素ベースバンド受信信号ベクトルを示す情報として機能する。係る信号に対して抑制信号取得部21が適応ビームフォーミングを行うことで、不要信号Noiが抑制されたアレイ出力信号y(k)を得られる。アレイ出力信号y(k)は、特定の時間領域(受信信号が受信された一タイミング)における抑制信号である。特定部22がアレイ出力信号y(k)にフーリエ変換22a(例えばSTFT)を施すことで、アレイ出力信号y(k)の周波数スペクトラムを得られる(図6参照)。特定部22は、フーリエ変換後の周波数スペクトラムにおけるピークの特定(スペクトラムのピーク特定22b)を行う。これによって、特定部22は、ピークが存する特定周波数の周波数成分、すなわち、抑制信号に含まれる周波数成分のうち出力が最も大きい特定周波数の周波数成分を特定する。この特定周波数の周波数成分には、検出対象の信号Sigが含まれることになる。
第1実施例では、受信部2を構成する複数のセンサアレイの各々からの出力信号線と推定部23との間にはバンドパスフィルタ(BPF)が設けられている。BPFは、受信信号から、受信信号の帯域よりも狭い帯域であって特定周波数を含む帯域の信号成分を一部範囲の信号成分として抽出するフィルタ処理Filに用いられる(図7参照)。具体的には、検出対象の信号Sigが含まれる特定周波数をfdとすると、BPFは、受信信号のうちfd±Bの周波数帯の信号を通過させる。Bは、特定周波数を中心周波数Cenとした周波数帯の帯域幅を決定する値であり、固定値又は受信信号の全周波数帯における特定周波数(fd)のポジションに基づいて決定された割合を示す値である。BPFによってフィルタ処理Filが施された信号の集合Limは、フィルタ処理前の受信信号の全周波数帯域に比して狭帯域であって、かつ、検出対象の信号Sigが存する周波数帯を含む帯域に制限された特定の時間領域(受信信号が受信された一タイミング)における信号である。
推定部23は、フィルタ処理後の信号成分を構成する複数の信号の到来方向と高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号Noiの到来方向との比較結果に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向を推定する。
第1実施例では、推定部23は、DOAアルゴリズムとして、root−MUSICを採用している。root−MUSICは、信号の到来方向の推定においてスペクトラムの分析を省略することができる等、他のDOAアルゴリズムに比して効率的な処理を実現できるDOAアルゴリズムである。root−MUSICを採用する場合、到来方向の推定に用いられる信号は、等間隔で並ぶ複数のセンサアレイにより受信された信号である必要がある。一方、抑制信号取得部21が適応ビームフォーミングを行うことで得られるアレイ出力信号y(k)は、適応ビームフォーミングによって複数のセンサアレイの配置に係る情報を喪失した信号になっている。このため、アレイ出力信号y(k)を構成する信号の到来方向の推定に際してroot−MUSICを採用することはできない。そこで、第1実施例では、アレイ出力信号y(k)を用いるのでなく、受信信号に対してフィルタ処理Filが施された後の信号成分を構成する複数の信号の到来方向を推定する。受信信号にフィルタ処理Filを施すのみであれば、root−MUSICを採用することができる。
高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号Noiは、例えば受信信号に対してハイパスフィルタ及びローパスフィルタの少なくとも一方の性質を有するフィルタ(例えば図9等に示すフィルタHF)を用いたフィルタ処理を施すことで得られる。
推定部23は、root−MUSICを用いて、フィルタ処理後の信号、すなわち、フィルタ処理Filによって受信信号から抽出されたfd±Bの周波数帯の信号成分を構成する複数の信号の到来方向(例えば、上記の例で説明したnの到来方向)を推定する処理を第1推定処理23aとして行う。また、推定部23は、root−MUSICを用いて、フィルタHFを用いたフィルタ処理で得られた信号、すなわち不要信号Noiのみを含む信号の到来方向(例えば、上記の例で説明したn−1の到来方向)を推定する処理を第2推定処理23bとして行う。推定部23は、第1推定処理23aで推定された信号の到来方向と第2推定処理23bで推定された信号の到来方向とを比較し、第2推定処理23bで推定された信号の到来方向に含まれておらず第1推定処理23aで推定された信号の到来方向に含まれている信号の到来方向を、推定された検出対象の信号Sigの到来方向とする。
図8は、ベースバンド信号のピークと、折り返し信号Shaと、BPFとの関係の一例を示す図である。第1実施例では、検出対象の信号Sigのベースバンド信号のピークが特定部22により特定される。よって、図8に示すように、特定周波数(fd)のピークにあわせたBPFが設定される。一方、ベースバンド信号の場合、折り返し信号Shaが発生することがある。折り返し信号Shaは、例えばドップラーシフトにより検出対象の信号Sigの周波数が複数のセンサアレイの可聴域Senの中心周波数Cenから外れた周波数となった場合に発生することがある。特定部22によるスペクトラムのピーク特定22b及びBPFの帯域設定では、係る折り返し信号Shaの存在が考慮されることが望ましい。例えば、ヒルベルト変換に基づいたバンドパスフィルタを設けることで、折り返し周波数の影響を抑制できる可能性がある。
次に、適用ビームフォーミングについて説明する。第1実施例では、図2に示すように、演算部12は、抽出処理部15、決定部16及び抑制部17等として機能することで、抑制信号取得部21として機能する。抽出処理部15は、受信信号のうち検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域、低周波数帯域又はその両方の信号のみを参照信号として抽出する。決定部16は、センサアレイが参照信号の到来方向に対してヌルを向ける不要信号抑制ウェイトを決定する。抑制部17は、受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用して抑制信号を得る。
図9は、第1実施例の抽出処理部15及び決定部16による処理の一例を示す模式図である。なお、図9等では便宜上、センサアレイAM−1及びセンサアレイAM−1に関する出力も図示しているが、以下の説明では省略することがある。抽出処理部15は、フィルタHF(例えばハイパスフィルタ)を用いて、デジタル信号x(k)から検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域(例えば図3に示す高周波数帯域High)の信号のみを参照信号r(k)として抽出する。参照信号は、検出対象の信号Sigが含まれないことから、不要信号Noiのみを成分とする信号になる。なお、参照信号r(k)が抽出される前のデジタル信号x(k)は別途保持される。
決定部16は、例えば複数のセンサアレイのうち一単位(例えば一つ)のセンサアレイにより受信された受信信号と複数のセンサアレイのうちこの一単位のセンサアレイとは異なる別単位(例えば複数)のセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号とを合わせた仮想出力を行うサブアレイ(例えば、図9に示すサブアレイSA1,SA2,…,SAM−1,SAM)を設定する。そして、決定部16は、仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイト(ウェイトwm)を不要信号抑制ウェイトとして決定する。
具体的には、決定部16は、例えば図9に示すように、一つのセンサアレイA1のデジタル信号x1(k)と、M個のセンサアレイのうちこの一つのセンサアレイを除く全てのセンサアレイの参照信号r2(k),…,rM(k)とからなるグループを設定する。このグループは、すなわち、デジタル信号x1(k)を出力するセンサアレイA1と、参照信号r2(k),…,rM(k)を出力する全てのセンサアレイA2,…,AMとからなるサブアレイSA1とみなすことができる。ここで、デジタル信号x1(k)及び参照信号r2(k),…,rM(k)からなる信号は、サブアレイSA1の仮想出力o1(k)とみなすことができる。決定部16は、図9に示すように、他のセンサアレイA2,…,AMについても、その一つのセンサアレイのデジタル信号とそれ以外の全てのセンサアレイの参照信号とからなるグループを、サブアレイSA2,…,SAMとして設定する。すなわち、第1実施例において、サブアレイは複数設定される。さらに、第1実施例において、サブアレイSA1,SA2,…,SAMは、図1に示すM個のセンサアレイA1,A2,…,AMの各々を一単位のセンサアレイとして個別に設けられる。
サブアレイSAm(m=1,2,…,M)の仮想出力om(k)は、以下の式(1)のように示すことができる。なお、式(1)におけるHは、行列・ベクトルのエルミート転置 (複素共役と転置の両方を行う演算子)を示す。サブアレイSAmの仮想出力om(k)は、第1成分がセンサアレイAmにより受信された検出対象の信号Sigと不要信号Noiとが混在する信号であるとともに、それ以外の成分がセンサアレイAm以外の全てのセンサアレイの参照信号である出力になる。ここで、参照信号は、不要信号Noiのみを成分とする信号である。このため、第1成分を出力するセンサアレイAmの出力の大小を変化させない条件下で仮想出力om(k)が最小になるようにそれ以外の成分を出力するセンサアレイの出力が最小となるウェイトをセンサアレイAm以外のセンサアレイに設定することで、不要信号Noiが最小になった仮想出力om(k)を得られることになる。ここで、不要信号Noiを最小にするウェイトは、すなわち、参照信号を構成する不要信号Noiの到来方向に対してヌルを向けるウェイトである。このように、検出対象の信号Sigが含まれる受信信号を出力するセンサアレイAmの出力の大小を変化させない条件下で仮想出力om(k)が最小になるウェイトをセンサアレイAm以外のセンサアレイに設定することで、参照信号を構成する不要信号Noiの到来方向に対してヌルを向けるウェイトにより不要信号Noiが抑制された仮想出力om(k)を得ることができる。仮想出力om(k)が最小となる場合、仮想電力の出力に係るサブアレイSAmの出力電力が最小となる。このため、第1実施例において「センサアレイが参照信号の到来方向に対してヌルを向ける不要信号抑制ウェイト」とは、参照信号による出力電力が最小になるウェイトであるといえる。
参照信号rm(k)のベクトルは、以下の式(2)のように示すことができる。なお、式(2)におけるTは、行列・ベクトルの転置を示す。また、式(2)における右辺は、行列・ベクトルの各要素が複素数になり得ることを意味する。参照信号rm(k)のベクトルは、第1成分がサブアレイSAmを構成するセンサアレイのうち一つのセンサアレイAmのデジタル信号xm(k)のベクトルと、この一つのセンサアレイを除く全てのセンサアレイの参照信号のベクトルである。ここで、センサアレイSAmのウェイトの値を1で固定する条件下で仮想出力om(k)が最小となるそれ以外のセンサアレイのウェイトを求めることで、不要信号Noiが抑制された仮想出力om(k)を得られる。サブアレイSAmを構成するセンサアレイのビームフォーミングウェイトであるウェイトwmは、以下の式(3)に示す制約付き最適化問題を解くことで求めることができる。式(3)に含まれるベクトルc及び空間自己相関行列Rrmはそれぞれ、式(4)、式(5)の通りである。式(3)に示す制約付き最適化問題は、ラグランジュの未定乗数法(method of Lagrange multiplier)を用いることにより、式(6)のように解くことができる。ウェイトwmは、参照信号r(k)に含まれる到来波、すなわち不要信号Noiの波全てに対してヌルを向ける指向性をセンサアレイに設定する指向性パターンを形成する。このため、ウェイトwmを受信信号であるデジタル信号x(k)に適用することで、受信信号に含まれる不要信号Noiを抑制することができるようになる。このように、決定部16は、サブアレイSAmの仮想出力om(k)が最小となるセンサアレイのウェイトwmをサブアレイSAmの不要信号抑制ウェイトとして決定する。なお、式(6)で示すウェイトwmは、空間自己相関行列Rrmと既知のベクトルcからなるため、実際にウェイトwmを求める場合にはこの相関行列を標本平均により求めればよい。式(6)が解かれることで求められるウェイトwmは、以下の式(7)のように示すことができる。図9では、式(7)の形式で示すウェイトwmがサブアレイSAmに適用された場合を図示している。なお、図9等では、サブアレイSAmにおいて検出対象の信号Sigが含まれる受信信号を出力するセンサアレイAmの出力の大小を変化させないウェイトを「1」として示している。ウェイトが「1」であるとは、そのセンサアレイにより受信可能な角度のいずれにもヌルを向けないことを示す。
図10は、第1実施例の抑制部17による処理の一例を示す模式図である。抑制部17は、受信信号(例えばデジタル信号x(k))に不要信号抑制ウェイト(ウェイトwm)を適用して抑制信号を得る。具体的には、抑制部17は、以下の式(8)に示す受信信号x(k)のベクトルに対して上記の式(7)のように示すことができるウェイトwmを適用する。これにより、図10に示すように、サブアレイ出力bm(k)を得ることができる。サブアレイ出力bm(k)は、以下の式(9)のように示すことができる。受信信号x(k)のベクトルにウェイトwmが適用されたサブアレイ出力bm(k)からは、不要信号Noiが抑制されている。このように、抑制部17は、サブアレイSAm毎に、一単位(例えば一つ)のセンサアレイにより受信された受信信号と別単位のセンサアレイ(例えばこの一つのセンサアレイ以外の全てのセンサアレイ)により受信された受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用した信号とを合わせた出力信号(例えばサブアレイ出力bm(k))を得ることで抑制信号を得る。第1実施例では、サブアレイ出力b1(k),b2(k),…,bM(k)が合わせられた出力信号が、アレイ出力信号y(k)になる。
図11は、第1実施例の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、受信部2が信号を受信する(ステップS1)。ステップS1で受信された信号が受信信号として扱われる。受信信号には、不要信号Noiが含まれる。また、受信信号には、検出対象の信号Sigが含まれることがある。ステップS1の実施タイミングが特定の時間領域となる。
抑制信号取得部21は、適応ビームフォーミングを行い(ステップS2)、抑制信号(例えばアレイ出力信号y(k))を取得する。特定部22は、抑制信号にフーリエ変換22a(例えばSTFT)を施し(ステップS3)、周波数スペクトラムを示す情報を得る(図6参照)。特定部22は、スペクトラムのピーク特定22bを行い、抑制信号に含まれる周波数成分のうち出力が最も大きい特定周波数(fd)の周波数成分を特定する(ステップS4)。
演算部12は、ステップS4の処理によって検出対象の信号Sigが検出されたか否か判定する(ステップS5)。具体的には、演算部12は、検出対象の信号Sigによると推定されるスペクトラムのピークが周波数スペクトラムに存在したか否かを判定する。ステップS5の判定基準、すなわち、検出対象の信号Sigによると推定されるスペクトラムのピークと抑制信号に含まれる不要信号Noiの信号レベルとの差異は任意であるが、例えば実測値に基づいて適宜設定される。ステップS5において検出対象の信号Sigが検出されなかったと判定された場合(ステップS5;No)、信号処理装置1は、ステップS5までの処理のトリガーとなったステップS1の実施タイミング(特定の時間領域)に係る信号処理を終了する。
ステップS5において検出対象の信号Sigが検出されたと判定された場合(ステップS5;Yes)、演算部12は、フィルタHFを用いて受信信号から高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号、すなわち、不要信号Noiを抽出する(ステップS6)。演算部12は、不要信号発信源数特定処理を行い(ステップS7)、不要信号Noiの到来数を特定する。推定部23は、ステップS6の処理によって得られた信号を用いて第2推定処理23bを行い(ステップS8)、ステップS7で特定された数(例えば、n−1)の不要信号Noiの到来方向を推定する。
また、演算部12は、BPFを用いて、受信信号の帯域よりも狭い帯域であって特定周波数(fd)を含む帯域の信号を抽出するフィルタ処理Filを行う(ステップS9)。具体的には、演算部12は、例えばBPFによって受信信号からfd±Bの周波数帯の信号を抽出する。なお、ステップS6からステップS8の処理とステップS9の処理とは、実施順が逆でもよい(順不同)。
推定部23は、ステップS9の処理によって得られた信号を用いて第1推定処理23aを行い(ステップS10)、検出対象の信号Sigを含む周波数帯の信号成分を構成する複数の信号の到来方向を推定する。ステップS10の処理に際して、推定部23は、ステップS7で得られた不要信号Noiの到来数に予め定められた検出対象の信号Sigの発信源P1の数を加算した総数(例えば、n)の信号の到来方向を推定する。
推定部23は、受信信号から抽出された特定周波数の周波数成分を含む一部範囲の信号成分を構成する複数の信号の到来方向と高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号Noiの到来方向との比較結果に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向を推定する(ステップS11)。具体的には、推定部23は、ステップS10の処理によって推定された信号の到来方向のうち、ステップS8の処理によって推定された不要信号Noiの到来方向と一致しない到来方向を、推定された検出対象の信号Sigの到来方向とする。
図12は、適応ビームフォーミングの流れの一例を示すフローチャートである。抽出処理部15は、受信信号のうち検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域の信号のみを参照信号として抽出する抽出処理を行う(ステップS21)。決定部16は、センサアレイが参照信号の到来方向に対してヌルを向ける不要信号抑制ウェイトを決定する(ステップS22)。抑制部17は、受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用して抑制信号を得る(ステップS23)。
サブアレイ出力bm(k)に対して信号の到来方向を推定するための所定のアルゴリズム(例えばMUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズム等)を用いることで、不要信号Noi以外の信号の到来方向、すなわち検出対象の信号Sigの到来方向を推定することができる。また、複数のサブアレイ出力bm(k)を最大比合成する等の方法による所定のビームフォーミングをさらに実施することで、検出対象の信号Sigの受信レベルをさらに向上させることもできる。信号処理装置1は、上記の所定のアルゴリズムによる処理及び上記の所定のビームフォーミングの少なくとも一方を実行してもよい。その場合、例えば実行内容に応じたソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等が記憶部11に記憶される。
以上のように、第1実施例によれば、受信信号のうち検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域、低周波数帯域又はその両方の信号のみを参照信号として抽出し、この参照信号の到来方向に対してヌルを向ける不要信号抑制ウェイトを決定する。このため、受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用することで受信信号から不要信号Noiを抑制することができる。このように、第1実施例によれば、より確実に不要信号Noiを抑制することができる。
また、抽出処理により抽出された参照信号を含む仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイト(ウェイトwm)をサブアレイSAmの不要信号抑制ウェイトとして決定する。このため、複数のセンサアレイの受信信号自体から不要信号Noiの到来方向を特定することができるか否かに関係なく、仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトwmを不要信号抑制ウェイトとして決定することで抑制信号を得ることができる。このように、第1実施例によれば、より確実に不要信号Noiを抑制することができる。
以上、第1実施例によれば、受信信号から不要信号Noiを抑制した抑制信号を取得することで、抑制信号に含まれる周波数成分のうち出力が最も大きい特定周波数の周波数成分を検出対象の信号Sigを含む成分として特定することができる。また、特定された一部範囲の信号成分を構成する複数の信号の到来方向と高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域の信号を構成する不要信号Noiの到来方向とを比較し、特定された成分に含まれる信号の到来方向のうち不要信号Noiの到来方向と一致しない到来方向を検出対象の信号Sigの到来方向として推定することができる。よって、検出対象の信号Sig及びこの検出対象の信号Sigの帯域よりも広帯域の不要信号Noiが混在する受信信号に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向を推定することができる。
また、複数のセンサアレイが等間隔で並び、受信信号にフィルタ処理Filを行った後の信号成分を用いて検出対象の信号Sigの到来方向を推定する。よって、複数のセンサアレイが等間隔で並んでいる条件下で受信された受信信号を用いて検出対象の信号Sigの到来方向を推定することができることから、より効率的なDOAアルゴリズム(root−MUSIC)を採用することができる。
[第2実施例]
次に、第2実施例について、図13を参照して説明する。第1実施例と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略することがある。
図13は、第2実施例における受信部2と抑制信号取得部21、特定部22及び推定部23との関係を示す模式図である。第2実施例では、受信信号にフーリエ変換Ftを施して所定単位の周波数領域毎の成分を得る。また、第2実施例では、所定単位の周波数領域毎の成分のうち特定周波数の周波数成分に最も近い成分を一部範囲の信号成分として抽出する。
具体的には、第2実施例において推定部23に入力される信号は、複数のセンサアレイの各々により受信された信号に対して個別に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)が施された信号である。FFTが施された信号Freは、FFTを行う構成(例えば、信号処理装置1)によって得られる周波数の分解能に応じて所定単位の周波数領域毎に分解された複素ベースバンド受信信号ベクトルを示す情報(スペクトラム成分)として機能する。なお、FFTが施された信号Freによる周波数領域(スペクトラム成分)を用いて信号の到来方向を推定する具体的方法は、既知の方法(例えば、音源定位に基づいたアレイ信号処理)によることができる。
推定部23は、所定単位の周波数領域毎の成分のうち、特定部22によって特定された特定周波数(fd)の周波数成分に最も近い成分のFFTビンのスペクトラム成分(近似成分)を特定する。推定部23は、特定された近似成分に対してMUSICのようなDOAアルゴリズムを用いて、近似成分に含まれる複数の信号の到来方向(例えば、上記の例で説明したnの到来方向)を推定する処理を第1推定処理23aとして行う。また、推定部23は、root−MUSICのようなDOAアルゴリズムを用いて、フィルタHFを用いたフィルタ処理で得られた信号、すなわち不要信号Noiのみを含む信号の到来方向(例えば、上記の例で説明したn−1の到来方向)を推定する処理を第2推定処理23bとして行う。推定部23は、第1推定処理23aで推定された信号の到来方向と第2推定処理23bで推定された信号の到来方向とを比較し、第2推定処理23bで推定された信号の到来方向に含まれておらず第1推定処理23aで推定された信号の到来方向に含まれている信号の到来方向を、推定された検出対象の信号Sigの到来方向とする。
以上、第2実施例によれば、フーリエ変換Ftを施して得られた所定単位の周波数領域毎の成分のうち特定周波数の周波数成分に最も近い成分に含まれる複数の信号の到来方向を推定することから、フーリエ変換Ftの分解能を高めることで到来方向の推定精度をより高めることができる。
また、フーリエ変換Ftを施して所定単位の周波数領域毎の成分を得る方法ならば、上記の折り返し信号Shaに係る対策を特に行わずとも到来方向の推定精度をより高めることができる。
[第1変形例]
次に、適応ビームフォーミングの第1変形例について、図14及び図15を参照して説明する。第1変形例の説明においては、第1実施例と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略することがある。第1変形例では、抽出処理部15によるフィルタリングの対象及び決定部16により設定されるサブアレイSAmを構成するセンサアレイの具体的態様が第1実施例と異なる。
図14は、第1変形例においてサブアレイSAmを構成するセンサアレイの具体的態様を示す模式図である。第1変形例では、図14に示すように、MP(=M×P)個のセンサアレイが設けられているものとする。ここで、Pは2以上の整数である。第1変形例においてサブアレイSAmを構成する一単位のセンサアレイは、P個のセンサアレイが組になったものである。一単位のセンサアレイを構成するP個のセンサアレイは、それぞれビームフォーミング(例えば前処理のビームフォーミング)により信号の受信方向が限定されている。具体的には、例えば図14に示すようなビームフォーミング制御部BF1,BF2,…,BFM−1,BFMにより前処理のビームフォーミングが行われる。ビームフォーミング制御部BF1,BF2,…,BFM−1,BFMは、例えば記憶部11のプログラムに応じて演算部12の一機能として実行されてもよいし、専用の構成であってもよい。各単位のセンサアレイの受信方向は、それぞれ異なっていてもよいし、一部又は全部で共通の受信方向であってもよい。ここで、前処理のビームフォーミングとは、例えば、センサアレイが受信可能な受信方向から、明らかに検出対象の信号Sigの到来方向でないと判断される方向を除くためのビームフォーミングである。明らかに検出対象の信号Sigの到来方向でないとの判断は、例えば既知のビームフォーミング技術により行われる。このように、第1変形例における一単位のセンサアレイ及び別単位のセンサアレイは、ビームフォーミングにより信号の受信方向が限定された複数(例えばP個)のセンサアレイにより構成される。また、第1変形例における別単位のセンサアレイは、この一単位のセンサアレイが複数組み合わされてなる。なお、第1変形例でサブアレイSAmを構成する各単位のセンサアレイに対して用いられるビームフォーミングは、適応ビームフォーミングであってもよいし、固定ビームフォーミングであってもよい。
第1変形例では、各単位のセンサアレイによる受信信号をx1(k),x2(k),…,xM(k)として扱う。第1変形例の抽出処理部15は、それぞれP個のセンサアレイが組になった各単位のセンサアレイによる受信信号x1(k),x2(k),…,xM(k)を含むデジタル信号x(k)から検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域(例えば図3に示す高周波数帯域)の信号のみを参照信号r(k)として抽出する。すなわち、第1実施例において複数のセンサアレイの各々の参照信号であったr1(k),r2(k),…,rM(k)が、第1変形例では各単位の参照信号になる。また、第1変形例の決定部16は、複数のセンサアレイのうち係る一単位のセンサアレイにより受信された受信信号とこの一単位のセンサアレイとは異なる別単位のセンサアレイ(この一単位のセンサアレイを構成する組を除いたセンサアレイの組)により受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号とを合わせた仮想出力を行うサブアレイ(例えば、図14に示すサブアレイSA1,SA2,…,SAM−1,SAM)を設定する。そして、決定部16は、仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトwmを不要信号抑制ウェイトとして決定する。抽出処理部15及び決定部16による具体的な処理内容は、第1実施例と同様である。図14を参照して説明した抽出処理部15によるフィルタリングの対象及び決定部16により設定されるサブアレイSAmを構成するセンサアレイの具体的態様を除いて、第1変形例の構成は第1実施例と同様である。すなわち、第1変形例の抑制部17は、図15に示すように、上記のように説明した第1変形例におけるサブアレイSAmを構成する受信信号x(k)のベクトルに対して上記の式(7)のように示すことができるウェイトwmを適用する。
以上、第1変形例によれば、ビームフォーミングにより受信の方向が限定されることで、明らかに検出対象の信号Sigを含まない方向をセンサアレイの受信方向から除外することができ、不要信号Noiをより少なくすることができる。また、一単位のセンサアレイ及び別単位のセンサアレイが複数(例えばP個)のセンサアレイにより構成されるので、これらの各単位のセンサアレイからの出力をより安定させることができることに加え、抽出処理の対象がより集約されることから、より効率的に不要信号Noiの抑制に係る処理を行うことができる。
例えば、第1実施例におけるセンサアレイの総数と、第1変形例におけるセンサアレイの総数とが同一である場合、一単位のセンサアレイが複数のセンサアレイである第1変形例の方が抽出処理の対象がより集約されるとともに、サブアレイSAmに入力される参照信号の数が相対的に減少することになる。このため、第1変形例によれば、不要信号抑制ウェイトwmの決定に係る処理負荷をより低減することができる。
[第2変形例]
次に、適応ビームフォーミングの第2変形例について、図16及び図17を参照して説明する。第2変形例の説明においては、第1実施例と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略することがある。第2変形例では、別単位のセンサアレイにタップ付き遅延線路が設けられる。別単位のセンサアレイから得られた参照信号は、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号からこの参照信号を差し引くように合わせられる。また、第2変形例では、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号から別単位のセンサアレイにより受信されてタップ付き遅延線路を経た受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用した信号を差し引くように合わせた出力信号を得ることで抑制信号を得る。
図16は、第2変形例における一つのサブアレイSB1から得られる仮想出力の構成を示す模式図である。以下、サブアレイSB1を例として、第2変形例について説明する。図16に示すように、サブアレイSB1の仮想出力を構成する信号のうち、参照信号r2(k),…,rM(k)は、それぞれタップ付き遅延線路を経て、受信信号x1(k)と合わせられて仮想出力p1(k)を構成する。参照信号r2(k),…,rM(k)の各々が受信信号x1(k)と合わせられるまでの伝送経路の各々に設けられるタップ付き遅延線路の構成は共通である。図16に示すz−1は単位遅延演算子を表す。タップ付き遅延線路は、抽出処理により抽出された参照信号rm(k)(例えば図16に示すr2(k),…,rM(k))がサブアレイの仮想出力を構成する受信信号(例えばサブアレイSB1の仮想出力p1(k)を構成する受信信号x1(k))に合わせられるまでの伝送経路上に、一又は複数の単位遅延演算子を直列に設定する。図16に示すタップ付き遅延線路のタップ長はLであり、一つのタップ付き遅延線路に(L−1)個の単位遅延演算子が設けられる。ここで、Lは2以上の整数である。抽出処理により抽出された参照信号rm(k)が(L−1)個の単位遅延演算子のうちl個の単位遅延演算子を経て出力された場合、出力される参照信号はrm(k−l)になる。ここで、lは、1以上(L−1)以下の整数である。
図16に示すように、(L−1)個の単位遅延演算子の各々から出力される参照信号は、サブアレイSB1の仮想出力を構成する受信信号からこの参照信号を差し引くように合わせられる。ここで、受信信号に合わせられる参照信号の各々には、個別のウェイトを適用することができる。係る個別のウェイトを考慮した第2変形例のサブアレイSB1に係るウェイトw1は、以下の式(10)のように示すことができる。また、第2変形例のサブアレイSB1に係る参照信号のベクトルは、以下の式(11)のように示すことができる。また、第2変形例のサブアレイSB1の仮想出力p1(k)は、以下の式(12)のように示すことができる。そして、第2変形例のサブアレイSB1の仮想出力p1(k)による出力電力は、以下の式(13)のように示すことができる。
式(13)に示す出力電力を最小化するウェイトは、ウィーナーフィルタリング法(Wiener filtering)を用いて求めることができる。係る方法によるフィルター(ウィーナーフィルター)が適用されたウェイトw1は、以下の式(14)のように示すことができる。ここで、式(14)に含まれるRr1及びrxr1は、それぞれ式(15)、式(16)の通りである。第1実施例でも記載した通り、仮想出力の出力電力が最小化されるということは、仮想出力のうち参照信号の出力が最小化されるということである。すなわち、第2変形例の抑制部17は、式(14)のように求められた仮想出力の出力電力が最小化されるウェイトw1をサブアレイSB1の不要信号抑制ウェイトとし、受信信号に適用することで、サブアレイSB1のサブアレイ出力から不要信号Noiを抑制することができる。具体的には、第2変形例の抑制部17は、図17に示すように、別単位のセンサアレイにより受信された受信信号に対して式(14)のように求められた不要信号抑制ウェイトを適用した信号を、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号から差し引くように合わせることで、サブアレイ出力d1(k)を得る。このように、別単位のセンサアレイ(例えばA2,…,AM)により受信された受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用した信号は、一単位のセンサアレイ(例えばA1)により受信された受信信号からこの信号を差し引くように合わせられる。
以上、サブアレイSB1を例として説明したが、第2変形例では、他のセンサアレイA2,…,AMの受信信号とこの受信信号を出力するセンサアレイ以外のセンサアレイの参照出力が合わせられるサブアレイSBmの仮想出力pm(k)及びサブアレイ出力dm(k)についても同様の処理が行われる。タップ付き遅延線路に関する特徴を除いて、第2変形例の構成は第1実施例と同様である。
第2変形例では、タップ付き遅延線路の機能はソフトウェアにより実現される。具体的には、第2変形例において決定部16がサブアレイSBmを設定して仮想出力を得る処理にタップ付き遅延線路の機能を実現する処理が含まれることになる。より具体的には、タップ付き遅延線路は、例えばサブアレイSB1に関して、単位遅延演算子に対応するように参照信号r2(k),…,rM(k)をバッファリングし、複数のセンサアレイによる信号の受信周期に応じてバッファリングされた参照信号を出力するとともに、出力された参照信号に各々の単位遅延演算子に対応するウェイトを適用することで実現される。サブアレイ出力を得るためのタップ付き遅延線路及び他のサブアレイに関する処理についても同様である。
なお、第1変形例に示す方法で構成される一単位のセンサアレイを第2変形例に適用してもよい。すなわち、第2変形例における一単位のセンサアレイは、ビームフォーミングにより信号の受信方向が限定された複数のセンサアレイであってもよい。
以上、第2変形例によれば、参照信号がタップ付き遅延線路を経ることで、ある一タイミングに限られない時間的な広がりを持つ参照信号を得られる。このため、このような参照信号が合わせられた仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトwmをサブアレイSBmの不要信号抑制ウェイトとして決定することで、参照信号に含まれる不要信号Noiに対する時空間的なフィルタリングを行うことができる。
[第3変形例]
次に、適応ビームフォーミングの第3変形例について、図18を参照して説明する。第3変形例の説明において、第2変形例と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略することがある。
図18は、第3変形例における一つのサブアレイから得られる仮想出力の構成を示す模式図である。第3変形例では、第2変形例と同様に、別単位のセンサアレイにタップ付き遅延線路が設けられる。ただし、第3変形例では、第2変形例と異なり、複数のセンサアレイのうち一単位のセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号と複数のセンサアレイのうち一単位のセンサアレイとは異なる別単位のセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号とを合わせた仮想出力を行うサブアレイを設定する。また、第3変形例では、第2変形例と異なり、別単位のセンサアレイから得られた参照信号は、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号から差し引くように合わせられる。
具体的には、第2変形例においてサブアレイSB1の仮想出力p1(k)を構成する信号として用いられていた受信信号(例えば受信信号x1(k))が、第3変形例では、この受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号(例えば受信信号x1(k)に抽出処理を行って得られた参照信号r1(k))に置き換えられる。このため、図16に示すように第2変形例では一単位のセンサアレイA1に設けられず、別単位のセンサアレイA2,…,AMに設けられていたフィルタHFが、第3変形例では、図18に示すように、一単位のセンサアレイA1及び別単位のセンサアレイA2,…,AMに設けられる。
第3変形例は、上記で特筆した仮想出力に係る事項を除いて、第2変形例と同様である。すなわち、第3変形例では、仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトをサブアレイの不要信号抑制ウェイトとして決定し、サブアレイ毎に、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号と別単位のセンサアレイにより受信された受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用した信号とを合わせた出力信号を得ることで不要信号が抑制された信号を得、別単位のセンサアレイにより受信された受信信号に不要信号抑制ウェイトを適用した信号は、一単位のセンサアレイにより受信された受信信号から差し引くように合わせられる(図17参照)。
第3変形例のサブアレイSB1に係るウェイトw1は、第2変形例と同様、上記の式(10)のように示すことができる。また、第2変形例のサブアレイSB1に係る参照信号のベクトルは、第2変形例と同様、上記の式(11)のように示すことができる。
第3変形例のサブアレイSB1の仮想出力P1(k)は、以下の式(17)のように示すことができる。そして、第2変形例のサブアレイSB1の仮想出力P1(k)による出力電力は、以下の式(18)のように示すことができる。ここで、式(17)及び式(18)で用いられているrr1のスカラーは以下の式(19)のように示すことができる。また、rr1のベクトルは以下の式(20)のように示すことができる。
式(18)に示す出力電力を最小化するウェイトは、ウィーナーフィルタリング法(Wiener filtering)を用いて求めることができる。係る方法によるフィルター(ウィーナーフィルター)が適用されたウェイトw1は、以下の式(21)のように示すことができる。ここで、式(21)に含まれるRr1は、第2変形例と同様、上記の式(15)の通りである。
なお、第1変形例に示す方法で構成される一単位のセンサアレイを第3変形例に適用してもよい。すなわち、第3変形例における一単位のセンサアレイは、ビームフォーミングにより信号の受信方向が限定された複数のセンサアレイであってもよい。
以上、第3変形例によれば、第2変形例と同様の効果を得られることに加えて、一単位のセンサアレイ及び別単位のセンサアレイに区別なくフィルタHFを適用して抽出処理を行った参照信号を用いることができるので、構成をより単純化することができる。
[第4変形例]
次に、適応ビームフォーミングの第4変形例について、図19及び図20を参照して説明する。第4変形例の説明においては、第1実施例と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略することがある。第4変形例では、複数のセンサアレイを複数のグループ(例えば図19及び図20に示すサブアレイSC1〜SCM)にグルーピングし、各グループに属するセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号により構成される仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトwmを各グループの不要信号抑制ウェイトとして決定し、各グループに属するセンサアレイにより受信された受信信号に各グループの不要信号抑制ウェイトを適用した信号を得ることで抑制信号を得る。
図19は、第4変形例における仮想出力の構成を示す模式図である。第4変形例では、図19に示すように、MQ(=M×Q)個のセンサアレイが設けられているものとする。ここで、Qは1以上の整数である。第4変形例におけるサブアレイSC1〜SCMは、Q個のセンサアレイが組になったものである。図19では、Q個のセンサアレイが組になったグループ(サブアレイSCm)がM個設定され、複数のサブアレイSC1〜SCMに含まれるセンサアレイが存在しないグルーピングが行われた場合を示している。
第4変形例の抽出処理部15は、図19に示すように、サブアレイ毎に、サブアレイを構成する全てのセンサアレイの受信信号に対して抽出処理を行う。すなわち、第4変形例では、サブアレイSCmを構成する全てのセンサアレイの受信信号から参照信号を抽出する。第4変形例の決定部16は、サブアレイ毎に、サブアレイを構成する全てのセンサアレイの受信信号から抽出された参照信号を合わせた信号を仮想出力とする。すなわち、第4変形例における一つのサブアレイの仮想出力は、複数のセンサアレイのうち一部(例えばQ個)のセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号により構成される。
第4変形例におけるサブアレイSCmの仮想出力qm(k)は、以下の式(22)のように示すことができる。第4変形例の決定部16は、第1実施例の場合と同様に、仮想出力qm(k)が最小となるウェイトwmを求める。ただし、上記の式(6)が解かれることで求められる第4変形例のウェイトwmは、第1実施例における上記の式(7)に代えて以下の式(23)のように示される。このように、第4変形例の決定部16は、各グループに属するセンサアレイにより受信された受信信号に抽出処理を行って得られた参照信号により構成される仮想出力qm(k)が最小となるセンサアレイのウェイトwmを各グループの不要信号抑制ウェイトとして決定する。なお、第4変形例では、サブアレイSCmの参照信号ベクトルrm(k)の空間自己相関行列を求め、その行列の最小固有値に対応する固有ベクトルを求めてこの固有ベクトルを不要信号抑制ウェイトとして用いてもよい。この場合でも、この固有ベクトルにより参照信号を構成する不要信号Noiの到来方向に対してヌルを向けることができる。
第4変形例の抑制部17は、図20に示すように、Q個のセンサアレイが組になったサブアレイSCmに対して、上記の式(23)で示されるウェイトwmを適用した信号(図20に示すサブアレイ出力e1(k),e2(k),…,eM(k)、すなわちem(k))を得ることで、抑制信号を得る。
第4変形例では、複数のグループに含まれるセンサアレイがあってもよい。第4変形例における複数のグループは、各グループを構成するセンサアレイが一つ以上異なっていればよい。例えば、センサアレイA1,A2により構成されるグループと、センサアレイA1,A2,AMにより構成されるグループとがあってもよい。また、一つのグループを構成するセンサアレイの数は一つ以上である。
以上、第4変形例によれば、抽出処理により抽出された参照信号を含む仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトwmをサブアレイSCmの不要信号抑制ウェイトとして決定する。このため、複数のセンサアレイの受信信号自体から不要信号Noiの到来方向を特定することができるか否かに関係なく、仮想出力が最小となるセンサアレイのウェイトを不要信号抑制ウェイトとして決定することで抑制信号を得ることができる。このように、この構成によれば、より確実に不要信号Noiを抑制することができる。また、センサアレイのグルーピングにより、一つのグループからの出力をより安定させることができることに加え、抽出処理の対象がより集約されることから、より効率的に不要信号Noiの抑制に係る処理を行うことができる。
上記の実施例等はあくまで一例であり、その具体的内容について適宜変更可能である。例えば、上記の実施例等では、抑制信号の取得に際して適応ビームフォーミングを採用しているが、これは抑制信号の取得方法の具体例であってこれに限られるものでない。受信信号の帯域のうち不要信号Noiのみが含まれる高周波数帯域及び低周波数帯域の少なくとも一方の帯域に含まれる信号に基づいて受信信号に含まれる不要信号Noiを抑制した抑制信号を得られればよい。
また、上記の実施例等では、フィルタHFとしてハイパスフィルタを用いて、受信信号から検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域の信号のみを参照信号r(k)として抽出しているが、一例であってこれに限られるものでない。ローパスフィルタを用いて、受信信号から検出対象の信号Sigが含まれない低周波数帯域(例えば図3に示す低周波数帯域Low)の信号のみを参照信号r(k)として抽出してもよい。また、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタを用いて受信信号から検出対象の信号Sigが含まれない高周波数帯域及び低周波数帯域の両方の信号のみを参照信号r(k)として抽出してもよい。また、適応ビームフォーミングでは、フィルタHFは、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタに限られない。例えば、不要信号Noiのみが含まれると判明している特定の周波数帯の信号をえるためのBPF等であってもよい。フィルタHFを用いた抽出処理では、受信信号から検出対象の信号Sigが含まれない信号のみを参照信号として抽出することができればよく、その具体的処理内容(例えば抽出処理に用いられるフィルタの具体的な性質等)は問われない。
上記の実施例等における別単位のセンサアレイは複数であるが、これは一例であってこれに限られるものでない。別単位のセンサアレイは、少なくとも一つ以上のセンサアレイであればよい。
上記の実施例等では、ソフトウェア・プログラムを利用したコンピューター処理により抽出処理部15、決定部16、抑制部17等の機能を実現しているが、これらの機能の一部又は全部を専用のハードウェアによって実現してもよい。
複数のセンサアレイが構成するものは、アレイアンテナに限られない。例えば、ハイドロフォンアレイ、マイクロフォンアレイ等であってもよい。複数のセンサアレイは、そのセンサアレイにより構成されるものに応じた信号を受信する。