JP3959205B2 - 表面処理粉体及びそれを含有してなる皮膚外用剤 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚外用剤の原料に好適な粉体及びそれを含有する皮膚外用剤に関し、更に詳細には、表面をポリビニルピロリドンで被覆した粉体及びそれを含有する皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
化粧料などに於いて、粉体は色剤、紫外線防護剤、隠蔽剤、質感付与剤、光沢付与剤などの用途で広く使用されている。この様な粉体の多くは鉱物性物質乃至はその加工物であり、金属酸化物及びその複合体の構造を有している。従って、これらの比重は大変大きい場合が多く、通常は1以上である。従って、水系の剤形に於いてこの様な粉体類を使用する場合には、特段の工夫が為されないと満足できる安定性は得られない。しかも、前記粉体は等電点を有しているため、電解質が多くなると、凝集してしまう為、従来の粉体を含有しない系で使用されてきたカルボキシビニルポリマー等の増粘安定化剤は使用しにくいのが現状であり、この為、石鹸等の界面活性剤によるゲル構造やベントナイトなどの無機増粘剤などの作るゲル構造を利用するのが常法であった。この為、ゲル強度の調節がしにくく、流動性を有しなめらかな感触の粉体分散系は得にくいのが実状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、粉体を含有する系であっても粉体が凝集することなく、従来の増粘剤を使用して粉体を分散・安定化する手段を提供することを課題とする。
【0004】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、粉体を含有する系であっても粉体が凝集することなく、従来の増粘剤を使用して粉体を分散・安定化する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、粉体の表面をポリビニルピロリドンで処理することにより、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤が存在しても粉体の凝集を抑制することができることを見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について発明の実施の形態を中心に詳細に説明を加える。
【0005】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の粉体
本発明の粉体は、ポリビニルピロリドンで表面を処理されていることを特徴とする。本発明の粉体の基体となる粉体は、化粧料や皮膚外用医薬などの皮膚外用剤の分野で、通常使用されている粉体であれば特段の限定無く用いることができ、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、紺青、群青、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸リチウムコバルト等の顔料類、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ等の体質粉体類及びこれらの複合体などが例示できる。複合体としては混合焼結体やドープ粉体などが例示できる。これらの基体となる粉体は、予め、通常知られている方法によって表面処理しておくことも可能である。この様な表面処理法としては、ハイドロジェンメチルポリシロキサンやジメチルポリシロキサンを焼き付けたシリコーン処理、シリルカップリング剤で処理したシリルカップリング処理、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸で処理した金属石鹸処理、アシルグルタミン酸誘導体で処理したアミノ酸誘導体処理、ポリ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩で処理した燐酸塩処理、パーフルオロアルキル構造を部分構造に含む化合物で処理した、パーフルオロアルキル処理、レシチンなどで処理した燐脂質処理などが例示でき、この様な処理の何れに対しても適用可能である。本発明の粉体は、この様な粉体を基体として、これをポリビニルピロリドン溶液などに浸漬する事により得ることができる。これは浸漬すれば即時的に得られるので、予め基体となる粉体をポリビニルピロリドン水溶液などに浸漬し、乾燥などさせて予め処理粉体を調整しておきそれを用いることもできるし、皮膚外用剤の製造過程に於いて、ポリビニルピロリドン水溶液などに基体となる粉体を浸漬し、それらを処理粉体として取り出すことなく、そのまま皮膚外用剤の中間仕掛品として使用することもできる。この様な工程を経て作製された皮膚外用剤も後記の本発明の皮膚外用剤の技術的範囲に属し、この途中経過でポリビニルピロリドン溶液と接触した中間状態の粉体が本発明の粉体となる。本発明の粉体作製時に於ける、基体となる粉体とポリビニルピロリドンとの好ましい割合は、基体の粉体の重量に対して、ポリビニルピロリドンが1〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。これは、多すぎると効果が頭打ちになり、少なすぎると凝集抑制作用が失われ、系が不安定になる場合があるからである。又、この様にして得られた本発明の処理粉体は、副次的効果として、表面を被覆したポリビニルピロリドンに由来する、柔らかなしっとり感をその使用感に有する。後記に示す、本発明の皮膚外用剤に於ける、これら本発明の処理粉体の含有量は、皮膚外用剤の全量に対して1〜40重量%、更に好ましくは3〜25重量%が適当である。
【0006】
(2)本発明の皮膚外用剤本発明の皮膚外用剤は、上記本発明の処理粉体を含有することを特徴とする。ここで、皮膚外用剤とは、本発明の於いては、皮膚上に外用で投与される形態のものの総称を意味し、例えば、基礎化粧料、メークアップ化粧料、毛髪化粧料、洗浄料などのような化粧料、抗真菌剤、抗炎症剤、ステロイド剤のような皮膚外用医薬、消毒・殺菌剤等が例示できる。これらの皮膚外用剤の中で、特に本発明の皮膚外用剤として好適なものは、メークアップ化粧料と紫外線防護化粧料である。本発明の処理粉体は、上記のようにごく短時間に粉体表面をポリビニルピロリドンで処理することができる。
【0007】
本発明の処理粉体は、上記の如くカルボキシビニルポリマー及び/又は塩等の電解質の存在下であっても凝集しないので、この様な成分を本来の増粘安定化剤として共存させても、凝集は起こらず、これら増粘安定化剤の作用を発揮させることができるので、本発明の皮膚外用剤としてはこの様な増粘安定化剤をともに含有させることが好ましい。この様な増粘安定化剤は通常水性担体の存在下使用されることから、当然この様な系では水の存在も構成要素に加えられる。即ち、好ましい態様としては、1)ポリビニルピロリドンと2)粉体と3)増粘安定化剤と4)水とを含有することである。ここで、増粘安定化剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸(C10〜30)アルキルポリマー及びこれらの塩等が例示でき、何れも使用可能であるが、安定化の上で、カルボキシビニルポリマーとアクリル酸・メタクリル酸(C10〜30)アルキルポリマー及びそれらの塩が好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。これら塩を形成する塩基の量は、増粘安定化剤の重量に対して、10重量%〜100重量%が適当である。又、増粘安定化剤の含有量は、0.01〜2重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0008】
本発明の皮膚外用剤に於いては、上記の必須の成分と好ましい成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を、本発明の効果を損ねない範囲に於いて、含有することができる。かかる任意性成分としては、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を好ましく例示できる。本発明の皮膚外用剤は、これらの必須成分、好ましい成分、任意成分とを常法に従って処理することにより製造することができる。かくして得られた、皮膚外用剤は粉体が凝集することなく均一に分散しているので、優れた隠蔽効果や演色効果、紫外線防護効果を発揮することができる。更に、本発明の皮膚外用剤は、通常の粉体含有化粧料に比べて界面活性剤量を低減することができるので、化粧持ち持続効果を有し、敏感肌の人に適応しても刺激発現が極めて少ない利点を有する。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0010】
<実施例1>
下記に示す処方に従って、本発明の処理粉体を作製した。即ち、処方成分をボールミルに仕込み、48時間分散させた後、減圧下で溶媒である水を除去し、得られた粉体をパルベライザーで粉砕し、本発明の処理粉体を得た。カルボキシビニルポリマーナトリウム塩水溶液(ゲル状;0.01%)10重量部にこれらの粉体1重量部を加えて攪拌した場合の凝集を++:凝集なし、+:凝集殆どなし、±:やや凝集、−:明らかな凝集の基準で判定した。この結果を表1に示す。この様な系に於いては、基体粉体は何れも凝集を起こすことを本発明者らは既に確認している。これより、本発明の粉体は著しく凝集が抑制されていることがわかる。
水 90 重量部
基体粉体* 10 重量部
ポリビニルピロリドン1%水溶液 100 重量部
*詳細は表1に記す。
【0011】
【表1】
【0012】
<実施例2>実施例1の粉体を用いて、水性ファンデーションを作製した。即ち、イにハの粉体を良く混合して加え、ディスパーで分散させ、これに徐々にロの成分を攪拌しながら加え、水性ファンデーションを得た。このものは50℃で1週間保存しても全く沈降や凝集を認めなかった。更にこのものの使用感は、さっぱりとしていてのびが良く、化粧持ちも優れているので、夏用の化粧料として極めて好適なものであった。このものの本発明の処理粉体を処理しない基体粉体に変えた比較例1は製造直後に既に粉体が凝集しており、50℃1週間の保存では完全に粉体が沈降していた。
イ
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 30 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ロ
苛性カリ10%水溶液 1.5重量部
水 40.3重量部
ハ
処理粉体1 10 重量部
処理粉体7 3 重量部
処理粉体8 1 重量部
処理粉体10 5 重量部
処理粉体13 1 重量部
【0013】
<実施例3>実施例1の粉体を用いて、乳化ファンデーションを作製した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ70℃に加熱し、イにニの粉体を良く混合して加え、ディスパーで分散させ、これを徐々にロの成分に攪拌しながら加え、更にハの成分を徐々に加えて中和し、乳化ファンデーションを得た。このものは50℃で1週間保存しても全く沈降や凝集を認めなかった。更にこのものの使用感は、さっぱりとしていてのびが良く、化粧持ちも優れているので、夏用の化粧料として極めて好適なものであった。このものの本発明の処理粉体を処理しない基体粉体に変えた比較例2は製造直後に既に粉体が凝集しており、50℃1週間の保存では完全に粉体が沈降していた。
イ
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 30 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ロ
スクワラン 5 重量部
ソルビタンモノステアレート 2 重量部
ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル 2 重量部
ハ
苛性カリ10%水溶液 1.5重量部
水 31.3重量部
ニ
処理粉体2 4 重量部
処理粉体4 8 重量部
処理粉体7 1 重量部
処理粉体8 1 重量部
処理粉体10 5 重量部
処理粉体14 1 重量部
【0014】
<実施例4>実施例1の粉体を用いて、紫外線防護化粧料を作製した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ70℃に加熱し、イにニの粉体を良く混合して加え、ディスパーで分散させ、これを徐々にロの成分に攪拌しながら加え、更にハの成分を徐々に加えて中和し、紫外線防護化粧料を得た。このものは50℃で1週間保存しても全く沈降や凝集を認めなかった。更にこのものの使用感は、さっぱりとしていてのびが良く、化粧持ちも優れているので、持続性のある紫外線防護化粧料として極めて好適なものであった。このものの本発明の処理粉体を処理しない基体粉体に変えた比較例3は製造直後に既に粉体が凝集しており、50℃1週間の保存では完全に粉体が沈降していた。
イ
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 20 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ロ
スクワラン 2 重量部
桂皮酸イソオクチル 5 重量部
ソルビタンモノステアレート 2 重量部
ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル 2 重量部
ハ
苛性カリ10%水溶液 1 重量部
水 31.3重量部
ニ
処理粉体2 4 重量部
処理粉体4 5 重量部
処理粉体5 5 重量部
【0015】
<実施例5>実施例2のファンデーションに於いて、本発明の処理粉体を、ファンデーションの作成過程に於いて、ポリビニルピロリドン水溶液による処理工程を加えることで代用して、水性ファンデーションを作製した。即ち、ハの成分を良く混合しロール掛けした後、イにこれを良く混合して加え、ディスパーで分散させ、これに徐々にロの成分を攪拌しながら加え、水性ファンデーションを得た。このものは50℃で1週間保存しても全く沈降や凝集を認めなかった。更にこのものの使用感は、さっぱりとしていてのびが良く、化粧持ちも優れているので、夏用の化粧料として極めて好適なものであった
。このもののポリビニルピロリドンを水に変えた比較例4は製造直後に既に粉体が凝集しており、50℃1週間の保存では完全に粉体が沈降していた。但し、粉体の分散具合は若干実施例2のものの方が優れていた。これにより、予め処理しておく代わり、途中で処理工程を入れてイン・スィチュで製造しても本発明の効果はある程度維持されることがわかった。
イ
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 30 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ロ
苛性カリ10%水溶液 1.5重量部
水 20.3重量部
ハ
二酸化チタン 10 重量部
黄色酸化鉄 3 重量部
ベンガラ 1 重量部
タルク 5 重量部
チタンマイカ 1 重量部
1%ポリビニルピロリドン水溶液 20 重量部
【0016】
<実施例6>実施例5と同様にイン・スィチュで処理粉体を作製し、これを用いて皮膚外用医薬(抗炎症剤)を作製した。即ち、イ、ロ、ハを70℃に加熱し、ニの成分を良く混合し、ロール掛けし、これをイに加えてディスパーで分散させ、このものを徐々にロに加え乳化し、更にハを徐々に加えて中和して攪拌冷却し皮膚外用医薬を得た。このものは優れた粉体分散性を有していた。
イ
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 20 重量部
メチルパラベン 0.2重量部
ロ
スクワラン 6 重量部
インドメタシン 1 重量部
ソルビタンモノステアレート 2 重量部
ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル 2 重量部
ハ
苛性カリ10%水溶液 1 重量部
水 30.3重量部
ニ
ステアリン酸アルミニウム被覆二酸化チタン 5 重量部
1%ポリビニルピロリドン 10 重量部
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、粉体を含有する系であっても粉体が凝集することなく、従来の増粘剤を使用して粉体を分散・安定化する手段を提供することができる。
Claims (3)
- 基体粉体とポリビニルピロリドンと増粘安定化剤と水とを含有する皮膚外用剤の製造方法であって、
(A)二酸化チタン、酸化鉄、紺青、群青、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸リチウムコバルト、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ及びこれらの複合体から選択される基体粉体を、基体粉体の質量に対して1〜20重量%のポリビニルピロリドンを含む水溶液に浸漬する工程、および
(B)(A)で得られる、ポリビニルピロリドンで被覆された粉体水溶液、または、該水溶液の水分を除去した粉体と、皮膚外用剤の全質量に対して0.1〜1重量%の、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸(C10〜30)アルキルポリマー及びこれらの塩から選択される増粘安定化剤とを皮膚外用剤に含有させる工程
を含む製造方法。 - 前記ポリビニルピロリドンを含む水溶液がポリビニルピロリドンと水からなることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記増粘安定化剤がカルボキシビニルポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
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