JP3959195B2 - 二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、特公昭35−11774号公報、特公昭62−43856号公報、特公平1−25694号公報、特公平1−25696号公報等に記載されているように、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法においては、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂が多く使用されている。
【0003】
ところで、逐次二軸延伸においては、上記の特公昭35−11774号公報等に記載されているように、Tダイから押し出されたフィルムは一旦冷却されてから縦延伸を行い、次いで横延伸を行うのが一般的であった。
【0004】
従来の逐次二軸延伸においては、図5に示すように、Tダイ(イ)から押し出されたフィルム(ロ)をキャストロール(ハ)とタッチロール(ニ)との間に誘導し、更に冷却ロール(ホ)により冷却し、更に加熱ロール(ヘ)により延伸温度に加熱し、次いで縦延伸ロール(ト)により縦延伸した後、冷却ロール(チ)により横延伸装置(リ)により横延伸し、ダンサーロール(ヌ)により張力調整された後、巻取り機(ル)により巻き取られていた。尚、(ヲ)は横延伸装置(リ)に設けられたテンターである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリプロピレン等の結晶性樹脂においては、Tダイから押し出された樹脂フィルムが、薄物フィルムの場合にはキャストロールとその横方向に配置されたロールで、又、厚物フィルムの場合には、キャストロールを含むロールが縦方向に配置されたロールによって冷却され、引き続き設置された冷却ロールで出来るだけ急冷して結晶化を防止して延伸適性を保持する必要があった。
【0006】
又、従来の逐次二軸延伸においては、Tダイから押し出されたフィルムが延伸に適する温度迄冷却するには、かなりの個数の冷却ロールによる冷却を必要とし、又、その後に延伸適性温度にするための再加熱ロールによる再加熱を必要とする。
【0007】
又、縦延伸終了後に更にフィルムを冷却ロールにより一旦冷却して、更に横延伸機入口において熱風により再々加熱して横延伸を行う必要がある。
【0008】
このように、従来の逐次二軸延伸フィルムの製造方法においては、Tダイから押し出されたフィルムは、その後の工程において、冷却と加熱とが繰り返して行われるので、熱損失が大きく、又、装置が複雑に且つ長大になり、エネルギーコスト、設備コスト及びスペースの増大による建物やユーティリティコスト、ひいてはフィルムの製造コストが高くなるという問題点を抱えていた。
【0009】
本発明は従来の二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び製造装置における、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的とするところは、従来の二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び製造装置における問題点を解消し、熱損失を小さくすると共に、装置の短小化を図り、エネルギーコスト、設備コスト等の諸コストの削減を図ることができる二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法は、
ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、横方向及び縦方向の二軸に延伸する二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法であって、ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、延伸温度よりも0℃〜15℃高い温度でキャストロールから剥離し、先ず横方向に延伸した後、引き続き縦方向に延伸することを特徴とするものである。
【0011】
又、請求項2記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置は、
ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸用ロールがこの順に設けられている二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置であって、横延伸装置のフィルム導入部又はフィルム排出部にフィルムを覆うカバーが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
又、請求項3記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置は、
ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸用ロールがこの順に設けられている二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置であって、横延伸装置のフィルム導入部の前方にフィルムの耳部を局部的に冷却する冷却装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
又、請求項4記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置は、
請求項2又は3記載の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置において、キャストロールの表面に四フッ化エチレン樹脂層が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタアクリレートスチレンの共重合体(MS樹脂)、メチルメタアクリレートブタジエンスチレン共重合体(MBS樹脂)等のスチレン系樹脂が使用できる。また、前記したスチレンに対する共重合の相手成分としては、メチルメタアクリレート、アクリロニトリル、ブタジエンスチレンに限定されるものではなく、これ以外の成分であっても何ら差し支えない。
【0015】
これらのスチレン系樹脂に必要に応じて酸化防止剤、安定剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤等の配合剤が第三種成分として混合したものが使用できる。
【0016】
本発明において、ダイとしては、Tダイ、サーキュラーダイ等のフィルム成形用のダイが使用できる。又、本発明において、スチレン系樹脂を押出機により融点以上の温度に加熱され、成形加工温度に到った後、Tダイ等のダイよりフィルム状に押出し、キャストロールによりフィルムを剥離温度以下に冷却するのがよい。
表1はGPPS、MS樹脂、AS樹脂の各々について、成形温度、融点、剥離温度、延伸温度、軟化温度を列記したものである。
【0017】
【表1】
【0018】
表1から分かるように、剥離温度と延伸温度はほぼ近い値を示すが、延伸温度を剥離温度より0〜15℃の範囲で低く取ればよいことを示している。
【0019】
尚、剥離温度については、樹脂の種類やグレードのみでなく、ロールの表面処理によっても異なる。即ち、キャストロールの表面をクロムメッキした場合と四フッ化エチレン樹脂処理した場合について述べるとAS樹脂の剥離温度は表2に示すようになった。このように四フッ化エチレン樹脂処理をすればクロムメッキに比べて剥離温度を上昇させることができる。
【0020】
【表2】
【0021】
融点以下軟化温度以上の領域においては、樹脂はゴム弾性を示すが、この下限温度、即ち軟化温度はガラス転移点(二次転移点)と称される。ガラス転移点は熱膨張の測定において比容積−温度曲線の二つの傾斜が異なる直線の交点から求めることができる。又は、試験片の温度を調整されたプログラムに従って変化させながら、その試験片を温度が等しくなるように両者に加えた単位時間当たりの熱エネルギーの入力の差を温度の関数として測定する(DSC)方法もある。
【0022】
しかしながら、これらの測定には長時間を要すること、又、前記したような配合剤を混合した場合、純粋の樹脂のみの場合と実用的な軟化点が異なって来るため、実用的見地からはビカット軟化点測定法等が使用される。
【0023】
以上に述べたようなスチレン系樹脂の温度変化による性状変化を考慮すると、キャストロールの温度は少なくとも表1に示される剥離温度以下でなくてはならない。又、四フッ化エチレン樹脂処理されたキャストロールを使用する場合には、表2に示されたような温度とすることができる。
【0024】
計算によれば、AS樹脂を押し出すに当たって、キャストロールの温度を120℃とすれば厚み1.2mmのフィルムの場合、冷却後のフィルムの中心温度が120.8℃に到る迄に約8秒を、又、厚み0.72mmのフィルムの場合、同じく冷却後のフィルムの中心温度が120.6℃に到る迄に約3秒を要することが分かる。従って、キャストロールの径及び回転速度は上記の条件を勘案して決定される。
【0025】
横延伸装置に導入されるスチレン系樹脂のフィルムは従来方法では常温に近い温度迄冷却されるものであるが、本発明においては熱損失を防止するためになるべく延伸温度に近い温度で横延伸装置のテンター部へ導入することが望ましい。
【0026】
剥離温度においては、樹脂フィルムはゴム状弾性体であって、フィルムがキャストロールから剥離した後、剥離が可能な最高の温度を維持した状態で横延伸装置のテンタークリップに供給されたとすると、フィルムの変形によって、クリップミスが生じる恐れがある。従って、キャストロールから剥離した後、フィルムの形状保持能力を高める意味で少数の冷却ロールを通過させてフィルムの温度を少し下げることが望ましい。
【0027】
ゴム状弾性体の硬さ(もしくは柔らかさ)を定義するには、引張応力と伸びの関係が使用できる。引張応力をσkg/mm2 、伸びをε(伸び量/最初の長さ)とすれば、両者の関係は、
σ=Eε・・・・・・・・・(1)
で表される。ここにEは引張弾性率(ヤング率)kg/mm2 である。
【0028】
MS樹脂、AS樹脂について、引張応力σkg/mm2 と伸びεの関係については、恒温室の温度を種々変化させた状態で測定を行った。このうち、MS樹脂に関する測定値を図1に示す。
図1では、MS樹脂のシートにつき、押出方向に直角方向(TD方向)にサンプルを採取したものである。温度条件についても<1>100℃<2>110℃とし、サンプルサイズは幅20mm、厚み0.78〜0.79mm、標点間距離(チャック間距離)は10mm、引張速度は50mm/分とした。
又、温度条件<3>115℃のものは、サンプルサイズは幅60mm、厚み0.82mm、標点間距離(チャック間距離)は35mm、引張速度は50mm/分とした。
【0029】
引張試験においては、引張を始めて後の初期の段階では、引張応力−伸び線図を観察すると、比較的低温の場合、例えば、<1>100℃においては、降伏点に到る迄引張応力−伸びの関係は直線となり、降伏点に到る直前の引張応力の値自体も大きいにもかかわらず伸びの値は小さい。即ち、弾性変形のみが生じていて塑性変形は生じていない。
【0030】
これに対して比較的高温、例えば<3>115℃においては、降伏値は見られないが、引張応力−伸びの関係は直線部分がなく、引張を始めて後の初期の段階において、伸びが拡大する方向に湾曲する。即ち、小さい引張応力で塑性変形を起こしてしまう。
【0031】
尚、引張応力を伸びで割った値、即ち(1)式で示す引張弾性率Eが大きい場合、たとえ引張応力σが多少加わっても伸びε(変形)が少なくて済むことになる。又、引張応力−伸びの関係が直線の領域では引張応力を再度0とすれば完全に元の形に復元する。
【0032】
尚、図1に示す引張応力σkg/mm2 −伸びε曲線から引張弾性率Eを求めると、MS樹脂の100℃、110℃、115℃における引張弾性率Eは、
100℃:1.28kg/mm2
110℃:0.27kg/mm2
115℃:0.14kg/mm2
となる。従って、MS樹脂のフィルムの場合、融点以下、軟化点以上の温度において引張弾性率Eが1.0kg/mm2 以上の値となるような温度にフィルムを一旦冷却して加工中のフィルムの変形を実用的に生じないようにすることが、キャストロールより剥離した後、横延伸装置に到る間のフィルムの性状として好ましい状態である。
【0033】
尚、以上ではMS樹脂について説明したが、AS樹脂についても測定を行った。その結果、MS樹脂における100℃の樹脂フィルムの引張応力−伸び特性とAS樹脂における130℃の樹脂フィルムの引張応力−伸び特性とは極めて類似している。
【0034】
上記のような実験からスチレン系樹脂においては、共重合の相手の化学成分は変化したとしても、温度の絶対値を変えることにより引張応力−伸びの関係を類似の状態とすることができることが分かる。
【0035】
キャストロールと横延伸装置の間に従来よりは少数の冷却ロールを設置して横延伸装置に供給されるフィルムが供給前に変形しない範囲の温度に、又、再加熱を最小にすることができる程度の温度に保つことが好ましい。
【0036】
このようにしてフィルムは横延伸装置に導入されるが、横延伸装置のテンタークリップで確実にフィルムの耳部を把持することが横延伸を行う上で極めて重要である。もし、テンタークリップが導入されるフィルムの耳部を把持することに失敗すれば、テンタークリップへの導入作業のやり直しをする必要があり、多大の労力を要するのみならず、実稼働時間が減少し、又、製品ロスが膨大なものとなる支障が生じる。
【0037】
このような観点から横延伸装置へ供給されるフィルムは熱損失を減らす意味からは温度を高く保つことが好ましいが、クリップミスを減らす観点からはフィルムの温度を低くすることが好ましい。
【0038】
スチレン樹脂(GPPS)の25℃における引張弾性率は232〜334kg/mm2 、AS樹脂の25℃における引張弾性率は334〜394kg/mm2であり、AS樹脂の引張弾性率はスチレン樹脂の引張弾性率より幾分高い。
尚、100kg/mm2 以上の引張弾性率を有する樹脂を硬質樹脂と定義されているので、横延伸装置へ供給されるスチレン系樹脂の引張弾性率は1.0〜100kg/mm2 、好ましくは2〜50kg/mm2 とするとよい。
【0039】
横延伸装置のクリップがフィルムを把持開始する部分及びフィルムを開放する部分は従来は横延伸装置より前後に突出し大気に開放されている。
従来の横延伸においては、フィルムは室温もしくは室温に近い温度で横延伸装置に供給もしくは排出されるので、上記の把持開始する部分及び開放する部分が大気に開放されていても何ら支障はないが、本発明においては、大気に開放されている部分が長い場合には横延伸装置の前後の大気に開放される部分でフィルムが不本意に冷却される。
【0040】
このような冷却を防止するために横延伸装置の前後の大気に開放される部分をカバーで覆うことが好ましい。但し、横延伸装置のテンタークリップを誘導するレールの摺動部、テンターを駆動するスプロケットホイール部とチエインの噛み合い部、テンタークリップ等の金属同士の接触を必要とする部分については、僅かに大気に開放するか金属同士の接触を必要とする部分を局部的に冷却するため吸排気管によって冷却された空気を導入して吹きつけ、又冷却に使用された後の空気を再びカバーで覆われた室外へ排出する等の対策が有効である。
【0041】
尚、カバーとしては、作業性及び運転中の製品観察のため、例えば、後述のように、上下二つ割りとし、上部カバーには、その中央部を固定端として、カバーが固定板に取付けられた蝶番を支点として回動し、開閉可能とするのがよい。
【0042】
又、クリップがフィルムを把持する部分、即ちフィルムの耳部のみを局部的に冷却すれば、この部分の弾性率、即ちフィルムの硬さが耳部のみ硬くなり変形し難くなるので好ましい。
【0043】
横延伸装置としては、従来のものでは、予熱ゾーン、第一延伸ゾーン、第二延伸ゾーン、第一ヒートセットゾーン、第二ヒートセットゾーン、冷却ゾーン等からなるものが多く、各ゾーンの長さは3〜3.5m程度のものが多い。
【0044】
従来の延伸装置では予熱ゾーンを長くする必要があったが、本発明においては、クリップがミスクリップしない範囲の高い温度でフィルムを導入することができるので、予熱ゾーンを思い切って短くすることができる。
【0045】
又、延伸ゾーンの温度については、従来からフィルムの破れが生じないように配慮する必要があるが、本発明においては、第一延伸ゾーン、第二延伸ゾーンとの間に大きな温度差を必要としない。
【0046】
更にヒートセットゾーンにおいては、スチレン系樹脂のように非結晶性の樹脂では、延伸ゾーンに比べてそれほど高温にする必要はない。PETのような結晶性樹脂では、例えば特公平6−37079号公報に記載されているように、結晶性の促進のために延伸ゾーンに比べて100℃もしくはそれ以上の高温とすることがあるが、スチレン系樹脂では3〜15℃程度、好ましくは5〜10℃程度の高温として熱安定性を高めることが好ましい。
【0047】
尚、横延伸装置より排出されるフィルムの温度が高い場合には、フィルムの幅方向の収縮が起こるので、この場合にもフィルムをある程度冷却して横延伸装置から排出するか、もしくは前述のフィルム導入部に設けられるものと同様のカバーをフィルム排出部に設けて排出されるフィルムをカバーによって覆い、カバーによって覆われた部分に冷風吹きつけ等により冷却するのが好ましい。
【0048】
又、横延伸装置のフィルム排出部において、フィルムがクリップから開放される際にフィルムからクリップが剥離する必要からクリップの温度を表1もしくは表2に示すような剥離温度以下の温度迄降下させる必要がある。
【0049】
前記のカバー内の冷却についても、特に横延伸装置導入部で行うのと同様に吸排気管によって室温もしくは冷却された空気を導入して吹きつけ、又、冷却に使用された後の空気を再度カバーで覆われた室外へ排出する等の対策が有効である。
【0050】
横延伸装置より排出されたフィルムは一旦耳部をトリミングした後、ロールによる縦延伸を行う。縦延伸を行っている間にフィルムは更に幅方向に収縮するので、縦延伸後更にトリミングを行う。
【0051】
図2はMS樹脂フィルムの横延伸後、ロールで縦延伸したフィルムの厚み分布曲線を示す。このように、耳部は厚くなり、中央部で薄くなるので、トリミングロスが多く発生する。これを防止するにはTダイより厚み均一のフィルムを押し出すのではなく、中央部で厚めのフィルムを押し出すことが好ましい。
【0052】
以上は、実験の繰り返しによって試行錯誤的に行ってもよいが、縦延伸終了後にトラバースしながらフィルム厚みを測定する通常の厚み計を設けて、その値をTダイのフレキシブルリップ部へ自動フィードバックすると、手間が省けると共にトリミングロスを減らす意味で効果が大きい。
【0053】
〔作用〕
請求項1記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法においては、ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、延伸温度よりも0℃〜15℃高い温度でキャストロールから剥離し、先ず横方向に延伸した後、引き続き縦方向に延伸するものであって、スチレン系樹脂は結晶性樹脂のように結晶化防止の必要性がなく、冷却も最低限にして延伸工程に入ることができるので、先ず横延伸を行い、続いて横延伸後もフィルムをあまり冷却することなく直ちに縦延伸を行うことにより熱損失を小さくすると共に装置の短小化を図ることができる。
【0054】
又、請求項2記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸装置がこの順に設けられているので、スチレン系樹脂フィルムの製造に際しては、スチレン系樹脂は結晶性樹脂のように結晶化防止の必要性がなく、冷却も最低限にして延伸工程に入ることができるので、多数の冷却ロールや再加熱ロールを必要とせず、装置の短小化を図ることができると共に、横延伸装置のフィルム導入部又はフィルム排出部にフィルムを覆うカバーを設けられているので、フィルムが大気中で不本意に冷却されるのを防止できる。
【0055】
又、請求項3記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸装置がこの順に設けられているので、スチレン系樹脂フィルムの製造に際しては、スチレン系樹脂は結晶性樹脂のように結晶化防止の必要性がなく、冷却も最低限にして延伸工程に入ることができるので、多数の冷却ロールや再加熱ロールを必要とせず、装置の短小化を図ることができると共に、横延伸装置のフィルム導入部の前方にフィルムの耳部を局部的に冷却する冷却装置が設けられているので、横延伸装置に導入されるフィルムの耳部を局部的に冷却することによりクリップミスを防止できる。
【0056】
又、請求項4記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、請求項2又は3に記載の作用に加えて、キャストロールの表面に四フッ化エチレン樹脂層が設けられているので、剥離温度を上昇させることができる。
【0057】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図により説明する。
図3は本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法の一実施態様を示す説明図である。
図3において、1はTダイ、2はTダイ1の下方に設けられたキャストロール、21はタッチロールであり、Tダイ1から押し出されたフィルムFはキャストロール2の表面に接触した時点から冷却され、剥離温度以下に冷却された後にキャストロール2の表面から剥離されるようになっている。
【0058】
3はキャストロール2の後方に設けられた冷却ロール、4は冷却ロール3の後方に設けられた横延伸装置、5は横延伸装置4の後方に設けられた加熱ロール、6は加熱ロール5の後方に設けられた縦延伸ロール、7は縦延伸ロール6の後方に設けられた冷却ロール、8は冷却ロール7の後方に設けられたダンサーロール、9はダンサーロール8の後方に設けられた巻取り機である。
【0059】
図4に示すように、横延伸装置4のフィルム導入部にはカバー41が設けられている。カバー41は上下二つ割りとし、上部カバー42は蝶番421を支点として矢印Rで示すように回動して開閉可能にされている。422は上部カバー42に設けられたガラス窓であり、ガラス窓422を通じて内部を観察できるようになっている。423は上部カバー42に取付けられた把手である。
このようなカバー41は横延伸装置4のフィルム導入部のみならずフィルム排出部においても設けられている。
【0060】
43はテンターであり、テンター43はフィルムFの左右に設けられ、テンター43には図示しない無端状に設けられたチエインが設けられ、チエインはスプロケットホイールにより駆動され、チエインには多数のクリップが設けられ、クリップがフィルムの耳部を把持できるようになっている。
【0061】
図4において、10は熱電素子による冷却装置であり、冷却装置10はP型半導体とN型半導体を金属電極11でΠ型に電気的に直列結合し、N型半導体からP型半導体に電流を流し、ペルチェ効果によって電子を一定方向に移動させ、周囲の結晶格子エネルギーを吸収することによって熱電素子12の冷却面を冷却するようにしたものであり、テンター43のクリップに把持される直前のフィルムFの耳部に熱電素子12の冷却面を接触させることによりフィルムFの耳部を局部的に冷却できるようになっている。
【0062】
次に、図3により本発明方法により二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムを製造する態様を説明する。
【0063】
ダイ1から押し出されたフィルムFはキャストロール2と接触することにより剥離温度以下に冷却され、次いで冷却ロール3と接触することにより延伸温度以下に冷却される。
【0064】
フィルムFが横延伸装置4のテンター43のクリップにより把持される直前において冷却装置10によりフィルムFの耳部が局部的に冷却され、次いで、テンター43のクリップにより把持され横方向に延伸される。
【0065】
フィルムFが横延伸装置4により横方向に延伸された後、加熱ロール5により再加熱されて延伸温度に加熱された後、縦延伸ロール6により縦方向に延伸された後、冷却ロール7により冷却固化され、ダンサーロール8により張力調整された後、巻取り機9により巻き取られる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を図により説明したが、本発明の具体的な形態は図示の実施の形態に限定されることがなく、本発明の主旨を逸脱しない変形は本発明に含まれる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法においては、ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、延伸温度よりも0℃〜15℃高い温度でキャストロールから剥離し、先ず横延伸を行い、続いて横延伸後もフィルムをあまり冷却することなく直ちに縦延伸を行うことにより熱損失を小さくすると共に装置の短小化を図ることができる。
【0068】
又、請求項2記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、スチレン系樹脂フィルムの製造に際しては、スチレン系樹脂は結晶性樹脂のように結晶化防止の必要性がなく、冷却も最低限にして延伸工程に入ることができるので、多数の冷却ロールや再加熱ロールを必要とせず、装置の短小化を図ることができると共に、横延伸装置のフィルム導入部又はフィルム排出部にフィルムを覆うカバーを設けられているので、フィルムが大気中で不本意に冷却されるのを防止することができる。
【0069】
又、請求項3記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、スチレン系樹脂フィルムの製造に際しては、スチレン系樹脂は結晶性樹脂のように結晶化防止の必要性がなく、冷却も最低限にして延伸工程に入ることができるので、多数の冷却ロールや再加熱ロールを必要とせず、装置の短小化を図ることができると共に、横延伸装置のフィルム導入部の前方にフィルムの耳部を局部的に冷却する冷却装置が設けられているので、横延伸装置に導入されるフィルムの耳部を局部的に冷却することによりクリップミスを防止することができる。
【0070】
又、請求項4記載の本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置においては、請求項2又は3に記載の効果に加えて、キャストロールの表面に四フッ化エチレン 樹脂層が設けられているので、剥離温度を上昇させることができる。
【0071】
【図面の簡単な説明】
【図1】MS樹脂の引張応力−伸びの関係を示すグラフ。
【図2】横延伸後に縦延伸したフィルムの厚み分布を示す曲線。
【図3】本発明の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法の一実施態様を示す説明図。
【図4】横延伸装置のフィルム導入部付近を拡大して示す斜視図。
【図5】従来の二軸延伸フィルムの製造方法の実施態様を示す説明図。
【符号の説明】
1 ダイ
2 キャストロール
21 タッチロール
3 冷却ロール
4 横延伸装置
41 カバー
42 上部カバー
5 加熱ロール
6 縦延伸ロール
7 冷却ロール
8 ダンサーロール
9 巻取り機
10 冷却装置
11 金属電極
12 熱電素子
Claims (4)
- ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、横方向及び縦方向の二軸に延伸する二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法であって、ダイから押し出されたスチレン系樹脂フィルムを、延伸温度よりも0℃〜15℃高い温度でキャストロールから剥離し、先ず横方向に延伸した後、引き続き縦方向に延伸することを特徴とする二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造方法。
- ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸用ロールがこの順に設けられている二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置であって、横延伸装置のフィルム導入部又はフィルム排出部にフィルムを覆うカバーが設けられていることを特徴とする二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置。
- ダイ、キャストロール、冷却ロール、横延伸装置、加熱ロール、縦延伸用ロールがこの順に設けられている二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置であって、横延伸装置のフィルム導入部の前方にフィルムの耳部を局部的に冷却する冷却装置が設けられていることを特徴とする二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置。
- キャストロールの表面に四フッ化エチレン樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の二軸延伸されたスチレン系樹脂フィルムの製造装置。
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