JP3958952B2 - 電気めっき部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき基材用の難燃性樹脂組成物を使用した電気めっき部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ノート型パソコン、携帯機器等のハウジングには、未強化タイプ、繊維強化タイプの難燃ABS、難燃PC−ABSなどが主に使用されてきた。
ところが近年、機器の軽量化や薄型化の要求が厳しくなるとともに、鞄等に入れた際の衝撃や荷重に耐え得ることも要求されてきたため、ハウジング自体も薄肉軽量化、高衝撃化する必要が出てきた。従って、ハウジングに使用される樹脂には高い剛性や衝撃特性が求められるようになってきている。
また、これら機器のハウジングには電磁波障害シールド性(以下、EMIシールド性とする)も必要である。EMIシールド性を持たせる方法としては、一般に、およそ30質量%以上の炭素繊維を含有させた樹脂を使用する方法、金属箔や金属板をインモールド或いは製品組み込み時に挿入する方法、無電解めっきや導電塗装を施す方法などがある。
【0003】
従来使用されている材料のうち、例えば未強化タイプの難燃ABSや難燃PC−ABSは剛性不足であり、近年の薄肉化には対応できない。また、ガラス繊維強化系では剛性と重量とのバランスが不十分である。さらに炭素繊維強化系においては、およそ30質量%以上の炭素繊維を含有させた樹脂を使用する場合にはEMIシールド性が得られるものの、炭素繊維が高価であることや炭素繊維が30質量%未満の材料では十分なEMIシールド性を持たすために別処理が必要であることなど問題があった。また、炭素繊維含有量が多いと、その材料からなる樹脂成形品の外観が不十分となるなどの問題点もあった。
【0004】
また、ノート型パソコン、携帯機器にはCPU等の発熱源があるが、これらが高密度化されていることから、その発熱量は増加傾向にある。加えて、ハウジングの薄肉化も進んでいることから、除熱の問題が重要になってきている。
除熱にはハウジングに使用する材料の熱伝導率が高い方が望ましいが、一般に樹脂材料の熱伝導率は低いため、樹脂製のハウジングを使用するには除熱のための別の手段を講じる必要がある。
さらに、近年、環境面から、ドイツやスウェーデンなどのエコラベルの動向に対応した塩素や臭素などのハロゲンを含まない難燃性材料の使用が望まれてきている。
【0005】
以上のような状況から、ノート型パソコンや携帯機器などのハウジングには、軽量、薄肉、高剛性、高衝撃、高熱伝導性、EMIシールド性、量産性などの様々な特性が求められ、かつ、環境に適応した材料が使用されていることも要求されている。
軽量かつ高剛性で、熱伝導性が良く、しかも低コストの機器ハウジングを得る方法として、特開2000−349486号公報には、熱可塑性樹脂を成形加工して得られた樹脂成形品の表面に金属めっきを施したハウジングが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば特開2000−349486号公報の実施例5では、難燃剤としてハロゲンを含まない燐酸エステル系難燃剤が使用されているものの、その分子量が小さい。従って、その融点が低く、高温状態で揮発(ガス化)し易いため、成形時のガス発生量が多い。よって、発生したガスが金型表面の汚染ならびに金型分割面などへ堆積(モールドデポジット)して、生産性を悪くするという問題点や電気めっき部品のめっき膜の形成不良や外観不良などの問題点を生じる。
【0007】
本発明の目的は、成形性などの生産安定性や寸法精度、機械的強度、めっき性能が良好で、かつ、環境面にも配慮され、電気めっき部品への使用に適しためっき基材用の難燃性樹脂組成物を使用した電気めっき部品を提供することである。なお、めっき性能が良好とは、めっき層のめっき膨れがなく、めっき密着強度が高く、また、周囲の環境温度が変化しても、これらの性能が持続することなどをいう。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ゴム質重合体(A1)に、芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)とシアン化ビニル化合物単量体単位(b)とを含む単量体成分(A2)がグラフト重合し、アセトン溶媒に対する不溶分が70〜99質量%であるグラフト共重合体と、その他の重合体とからなる樹脂組成物であって、グラフト共重合体(A)10〜60質量%と、その他の重合体(B)40〜90質量%からなる(但し(A)+(B)=100質量%)樹脂組成物(C)100質量部に対して、分子量が326を超える燐酸エステル系難燃剤(D)5〜40重量部が配合されためっき基材用樹脂組成物が成形加工された樹脂成形品の表面の少なくとも一部に電気めっき処理を施して、金属めっき層を形成したことを特徴とする電気めっき部品にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電気めっき部品に使用されるめっき基材用樹脂組成物に使用される樹脂組成物(C)は、ゴム質重合体(A1)に単量体成分(A2)がグラフト重合したグラフト共重合体(A)10〜60質量%と、その他の重合体(B)40〜90質量%とからなるものである。
ゴム質重合体(A1)としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン−アクリル複合ゴムなどが挙げられる。これらの中では、得られる組成物成形品のめっき性能が良好であるという理由から、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーンーアクリル複合ゴムが好ましい。
【0010】
ここで、上記ジエン−アクリル複合ゴムのジエン成分は、ブタジエンを50質量%以上含むものであり、具体的にはブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等である。また、アクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムである。ジエン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、ジエン系ゴムをコア層として、その周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムで覆われたコアシェル形態、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムをコア層として、その周囲がジエン系ゴムで覆われたコアシェル形態、ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互にからみあっている形態、ジエン系単量体単位とアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位がランダムに配列した共重合形態等が挙げられる。
【0011】
上記シリコーン−アクリル複合ゴムのシリコーン成分は、ポリオルガノシロキサンを主成分とするもので、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましい。アクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムである。シリコーン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、コア層がポリオルガノシロキサンゴムでその周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムであるコアシェル形態、コア層がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムでその周囲がポリオルガノシロキサンゴムであるコアシェル形態、ポリオルガノシロキサンゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互にからみあっている形態、ポリオルガノシロキサンのセグメントとポリアルキル(メタ)アクリレートのセグメントが互いに直線的および立体的に結合しあって網目状のゴム構造となっている形態等が挙げられる。
【0012】
また、これらジエン−アクリル複合ゴム、シリコーンーアクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート(g)と多官能性単量体(h)で構成されるものである。
ここで、アルキル(メタ)アクリレ−ト(g)としては、例えばメチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、n−プロピルアクリレ−ト、n−ブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−ト;ヘキシルメタクリレ−ト、2−エチルヘキシルメタクリレ−ト、n−ラウリルメタクリレ−ト等のアルキルメタクリレ−トが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できるが、最終的に得られるめっき基材用樹脂組成物の耐衝撃性および成形光沢が優れることから、特にn−ブチルアクリレ−トの使用が好ましい。
【0013】
多官能性単量体(h)としては、例えばアリルメタクリレ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、プロピレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,4−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト等が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0014】
本発明で用いられるゴム質重合体(A1)の製造方法には特に制限はないが、ゴム質重合体(A1)の粒子径を制御しやすいことから、通常、ラジカル重合開始剤を作用させて乳化重合することによって調製される。ゴム質重合体(A1)の平均粒子径には、特に制限はないが、得られるめっき基材用樹脂組成物のめっき性能や耐衝撃性を優れたものにするためには、0.1〜0.6μmであることが好ましい。0.1μm未満では、めっき基材用樹脂組成物の耐衝撃性が低下すると同時にめっき膨れが発生しやすくなる。一方、0.6μmを超えると、めっき密着強度が低下してくる。
また、ゴム質重合体(A1)の含有量が、樹脂組成物(C)中、5〜25質量%の範囲であると、めっき基材用樹脂組成物からなる樹脂成形品の耐衝撃性およびめっき密着強度が優れる。
【0015】
ゴム質重合体(A1)にグラフト重合する単量体成分(A2)は、芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)と、シアン化ビニル化合物単量体単位(b)とを含み、また必要に応じて、これらと共重合可能な単量体単位(c)を含んでもよい。これらの組成比には特に制限はないが、好ましくは芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)が50〜90質量%、シアン化ビニル化合物単量体単位(b)が10〜50質量%で、単量体単位(c)が0〜40質量%である(a+b+c=100質量%)。これらの比率範囲をはずれると、めっき基材用樹脂組成物の成形加工性やめっき性能の少なくとも一方が劣るようになる。
【0016】
上記芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。シアン化ビニル化合物単量体単位(b)としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。
これらと共重合可能な単量体単位(c)としては、メチルメタクリレ−ト、エチルメタクリレ−ト、2−エチルヘキシルメタクリレ−ト等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト等のアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等が例示できる。
【0017】
ゴム質重合体(A1)にグラフト成分となる単量体成分(A2)をグラフト重合することでグラフト共重合体(A)が得られるが、グラフト重合には、公知の方法が適用でき、特にその方法には制限はない。また、グラフト重合時には、グラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を使用することができる。
また、グラフト共重合体(A)としては、アセトン溶媒に対する不溶分を70〜99質量%含み、かつアセトン可溶分の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.30〜0.70dl/gであるものが好ましい。
【0018】
ここでアセトン溶媒に対する可溶分とは、ゴム質重合体(A1)にグラフト成分となる単量体成分(A2)をグラフト重合する際に同時に生成することの多い、単量体成分(A2)のみから構成されるグラフトしていない重合体である。よって、例えばグラフト共重合体(A)として、アセトン溶媒に対する不溶分を70質量%含むものを使用する場合には、残りの30質量%のグラフトしていない重合体をその他の共重合体(B)としてカウントする。
【0019】
樹脂組成物(C)中におけるグラフト共重合体(A)の配合量は、10〜60質量%((A)+(B)=100質量%中)である。10質量%未満では、めっき基材用樹脂組成物の耐衝撃性やめっき密着強度が低下する。60質量%を超えると、めっき基材用樹脂組成物の難燃性が低下する。より好ましくは25質量%以下である。また、グラフト共重合体(A)の配合量が10質量%未満、或いは60質量%を超えると電気めっき部品のサーマルサイクル性が低下する。ここでサーマルサイクル性とは、例えば電気めっき部品を低温と高温の環境で交互に使用した場合でも、めっき膜の膨れを生じない特性である。
【0020】
本発明で使用されるその他の重合体(B)としては、特に制限はないが、芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)と、シアン化ビニル化合物単量体単位(b)と、必要に応じてこれらと共重合可能なビニル系単量体単位(c)とから構成される共重合体(B−1)、ポリカーボネート樹脂(B−2)、ポリアミド樹脂(B−3)、ポリエステル樹脂(B−4)からなる群より選ばれるものを使用すると、特にめっき基材用樹脂組成物の成形性や機械的強度などが優れるため好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記共重合体(B−1)の具体例としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0022】
共重合体(B−1)における芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)の含有量は50質量%以上90質量%以下の範囲が好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲がより好ましい。また、共重合体(B−1)におけるシアン化ビニル化合物単量体単位(b)の含有量は10質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、20質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましい。このような範囲にすることにより、得られるめっき基材用樹脂組成物の成形加工性やめっき性能がより優れる。
さらに、ビニル系化合物単量体単位(c)を使用する場合には、その割合は40質量%以下であることが好ましい。40質量%を超えると、めっき基材用樹脂組成物の成形加工性やめっき性能が不十分となる場合がある。
共重合体(B−1)の分子量については特に制限はないが、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.4〜1.4dl/gであることが好ましい。
【0023】
ポリカーボネート樹脂(B−2)としては、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られるものであり、任意に枝別れしていても良い。このポリカーボネート樹脂(B−2)は公知の方法により製造されるものであり、一般にジヒドロキシまたはポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることにより製造される。
適当なジヒドロキシジアリールアルカンは、ヒドロキシ基に関しオルトの位置にアルキル基を有するものである。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、4、4−ジヒドロキシ2、2−ジフェニルプロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールAおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
【0024】
また、分岐したポリカーボネートは、例えばジヒドロキシ化合物の一部、例えば0.2〜2モル%をポリヒドロキシで置換することにより製造される。ポリヒドロキシ化合物の具体例としては、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリー(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼンなどが挙げられる。
また、分子量も特に限定されるものではないが、好ましくは粘度平均分子量(Mv)で15000〜35000である。
【0025】
ポリアミド樹脂(B−3)としては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、または二塩基酸とジアミンの重縮合などによって得られるポリアミドを用いることができる。
具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノナン酸などの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどのジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカン二塩基酸、グルタ−ル酸などのジカルボン酸とを重縮合させて得られる重合体、またはこれらの共重合体、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12などが挙げられる。
【0026】
ポリエステル樹脂(B−4)は、主として炭素数8〜22個の芳香族ジカルボン酸と、炭素数2〜22個のアルキレングリコールあるいはシクロアルキレングリコールからなるものを50質量%以上含むものであり、所望により劣位量の脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸やセバチン酸などを構成単位として含んでいてもよい。また、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを構成単位として含んでもよい。特に好ましいポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
【0027】
その他の重合体(B)には、上述した共重合体(B−1)、ポリカーボネート樹脂(B−2)、ポリアミド樹脂(B−3)、ポリエステル樹脂(B−4)を1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂、B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)、SAN樹脂(B−1)とポリアミド樹脂(B−3)、SAN樹脂(B−1)とポリエステル樹脂(B−4)、ポリカーボネート樹脂(B−2)とポリエステル樹脂(B−4)等の2種の重合体の組み合わせ、SAN樹脂(B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)とポリエステル樹脂(B−4)等の3種の重合体の組み合わせ等が挙げられる。
これらのなかでは、得られるめっき基材用樹脂組成物の成形性や機械的強度などのバランスが優れることから、SAN樹脂(B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)の組み合わせ、SAN樹脂(B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)とポリエステル樹脂(B−4)の組み合わせが好ましい。
【0028】
樹脂組成物(C)中におけるその他の重合体(B)の配合量は、40〜90質量%((A)+(B)=100質量%中)であり、好ましくは、50〜80質量%である。
なお、その他の重合体(B)として2種以上の重合体を組み合わせて使用する場合には、共重合体(B−1)、ポリカーボネート樹脂(B−2)、ポリアミド樹脂(B−3)、ポリエステル樹脂(B−4)は以下の組成比でその他の重合体(B)に含有されることが好ましい。
【0029】
その他の重合体(B)として、共重合体(B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)とを組み合わせて用いる場合には、共重合体(B−1)を1〜65質量%、ポリカーボネート樹脂(B−2)を35〜99質量%(B−1とB−2の合計量が100質量%)含有することが好ましい。
また、その他の重合体(B)として、共重合体(B−1)とポリアミド樹脂(B−3)とを組み合わせて用いる場合には、共重合体(B−1)を10〜50質量%、ポリアミド樹脂(B−3)を50〜90質量%(B−1とB−3の合計量が100質量%)含有することが好ましい。
また、その他の重合体(B)として、共重合体(B−1)とポリエステル樹脂(B−4)とを組み合わせて用いる場合には、共重合体(B−1)を15〜55質量%、ポリエステル樹脂(B−4)を45〜85質量%(B−1とB−4の合計量が100質量%)含有することが好ましい。
また、重合体(B)として、ポリカーボネート樹脂(B−2)とポリエステル樹脂(B−4)とを組み合わせて用いる場合、ポリカーボネート樹脂(B−2)を25〜85質量%、ポリエステル樹脂(B−4)を15〜75質量%(B−2とB−4の合計量が100質量%)含有することが好ましい。
更に、重合体(B)として、共重合体(B−1)とポリカーボネート樹脂(B−2)とポリエステル樹脂(B−4)を組み合わせて用いる場合、共重合体(B−1)を1〜69質量%、ポリカーボネート樹脂(B−2)を30〜98質量%、ポリエステル樹脂(B−4)を1〜69質量%(B−1とB−2とB−4の合計量が100質量%)含有することが好ましい。
これら重合体(B−1)〜(B−4)をそれぞれ上記の範囲にすることにより、得られるめっき基材用樹脂組成物の成形性や機械的強度、めっき性能などのバランスをより優れたものとすることができる。
なお、このように、その他の重合体(B)として2種以上の重合体を組み合わせて使用する場合でも、樹脂組成物(C)中におけるその他の重合体(B)の配合量は、40〜90質量%((A)+(B)=100質量%中)とする。
【0030】
本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物は、上述の樹脂組成物(C)100質量部に対して、分子量326を超える燐酸エステル系難燃剤(D)が5〜40質量部配合されたものである。燐酸エステル系難燃剤(D)としては、例えばアクゾノーベル(株)製、旭電化工業(株)製、味の素ファインテクノ(株)製、アルベマール浅野(株)製、グレートレイクスケミカル日本(株)製、大八化学(株)製などの燐酸エステル系難燃剤で分子量が326を超えるものであれば公知のものが使用できる。
本発明の樹脂組成物を構成する燐酸エステル系難燃剤(D)としては次式
【0031】
【数1】
【0032】
(ここで、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立した水素原子又は有機基を表すが、R1=R2=R3=R4=Hを除く。Aは2価以上の有機基を表し、lは0または1であり、mは1以上の整数、nは0以上の整数を表す。)で表せられる燐酸エステル系化合物が挙げられるが、分子量が326を超えるものであることを除けば、特に限定されるものではない。
上記式において、有機基とは例えば、置換されていてもいなくても良いアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられる。また、置換されている場合は置換基数には制限が無くアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基等が挙げられ、また、これらの置換基を組み合わせた基(例えばアリールアルコシキルアルキル基)又はこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、硫黄原子等により結合して組み合わせた基(例えば、アリールスルホニルアリール基等)を置換基としても良い。また、2価以上の有機基とは上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いて出来る2価以上の基を意味する。例えば、アルキレン基、または(置換)フェニレン基、多核フェノール類例えばビスフェノールA類から誘導されたものが挙げられ、2以上の遊離原子価の相対的位置は任意である。特に好ましい例として、その前駆体のジオール体としてヒドロキノン、レゾルシノール、ジフェニロールメタン、ジフェニロールジメチルメタン、ジヒドロキシビフェニル、p、p’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
【0033】
燐酸エステル化合物の具体例としては、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシルジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、レゾルシニルジフェニルフォスフェートであり、R1、R2、R3、R4がアルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、及びプロポキシ、または(置換)フェノキシ例えばフェノキシ、メチル(置換)フェノキシであるビスフェノールAビスフォスフェート、ヒドロキノンビスフォスフェート、レゾルシンビスフォスフェート、トリオキシベンゼントリフォスフェート等であるところのビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)等のポリフォスフェートが挙げられ、これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。好ましくは、トリキシルフォスフェート、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)、さらに好ましくはフェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)である。
【0034】
分子量326を超える燐酸エステル系難燃剤(D)は揮発しにくいので、成形時にガスとして発生することがなく、外観の優れた樹脂成形品を得ることができる。より好ましい分子量は350以上であり、更により好ましい分子量650以上である。また、ハロゲン系化合物ではないという点で環境にもやさしい難燃剤である。
燐酸エステル系難燃剤(D)の配合量は5〜40重量部であり、配合量が5質量部未満では、めっき基材用樹脂組成物の難燃性が不十分となり、40質量部を超えると耐熱性や耐衝撃性が損なわれる。好ましくは6〜35質量部の範囲であり、より好ましくは7〜30重量部の範囲である。
【0035】
燐酸エステル系難燃剤(D)の他に、樹脂組成物(C)に対して公知の非ハロゲン系難燃剤を配合し、燐酸エステル系難燃剤(D)と併用しても構わない。
非ハロゲン系難燃剤としては無機系難燃剤が例示でき、例えば赤燐、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
赤リン系難燃剤は、熱硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂及び金属水酸化物で被覆されて安定化されたもの、また単独では発火性があるので予め樹脂組成物(C)の少なくとも一部、またはその他の重合体(B)の何れか1種あるいは2種以上と混合してマスターバッチ化したものなどを使用することができる。
また、燃焼時のドリップ防止のため、難燃助剤として、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレンを含有する化合物あるいはシリコーン系重合体を含有することができる。ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレンを含有する化合物を使用する場合、その使用量は樹脂組成物(C)100質量部に対し、0.5質量部以下である。
【0036】
本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物においては、樹脂組成物(C)100質量部に対して、さらに無機充填材(E)を0.1〜50質量部、好ましくは10〜30質量部配合してもよい。0.1質量部未満では無機充填材(E)を配合することによる剛性、熱伝導性などの特性を向上させる効果が十分には得られず、一方50質量部を超えると、成形性が不十分となる場合がある。
ここで配合される無機充填材(E)としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、無機繊維に金属コーティングしたもの、ウオラスナイト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の無機物、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属や合金、およびそれらの酸化物の繊維、粉末などが例示でき、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、少ない配合で高い剛性が得られることから炭素繊維を用いることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物には、必要に応じて他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、難燃助剤、帯電防止剤、染顔料等の種々の添加剤を適宜配合できる。
【0038】
本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物は、通常の公知の混練装置によって混練、押し出しすることができ、また、通常の公知の成形加工法で成形し、樹脂成形品とすることができる。成形加工法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられるが、量産性に優れ、高い寸法精度の樹脂成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
【0039】
本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物を成形加工して得られた樹脂成形品の平均肉厚は、製品の用途や形状などにより異なるが、通常0.5〜5.0mmとされる。薄肉化、軽量化が求められる携帯機器ハウジングでは、通常0.5〜1.5mmである。
【0040】
このような樹脂成形品には、必要に応じて表面粗化処理を行った後、公知の導電化処理を行い、続いて電気めっき処理を施すことによって、表面に金属めっき層が形成された電気めっき部品を得ることができる。電気めっき処理で金属めっき層を形成することによって、得られる電気めっき部品はEMIシールド性、剛性、耐衝撃性、熱伝導性などに優れるものとなる。
表面粗化処理は、金属めっき層と樹脂成形品との剥離不良を防ぐために行われ、公知の方法を用いることができる。例えば、めっき基材用樹脂組成物に含まれるその他の重合体(B)が、共重合体(B−1)単独を含む場合、すなわち共重合体(B−1)単独である場合、または、共重合体(B−1)と、ポリカーボネート樹脂(B−2)、ポリアミド樹脂(B−3)、ポリエステル樹脂(B−4)の3種の樹脂の中から選ばれた1種以上の樹脂とのポリマーアロイの場合では、クロム酸−硫酸混液が通常使用でき、ポリアミド樹脂(B−3)単独の場合では塩酸や塩化第二錫溶液が使用できる。
【0041】
導電化処理は、樹脂成形品を導電化して電気めっき処理を可能とするために行われるもので、例えば無電解めっき処理により樹脂組成物の表面に導電性の無電解めっき層を形成する方法がある。
無電解めっき層を析出させるためには、表面粗化された樹脂成形品または表面粗化されていない樹脂成形品を、錫−パラジウム溶液に浸漬させるか、金属パラジウムをスパッタリングするなどの処理を行い、触媒作用のあるパラジウムなどの金属を樹脂成形品表面に与える必要がある。
錫−パラジウム溶液に浸漬させる方法において、その他の重合体(B)が共重合体(B−1)単独を含む場合、これはシアン化ビニル単量体単位を含有しているので、そのまま錫−パラジウムが吸着して無電解めっきが行える。一方、それ以外の場合は、錫−パラジウムを吸着させるため、界面活性剤処理や他の極性を有する樹脂を練り混んだり、又は表面に塗装処理する等の処理が必要になるが、本目的を達成するのであれば、その処理方法は特に制限されるものではない。
無電解めっき層を析出させる別の方法としては、ニッケル等の金属微粒子を含む塗装を施し、このニッケル粒子等を触媒核として無電解めっき層を析出させる方法がある。無電解めっきの種類としては、銅、ニッケル、銀等がその例として挙げられる。
【0042】
また、別の導電化処理としては、めっき基材用樹脂組成物中にカーボンブラックや炭素繊維、金属粉末、金属繊維、或いは炭素繊維やその他の繊維・布にめっき処理を施したものを練り混む方法や、導電性塗料を塗布する方法、金属をスパッタリングまたは真空蒸着する方法等が挙げられる。
【0043】
続いて行われる電気めっき処理は公知の方法で行うことができ、形成される金属めっき層としては、銅、ニッケル、コバルト、クロム、銀、金等が挙げられる。
本発明の電気めっき部品は、樹脂成形品の少なくとも一部に電気めっき処理が施され、金属めっき層が形成されたものである。この金属めっき層は、必要に応じて部分的に樹脂成形品を被覆するものでも良いが、電気めっき部品の特性、すなわち優れたEMIシールド性、曲げ弾性率、剛性、耐衝撃性、熱伝導性などを十分に発揮させるためには、金属めっき層が樹脂成形品の全表面(非有効面を含む)あるいは全表面積(非有効面を含む)の90%以上を被覆していることが好ましい。
【0044】
また、電気めっき処理により形成された金属めっき層の厚みは5μm以上であることが好ましい。5μm未満では、電気めっき部品の剛性が不十分となる。
さらに、金属めっき層が樹脂成形品の表側と裏側に形成される場合、表側の金属めっき層の厚みと裏側の金属めっき層の厚みとの差は、20%以下とするのが好ましい。20%を超えると、金属めっき層を樹脂成形品表面に析出させる際に生じる引っ張り応力が樹脂成形品の表側と裏側で大きく相違し、その結果、樹脂成形品が歪んだり応力が蓄積したりして、不具合が発生しやすくなる。
なお、金属めっき層は単層構造に限定されず、2層以上の多層構造であってもよい。また、多層構造の金属めっき層において、各層の金属の種類や組み合わせに制限はなく、金属めっき層の厚さが合計で5μm以上であれば、各層の厚さにも制限はない。
また、めっき層の上に塗装を施して使用しても良い。
【0045】
本発明の電気めっき部品としては、例えば、パソコン(ノート型も含む)、プロジェクタ(液晶プロジェクタを含む)、TV、プリンター、FAX、複写機、MD等のオーディオ機器、ゲーム機、カメラ(ビデオカメラ、デジタルカメラ等を含む)、ビデオ等の映像機器、楽器、モバイル機器(電子手帳、PDAなど)、照明機器、電話(携帯電話を含む)等の通信機器などのハウジング、釣具、パチンコ物品等の遊具、車両用製品、家具用製品、サニタリー製品、建材用製品などに使用される各種部品が例に挙げられるが、特に、ノート型パソコンや携帯機器のハウジングに最適である。
【0046】
このように、以上説明した本発明の電気めっき部品に使用されるめっき基材用樹脂組成物は、成形性などの生産安定性や寸法精度、機械的強度、めっき性能が良好で、かつ、環境面にも配慮されたものである。よって、このめっき基材用樹脂組成物を成形加工して得られた樹脂成形品に、電気めっき処理で金属めっき層を形成することによって、熱伝導性にも優れた高性能の電気めっき部品を製造することができる。
【0047】
【実施例】
以下、具体的に実施例を示す。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、実施例での「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を意味する。
[グラフト共重合体(A−1)の製造]
固形分含量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス100部(固形分として)にn−ブチルアクリレート単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス2部(固形分として)を攪拌しながら添加し、30分間攪拌を続け、平均粒子径0.28μmの肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを得た。
得られた肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを反応容器に加え、更に蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加して攪拌しながら、昇温させて内温60℃の時点で硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜二チオン酸ナトリウム0.06部を加えた後、下記の混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却した。
アクリロニトリル 30部
スチレン 70部
クメンハイドロパーオキサイド 0.4部
tert−ドデシルメルカプタン 1部
得られたグラフト共重合体ラテックスを希硫酸で凝固したのち、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A−1)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(A−1)のアセトン可溶分は27質量%であった。
【0048】
[グラフト共重合体(A−2)の製造]
反応器に下記のような割合で原料を仕込み、窒素置換下50℃で4時間攪拌を行いながら重合を完結させ、ゴムラテックスを得た。
n―ブチルアクリレート 98部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 1部
アリルメタクリレート 1部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.0部
脱イオン水 300部
過硫酸カリウム 0.3部
リン酸二ナトリウム12水塩 0.5部
リン酸水素ナトリウム12水塩 0.3部
このゴムラテックス100部(固形分)を反応釜に取り、イオン交換水280部を加え希釈し、70℃に昇温した。
一方、別途アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルパーオキサイド0.7部を溶解し、窒素置換した後、その単量体混合物を30部/時間の速度で、上記のゴムラテックスが入った反応釜に、定量ポンプで加えた。全モノマーの注入終了後、系内温度を80℃に昇温し、30分攪拌を続け、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記の様にして製造したラテックスを、全ラテックスの3倍量の塩化アルミニウム(AICl3.6H2O)0.15%水溶液(90℃)中に撹拌しながら投入し、凝固させた。全ラテックスの添加終了後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、このまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄を行い乾燥し、グラフト共重合体(A―2)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(A−2)のアセトン可溶分は21質量%であった。
【0049】
[グラフト共重合体(A−3)の製造]
ポリブタジエン/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体を次のように合成した。
固形分含有量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス20部(固形分として)にn−ブチルアクリレート単位82%、メタクリル酸単位18%からなる平均粒子径0.10μmの共重合ラテックス0.4部(固形分として)を攪拌しながら添加し、30分間攪拌を続け平均粒子径0.36μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ジエン系ゴムラテックス20部(固形分)を反応釜に移し、不均化ロジン酸カリウム1部、イオン交換水150部及び下記単量体混合物を加え、窒素置換を行い、50℃(内温)に昇温した。これに10部のイオン交換水に硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を溶解した溶液を加えた。
n−ブチルアクリレート 80部
アリルメタクリレート 0.32部
エチレングリコールジメタクリレート 0.16部
反応終了時の内温は75℃になるが、更に80℃に昇温し、1時間反応を続けると、重合率は、98.8%に達し、肥大化ジエン系ゴムとポリアルキルアクリレート系ゴムの複合ゴムを得た。肥大化ジエン系ゴムとポリアルキルアクリレート系ゴムの複合ゴムラテックス50部(固形分)を反応釜に取り、イオン交換水140部を加え希釈し、70℃に昇温した。
別途アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなるグラフト単量体混合物を50部調整し、ベンゾイルパーオキサイド0.35部を溶解した後、窒素置換した。この単量体混合物を15部/時間の速度で定量ポンプを使用し、上記反応系内に加えた。全モノマーの注入終了後、系内温度を80℃に昇温し、30分攪拌を続けグラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記の様にして製造したラテックスを、全ラテックスの3倍量の硫酸0.5%水溶液(90℃)中に撹拌しながら投入し、凝固させた。全ラテックスの添加終了後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、このまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄を行い乾燥し、グラフト共重合体(A−3)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(A−3)のアセトン可溶分は20質量%であった。
【0050】
[グラフト共重合体(A−4)の製造]
ポリシロキサンゴム/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体を次のように合成した。
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部及びエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部と蒸留水98部とを注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、苛性ソーダ水溶液で中和した。この様にして得られたラテックス(L−1)の一部を170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.3%であった。
【0051】
ついで、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)119.5部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.8部を採取し、蒸留水203部添加混合した後、n−ブチルアクリレート53.2部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の温度が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部及びロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムの複合ゴムラテックスを得た。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル11.1部、スチレン33.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下重合した。滴下終了後1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムからなる複合ゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体のラテックスを得た。
次いで酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離、洗浄したのち、乾燥し、グラフト共重合体(A−4)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(A−4)のアセトン可溶分は26質量%であった。
【0052】
[共重合体(B−1a)の製造]
アクリロニトリル単位30%、スチレン単位70%の組成の共重合体を懸濁重合法によって製造した。
[ポリカーボネート樹脂(B−2a)]
ポリカーボネート樹脂(B−2a)として三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の「7022A」を使用した。
[ポリアミド樹脂(B−3a)]
ポリアミド樹脂(B−3a)として宇部興産(株)製の「1011FB」を使用した。
[ポリブチルテレフタレート樹脂(B−4a)]
ポリブチルテレフタレート樹脂(B−4a)として、三菱レイヨン(株)「タフペットPBT N1000」を使用した。
【0053】
[実施例1〜38、比較例1〜11]
表1および2、3に示す割合でグラフト共重合体(A−1)〜(A−4)と、その他の重合体(B−1a)〜(B−4a)と、燐酸エステル系難燃剤(D)と、無機充填材(E)とをそれぞれ配合して、めっき基材用樹脂組成物を調製した。なお、燐酸エステル系難燃剤(D)としては、旭電化工業(株)製「アデカスタブ FP−500」(なお、表中D−1と示す)、「アデカスタブ FP−700」(なお、表中D−2と示す)、大八化学(株)製「CR−733S」(なお、表中D−3と示す)、「PX−200」(なお、表中D−4と示す)、味の素ファインテクノ(株)製「クロニテックス TCP」(なお、表中D−5と示す)、「クロニテックス TXP」(なお、表中D−6と示す)、「レオフォス BAPP」 (なお、表中D−7と示す)を使用した。また、比較例1および2、3においては、難燃剤として分子量が326であるトリフェニレンフォスフェート(なお、表中D−8と示す)を使用した。無機充填材(E)としては、ガラス繊維として日本電気硝子(株)製「ECS03−T191」(なお、表中GFと示す)と、カーボン繊維として三菱レイヨン(株)製「TR06U」(なお、表中CFと示す)を使用した。
そして、得られた各めっき基材用樹脂組成物について、下記に示す方法で難燃性、成形性を評価した。また、各めっき基材用樹脂組成物を成形した後、これに下記のめっき工程にしたがって金属めっき層を形成して、各種物性を評価した。
これらの結果を表4および5,6に示す。
【0054】
[難燃性]
試験片(12.7mm×127mm×1.0mm[厚さ])を作製し、UL94に準拠して燃焼試験を実施した。
表中、略号は以下を示す。
◎;V−0レベル
○;V−2レベル
×;V−2レベル以下
[成形性]
(1) バリ
略箱形成形品(297mm×185mm×20mm[1.25mm厚さ])を成形し、バリ発生の有無を確認した。
表中、略号は以下を示す。
○;なし
×;あり
(2) 反り
略箱形成形品(297mm×185mm×20mm[1.25mm厚さ])を成形し、2mm以上の反りの有無を確認した。
表中、略号は以下を示す。
○;なし
×;あり
(3) ガス
略箱形成形品(297mm×185mm×20mm[1.25mm厚さ])を成形し、金型表面のガス付着の有無を確認した。
表中、略号は以下を示す。
○;なし
×;あり
【0055】
[曲げ弾性率]
剛性率を示す指標として曲げ弾性率を測定した。下記に示す[めっき工程]で、試験片(10mm×100mm×4mm[厚さ])にめっき処理を行い、その後、ASTM D−790に準拠して測定した。
[アイゾット衝撃強度]
下記に示す[めっき工程]で、試験片(12.7mm×63.5mm×3.2mm[厚さ])にめっき処理を行い、その後、ASTM D−256に準拠して測定した。本試験法で200J/m以上の値であれば実用上問題ないと判断する。
[サーマルサイクル性]
下記に示す[めっき工程]で、平板(100mm×100mm×3mm[厚さ])にめっき処理を行い、その後、下記のサーマルサイクル条件で試験し、めっき膜の膨れの有無を確認した。
(サーマルサイクル条件)
−30℃×1時間 → 23℃×15分 → 80℃×1時間 →23℃×1時間を1サイクルとして、3サイクル実施した。
表中、略号は以下を示す。
○;変化なし
×;ゲート近傍のみ膨れ
××;ゲート近傍部分以外にも膨れ
×××;全面に膨れ
[熱伝導率]
下記に示す[めっき工程]で、平板(100mm×100mm×3mm[厚さ])にめっき処理を行い、その後、ShothermQTM迅速熱伝導計(昭和電工(株)製)を使用して熱伝導率を測定した。
【0056】
[めっき工程]
(1)脱脂(60℃×3分)→(2)水洗→(3)エッチング(CrO3400g/l、H2SO4200cc/l 60℃×8分)→(4)水洗→(5)酸処理(常温1分)→(6)水洗→(7)触媒化処理(25℃×3分)→(8)水洗→(9)活性化処理(40℃×5分)→(10)水洗→(11)化学ニッケルめっき→(12)水洗→(13)電気銅めっき(めっき膜厚15μm 20℃×20分)→(14)水洗→(15)電気ニッケルめっき(めっき膜厚10μm 55℃×15分)→(16)水洗→(17)乾燥
ただし、実施例19および20においては上記工程のうち(13)および(14)の工程を省き、(15)の工程時間を6分として、めっき膜厚4μmの電気めっきを施した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
表4および5,6から明らかなように、本実施例のめっき用樹脂組成物はいずれも難燃性および成形性に優れ、かつこれを成形加工して得られた樹脂成形品に金属めっき層を設けたものは、曲げ弾性率、衝撃強度、熱伝導性に優れ、また、サーマルサイクル性(めっき性能)にも優れていた。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電気めっき部品に使用するめっき基材用樹脂組成物は、成形性などの生産安定性や寸法精度、機械的強度、めっき性能が良好で、かつ、環境面にも配慮されたものである。よって、このめっき基材用樹脂組成物を成形加工して得られた樹脂成形品に、電気めっき処理で金属めっき層を形成することによって、熱伝導性が良好で、優れた電気めっき部品とすることができる。したがって、本発明の工業的意義は極めて大きい。
Claims (6)
- ゴム質重合体(A1)に、芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)とシアン化ビニル化合物単量体単位(b)とを含む単量体成分(A2)がグラフト重合し、アセトン溶媒に対する不溶分が70〜99質量%であるグラフト共重合体と、その他の重合体とからなる樹脂組成物であって、グラフト共重合体(A)10〜60質量%と、その他の重合体(B)40〜90質量%からなる(但し(A)+(B)=100質量%)樹脂組成物(C)100質量部に対して、
分子量が326を超える燐酸エステル系難燃剤(D)5〜40重量部が配合されためっき基材用樹脂組成物が成形加工された樹脂成形品の表面の少なくとも一部に電気めっき処理を施して、金属めっき層を形成したことを特徴とする電気めっき部品。 - 前記その他の重合体(B)が、芳香族アルケニル化合物単量体単位(a)とシアン化ビニル化合物単量体単位(b)とを含む単量体成分からなる共重合体(B−1)、ポリカーボネート樹脂(B−2)、ポリアミド樹脂(B−3)、ポリエステル樹脂(B−4)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき部品。
- 前記樹脂組成物(C)中における前記ゴム質重合体(A1)の含有量が5〜25質量%で、かつ当該ゴム質重合体(A1)の平均粒子径は0.1〜0.6μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気めっき部品。
- 前記樹脂組成物(C)100質量部に対して、無機充填材(E)0.1〜50質量部がさらに配合されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の電気めっき部品。
- 前記無機充填材(E)が、炭素繊維であることを特徴とする請求項4に記載の電気めっき部品。
- 前記金属めっき層の厚さが5μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気めっき部品。
Priority Applications (6)
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