JP3958166B2 - 熱媒通流ローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体を熱媒体として樹脂フィルムなどの処理物を加熱又は奪熱処理するローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂フィルムなどの処理物をローラに掛け、ローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。加熱処理する場合、ローラは加熱処理に必要な温度に高められ、奪熱処理する場合、処理物からの奪熱作用によってローラ自体の温度が上昇するので、処理物の冷却に適応する温度までローラを冷却する。いずれの場合も熱を移送する媒体を必要とし、その媒体として流体たとえば油が使用されている。すなわち、適温の流体をローラの内部を通過させ、この流体でローラを加熱又はローラから奪熱する(以下、このようなローラを熱媒通流ローラという。)ようにしている。
【0003】
図4はこのような熱媒通流ローラの一例の概略構成を示すもので、図4において、1はロールシェル、2は回転駆動軸、3は中子、4はロータリジョイント、5は貯油タンク、6は油(熱媒流体)、7は加熱又は冷却用熱交換器、8は温度センサ、9はポンプ、10は樹脂フィルムなどの処理物である。ロールシェル1は円筒状をなし、その中空内部に中子3が配置され、中子3の中央部を貫通して熱媒通流路3aが形成されている。熱媒通流路3aは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント4の流入口に連結され、ロールシェル1の内周壁と中子3の外周壁との間で形成された熱媒通流路1aは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント4の出口に連結されている。
【0004】
すなわち、貯油タンク5の油6は加熱又は冷却用熱交換器7を通り、所定の温度にされ、ポンプ9によってロールシェル1内に送られ、熱媒通流路3aおよび1aを通流した油6は貯油タンク5へ排出される。主として熱媒通流路1aを通流する間にロールシェル1は所定の温度に維持され、ロールシェル1の表面に当接した処理物10を加熱又は奪熱する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような熱媒通流ローラでは、ローラ(ロールシェルに回転駆動軸を連結したもの)内に流入する熱媒流体の温度と処理物の加熱後または奪熱後に流出する熱媒流体の温度との間に温度差が発生し、その温度差はローラの表面に現れるため、ローラの表面に当接した処理物のローラの軸心に沿う長手方向に対し、均一な熱処理ができないという問題がある。この問題を解消するために、従来はこの温度差を減らすために、温度差に応じてローラ内を通流する熱媒流体の流量を増加するようにしている。そのために加熱又は冷却用熱交換器やポンプが大型化せざるを得ないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すべくなされたもので処理物の均一な熱処理を可能にするとともに、熱交換器やポンプを小型化することのできる熱媒通流ローラを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱媒通流路を有し、前記熱媒通流路を流れる熱媒流体により表面に当接する処理物を加熱又は奪熱処理する熱媒通流ローラであって、中空ローラの肉厚内部に前記ローラの長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を前記ローラの外周面に沿って複数個設け、前記ローラの中空内部に電磁誘導発熱機構を配置するとともに、前記密閉室内を長手方向に貫通する管を設け、前記管を熱媒通流路としてなることを特徴とする。
【0008】
【0009】
【0010】
本発明では、ローラの肉厚内部に前記ローラの長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を設けているので、ローラ内に流入する熱媒流体の温度と処理物の加熱後または奪熱後に流出する熱媒流体の温度との間に温度差が発生しても、気液2相の熱媒体の潜熱の移動により、ローラの軸心に沿う長手方向の表面温度が均一化し、熱媒流体の流量を増加することなく、ローラに当接した処理物のローラの軸心に沿う長手方向に対し、均一な熱処理ができる。また、電磁誘導発熱機構を配置しているので、電磁誘導発熱機構を適宜、たとえば処理温度の変更時などに駆動することによって、必要な温度に到る応答速度を速めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は実施の形態に係る熱媒通流ローラの縦断面図、図2は部分的に示す同横断面図、図3は動作説明図であり、(a)は加熱時、(b)は奪熱時を示す。なお、図4に示すロータリジョイント4、貯油タンク5、加熱又は冷却用熱交換器7、温度センサ8およびポンプ9からなる油(熱媒流体)の循環経路については図では省略している。
【0012】
図1ないし図3において、10は樹脂フィルムなどの処理物(図3参照)、11はロールシェル、12は回転駆動軸、13は密閉室、14は熱媒通流管、15は気液2相を形成する熱媒体である。
【0013】
ロールシェル11は円筒状を成し、長手方向の両側の端部は回転駆動軸12のフランジ12aに連結固定されている。密閉室13はロールシェル11の肉厚内に、たとえばロールシェル11の長手方向の端縁からその長手方向にドリルで孔を形成し、その孔に気液2相の熱媒体となる適量の水15などを注入して開口部を閉塞することにより形成され、図2に示すように適宜間隔を隔ててローラの外周面に沿って複数個設けられている。
【0014】
熱媒通流管14は密閉室13の内部を長手方向に沿って貫通し、ロールシェル11の長手方向の両側の端縁に伸びている。回転駆動軸12およびそのフランジ12aには熱媒通流孔が形成され熱媒通流管14はこの熱媒通流孔と連通している。すなわち、図示しない加熱又は冷却用熱交換器、ポンプおよびロータリジョイントを経て送り込まれロールシェル11を加熱し、または奪熱するための油などの熱媒流体は、一方の回転駆動軸12およびそのフランジ12aの熱媒通流孔を経て熱媒通流管14を通り、他方のフランジ12aおよび回転駆動軸12の熱媒通流孔およびロータリジョイントを経て貯油タンクへ排出される。
【0015】
樹脂フィルムなどの処理物10を加熱する場合、所定の温度に加熱した熱媒流体を用いるが、この熱媒流体が熱媒通流管14を通過すると、図3(a)に示すように密閉室13内の熱媒体15が加熱気化し、その熱はロールシェル11を介して処理物10を加熱する。熱を奪われた気体は液化し、再び熱媒流体により加熱され加熱気化し、その熱はロールシェル11を介して処理物10を加熱する。この動作が繰り返される。処理物10を加熱する際、加熱気化した熱は処理物10が当接している温度の低い側へと移動し、熱媒流体の流入側の温度が高く、流出側の温度が低いという温度差が発生しても、処理物10をローラの軸心に沿う長手方向に対して均一な加熱処理ができる。
【0016】
また、樹脂フィルムなどの高温の処理物10を所定の温度に奪熱する場合、より温度の低下を防ぐために所定の温度に加熱した熱媒流体を用いるが、この熱媒流体が熱媒通流管14を通過すると、図3(b)に示すように処理物10により加熱されたロールシェル11の熱は密閉室13内の気液2相の熱媒体に伝達され、熱媒通流管14を通過する熱媒流体により所定の温度に冷却される。この場合、熱媒流体の流入側の温度が低く、流出側の温度が高いという温度差が発生しても気体の熱は低い方に移動し、処理物10をローラの軸心に沿う長手方向に対して均一な奪熱処理ができる。
【0017】
なお、この実施の形態では、熱媒流体の流路が直接にロールシェル11に接しないことからロールシェル11の熱膨張差による機械的精度の劣化を抑制することができ、また、必要な加熱部および奪熱部に有効的に作用させることができる。
【0018】
【0019】
【0020】
以上のようにロールシェル11の肉厚内に気液2相の熱媒体を収納する密閉室13を設けた熱媒通流ローラについて、ロールの直径310mm、ロール面長1110mm、ファン負荷運転、流体流量2.4m3 /h、流体比重841kg/m3 、流体比熱0.42kcal/kg、流体入り口温度178℃、流体出口温度168℃、流体出入口温度差10℃で、流体の出口側から入り口までほぼ等間隔に14点の温度センサをロールシェル11の表面に配置して、計測した。
【0021】
その結果、流体の出口側から順に、146.8 148.8 [150.6 150.8 150.9 150.9 150.9 150.8 150.6 150.7 150.5 150.3] 149.4 147.8であった。[]内の温度が気液2相の熱媒体を収納した密閉室の有効長かつ処理物幅の有効長960mmである。この範囲での温度差は0.6℃であり、流体出入口温度差10℃にかかわらず良好な温度分布を呈している。なお、[]外の温度は密閉室の有効外のロール有効長外部分であり、熱が回転駆動軸に奪われて温度が若干低下している。
【0022】
ロールが放出する熱量を求めると、Q(kcal/h)=10×2.4×841×0.42=8477kcal/h=9.86kwである。ここで、気液2相の熱媒体を収納した密閉室を設けずに、この温度差0.6℃を得るときの流量Vを求めると、V(m3/h)=8477/(0.6×841×0.42)=40(m3/h)となる。これは気液2相の熱媒体を収納した密閉室を設けた場合に比べ約16.7倍の流体流量が必要であることを意味する。
【0023】
したがって、気液2相の熱媒体を収納した密閉室を設けた場合には1/16.7倍の流体流量で済み、この場合、配管およびロータリージョイントの断面積を1/16.7とすることが可能であり、配管およびロータリージョイントに要するコストを低減することができる。また、流体流量の低減は、配管工数および設置スペースの低減につながり、コスト低減として大きなメリットがあり、さらに流路の断面積が1/16.7となることは配管表面積が約1/4となり、配管放熱が1/4になって省エネルギーとすることができる。流体の流量が少なくすめば流体を供給するポンプも小さくてよく、流量が1/16.7であればポンプの容量は通常1/10程度で十分である。
【0024】
なお、以上は流体出入口温度差10℃とした場合であるが、流体出入口温度差10℃とした理由は、処理物を均一に熱処理しようとするとロールの有効長における温度分布精度が通常5℃未満である必要がある。つまり流体出入口温度差5℃未満とする必要があり、流体出入口温度差5℃以上となる場合には、流体出入口温度差にしたがい流量を増加しなければ均一に熱処理することができない。
しかし、気液2相の熱媒体を収納した密閉室を設けることにより、流体出入口温度差5℃以上であっても流量を増加することなく十分に均一な熱処理が果たせることを示すためである。すなわち、流体出入口温度差10℃でロールの有効長における温度分布精度が0.6℃であることは、ロールの有効長における温度分布精度が5℃未満までとすれば、流 体出入口温度差は、5/0.6×10=83.3℃と大幅な温度差とすることができ、配管、ロータリージョイントおよびポンプなどを小型化することができる顕著な効果が得られる。
【0025】
ところで、奪熱によってローラ(厳密にはロールシェル)の表面温度が変動する際、それを熱媒流体の温度を制御することでローラの表面温度を一定に制御するが、熱媒流体の温度制御は比較的に安定的にできるのに比べ、流路壁面との熱伝達率が小さいためにローラの温度は追従せず時間遅れが発生する。この遅れを解消するために、中空ローラの中空内にローラ自体をジュール発熱させる誘導発熱機構18を配置する。
【0026】
【0027】
以上の各実施の形態では、密閉室に気液2相の熱媒体となる適量の水15などを注入しているが、密閉室にヒートパイプを挿入するようにしてもよい。また、複数の密閉室はそれぞれ独立しているが、たとえば密閉室の両側の端部で互いに連通するようにしてもよい。その連通路を回転駆動軸のフランジ内に設けるようにしてもよく、この場合、密閉室はロールシェルの肉厚内を貫通することとなる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ローラ内を通流する熱媒流体の流量を大幅に低減することができ、これにより小さい配管およびポンプの採用によって設備費を削減することが可能となり、さらに配管の放熱量の低減とポンプ容量の低下によって、省エネルギーを達成することができる。すなわち、流体出入口温度差が大きくても処理物を均一に熱処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る熱媒通流ローラを示す縦断面図である。
【図2】図1に示す熱媒通流ローラの一部の横断面図である。
【図3】図1に示す熱媒通流ローラの動作説明図である。
【図4】従来の熱媒通流ローラを示す縦断面図である。
【符号の説明】
4 ロータリジョイント
5 貯油タンク
7 加熱又は冷却用熱交換器
8 温度センサ
9 ポンプ
10 処理物
11 ロールシェル
12 回転駆動軸
13 密閉室
14 熱媒通流管
15 気液2相を形成する熱媒体
18 誘導発熱機構
Claims (1)
- 熱媒通流路を有し、前記熱媒通流路を流れる熱媒流体により表面に当接する処理物を加熱又は奪熱処理する熱媒通流ローラであって、中空ローラの肉厚内部に前記ローラの長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を前記ローラの外周面に沿って複数個設け、前記ローラの中空内部に電磁誘導発熱機構を配置するとともに、前記密閉室内を長手方向に貫通する管を設け、前記管を熱媒通流路としてなることを特徴とする熱媒通流ローラ。
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