JP3958113B2 - 斜板式流体ポンプ・モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば建設機械の駆動装置、船舶用舵取り機等に使用され、低粘性流体を作動流体とした斜板式流体ポンプ・モータに適用され、特に、一端に球状部を有するピストン本体と斜板部との相対移動により該ピストン本体がシリンダ内で往復動可能に構成された斜板式流体ポンプ・モータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設機械の駆動装置、船舶用舵取り機等に使用される流体機械には、斜板式流体ポンプ・モータ等の斜板式流体機械が多く用いられている。
かかる斜板式流体機械は、傾斜角(斜板角)を調整可能にケース部材に支持された斜板と、該ケース部材を貫設するポンプ軸に固定された回転可能なシリンダ及び該シリンダ内のピストンとを具え、これらが該ケース部材に収納された構成となっている。
【0003】
そして、かかる斜板式流体機械において、例えば斜板式流体ポンプでは、エンジン、電動モータ等の駆動源によりポンプ軸に固設されたシリンダブロックを回転させ、該シリンダブロックに穿孔された複数のシリンダ内に往復動可能に収納されたピストンが、傾斜角を調整可能に配設された斜板との摺動回転によりシリンダ内で往復動することにより作動流体を圧送する。
さらに、前記流体機械は、作動流体の吸込みと吐出しの切換えを行うバルブプレートを具えている。該バルブプレートは眉形の吐出側開口及び吸入側開口と、これらの開口間に位置する反転領域を有しており、斜板と反対端側に位置する各シリンダの給排油孔は、前記吐出吸入側開口及び反転領域を円を描くごとく通過するように構成されている。
【0004】
一般に、前記流体機械用ピストンを構成する材料としては主に鋼材が使用されているが、鋼材を使用することによりピストン自身の重さによる高速、高応答性の悪化を防ぐために中空部を有するピストンが広く普及している。
しかしかかる中空型ピストンでは、シリンダ内の作動流体容積が大きいため液圧による脈動が発生し易いという問題点を抱えている。つまり、シリンダが前記吸入側開口と吐出側開口との間の反転領域上にきた時に前記シリンダ開口が急激に閉鎖され、また該反転領域通過後に該シリンダ開口が急激に開放されるため、シリンダ内の作動流体は、急激に高圧若しくは低圧にさらされることとなり、望ましくない作動流体の脈動が生じ、それに伴い流体機械の振動、騒音が発生してしまうのである。
【0005】
そこで、特開2001−173573号では、安価に製造可能でかつ軽量化されたインサートを充填した油圧ピストンを提供している。
かかる発明における油圧ピストンは、図7に示されるように円筒部014、閉塞端016、開口端018、及び中心孔020を有するピストン本体012を具えたピストンアッセンブリ010からなり、該ピストンアッセンブリ010の中空部には、円筒状のアルミニウムの充填体である軽量のスラグ022が挿入されている。また、前記開口端018には、回転斜板046に連結されたスリッパ034の球体を受け入れるための環状縁032が設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記油圧ピストンは、軽量化により作動応答性の向上は望めるものの、ピストン本体内部の殆どを軽量のインサートで充填した構成となっているため、ピストンのスリッパ側比重が大となりピストン本体長手方向の比重バランスが悪化してしまう。ピストンとシリンダとの摺動面にはこれらの円滑な摺動がなされるために潤滑剤若しくは作動流体が侵入可能な僅かな隙間が存在するが、この比重バランスの悪化のためにピストン本体に傾斜力が発生し、該隙間によりピストン本体の傾きが生じる。
【0007】
これにより、ピストンの片当りが起こり面圧が局部的に過大となり摺動面に摩耗やかじり、焼き付きが起こり易くなるとともに、装置の振動、騒音が発生する場合がある。特に、一端に球状部を具えたピストン本体を有する流体機械においては、該球状部の重みにより一層比重バランスが悪化して前記問題が深刻化することとなる。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、作動流体による脈動を防止するとともに、軽量化が可能でかつ比重バランスの良好なピストンを有する斜板式流体ポンプ・モータの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
シリンダ内に往復動可能に設けられた中空円筒形状のピストン本体と、該ピストン本体の一端に設けられた球状部と、該球状部に対して摺動回転する斜板部とを具えた斜板式流体ポンプ・モータにおいて、
前記ピストン本体の中空部が比重の異なる複数の充填部材で充填され、前記ピストン本体のうち球状部側の比重が小となるように該充填部材を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、シリンダ内に往復動可能に設けられた中空円筒形状のピストン本体と、該ピストン本体の一端に設けられた球状部と、該球状部に対して摺動回転する斜板部とを具えた斜板式流体ポンプ・モータにおいて、前記ピストン本体に設けられた中空部の球状部側に空間を形成させるとともに、前記球状部と軸方向反対側に位置するピストン中空先部に前記ピストン本体と同部材の充填部材を充填したことを特徴とする。
【0010】
かかる発明は斜板部と摺動回転する球状部を有するピストン本体を具えた斜板式流体ポンプ・モータに適用されるもので、ピストン本体の比重バランスを良好に保持するために該ピストン中空部に比重の異なる複数の充填部、若しくは空間部を形成させている。このとき、前記充填部及び空間部は、ピストン本体の材質、ピストン球状部重量、斜板部から受ける横力、及び遠心力等の条件に応じて適宜組み合わせ用いることが好ましい。
かかる発明によれば、前記ピストン中空部に充填部材を挿入しているため、作動流体の占める容積が小さくなり脈動による振動、騒音を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、かかる発明によれば、比重バランスの良好なピストンを容易に製造でき、これにより、ピストンの片当りによる偏磨耗や振動を抑制することができる。また、既設装置であって中空型ピストンを有する装置にも簡単に適用することが出来るため、低コストで以ってかかる装置を提供することが可能である。
尚、例えば、ピストン本体の球状部側に比重が小である樹脂系材料、軽金属材料等からなる充填部材を充填するか若しくは空間を形成させ、該球状部と軸方向反対側のピストン中空先部に比重が大である鋼材、銅合金材等からなる充填部材を充填する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、前記充填部材の平均比重をかかるピストン本体の比重より小とすることが好ましく、ピストン本体を軽量化することで中空部を設けない一体型ピストンに比して作動応答性が良好となり、往復時の慣性力を低減でき流体機械の動力損失を軽減出来る。
さらに、請求項2記載の発明は、前記球状部と軸方向反対側に位置するピストン中空先部に前記ピストン本体と同部材の充填部材を充填したことを特徴とし、また、請求項3記載の発明は、前記ピストン本体に設けられた中空部のうち、前記球状部と軸方向反対側に位置するピストン中空先部に前記ピストン本体と同部材の充填部材を充填し、一方球状部側を該ピストン本体部材より比重が小の充填部材で形成したことを特徴とする。
【0013】
かかる請求項2および請求項3記載の発明は、前記ピストン中空先部をピストン本体と同部材で充填することにより、作動流体が圧縮された場合においても十分な強度を保持でき、またピストンの往復動による摩擦発熱によっても、ピストン本体と連結部との熱膨張量を略同じとすることができ耐久性が優れる。
さらに、ピストンの切削、研磨加工時に該ピストン中空先部が球状部より重量が大となる容積を占有するように残して成形し、部分一体型ピストンとすることにより、より高強度のピストンを製造することが可能となる。
尚、前記ピストン本体に、前記ピストン球状部から中空先部まで連通する微小孔を穿設し、作動流体が前記球状部まで微少量通流するようにして、前記球状部と斜板との摺動回転が円滑に行われるようにするとよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1乃至図4は本発明の第1乃至第4実施例に係るピストン本体の構造を示す断面図で、図5は本発明の実施形態に係る斜板式油圧ポンプの構造を示すポンプ軸心線に沿う断面図である。
【0015】
本実施形態では、作動流体に鉱油を主成分とした油圧ポンプについて説明しているが、水を含む低粘性流体を作動流体とした流体機械であれば何れの装置においても適用可能である。
まず、図5において本発明にかかる斜板式油圧ポンプの全体構造を説明すると、1はエンジン、電動モータ等の駆動源(図示省略)に連結されて回転駆動されるポンプ軸、2は該回転駆動するポンプ軸を軸支する軸受、3はシリンダ、4は前記ポンプ軸1にスプラインを介して嵌合され該ポンプ軸1と同期して回転駆動されるシリンダブロックである。
【0016】
前記シリンダブロック4には円周方向等間隔に複数のシリンダ3が穿孔されている。5は前記各シリンダ3の給排油孔17側に配置されて前記エンドプレート12に固着されたバルブプレートである。かかるバルブプレート5には前記ポンプ軸1の両側に対向して眉形の吸入孔及び吐出孔が穿設されている。
6は前記各シリンダ3に往復摺動可能に嵌合されたピストン本体である。尚、前記シリンダ3内にブッシュ(図示省略)を圧挿し、該ブッシュ内にピストン本体6を往復摺動可能に嵌合してもよい。
【0017】
前記ピストン本体6は、円筒形状の筒体部6aと該ピストン本体の一端に形成された球状部6bとから構成され、該筒体部6aから球状部6bにかけてピストン本体の軸心線上に沿って中心孔が穿設されている。
そして、ポンプ軸1、前記シリンダ3及びピストン本体6を含む作動部は、ケーシング11及び該ケーシング11の前後両端部に固着されたベースプレート13、エンドプレート12によって形成される筐体に収納され、閉鎖空間内で作動するように構成されている。
【0018】
また前記エンドプレート12には吸入通路9及び吐出通路10が形成され、該吸入通路9は前記バルブプレート5の吸入孔に、吐出通路10は前記吐出孔に連通されている。
14は前記ベースプレート13に取り付けられた斜板である。16は前記ピストン球状部6bを転支するスリッパで、前記斜板14とスリッパ16とで斜板部を形成しており、斜板角調整装置80によりその斜坂角を調整可能に構成されている。即ち、該斜板各調整装置80は図6に示すように、シリンダ08b内を往復動するピストン08cによりレバー08aを回動させ、該レバー08aの端部に固定された斜板軸08を図のU矢のように回動させることにより斜坂角を変化させるようになっている。15は前記斜板14のスリッパ16側表面にローラ軸受20を介して配設されたスラストプレートで、該スラストプレート15は前記スリッパ16と摺動回転可能に当接されている。
【0019】
以上の構成は従来の斜板式油圧ポンプと同様である。本発明においては前記ピストン本体6を改良している。
図1に示される断面図は、図5の斜板式油圧ポンプのピストン本体部分の構成を示す断面図である。かかる第1実施例において、ピストン本体6は円筒形状を有する筒体部6aとその一端に同部材で形成された球状部6bとからなり、該筒体部6aはその内部に中空部を形成している。該筒体部6aの肉厚は軸方向何れの部分においても略同じである。
【0020】
前記筒体部6aの一端は開放され、逆端は閉塞されるとともに前記球状部6bを具えている。かかる筒体部6a及び球状部6bは、例えば鋼材等の高強度でかつ安価な材料で構成され、好ましくは前記筒体部6aの表面にシリンダとの摺動性及び摺動による耐久性、耐磨耗性が向上するようにSiC(炭化珪素)等のセラミック部材をコーティングして平滑面を形成させると良い。
前記中空部の球状部6b側は樹脂製充填部材6cにより、中空先部側は銅製充填部材6dにより隙間なく充填されている。
【0021】
そして、前記充填部材6c、6d及び前記球状部6bを貫通するように中心孔7が穿設されている。該中心孔7により作動油が前記スリッパ16側に流出し、スリッパ16と球状部6bとの潤滑を良好にしている。
ここで、前記充填部材6c、6dは夫々比重の異なる材料で形成され、例えば、前記樹脂製充填部材6cにはフッ素系樹脂、フェノール樹脂等の樹脂系材料の他にもアルミニウム合金などの比較的比重が小さい材料を用いることができ、一方前記銅製充填部材6dには銅合金材、鋼材などの前記樹脂製充填部材6cより比重が大である材料を用いることができる。
【0022】
このように、ピストン本体6の中空部に充填部材6c、6dを充填することにより作動油による脈動を軽減することができ、また該ピストン本体6の長手方向の比重バランスが良好になるように複数種類の充填部材を用いることにより、ピストンの往復動に伴う傾斜力が小さくなり、ピストンの片当りやこれに伴う振動、騒音の発生を最小限に抑えることが出来る。
また、かかるピストン本体6は既設の斜板式油圧ポンプに使用されている中空型ピストンにも適用可能で、これにより低コストで以って振動、騒音の少ない油圧ポンプを提供することが出来る。
【0023】
図2に示される本発明の第2実施例は、前記第1実施例と略同様の構成であるが、前記ピストン球状部6b側の中空部に比重が大である樹脂製充填部材6cをピストン中空先部に向けて拡径するテーパ状に充填し、これに対応する円錐状の銅製充填部材6dを中空先部側に充填している。
かかる夫々の充填部材は、使用する材料、ピストン本体形状等に応じて形成し易い形状を選択することが好ましい。
【0024】
また、図3に示される第3実施例におけるピストン本体6は、ピストン中空部がピストン中空先部側に向けて縮径するように形成されており、該筒体部6a内の円錐状空間にはかかる空間形状に係合する樹脂製充填部材6cを挿入している。前記筒体部5aの最小径は中心孔7と略同じ径で、ここから前記球状部6bにかけて該中心孔7が穿設されている。かかる樹脂製充填部材6cは、前記筒体部6aより比重の小さい材料を使用する。
尚、かかるピストン本体6は、筒体部6aとフランジ部及び軸部を設けた球状部6bとを別に成形して、前記筒体部6aに充填部材6cを充填した後に該軸部を前記筒体部6aに圧入するように製造するとよい。
【0025】
さらに、図4に示される第4実施例は、前記ピストン中空先部に銅製充填部材6dを充填し、中空部閉塞端と該充填部材6dとの間に空間部8を形成している。該空間部8は、前記銅製充填部材6d及び球状部6bに穿設された中心孔7に連結され、かかる油圧ポンプの作動時には、該中心孔7を介して流入する作動油により満たされている。
しかしながら、前記空間部8はシリンダ内の作動油とは微小な中心孔7で連結されているのみであるため、空間部8内の作動油はピストンの往復動による流動が小さく、脈動の発生とは殆ど無関係である。従って、前記第1実施例と略同様の効果を得ることが出来る。
【0026】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、比重バランスの良好なピストンを容易に製造でき、これにより、ピストンの片当りによる偏磨耗や振動を防止することができる。また、中空型ピストンを有する既設装置にも簡単に適用することが出来るため、低コストで以ってかかる装置を提供することが可能である。
またピストン自体を軽量化することで中空部を設けない一体型ピストンに比して作動応答性が良好となり、往復時の慣性力を低減できて流体機械の動力損失を軽減出来る。
また、前記ピストン中空先部をピストン本体と同部材で充填することにより、作動流体が圧縮された場合においても十分な強度を保持でき、またピストンの往復動による摩擦発熱によっても、ピストン本体と連結部との熱膨張量を略同じとすることができ耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係る斜板式油圧ポンプの構造を示すポンプ軸心線に沿う断面図である。
【図2】 本発明の第2実施例に係るピストン本体の構造を示す断面図である。
【図3】 本発明の第3実施例に係るピストン本体の構造を示す断面図である。
【図4】 本発明の第4実施例に係るピストン本体の構造を示す断面図である。
【図5】 本発明の実施形態にかかる斜板式流体機械の全体構成図を示す。
【図6】 本発明の実施形態にかかる斜板のZ部拡大図である。
【図7】 従来技術におけるピストン部の断面図である。
【符号の説明】
1 ポンプ軸
4 シリンダ
6 ピストン本体
6a 筒体部
6b 球状部
6c 樹脂製充填部材
6d 銅製充填部材
7 中心孔
8 空間部
9 吸入通路
10 吐出通路
11 ケーシング
14 斜板
15 スラストプレート
16 スリッパ
17 シリンダ開口
Claims (3)
- シリンダ内に往復動可能に設けられた中空円筒形状のピストン本体と、該ピストン本体の一端に設けられた球状部と、該球状部に対して摺動回転する斜板部とを具えた斜板式流体ポンプ・モータにおいて、
前記ピストン本体の中空部が比重の異なる複数の充填部材で充填され、前記ピストン本体のうち球状部側の比重が小となるように該充填部材を配置したことを特徴とする斜板式流体ポンプ・モータ。 - シリンダ内に往復動可能に設けられた中空円筒形状のピストン本体と、該ピストン本体の一端に設けられた球状部と、該球状部に対して摺動回転する斜板部とを具えた斜板式流体ポンプ・モータにおいて、
前記ピストン本体に設けられた中空部の球状部側に空間を形成させるとともに、前記球状部と軸方向反対側に位置するピストン中空先部に前記ピストン本体と同部材の充填部材を充填したことを特徴とする斜板式流体ポンプ・モータ。 - 前記ピストン本体に設けられた中空部のうち、前記球状部と軸方向反対側に位置するピストン中空先部に前記ピストン本体と同部材の充填部材を充填し、一方球状部側を該ピストン本体部材より比重が小の充填部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の斜板式流体ポンプ・モータ。
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