JP3958044B2 - インクジェット記録用水性インクセット、同インクセットを用いる画像形成方法および同装置 - Google Patents

インクジェット記録用水性インクセット、同インクセットを用いる画像形成方法および同装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、普通紙に対するカラー画像の形成において生じる、いわゆる、カラーブリーディング現象を低減し、印字濃度の高い画像を得る技術に関し、とりわけインクジェット記録方式を利用した画像形成に最適に使用される液体組成物、これに、インクを組み合わせたインクセット、及びこれらを用いた画像形成方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々のインク吐出方式により、インク小滴(droplet)を形成し、それらの一部若しくは全部を紙、加工紙、プラスチックフィルム、織布等の被記録材に付着させて記録を行うものである。このようなインクジェット記録方式に使用するインクとしては、各種の染料または顔料を、水または水と水溶性有機溶剤からなる媒体液に溶解または分散させたものが知られ、かつ、使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のインクジェット記録方法に用いられるインクとしては、水を主成分とし、これに乾燥防止、ノズルの目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤が含有されたものが一般的であった。そのためこの様なインクを用い普通紙に記録を行った場合には、十分な定着性が得られなかったり、記録紙表面における填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像が発生する等の問題を生じていた。また、特にカラー画像を得ようとした場合には、ある色のインクが記録紙に定着する以前に他の複数の色のインクが次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分で色がにじんだり、不均一に混ざり合って(以下、この現象をブリーディングと呼ぶ)、満足すべき画像が得られないという問題があった。特に、ブラックインクとカラーインクとの間で起こるブリーディングはしばしば深刻な問題になっていた。
【0004】
これを解決する手段として、特開昭55‐65269号公報に、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されている。また、特開昭55‐66976号公報には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。しかし、前者のインク中に界面活性剤等を添加する方法では、記録紙へのインクの浸透性が高まるため、インクのブリーディングの防止についてはある程度向上するものの、インク中の色材も記録紙の奥深くまで浸透してしまう。そのため、画像濃度及び彩度が低下する等の不都合を生じる。その他、インクの横方向に対する広がりも発生し、この結果、エッジのシャープさが低下したり、解像度が低下したりする等の問題も発生した。一方、揮発性溶剤を主体としたインクを用いる後者の方法の場合には、上記した前者の場合と同様の不都合が生じるのに加え、記録ヘッドのノズル部での溶剤の蒸発による目詰まりが発生し易く、好ましくなかった。
【0005】
その他にも、特公昭62‐38155号公報には、アニオンインクで印字後、再度カチオンのインクまたは定着液を後印字することが提案されている。さらに、特開昭58‐128862号公報では、カチオンインクまたは定着液をアニオンインクの前に下印字することが提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案では発色性の向上と、にじみ(フェザリング)、ブリーディングは改善されるが、被記録材に噴射されるインク量が2倍になるため、コックリング(紙のぼこつき)がひどくなるほか、ランニングコストの上昇、プリンター内で定着液とインクが混ざらない工夫が必要である。
【0007】
従って、本発明はインクのブリーディングが防止され、かつ画像濃度に優れたカラー画像が得られるインクジェット記録用水性インクセットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明は、
少なくとも着色剤と水溶性環状化合物を含んでなる第一インクと、少なくとも着色剤と該水溶性環状化合物と水不溶性の複合体を形成する水溶性直鎖高分子を含んでなる第二インクとを組み合わせてなるインクジェット記録用水性インクセットであって、
該水溶性環状化合物が、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリンまたはγ‐シクロデキストリンであり、
かつ、該水溶性直鎖高分子が、該水溶性環状化合物がα‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコールであり、該水溶性環状化合物がβ‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールまたはこれらのブロック共重合体であり、該水溶性環状化合物がγ‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ポリメチルビニルエーテルまたはこれらのブロック共重合体である
ことを特徴とするインクジェット記録用水性インクセット
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下により具体的な構成例について記載するが、本発明は下記方法に限定されるものではない。
【0010】
本発明におけるブリーディングを防止する機構は、第一インクと第二インクが隣接して印字された場合、記録紙上あるいは記録紙に浸透した位置においてインクが混合されると、第一インクに含まれる水溶性環状化合物と、第二インクに含まれる水溶性直鎖高分子とが水に不溶な複合体を形成することに由来する。
【0011】
例えば、本発明の第一インクの水溶性環状化合物としてα‐シクロデキストリン、第二インクの水溶性直鎖高分子成分としてポリエチレングリコール鎖を用いた場合、印字直後の二つのインクの境界面で複数個のα‐シクロデキストリンに、環状化合物である直鎖状のポリエチレングリコールが貫通した超分子構造体(擬ポリロタキサン)が瞬時に形成され、インク成分の凝集、あるいは増粘を起こしブリーディングが抑えられる。
【0012】
(水溶性環状化合物と水溶性直鎖高分子の組合せ)
水溶性環状化合物と水溶性直鎖高分子として使用可能なものとしては、水に不溶な複合体を形成するものであればいかなるものでも使用可能である。
【0013】
水溶性環状化合物としてはα‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリンまたはγ‐シクロデキストリンがあげられる。この際、組み合わせる水溶性直鎖高分子としては、α‐シクロデキストリンの場合はポリエチレングリコール、β‐シクロデキストリンの場合はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、またはこれらのブロック共重合体、γ-シクロデキストリンの場合はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ポリメチルビニルエーテル、またはこれらのブロック共重合体があげられる。また、本発明においては、数平均分子量が200〜10000の範囲のものを用いるのが好ましい。
【0014】
なお、水不溶の複合体を形成するためには、水溶性環状化合物はインク中に1〜20重量%の範囲、水溶性直鎖高分子は0.1〜2重量%の範囲で用いるのが好ましく、水溶性直鎖高分子に対する水溶性環状化合物の割合が5〜50倍の範囲になるものが好ましい。
【0015】
また、ブラックインクとカラーインク間のブリーディングを防ぐためには、本発明で用いる着色剤としては、第一インクをイエロー、マゼンタ、シアンなどからなるカラーインク、第二インクをブラックインクとして用いるのが好ましい。
【0016】
なお、本発明におけるブリーディング防止機構は静電的相互作用に由来していないため、特開平6‐57192号公報などにある、二価の金属塩をカラーインクに添加し、ブラックインクとの境界においてブラックインクの色材を析出させてブリーディングを低減させる機構に比べて、着色剤や添加剤の選択の自由度が高くなっている。
【0017】
したがって、本発明で用いられる着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料などあらゆる染料を用いることができる。
【0018】
上記染料の具体的なものとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック‐4、‐9、‐11、‐17、‐19、‐22、‐32、‐80、‐151、‐154、‐168、‐171、‐194、‐195、C.I.ダイレクトブルー‐1、‐2、‐6、‐8、‐22、‐34、‐70、‐71、‐76、‐78、‐86、‐142、‐199、‐200、‐201、‐202、‐203、‐207、‐218、‐236、‐287、C.I.ダイレクトレッド‐1、‐2、‐4、‐8、‐9、‐11、‐13、‐15、‐20、‐28、‐31、‐33、‐37、‐39、‐51、‐59、‐62、‐63、‐73、‐75、‐80、‐81、‐83、‐87、‐90、‐94、‐95、‐99、‐101、‐110、‐189、‐225、‐227、C.I.ダイレクトイエロ‐‐1、‐2、‐4、‐8、‐11、‐12、‐26、‐27、‐28、‐33、‐34、‐41、‐44、‐48、‐86、‐87、‐88、‐132、‐135、‐142、‐144、C.I.フードブラック‐1、‐2、C.I.アシッドブラック‐1、‐2、‐7、‐16、‐24、‐26、‐28、‐31、‐48、‐52、‐63、‐107、‐112、‐118、‐119、‐121、‐172、‐194、‐208、C.I.アシッドブルー‐1、‐7、‐9、‐15、‐22、‐23、‐27、‐29、‐40、‐43、‐55、‐59、‐62、‐78、‐80、‐81、‐90、‐102、‐104、‐111、‐185、‐254、C.I.アシッドレッド‐1、‐4、‐8、‐13、‐14、‐15、‐18、‐21、‐26、‐35、‐37、‐52、‐249、‐257、‐289、C.I.アシッドイエロー‐1、‐3、‐4、‐7、‐11、‐12、‐13、‐14、‐19、‐23、‐25、‐34、‐38、‐41、‐42、‐44、‐53、‐55、‐61、‐71、‐76、‐79、C.I.リアクティブブルー‐1、‐2、‐3、‐4、‐5、‐7、‐8、‐9、‐13、‐14、‐15、‐17、‐18、‐19、‐20、‐21、‐25、‐26、‐27、‐28、‐29、‐31、‐32、‐33、‐34、‐37、‐38、‐39、‐40、‐41、‐43、‐44、‐46、C.I.リアクティブレッド‐1、‐2、‐3、‐4、‐5、‐6、‐7、‐8、‐11、‐12、‐13、‐15、‐16、‐17、19、‐20、‐21、‐22、‐23、‐24、‐28、‐29、‐31、‐32、‐33、‐34、‐35、‐36、‐37、‐38、‐39、‐40、‐41、‐42、‐43、‐45、‐46、‐49、‐50、‐58、‐59、‐63、‐64、‐180、C.I.リアクティブイエロー‐1、‐2、‐3、‐4、‐6、‐7、‐11、‐12、‐13、‐14、‐15、‐16、‐17、‐18、‐22、‐23、‐24、‐25、‐26、‐27、‐37、‐42、C.I.リアクティブブラック‐1、‐3、‐4、‐5、‐6、‐8、‐9、‐10、‐12、‐13、‐14、‐18、プロジェットファストシアン2(Zeneca社)、プロジェットファストマゼンタ2(Zeneca社)、プロジェットファストイエロー2(Zeneca社)、プロジェットファストブラック2(Zeneca社)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また、本発明では、着色剤として顔料を用いることができる。その際、顔料の量は、インク全重量に対して、1〜20重量%、さらには2〜12重量%の範囲で用いるのが好ましく、使用される顔料としては、従来公知であるものをいずれも好ましく使用できる。
【0020】
具体的には、少なくとも一種の親水性基が顔料の表面に直接若しくは他の原子団を介して結合した分散剤を使用することなく安定に分散させることができる自己分散型顔料を用いることができる。本発明で使用する自己分散型顔料としては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
【0021】
また、従来のように水溶性樹脂を用いて顔料を水性媒体中に分散させたものを使用することができる。その場合にインク中に含有させる分散剤としては、水溶性樹脂ならどの様なものでも使用することができる。中でも重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲のものである。この様な分散剤として、具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β‐エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、グラフト共重合体、またはこれらの塩等があげられる。さらに、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。なお、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、インク全重量に対して0.1〜5重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0022】
その他にも、分散剤として界面活性剤を利用もしくは併用したものや、ポリマーラテックスあるいはマイクロカプセルとして着色剤を内包する樹脂分散型顔料なども好ましく使用できる。
【0023】
具体的にブラックのインクに使用される顔料としては、カーボンブラックがあげられるが、一次粒子径が15〜40mμ、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10重量%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましい。この様な特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、#2200B(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(以上、コロンビア製)、REGAL 400R、REGAL 330R、REGAL 660R、MOGULL(以上、キャボット製)、Color Black FW1、COLOR Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することができる。
【0024】
イエローのインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー‐1、‐3、‐12、‐13、‐14、‐17、‐42、‐55、‐62、‐73、‐74、‐81、‐83、‐93、‐95、‐97、‐108、‐109、‐110、‐128、‐130、‐151、‐155、‐158、‐139、‐147、‐154、‐168、‐173、‐180、‐184、‐191、‐199等があげられ、マゼンタのインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド‐2、‐4、‐5、‐22、‐23、‐31、‐48、‐53、‐57、‐88、‐112、‐122、‐144、‐146、‐150、‐166、‐171、‐175、‐176、‐177、‐181、‐183、‐184、‐185、‐202、‐206、‐207、‐208、‐209、‐213、‐214、‐220、‐254、‐255、‐264、‐272、C.I.ピグメントバイオレット‐19、‐23、‐29、‐37、‐38、‐42、‐43、‐44等があげられ、シアンのインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー‐15:3、‐16、‐22、‐25、‐26、‐56、‐57、‐60、‐61、‐66等があげられる。また、これらに限られるものではない。以上の他、本発明の為に新たに製造された顔料も勿論使用することが可能である。
【0025】
特に、上記した様な顔料が含有されているインクの場合には、インク全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。この様なものとすれば、顔料分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れたインクとすることができる。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、pH7〜10の範囲とするのが望ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等があげられる。上記した様な顔料及び分散剤である水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
【0026】
本発明で使用される顔料が含有されたインクにおいて好適な水性液媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0027】
本発明では、印字物の耐水性や耐擦過性の向上に関する改良手段として、インクへのバインダー樹脂としての水溶性樹脂を添加することができる。
【0028】
本発明でインクへのバインダー樹脂として用いる水溶性樹脂としては、水性インクに対して溶解性あるいは親和性を示すものならいずれでもよく、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メラミン樹脂あるいはこれらの変性物等の合成樹脂、また、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂などの水溶性樹脂をあげることができるが、これらに限られるものではない。
【0029】
本発明ではインクへのバインダー樹脂として水分散型樹脂を用いてもよく、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル‐(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン‐イソプレン共重合体、スチレン‐ブタジエン共重合体、エチレン‐プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル等多数列挙することができるが、もちろんこれらに限られるものではない。
【0030】
そしてこれらの水溶性樹脂、水分散性樹脂は複数を同時に用いてもよい。
【0031】
また水性媒体には水溶性有機溶剤を含有させてもよい。好適に使用される水溶性有機溶媒としては、例えば炭素数1〜4のアルキルアルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n‐プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、sec‐ブチルアルコール、tert‐ブチルアルコール等)、ケトンまたはケトアルコール類(例えばアセトン、ジアセトンアルコール等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6‐ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等)、多価アルコール等のアルキルエーテル類(例えばエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等)、更にはN‐メチル‐2‐ピロリドン、2‐ピロリドン、1、3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン等があげられる。インク中での水溶性有機溶剤のトータルの量としては、インク全体の量に対して2〜60重量%で、更に好適な範囲としては、5〜25重量%である。
【0032】
また好ましい水溶性有機溶剤はグリセリンであり、その添加量はインク中の重量%として、2〜30重量%、更には5〜15重量%が好適である。更に好適な水溶性有機溶剤はグリセリンと多価アルコール(例えば、ジエチレングリコールやエチレングリコール等)を含有する混合溶剤で有り、グリセリンと他の多価アルコールとの混合比としてはグリセリン:その他の多価アルコールで10:5〜10:50の間が好ましい。グリセリンの他の多価アルコールとしては、例えばジエチレングリコール、エチレングリコールやプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリセリンまたは、グリセリンと多価アルコールとの混合体は他の水溶性有機溶剤と更に混合して用いることが可能である。
【0033】
本発明では、インクの記録紙への浸透性を調節したり、顔料の分散安定性を向上させる目的で界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン、カチオン性界面活性剤などがあげられる。
【0034】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩などが使用できる。
【0035】
カチオン界面活性剤としては、第一、第二、第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩などが使用できる。
【0036】
また、この他にも両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤をいずれも好ましく使用できる。
【0037】
本発明で使用されるインクには、上記した、着色剤、水溶性樹脂組成物及び、水溶性有機溶剤、界面活性剤の他に、必要に応じて粘度調整、酸化防止剤及び蒸発促進剤等の添加剤を適宜配合してもかまわない。なお、これらの上記の成分はいずれも一種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。なお、文中「部」および「%」とあるのは特に示さない限り重量基準とする。
【0039】
実施例1
まず、下記の成分(全100部)を混合溶解した後、保留粒子径が1.0μmのろ紙にて加圧濾過し、ブラックインク(Bk−1)を得た。
(Bk−1)
カーボンブラックMA7(三菱化学製) 5部
スチレン‐アクリル系共重合体塩(分散剤) 1部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 5部
トリメチロールプロパン 5部
ポリオキシエチレンセチルエーテル(PEG30) 1部
水 残部
【0040】
次に、下記の成分(全100部)を混合溶解した後、さらにポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、イエローインク(Y‐1)を得た。
(Y‐1)
C.I.ダイレクトイエロー‐142 2.5部
α‐シクロデキストリン 10部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 5部
トリメチロールプロパン 5部
水 残部
【0041】
マゼンタインク(M‐1)およびシアンインク(C‐1)を、着色剤をC.I.アシッドレッド‐289に代え(M‐1)、また、着色剤をC.I.アシッドブルー‐9に代えた(C‐1)以外は(Y‐1)と同様の組成で、得た。
【0042】
実施例2
まず、下記の成分(全100部)を混合溶解した後、保留粒子径が1.0μmのろ紙にて加圧濾過し、ブラックインク(Bk‐2)を得た。
(Bk‐2)
カーボンブラックMA8(三菱化学製) 5部
ポリエチレングリコール(数平均分子量1000) 10部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 5部
トリメチロールプロパン 5部
水 残部
【0043】
比較例1
まず、下記の成分(全100部)を混合溶解した後、さらにポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、ブラックインク(Bk‐3)を得た。
(Bk‐3)
C.I.フードブラック‐2 2.5部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 5部
トリメチロールプロパン 5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 2部
水 残部
【0044】
次に、得られたブラックインク(Bk‐1)、(Bk‐2)、(Bk‐3)とイエローインク(Y‐1)、マゼンタインク(M‐1)、シアンインク(C‐1)を用いて、市販のコピー用紙、ボンド紙に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、BJF8500(キヤノン製)を用いた。
【0045】
記録物の評価方法は次の方法で行った。
(印字濃度)
市販のコピー用紙に、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのベタ部を記録し、1時間放置後、記録濃度をマクベスRD915(商品名:マクベス社製)にて測定し、以下の評価基準とした。結果を表1に示した。
○:濃度が1.25以上であった。
△:各色の濃度が1.15〜1.25であった。
×:各色の濃度が1.15以下であった。
【0046】
【表1】
Figure 0003958044
【0047】
(ブリーディング)
市販のコピー用紙に無色の液体を付与した後、イエロー、マゼンタ、シアンのベタ部に隣接して、ブラックのベタ部を記録し、各色の境界部で色がにじんだり、不均一に混じり合っていないか、観察した。評価は以下の基準とした。
○:色がにじんだり、不均一に混じり合った部分がなかった。
△:色がにじんだり、不均一に混じり合った部分が多少あったが、実用上問題ない。
×:色がにじんだり、不均一に混じり合っており、実用上問題ある。
【0048】
【表2】
Figure 0003958044
【0049】
表1、2に記載した通り実施例1、2により、画像濃度、ブリーディングともに良好な記録画像が得られた。一方、比較例1では、記録画像の文字品位が劣っていた。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、普通紙に対して画像濃度に優れた、ブリーディングのないカラー画像が得られるインクジェット記録用水性インクセットを提供することができる。

Claims (4)

  1. 少なくとも着色剤と水溶性環状化合物を含んでなる第一インクと、少なくとも着色剤と該水溶性環状化合物と水不溶性の複合体を形成する水溶性直鎖高分子を含んでなる第二インクとを組み合わせてなるインクジェット記録用水性インクセットであって、
    該水溶性環状化合物が、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリンまたはγ‐シクロデキストリンであり、
    かつ、該水溶性直鎖高分子が、該水溶性環状化合物がα‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコールであり、該水溶性環状化合物がβ‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールまたはこれらのブロック共重合体であり、該水溶性環状化合物がγ‐シクロデキストリンの場合、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ポリメチルビニルエーテルまたはこれらのブロック共重合体である
    ことを特徴とするインクジェット記録用水性インクセット。
  2. 第一インクがイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクであり、第二インクがブラックインクである、請求項1記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  3. 請求項1または2に記載のインクジェット記録用水性インクセットを用いることを特徴とする画像形成方法。
  4. 請求項1または2に記載のインクジェット記録用水性インクセットを用いることを特徴とする画像形成装置。
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