JP3957835B2 - ポリイソシアネート組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリイソシアネート組成物及びそれを用いたシーリング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
湿気硬化型である末端イソシアネート基を有する高分子量体は、建築、自動車用のシーリング材として多用されている。前記高分子量体のイソシアネート基は、空気中の水分と反応、硬化し、シーリング材としての物性が発現する。これに関する提案が多い。
【0003】
建築用シーリング材に関しては、特開平3−111448号公報では、平均分子量3,000と5,000のポリプロピレングリコール及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称す)を、特開平4−370146号公報では、平均分子量3,000のポリオキシプロピレングリコール、平均分子量300のポリオキシプロピレントリオールとMDIを、特開平6−080755号公報では、平均分子量3,000のポリオキシプロピレングリコール、平均分子量3,000のポリオキシプロピレントリオールとキシリレンジイソシアネート(以下、XDIと称す)を、特開平6−256499号公報では、平均分子量7,000のポリアルキレンエーテルトリオール、平均分子量5,000のポリアルキレントリオールとMDIを、特開平3−215554号公報では、分子量3,000のポリエーテルトリオールとMDIを、特開平5−209165号公報では、分子量4,000のポリオキシプロピレンエーテルジオール、分子量10,000のポリオキシプロピレントリオールとトリレンジイソシアネート(以下、TDIと称す)を反応させ、得られたイソシアネート基末端を有する高分子量体を提案している。
【0004】
建築用ウレタン系シーリング材は、表面タックがなく、耐汚染性、高湿気硬化性、高作業性が追求されている。しかしこの点で、前述した提案には限界があった。即ち、これら従来技術のすべては、ポリオールとジイソシアネートの反応が、水酸基とイソシアネート基の当量が比較的接近した状態で行われている。この様な反応条件は、硬化したシーリング材の物性を保持するための分子量増加に効果があり、確かに、反応で高分子量体が生成する。しかし、一方では前記のポリオキシアルキレンポリオールには若干のモノオールが含まれるが、ジイソシアネートの両末端にモノオールが付加した低分子量化合物が生成し易い。それは反応性がなく、表面タックを低下させる原因になる。
【0005】
また、ウレタン結合により高分子量化されたことは、ウレタン結合に起因する高粘度化などが生ずることになり、モジュラスの低下が難しく、また添加剤などで作業性を向上させる等するため、その処方が制限されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ウレタン結合濃度が低く、低粘度であり、表面タック低下の原因となる前記の低分子量化合物のないポリイソシアネート組成物、及び、それを用いた耐汚染性、硬化性の優れた湿気硬化型シーリング材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定のポリイソシアネート組成物を使用することにより、前記課題を解決し、本発明をなすに至った。即ち、本発明は下記の通りである。
1)脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートと、分子量6,000〜30,000、水酸基平均官能基数2〜3のポリオール(但し、アクリルポリオールを除く)を、イソシアネート基/水酸基の当量比が5/1〜100/1で反応させた後、未反応のジイソシアネート及び溶剤を実質的に除去してなり、かつ、下記(1)、(2)、(3)であることを特徴とするアロファネート結合含有ポリイソシアネート組成物。
【0008】
(1)イソシアネート濃度;0.5〜5重量%
(2)25℃での粘度;1,000〜30,000mPa・s
(3)アロファネート結合/(ウレタン結合+アロファネート結合)が10%以上
2)ポリオールがプロピレンオキサイド付加物であるポリエーテルポリオールである上記1)記載のポリイソシアネート組成物。
3)上記1)または2)記載のポリイソシアネート組成物を含む湿気硬化型シーリング材。
【0009】
なお、前記「未反応のジイソシアネート及び溶剤を実質的に除去した」とは、工業的分離装置を使用し、未反応ジイソシアネート及び溶剤が除去された状態を言い、通常それらは1重量%以下となる。
以下、本発明につき詳述する。
本発明に用いるジイソシアネートは、脂肪族及び/または脂環族である。MDI、TDI、XDI等の芳香族イソシアネートも用いることができるが、耐候性などが要求される分野では必ずしも適切とはいえない。
【0010】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが、脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることが出来る。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)が好ましく、単独で使用しても、併用しても良い。
【0011】
本発明においては、アクリルポリオール以外のポリオールが用いられる。ポリオールとしては、ポリエステル、ポリブダジエン、ポリエーテル等が挙げられ、なかでもポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールは、次のようにして製造される。
即ち、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミンなどの具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、エチレンジアミンなどのジアミンの単独または混合物に、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポリフィリン、複合金属シアン化合物錯体、金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属錯体、セシウム系化合物等を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られる。好ましいアルキレンオキサイドはプロピレンオキサイドである。
【0012】
ポリオールの水酸基平均官能基数は2〜3が好ましい。2未満では硬化性が悪く、3を越えると硬化した樹脂物性が低下する場合がある。
ポリオールの分子量は6,000〜30,000が好ましく、更に好ましくは6,000〜20,000であり、特に好ましくは6,000〜15,000である。分子量が6,000未満であると伸びなどの硬化樹脂物性が低下し、30,000を越えると硬化性が悪くなる。
【0013】
前記のジイソシアネートとポリオールを、イソシアネート基/水酸基の当量比5/1〜100/1で反応させる。前記当量比が5/1未満であると、得られるポリイソシアネート組成物中のウレタン結合濃度が増加し、分子量分布も広がり、粘度が増加し、前記高分子量ポリオールを用いた場合、アロファネート結合が生成しにくい。また、100/1を越えると収率が低下し生産性上好ましくない。
【0014】
反応に際し、溶剤を用いても良いが、その場合はイソシアネートに不活性な溶剤を用いるのがよい。
反応温度は60〜200℃が好ましく、更に好ましくは120〜180℃である。反応温度が60℃未満では反応速度が遅いため生産性が悪く、アロファネート結合が生成し難い傾向があり、200℃を越えると着色などの副反応が起こる場合がある。
【0015】
反応に際して、触媒を用いることもできる。触媒としては、一般に塩基性を有するものが好ましく、▲1▼例えば、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩などの4級アミン化合物、▲2▼例えば、トリオクチルアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5などの3級アミン系化合物、▲3▼例えば、亜鉛などのアセチルアセトン金属塩など、亜鉛、錫、鉛、鉄など金属有機弱酸塩などのアロファネート化反応を促進する触媒が有効である。
【0016】
触媒濃度は、通常、イソシアネート化合物に対して10ppm〜1.0%の範囲から選択される。
反応液中に存在するウレタン結合の少なくとも一部はアロファネート結合に転換する。アロファネート結合/(ウレタン結合+アロファネート結合)が10%以上、好ましくは20%以上である。前記値が10%未満であると、硬化性などの良好な物性を得ることができない場合がある。アロファネート結合の形成はイソシアネート官能基数の増加をもたらし、湿気硬化性が飛躍的に向上する。
【0017】
反応後、未反応のジイソシアネート及び溶剤は、薄膜蒸留器、抽出等の方法により除去される。未反応ジイソシアネート濃度は最終的に通常1重量%以下となる。未反応ジイソシアネートが除去されたポリイソシアネート組成物を使用したシーリング材は、硬化する際の発泡が極めて少ないことは予想外であった。
特開平7−304724号報にアロファネート型ポリイソシアネートが例示されているが、本発明におけるような特定のポリオール及び湿気硬化物については記載も示唆もない。
【0018】
前記のように、イソシアネート基/水酸基の当量比の高い条件で製造されるポリイソシアネート組成物は、原料ポリオールがジイソシアネートで鎖延長された分子骨格が生成し難い。更に、ポリオール末端に形成されるウレタン結合の少なくとも1部がアロファネート結合に転換されたポリイソシアネート組成物は、分子末端がイソシアネート基2官能化された事を意味する。その湿気硬化物が優れた機械的伸び性と硬化性を併せ持つことは驚くべき事であった。
【0019】
更に、イソシアネート基/水酸基の当量比の高い状態で反応して得られるポリイソシアネート組成物は、前記当量比の低い状態で反応して得られるポリイソシアネート組成物に比べ、ポリオールに含まれるモノオールがジイソシアネートの両末端に反応付加した、官能基を有しない不活性な低分子化合物の生成量は、当然の事ながら格段に低下し、モノオールは分子内にイソシアネート基を有することになるので、このポリイソシアネート組成物を湿気硬化させた場合、ブリードアウト成分がほとんどない。
【0020】
収率は概ね20〜80重量%になる。
この様にして得られたアロファネート結合含有ポリイソシアネート組成物は下記の特徴を有する。
(1)イソシアネート濃度が0.5〜5重量%、
(2)25℃での粘度が1,000〜30,000mPa・s。
【0021】
本発明のポリイソシアネート組成物は、従来のものに比べ、イソシアネート基/水酸基の当量比が低く、かつ、未反応ジイソシアネートを除去しないポリイソシアネート組成物に比べ、格段の物性の違いを示した。
本発明のポリイソシアネート組成物に、溶剤、可塑剤、充填剤、揺変性付与剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、難燃剤等を必要に応じて配合し、湿気硬化型シーリング材となる。
【0022】
溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ペプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ガソリン、灯油等の石油系溶剤等がある。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸誘導体、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等がある。
【0023】
充填剤としては、ケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等がある。
揺変性付与剤としては、ベントン、無水ケイ酸、ケイ酸誘導体、尿素誘導体等がある。
硬化促進剤としては、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機亜鉛化合物、トリエチレンアミン、トリエチレンジアミン、ラウリルアミン、モルフォリン、ジアザビシクロシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン等のアミン化合物等があり、2種以上を併用しても良い。
【0024】
本発明のポリイソシアネート組成物は、シーリング材として、建築用、自動車用等に好適に使用できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、部は重量基準であり、測定法等は下記の通りである。
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−802A
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折率計
(粘度)
温度25℃の粘度をE型粘度計により測定した。
【0026】
(アロファネート結合濃度)
日本電子のFT−NMR「FX90Q」を用い、溶媒としてアセトン−d6を使用し、H−NMRの測定の結果、アロファネート結合とウレタン結合のピーク積算値を、アロファネート結合/(アロファネート結合+ウレタン結合)で表した値が20%以上をA、10%以上20%未満をB、10%未満をCとして表した。
【0027】
(破断強度、破断伸びの測定)
型枠に、ポリイソシアネート組成物を厚み1mmなるように流し込み、20℃、湿度65RH%、3週間放置後、20℃下、引っ張り速度60mm/分での破断強度、破断伸びを測定した。
【0028】
【実施例1】
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDIを300部、2価ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)の商標「プレミノール4010」、数平均分子量10,000)365部を仕込み(イソシアネート基/水酸基の当量比=50/1)、窒素雰囲気で、撹拌下反応器内温度を160℃に3時間保持した。反応液温度を下げ、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHMDIを除去した。
【0029】
得られたポリイソシアネートの分子量、アロファネート濃度、イソシアネート濃度、粘度、湿気硬化樹脂の破断強度、破断伸びの測定値を表1に示す。
【0030】
【実施例2〜4】
表1に示したポリオールを用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0031】
【実施例5】
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物100部、ジオクチルフタレート10部、炭酸カルシウム100部、ジブチル錫ジラウレート0.25部を混合し、湿気硬化性組成物を得た。硬化物の破断強度は0.10Kg/mm2 、破断伸度は650%であった。
【0032】
【比較例1〜5】
表1に示したポリオールを用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明のポリイソシアネート組成物は、建築、自動車などのシーリング材として、耐候性、低表面タック、耐汚染性、低粘度など優れた物性が得られる。
Claims (3)
- 脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートと、分子量6,000〜30,000、水酸基平均官能基数2〜3のポリオール(但し、アクリルポリオールを除く)を、イソシアネート基/水酸基の当量比が5/1〜100/1で反応させた後、未反応のジイソシアネート及び溶剤を実質的に除去してなり、かつ、下記(1)、(2)、(3)であることを特徴とするアロファネート結合含有ポリイソシアネート組成物。
(1)イソシアネート濃度;0.5〜5重量%
(2)25℃での粘度;1,000〜30,000mPa・s
(3)アロファネート結合/(ウレタン結合+アロファネート結合)が10%以上 - ポリオールがプロピレンオキサイド付加物であるポリエーテルポリオールである請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
- 請求項1または2記載のポリイソシアネート組成物を含む湿気硬化型シーリング材。
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