JP3957246B2 - 半導体素子封止用シートおよびそれを用いた半導体装置の製法ならびに半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子を封子するために用いられる半導体素子封子用シートおよびそれを用いた半導体装置の製法ならびに半導体装置に関するものであり、特にICカードに組み込まれる半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、樹脂封止型半導体装置は、一般に、半導体素子をトランスファー成形法にて樹脂封止する、あるいは、液状樹脂を用いてポッティング法にて樹脂封止することにより製造される。
【0003】
上記トランスファー成形法は、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物からなるタブレットを加熱して溶融させ、低圧トランスファー成形機を用いて金型に注入し、高温・高圧状態(160〜180℃×70〜100kg/cm2 )で成形してエポキシ樹脂組成物を硬化することにより半導体素子を樹脂封止する方法である。このトランスファー成形法にて得られる半導体装置の一例を図7に示す。すなわち、この半導体装置は、ダイパット6上に半導体素子7が搭載され、この半導体素子7とリードフレーム8とが金等のボンディングワイヤー9で接続されており、これら全体が封止樹脂層10により樹脂封止されている。
【0004】
上記トランスファー成形法は、半導体素子をエポキシ樹脂組成物によって完全に被覆し封止する、また金型で加圧状態で成形するため、得られた樹脂封止型半導体装置の信頼性に優れており、パッケージの外観も良好となる。したがって、現在では、殆どの樹脂封止型半導体装置は、このトランスファー成形法で製造されている。ところで、近年、半導体装置の薄型化、小型化が進んでおり、上記トランスファー成形法により得られるパッケージ構造の外形は、より小さくなる一方である。これに対して、封止される半導体素子は大型化の一途を辿っている。このことから、エポキシ樹脂組成物が金型内を流動する隙間が小さくなっており、これが原因となって、金ワイヤーの流れ不良や半導体素子を搭載したダイパットが傾斜する(ダイパットシフト)という不良を発生させているのが現状である。また、上記トランスファー成形法にて製造される半導体装置の厚みは、通常、3 mm程度であり、薄型化が要求される分野に対しても、厚み1.0〜1.4mm程度が限界である。例えば、ICカードに組み込まれる半導体装置は、より一層薄型化の要求が厳しく、上記トランスファー成形による半導体装置では、厚みが厚くこれら要求に応えることが困難である。
【0005】
一方、上記液状樹脂を用いたボンディング法は、半導体素子上に液状樹脂をディスペンサーで滴下し、アフターキュアーを行うことによって樹脂封止する方法である。このボンディング法にて得られる半導体装置の一例を図8〜図10に示す。図8に示す樹脂封止型半導体装置は、COB(チップオンボード)と呼ばれる形態の半導体装置であり、基板11上に半導体素子12が搭載されており、この半導体素子12搭載面側の片面を封止樹脂層13によって樹脂封止した半導体装置である。また、図9に示す樹脂封止型半導体装置は、TAB(テープオートメイティドボンディング)と呼ばれる形態の半導体装置であり、リード16が設けられた半導体素子15上の片面を封止樹脂層14によって樹脂封止した半導体装置である。さらに、図10に示す樹脂封止型半導体装置は、基板18内に半導体素子19を載置し、この半導体素子19載置面側を封止樹脂層17によって樹脂封止した半導体装置であり、通常、厚み0.5mm以下に設計される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記液状樹脂を用いたボンディング法では、滴下した液状樹脂の表面張力により樹脂表面に盛り上がりが発生する。また、半導体装置を完全に樹脂封止するには、過剰の液状樹脂を滴下する必要がある。この場合、前述の盛り上がりは、さらに大きくなり、パッケージの薄型化への大きな障壁となっている。また、得られた半導体装置の形状に画一性が無く、厚みや封止面積のばらつきが大きく、実装工程の自動化を阻害する一因となっている。さらに、片面を樹脂封止した構造となっているため、封止樹脂と半導体素子(または基板)との線膨張係数の違いによって、装置全体に反りが発生する可能性が高い。特に、図10に示すような、超薄型の半導体装置では、この反りの発生が致命的な欠陥となる。
【0007】
このように、上記液状樹脂を用いたボンディング法では、樹脂量の調節が難しく、薄型化が困難であり、しかも余剰樹脂の低減化のためにディスペンサーをセットした場合、未充填不良が多発するようになる。また、得られる半導体装置は、片面樹脂封止であるため、半導体素子と封止樹脂部分との線膨張係数の差に起因した反りが発生し易く、例えば、ICカード用の半導体装置として用いるには不適格であるといえる。
【0008】
このように、薄型化を志向しても、従来の封止方法では多くの問題が発生するため限界があった。また、上記図10に示すような超薄型の半導体装置では、樹脂封止を行っても、半導体装置の各構成材料の線膨張係数の差により、パッケージ全体に反りが発生し、実装基板、特にICカード等のような薄型化の要求の厳しい部品への装着が困難となるという致命的な欠陥があった。さらに、上記のように、樹脂のみで封止した場合、薄型のパッケージではその強度面での不安があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、パッケージの薄型化に対応し、反り等の発生を防止することができ、かつ余剰樹脂の発生の低減化が可能となる半導体素子封止用シートおよびそれを用いた半導体装置の製法ならびに半導体装置の提供をその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属箔からなる基材面上に、下記の(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層が形成されている半導体素子封止用シートを第1の要旨とする。
(A)下記の一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記の一般式(2)で表されるエポキシ樹脂、および、下記の一般式(3)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つのエポキシ樹脂。
【化4】
【化5】
【化6】
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤からなるコア部が、熱可塑性樹脂からなるシェル部で被覆されたコア/シェル構造を有する硬化促進剤含有マイクロカプセル。
【0011】
また、上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層と半導体素子とが対峙した状態で、半導体素子上に上記半導体素子封止用シートを配置する工程と、上記半導体素子と上記半導体素子封止用シートを接着させる工程と、上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層を加熱溶融する工程と、上記溶融状態の樹脂組成物層を硬化させて半導体素子を樹脂封止する工程とを備えた半導体装置の製法を第2の要旨とする。
【0012】
さらに、上記半導体装置の製法により得られた半導体装置であって、上記半導体素子の片面が上記(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる硬化体によって樹脂封止され、かつ上記硬化体表面に金属箔が配設されている半導体装置を第3の要旨とする。
【0013】
すなわち、本発明の半導体素子封止用シートは、金属箔の片面に特定のエポキシ樹脂および特殊な硬化促進剤含有マイクロカプセルを含むエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層が形成されている。このため、上記樹脂組成物層形成の際に、加熱工程を経ても硬化反応が生じず所望の未硬化状態の樹脂組成物層を容易に形成することができる。
【0014】
さらに、半導体素子と上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層を対峙させた状態で上記シートを配置した後、上記半導体素子と半導体素子封止用シートを接着させ、上記シートの樹脂組成物層を加熱溶融する。そして、溶融状態の樹脂組成物層を硬化させることにより半導体装置を容易に製造することができる。この際、上記加熱溶融時には硬化反応を進行させることなく、溶融状態の樹脂組成物を保持することができ、封止樹脂層を所望の厚みに形成することが可能となる。したがって、厚みの薄い薄型半導体装置を得ることができる。しかも、得られる半導体装置の片面には金属箔が配設されており、その結果、封止樹脂層を挟んで片面に半導体素子、他面に金属箔という位置関係となることから、従来のように、半導体素子と封止樹脂との線膨張係数の差に起因した反りの発生が防止され、しかも強度的にも優れたものが得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0016】
本発明の半導体素子封止用シートは、図1に示すように、金属箔1の片面にエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層2が形成された構成からなるシートである。上記エポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層2は、未硬化状態の熱硬化型の樹脂組成物層であり、上記未硬化状態とは、完全に硬化していない状態をいい、半硬化状態をも含む意味である。
【0017】
上記金属箔1材料としては、42ニッケルー鉄合金(42アロイ)、SUS304等のステンレス、アルミニウム、ニッケル等があげられる。なかでも、半導体素子と封止樹脂層の線膨張係数の差に起因した反りの発生を効果的に抑制することができるという点を考慮すると、半導体素子の線膨張係数に近似した線膨張係数2.5×10-6〜18×10-6/℃の範囲を有する金属箔材料が好ましく、特に好ましくは線膨張係数4.0×10-6〜18×10-6/℃の範囲である。具体的には、42ニッケルー鉄合金、SUS304等のステレンスを用いることが特に好ましい。
【0018】
上記金属箔1の片面に形成される樹脂組成物層2形成材料となるエポキシ樹脂組成物は、特定のエポキシ樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、特殊な硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)とを用いて得ることができ、常温で固体を示す。なお、上記常温とは25℃である。
【0019】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、下記の一般式(1),式(2),式(3)で表される構造のエポキシ樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
上記式(1)〜(3)で表される構造のエポキシ樹脂において、融点50〜150℃のものを用いることが好ましい。
【0024】
上記特定のエポキシ樹脂(A成分)とともに用いられる硬化剤(B成分)としては、特に限定するものではなく通常用いられている各種硬化剤、例えば、フェノール樹脂、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤があげられ、なかでもフェノール樹脂が好適に用いられる。上記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が用いられ、特に低粘度のものを用いることが好ましい。なかでも、水酸基当量が80〜120g/eqで、軟化点が80℃以下のものを用いることが好ましい。より好ましくは、水酸基当量90〜110g/eqで、軟化点50〜70℃である。特に好ましくは水酸基当量100〜110g/eqで、軟化点55〜65℃である。
【0025】
上記特定のエポキシ樹脂(A成分)と硬化剤(B成分)の配合割合は、硬化剤としてフェノール樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基当量を0.5〜1.6の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2の範囲に設定することである。
【0026】
上記A成分およびB成分とともに用いられる特殊な硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、硬化促進剤からなるコア部が、熱可塑性樹脂からなるシェル部で被覆されたコア/シェル構造を有するマイクロカプセルである。
【0027】
上記コア部として内包される硬化促進剤としては、特に限定するものではなく従来公知のものが用いられる。そして、この場合、マイクロカプセルを調製する際の作業性や得られるマイクロカプセルの特性の点から、常温で液状を有するものが好ましい。なお、常温で液状とは、硬化促進剤自身の性状が常温で液状を示す場合の他、常温で固体であっても任意の有機溶剤等に溶解もしくは分散させて液状にしたものをも含む。
【0028】
そして、上記硬化促進剤としては、例えば、アミン系、イミダゾール系、リン系、ホウ素系、リン−ホウ素系等の硬化促進剤があげられる。具体的には、エチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン等のアルキル置換グアニジン類、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等の3−置換フェニル−1,1−ジメチル尿素類、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン等のイミダゾリン類、2−アミノピリジン等のモノアミノピリジン類、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミン−N′−ラクトイミド等のアミンイミド系類、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン−5等のジアザビシクロアルケン系化合物等があげられる。なかでも、硬化促進剤含有マイクロカプセルの作製の容易さ、取扱いの容易さという点から、上記トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物やイミダゾール系化合物が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0029】
また、マイクロカプセルのシェル部(壁膜)内に内包することができる有機溶剤としては、常温で液状であれば特に限定するものではないが、少なくともシェル部(壁膜)を溶解しないものを選択する必要がある。具体的には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、塩化メチレン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶剤の他、フェニルキシリルエタン、ジアルキルナフタレン等のオイル類を用いることができる。
【0030】
上記シェル部(壁膜)を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレア、ポリウレタン、アミノ樹脂、アクリル樹脂等があげられる。なかでも、貯蔵時の安定性と、硬化物成形時のシェル部の破壊容易性等を考慮した場合、ポリウレアが好適である。
【0031】
上記ポリウレアとしては、特に下記の一般式(4)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする重合体が好ましい。
【0032】
【化10】
【0033】
上記のように、式(4)において、R1 ,R2 としては、水素原子または1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。
【0034】
上記式(4)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする重合体は、例えば、多価イソシアネート類と多価アミン類との重付加反応によって得られる。あるいは、多価イソシアネート類と水との反応によって得られる。
【0035】
上記多価イソシアネート類としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、具体的には、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等のトリイソシアネート類、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとプレンツカテコールとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリフェニルジメチレントリイソシアネート、テトラフェニルトリメチレンテトライソシアネート、ペンタフェニルテトラメチレンペンタイソシアネート、リジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネートの三量体のようなイソシアネートプレポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記多価イソシアネート類のなかでもマイクロカプセルを調製する際の造膜性や機械的強度の点から、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリフェニルジメチレントリイソシアネート等のポリメチレンポリフェニルイソシアネート類に代表されるイソシアネートプレポリマーを用いることが好ましい。
【0037】
一方、上記多価イソシアネート類と反応させる多価アミン類としては、分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、具体的にはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジアミン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
また、上記多価イソシアネート類と水との反応では、まず、多価イソシアネート類の加水分解によってアミンが形成され、このアミンが未反応のイソシアネート基と反応(いわゆる自己重付加反応)することによって、前記一般式(4)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする重合体が形成される。
【0039】
上記硬化促進剤含有マイクロカプセルは、マイクロカプセル化することができるならば特に限定するものではなく従来公知の各種方法にて調製することができる。特に界面重合法を用いて、シェル部(壁膜)を形成しマイクロカプセル化することが、シェル部(壁膜)の均質化や壁膜厚みの調整という観点から好ましい。
【0040】
上記界面重合法による硬化促進剤含有マイクロカプセルは、例えば、つぎのようにして得られる。すなわち、液状の硬化促進剤をコア成分として、ここに多価イソシアネート類を溶解させる。このようにして得られる溶液は油状であって、これを水相中に油相として油滴状に分散させてO/W型(油相/水相型)のエマルジョンを作製する。このとき、分散した各油滴の平均粒径は0.05〜50μm、好ましくは0.05〜10μm程度とすることが、重合中のエマルジョンの安定性の点から好ましい。
【0041】
一方、固体状の硬化促進剤を有機溶剤に溶解してコア成分とする場合には、S/O/W(固相/油相/水相)タイプのエマルジョンとなる。また、このエマルジョンタイプは硬化促進剤が親油性の場合であり、硬化促進剤が親水性を有する場合には上記エマルジョンタイプに形成され難いが、この場合には溶解度の調整を行うことによりO/O(油相/油相)型のエマルジョンタイプや、S/O/O(固相/油相/油相)型のエマルジョンタイプとして界面重合を行えばよい。
【0042】
ついで、上記エマルジョンの水相に、多価アミンや多価アルコールを添加することによって、油相中の多価イソシアネートとの間で界面重合させ重付加反応を行い、好ましくはポリウレア系の重合体をシェル部(壁膜)とする、硬化促進剤含有マイクロカプセルが得られる。
【0043】
このようにして得られた硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、コア/シェル構造の形態をとり、シェル部内にコア成分として硬化促進剤を内包してなるものである。そして、この硬化促進剤含有マイクロカプセルは、従来からの公知の手段、例えば、遠心分離後に乾燥したり、噴霧乾燥したりする手段によって単離することができる。また、例えば、上記熱硬化性樹脂や硬化剤中に溶解混合させることができる。この際、必要に応じてマイクロカプセル中の有機溶剤を減圧乾燥等の手段を併用して除去することもできる。
【0044】
この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の平均粒径は、後述のように、マイクロカプセル自身の安定性、エポキシ樹脂組成物の製造の際に加わる剪断力、均一分散性等を考慮して0.05〜10μmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜4μmの範囲である。さらに、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の最大粒径が20μm以下となるように設定することが好ましい。すなわち、硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の平均粒径を上記範囲に設定することにより、熱硬化性樹脂組成物の製造の際の剪断力によるマイクロカプセル破壊を抑制することができる。また、上記平均粒径とともに最大粒径を20μm以下に設定することにより、熱硬化性樹脂中への均一分散を図ることができる。なお、本発明において、この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の形状としては球状が好ましいが楕円状であってもよい。そして、このマイクロカプセルの形状が真球状ではなく楕円状や偏平状等のように一律に粒径が定まらない場合には、その最長径と最短径との単純平均値を平均粒径とする。
【0045】
この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)において、内包される硬化促進剤の量は、マイクロカプセル全量の5〜70重量%に設定することが好ましく、特に好ましくは10〜50重量%である。すなわち、硬化促進剤の内包量が5重量%未満では、硬化反応の時間が長過ぎて、反応性に乏しくなり、逆に硬化促進剤の内包量が70重量%を超えるとシェル部(壁膜)の厚みが薄過ぎて内包される硬化促進剤(コア成分)の隔離性や機械的強度に乏しくなる恐れがあるからである。
【0046】
また、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の粒径に対するシェル部(壁膜)厚みの比率は3〜25%に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜25%に設定される。すなわち、上記比率が3%未満では熱硬化性樹脂組成物製造時の混練工程において加わる剪断力に対して充分な機械的強度が得られず、また、25%を超えると内包される硬化促進剤の放出が不充分となる傾向がみられるからである。
【0047】
そして、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の配合量は、エポキシ樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して1〜30部に設定することが好ましい。特に好ましくは5〜25部の割合である。すなわち、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の配合量が、1部未満のように少な過ぎると、硬化速度が遅過ぎて強度の低下を引き起こし、30部を超え多くなると、硬化速度が速過ぎて流動性が損なわれる傾向がみられるからである。
【0048】
上記エポキシ樹脂組成物には、A〜C成分とともに、通常、従来から用いられている各種無機質充填剤、例えば、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末、炭酸カルシウム、チタン白等が用いられる。なかでも、球状シリカ粉末、破砕状シリカ粉末が好ましく用いられ、特に流動性という観点から、球状の溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。そして、上記無機質充填剤としては、最大粒径が100μm以下のものを用いることが好ましい。特に好ましくは最大粒径が50μm以下である。また、上記最大粒径とともに、レーザー式粒度測定機による平均粒径が1〜20μmのものを用いることが好ましく、特に好ましくは2〜10μmである。
【0049】
上記無機質充填剤の含有割合は、エポキシ樹脂組成物全体の93重量%以下の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは20〜90重量%であり、特に好ましくは55〜85重量%である。すなわち、無機質充填剤の含有量が20重量%未満では、封止用樹脂硬化物の特性、特に線膨張係数が大きくなり、このため、半導体素子と上記係数との差が大きくなって、樹脂硬化物や半導体素子にクラック等の欠陥を発生させるおそれがある。また、93重量%を超えると、封止用樹脂の溶融粘度が高くなることから充填性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0050】
さらに、上記エポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分および無機質充填剤以外に、必要に応じて、シリコーン化合物(側鎖エチレングライコールタイプジメチルシロキサン等),アクリロニトリルーブタジエンゴム等の低応力化剤、難燃剤、ポリエチレン、カルナバ等のワックス、シランカップリング剤(γ一グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)等のカップリング剤、水酸化ビスマスやハイドロタルサイト類化合物等のイオントラップ剤等を適宜に配合してもよい。
【0051】
上記難燃剤としては、ブロム化エポキシ樹脂等があげられ、これに三酸化二アンチモン等の難燃助剤等が用いられる。
【0052】
本発明に用いられる上記エポキシ樹脂組成物は、例えばつぎのようにして得られる。まず、特定のエポキシ樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)および他の添加剤を配合し、ミキシンクロール、二軸押出機、ニーダ等を用いて予備混練する。一方、先に述べた製法にしたがって硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を作製する。ついで、上記予備混練で得られたものに、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)および残りの配合成分を添加し、上記マイクロカプセル破壊温度より低い温度で均一に混合する。このようにして上記エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0053】
上記のようにして得られるエポキシ樹脂組成物において、含有される硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、通常、硬化促進剤含有マイクロカプセルの仕込み量(配合量)全体中の少なくとも0.2重量%残存している。
【0054】
つぎに、本発明の半導体素子封止用シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前記金属箔の片面にエポキシ樹脂組成物を配し、圧延によって樹脂組成物層を形成する、あるいは前記金属箔の片面にホットメルト塗工を行い樹脂組成物層を形成する。また、スクリーン印刷の手法にしたがい、金属箔表面の所定部分に樹脂組成物層を形成する。さらに、金属箔面にディスペンサーを用いてエポキシ樹脂組成物を滴下して所定の厚みに延ばし樹脂組成物層を形成する。このようにして半導体素子封止用シートを作製することができる。なお、上記ディスペンサーを用いて樹脂組成物層を形成することはできるが、定量精度を考慮した場合、上記スクリーン印刷により形成することが好ましい。
【0055】
そして、予め、樹脂組成物層のみのシート状物を作製し、これを所定に形状に切断した後、この切断物を金属箔に貼付することにより半導体素子封止用シートを作製することができる。上記樹脂組成物層のみのシート状物を作製する方法としては、例えば、離型紙(セパレーター)上に圧延によって所定の厚みの樹脂組成物層を形成することにより作製することができる。また、離型紙(セパレーター)上にホットメルト塗工することによっても所定の厚みの樹脂組成物層を形成することにより作製することができる。
【0056】
さらに、上記のようにして得られた半導体素子封止用シートを、半導体装置の形状等に合わせて、所定の形状に打ち抜く、あるいは切断等してもよい。上記打ち抜き方法としては、トムソン刃を用いる方法や、金型を用いる方法等があげられるが、打ち抜き時に発生する「かえり」等の問題を考慮した場合、金型を用いる方法が好ましい。
【0057】
上記半導体素子封止用シートにおける金属箔の厚みは、6〜150μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは20〜100μmである。また、上記樹脂組成物層の厚みは、50〜300μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは80〜200μmである。したがって、半導体素子封止用シートの全体の総厚みは、56〜450μmの範囲に設定され、好ましくは総厚み100〜300μmである。
【0058】
さらに、上記半導体素子封止用シートの金属箔および樹脂組成物層の大きさ(面積)は、封止対象となる半導体素子の大きさ、封止すべき配線部分等によって適宜設定されるが、通常、金属箔は1×1〜50×50mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2×2〜30×30mmである。なお、上記半導体素子封止用シートにおいて、金属箔と樹脂組成物層の面積の関係は、図1に示すように、樹脂組成物層の面積が金属箔の面積よりも小さくなるような設定に限定されるものではなく、樹脂組成物層の面積と金属箔の面積とが同等となるよう設定してもよい。
【0059】
つぎに、上記半導体素子封止用シートを用いた半導体装置の製法の一例を図面に基づき順を追って具体的に説明する。
【0060】
まず、図2に示すように、金型20内に、絶縁層24形成済みのリード23が設けられた半導体素子22を配置する。一方、半導体素子22の上方に、上記半導体素子22と樹脂組成物層2とが対峙した状態で、吸着ヘッド21に半導体素子封止用シート26を装着させ配置する。
【0061】
つぎに、図3に示すように、上記吸着ヘッド21に装着した半導体素子封止用シート26を、金型20に配置された半導体素子22に圧着させるとともに、吸着ヘッド21内に内蔵されたヒータで半導体素子封止用シート26を加熱して樹脂組成物層2を加熱溶融させる。そして、上記金型20と吸着ヘッド21との距離が所定間隔となった状態で保持する。ついで、上記樹脂組成物層2を加熱硬化させ、金型20から脱型する。このようにして、図4に示すように、半導体素子22の片面側が封止樹脂層27によって樹脂封止され、さらに封止樹脂層27表面に金属箔1が設けられた半導体装置を得ることができる。
【0062】
上記製造工程において、上記金型20と吸着ヘッド21とを所定間隔で保持する距離が得られる半導体装置の厚みとなり、この保持時間は、樹脂封止層がゲル化するまででよく、通常、175℃で1〜2分程度、200℃で30〜60秒程度である。また、この際の加圧条件としては、0.005〜1kg/cm2 に設定することが好ましい。
【0063】
上記製法においては、保持する所定間隔を適宜に設定することが可能となり、例えば、厚みの薄い、厚み0.3〜0.7mmの半導体装置を得ることができる。
【0064】
また、上記半導体装置の製法において、樹脂組成物層を加熱して硬化させる際の加熱温度としては、半導体素子22の劣化等を考慮して70〜300℃の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは120〜200℃である。そして、加熱方法としては、上記製法では各吸着ヘッド21に内蔵されたヒーターが用いられるが、これに限定するものではなく、赤外線リフロー炉、乾燥機、温風機、熱板等を用いることもできる。
【0065】
上記半導体素子封止用シートを用いて封止することにより形成される封止樹脂層27、すなわち、上記樹脂組成物層2の特性としては、各使用温度での溶融粘度が1〜200poise、ゲルタイムが150℃において1〜15分、その硬化物としては、線膨脹係数が8×10-6〜70×10-6/℃であることが好ましい。より好ましくは溶融粘度が1〜100poise、ゲルタイムが150℃において1〜12分間、線膨脹係数が10×10-6〜30×10-6/℃である。すなわち、溶融粘度が上記範囲内に設定されることにより、充填性が良好となる。また、ゲルタイムが上記範囲内に設定されることにより、成形作業性、特に硬化時間の短縮が可能となる。さらに、線膨脹係数が上記範囲内に設定されることにより、樹脂硬化体や半導体素子にクラック等の応力による欠陥防止が可能となる。なお、上記溶融粘度は、ICI型コーンプレート粘度計により測定し、上記ゲルタイムは熱板上にて測定した。また、線膨脹係数は、熱機械分析(TMA)により測定した。
【0066】
なお、本発明の半導体素子封止用シートを用いて製造される半導体装置としては、上記図4に示す形態に限定するものではなく、例えば、他の例として、図5に示す形態の半導体装置があげられる。すなわち、図5に示すように、基板29上に載置された半導体素子23の、半導体素子23載置面側のみを封止樹脂層30で樹脂封止し、さらにこの封止樹脂層30面上に金属箔31が設けられた片面封止タイプの半導体装置があげられる。図5において、32はリードである。このようなタイプの半導体装置における上記基板29としては、フレキシブルプリント基板等があげられる。
【0067】
さらに、本発明の半導体素子封止用シートを用いて製造される半導体装置の他の例を、図6に示す。すなわち、この半導体装置は、基板33内に設けられた半導体素子23上の片面のみを封止樹脂層34で樹脂封止し、さらにこの封止樹脂層34面上に金属箔31が設けられた片面封止タイプの半導体装置である。図6において、35はリードである。
【0068】
このようにして得られる半導体装置は、上記半導体素子封止用シートを用いて製造されるため、従来では困難であった薄型を容易に製造することが可能となる。例えば、厚みが0.1〜0.3mm程度の薄型の半導体装置を得ることができる。そして、このような薄型の半導体装置の用途としては、近年特に様々な電子機器分野に使用されるが、なかでもICカード用等の用途に最適である。
【0069】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0070】
まず、実施例に先立って、下記に示す各成分を準備した。
【0071】
〔エポキシ樹脂a〕
ヒドロキノン型エポキシ樹脂(前記式(2)で表されるエポキシ樹脂、エポキシ当量:173g/eq、融点:138℃)〕
【0072】
〔エポキシ樹脂b〕
ビフェニル型エポキシ樹脂〔前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(R1 〜R4 は全てメチル基)エポキシ当量:195g/eq、融点:108℃〕
【0073】
〔フェノール樹脂a〕
ノボラックフェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq、軟化点:64℃)
【0074】
〔難燃剤〕
臭素化エポキシ樹脂(臭素含有量48重量%、エポキシ当量:460g/eq)
【0075】
〔難燃助剤〕
三酸化二アンチモン
【0076】
〔ハイドロタルサイト化合物〕
DHT−4A、協和化学社製
【0077】
〔無機質充填剤〕
球状溶融シリカ粉末(平均粒径10μm、最大粒径50μm以下)
【0078】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルc1〕
前述の界面重合法にて作製した。すなわち、より詳しく述べると、キシリレンジイソシアネート3モルと、トリメチロールプロパン1モルとの付加物10部を、硬化剤としてのトリフェニルホスフィン4部に均一に溶解させて油相を調製した。また、蒸留水95部とポリビニルアルコール5部からなる水相を別途調製し、このなかに上記調製した油相を添加してホモミキサー(8000rpm)にて乳化しエマルジョン状態にし、これを還流管、撹枠機、滴下ロートを備えた重合反応器に仕込んだ。
【0079】
一方、トリエチレンテトラミン3部を含む水溶液13部を調製し、これを上記重合反応器に備えた滴下ロート内に入れ、反応器中のエマルジョンに滴下して70℃で3時間重合を行い、マイクロカプセルc1を作製した。このようにしてトリフェニルホスフィンを内包したポリウレアシェル〔粒径に対するシェル厚み比率20%:R1 が水素、R2 が水素である前記式(4)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする〕構造のマイクロカプセルc1を製造した(平均粒径1μmで、最大粒径8μm) 。
【0080】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルc2〕
前述の界面重合法にて作製した。作製方法は、上述と同一であるが、乳化しエマルジョンを作製する際のホモミキサーを3000rpmで行った。このようにしてトリフェニルホスフィンを内包したポリウレアシェル〔粒径に対するシェル厚み比率20%:R1 が水素、R2 が水素である前記式(4)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする〕構造のマイクロカプセルc2を製造した(平均粒径15μmで、最大粒径30μm) 。
【0081】
【実施例1〜4、比較例】
(1)予備混練工程
上記各成分を用い、下記の表1に示す割合で各成分を配合し、二軸押出機を用いて、予備混練を行った。
【0082】
(2)釜練り工程
つぎに、上記予備混練工程で得られた予備混練物に、下記表1に示す割合となるよう各成分を配合して、釜を用いて釜練りを行うことによりエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0083】
【表1】
【0084】
(3)半導体素子封止用シートの作製
上記エポキシ樹脂組成物を用い、つぎのようにして半導体素子封止用シートを作製した。すなわち、上記エポキシ樹脂組成物を用いスクリーン印刷により厚み50μmの42ニッケル−鉄合金箔(線膨張係数4.4×10-6/℃)面に厚み150μmの樹脂組成物層を形成した。このようにして半導体素子封止用シートを作製した。
【0085】
なお、比較例として、上記実施例1のエポキシ樹脂組成物を用い、このエポキシ樹脂組成物のみ(42ニッケル−鉄合金箔無し)からなる半導体素子封止用シートを作製した。すなわち、離型紙(セパレータ上)にスクリーン印刷を行って、封止樹脂のみからなるシートを作製した。また、通常の硬化促進剤を用いて半導体素子封止用シートを作製しようと試みたが硬化反応が進行するために、封止材料として適さず下記に示す評価試験に供することはできなかった。
【0086】
これら得られた半導体素子封止用シートを後述の評価試験に供した。
【0087】
このようにして得られた半導体素子封止用シートを用い、前述の半導体装置の製法に従って半導体装置を製造した。すなわち、図2に示すように、金型20内に、絶縁層24形成済みのリード23が設けられた半導体素子22(大きさ:14×14mm)を配置した。一方、上記半導体素子22の上方に、上記半導体素子22と樹脂組成物層2とが対峙した状態で、吸着ヘッド21に半導体素子封止用シート26を装着した。
【0088】
つぎに、図3に示すように、上記吸着ヘッド21に装着した半導体素子封止用シート26を、金型20に配置された半導体素子22に圧着させるとともに、吸着ヘッド21内に内蔵されたヒータで半導体素子封止用シート26を加熱して樹脂組成物層2を加熱溶融させた(加圧・加熱条件:0.1kg/cm2 、175℃)。そして、上記金型20と吸着ヘッド21との距離が0.5mmとなった状態で保持した後、上記樹脂組成物層2を加熱硬化(硬化条件:175℃×2分間)させ、金型20から脱型した。このようにして、図4に示すように、半導体素子22の片面側が封止樹脂層27によって樹脂封止され、さらに樹脂封止面側に42ニッケル−鉄合金箔1が設けられた半導体装置(厚み0.6mm)を作製した。なお、比較例については、樹脂封止層27のみが形成され42ニッケル−鉄合金箔1は無く、半導体装置の厚みは0.6mmであった。
【0089】
得られた厚み0.6mmの半導体装置について、プレッシャークッカーテスト〔PCTテスト(条件:121℃×2atm×100%RHで200時間放置)〕を行った後に通電チェックを行った。そして、不良が発生した割合(不良発生率)を算出した。この不良発生率とともに、不良が発生したものを×、全く不良が発生しなかったものを○として表示した。
【0090】
また、得られた半導体装置の反り発生の有無をつぎのようにして測定・評価した。すなわち、表面粗さ計を用いて、パッケージ表面の平滑性(反り量)を測定・評価した。その結果、反りの発生が全く確認されなかったものを反りの発生無し、反りの発生が確認されたものを反りの発生有りと表示した。
【0091】
これらの結果を下記の表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
上記表2の結果から、実施例品は、反りも発生せず良好な薄型の半導体装置が、得られたことがわかる。これに対して、比較例では、42ニッケル−鉄合金箔を用いず、樹脂組成物シートのみで封止したため、反りが発生した。
【0094】
さらに、上記42ニッケル−鉄合金箔に代えて、厚み50μmのステンレス箔(SUS304:線膨張係数17.3×10-6/℃)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして半導体装置を作製した。その結果、上記実施例1と略同等の、反りの発生もなく良好な薄型半導体装置(厚み0.6μm)が得られた。
【0095】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、金属箔からなる基材面上に、特定のエポキシ樹脂(A成分)および特殊な硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を含有するエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層が形成された半導体素子封止用シートである。このように、上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層中に上記特殊な硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を含有するため、シート作製時の加熱等によっても硬化反応を進行させることなく容易に半導体封止用シートを製造することができる。さらに、上記半導体素子封止用シートには、半導体素子の樹脂封止時において、余剰の樹脂分を生じさせないよう、必要最小限の樹脂量からなる樹脂組成物層を形成することができるため、半導体装置製造時には余剰樹脂の発生を抑制することができる。
【0096】
そして、上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層と半導体素子とを対峙させた状態で半導体素子封止用シートを配置した後、上記半導体素子と上記半導体素子封止用シートを接着させるとともに上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層を加熱溶融した後、溶融状態の樹脂組成物層を硬化させることにより半導体装置を製造することができる。したがって、煩雑な工程を経由することなく容易に半導体装置を製造することができる。また、この際、上記加熱溶融時には硬化反応を進行させることなく、溶融状態の樹脂組成物を保持することができ、所望の厚みに封止樹脂層を設定することが可能となり薄型の半導体装置を製造することが容易となる。
【0097】
しかも、得られる半導体装置の樹脂封止面には金属箔が設けられており、反り等の発生が防止されて強度的にも優れた半導体装置が得られる。したがって、このような半導体素子封止用シートを用いて得られる半導体装置としては、近年の薄型化傾向の用途として有効であり、例えば、ICカード等に組み込まれる半導体装置の製造に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体素子封止用シートの一例を示す斜視図である。
【図2】 本発明の半導体素子封止用シートを用いた半導体装置の製造工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】 本発明の半導体素子封止用シートを用いた半導体装置の製造工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】 上記半導体装置の製造工程を経由して得られた半導体装置の一例を示す断面図である。
【図5】 本発明の半導体素子封止用シートを用いて得られる半導体装置の他の例を示す断面図である。
【図6】 本発明の半導体素子封止用シートを用いて得られる半導体装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図7】 従来のトランスファー成形法により得られた半導体装置を示す断面図である。
【図8】 従来のポッティング法により得られた半導体装置を示す断面図である。
【図9】 従来のポッティング法により得られた半導体装置を示す断面図である。
【図10】 従来のポッティング法により得られた半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 金属箔
2 樹脂組成物層
20 金型
21 吸着ヘッド
22 半導体素子
26 半導体素子封止用シート
27 封止樹脂層
Claims (6)
- 上記金属箔が、線膨張係数2.5×10-6〜18×10-6/℃の範囲を有する金属からなるものである請求項1記載の半導体素子封止用シート。
- 上記金属箔が、42ニッケル−鉄合金またはステンレスである請求項1または2記載の半導体素子封止用シート。
- 上記金属箔の厚みが6〜150μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体素子封止用シート。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体素子封止用シートの樹脂組成物層と半導体素子とが対峙した状態で、半導体素子上に上記半導体素子封止用シートを配置する工程と、上記半導体素子と上記半導体素子封止用シートを接着させる工程と、上記半導体素子封止用シートの樹脂組成物層を加熱溶融する工程と、上記溶融状態の樹脂組成物層を硬化させて半導体素子を樹脂封止する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製法。
- 請求項5記載の半導体装置の製法により得られた半導体装置であって、上記半導体素子の片面が上記(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる硬化体によって樹脂封止され、かつ上記硬化体表面に金属箔が配設されていることを特徴とする半導体装置。
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