JP3956953B2 - 動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法 - Google Patents

動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法に関し、詳しくは、筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力可能な動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びにこうした動力出力装置の制御方法に関する。
従来、この種の動力出力装置としては、筒内噴射式の内燃機関を自動停止する直前に燃料噴射弁への燃料供給圧(燃圧)を高くするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、内燃機関を自動停止する直前に燃圧を高くすることにより、次の自動始動直後に圧縮行程でも燃料噴射を可能とし、燃費の向上を図っている。
特開2001−317389号公報
停車中の内燃機関のアイドリング運転を停止するアイドルストップ制御やハイブリッド自動車における内燃機関の間欠運転では、頻繁に内燃機関の運転を自動停止すると共に自動始動する場合が生じる。このとき、上述の装置のように自動停止する毎にその直前に燃圧を高くすることも考えられるが、燃料噴射弁への燃料供給を電動ポンプにより行なう構成では、電動ポンプを駆動するだけで燃圧を高くすることができるため、自動停止する直前に燃圧を高くしなくても自動始動する際に燃圧を高くすることもできる。このとき、電動ポンプに十分な電力を供給することができればよいが、他の機器への電力供給のために電動ポンプに十分な電力供給を行なうことができない場合も生じる。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力を迅速に高めることを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力をより確実に高められるようにすることを目的の一つとする。さらに、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力を十分に高めることができないときでも内燃機関を始動することを目的の一つとする。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力可能な動力出力装置であって、
電力の供給を受けて燃料を加圧して前記筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段と、
該燃料加圧供給手段を電力の供給先の一つとして電力供給する電力供給手段と、
所定の停止条件が成立したときには前記内燃機関の運転を自動停止し、所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段から他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する自動停止始動手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、所定の停止条件が成立したときには筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関を自動停止し、所定の始動条件が成立したときには電力供給手段から他の供給先に優先して燃料を加圧して筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段に電力供給を行なって自動停止した内燃機関を自動始動する。この結果、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力をより確実に迅速に高めることができる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記内燃機関は吸気管に燃料を噴射する吸気管用燃料噴射弁を備え、前記自動始動停止手段は前記内燃機関を自動始動する際には前記吸気管用燃料噴射弁からの燃料噴射に優先して前記筒内用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動する手段であるものとすることもできる。こうすれば、筒内用燃料噴射弁と吸気管用燃料噴射弁とを有する内燃機関の自動始動を筒内用燃料噴射弁からの燃料噴射を優先して行なうことができる。この場合、前記自動停止始動手段は、前記内燃機関を自動始動する際に前記電力供給手段からの電力が不足するときには前記吸気管用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電力供給手段からの電力が不足するときでも内燃機関をより確実に自動始動することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記電力供給手段からの電力を用いて前記駆動軸に動力を出力可能な電動機を備え、前記自動停止始動手段は前記所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段からの前記電動機への電力供給を除く他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関を自動始動する際でも電動機から駆動軸へ動力を出力することができる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、該設定した要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、を備えるものとすることもできる。こうすれば、要求動力に基づく動力を駆動軸に出力することができる。
本発明の自動車は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力可能な動力出力装置であって、電力の供給を受けて燃料を加圧して前記筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段と、該燃料加圧供給手段を電力の供給先の一つとして電力供給する電力供給手段と、所定の停止条件が成立したときには前記内燃機関の運転を自動停止し、所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段から他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する自動停止始動手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
この本発明の自動車では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力をより確実に迅速に高めることができる効果などと同様な効果を奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関と、電力の供給を受けて燃料を加圧して前記筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段と、該燃料加圧供給手段を電力の供給先の一つとして電力供給する電力供給手段と、を備え、前記内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、
(a)所定の停止条件が成立したときには前記内燃機関の運転を自動停止し、
(b)所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段から他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する
ことを要旨とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、所定の停止条件が成立したときには筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関を自動停止し、所定の始動条件が成立したときには電力供給手段から他の供給先に優先して燃料を加圧して筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段に電力供給を行なって自動停止した内燃機関を自動始動するから、内燃機関を自動始動する際に筒内用燃料噴射弁への燃料の圧力をより確実に迅速に高めることができる。
こうした本発明の動力出力装置の制御方法において、前記内燃機関は吸気管に燃料を噴射する吸気管用燃料噴射弁を備え、前記ステップ(b)は前記吸気管用燃料噴射弁からの燃料噴射に優先して前記筒内用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動するステップであるものとすることもできる。こうすれば、筒内用燃料噴射弁と吸気管用燃料噴射弁とを有する内燃機関の自動始動を筒内用燃料噴射弁からの燃料噴射を優先して行なうことができる。この場合、前記ステップ(b)は、前記電力供給手段からの電力が不足するときには前記吸気管用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動するステップであるものとすることもできる。こうすれば、電力供給手段からの電力が不足するときでも内燃機関をより確実に自動始動することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結するキャリア34が接続されると共にギヤ機構37とデファレンシャルギヤ38を介して駆動輪39a、39bにリングギヤ32が連結されたリングギヤ軸32aが接続された遊星歯車30と、この遊星歯車30のサンギヤ31に接続された発電可能なモータMG1と、遊星歯車30のリングギヤ32にリングギヤ軸32aと減速ギヤ35とを介して接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、図2に示すように、筒内に直接ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料を噴射する筒内用燃料噴射バルブ125(図1には125a〜125dと表示)と、吸気ポートに燃料を噴射するポート用燃料噴射バルブ126(図1には126a〜126dと表示)とを備える内燃機関として構成されている。エンジン22は、こうした二種類の燃料噴射バルブ125,126を備えることにより、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共にポート用燃料噴射バルブ126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換するポート噴射駆動モードと、同様にして空気を燃焼室に吸入し、吸気行程の途中あるいは圧縮行程に至ってから筒内用燃料噴射バルブ125から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させてクランクシャフト26の回転運動を得る筒内噴射駆動モードと、空気を燃焼室に燃焼する際にポート用燃料噴射バルブ126から燃料噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で筒内用燃料噴射バルブ125から燃料噴射してクランクシャフト26の回転運動を得る共用噴射駆動モードと、のいずれかの駆動モードにより運転制御される。これらの駆動モードは、エンジン22の運転状態やエンジン22に要求される運転状態などに基づいて切り替えられる。なお、エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
図1に示すように、ポート用燃料噴射バルブ126a〜126dには、燃料ポンプ62により燃料タンク60の燃料が供給されている。筒内用燃料噴射弁125a〜125dには、燃料タンク60から燃料ポンプ62により供給され高圧燃料ポンプ64により加圧された燃料がデリバリパイプ66によって供給されている。なお、燃料ポンプ62や高圧燃料ポンプ64のアクチュエータとしての電動機62a,64aには、DC/DCコンバータ90を介してバッテリ50からの電力が供給されている。なお、DC/DCコンバータ90には、車両に取り付けられた低圧系の補機92も接続されている。また、図示しないが、高圧燃料ポンプ64の吐出側には燃料の逆流を防止すると共にデリバリパイプ66内の燃料圧力を保持するチェックバルブが取り付けられている。デリバリパイプ66は、燃料圧力が過剰となるのを防止するリリーフバルブ67を介して燃料を燃料タンク60に戻すリリーフパイプ68が取り付けられている。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24には、エンジン22の状態などを検出する種々のセンサからの信号が図示しない入力ポートを介して入力されている。例えば、エンジンECU24には、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,エンジン22の負荷としての吸入空気量を検出するバキュームセンサ148からの吸入空気量,筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dに燃料を供給するデリバリパイプに取り付けられた燃圧センサ69からの燃圧などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号が図示しない出力ポートを介して出力されている。例えば、エンジンECU24からは、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dやポート用燃料噴射バルブ126a〜126dへの駆動信号やスロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号,吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号,燃料ポンプ62や高圧燃料ポンプ64の電動機62a,64aへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介して電力ライン54により接続されたバッテリ50と電力のやりとりを行なう。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。なお、このバッテリ50の電力ライン54には、補機用駆動回路94を介して乗員室の空調機器におけるエアコンプレッサなどの高圧系の補機96が接続されている。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。ここで、トルク変換運転モードは、充放電運転モードにおいてバッテリ50の充放電電力が値0のときであるから、充放電運転モードの一態様として考えることができる。したがって、実施例のハイブリッド自動車20は、モータ運転モードと充放電運転モードとを切り替えて走行することになる。なお、充放電運転モードにおけるエンジン22の運転は、上述したように、ポート噴射駆動モードと筒内噴射駆動モードと共用噴射駆動モードとを切り替えて行なわれる。
次に、実施例のハイブリッド自動車20におけるモータ運転モードから充放電運転モードへ切り替えるときにエンジン22を自動始動の際の動作について説明する。図3は、エンジン22を自動始動する際にハイブリッド用電子制御ユニット70で実行される自動始動指示ルーチンの一例を示すフローチャートである。この自動始動指示ルーチンは、エンジン22の自動始動の条件が成立したときに、直ちに実行されるしたがって、運転者のアクセルペダル83の踏み込みに応じてモータMG2を駆動制御すると共にエンジン22をクランキングするためにモータMG1とモータMG2とを駆動制御する始動時駆動制御ルーチンに先立って或いは並行して実行されるから、エンジン22のクランキングに要する時間を考慮すれば、クランキングを開始した直後には終了していることになる。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、充放電運転モードで動作している最中に、バッテリ50の残容量(SOC)が管理領域内にあり、運転者のアクセルペダル83の踏み込みに応じて設定される車両要求パワーが第1の所定値(例えば、2kWや3kW,5kW,7kW,10kWなど)未満となったときにエンジン22の自動停止の条件が成立したとして、エンジン22を自動停止してモータ運転モードに切り替え、モータ運転モードで動作している最中に運転者のアクセルペダル83の踏み込みに応じて設定される車両要求パワーが第1の所定値より大きな第2の所定値(例えば、4kWや5kW,8kW,10kW,15kWなど)以上となったときやバッテリ50の残容量(SOC)が管理領域を下回ったときにエンジン22の自動始動の条件が成立したとして、自動停止したエンジン22を自動始動して充放電運転モードに切り替える。
自動始動指示ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、バッテリ50の出力制限Woutと供給電力Wbとを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、バッテリ50の出力制限Woutについてはバッテリ50の電池温度Tbと残容量(SOC)とに基づいて計算されたものを、供給電力Wbについてはバッテリ50の出力電圧と充放電電流との積として計算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。こうして、出力制限Woutと供給電力Wbとを入力すると、出力制限Woutから供給電力Wbを減じて出力可能電力Pbを計算し(ステップS110)、この出力可能電力Pbが閾値Pset以上であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、閾値Psetは、エンジン22をクランキングすると共に燃料ポンプ62および高圧燃料ポンプ64を駆動するのに十分な電力として設定されている。出力可能電力Pbが閾値Pset以上のときには、エンジン22を始動するのに十分な電力の供給を行なうことができると判断し、高圧燃料ポンプ64が駆動するよう駆動指示をエンジンECU24に出力すると共に、(ステップS170)、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動をエンジンECU24に指示して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。こうした指示によりクランキングが開始されたエンジン22に対してエンジンECU24は、燃料ポンプ62と高圧燃料ポンプ64を駆動するために電動機62a,64aを駆動し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref(例えば、600rpmや800rpm,1000rpmなど)に至ったときに筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射制御と点火プラグ130の点火制御とを開始してエンジン22を始動する。
一方、出力可能電力Pbが閾値Pset未満の時には、高圧系の補機96や低圧系の補機92などのうちエンジン22の始動が完了するまで駆動停止することができる補機(例えば、乗員室の空調機器におけるエアコンプレッサなど)を駆動停止したときに推定される推定供給電力Wb2を計算すると共に(ステップS130)、出力制限Woutからこの推定供給電力Wb2を減じて推定出力可能電力Pb2を計算し(ステップS140)、推定出力可能電力Pb2を閾値Psetと比較する(ステップS150)。推定出力可能電力Pb2が閾値Pset以上のときには、駆動停止可能な補機を駆動停止すればエンジン22を始動するのに十分な電力の供給を行なうことができると判断し、駆動停止可能な補機を駆動停止し(ステップS160)、高圧燃料ポンプ64が駆動するよう駆動指示をエンジンECU24に出力すると共に、(ステップS170)、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動をエンジンECU24に指示して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。即ち、他の補機に優先して高圧燃料ポンプ64の電動機64aに電力供給してエンジン22を始動するのである。こうした指示によりクランキングが開始されたエンジン22に対してエンジンECU24は、上述したように、燃料ポンプ62と高圧燃料ポンプ64を駆動するために電動機62a,64aを駆動し、エンジン22の回転数Neが閾値Nrefに至ったときに筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射制御と点火プラグ130の点火制御とを開始してエンジン22を始動する。
ステップS150で推定出力可能電力Pb2が閾値Pset未満のときには、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動は不適切と判断し、ポート用燃料噴射バルブ126a〜126dからの燃料噴射によるエンジン22の始動をエンジンECU24に指示して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。こうした指示によりクランキングが開始されたエンジン22に対してエンジンECU24は、燃料ポンプ62を駆動するために電動機62aだけを駆動し、エンジン22の回転数Neが閾値Nrefに至ったときにポート用燃料噴射バルブ126a〜126dからの燃料噴射制御と点火プラグ130の点火制御とを開始してエンジン22を始動する。
このように自動停止したエンジン22を自動始動する際に筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動を優先するのは、エンジン22の始動時における初爆時のショックを小さくしたり浄化装置134における触媒の暖機を迅速に行なうための点火時期の遅角を大きくするためである。これは、筒内噴射によるエンジン22の始動の方がポート噴射によるエンジン22の始動に比して失火による点火時期遅角限界が大きいことに基づく。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、自動停止したエンジン22を自動始動する際には、他の補機に優先して高圧燃料ポンプ64の電動機64aに電力供給するから、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dへのデリバリパイプ66の燃圧を迅速にたかめることができ、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によってエンジン22を迅速に始動することができる。この結果、始動時に点火時期をより大きく遅角することができるから、初爆時のショックを小さくすることができると共に浄化装置134における触媒の暖機を迅速に行なうことができる。また、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動に必要な電力供給が行なわれないときには、ポート用燃料噴射バルブ126a〜126dからの燃料噴射によってエンジン22を始動するから、電力供給の過不足に拘わらず、エンジン22をより確実に自動始動することができる。もとより、エンジン22を自動始動する際でも運転者のアクセルペダル83に応じた動力をリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50からDC/DCコンバータ90を介して燃料ポンプ62や高圧燃料ポンプ64の電動機62a,64aに電力供給したが、バッテリ50とは異なる低圧系のバッテリを設け、この低圧系のバッテリから燃料ポンプ62や高圧燃料ポンプ64の電動機62a,64aに電力供給するものとしてもよい。この場合、出力可能電力Pbや推定出力可能電力Pb2と比較する閾値Psetとしては燃料ポンプ62と高圧燃料ポンプ64とを駆動するのに必要な電力を用いればよい。なお、この場合、駆動停止可能な補機は低圧系の補機に限られる。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22をクランキングすると共に燃料ポンプ62および高圧燃料ポンプ64を駆動するのに十分な電力をバッテリ50から供給することができないときには、エンジン22の始動が完了するまで駆動停止することができる補機を駆動停止して筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によってエンジン22を始動したが、バッテリ50から十分な電力を供給できないときにはモータMG2への電力供給を若干制限することにより、高圧燃料ポンプ64を駆動して筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dからの燃料噴射によるエンジン22の始動を実現するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dとポート用燃料噴射バルブ126a〜126dとを有するエンジン22を搭載するものとしたが、筒内用燃料噴射バルブ125a〜125dだけを有するエンジンを搭載するものとしてもよい。この場合、バッテリ50から十分な電力を供給できないときにはモータMG2への電力供給を若干制限することにより、高圧燃料ポンプ64を駆動すればよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、筒内噴射式のエンジン22のクランクシャフト26をモータMG1やモータMG2が接続された遊星歯車30に接続する構成としたが、筒内噴射式のエンジンを搭載し、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に所定の始動条件が成立したときに自動停止したエンジンを始動する自動停止始動制御を行なう自動車であれば、他の補機に優先して高圧燃料ポンプ64の電動機64aに電力供給することができるから、如何なる構成の自動車であってもよい。例えば、図4の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図4における車輪39c,39dに接続された車軸)に接続するものとしてもよいし、図5の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪39a,39bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。さらに、図6の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22をクラッチ327により変速機340を介して駆動輪39a,39bに動力を出力するモータ330の回転軸に接続するものとしてもよい。このように、車軸に動力を出力可能な筒内噴射式のエンジンと車軸に動力を出力可能なモータとを搭載し、エンジンからの動力を用いた走行とモータからの動力だけを用いた走行とが可能なハイブリッド自動車だけでなく、走行用のモータを備えず、エンジンからの動力だけで走行するタイプの自動車であってもよい。このタイプの自動車における自動停止始動制御としては、アイドルストップ制御を考えることができ、このアイドルストップ制御におけるエンジンを自動始動する際に、実施例で説明した他の補機に優先して高圧燃料ポンプ64の電動機64aに電力供給する制御を適用することができる。
実施例では、本発明の筒内噴射式の内燃機関の自動始動の際の制御をハイブリッド自動車に搭載されたエンジンの自動始動の制御に適用するものとして説明したが、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載された内燃機関の自動始動の制御に適用するものとしてもよいし、移動体以外の設備、例えば発電設備などに組み込まれた内燃機関の自動始動の制御に適用するものとしてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 エンジン22の構成の一例を示す構成図である。 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される自動始動指示ルーチンの一例を示すフローチャートである。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20、120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 遊星歯車、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、39c,39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 燃料タンク、62 燃料ポンプ、62a,64a 電動機、64 高圧燃料ポンプ、66 デリバリパイプ、67 リリーフバルブ、68 リリーフパイプ、69 燃圧センサ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 DC/DCコンバータ、92 補機、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、125,125a〜125d 筒内用燃料噴射バルブ、126,126a〜126d ポート用燃料噴射バルブ、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 バキュームセンサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、327 クラッチ、330 モータ、340 変速機、MG1,MG2 モータ。

Claims (5)

  1. 吸気管に燃料を噴射する吸気管用燃料噴射弁と筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力可能な動力出力装置であって、
    電力の供給を受けて燃料を加圧して前記筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段と、
    該燃料加圧供給手段を電力の供給先の一つとして電力供給する電力供給手段と、
    所定の停止条件が成立したときには前記内燃機関の運転を自動停止し、所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段から他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する自動停止始動手段と、
    を備え
    前記自動停止始動手段は、前記内燃機関を自動始動する際に、前記電力供給手段からの電力が不足しないときには前記筒内用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動し、前記電力供給手段からの電力が不足するときには前記吸気管用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動する手段である、
    動力出力装置。
  2. 請求項1記載の動力出力装置であって、
    前記電力供給手段からの電力を用いて前記駆動軸に動力を出力可能な電動機を備え、
    前記自動停止始動手段は、前記所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段からの前記電動機への電力供給を除く他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動する手段である
    動力出力装置。
  3. 請求項2記載の動力出力装置であって、
    前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、
    該設定した要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
    を備える動力出力装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる自動車。
  5. 吸気管に燃料を噴射する吸気管用燃料噴射弁と筒内に燃料を噴射する筒内用燃料噴射弁を有する内燃機関と、電力の供給を受けて燃料を加圧して前記筒内用燃料噴射弁に供給する燃料加圧供給手段と、該燃料加圧供給手段を電力の供給先の一つとして電力供給する電力供給手段と、を備え、前記内燃機関からの動力を用いて駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、
    (a)所定の停止条件が成立したときには前記内燃機関の運転を自動停止し、
    (b)所定の始動条件が成立したときには前記電力供給手段から他の供給先に優先して前記燃料加圧供給手段に電力供給を行なって前記自動停止した内燃機関を自動始動すると共に、前記内燃機関を自動始動する際に、前記電力供給手段からの電力が不足しないときには前記筒内用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動し、前記電力供給手段からの電力が不足するときには前記吸気管用燃料噴射弁から燃料噴射して前記内燃機関を自動始動する
    動力出力装置の制御方法。
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