JP3956765B2 - 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

Info

Publication number
JP3956765B2
JP3956765B2 JP2002128706A JP2002128706A JP3956765B2 JP 3956765 B2 JP3956765 B2 JP 3956765B2 JP 2002128706 A JP2002128706 A JP 2002128706A JP 2002128706 A JP2002128706 A JP 2002128706A JP 3956765 B2 JP3956765 B2 JP 3956765B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fine powder
alloy
alloy fine
emitting layer
light emitting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002128706A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003321702A (ja
Inventor
惠司 小山
正利 眞嶋
佳枝 谷
信二 稲澤
敏宏 坂本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP2002128706A priority Critical patent/JP3956765B2/ja
Publication of JP2003321702A publication Critical patent/JP2003321702A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3956765B2 publication Critical patent/JP3956765B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電ペーストに用いる合金微粉末と、それを用いた導電ペーストと、この導電ペーストを用いて背後電極を形成したエレクトロルミネッセンス素子(以下「EL素子」とする)とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、一般に、ガラス板等の透明基板の上に薄膜状の透明電極(陽極)を形成し、その上に電界発光機能を有する発光層を積層した後、その上にさらに背後電極(陰極)を積層して形成する場合が多い。
このうち発光層としては、近時、結着樹脂中に発光材料や蛍光色素、電子輸送性材料、ホール輸送性材料などを分散したり、あるいは結着樹脂としてホール輸送性を有する高分子を使用したりした、いわゆる有機の、単層または複層の発光層が普及しつつある。
【0003】
また背後電極は、金属や合金の真空蒸着膜などによって形成するのが一般的である。
しかし、真空蒸着法などのいわゆる真空プロセスによって背後電極を形成する工程は通常、バッチ式で行われるため、生産性が低い上、コストが高くつくという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで発明者は、背後電極を形成する金属や合金の微粉末と、結着剤とを含む導電ペーストを、発光層上に膜状に塗布したのち焼き付けることで、結着剤を焼成除去するとともに多数の微粉末を溶融、一体化させて背後電極を形成することを検討した。
しかし、有機の発光層を形成する結着樹脂のガラス転移温度、溶融温度、熱分解温度や、あるいは結着樹脂中に分散させる発光材料その他の成分の熱分解温度などから求められる発光層の耐熱温度は、一般に200℃未満である。このため有機の発光層は熱に弱い。
【0005】
これに対し、陰極として、有機の発光層にスムースに電子を注入することを考慮すると、背後電極は、仕事関数ができるだけ小さい金属や合金にて形成する必要があるが、これらの金属や合金の融点は通常、上述した有機の発光層の耐熱温度よりも高温である。
しかも多数の微粉末を十分に溶融、一体化させて、均一でかつ発光層の表面形状に十分に追従した、良好な導電性を有する背後電極を形成することを考慮すると、導電ペーストの焼き付け温度は、上記金属や合金の融点よりさらに高温に設定する必要がある。
【0006】
このため、有機の発光層上に導電ペーストを焼き付けて背後電極を形成しようとすると、焼き付け時の高温によって発光層が劣化してしまうという問題があり、この両者を組み合わせることは事実上、困難である。
そこで発明者は、融点が156.6℃と低い上、仕事関数も小さいIn単体で形成した微粉末や、あるいはIn、Snなどの低融点の金属を含み、かつ合金としての融点が200℃以下となるように組成を調整した低融点の合金の微粉末などを用いることで、導電ペーストの焼き付け温度を引き下げて、有機の発光層へのダメージを軽減することを検討した。
【0007】
しかし低融点の金属や合金を焼き付けて形成した背後電極は、当然ながら、耐熱性が十分でないという問題があった。
とくにIn単体で形成した背後電極や、あるいはIn、Snなどを含む低融点の合金にて形成した背後電極は、いずれも前記各層を積層、形成後、素子の全体を発光層の耐熱温度以下の温度でパッシベーション処理する際などの、素子形成後の熱履歴によって溶融しやすい上、溶融後、再凝固する際にInやSnがウィスカー状に析出して、発光層にダメージを与えたり、透明電極との間で短絡したりしやすいという問題があった。
【0008】
また、単体のInは比較的短期間で酸化しやすい上、Inの酸化物は導電性を有するものの、その仕事関数が、陰極として適した数値範囲にはなく、酸化によって背後電極として機能しなくなってしまうことから、背後電極の耐久性が不十分になるという問題もあった。
この発明の主たる目的は、上記In単体からなるものなどの、低融点の微粉末と同様に低温で溶融、一体化させることができるため、導電ペーストの焼き付け温度をこれまでよりも引き下げることができて、有機の発光層へのダメージを軽減できる上、焼き付け後は、上記低融点のものに比べて十分な耐熱性、耐久性を有する背後電極を形成することが可能な、新規な合金微粉末を提供することにある。
【0009】
またこの発明の他の目的は、上記の合金微粉末を用いた導電ペースト、およびこの導電ペーストを用いて背後電極を形成したEL素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
金属の微粉末の粒径を数百nm以下の範囲まで微細化すると、通常のマクロな大きさの金属とは、微粉末の、集団としての比熱や磁化率などの熱力学的性質が著しく異なるという、いわゆる久保効果が知られている。
発明者はこの久保効果に着目し、合金にて形成した微粉末の粒径を微細化することで、その集団としての溶融温度を合金自体の融点よりも引き下げることを検討した。
【0011】
その結果、融点が200〜300℃の合金にて形成する合金微粉末の粒径を10〜300nmに微細化すると、
(1) 当該合金微粉末の、集団としての溶融温度を、久保効果によって、前述した有機の発光層の耐熱温度以下に引き下げ、それに伴って導電ペーストの焼き付け温度を、上記耐熱温度と同程度もしくはそれ以下に引き下げて、焼き付け時の、有機の発光層へのダメージを軽減できること、
(2) 焼き付けにより溶融、一体化した後の背後電極は、本来のマクロの大きさの金属に戻り、微粉末を形成していた合金自体の融点である200〜300℃を示すため、素子形成後の熱履歴によって溶融したり、あるいは溶融後、再凝固する際に合金中に含まれる金属がウィスカー状に析出したりしない耐熱性に優れた背後電極を形成できる上、基本的に合金は、In単体のように簡単に酸化して、背後電極としての機能を喪失したりしないため、背後電極の耐久性をも向上できること、
を見出し、この発明を完成するに至った。
【0012】
したがって請求項1記載の発明は、有機の発光層を備えるエレクトロルミネッセンス素子の、前記発光層上に背後電極を形成するために用いる合金微粉末であって、Sn、Ag、Cu、およびInからなる群より選ばれた2種以上の金属元素のイオンを含む溶液中で、当該2種以上のイオンを、3価のチタン化合物を還元剤として用いて還元することで、同時に析出させて形成され、融点が200〜300℃の合金からなり、粒径が10〜300nmで、かつ溶融温度が、発光層の耐熱温度以下であることを特徴とする合金微粉末である。
【0013】
述した久保効果による、合金微粉末の、溶融温度の低下の度合いは、その粒径を小さくすればするほど大きくなる。つまり溶融温度が低下する傾向を示す。しかし、粒径が10μm未満である微小な粉末は製造が容易でない。また、もし製造できたとしても溶融温度が低くなりすぎる上、凝集しやすくなるため、取り扱いが容易でなく、実用的でない。そのため、請求項1記載の発明においては、合金微粉末を、通常の作業環境下で溶融させたり凝集させたりすることなしに、導電ペースト中に均一に分散して、良好な特性を有する背後電極を形成することを考慮して、その粒径10nm以上とされる
【0014】
金微粉末は、請求項1記載の発明では、Sn、Ag、Cu、およびInからなる群より選ばれた、合金を構成する2種以上の金属元素のイオンを含む溶液中で、当該2種以上のイオンを、還元剤によって還元することで同時に析出させる還元析出法によって形成される。かかる還元析出法によって形成した合金微粉末は、個々の粒径が揃っており、粒度分布がシャープである。これは、還元反応が溶液中で均一に進行するためである。
【0015】
それゆえ上記の合金微粉末は、焼き付け時に、より一層、均一に溶融させることが可能であり、多数の合金微粉末を十分に溶融、一体化させて、均一でかつ発光層の表面形状に十分に追従した、良好な導電性を有する背後電極を形成することができる
【0016】
上記還元析出法に用いる還元剤として、請求項1記載の発明では、3価のチタン化合物が用いられる。還元剤として、三塩化チタンなどの3価のチタン化合物を用いると、合金を構成する金属元素のイオンの還元、析出時にチタンイオンが殆ど消費されない(合金を構成する金属元素のイオンとともに多量に析出しない)ため、合金微粉末を析出、形成した後の溶液を、電解再生によって繰り返し、合金微粉末の製造に利用可能な状態に再生でき
【0017】
記の合金微粉末を用いた導電ペーストは、従来同様に固形分として、当該合金微粉末と、樹脂などの結着剤とを含んでいる。
かかる導電ペーストにおいては、より低温、短時間の焼き付けで、良好な導電性を有する均一な背後電極を形成するために、結着剤の割合を少なく、合金微粉末の割合を多くすることが好ましい。つまり固形分の総量に占める合金微粉末の割合を50重量%以上とするのが好ましい。
【0018】
ただし、あまりに結着剤の割合が少なすぎると、導電ペーストの製膜性が低下する結果、かえって均一な背後電極を形成できないおそれがあり、これを防止するには、固形分の総量に占める合金微粉末の割合を98重量%以下とするのが好ましい。
したがって請求項記載の発明は、請求項1記載の合金微粉末と、結着剤とを固形分として含み、かつ固形分の総量に占める合金微粉末の割合を50〜98重量%としたことを特徴する導電ペーストである。
【0019】
上記の導電ペーストを用いて、有機の発光層上に背後電極を積層してEL素子を形成する際には、当該導電ペーストを発光層上に塗布したのち、久保効果によって発光層の耐熱温度以下に引き下げた合金微粉末の溶融温度以上で、かつ発光層の耐熱温度以下の温度で焼き付ける。そうすると、有機の発光層へのダメージを軽減しつつ、合金微粉末を良好に溶融させて、多数の微粉末を十分に溶融、一体化させることによって、均一でかつ発光層の表面形状に十分に追従した、良好な導電性を有する背後電極を形成することができる。
【0020】
したがって請求項記載の発明は、請求項記載の導電ペーストを、有機の発光層上に膜状に塗布し、合金微粉末の溶融温度以上で、かつ発光層の耐熱温度以下の温度で焼き付けて背後電極を形成したことを特徴とするEL素子である。
なお特開2001−200305号公報の請求項1には、2種以上の金属からなる、粒径が1〜100nmの合金微粉末について開示している。
しかし、ここで製造している合金微粉末とは、同公報の請求項2以降の記載から明らかなように、電磁波シールドに用いる、軟磁気特性を有する合金、具体的にはパーマロイなどのFe−Ni合金の微粉末であって、その他の用途に用いる、その他の合金の微粉末については一切、記載していない。
【0021】
そもそもFe−Ni合金は、その溶融温度が、例えばパーマロイ(20Fe−80Ni)の場合で1445℃というように著しく高い上、Fe、Niともに仕事関数が高いため、EL素子の、有機の発光層上に形成する背後電極用として用いることは不可能である。
しかも上記公報には、融点が300℃以下の合金にて形成する合金微粉末の粒径を300nm以下とした際に、久保効果によって溶融温度を引き下げられることや、焼き付け後の背後電極は元の合金の融点に戻るため耐熱性が向上することなどの、この発明に特有の構成および作用効果についても一切、開示も示唆もしていない。
【0022】
よって上記公報記載の発明は、この発明を開示も示唆もするものではない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を詳細に説明する。
〔合金微粉末〕
この発明の合金微粉末は、前記のように、有機の発光層を備えるエレクトロルミネッセンス素子の、前記発光層上に背後電極を形成するために用いる合金微粉末であって、Sn、Ag、Cu、およびInからなる群より選ばれた2種以上の金属元素のイオンを含む溶液中で、当該2種以上のイオンを、3価のチタン化合物を還元剤として用いて還元することで、同時に析出させて形成され、融点が200〜300℃の合金からなり、粒径が10〜300nmで、かつ溶融温度が、発光層の耐熱温度以下であることを特徴とする。
合金の融点を300℃以下に限定するのは、融点が300℃を超える高融点の合金は、その粒径を300nm以下の適当な範囲に調整しても、合金微粉末の溶融温度を、有機の発光層の耐熱温度以下まで引き下げることができないためである。合金微粉末の溶融温度を、久保効果によって、有機の発光層の耐熱温度以下まで引き下げるためには、出発点である合金の融点を、300℃以下とする必要がある。
【0024】
なお合金の融点は、先に述べたように、耐久性に優れた背後電極を形成するため、200℃以上に限定される
合金を構成する金属元素としては、前記のように、
Ag(融点961.93℃、仕事関数4.26eV)
u(融点1083.4℃、仕事関数4.65eV)
n(融点156.6℃、仕事関数4.09eV)、および
n(融点231.97℃、仕事関数4.42eV)、
の4種が用いられる。
【0025】
合金は、上記の中から少なくとも2種の金属元素を選択して構成する。選択の基準は下記のとおりである。
・ 合金の仕事関数は、当該合金を構成する各金属元素の仕事関数のうち最も小さい値に近い値となるため、金属元素の少なくとも1種は、目的とする合金の仕事関数の値に近い、仕事関数の小さい金属元素を選ぶ。
・ 合金の融点が、前述したように200〜300℃となる金属元素の組み合わせを選ぶ。
・ 上記2つの基準を満たしうる金属元素の組み合わせにおいて、目的とする合金の仕事関数と融点とを達成するために、個々の金属元素の含有割合を設定する。
【0026】
合金を構成する金属元素の組み合わせの具体例としては、これに限定されないが、例えば92In−8Ag合金(融点210℃、仕事関数4.1eV)、96.5Sn−3.5Ag合金(融点221℃、仕事関数4.2eV)、96.5Sn−3Ag−0.5Cu合金(融点217℃、仕事関数4.2eV)、99.3Sn−0.7Cu合金(融点227℃、仕事関数4.2eV)などを挙げることができる。
【0027】
合金微粉末の粒径は、先に述べたように10〜300nmとする。そうすると久保効果によって、合金微粉末の集団としての溶融温度を、EL素子の、有機の発光層の耐熱温度以下に引き下げ、それに伴って導電ペーストの焼き付け温度を、上記耐熱温度と同程度もしくはそれ以下に引き下げて、焼き付け時の、有機の発光層へのダメージを軽減することができる。
なお、これも先に述べたように合金微粉末の粒径を小さくするほど、その溶融温度を低下させることができるが、粒径が10nm未満のものは製造が困難である。これは、例えば後述する還元析出法によって合金微粉末を製造する工程の初期段階で、10nm未満のごく微細な微粉末が発生しても、それが複数個、直ちに凝集し、一体化して微粉末の成長の核となって、そこからさらに粒径の大きい合金微粉末が生成されるためである。
【0028】
また、たとえ粒径が10nm未満の合金微粉末を製造できたとしても、かかる粒径の小さい合金微粉末は、溶融温度が数十℃以下といった著しく低いものとなる上、凝集しやすい。このため、導電ペーストを製造する際には、合金微粉末の溶融による融着等を防止しつつ、均一に分散させる必要があるなど、取り扱いが容易でなく、実用的でない。
したがって合金微粉末の粒径は10nm以上に限定される
【0029】
なお導電ペーストの焼き付け温度を引き下げて、有機の発光層へのダメージを軽減する効果をさらに向上させるとともに、合金微粉末の取り扱いを容易にすることを考慮すると、当該合金微粉末の粒径は、上記の範囲内でもとくに70〜120nm程度とするのが好ましい。
この発明では、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値でもって、合金微粉末の粒径を規定することとする。具体的には、合金微粉末の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、そのうち実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値でもって合金微粉末の粒径とする。
【0030】
合金微粉末は、前述したように還元析出法によって製造される
還元析出法においては、まず還元剤としての、三塩化チタンなどの3価のチタン化合物と、錯化剤、例えばクエン酸三ナトリウム等とを溶解させた溶液(以下「還元剤溶液」とする)に、アンモニア水等を加えてpHを9〜10に調整する。
これにより、3価のチタンイオンが錯化剤と結合して配位化合物を形成して、Ti(III)からTi(IV)に酸化する際の活性化エネルギーが低くなり、還元電位が高くなる。具体的には、Ti(III)とTi(IV)との電位差が1Vを超える。この値は、先に例示した金属元素のうちAg、Au、Bi、Cu、In、Pb、Sn、およびZnの、所定の価数のイオンから金属状態(0価)への還元電位に比べて著しく高い値である。よって、これら金属元素のイオンを効率よく還元、析出させることができる。
【0031】
次に、上記の還元剤溶液に、例えば前記例示のIn−Ag合金などを構成する、2種以上の金属元素のイオンを含む溶液を加える。
そうするとTi(III)が還元剤として機能して、自身がTi(IV)に酸化する際に、上記2種以上の金属元素のイオンを還元して液中に同時に析出させることで、合金微粉末を製造することができる。
還元析出法にて製造した合金微粉末は個々の粒径が揃っており、粒度分布がシャープである。これは、還元反応が系中で均一に進行するためである。
【0032】
還元析出法において合金微粉末の粒径を調整するには、反応時間、反応温度およびかく拌速度等の反応条件を規定すればよい。
また還元析出法において、合金微粉末を形成する合金の組成を制御するためには、溶液中に含ませる、合金を構成する金属元素のイオンの濃度を調整したり、錯化剤の種類や添加量を変化させることによって、還元剤溶液の還元電位を調整したりすればよい。錯化剤としては、前記クエン酸三ナトリウムの他、酒石酸ナトリウム、酒石酸、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオ硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0033】
合金微粉末を析出させた後の還元剤溶液は、電解再生を行うことで、何度でも繰り返し、還元析出法による合金微粉末の製造に利用することができる。すなわち、合金微粉末を析出させた後の還元剤溶液を電解槽に入れるなどして電圧を印加することで、Ti(IV)をTi(III)に還元してやれば、再び電解析出用の還元剤溶液として使用することができる。これは、電解析出時にチタンイオンが殆ど消費されない、つまり析出させる金属元素とともに多量に析出されないためである。
【0034】
〔導電ペースト〕
この発明の導電ペーストは、上記の合金微粉末と、樹脂等の結着剤とを固形分として含み、かつ固形分の総量に占める合金微粉末の割合を50〜98重量%としたものである。
【0035】
金微粉末の割合を上記の範囲に限定する理由は先に述べたとおりである。
なお導電ペーストの製膜性を向上するとともに、より低温、短時間の焼き付けで、良好な導電性を有する均一な背後電極を形成することを考慮すると、合金微粉末の、固形分の総量に占める割合は、上記の範囲内でもとくに80〜95重量%とするのが好ましい。
【0036】
結着剤としては、従来公知の、成膜性および接着性を有する種々の化合物がいずれも使用可能である。かかる結着剤としては、例えば熱可塑性樹脂や硬化性樹脂、液状硬化性樹脂などがあり、特に好ましくはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂などをあげることができる。
導電ペーストは、合金微粉末と結着剤とを、適当な溶媒中に分散させて製造する。また、液状硬化性樹脂等の液状の結着剤を用いて溶媒を省略してもよい。
【0037】
〔EL素子〕
この発明のEL素子は、上記の導電ペーストを、有機の発光層上に膜状に塗布し、合金微粉末の溶融温度以上で、かつ発光層の耐熱温度以下の温度で焼き付けて背後電極を形成したものである。
有機の発光層上に、導電ペーストを膜状に塗布する方法としては、バーコート法、スプレーコート法、ロールコート法などの、種々のコート法を採用できる他、スクリーン印刷法、凹版オフセット印刷法などの、種々の印刷法を採用することもできる。印刷法によれば、背後電極をパターン形成することが可能である。
【0038】
導電ペーストの焼き付け温度は、上記のように合金微粉末の溶融温度以上で、かつ発光層の耐熱温度以下である必要がある。この範囲内の焼き付け温度で、有機の発光層上に膜状に塗布した導電ペーストを焼き付けると、当該発光層へのダメージを軽減しつつ、多数の微粉末を十分に溶融、一体化させて、均一でかつ発光層の表面形状に十分に追従した、良好な導電性を有する背後電極を形成することができる。
【0039】
しかも形成した背後電極は、合金微粒子の溶融温度より高い、合金本来の融点を有するため、素子形成後の熱履歴によって溶融したりしない耐熱性に優れる上、基本的に合金は、In単体のように簡単に酸化して、背後電極としての機能を喪失したりしないため、耐久性にも優れている。
背後電極を形成した後のEL素子は、従来同様にパッシベーション処理をした後、使用に供する。
【0040】
EL素子を形成する、背後電極以外の他の層については、従来と同様に構成できる。
例えば透明基板の上に薄膜状の透明電極(陽極)を形成し、その上に電界発光機能を有する有機の発光層と、背後電極とをこの順に積層した構造のEL素子において、透明基板としては、ガラス板や透明プラスチック板などを使用することができる。
【0041】
また薄膜状の透明電極としては、例えば酸化インジウム、酸化スズ、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IXO〔In23(ZnO)m六方晶層状化合物〕などを挙げることができる。これらの透明電極は、反応性イオンプレーティング法、反応性スパッタリング法、プラズマCVD法などによって形成することができる。
有機の発光層としては、先に述べたように、結着樹脂中に発光材料や蛍光色素、電子輸送性材料、ホール輸送性材料などを分散したり、あるいは結着樹脂としてホール輸送性を有する高分子を使用したりした、単層または複層の発光層を挙げることができる。
【0042】
なおこの発明の合金微粉末、および導電ペーストは、上記EL素子の、背後電極の形成用には限定されず、低い焼き付け温度と、焼き付け後の高い耐熱性、耐久性とが要求される種々の用途に利用することが可能である。
【0043】
【実施例】
(合金微粉末の作製)
実施例1
三塩化チタン80gとクエン酸ナトリウム二水和物91.5gとをイオン交換水に溶解した後、その液温を35℃に維持しつつアンモニア水を加えてpHを9に調整して、およそ900mlの還元剤溶液を得た。
【0044】
また、塩化インジウム(III)4水和物〔InCl3・4H2O〕10.8gと、塩化銀(AgCl)0.46gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、InとAgのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を上の還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
【0045】
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、92In−8Ag合金(融点210℃、仕事関数4.1eV)であることが確認された。
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
【0046】
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ185℃であった。
比較例1
塩化銀(AgCl)14.3gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、Agのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させてAgの微粉末を得た。
【0047】
得られた微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μ×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
さらに、微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ475℃であった。
【0048】
比較例2
塩化インジウム(III)4水和物〔InCl3・4H2O〕9.4gと、塩化銀(AgCl)1.2gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、InとAgのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
【0049】
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、80In−20Ag合金(融点350℃、仕事関数4.1eV)であることが確認された。
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μ×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
【0050】
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ320℃であった。
比較例3
塩化インジウム(III)4水和物〔InCl3・4H2O〕11.7gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、Inのイオンを含む溶液50mlを調製した。
【0051】
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させてInの微粉末を得た。
得られた微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
【0052】
さらに、微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ130℃であった。
以上の結果を表1にまとめた。
【0053】
【表1】
Figure 0003956765
【0054】
表より、融点が210℃である92In−8Ag合金にて形成するとともに、その粒径を100nmとした実施例1の合金微粉末は、久保効果によって、その溶融温度を185℃まで引き下げることができた。しかし、融点が962℃であるAg単体で形成した比較例1の微粉末、および融点が350℃である80In−20Ag合金にて形成した比較例2の合金微粉末は、いずれも粒径を100nmとしても、溶融温度を200℃以下まで引き下げることはできなかった。また、融点が156.6℃であるIn単体で形成した比較例3の微粉末は、粒径を100nmとすることによって、溶融温度が低くなりすぎてしまった。
【0055】
実施例2
塩化スズ(II)2水和物〔SnCl2・2H2O〕8.7gと、塩化銀(AgCl)0.2gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、SnとAgのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
【0056】
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、96.5Sn−3.5Ag合金(融点221℃、仕事関数4.2eV)であることが確認された。
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
【0057】
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ190℃であった。
比較例4
塩化スズ(II)2水和物〔SnCl2・2H2O〕7.2gと、塩化銀(AgCl)1.1gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、SnとAgのイオンを含む溶液50mlを調製した。
【0058】
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、80Sn−20Ag合金(融点390℃、仕事関数4.1eV)であることが確認された。
【0059】
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ360℃であった。
【0060】
比較例5
塩化スズ(II)2水和物〔SnCl2・2H2O〕9.0gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、Snのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させてSnの微粉末を得た。
【0061】
得られた微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
さらに、微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ210℃であった。
【0062】
以上の結果を、比較例1の結果とともに表2にまとめた。
【0063】
【表2】
Figure 0003956765
【0064】
表より、融点が221℃である96.5Sn−3.5Ag合金にて形成するとともに、その粒径を100nmとした実施例2の合金微粉末は、久保効果によって、その溶融温度を190℃まで引き下げることができた。しかし、融点が962℃であるAg単体で形成した比較例1の微粉末、および融点が390℃である80Sn−20Ag合金にて形成した比較例4の合金微粉末は、いずれも粒径を100nmとしても、溶融温度を200℃以下まで引き下げることはできなかった。また、Sn単独で形成した比較例5の微粉末は、Snの融点が232℃であるにもかかわらず、溶融温度を200℃以下まで引き下げることができなかった。また、比較例5の微粉末は、Sn単独で形成したものゆえ仕事関数の値が大きかった。
【0065】
実施例3
塩化スズ(II)2水和物〔SnCl2・2H2O〕8.7gと、塩化銀(AgCl)0.17gと、塩化銅(II)2水和物〔CuCl2・2H2O〕0.034gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、SnとAgとCuのイオンを含む溶液50mlを調製した。
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
【0066】
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、96.5Sn−3Ag−0.5Cu合金(融点217℃、仕事関数4.2eV)であることが確認された。
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
【0067】
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ185℃であった。
実施例4
塩化スズ(II)2水和物〔SnCl2・2H2O〕9.0gと、塩化銅(II)2水和物〔CuCl2・2H2O〕0.048gと、10mlの塩酸とをイオン交換水に加えて溶解させることで、SnとCuのイオンを含む溶液50mlを調製した。
【0068】
そしてこの溶液を、実施例1で使用したのと同じ還元剤溶液に加えるとともに、さらにイオン交換水を加えて全量を1リットルに調整してかく拌下、液温を35℃に維持しつつ反応を行った。また反応開始後は、アンモニア水でpHを9に調整しながら反応を行い、反応開始から5分が経過した時点で、液中に析出した固形分を直ちにろ別し、水洗したのち乾燥させて微粉末を得た。
得られた微粉末の組成を、ICP発光分析法によって測定したところ、99.3Sn−0.7Cu合金(融点227℃、仕事関数4.2eV)であることが確認された。
【0069】
また上記の合金微粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その粒径がほぼ揃っていることが確認された。また走査型電子顕微鏡によって撮影した写真に写された、実際の寸法が1.8μm×2.4μmの矩形状の範囲に入るすべての合金微粉末の粒径を実測して、その平均値を求めたところ100nmであった。
さらに、合金微粉末の溶融温度をTMA法によって測定したところ195℃であった。
【0070】
以上の結果を表3にまとめた。
【0071】
【表3】
Figure 0003956765
【0072】
表より、Sn−Ag−Cu合金やSn−Cu合金においても、その融点と粒径とを調整することによって、合金微粉末の溶融温度を200℃以下に引き下げ得ることが確認された。
(導電ペーストの調製)
上記各実施例、比較例で製造した微粉末95重量部と、結着剤としてのエチルセルロース5重量部とを、溶媒としてのα−テルピネオール中に分散させて、固形分濃度が55重量%で、かつ固形分中に占める微粉末の割合が95重量%の導電ペーストを調整した。
【0073】
(背後電極の形成)
EL素子のモデルとして、片面にITO透明導電膜を形成したガラス基板の、上記透明導電膜上に、有機の発光層を構成する、ホール輸送性を有する高分子としてのポリフェニレンビニリデン(PPV)からなる厚み1μmの層を形成したものを用いた。
次にこのPPVの層の上に、上記で製造した導電ペーストを塗布し、200℃で焼き付けて、厚み5μmの背後電極を形成したのち、全体を170℃に加熱してパッシベーション処理をした。
【0074】
そして厚み方向にカットして、その断面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、実施例1〜4の合金微粉末を用いて形成した背後電極は、いずれも合金微粉末が十分に溶融、一体化して均一化しているとともに、PPVの層の表面形状に十分に追従していることが確認された。またPPVの層にも、熱履歴などによるダメージは見られなかった。
これに対し、微粉末の溶融温度が焼き付け温度より高かった比較例1、2、4および5の微粉末を用いて形成した背後電極は、微粉末の溶融、一体化が不十分で、ポーラスな構造を有していたり、あるいはPPVの層の表面形状に十分に追従していなかったりすることがわかった。
【0075】
また、In単体からなる比較例3の微粉末を用いて形成した背後電極は、パッシベーション時に、Inが溶融したのち再凝固したことを示すInのウィスカー状の析出が見られた。そしてこの析出したウィスカーがPPVの層に突き刺さるなどのダメージが見られた。

Claims (3)

  1. 有機の発光層を備えるエレクトロルミネッセンス素子の、前記発光層上に背後電極を形成するために用いる合金微粉末であって、Sn、Ag、Cu、およびInからなる群より選ばれた2種以上の金属元素のイオンを含む溶液中で、当該2種以上のイオンを、3価のチタン化合物を還元剤として用いて還元することで、同時に析出させて形成され、融点が200〜300℃の合金からなり、粒径が10〜300nmで、かつ溶融温度が、発光層の耐熱温度以下であることを特徴とする合金微粉末。
  2. 請求項1記載の合金微粉末と、結着剤とを固形分として含み、かつ固形分の総量に占める合金微粉末の割合を50〜98重量%としたことを特徴する導電ペースト。
  3. 請求項記載の導電ペーストを、有機の発光層上に膜状に塗布し、合金微粉末の溶融温度以上で、かつ発光層の耐熱温度以下の温度で焼き付けて背後電極を形成したことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
JP2002128706A 2002-04-30 2002-04-30 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子 Expired - Fee Related JP3956765B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002128706A JP3956765B2 (ja) 2002-04-30 2002-04-30 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002128706A JP3956765B2 (ja) 2002-04-30 2002-04-30 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003321702A JP2003321702A (ja) 2003-11-14
JP3956765B2 true JP3956765B2 (ja) 2007-08-08

Family

ID=29542370

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002128706A Expired - Fee Related JP3956765B2 (ja) 2002-04-30 2002-04-30 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3956765B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006286542A (ja) * 2005-04-04 2006-10-19 Ehc:Kk 有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、および、その製造方法
KR101007326B1 (ko) * 2008-08-11 2011-01-13 삼성전기주식회사 주석-구리-은 합금나노입자, 이의 제조 방법 및 상기 합금나노입자를 이용한 잉크 또는 페이스트
KR101584114B1 (ko) 2012-11-26 2016-01-13 주식회사 엘지화학 금속이 코팅된 전극 활물질의 전구체 및 그의 제조방법
KR20140097981A (ko) * 2013-01-29 2014-08-07 주식회사 엘지화학 태양전지용 금속 나노 입자의 제조 방법, 그 금속 나노 입자를 포함하는 잉크 조성물 및 이를 사용한 박막의 제조 방법
JP5814320B2 (ja) * 2013-01-31 2015-11-17 ニホンハンダ株式会社 ハンダ合金微粒子の製造方法、ハンダ合金微粒子、ハンダペーストおよび電子機器
JP2015197984A (ja) * 2014-03-31 2015-11-09 大日本印刷株式会社 有機デバイスの製造方法
JP6340911B2 (ja) * 2014-05-21 2018-06-13 コニカミノルタ株式会社 有機電界発光素子および有機電界発光素子の製造方法
WO2024101449A1 (ja) * 2022-11-11 2024-05-16 積水化学工業株式会社 導電性粒子、導電材料及び接続構造体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003321702A (ja) 2003-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107210092B (zh) 带导电层的基板、触摸面板用带透明电极的基板及它们的制造方法
JP2006164961A (ja) 積層型透明電極層の製造方法及びこの方法に使用する積層型透明電極形成用の積層体
EP1887106B1 (en) Metal coating, Forming Method Thereof and Metal Wiring
US20070190349A1 (en) Electroconductive fine particle and anisotropically electroconductive material
US20140166495A1 (en) Substrate for printed wiring board, printed wiring board, and methods for producing same
US20100031848A1 (en) Alloy nanoparticles of sn-cu-ag, preparation method thereof and ink or paste using the alloy nanoparticles
JP2011507233A5 (ja)
JP5407495B2 (ja) 金属粉末および金属粉末製造方法、導電性ペースト、並びに積層セラミックコンデンサ
JP3956765B2 (ja) 合金微粉末とそれを用いた導電ペースト、およびエレクトロルミネッセンス素子
WO2007040195A1 (ja) 微粒銀粒子付着銀銅複合粉及びその微粒銀粒子付着銀銅複合粉製造方法
EP2412669B1 (en) Method of forming metal oxide film, and metal oxide film
TWI423930B (zh) 奈米金屬溶液、奈米金屬複合顆粒以及金屬膜層的製作方法
JP2010014917A (ja) エレクトロクロミック素子及びその製造方法
KR20170138336A (ko) 접합재
KR100709446B1 (ko) 저저항 금속패턴 형성 방법
JP4490305B2 (ja) 銅粉
KR20110128153A (ko) 전기전도도가 개선된 다층형 금속 나노와이어 및 그 제조방법
KR101227059B1 (ko) 지르코늄 합금 도금 및 티타늄 합금 도금의 도금 방법 및 도금액
JP5724323B2 (ja) スパッタリングターゲット
JP2006210197A (ja) 金属被膜とその形成方法
JP2003165938A (ja) ガラス印刷用インキ組成物
TW201710564A (zh) 黑化鍍液、導電性基板
JP4600623B2 (ja) 無電解酸化亜鉛皮膜の形成方法
KR20080008022A (ko) 잉크젯 프린팅과 무전해도금을 이용한 pdp용 전극패턴의제조방법
JP2003249131A (ja) 透明導電膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040924

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050609

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050913

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20051110

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070417

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070430

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110518

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110518

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120518

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130518

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees