JP3956555B2 - アルキレングリコール類の製造方法 - Google Patents

アルキレングリコール類の製造方法 Download PDF

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルキレンオキシド類からアルキレングリコール類を製造する方法に関する。アルキレングリコール類、なかでもエチレングリコールは樹脂原料、不凍液などに用いられ、工業的に重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
アルキレンオキシドを水和してアルキレングリコールを製造する技術は知られている。なかでもエチレンオキシドの水和によるエチレングリコールの製造は大規模に行われている。しかしながら従来の技術では、アルキレングリコール以外にジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール等の好ましくない副生物が生成する。これらの副生を抑えてアルキレングリコールの選択性を高めるには、アルキレンオキシドに対し10〜20倍の水を用いる必要があり、精製工程での水の除去を考えると好ましくない。この問題を解決する手段として各種触媒の使用による選択性の向上が検討され、多数報告されている。
触媒として酸又は塩基を単独で用いることは公知であるが、選択性の改善に関しては不十分である。
【0003】
例えば、特開昭51−127010号には、触媒として有機塩基と炭酸ガスを用いることが開示されている。有機塩基としては3級アミン類が用いられている。この触媒系では触媒活性が低く選択性が高くない。
他方、特公昭49−24448号には、触媒としてアルカリハライド又はアンモニウムハライドと、炭酸ガスを用いることが開示されている。この触媒系では中間体として炭酸アルキレンが生成するため、アルキレンオキシドに対し十分な量の炭酸ガスを用いることで選択性を高めることができる。
しかしながら、この方法では高圧を必要とし、さらに生成する多量の炭酸アルキレンを加水分解することが反応律速となるため全体としては反応速度を大きくできないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来よりも高活性で、かつ高選択的にアルキレングリコールを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、触媒の存在下にアルキレンオキシドと水とを反応させてアルキレングリコール類を製造するにあたり、炭酸ガスの存在下に触媒としてハロゲン化物イオンと炭酸水素イオンを用い、水をアルキレンオキシド1モルに対して1.1〜3モル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びアセトニトリルからなる群より選択されたいずれかの添加剤をアルキレンオキシドに対し10重量%以上用いて反応させることを特徴とするアルキレングリコール類の製造方法に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、まず原料としてアルキレンオキシドと水とを使用する。
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの脂肪族アルキレンオキシド、スチレンオキシドなどの芳香族アルキレンオキシドなどが挙げられる。この内、特にエチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好適である。
水の使用量は、アルキレンオキシド1モルに対し、1.1〜3モルを使用する。好ましくは1.1〜2.5モルである。水の割合がこの範囲未満ではジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール等の副生物の生成量が増加し、アルキレングリコールの選択性が悪化するし、他方、水の割合がこの範囲を超えると、アルキレングリコールの選択性が悪化するとともに、反応器もより大きなものが必要となり、また精製系で水を生成物から分離する際に多大なエネルギーを必要とすることになり工業的に好ましくない。
【0007】
次に本発明の方法では、前記原料の他に、炭酸ガスの存在下で触媒としてハロゲン化物イオンと炭酸水素イオンを用いて反応を行う。
触媒としてのハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、シュウ化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。この内、シュウ化物イオン及びヨウ化物イオンが好ましい。
触媒として使用するハロゲン化物イオンは、塩として反応系中に供給して使用される。具体的な塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩等の4級アルキルアンモニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩及びトリメチルブチルホスホニウム塩等の4級アルキルホスホニウム塩等が挙げられる。この内、アルカリ金属塩、中でもナトリウム塩及びカリウム塩が好適である。
ハロゲン化物イオンの使用量は、アルキレンオキシド1モルに対し0.1〜10モル%の範囲で、好ましくは0.5〜5モル%の範囲で用いられる。ハロゲン化物の使用量が少ない場合には十分な選択率がえられない傾向があり、他方多すぎる場合には選択率は向上しない傾向がある。
【0008】
次に、触媒として使用する炭酸水素イオンは炭酸水素塩単独で、または炭酸ガス雰囲気下において炭酸水素塩、水酸化物塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1種とを合わせて反応系中に供給して使用される。
具体的な塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩等の4級アルキルアンモニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩及びトリメチルブチルホスホニウム塩等の4級アルキルホスホニウム塩等が挙げられる。この内、アルカリ金属塩、中でもナトリウム塩及びカリウム塩が好適である。
【0009】
炭酸水素イオンの使用量は、アルキレンオキシド1モルに対し0.8〜3モル%の範囲で、好ましくは、0.9〜2モル%の範囲で用いられる。炭酸水素イオンの使用量が0.8モル未満の場合は、十分な選択率が得らない傾向があり、他方3モル%を超える場合は、炭酸水素塩が反応液中に溶解しきれなくなる。
本発明の方法には、水とともに、水に可溶で水及びアルキレンオキシドとの反応性の低い添加剤を用いて反応させるものである。
水に可溶で、水及びアルキレンオキシドとの反応性が低い添加剤とは、水による加水分解反応を受けにくいもの、またアルキレンオキシドに付加反応しにくいものであり、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のエーテル化合物、アセトン及び2,5−ヘキサジオン等のケトン化合物、ガンマブチロラクトン等のエステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。この内、エーテル化合物が好ましい。エーテル化合物としては、式1及び式2で示される化合物が特に好ましい。式1中、R1及びR2は、CH3、C25、C37またはC49を、また、nは1〜20の整数を、また式2中、R3はH、CH3、C25、C37またはC49を、また、nは4〜20の整数を示す。
【0010】
【化1】
1 (OCH2 CH2 n OR2 ・・ (式1)
3 (OCH2 CH2 n OH ・・ (式2)
【0011】
添加剤の添加量はアルキレンオキシドに対し10wt%以上用いることが必要である。好ましくは、10〜200wt%の範囲である。より好ましくは、15〜150wt%の範囲、更に好ましくは20〜100wt%の範囲である。
添加剤の使用量が10wt%未満であると、副反応の抑制効果が十分に得られず、あまり多すぎる場合は、反応器の容積が大きくなるので、反応器の容積に応じて選択すればよい。
本発明方法によると、選択率が高くなる反応機構は明らかではないが、従来の炭酸ガスの存在下にハロゲン化物イオンを触媒とする場合には、炭酸アルキレンが中間体として生成して、この炭酸アルキレンが加水分解してアルキレングリコールを生成するのに対し、本発明の方法によると、特定量の炭酸水素イオンを添加したことにより、炭酸アルキレンを経由する反応と同時に、ハロゲン化物により生成するハロヒドリン類と炭酸水素イオンからアルキレングリコールが生成する反応も進行することにより、アルキレングリコールの選択率が向上するものと考えられる。更に、水に可溶で水及びアルキレンオキシドとの反応性の低い添加剤を添加することで、反応の副生成物であるジアルキレングリコール及びトリアルキレングリコール等の生成反応を抑制することができることにより、より選択率が向上するものと考えられる。
【0012】
本発明方法では、反応における炭酸水素イオンの安定性のために、炭酸ガスの雰囲気下に行うことが好ましい。この場合、使用する炭酸ガスは、アルキレンオキシド1モルに対し15モル%以下で行うことが好ましい。炭酸ガスの使用量が15モル%を超える場合には、反応圧力が高くなる傾向があり、工業的に好ましくない。また、反応はさらに不活性ガスの共存下に行うこともできる。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン及びヘリウム等が挙げられる。
反応方法は、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれでもよい。
反応温度は、通常、80〜200℃、好ましくは100〜170℃、また、反応圧力は、通常、0.1〜5MPa、好ましくは0.2〜2MPaの範囲で行うことができる。
【0013】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお実施例中の転化率、選択率は次式によって算出した。
【0014】
プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの転化率=(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)/(仕込みのプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドのモル数)×100(%)
プロピレングリコールまたはエチレングリコールの選択率=(プロピレングリコールまたはエチレングリコールの生成モル数)/(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)×100(%)
ジプロピレングリコールまたはジエチレングリコールの選択率=(ジプロピレングリコールまたはジエチレングリコールの生成モル数)/(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)×200(%)
トリプロピレングリコールまたはトリエチレングリコールの選択率=(トリプロピレングリコールまたはトリエチレングリコールの生成モル数)/(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)×300(%)
アセトンまたはアセトアルデヒドの選択率=(アセトンまたはアセトアルデヒドの生成モル数)/(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)×100(%)
炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンの選択率=(炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンの生成モル数)/(プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの消費モル数)×100(%)
【0015】
実施例1
SUS製の内容積30mlのオートクレーブに、触媒としてヨウ化カリウム166mg(1.0mmol)及び炭酸水素カリウム100mg(1.0mmol)を装入し、さらにジエチレングリコールジメチルエーテル1.9g、水3.6g(200mmol)及びプロピレンオキシド5.8g(100mmol)を装入し、炭酸ガス0.6g(14mmol)を加圧により導入した。このオートクレーブを140℃の油浴に浸漬し、撹拌しながら3時間反応させた。反応温度は130℃であった。反応中に圧力は0.9MPaから0.6MPaまで減少した後0.9MPaまで増加した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表1に示す。
【0016】
比較例1
実施例1において、添加剤のジエチレングリコルジメチルエーテルを用いなかった他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0017】
実施例2
実施例1において、触媒としてヨウ化ナトリウム150mg(1.0mmol)及び炭酸水素ナトリウム84mg(1.0mmol)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0018】
実施例3
実施例1において、触媒として臭化カリウム119mg(1.0mmol)及び炭酸水素カリウム100mg(1.0mmol)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0019】
実施例4
実施例1において、水2.2g(120mmol)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0020】
実施例5
実施例1において、水5.6g(300mmol)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0021】
比較例2
実施例1において、水9.0g(500mmol)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0022】
実施例6
実施例1において、添加剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル3.8gを用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0023】
実施例7
実施例1において、添加剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル5.7gを用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0024】
実施例8
実施例1において、添加剤としてテトラエチレングリコール1.9gを用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0025】
実施例9
実施例1において、添加剤としてポリエチレングリコール(#400)1.9gを用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0026】
実施例10
実施例1において、添加剤としてアセトニトリル1.9gを用いた他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0027】
実施例11
実施例1において、添加剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル5.7gを用い、反応温度を150℃とし、反応時間を1時間とした他は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0028】
実施例12
実施例11において、添加剤としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル3.8gを用いた他は、実施例11と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0029】
実施例13
実施例11において、添加剤としてポリエチレングリコールジメチルエーテル3.8gを用いた他は、実施例11と同様な操作を行った。結果を表1に示す。
【0030】
実施例14
実施例11において、添加剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテル3.8gを用いた他は、実施例11と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例15
SUS製の内容積1500mlのオートクレーブに、ヨウ化カリウム8.3g(50mmol)、炭酸水素カリウム5.0g(50mmol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル180g、水163g(9mol)及びエチレンオキシド 220g(5mol)を装入した。オートクレーブを反応温度が130℃に維持されるよう加熱し、撹拌しながら3時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表2に示す。
【0032】
比較例3
実施例15において、添加剤のジエチレングリコルジメチルエーテルを用いなかった他は、実施例15と同様な操作を行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003956555
【0034】
【表2】
Figure 0003956555
【0035】
【発明の効果】
本発明方法によると、高活性で、かつ高選択的にアルキレングリコールを製造できる。

Claims (5)

  1. 触媒の存在下にアルキレンオキシドと水とを反応させてアルキレングリコール類を製造するにあたり、炭酸ガスの存在下に触媒としてハロゲン化物イオンと炭酸水素イオンを用い、水をアルキレンオキシド1モルに対して1.1〜3モル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びアセトニトリルからなる群より選択されたいずれかの添加剤をアルキレンオキシドに対し10重量%以上用いて反応させることを特徴とするアルキレングリコール類の製造方法。
  2. 添加剤をアルキレンオキシドに対し10〜200重量%の範囲で用いることを特徴とする請求項1に記載のアルキレングリコール類の製造方法。
  3. ハロゲン化物イオンとして臭化物イオンまたはヨウ化物イオンを用いることを特徴とする請求項1または2に記載のアルキレングリコール類の製造方法。
  4. 炭酸水素イオンとして炭酸水素塩、または炭酸ガス存在下に炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物から選ばれる少なくとも1種とを合わせて用いることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のアルキレングリコール類の製造方法。
  5. ハロゲン化物イオン及び炭酸水素イオンをこれらのアルカリ金属塩として用いることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のアルキレングリコール類の製造方法。
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