JP3956277B2 - プリンタヘッド及びプリンタ - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタヘッド及びプリンタに関し、特にノズルよりインク液滴を飛び出させて印刷するプリンタに適用することができる。本発明は、インク液室の圧力を圧力発生素子により可変すると共に、静電方式によるアクチュエータによりこの圧力の変化によるインク液滴の吐出を制御することにより、ノズルを密に配置して、確実にインク液滴を吐出することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット方式によるプリンタにおいては、プリンタヘッドに設けられた微小なノズルよりインク液滴を飛び出させて印刷対象に付着させることにより、文字、画像等を印刷するようになされている。このようなインクジェット方式によるプリンタにおいては、簡単な構成により高画質の画像を出力することができ、その分、広範囲に使用されるようになされている。
【0003】
このインクジェット方式によるプリンタにおいては、インクを飛び出させる駆動力の発生方式により、電気熱変換方式と電気機械変換方式とにより分類される。
【0004】
これらの方式のうち電気熱変換方式は、発熱素子によるインクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させるようになされている。これに対して電気機械変換方式は、圧電素子、静電力振動子等による駆動力によりインク液室の圧力を可変し、この圧力の変化によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させるようになされている。何れの方式においても、これらのプリンタにおいては、1つのノズルに各駆動力を発生する機構が1つ割り当てられるようになされ、この機構の制御により、インク液滴を飛び出させるようになされている。
【0005】
このようなプリンタにおいては、ノズルを高密度に配置することにより、印刷速度を向上し、また画質を向上するようになされている。
【0006】
すなわち印刷速度は、ノズル数とインク吐出周波数とに比例する。このうちインク吐出周波数においては、改善されてはいるものの、インク吐出周期の殆どが、毛細管力によりノズルから飛び出したインクを補給するのに占められる。これによりインク吐出周波数においては、改善の余地が少ないと考えられる。これによりノズル数を増大することにより、印刷速度を確実に向上することができる。
【0007】
しかしながら単にノズルを配置する部位の面積を増大させてノズル数を増大したのでは、歩留まりが急激に低下する恐れがある。また高画質化のためには、解像度を向上することが求められる。これにより従来のプリンタヘッドにおいては、ノズルを高密度に配置することにより、印刷速度を向上し、また画質を向上するようになされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが従来のプリンタヘッドにおいては、ノズルをあまりに高密度に配置することが困難になる問題がある。
【0009】
すなわち従来のプリンタヘッドにおいて、ノズルを高密度に配置するためには、インクを飛び出させる駆動力の発生機構を高密度に配置することが必要になる。
【0010】
電気熱変換方式において、駆動力の発生機構を高密度に配置すると、蓄熱により動作不良が発生する問題がある。すなわち電気熱変換方式においては、発熱素子の加熱により瞬時に温度を上昇させ(発熱素子の表面で300度程度)、また急激に元の温度に復帰させることが必要になり、高密度に配置して蓄熱すると、冷却が不十分なうちに加熱することになり、これにより動作不良が発生する。
【0011】
また電気熱変換方式においては、駆動に大きな電力を要することにより、駆動力の発生機構を高密度に配置して、配線の電気抵抗が増大すると、これによっても蓄熱を増大させることになる。
【0012】
これに対して電気機械変換方式においては、高密度に配置可能に、駆動力の発生機構を幅狭にすると、インクの吐出に必要な駆動力とインク液室の体積変化量が同時に得られず、実用に供し得なくなる。すなわち電気機械変換方式において、インクを十分な速度で吐出するためには、インクの運動エネルギー、吐出時の表面張力による圧力損失、インク液室及びノズルを通過する際の粘性抵抗による圧力損失等を合計した駆動力が必要であり、かつ吐出するインク体積よりも大きいインク液室の体積変化量が必要である。さらに、十分な吐出の繰り返し周波数を得るためには、ノズルの毛管力を駆動力とするインクのリフィル速度も十分大きい必要がある。アクチュエータを幅狭にしてインク吐出条件を保持するには、幅狭化によるインク液室の体積変化量の減少を補償するために、アクチュエータの厚さを薄くして剛性を下げて変位量を大きくするか、アクチュエータの長辺長を長くしなければならない。しかしアクチュエータの厚さを薄くして剛性が低下すれば駆動力が低下してインクは十分な速度で吐出しなくなる。一方、アクチュエータの長辺長を長くすると、インク液室の粘性抵抗が上がり、リフィル速度が低下して十分な吐出周波数が得られなくなる。
【0013】
これにより高密度に配置可能に、駆動力の発生機構を幅狭にすると、インク吐出の必要条件である、駆動力と、インク液室の体積変化量と、インク液室の粘性抵抗によるリフィル周波数を、全て満足する吐出系の設計範囲が著しく狭まり、現実的な製造時のばらつきを考慮すると、結局、極端にノズルを高密度に配置することにより、インクは吐出し得なくなる。
【0014】
具体的に、対抗する電極間で静電力により駆動力を発生する方式においては、振動板が対向電極に接しない範囲では、インク液室の体積変化量が、幅の5乗で減少する。インク液室の体積変化量を増加させるために、インク液室の圧力を可変する振動板を薄すると、振動板は対向電極に接して、駆動力は振動板の厚さの3乗に比例するようになり、駆動力が低下して、結局、インクを吐出できなくなる。またこのような制限により、電気機械変換方式においては、微細化により、アクチュエータの設計自由度が大きく低下することになる。なお、このように発生する力、変位量が寸法の2乗以上に比例して小さくなる現象は、寸法効果と称され、マイクロアクチュエータに重大な課題である。
【0015】
またこれらの他に、ノズルを高密度に配置すると、駆動力発生機構の保持構造、インク液室の隔壁等、圧力発生に寄与しない部分の面積が相対的に増大し、これによっても効率が低下してインクを吐出できなくなる。
【0016】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ノズルを高密度で配置して確実に駆動することができるプリンタヘッド及びプリンタを提案しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、プリンタヘッドに適用して、インク液室の圧力を可変する圧力発生素子と、前記インク液室に設けられて、前記圧力発生素子によって発生する前記インク液室の圧力の変化により可動するダイアフラムと、前記ダイアフラムと対向するように保持されて、電圧を印加して発生する前記ダイアフラムとの間の静電力によって前記ダイアフラムの可動を制御することにより、前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出を制御する固定電極とを備えるようにする。
【0018】
また請求項24の発明においては、プリンタに適用して、プリンタヘッドは、インク液室の圧力を可変する圧力発生素子と、前記インク液室に設けられて、前記圧力発生素子によって発生する前記インク液室の圧力の変化により可動するダイアフラムと、前記ダイアフラムと対向するように保持されて、電圧を印加して発生する前記ダイアフラムとの間の静電力によって前記ダイアフラムの可動を制御することにより、前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出を制御する固定電極とを備えるようにする。
【0019】
請求項1の構成によれば、プリンタヘッドに適用して、インク液室の圧力を可変する圧力発生素子と、前記インク液室に設けられて、前記圧力発生素子によって発生する前記インク液室の圧力の変化により可動するダイアフラムと、
前記ダイアフラムと対向するように保持されて、電圧を印加して発生する前記ダイアフラムとの間の静電力によって前記ダイアフラムの可動を制御することにより、前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の可変に対して、前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出を制御する固定電極とを備えることにより、圧力発生素子においては、複数のインク液室を纏めて駆動することができ、またこのように複数のインク液室を纏めて駆動するようにしても、個々のノズルからのインク液滴の吐出を制御することができる。このとき静電力によれば、発熱素子のような蓄熱による影響を受けることなくダイアフラムの可動を制御して吐出、非吐出を制御することができ、また単に、ダイアフラムの可動を制御して、吐出、非吐出を制御するだけであることにより、小型化に伴い駆動力が減少する場合でも、確実にインク液滴の吐出を制御することができる。これによりノズルを高密度で配置して確実に駆動することができる。
【0020】
また請求項14の構成によれば、ノズルを高密度で配置して確実に駆動することができるプリンタを提案することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0022】
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドについて、一部断面を取って示す平面図(図1(A))、図1(A)をA−A線により切り取って示す平面図である。
【0023】
このプリンタヘッド1においては、インク液室2が連続して形成され、このインク液室2の並び方向に延長するインク流路3を介して、各インク液室2に所定のインクタンクよりインクが供給される。なお各インク液室2とインク流路3との間には、インクの逆流を防止するために、高い流路抵抗を有するオリフィス4が形成されるようになされている。
【0024】
これらインク液室2、インク流路3は、例えば半導体基板等の部材9の加工により底面及び壁面が形成され、ノズル5が形成されてなる板状部材であるノズルプレート6を配置して形成されるようになされている。
【0025】
各インク液室2は、所定個数のインク液室2で一体に可動するように、オリフィス4に近接した底面に、振動板7が形成され、この振動板7が圧力発生素子8により所定周期で可動するようになされている。ここでこの圧力発生素子8は、例えばピエゾ素子等により構成される。これによりこのプリンタヘッド1では、これら複数のインク液室2に1つの駆動機構を割り当てて、インク液室2の圧力を可変するようになされ、これにより圧力発生素子8は、振動板7を変位させてインク液室2の圧力を可変するようになされている。
【0026】
なお各インク液室2は、この振動板7の箇所において、隣接するインク液室2との間の隔壁に、実用上十分にクロストークを防止可能な幅によりスリット14が形成され、このスリット14により振動板7のスムーズな変位を確保し、さらにインクのスムーズな流れを確保して吐出周期を短くすることができるようになされている。なおこのスリット14は、厚みが20〔μm〕以下により形成されて、実用上十分に、隣接するインク液室2との間のクロストークを防止することができるようになされている。
【0027】
さらに各インク液室2は、ノズル5と対抗する底面の部位に、ダイアフラム10が配置される。各インク液室2は、このプリンタヘッド1の保持部材11側のこのダイアフラム10と対抗する部位に、ダイアフラム10に近接して、各インク液室2毎に、固定電極12が形成されるのに対し、ダイアフラム10においては、導電性を有する材料により形成される。これによりプリンタヘッド1では、固定電極12とダイアフラム10との間に電圧を印加することにより、固定電極12にダイアフラム10を引き寄せ、インク液室2の圧力が変化した場合でも、ダイアフラム10が可動しないように、ダイアフラム10を保持できるようになされている。なお固定電極12、ダイアフラム10は、このように固定電極12にダイアフラム10を引き寄せた場合でも、短絡事故が発生しないように、例えば絶縁膜等が形成されるようになされている。
【0028】
これに対して、固定電極12とダイアフラム10とを同電位に設定することにより、自由に可動し得る状態にダイアフラム10を保持し、これによりインク液室2の圧力の変化を緩和して、ノズル5からインク液滴が飛び出さないようになされている。
【0029】
これによりこの実施の形態において、ダイアフラム10は、固定電極12と対向するように保持された可動電極を構成し、ダイアフラム10、固定電極12は、固定電極12との間で発生する静電力によりダイアフラム10の可動を制御して、インク液室2における圧力の伝搬を制御する静電アクチュエータを構成するようになされている。
【0030】
またこのプリンタヘッド1においては、このような静電アクチュエータによる圧力の伝搬の制御が、ダイアフラム10を可動自在に保持して、圧力発生素子8によるインク液室2の圧力の変化を緩和し、インク液滴の吐出を停止する吐出停止の状態と、ダイアフラム10の可動を制限して、圧力発生素子8によるインク液室2の圧力の変化によりインク液滴を吐出させる吐出の状態との切り換えであるようになされている。
【0031】
(1−2)第1の実施の形態の動作
以上の構成において、このプリンタヘッド1では、インク流路3を介して、インクタンクより各インク液室2にインクが導かれる。プリンタヘッド1では、1つの圧力発生素子8の駆動により、この圧力発生素子8が割り当てられた複数のインク液室2において、振動板7が所定周期で可動し、これによりインク液室2の圧力がこの圧力発生素子8の駆動により変動する。
【0032】
プリンタヘッド1において、インク液滴を飛び出させないインク液室2においては、固定電極12とダイアフラム10とが同電位に保持され、これにより図2(A)及び(B)に示すように、圧力発生素子8の駆動によるインク液室2の圧力の変化を緩和するように、ダイアフラム10が可動する。その結果として、このインク液室2においては、インク液滴を飛び出させる程の圧力の増大が防止され、インク液滴が飛び出さないように制御される。
【0033】
すなわち振動板7が引き出されてインク液室2の圧力が小さくなると(図2(A))、その分、ダイアフラム10がインク液室2側に変位し、これによりインク液室2における圧力の低下が緩和される。またこれとは逆に、振動板7が押し上げられてインク液室2の圧力が大きくなると(図2(B))、その分、ダイアフラム10が固定電極12側に変位し、これによりインク液室2における圧力の増大が緩和される。
【0034】
これに対してインク液滴を飛び出させるインク液室2においては、固定電極12とダイアフラム10とに電位差が与えられ、これにより図3(A)及び(B)に示すように、固定電極12にダイアフラム10が吸着されて可動困難に保持される。これによりこのインク液室2においては、圧力発生素子8の駆動による振動板7の変位に応じてインク液室2の圧力が変化し、この圧力の変化によりノズル5からインク液滴を飛び出させることができる。
【0035】
これによりこのプリンタヘッド1では、インク液室2の圧力を圧力発生素子8により可変すると共に、静電方式によるアクチュエータによりこの圧力の変化によるノズル5からのインク液滴の吐出を制御することにより、圧力発生素子8で複数のインク液室2を纏めて駆動できるようになされ、これによりノズル5を密に配置して、確実にインク液滴を吐出できるようになされている。
【0036】
すなわち発生する駆動力、変位量が、大きさの2乗以上に比例して低下する寸法効果においては、逆の見方をすれば、駆動機構の寸法を大きくすれば、その分、急激に駆動力、変位量が大きくなることを意味する。すなわち寸法の小さなアクチュエータを個々のインク液室に割り当てて駆動する場合に比して、これらインク液室にまとめて1つのアクチュエータを割り当てるようにすれば、全体として得られる駆動力、変位量においては、格段的に大きくなり、その分、個々のインク液室に割り当てられる駆動力、変位量においても、格段的に大きくなる。これによりノズル5を密に配置し、その結果インク液室2が密に配置されている場合でも、各インク液室2にインクの吐出に十分な圧力の変化を与えることができる。
【0037】
ところがこのような大型のアクチュエータによる複数のインク液室2の纏めた駆動によっては、個々のノズル5におけるインク吐出の制御が困難になる。しかしながら、個々のインク液室において、この大型のアクチュエータによる圧力の変化を緩和する機構を小型のアクチュエータにより構成すれば、インク液滴の吐出を個々のノズル毎に制御することが可能となる。
【0038】
この場合、このようにして個々のインク液室に配置する小型のアクチュエータにおいては、単に圧力の変化を緩和すればよいことにより、大きな駆動力を必要とせず、これにより小型に形成して密に配置した場合でも、十分にインク液滴の吐出を制御することができる。
【0039】
これらのことから、この実施の形態では、ノズル5を密に配置して、確実にインク液滴を吐出できるようになされている。
【0040】
ここでこの種のインク吐出機構を線形応答の系で考えると、駆動素子が投入する圧力が入力であり、ノズルからの体積速度が出力になる。この系においては、入力と出力との比例定数が流路抵抗となり、入力の微分値と出力の微分値との比例定数が音響容量となる。また入力の積分値と出力の積分値との比例定数がイナータンスとなる。これらのうち流路抵抗は、インク液室等の壁面と流体との摩擦力に相当し、音響容量は、圧力に応じて出入りする流体の体積に相当する。またイナータンスは、流体の慣性抵抗に相当する。
【0041】
このようにしてインク吐出機構を線形応答の系で考え、電気回路における等価回路に置き換えると、圧力、体積速度、流路抵抗、音響容量、イナータンスを、それぞれ起電力、電流、電気抵抗、キャパシタンス、インダクタンスに対応付けて表すことができる。なおここで、圧力の発生源である圧力発生素子8が交流電源となり、プリンタヘッドにおいては、これらの要素のうちの何れかの制御により、インピーダンスを可変して体積速度を変化させることになる。
【0042】
このインピーダンスの可変においては、イナータンスに比して、流路抵抗、音響容量の制御が容易である。具体的には、インク経路にバルブを設けてインク流量を調整する場合、インクを電気粘性流体にして流体の粘性率を制御する場合である。但し、数10〔μm〕の寸法である流路について、流路抵抗を大きく変えるためには、少なくとも流路幅を10〔μm〕程度変位させることが必要であるが、このような小型の流路に対応する大きさにより、これ程大きな変位を確保するアクチュエータにあっては、実現が難しい。これにより水系のインクを使う場合は、電気粘性流体のインクは困難であり、この実施の形態のように、個別のアクチュエータで音響容量を制御する方法が最も現実的であると言える。
【0043】
なお、このような圧力発生素子と圧力吸収手段を組み合わせて使用する方法は、特開平7−156393号公報に開示されている。しかしながら特開平7−156393号公報に開示の手法は、発熱素子の駆動により発生する気泡を圧力吸収手段として利用するものであることにより、電気熱変換方式によるプリンタヘッドについて上述したような、蓄熱により特性の劣化を避け得ず、結局、電気熱変換方式によるプリンタヘッドと同様に、駆動周波数を100〔kHz〕程度にまでしか増大できないと考えられる。
【0044】
しかしながらこの実施の形態のように、静電力によるアクチュエータにより圧力吸収手段を構成すれば、このような蓄熱により制限を回避することができ、また気泡による制御のような気泡発生タイミングの煩雑な制御を有効に回避して、簡易な制御によりインク液滴を精度良く制御することができる。また制御に要する電力の消費を格段的に少なくすることができる。なおこの実施の形態のように、流路壁の一部の剛性を静電力で変化させ、インク液室の圧力変化を制御する場合の電力は、気泡を生成に消費する電力の1/100である。
【0045】
すなわち静電力によりダイアフラム10を固定電極12に吸引して固着しておけば、ダイアフラム10がインクの流れに影響を与えるダイアフラム10の有効な幅は、最初の半分以下となる。ダイアフラム10の変位容量は、幅の5乗に反比例することにより、ダイアフラム10を静電力により固定すれば、音響容量は著しく小さくなり、圧力発生素子8で発生した圧力の大部分は、ノズル5近傍まで到達し、これによりインクがノズル5から吐出することになる。
【0046】
これに対して、ダイアフラム10を自由に変位できるように保持すると、圧力の変動に応じてダイアフラム10が大きく変動し、これにより大きな音響容量を生み出し、圧力発生素子8で発生した圧力は、殆どが吸収される。その結果、圧力発生素子8で発生した圧力は、インク吐出に必要な体積速度を与えることが困難になり、インクの吐出が停止制御される。
【0047】
これらによりこのプリンタヘッド1においては、このようにして対応付けた電気系の等価回路の解析により、各パラメータを最適化することができる。すなわち圧力発生素子8による発生圧力、周波数(交流電源の電圧と周波数)、吐出周波数(系の固有振動数)、インク吐出体積(系の電流)に対して、流路設計(抵抗とインダクタンス)、音響容量の変化(コンデンサーの可変量)を求められることにより、これらのパラメータを最適化することができる。
【0048】
またインク液滴を吐出しないようにしている場合には、ダイアフラム10が振動していることにより、この振動に同期したタイミング(すなわちインク液室2の圧力の変化によりダイアフラム10が平衡位置より固定電極12側に接近したタイミングである)により固定電極12にダイアフラム10を吸引するようにして、ダイアフラム10と固定電極12との間に小さな電位差を与えて、ダイアフラム10を固定電極12に引き寄せて保持することができる。これによりこの実施の形態では、簡易かつ確実にインク液滴の吐出を制御できるようになされている。
【0049】
すなわちこのようにすると、ダイアフラム10が平衡位置から固定電極12へ移動する力は、インク液室内の圧力波をも利用することになり、平衡位置で固定電極12との間の間隔が長い場合でも、十分に吸引して保持することができる。またこの固定電極12との間の静電引力は、ダイアフラム10を固定電極12に固定する力として使用されることにより、インク液室内の圧力変動に応じてギャップが最小の時のタイミングで、固定電極12にダイアフラム10を引き寄せるようにすれば、印加電圧が小さくてもダイアフラム10を強く固定することができる。
【0050】
(1−3)第1の実施の形態の効果
以上の構成によれば、インク液室2の圧力を圧力発生素子8により可変すると共に、静電方式によるアクチュエータによりこの圧力の変化によるノズル5からのインク液滴の吐出を制御することにより、1つの素子で複数のインク液室2を纏めて駆動でき、これによりノズル5を密に配置して、確実にインク液滴を吐出することができる。なお実験した結果によれば、ノズル5を80〔μm〕以下のピッチで配列して、確実にインク液滴を吐出させることができた。
【0051】
なおこのような1つの駆動機構8により駆動可能なインク液室の数は、数十から数百であり、これによりこれら数十から数百のインク液室を単位にしてプリンタヘッドを構成して、高い信頼性により高速、かつ高解像度の印刷結果を得ることができる。
【0052】
また厚みが20〔μm〕以下の流路により隣接するインク液室を結合することにより、隣接するノズルとの間のクロストークを有効に回避して、短時間でインク液室の状態をインク吐出前の状態に復帰させることができ、その分、インク吐出周期を短くすることができる。かくするにつき、スリット状の隙間の流路抵抗は、スリット幅の3乗に反比例することにより、このようなスリットにおいては、クロストークを防止する観点からは隙間が狭い方が望ましく、20〔μm〕以下により実用上十分な特性を確保することができる。
【0053】
(2)第2の実施の形態
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。なおこの図4は、図1との対比により、ノズルプレート32を取り外した状態で、隣接する2つのインク液室を示す平面図、ノズルプレート32を取り付けた状態の断面図である。このプリンタヘッド31において、図1について上述したプリンタヘッド1と同一の構成は、対応する符号を付して示し重複した説明は、省略する。
【0054】
プリンタヘッド31は、インク流路3を間に挟んで、この図4に示す構成と同一の構成に係るインク液室2等が、インク流路3に沿った方向に、この図4に示す構成の繰り返し周期の1/2の周期分だけシフトして配置されるようになされ、これによりインク流路3を間に挟んで、ノズル5が千鳥に配置されるようになされている。
【0055】
この実施の形態では、シリコン単結晶9の異方性エッチングによりインク液室2を作成し、また圧力発生素子を静電アクチュエータにより形成し、全体を半導体プロセスにより作成する。
【0056】
なおプリンタヘッド31は、ノズル5の直径が20〔μm〕、インク流路3に沿った方向のノズル5間の間隔が85〔μm〕、1列のノズル数が200個により形成される。またノズル5側より見てインク液室2が長方形形状により形成され、その長辺が長さ1000〔μm〕、短辺が長さ70〔μm〕により形成される。また同様に、長辺の長さ18000〔μm〕、短辺の長さ200〔μm〕、厚さが3〔μm〕により振動板7が形成される。また振動板7は、対向する固定電極33との間のギャップが0.9〔μm〕により形成され、ダイアフラムは、長辺長400〔μm〕、短辺長70〔μm〕、厚さ1〔μm〕により形成され、対向する固定電極12との間のギャップが3〔μm〕に設定されるようになされている。
【0057】
図5〜図8は、図4(A)及び(B)との対比により、このプリンタヘッド31の作成手順を示す断面図及び平面図である。この製造工程においては、所定板厚の基板39の両面を加工してプリンタヘッド1を製造する。ここでこの製造工程において、基板39は、半導体基板が適用され、具体的には(100)表面を有するシリコン単結晶基板が適用される。この工程は、図5(A)に示すように、板厚が100〔μm〕となるまでこの基板39の両面を研磨する。なお以下において、この基板39の両面において、固定電極12側の面を裏面(符号Bにより示す)、ノズル5を設ける側の面を表面(符号Cにより示す)と呼ぶ。
【0058】
この工程は、拡散炉による熱処理により、基板39の両面に厚さ2.0〔μm〕の熱酸化シリコン層を形成し、表面Cにレジストを塗布して保護層を形成する。この工程は、この状態で裏面Bに形成された熱酸化シリコン層をバッファード弗酸により除去し、その後、洗浄工程を経た後、表面Cのレジストを除去する。これらによりこの工程は、図5(B)に示すように、裏面B側の加工時、表面Cを保護する保護膜42を表面Cに形成する。
【0059】
続いてこの工程は、図5(C)に示すように、拡散炉中で基板39を1200度に加熱し、裏面Bにボロン拡散層43を形成する。ここでこのボロン拡散層43は、BCl2 ガスを導入して形成され、ボロンの拡散濃度が所定値となるように形成される。なおここではこの所定値が、深さ3〔μm〕において、2×1019〔個/cc〕以上の濃度となるように選定される。ここでこのボロン拡散層43は、後述する処理により、プリンタヘッド31の振動板7、ダイアフラム10を構成し、このボロンの拡散により、振動板7、ダイアフラム10に求められる弾性等を確保し、さらにはエッチングストップ層を形成するようになされている。
【0060】
続いてこの工程は、図6(D1)及び(D2)に示すように、表面Cの熱酸化シリコン層42をインク液室2、インク流路3に対応する形状によりパターニングする。なおこのプリンタヘッド31は、振動板7のインク液室側において、隣接するインク液室2との間の壁面については、一辺が15〔μm〕の平行四辺形の柱状体が20〔μm〕ピッチで並ぶように、熱酸化シリコン層42をパターニングする。
【0061】
続いてこの工程は、図6(E)に示すように、20〔重量%〕の水酸化カリウム水溶液を用いて、ボロン拡散層43をエッチングストップ層として、基板39を異方性エッチングする。これによりこの工程は、インク液室2、インク流路3の形状を形成し、また振動板7を形成する。
【0062】
続いてこの工程は、図7(F)に示すように、裏面B側からのSF6 ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、ダイアフラム10を形成する部位を厚さ1〔μm〕になるまでエッチングする。
【0063】
続いてこの工程は、図7(G1)及び(G2)に示すように、TEOS−O3 CVDにより、ボロン拡散層43の裏面Bに酸化シリコン膜を0.3〔μm〕成膜し、バッファード弗酸を用いた等方性エッチングにより、振動板7及びダイアフラム10の長辺方向及び短辺方向に、それぞれ20〔μm〕の間隔により、ドット状に酸化シリコン膜による角柱45を形成する。ここでこの角柱45は、一辺が5〔μm〕により形成され、プリンタヘッド31では、この角柱45により振動板7、ダイアフラム10が固定電極33、12と短絡しないようになされている。続いてこの工程は、隣接するインク液室2との間の壁面の部位に形成した平行四辺形の柱状体について、熱酸化シリコン層42を除去する。
【0064】
このような基板39の加工とは別工程において、この製造工程は、図8(H)に示すように、パイレックスガラス基板46を用意し、クロムをマスクとして10〔%〕の弗酸水溶液でこのパイレックスガラス基板46をエッチングすることにより、固定電極12、33を作成する部位に、深さ1〔μm〕の溝47を形成する。
【0065】
またリフトオフ法により、図8(I1)及び(I2)に示すように、溝47に、0.1〔μm〕のITO膜を形成し、これにより固定電極12、33を形成する。なお固定電極12、33の電極パッド部には、クロム/金をメッキする。
【0066】
この工程は、続いて図8(J)に示すように、図7(G1)及び(G2)について説明したシリコン基板39を、このパイレックスガラス基板46に精度良く重ね合わせた後、400度、1〔kV〕の条件により陽極接合する。これによりこの工程は、所定の空隙を間に挟んで、ダイアフラム10及び振動板7を固定電極12及び33と対向させ、シリコン基板39とパイレックスガラス基板46とを一体化する。
【0067】
さらにこの工程は、続いてノズルプレート32を表面Aに接着する(図4)。ここでノズルプレート32は、別工程で、電鋳により作成されたニッケル製の板状部材であり、直経20〔μm〕のノズル5が各インク液室2に対応する個所に形成されるようになされている。
【0068】
続いてこの工程は、インク流路3とインクタンクとをポリプロピレン系のチューブで接続し、また固定電極12、33、シリコン基板39に配線を施す。
【0069】
このようにして作成されたプリンタヘッド31にインクを導入すると、インクは毛管力で自発的にインク液室2に充填し、ノズル5まで到達してメニスカスを形成した。
【0070】
このプリンタヘッド31においては、振動板7と対向電極12間に波高値30〔V〕、パルス幅10〔μsec〕によるパルス波を500〔μsec〕周期(20〔kHz〕)で与え、振動板7を振動させた。またこの振動板7の振動により変化するインク液室2の圧力の変化により、ダイアフラム10が平衡位置より固定電極12側に接近するタイミングで、インクを吐出させるインク液室2についてだけ、選択的に固定電極12に電圧を印加し、該当するダイアフラム10を固定電極12に吸着して保持した。
【0071】
このようにして駆動して、このプリンタヘッド31では、3ピコリットルのインク液滴を吐出することができ、ダイアフラム10を可動自在に保持したノズル5においては、メニスカスの盛り上がりが発生するものの、インクが吐出しないことを確認することができた。なおインクの吐出速度は、8〔m/秒〕であり、駆動周波数が50〔kHz〕まで、安定に動作することを確認することができた。
【0072】
図4の構成によれば、インク液室に設けられた振動板を静電力により変位させて、インク液室の圧力を可変する構成の静電アクチュエータにより圧力発生素子を構成するようにしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
またシリコン単結晶基板を異方性エッチングしてインク液室を作成したことにより、ミクロン単位の精度で深さの深いインク液室を簡易に作成することができる。
【0074】
またダイアフラムをシリコンにより作成したことにより、異方性エッチングのストッパー層を用いて、所望の膜厚により、十分な弾性、強度を有してなるダイアフラムを簡易に作成することができる。
【0075】
また陽極接合により一体化して、ダイアフラムと固定電極とを対向させて保持することにより、ダイアフラムと、固定電極とで、それぞれ種々の工程を適用することができる。
【0076】
(3)第3の実施の形態
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。なおこの図9は、図1との対比により、ノズルプレート32を取り外した状態で、隣接する2つのインク液室を示す平面図、ノズルプレート32を取り付けた状態の断面図である。このプリンタヘッド51において、図1及び図4について上述したプリンタヘッド1と同一の構成は、対応する符号を付して示し重複した説明は、省略する。
【0077】
このプリンタヘッド51においても、インク流路3を間に挟んで、この図9に示す構成と同一の構成に係るインク液室2等が所定周期分だけシフトして配置され、これによりインク流路3を間に挟んで、ノズル5が千鳥に配置されるようになされている。
【0078】
この実施の形態では、シリコン単結晶9の異方性エッチングによりインク液室2を作成し、また圧力発生素子8をピエゾ素子により形成し、全体を半導体プロセスにより作成する。なおこのプリンタヘッド51は、第2の実施の形態に係るプリンタヘッド31と、ノイズ径、ノイズピッチ等が同一に形成される。
【0079】
図10〜図13は、図9(A)及び(B)との対比により、このプリンタヘッド51の作成手順を示す断面図及び平面図である。この製造工程においては、所定板厚の基板39の両面を加工してプリンタヘッド1を製造する。ここでこの製造工程において、図10(A)に示すように、第2の実施の形態と同様に、(100)表面を有するシリコン単結晶基板39を板厚が100〔μm〕となるまで両面研磨する。
【0080】
また図10(B)に示すように、拡散炉による熱処理により、続いて基板39の両面に厚さ2.0〔μm〕の熱酸化シリコン層52、53を形成する。
【0081】
続いてこの工程は、図10(C)に示すように、表面Cの熱酸化シリコン層52をインク液室2、インク流路3に対応する形状によりパターニングする。なおこのプリンタヘッド51は、振動板7のインク液室側において、隣接するインク液室2との間の壁面については、一辺が15〔μm〕の平行四辺形の柱状体が20〔μm〕ピッチで並ぶように、熱酸化シリコン層42をパターニングする。
【0082】
続いてこの工程は、図11(D1)及び(D2)に示すように、20〔重量%〕の水酸化カリウム水溶液を用いて、裏面Bの熱酸化シリコン層53をストッパ層として、基板39を異方性エッチングし、インク液室2、インク流路3の形状を形成し、また裏面Bの熱酸化シリコン層53により振動板7、ダイアフラム10の一部を形成する。
【0083】
続いてこの工程は、図11(E)に示すように、スパッタリングにより、裏面Bのダイアフラム10を形成する部位に、アルミニウム膜55を0.1〔μm〕成膜してパターニングし、これによりダイアフラム10に可動電極55を形成する。
【0084】
続いてこの工程は、図12(F1)及び(E2)に示すように、TEOS−O3 CVDにより、可動電極55の裏面B側に酸化シリコン膜を0.3〔μm〕成膜し、バッファード弗酸を用いた等方性エッチングにより、ダイアフラム10の長辺方向及び短辺方向に、それぞれ20〔μm〕の間隔により、ドット状に酸化シリコン膜による角柱56を形成する。ここでこの角柱45は、一辺が5〔μm〕により形成され、プリンタヘッド51では、この角柱56によりダイアフラム10の可動電極55が固定電極12と短絡しないようになされている。続いてこの工程は、隣接するインク液室2との間の壁面の部位に形成した平行四辺形の柱状体について、熱酸化シリコン層52を除去する。
【0085】
このような基板39の加工とは別工程において、この製造工程は、図12(G)に示すように、厚さ10〔mm〕のアルミニウム基板57を用意し、ピエゾ素子8を配置する溝58を機械加工により作成する。なおこの実施の形態において、溝58は、深さ5〔mm〕、短辺0.5〔mm〕、長辺20〔mm〕により形成される。さらに続いてこの溝58にピエゾ素子8が配置される。ここでピエゾ素子8は、高さ5〔mm〕、短辺0.4〔mm〕、長辺19〔mm〕のものが適用され、溝58の底面に接着して保持される。さらにこの工程は、このようにピエゾ素子8を配置した状態で、上面側を鏡面研磨し、ピエゾ素子8の表面とアルミニウム基板57の表面との高さを一致させる。
【0086】
続いてこの工程は、図13(H1)及び(H2)に示すように、基板57に感光性エポキシ接着剤を3〔μm〕の膜厚により塗布し、露光によりダイアフラム10と対向する部位、溝58の面についてのみ、エポキシ樹脂を選択的に除去する。
【0087】
この工程は、続いて図13(I)に示すように、図12(F1)及び(F2)について説明したシリコン基板39を、このアルミニウム基板57に精度良く重ね合わせた後、加圧して60度に加熱し、これによりエポキシ接着剤を硬化させてシリコン基板39とアルミニウム基板57とを一体化する。このときこの工程は、併せて、ピエゾ素子8と振動板7を接着する。
【0088】
さらにこの工程は、ノズルプレート32を表面Aに接着し(図9)、インク流路3とインクタンクとをポリプロピレン系のチューブで接続し、また配線を施す。
【0089】
このようにして作成されたプリンタヘッド51にインクを導入すると、インクは毛管力で自発的にインク液室2に充填し、ノズル5まで到達してメニスカスを形成した。
【0090】
このプリンタヘッド51においては、ピエゾ素子8に波高値30〔V〕、パルス幅10〔μsec〕によるパルス波を500〔μsec〕周期(20〔kHz〕)で与え、これにより振動板7を1〔μm〕振動させてインク液室2の圧力を可変した。またこのインク液室2の圧力の変化により、ダイアフラム10が平衡位置より固定電極12側に接近するタイミングで、インクを吐出させるインク液室2についてだけ、選択的にダイアフラム10に形成された可動電極55に電圧を印加し、該当するダイアフラム10を固定電極12(この場合は、アルミニウム基板57である)に吸着して保持した。
【0091】
このようにして駆動して、このプリンタヘッド51では、3ピコリットルのインク液滴を吐出することができ、ダイアフラム10を可動自在に保持したノズル5においては、メニスカスの盛り上がりが発生するものの、インクが吐出しないことを確認することができた。なおインクの吐出速度は、8〔m/秒〕であり、駆動周波数が50〔kHz〕まで、安定に動作することを確認することができた。
【0092】
このプリンタヘッド51では、このようなインク液室の圧力の変化に応じて、インク流路3とインク液室2との間の流路抵抗も周期的に変動し、これによりインク吐出時には逆流を防ぎ、インク導入時は、流路抵抗を低減することができた。これによりインクの吐出速度は、12〔m/秒〕まで上昇し、駆動周波数は、50〔kHz〕を確保することができた。
【0093】
この図9に示す構成によれば、圧力発生素子をピエゾ素子により構成するようにしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(4)第4の実施の形態
図14は、本発明の第4の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。このプリンタヘッド71において、上述したプリンタヘッド1等と同一の構成は、対応する符号を付して示し重複した説明は、省略する。
【0095】
プリンタヘッド71においても、インク流路3を間に挟んで、この図14に示す構成と同一の構成に係るインク液室2等が所定周期分だけインク流路3に沿った方向にシフトして配置され、これによりインク流路3を間に挟んで、ノズル5が千鳥に配置されるようになされている。
【0096】
この実施の形態では、分子量が2000以上の高分子材料である液晶ポリマーによりインク液室2等を形成する。また圧力発生素子8に、電磁アクチュエータを適用する。
【0097】
なおプリンタヘッド71は、ノズル5の直径が25〔μm〕、インク流路3に沿った方向のノズル5間の間隔が127〔μm〕(これによりノズルピッチは、千鳥の配置により400DPIに相当する)、1列のノズル数が2000個により形成される。またノズル5側より見てインク液室2が長方形形状により形成され、その長辺が長さ2000〔μm〕、短辺が長さ90〔μm〕により形成される。また同様に、長辺の長さ250000〔μm〕、短辺の長さ1000〔μm〕、厚さが15〔μm〕により振動板7が形成される。またダイアフラムは、長辺長500〔μm〕、短辺長100〔μm〕、厚さ15〔μm〕により形成され、対向する固定電極12との間のギャップが5〔μm〕に設定されるようになされている。
【0098】
図15〜図17は、図14(A)及び(B)との対比により、このプリンタヘッド71の作成手順を示す断面図及び平面図である。この製造工程においては、液晶ポリマーの射出成型により、図15(A1)及び(A2)に示すように、インク液室2のノズル5側面、このノズル5側面を囲む壁面、インク流路3を囲む壁面等を形成する。なおここでノズル5側面は、厚み50〔μm〕により形成され、ノズル5の部分は、表面側に近づくに従って径が小さくなる曲面形状により形成され、表面の部分が厚さ5〔μm〕により閉じて形成されるようになされている。なお、この射出成形品72は、インク流路3よりインク液室2にインクを導くオリフィス4が形成されるようになされている。
【0099】
この工程は、この射出成形品72について、ノズル5側面にシリコーン含有レジストを塗布した後、ノズル形状によりレジストを孔明けし、酸素反応性イオンスパッタリングによりノズル5の部位を孔明けする。これにより図15(B1)及び(B2)に示すように、この工程では、射出成形品72にノズル5を形成する。
【0100】
続いてこの工程は、図16(C)に示すように、クロムである導電性の金属膜73Aを厚さ12.5〔μm〕によりスパッタしてなるポリイミドフィルム73に対して、金属膜73側の面とは逆側の面に、膜厚4〔μm〕により均一にエポキシ系接着剤を塗布し、射出成形品72の開口側を塞ぐように、射出成形品72に接着する。これによりこの工程は、インク液室2、インク流路3を形成し、また分子量が2000以上の高分子材料であるポリイミドフィルム73により振動板7、ダイアフラム10を形成するようになされている。
【0101】
続いてこの工程は、この射出成形品72の加工工程とは別工程により、ガラス繊維で補強したエポキシ樹脂による基板(ガラスエポキシ基板)75について、図16(D1)及び(D2)に示すように、ダイアフラム10に対応する部位に固定電極12を形成する。さらに続いて、レジストを5〔μm〕の膜厚により塗布した後、パターニングし、これにより固定電極12を囲む枠形状により、ダイアフラム10との間のギャップを形成する壁面(スペーサー)76を形成する。なお固定電極12においては、このようにして形成した枠形状による壁面76より所定方向にはみ出すように形成され、このはみ出した部位が電極として利用されるようになされている。
【0102】
この工程は、続いて図17(E)に示すように、射出成形品72とガラスエポキシ基板75とを精度良く重ね合わせた後、120度に加熱し、壁面76を構成するレジストの溶融を利用して、射出成形品72とガラスエポキシ基板75と接着して一体化する。
【0103】
さらにこの工程は、図14に示すように、電磁アクチュエータによる圧力発生素子8を振動板7に接着して配置した後、配線を施して完成される。
【0104】
このようにして作成されたプリンタヘッド71にインクを導入すると、インクは毛管力で自発的にインク液室2に充填し、ノズル5まで到達してメニスカスを形成した。
【0105】
このプリンタヘッド71においては、電磁アクチュエータ8に波高値10〔V〕、パルス幅50〔μsec〕によるパルス波を200〔μsec〕周期(5〔kHz〕)で与え、これにより振動板7を振動させてインク液室2の圧力を可変した。またこのインク液室2の圧力の変化により、ダイアフラム10が平衡位置より固定電極12側に接近するタイミングで、インクを吐出させるインク液室2についてだけ、選択的に対応する固定電極12に電圧を印加し、該当するダイアフラム10を固定電極12に吸着して保持した。
【0106】
このように駆動して、このプリンタヘッド71では、7ピコリットルのインク液滴を吐出することができ、ダイアフラム10を可動自在に保持したノズル5においては、メニスカスの盛り上がりが発生するものの、インクが吐出しないことを確認することができた。なおインクの吐出速度は、6〔m/秒〕であり、駆動周波数が10〔kHz〕まで、安定に動作することを確認することができた。
【0107】
図14に示す構成によれば、電磁力により可動する電磁アクチュエータにより圧力発生素子を構成するようにしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また電磁アクチュエータにより大きな駆動力を得ることができ、これにより多数のインク液室をまとめて駆動することができる。
【0108】
また少なくとも導電性を有する電極層であるクロム膜と、この電極層を保持する構造層とによりダイアフラムを形成することにより、種々の材料をダイアフラムに適用することができる。
【0109】
またこの構造層が、分子量2000以上の高分子材料であるポリイミドフィルムであることにより、充分な弾性、強度を確保することができる。
【0110】
またインク液室を分子量2000以上の高分子材料である液晶ポリマーにより形成することにより、射出成形によりインク液室等を作成することができる。これにより簡易な工程により、ノズル列の長いプリンタヘッドを作成することができる。
【0111】
(5)第5の実施の形態
図18は、本発明の第5の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。このプリンタヘッド91において、上述したプリンタヘッド1等と同一の構成は、対応する符号を付して示し重複した説明は、省略する。
【0112】
プリンタヘッド91においては、インク流路3を間に挟んで、この図18に示す構成と同一の構成に係るインク液室2等が所定周期分だけ、インク流路3の延長する方法にシフトして配置され、これによりインク流路3を間に挟んで、ノズル5が千鳥に配置されるようになされている。
【0113】
このプリンタヘッド91は、このインク流路3を間に挟んだ千鳥配置によるノズル列を、同様にインク流路3に沿った方向にシフトさせて2列配置し、これによりこの図18に示す基本的な構成によるノズル列の配置に対して、4倍の解像度を確保できるようになされている。かくするにつきこの実施の形態では、このインク流路3の片側に配置されるノズルが、直径25〔μm〕、ノズル間間隔127〔μm〕、ノズル数2000〔個/列〕により形成され、これによりこの1列により、A4用紙サイズの短辺側幅で200〔DPI〕の解像度を確保できるようになされている。これによりこのプリンタヘッド91は、4列のノズル列により1色で200×4=800〔DPI〕の解像度を確保できるようになされている。
【0114】
さらにこの実施の形態では、このような4列によるノズル列が、イエロー、ライトイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの7色分、並列に配置され、これにより2000×8=56000本のノズル5を全体で有するようになされている。
【0115】
なおプリンタヘッド91は、ノズル5側より見てインク液室2が長方形形状により形成され、その長辺が長さ1000〔μm〕、短辺が長さ90〔μm〕により形成される。また同様に、ダイアフラムは、長辺が長さ500〔μm〕、短辺が長さ100〔μm〕、厚さが15〔μm〕により形成され、対向する固定電極12との間のギャップが5〔μm〕に設定されるようになされている。
【0116】
これにより千鳥配置の1グループで、インク液室2を横切る方向の長さが8〔mm〕により形成され、全体として26〔cm〕×6〔cm〕の大きさにより形成されるようになされている。これによりA4サイズの用紙に対して1回のスキャンにより高解像度によるカラー画像を印刷できるようになされている。なおこのプリンタヘッド91において、スキャン方向の解像度を1600〔DPI〕に設定すると、後述するようにインク吐出周波数として10〔kHz〕を確保できることにより、A4サイズのフルカラー画像を2秒で印刷することができる。
【0117】
この実施の形態においては、固定電極12の下側に、圧力発生素子8を配置する。
【0118】
図19〜図21は、このプリンタヘッド91の作成手順を示す断面図及び平面図である。この製造工程においては、第4の実施の形態と同様にして、高分子材料である液晶ポリマーの射出成形品72により、インク液室2、インク流路3を囲む壁面等を形成し、またノズル5を作成した後、金属膜73Aを有してなるポリイミドフィルム73を接着し、これによりインク液室2、インク流路3、ダイアフラム10を形成する(図19(A1)〜図20(C))。
【0119】
この工程は、この射出成形品72の加工工程とは別工程により、図20(D1)及び(D2)に示すように、所定板厚のガラス基板92に、固定電極12を形成し、また低温ポリシリコンプロセスによりTFTトランジスタによるドライバー回路を形成する。なおこのドライバー回路は、所定の駆動信号により対応する固定電極12に電圧を印加して静電アクチュエータを駆動できるように形成される。
【0120】
さらに続いて、レジストを5〔μm〕の膜厚により塗布した後、パターニングし、これにより固定電極12を囲む枠形状により、ダイアフラム10との間のギャップを形成する壁面76(スペーサー)を形成する。
【0121】
この工程は、続いて図21(E)に示すように、射出成形品72とガラス基板92とを精度良く重ね合わせた後、120度に加熱し、壁面76を構成するレジストの溶融を利用して、射出成形品72とガラス基板92とを接着して一体化する。
【0122】
さらにこの工程は、図18に示すように、積層ピエゾ素子による圧力発生素子8を固定電極12の裏面側に配置した後、配線を施して完成される。なおこのプリンタヘッド91では、全体として均一にガラス基板92が振動するように、インク流路の片側のノズル列に対して、6個の積層ピエゾ素子が配置されるようになされている。
【0123】
このようにして作成されたプリンタヘッド91にインクを導入すると、インクは毛管力で自発的にインク液室2に充填し、ノズル5まで到達してメニスカスを形成した。
【0124】
このプリンタヘッド91においては、積層ピエゾ素子8に波高値35〔V〕、パルス幅10〔μsec〕によるパルス波を100〔μsec〕周期(10〔kHz〕)で与え、これにより全体を振動させてインク液室2の圧力を可変した。またこのインク液室2の圧力の変化により、ダイアフラム10が平衡位置より固定電極12側に接近するタイミングで、インクを吐出させるインク液室2についてだけ、選択的に対応する固定電極12に電圧を印加し、該当するダイアフラム10を固定電極12に吸着して保持した。
【0125】
このようにして駆動して、このプリンタヘッド91では、3ピコリットルのインク液滴を吐出することができ、ダイアフラム10を可動自在に保持したノズル5においては、メニスカスの盛り上がりが発生するものの、インクが吐出しないことを確認することができた。なおインクの吐出速度は、10〔m/秒〕であり、駆動周波数は15〔kHz〕まで、安定に動作することを確認することができた。
【0126】
以上の構成によれば、固定電極12の下側に、圧力発生素子8を配置し、ダイアフラム10等を介して間接的な駆動によりインク液室の圧力を圧力発生素子8により可変するようにしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
またTFTトランジスタによるドライブ回路を併せて実装することにより、外部への電極の接続数を減少させ、その分、全体構成を簡略化することができる。
【0128】
(6)第6の実施の形態
図22は、第6の実施の形態に係るプリンタヘッド101を示す断面図である。このプリンタヘッド101において、図1について上述したプリンタヘッド1と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は、省略する。
【0129】
このプリンタヘッド101においては、オリフィス4を形成するインク液室2とインク流路3との壁面102が、他の部位とスリットにより切り離されて、傾くことができるように形成され、またこの壁面102が振動板7の上に形成されるようになされている。
【0130】
これによりこのプリンタヘッド101では、振動板7の振動により、インク液室2と、インク液室に供給するインク流路3とを結ぶ接続部の断面積を変化させるようになされ、インク流入時には、流路抵抗を小さくしてインクをスムーズにインク液室2に導入し(図22(A))、インクをノズルより吐出する場合には、流路抵抗を大きくしてインクの逆流を少なくし(図22(B))、これらにより効率良くインク液滴を飛び出させるようになされている。
【0131】
図22の構成によれば、圧力発生素子により、インク液室にインクを供給する接続部の断面積を併せて変化させることにより、一段と効率良くインク液滴を吐出させることができる。
【0132】
(7)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、ダイアフラムによりインク液室の圧力の変化を緩和してインクの吐出を制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ダイアフラムの可動の制御により圧力の伝搬を種々に制御して、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0133】
すなわち例えば圧力発生素子による周期的なインク液室の圧力の振動に対して、ダイアフラムの可動の制御によりインク液室の振動数を変位させるようにしても、同様にインク液滴に吐出を制御することができる。
【0134】
すなわち流体系としてのインク液室は、固有振動数を有する。これにより圧力発生素子により個々のインク液室の固有振動数により、さらには複数のインク液室全体の固有振動数により、さらにはこれらの固有振動数の整数の振動数により、振動を与えることで、効率良くインク液室を振動させて圧力を可変することができる。
【0135】
このとき静電アクチュエータの駆動により、又は駆動の停止により、ダイアフラムの剛性を変えて流体系の固有振動数をずらし、圧力発生素子の振動数と一致させ、あるいは圧力発生素子の振動数からずらすことで、ヘッド全体の振動を圧力室へ吸収するか、吸収しないかスイッチングすることができ、これによりインクの吐出を制御することができる。
【0136】
また上述の実施の形態においては、ピエゾ素子、静電アクチュエータ、電磁アクチュエータによりインク液室の圧力を可変する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、発熱素子の発熱によりインク液室の圧力を可変する場合等、種々の圧力可変手段を広く適用することができる。なお漏洩磁場が干渉する恐れがあることにより、マイクロアクチュエータに電磁力によるアクチュエータが使われる例は少ないが、上述した実施の形態のように複数のインク液室を纏めて駆動する場合には、大きな占有面積が許されることにより、電磁アクチュエータを使用した場合でも漏洩磁場を十分に無視することができる。
【0137】
また上述の第2の実施の形態等においては、シリコン単結晶を異方性エッチングしてインク液室等を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ガリウム砒素単結晶、水晶等、種々の単結晶材料を用いて異方性エッチングしてインク液室等を作成することができる。
【0138】
また上述の実施の形態等においては、エッチング、射出成形によりインク液室等を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば電鋳、放電加工等、種々の手法によりインク液室等を作成することができる。
【0139】
また上述の実施の形態等においては、ボロン拡散層43、ポリイミドフィルム等によりダイアフラムを作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の材料を広く適用することができる。すなわちダイアフラムは、適当な強度を有し、インク漏れの原因になるピットが発生しにくい材料であればよく、例えば、金属、セラミック、ガラス、高分子等を広く適用することができる。またダイアフラムは、単にインク液室内における圧力の伝搬を制御するのみであり、能動的にインクを吐出する力を発生させるていないことにより、静電アクチュエータの振動板に要求される力学特性、耐久性すら必要とされない。これにより例えばクリープ特性が悪い金属箔、ポリマーですら使用することができる。
【0140】
なお、ダイアフラムは、張力が弱い方が大きく変位するために、小面積で大きな音響容量を得ることができ、これにより小さな静電力によりインクの吐出を制御することができる。ただし、張力が弱すぎると、圧力変動に対して位相遅れが大きくなることにより、適当な張力が求められる。
【0141】
また上述の実施の形態等においては、ダイアフラムを配置した部材と固定電極を配置した部材とを陽極接合等により一体化する場合等について述べたが、本発明はこれに限らず、融着等、種々の一体化手法を広く適用することができる。
【0142】
また上述の実施の形態等においては、酸化シリコン等をスペーサーとして配置して、ダイアフラムを配置した部材と固定電極を配置した部材とを陽極接合等により一体化する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の材料をスペーサーに利用することができる。なおスペーサーにおいては、電極間の静電容量を小さくして、損失を少なくする観点より、高分子材料、酸化シリコン等の低誘電率の絶縁材料膜が好ましい。
【0143】
また上述の実施の形態においては、酸化シリコン等をスペーサーとして配置して、ダイアフラムを配置した部材と固定電極を配置した部材とを一体化することにより、所定の空隙を間に挟んで、ダイアフラムと固定電極とを配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、空隙となる部位に、最終的に除去する層(犠牲層と呼ぶ)を作成した後、固定電極等を作成し、最終的に犠牲層を除去することにより空隙を形成するようにしてもよい。このようにすれば、プリンタヘッド全体を半導体製造工程により作成することができ、また高い精度によりダイアフラムと固定電極とを配置することができる。
【0144】
なおこのような犠牲層においては、ウエットエッチング、ドライエッチング等により除去することができる。ここでウエットエッチングの場合において、犠牲層材料とエッチャントの組み合わせは、エッチャントが犠牲層だけ溶解して振動板と対向電極を侵さない組み合わせであればどのような材料でも使用することができる。具体的には、酸化シリコン/フッ酸に代表される酸化物と酸の組み合わせ、ニッケル/燐酸に代表される金属と酸の組み合わせ、食塩/水に代表される無機イオン結合性材料と極性溶媒の組み合わせ、レジスト/有機溶媒に代表されるポリマーと有機溶媒または強酸の組み合わせ等が考えられる。
【0145】
なおウエットエッチングでは、電極間のギャップにエッチャントが侵入して液体の表面張力により密着して剥がれなくなることがある。この場合は、エッチャントを適当な液体で置換してから臨界温度で乾燥すれば、空隙を確保することができる。
【0146】
またドライエッチングの場合も、エッチングガスが犠牲層だけエッチングして振動板と対向電極を侵さない組み合わせであればどのような材料でも使用することができる。具体的には、レジスト/酸素プラズマに代表される有機材料と酸化性ガスの組み合わせ、ポリシリコン/XeF2 に代表される無機材料と無機材料をエッチングできるガスの組み合わせ等を適用することができる。
【0147】
また犠牲層においては、昇華、燃焼、ガス化等により除去することもできる。
【0148】
また上述の実施の形態においては、ITO膜、アルミニウム基板等により固定電極を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、固定電極においては、導電性を有すればよく、種々の材料を広く適用することができる。具体的には上述した以外の金属、半導体、導電性粒子を分散した導電性の接着剤等を使用することができる。
【0149】
また上述の実施の形態においては、単にインク液滴の吐出の有無を制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク吐出量を制御する場合にも広く適用することができる。なおこの場合、図23に示すように、ダイアフラム10A、10Bを複数設け、これら複数のダイアフラム10A、10Bを選択的に固定電極12A、12Bに吸引してインク液室における圧力の緩和量を制御することにより、インク吐出量を制御する方法等が考えられる。
【0150】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、インク液室の圧力を圧力発生素子により可変すると共に、静電方式によるアクチュエータによりこの圧力の変化によるインク液滴の吐出を制御することにより、ノズルを密に配置して、確実にインク液滴を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。
【図2】図1のプリンタヘッドの動作の説明に供する断面図である。
【図3】図2の続きを示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。
【図5】図4のプリンタヘッドの製造工程の説明に供する断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図及び平面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図及び平面図である。
【図8】図7の続きを示す断面図及び平面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。
【図10】図9のプリンタヘッドの製造工程の説明に供する断面図である。
【図11】図10の続きを示す断面図及び平面図である。
【図12】図11の続きを示す断面図及び平面図である。
【図13】図12の続きを示す断面図及び平面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図及び断面図である。
【図15】図14のプリンタヘッドの製造工程の説明に供する断面図及び平面図である。
【図16】図15の続きを示す断面図及び平面図である。
【図17】図16の続きを示す断面図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図である。
【図19】図18のプリンタヘッドの製造工程の説明に供する断面図及び平面図である。
【図20】図19の続きを示す断面図及び平面図である。
【図21】図20の続きを示す断面図である。
【図22】本発明の他の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す平面図である。
【図23】図22とは異なる他の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
1、31、51、71、91、101……プリンタヘッド、2……インク液室、3……インク流路、5……ノズル、7……振動板、8……圧力発生素子、10……ダイアフラム、12……固定電極

Claims (24)

  1. インク液室に保持したインクを所定のノズルより飛び出させて所望の印刷対象に付着させるプリンタヘッドにおいて、
    前記インク液室の圧力を可変する圧力発生素子と、
    前記インク液室に設けられて、前記圧力発生素子によって発生する前記インク液室の圧力の変化により可動するダイアフラムと、
    前記ダイアフラムと対向するように保持されて、電圧を印加して発生する前記ダイアフラムとの間の静電力によって前記ダイアフラムの可動を制御することにより、前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出を制御する固定電極と
    を備えることを特徴とするプリンタヘッド。
  2. 前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出の制御が、
    前記ダイアフラムを可動自在に保持して、前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の変化を緩和し、前記インク液滴の吐出を停止させる吐出停止の状態と、
    前記ダイアフラムの可動を制限して、前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の変化により前記インク液滴を吐出させる吐出の状態との切り換えである
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  3. 前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出の制御が、
    前記圧力発生素子により前記インク液室の圧力を一定周波数で振動させた状態で、前記インク液室の圧力の変化に対する前記ダイアフラムの剛性を可変することで、前記一定周波数に対して前記インク液室の固有振動数を可変し、前記ノズルからの前記インク液滴の吐出、非吐出を切り換える制御である
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  4. 前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の振動が、
    所定の状態における前記インク液室の固有振動数の整数倍にほぼ一致する周期的振動であり、
    前記インク液室の固有振動数の可変が、
    前記ダイアフラムを可動自在に保持して、前記インク液室の圧力の振動に対して、前記インク液室の固有振動数をずらし、前記インク液滴の吐出を停止する吐出停止の状態と、
    前記ダイアフラムの可動を制限して、前記インク液室の圧力の振動が、前記インク液室の固有振動数に共振するようにし、前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の変化により前記インク液滴を吐出させる吐出の状態との切り換えである
    ことを特徴とする請求項3に記載のプリンタヘッド。
  5. 前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の振動が、
    所定の状態における前記インク液室の固有振動数の整数倍にほぼ一致する周期的振動であり、
    前記インク液室の固有振動数の可変が、
    前記ダイアフラムの可動を制限して、前記インク液室の圧力の振動に対して、前記インク液室の固有振動数をずらし、前記インク液滴の吐出を停止する吐出停止の状態と、
    前記ダイアフラムを可動自在に保持して、前記インク液室の圧力の振動が、前記インク液室の固有振動数に共振するようにし、前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力の変化により前記インク液滴を吐出させる吐出の状態との切り換えである
    ことを特徴とする請求項に記載のプリンタヘッド。
  6. 前記インク液室には、
    振動板が設けられ、
    1つの前記圧力可変素子が、複数の前記インク液室に設けられた前記振動板をまとめて可動して、前記複数のインク液室の圧力を可変する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  7. 前記固定電極は、
    前記静電力により、前記ダイアフラムを吸引して、前記ダイアフラムの可動を制御し、
    前記吸引のタイミングが、
    前記圧力発生素子による前記インク液室の圧力により、前記ダイアフラムが平衡位置よりも前記固定電極に接近したタイミングである
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  8. 前記インク液室には、
    振動板が設けられ、
    前記プリンタヘッドは、
    前記振動板に設けられた部材により、インク流路から前記インク液室に前記インクを導くオリフィスの一部が形成され、
    前記圧力可変素子は、
    前記振動板を変位させて、前記インク液室の圧力を可変すると共に、前記部材を可動させることにより、前記オリフィスの断面積を変化させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  9. 前記インク液室には、
    振動板が設けられ、
    前記圧力発生素子は、
    前記振動板を静電力により変位させて、前記インク液室の圧力を可変する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  10. 前記インク液室には、
    振動板が設けられ、
    前記圧力発生素子は、
    前記振動板を電磁力により変位させて、前記インク液室の圧力を可変する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  11. 前記インク液室には、
    振動板が設けられ、
    前記圧力発生素子が、
    前記振動板を変位させる圧電素子である
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  12. 前記圧力発生素子が、
    前記インク液室のインクを加熱する発熱素子である
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  13. 前記ダイアフラムが、
    シリコンにより作成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  14. 前記ダイアフラムが、
    少なくとも導電性を有する電極層と、前記電極層を保持する構造物とにより形成され、
    前記構造物が、
    ガラス又はセラミックにより形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  15. 前記ダイアフラムが、
    少なくとも導電性を有する電極層と、前記電極層を保持する構造物とにより形成され、
    前記構造物が、
    分子量2000以上の高分子材料から形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  16. 前記インク液室は、
    所定の単結晶基板を異方性エッチングして作成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  17. 前記単結晶基板の材料が、
    シリコン、ガリウム砒素、又は水晶である
    ことを特徴とする請求項16に記載のプリンタヘッド。
  18. 前記インク液室は、
    ガラス又はセラミックの部材により形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  19. 前記インク液室は、
    分子量2000以上の高分子材料の部材により形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  20. 前記固定電極は、
    前記固定電極を形成した固定電極側部材が、スペーサーを介挿して、前記インク液室を形成したインク液室側部材と一体化されて、前記ダイアフラムと対向するように保持された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  21. 前記一体化の処理が、
    接着、融着、陽極接合又は直接接合である
    ことを特徴とする請求項20に記載のプリンタヘッド。
  22. 前記固定電極は、
    前記固定電極又は前記ダイアフラムの表層側に、所定の犠牲層、前記ダイアフラム又は前記固定電極を順次形成した後、前記犠牲層を除去して、前記ダイアフラムと対向するように保持された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  23. 前記インク液室は、
    隣接するインク液室との間に、厚みが20〔μm〕以下のスリット状の流路が形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
  24. インク液室に保持したインクを所定のノズルより飛び出させて所望の印刷対象に付着させるプリンタヘッドによるプリンタにおいて、
    前記プリンタヘッドは、
    前記インク液室の圧力を可変する圧力発生素子と、
    前記インク液室に設けられて、前記圧力発生素子によって発生する前記インク液室の圧力の変化により可動するダイアフラムと、
    前記ダイアフラムと対向するように保持されて、電圧を印加して発生する前記ダイアフラムとの間の静電力によって前記ダイアフラムの可動を制御することにより、前記ノズルからのインク液滴の吐出、非吐出を制御する固定電極と
    を備えることを特徴とするプリンタ。
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