JP3955392B2 - 結晶成長装置及び結晶成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶成長装置及び結晶成長方法に関し、詳細には、安価かつ簡単な構成で窒素空孔の少ない良質なGaN系半導体結晶膜を成長させる結晶成長装置及び結晶成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、GaN、AlN、InN及びこれらの混晶(以下、GaN系という。)半導体の結晶成長は、一般に、MO−VPE(有機金属気相成長)法を用いて行われているが、このMO−VPE法で良質なGaN系半導体の結晶成長を行わせるためには、その結晶成長温度を800℃〜1200℃と高温で行う必要がある。
【0003】
ところが、MO−VPE法で結晶成長温度を上記高温で行うと、熱対流の影響が大きく、種々の工夫が必要である。
【0004】
すなわち、MO−VPE法においては、従来、図2に示すように、反応容器1内に挿入されたシャフト2の先端部にサセプター3が配設されており、サセプター3の上面に基板4が載置される。この基板4の上面近傍に開口するガス噴射管5が配設されており、ガス噴射管5から基板4に向かって略垂直方向から反応ガスが噴射される。サセプター3上の基板4は、サセプター3の下方に配設されたヒーター6により所定の高温度に加熱される。そして、MO−VPE法においては、一般的に、GaN系半導体膜を結晶成長するための反応ガス(原料ガス)は、III族原料として、TMG(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMI(トリメチルインジウム)等の有機金属を用い、また、V族原料として、アンモニウムを一般的に用い、これらの原料ガスを誘導加熱あるいは図2に示したような抵抗加熱方式等の手法により加熱された結晶成長基板4の表面に輸送して結晶成長を行う。このとき、MO−VPE法においては、基板4の温度が高いために、熱対流の影響を受けて、V族原料としてのアンモニアが効果的に基板4に到達することができず、窒素空孔が多く、結晶性の悪いGaN系半導体膜が成長してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、従来、特許2628404号及び特許2556211号公報に記載されている半導体結晶膜の成長方法及び半導体結晶層の成長装置等が提案されている。
【0006】
特許2628404号の半導体結晶膜の成長方法では、加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱された基板の表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、基板の表面に平行ないし傾斜する方向には反応ガスを供給し、基板の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させている。
【0007】
具体的には、図3に示すように、反応容器11内に収納されたサセプター12の上面に基板13が載置され、基板13がサセプター12を介してヒーター14により設定温度に加熱される。この基板13に対して平行ないしは傾斜する方向から反応ガス噴射管15を通して反応ガスを供給し、基板13に対して実質的に垂直な方向から副噴射管16を通して反応ガスを含まない水素、窒素の単族あるいは混合ガスを押圧ガスとして供給している。なお、図3において、サセプター12は、回転駆動されるシャフト17に取り付けられており、反応容器11内のガスは、排気口18から真空ポンプにより排出される。また、図2において、基板13の温度は、放射温度計により測定されて、ヒーター14による加熱が制御されている。
【0008】
したがって、基板13に対して二方向からガスを流すことで、熱対流の問題を回避して、反応ガスを効率的に基板13の表面に輸送し、窒素空孔の少ない良好な結晶性のGaN系半導体膜の結晶成長を図っている。さらに、基板13を数rpmの回転速度で回転させて、基板13内のGaN系半導体結晶成長領域を均一にしている。
【0009】
また、特許2556211号の半導体結晶層の成長装置では、反応容器と、基板を載せるために反応容器の内部に配設されているサセプターと、サセプターを加熱する手段と、基板に向かって反応ガスを供給する反応ガス供給管とを備える半導体結晶層の成長装置において、反応容器に、ガスを流入させる透明管を備えており、透明管は先端よりも後端を細くした筒状で、少なくとも一部は反応容器の外側に表出しており、透明管の先端は反応容器内に開口されており、さらに透明管の後端はガスの供給源に連結されており、透明管を介して基板の半導体結晶層の状態が観測できるように構成されている半導体結晶層の成長装置を提案している。
【0010】
具体的には、図3に示した装置と同様の装置であって、押圧ガスを供給するための管の先端(基板に近い端)の方が後端よりも太くなっている筒状の形状としている。
【0011】
これにより、原料ガスの戻りが無くなり、押圧ガスを供給するための管が汚れることを防止して、原料ガスが基板に効果的に到達させるように図っている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の結晶成長装置にあっては、上記熱対流の問題については、改善されて、窒素空孔の少ない良質な結晶性のGaN系半導体膜を成長させることはできるが、結晶成長装置が複雑となり、コストが高くなるという問題があった。
【0013】
すなわち、一般的なMO−VPE装置は、図2に示したように、ガスの吹き出し口であるガス噴射管が一方向のものが多く、上記各特許公報記載の結晶成長装置や方法においては、ガスの吹き出し口が二方向で、かつ、略直交する方向から供給することが必要となり、結晶成長装置が複雑で、高価なものになる。
【0014】
また、上記公報記載の結晶成長装置や方法のように、二方向からガスを供給すると、基板が静止した状態では、基板の一部にしか膜が成長されないため、基板上に均一にGaN系半導体膜を成長させるためには、基板を回転させる機構が必要となり、結晶成長装置がさらに複雑で、高価なものになるという問題があった。
【0015】
さらに、MO−VPE装置の反応容器は、一般的に、誘導加熱や抵抗加熱が可能なこと、高温での使用に耐えうること及び反応容器への形状加工が比較的安価であることから、石英製の管が反応容器として用いられているが、石英管を反応容器として用いて、略直交する方向にガス供給管を形成すると、反応容器の形状加工が複雑となり、高価なものとなる。さらに、反応容器の内壁には、通常、反応生成物が付着し、付着量が多くなると、付着した反応生成物が剥離して、結晶成長基板に付着し、生成された半導体結晶の歩留まりが低下するという問題が発生する。この問題を解決するために、従来から反応容器内壁にある程度の反応生成物が付着すると、反応容器を洗浄して、反応容器内壁に付着した反応生成物を除去しているが、反応容器が上述のように略二方向からガスを供給させるために複雑な形状に形成されていると、反応容器の洗浄操作が行いにくく、反応容器を洗浄する際の操作性が悪いという問題がある。
【0016】
また、反応容器は、上記石英の他に、ステンレスを用いて形成されることがあるが、GaN系半導体膜の結晶成長を行う場合、1000度以上の高温に対応させる必要があり、このような高温に対応させるために、反応容器の冷却機構に種々の工夫を必要とする。この場合、上記従来のように反応容器が略二方向からガスを供給させるために複雑な形状に形成されていると、冷却機構を反応容器に設けることが困難となり、構造がより一層複雑となって、結晶成長装置がさらに高価なものとなるという問題がある。
【0017】
さらに、一般的なMO−VPE装置では、GaN系半導体膜を高温で成長するために、図2に示したように、原料ガスの吹き出し口を基板から数mm離れた位置に設置し、2m/secの高速で原料ガスを基板に吹き付けることで、熱対流の問題に対処しているが、基板付近に原料ガスの吹き出し口が配設されていると、原料ガスの広がりが少なく、大面積に均一な膜を成長させることができないという問題がある。
【0018】
そこで、請求項1記載の発明は、基板の結晶成長面を露出させた状態でサセプターをサセプターホルダに保持させ、結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を、当該サセプターホルダのサセプターが基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設し、窒素を含む化合物を、当該ガス導入管の基板に対向して開口する先端部分及びサセプターホルダの外面部分に付着させて配置することにより、より一層簡単な構成で、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、より一層簡単な構成で窒素空孔の少ない良質なAl x In y Ga (1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることのできるより一層安価な結晶成長装置を提供することを目的としている。
【0019】
請求項2記載の発明は、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いることにより、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単な構成でより一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることのできる安価な結晶成長装置を提供することを目的としている。
【0020】
請求項3記載の発明は、基板の結晶成長面を露出させた状態でサセプターをサセプターホルダに保持させ、結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を、当該サセプターホルダのサセプターが基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設し、窒素を含む化合物を、当該ガス導入管の基板に対向して開口する先端部分及びサセプターホルダの外面部分に付着させて配置することにより、より一層簡単な構成で、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、より一層簡単な構成で窒素空孔の少ない良質なAl x In y Ga (1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることのできるより一層安価な結晶成長方法を提供することを目的としている。
【0022】
請求項4記載の発明は、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いることにより、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、より一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることのできる簡単で安価な結晶成長方法を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の結晶成長装置は、サセプターに保持された基板を所定温度に加熱しつつガス供給管から原料ガスを前記基板に噴射し、気相反応させてAlxInyGa(1-x-y) N(ただし、x、y=0〜1)を含む結晶成長を行う結晶成長装置において、前記サセプターは、前記基板の前記結晶成長面を露出させた状態でサセプターホルダに保持されており、前記サセプターホルダの前記サセプターが前記基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設され、且つ前記結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を備え、当該ガス導入管の前記基板に対向して開口する先端部分及び前記サセプターホルダの外面部分に前記窒素を含む化合物が付着されて配置され、当該窒素を含む化合物を当該化合物の分解温度以上の温度に加熱することにより、上記目的を達成している。
【0024】
上記構成によれば、基板の結晶成長面を露出させた状態でサセプターをサセプターホルダに保持させ、結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を、当該サセプターホルダのサセプターが基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設し、窒素を含む化合物を、当該ガス導入管の基板に対向して開口する先端部分及びサセプターホルダの外面部分に付着させて配置しているので、より一層簡単な構成で、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、窒素空孔の少ない良質なAl x In y Ga (1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができるとともに、結晶成長装置をより一層簡単な構成でかつより一層安価なものとすることができる。
【0025】
この場合、例えば、請求項2に記載するように、前記窒素を含む化合物は、AlaInbGa(1-a-b) N(ただし、a、b=0〜1)であってもよい。
【0026】
上記構成によれば、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いているので、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単な構成でより一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y)Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができるとともに、結晶成長装置を簡単な構成でかつ安価なものとすることができる。
【0029】
請求項3記載の発明の結晶成長方法は、サセプターに保持された基板を所定温度に加熱しつつガス供給管から原料ガスを前記基板に噴射し、気相反応させてAl x In y Ga (1-x-y) N(ただし、x、y=0〜1)を含む結晶成長を行う結晶成長方法において、前記サセプターを前記基板の前記結晶成長面を露出させた状態でサセプターホルダに保持させ、当該サセプターホルダの前記サセプターが前記基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設されたガス導入管から結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させ、当該ガス導入管の前記基板に対向して開口する先端部分及び前記サセプターホルダの外面部分には窒素を含む化合物を付着させて配置し、当該窒素を含む化合物を当該化合物の分解温度以上の温度に加熱することにより、上記目的を達成している。
【0030】
上記構成によれば、サセプターに保持された基板を所定温度に加熱しつつガス供給管から原料ガスを基板に噴射して、気相反応させてAlxInyGa(1-x-y)Nを含む結晶成長を行う際に、基板の近傍に窒素を含む化合物を配置し、当該窒素を含む化合物を当該化合物の分解温度以上の温度に加熱しているので、結晶成長時に窒素を含む化合物を窒素とその他の物質に分解して、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧を上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単かつ安価に窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶をより広い面積にわたって成長させることができる。
【0031】
この場合、例えば、請求項4に記載するように、前記窒素を含む化合物は、AlaInbGa(1-a-b) N(ただし、a、b=0〜1)であってもよい。
【0032】
上記構成によれば、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いているので、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単かつ安価により一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0034】
図1は、本発明の結晶成長装置及び結晶成長方法の一実施の形態を示す図であり、図1は、本発明の結晶成長装置及び結晶成長方法の一実施の形態を適用した結晶成長装置20の反応ガスの流れに対して略平行な面から見た正面概略構成図である。この結晶成長装置20は、基板の周辺に窒素を含む化合物を配置して、基板付近の窒素分圧を上昇させ、窒素空孔の少ない良質なGaN系半導体結晶膜を成長させるものである。
【0035】
図1において、結晶成長装置20は、略円筒形の反応容器21を備えており、反応容器21は、その上端が、図示しないが上側フランジ等により閉止され、その下端が、下側フランジ22により閉止されて、外部大気雰囲気と遮断された密閉空間に形成されている。
【0036】
反応容器21内には、上側フランジに密接しつつ上側フランジを貫通するとともに、図1の上下方向に所定量移動可能なサセプターロッド23が挿入されており、サセプターロッド23の下側先端部には、石英製のサセプターカバー24を介してサセプター25が取り付けられている。サセプターカバー24の上側には、サセプターロッド23の貫通する孔の形成された連通管26が配設されている。
【0037】
サセプター25は、図1において上下面が平面状に形成された柱状、例えば、円柱形状に形成されており、その表面がSiC(炭化珪素)でコーティングされている。図1において、サセプター25の下面には、結晶成長用の基板27が取り付けられており、基板27は、サセプター25の外周面と下面の一部を覆う状態で配設された略筒状、例えば、円筒形状のサセプターホルダ28によりサセプター25の下面に密着されるとともに、その結晶成長面を下側に向けた状態で、サセプター25の自重でサセプター25とサセプターホルダ28の下側の保持部28aとの間に狭持された状態でサセプター25の下面に取り付けられている。基板27は、サセプターロッド23が上下方向に移動されることにより、反応容器21内の任意の位置に設置される。
【0038】
結晶成長装置20は、反応容器21の下端を閉止する下側フランジ22を貫通して、反応容器21内に所定量侵入する状態でガス供給管29が配設されており、ガス供給管29はその噴射口が基板27の表面に対して略直角方向に向いた状態で配設されている。すなわち、ガス供給管29は、その噴射口が基板27の中心の真下に位置する状態で配設されている。
【0039】
また、結晶成長装置20は、ガス供給管29と所定間隔空けた状態で下側フランジ22を貫通して、反応容器21内に所定量侵入する補助ガス供給管30が配設されており、補助ガス供給管30は、反応容器21内のガス供給管29の長さよりも所定長さ短く形成されている。
【0040】
さらに、結晶成長装置20は、ガス供給管29の周囲を取り囲む状態で下側フランジ22を貫通して、反応容器21内に所定量侵入するガス導入管31が配設されており、ガス導入管31は、その反応容器21内の先端部が先端ほどその径が広い円錐形状に形成されているとともに、その先端がサセプター25の下端部よりも多少上方に位置する長さに形成されている。すなわち、結晶成長装置20は、サセプター25に保持された基板27が、ガス導入管31の円錐形状に開いた先端部内に位置する状態で配置されている。
【0041】
このガス導入管31の先端部の円錐形状の内面及びサセプターホルダ28の外面には、窒素を含む化合物、特に、AlaInbGa(1-a-b) N(ただし、a、b=0〜1)で示される化合物の化合物膜32が付着されている。この化合物膜32としては、GaN、In、AlN、InGaN、AlGaN及びAlInGaN等の化合物の膜を用いることができる。
【0042】
結晶成長装置20は、反応容器21の外部に、サセプター25の外部を覆う状態で誘導加熱用コイル33が配設されており、誘導加熱用コイル33は、図示しない電源から高周波電流が流されることにより、サセプター25内部に渦電流を発生させて、サセプター25の下面に取り付けられている基板27を所定の高温度、例えば、800℃〜1200℃に加熱する。
【0043】
上記ガス供給管29からは、基板27上に結晶成長を行わせるための原料ガスであるTMG、TMA、TMI、アンモニア、水素、窒素が供給され、基板27表面には、後述するように、この原料ガスにより、GaN、AlN、InNあるいはそれらの混晶が成長する。
【0044】
また、補助ガス供給管30からは、結晶成長の反応に直接的には寄与しない窒素ガスと水素ガスが供給され、さらに、ガス導入管31からは、補助ガス供給管30から供給されるガスと同様に、結晶成長の反応に直接的には寄与しない窒素ガスと水素ガスが供給される。
【0045】
次に、本実施の形態の作用を説明する。結晶成長装置20は、基板27の周辺に窒素を含む化合物を配置して、基板27付近の窒素分圧を上昇させ、窒素空孔の少ない良質なGaN系半導体結晶膜を成長させるところにその特徴がある。
【0046】
すなわち、結晶成長装置20は、サセプターホルダ28の保持部28a上に基板27を載せ、サセプターホルダ28内にサセプター25を挿入することにより、サセプター25の自重でサセプターホルダ28の保持部28aとサセプター25との間に基板27を狭持する。
【0047】
このサセプターホルダ28の外周面及びサセプターホルダ28の保持部28aの外面には、窒素を含む化合物膜32が付着されている。
【0048】
この基板25を保持しサセプター25の収納されているサセプターホルダ28にサセプターロッド23の連結されたサセプターカバ24及び連結管26を取り付けて、サセプターロッド23の貫通する上側フランジを反応容器21の上端に取り付け、反応容器21の上端を閉止する。
【0049】
また、反応容器21の下端に、ガス供給管29、保持ガス供給管30及びガス導入管31の取り付けられた下側フランジ22を取り付けて、反応容器21の下端を閉止する。このガス導入管31の円錐形状の先端部内面には、窒素を含む化合物膜32が付着されている。
【0050】
次に、サセプターロッド23を上下移動させて、ガス供給管29と基板27との位置調整を行った後、反応容器21内の空気を排気して、反応容器21内を結晶成長の反応に直接寄与しない窒素ガスと水素ガスで置換する。
【0051】
その後、結晶成長装置20は、誘導加熱用コイル33に通電し、渦電流をサセプター25に発生させて、基板27を所定の高温度に加熱する。
【0052】
この状態で、結晶成長装置20は、ガス供給管29から原料ガスであるTMG、TMA、TMI、アンモニア、水素、窒素が供給し、ガス供給管29は、その噴射口が基板27の概ね中央に位置する状態で配設されている。
【0053】
そして、上記誘導加熱用コイル33によるサセプター25の加熱により、サセプターホルダ28もサセプター25からの熱伝導により加熱されてサセプターホルダ28の外周面及び保持部28aの外面に付着されている窒素を含む化合部32も、その分解温度以上に加熱され、また、ガス導入管31の先端部も輻射熱により加熱されて、ガス導入管31の先端部内面に付着されている窒素を含む化合物膜32も、その分解温度以上に加熱される。
【0054】
したがって、サセプターホルダ28と保持部28a及びガス導入管31の先端部内面に付着されている窒素を含む化合物膜32が分解、例えば、化合物膜32として、GaN膜が使用されているときには、気相の窒素と固相のGaリッチなGaN膜あるいは金属Gaに分解し、分解した窒素は、基板27付近の窒素分圧を上昇させる。
【0055】
その結果、従来のように、結晶成長装置20を複雑で高価な構成とすることなく、ガス供給管29から基板27に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少なくても、窒素空孔の少ない良質なGaN系半導体結晶膜を基板27表面に成長させることができ、簡単な構成で、かつ、安価な結晶成長装置20で、良質なGaN系半導体結晶膜を基板27表面に成長させることができる。
【0056】
また、ガス供給管29の噴射口と基板27との間の距離を、従来よりも広くすることができ、基板27の表面に広範囲にわたって良質なGaN系半導体結晶膜を成長させることができる。
【0057】
なお、本出願人が、上記結晶成長装置20を使用し、サセプターホルダ28と保持部28a及びガス導入管31の先端部内面に化合物膜32としてGaN膜を付着させて、2インチウェハを基板27に使用して、結晶を成長させる実験を行ったところ、基板27である2インチウェハ全面にわたり、GaN系半導体膜の結晶を成長させることができ、形成されたGaN径半導体膜の表面は、鏡面状態で、良好な結晶性を示した。
【0058】
ところが、上記結晶成長装置20を使用し、サセプターホルダ28と保持部28a及びガス導入管31の先端部内面に化合物膜32を付着させずに、2インチウェハを基板27に使用して、結晶を成長させる実験を行ったところ、結晶成長したGaN系半導体膜の表面モフォロジーは、鏡面とならず、白濁状態であった。
【0059】
この実験から基板27の周囲近傍に窒素を含む化合物膜32を付着させてその分解温度以上に加熱することが、良質なGaN系半導体結晶膜を生成する上で、効果的であることが判明した。
【0060】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0061】
例えば、上記実施の形態においては、原料ガスとして、TMG、TMA、TMI、アンモニア、水素、窒素を使用しているが、原料ガスとしては、これらに限るものではなく、GaN系材料を結晶成長させることができれば、他のガスを適宜用いることができる。また、反応容器内の各部品材料も、それらの機能を満たしていればよく、他の材質のものでも適応可能である。
【0062】
さらに、上記実施の形態においては、下方を向いた基板に向かって原料ガスを上方に略直角方向に供給しているが、基板に対するガスの供給方向は、上記方向に限るものではなく、横方向、斜め方向あるいは上方向からであってもよい。
【0063】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の結晶成長装置によれば、基板の結晶成長面を露出させた状態でサセプターをサセプターホルダに保持させ、結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を、当該サセプターホルダのサセプターが基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設し、窒素を含む化合物を、当該ガス導入管の基板に対向して開口する先端部分及びサセプターホルダの外面部分に付着させて配置しているので、より一層簡単な構成で、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、窒素空孔の少ない良質なAl x In y Ga (1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができるとともに、結晶成長装置をより一層簡単な構成でかつより一層安価なものとすることができる。
【0064】
請求項2記載の発明の結晶成長装置によれば、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いているので、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単な構成でより一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができるとともに、結晶成長装置を簡単な構成でかつ安価なものとすることができる。
【0066】
請求項3記載の発明の結晶成長方法によれば、基板の結晶成長面を露出させた状態でサセプターをサセプターホルダに保持させ、結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を、当該サセプターホルダのサセプターが基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設し、窒素を含む化合物を、当該ガス導入管の基板に対向して開口する先端部分及びサセプターホルダの外面部分に付着させて配置しているので、より一層簡単な構成で、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単かつ安価に窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶をより広い面積にわたって成長させることができる。
【0067】
請求項4記載の発明の結晶成長方法によれば、窒素を含む化合物として、AlaInbGa(1-a-b) Nを用いているので、結晶成長を行う基板付近の窒素分圧をより一層適切かつ効率的に上昇させることができ、基板に供給される原料ガスの窒素原料の割合が少ない場合にも、簡単かつ安価により一層窒素空孔の少ない良質なAlxInyGa(1-x-y) Nを含む結晶を効率的により広い面積にわたって成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結晶成長装置及び結晶成長方法の一実施の形態を適用した結晶成長装置の正面概略構成図。
【図2】従来のMO−VPE法の結晶成長装置の正面概略構成図。
【図3】従来の他の結晶成長装置の正面概略構成図。
【符号の説明】
20 結晶成長装置
21 反応容器
22 下側フランジ
23 サセプターロッド
24 サセプターカバー
25 サセプター
26 連通管
27 基板
28 サセプターホルダ
28a保持部
29 ガス供給管
30 補助ガス供給管
31 ガス導入管
32 化合物膜
33 誘導加熱用コイル
Claims (4)
- サセプターに保持された基板を所定温度に加熱しつつガス供給管から原料ガスを前記基板に噴射し、気相反応させてAlxInyGa(1-x-y) N(ただし、x、y=0〜1)を含む結晶成長を行う結晶成長装置において、前記サセプターは、前記基板の前記結晶成長面を露出させた状態でサセプターホルダに保持されており、前記サセプターホルダの前記サセプターが前記基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設され、且つ前記結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させるガス導入管を備え、当該ガス導入管の前記基板に対向して開口する先端部分及び前記サセプターホルダの外面部分に窒素を含む化合物が付着させて配置され、当該窒素を含む化合物を当該化合物の分解温度以上の温度に加熱することを特徴とする結晶成長装置。
- 前記窒素を含む化合物は、AlaInbGa(1-a-b) N(ただし、a、b=0〜1)であることを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
- サセプターに保持された基板を所定温度に加熱しつつガス供給管から原料ガスを前記基板に噴射し、気相反応させてAl x In y Ga (1-x-y) N(ただし、x、y=0〜1)を含む結晶成長を行う結晶成長方法において、
前記サセプターを前記基板の前記結晶成長面を露出させた状態でサセプターホルダに保持させ、当該サセプターホルダの前記サセプターが前記基板を保持する部分に対向して開いた状態で配設されたガス導入管から結晶成長に直接寄与しない所定のガスを噴出させ、当該ガス導入管の前記基板に対向して開口する先端部分及び前記サセプターホルダの外面部分には窒素を含む化合物を付着させて配置し、当該窒素を含む化合物を当該化合物の分解温度以上の温度に加熱することを特徴とする結晶成長方法。 - 前記窒素を含む化合物は、Al a In b Ga (1-a-b) N(ただし、a、b=0〜1)であることを特徴とする請求項3記載の結晶成長方法。
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