JP3954200B2 - ポリオール樹脂および電子写真用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリオール樹脂および電子写真用トナーに関し、特に、複写機、ファックス、プリンター等の電子写真における静電荷像または磁気潜像を現像する乾式現像用トナーとして有用なポリオール樹脂、およびそのポリオール樹脂を主成分とする電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファックス、プリンター等の電子写真において、静電荷像を現像する方法として湿式現像方式と乾式現像方式があり、乾式現像方式が使用される場合が多い。
乾式現像方式では、バインダーとなるトナー用樹脂にカーボンブラック等の着色剤、およびその他の添加剤を含有させたトナー微粉末に、鉄粉やガラスビーズ等のキャリアーを混合した摩擦帯電現像剤が用いられる。複写物を得るには、通常、感光体に静電潜像を形成し、この静電潜像に摩擦帯電性のトナーを電気的に付着させて現像し、ここで得られたトナー像を用紙等のシートに転写し、その後トナーに対し離型性を有する熱圧ローラーでまたはフラッシュ光源で定着させて永久可視像とする。
磁気潜像の場合は、磁気ドラム上の潜像を磁性体を含むトナーによって現像した後、上述のように定着に供される。
【0003】
この種のトナーには、定着性(トナーが用紙に強固に付着すること)、耐ブロッキング性(トナー粒子が凝集しないこと)に優れることが要求される。
さらに、熱ロール定着では、耐オフセット性(定着ローラにトナーが付着して用紙が汚れないこと)が要求される。
近年、複写機、ファックスまたはプリンターが、家庭内にも普及するに従い、これら機器を使用する上での消費電力の低減、可視像形成スピードの向上が要求され、定着温度の低いバインダー樹脂を使用することが求められるようになっている。定着温度を下げるには、バインダー樹脂の軟化点を下げる、分子量分布を狭くする等の方法が一般に採用される。しかし、これらの方法では、耐オフセット性および耐ブロッキング性が低下する。このため、トナーの低温定着化は、まだ十分とは言えない状況にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、従来のトナーの有する問題を解決し、低温定着性に優れ、かつ耐オフセット性および耐ブロッキング性に優れるため、トナー用樹脂として好適なポリオール樹脂、およびそのポリオール樹脂を主成分とする電子写真用トナーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、下記一般式(a):
【化4】
(R1 およびR2 は同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基、エチ ル基またはフェニル基である)
で表されるビスフェノール類(A)と、下記一般式(b):
【化5】
(R3 およびR4 は同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基、エチ ル基またはフェニル基であり、nは0以上の整数である)
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂(B)と、多価アルコール(C)と酸無水物との反応生成物(D)と、エポキシ基と反応する活性水素基を分子内に少なくとも1個有する化合物(E)とを反応させてなるポリオール樹脂を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性に優れるトナーとして、前記のポリオール樹脂を主成分とする電子写真用トナーをも提供するものである。
【0007】
以下、本発明のポリオール樹脂(以下、「本発明の樹脂」という)および電子写真用トナーについて詳細に説明する。
【0008】
本発明の樹脂は、前記一般式(a)で表されるビスフェノール類(A)と、前記一般式(b)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂(B)と、多価アルコール(C)と酸無水物との反応生成物(D)と、エポキシ基と反応する活性水素基を分子内に少なくとも1個有する化合物(E)と、さらに必要に応じて架橋剤(F)とを主原料とし、これらの主原料を反応させて得られるものである。
【0009】
本発明の樹脂の主原料(A)として用いられるビスフェノール類は、前記一般式(a)で表されるものである。前記一般式(a)において、R1 およびR2 は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基である。
このビスフェノール類(A)の具体例として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称、ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔通称、ビスフェノールF〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン〔通称、ビスフェノールAD〕、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。本発明において、これらのビスフェノール類は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
本発明の樹脂の主原料(B)として用いられるビスフェノール型エポキシ樹脂は、前記一般式(b)で表されるものである。前記式(b)において、R3 およびR4 は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基であり、nは0以上の整数である。
このビスフェノール型エポキシ樹脂(B)としては、例えば、前記一般式(a)で表されるビスフェノール類(A)とエピクロロヒドリンから製造される、いわゆる一段法エポキシ樹脂、または一段法エポキシ樹脂とビスフェノール類との重付加反応生成物である二段法エポキシ樹脂等が挙げられる[垣内 弘編著「新エポキシ樹脂」(昭晃堂)30頁(昭和60年)]。本発明において、このビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種単独でも2種類以上または数平均分子量の異なる2種以上の混合物の組み合わせで用いてもよい。2種類以上または数平均分子量の異なる2種以上の混合物を用いる場合は、1種単独で用いる場合に比べて、分子量分布(Mw/Mn)が大となり、耐オフセット性の向上に有利となる。この場合、低分子量成分の数平均分子量が300〜3000であり、高分子量成分の数平均分子量が3000〜10000であることが好ましい。本発明のポリオール樹脂の製造においては、原料供給の操作性の観点から、一般に低分子量成分が主成分であることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂は、前記(A)および(B)に加えて、多価アルコール(C)と酸無水物との反応生成物(D)を主原料として用いるものである。主原料(C)として用いられる多価アルコール類としては、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環族ジオール等の2価アルコール、ならびに3価または4価のアルコール等を挙げることができる。芳香族ジオールとしては、下記一般式(c):
【化6】
で表される化合物が挙げられる。一般式(c)において、R5 およびR6 は、同一でも異なっていてもよく、エチレン基またはプロピレン基であり、pおよびqは1以上の整数であり、p+qは2〜10である。この芳香族ジオールの具体例としては、ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(1,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(1,1)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,2)−ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。また、本発明において、芳香族ジオールとして、P−キシリレングリコ−ル、m−キシリレングリコールも使用することができる。
【0012】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、脂環式ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0013】
3価または4価のアルコールとしては、例えば、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスロトール、トリペンタエリスロトール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0014】
また、主原料(D)として用いられる反応生成物は、前記多価アルコール(C)と酸無水物との反応生成物である。多価アルコール(C)との反応に用いられる酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水琥珀酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物を挙げることができる。
【0015】
多価アルコール類と酸無水物の反応は、通常、触媒の存在下、80℃〜150℃で1〜8時間の反応時間で行うことができる。この多価アルコール類と酸無水物の反応は、後記の本発明の樹脂の製造における重付加反応と、同時に行ってもよいし、重付加反応の前に行ってもよい。酸無水物が架橋剤として作用し、場合によってはゲル化が起こることもあるため、重付加反応の前に行うのが好ましい。
この反応で用いられる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属アルコラート、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等の有機リン化合物、塩化リチウム、臭化リチウム等のアルカリ金属塩、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズ、オクチル酸スズ、安息香酸亜鉛等のルイス酸などを例示することができる。その使用量は、生成物量に対して、通常、1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppmとなる量である。
また、この反応においては、溶剤を使用しても、しなくてもよい。溶剤を使用する場合はトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類が好ましい。
【0016】
本発明の樹脂の主原料(E)として用いられる、エポキシ基と反応する活性水素基を分子内に少なくとも1個有する化合物は、1価のフェノール類、2級アミン類、1価のカルボン酸類である。
1価のフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、イソプロピルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、キシレノール、P−クミルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
2級アミン類としては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン、ジエタノールアミン、ジアリルアミン等の脂肪族2級アミン、N−メチルアニリン、N−メチルトルイジン、N−メチルニトロアニリン、ジフェニルアミン、ジトリルアミン、ベンジルジメチルアミン等の芳香環含有2級アミン等が挙げられる。
1価のカルボン酸類としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、フェニル酢酸等の芳香環含有1価カルボン酸を挙げることができる。
【0017】
さらに、本発明の樹脂の製造において、前記(A)および(B)と、(D)と、(E)とを反応させる際に、必要に応じて、架橋剤(F)を用いてもよい。架橋剤(F)としては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン等のポリアミン類、酸無水物、3価以上のフェノール化合物、3価以上のエポキシ樹脂などが用いられる。ポリアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0018】
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水琥珀酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−3−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼンを挙げることができる。
【0019】
3価以上のエポキシ樹脂は、3価以上のフェノール化合物または3価以上のアルコール化合物とエピハロヒドリンとの反応で得られるグリシジル化物である。3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニルメタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−3−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン等が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂の製造は、前記主原料(A)および(B)と、ならびに原料(D)と、エポキシ基と反応する活性水素基を分子内に少なくとも1個有する化合物(E)、さらに必要に応じて架橋剤(F)とを、重付加反応させて行うことができる。この反応において、各原料の使用割合は、以下の式(1)〜(8)を満足することが好ましい。
A :ビスフェノールの重量
N5A:ビスフェノールの活性水素当量
B1 :数平均分子量300〜3000の低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂の重
量
NB1:数平均平均分子量300〜3000の低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂
のエポキシ当量
B2 :数平均平均分子量3000〜10000の高分子量ビスフェノール型エポキシ
樹脂の重量
NB2:数平均平均分子量3000〜10000の高分子量ビスフェノール型エポキシ
樹脂のエポキシ当量
C :多価アルコールの重量
NC :多価アルコールの活性水素当量
D :多価アルコールとの反応に供する酸無水物の重量
ND :酸無水物の分子量
E :エポキシ基と反応する活性水素を分子内に1個有する化合物の重量
NE :エポキシ基と反応する活性水素を分子内に1個有する化合物の分子量
F :架橋剤の重量
N8F :架橋剤の活性水素当量、エポキシ当量
(酸無水物の場合は分子量)
【0021】
【数2】
ここで、分子鎖延長とは、ポリオール樹脂の主鎖の内部に取り込まれることを意味し、分子鎖封止とは、主鎖の末端に取り込まれることを意味する。また、低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、平均分子量300〜3000のエポキシ樹脂を意味し、高分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、平均分子量3000〜10000のエポキシ樹脂を意味する。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、エポキシ樹脂の平均分子量の約半分となる。
【0022】
本発明の樹脂の製造において、この重付加反応は、通常、触媒を用いて行われる。用いられる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属アルコラート、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等の有機リン化合物、塩化リチウム、臭化リチウム等のアルカリ金属塩、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズ等のルイス酸などを例示することができる。本発明の樹脂の製造において、触媒を使用する場合、その使用量は、生成物量に対して、通常、1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppmとなる量である。
【0023】
本発明の樹脂の製造における重付加反応においては、溶媒を併用することも可能である。好適な溶媒としては、キシレン、トルエン等の芳香族化合物、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル類、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリジノン等の非プロトン性極性溶媒を例示することができる。これらの溶媒は1種単独でも2種以上を混合して使用することもできる。溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、仕込原料の重量の1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%の割合となる量である。
【0024】
この重付加反応における反応温度は、触媒量にもよるが、通常、120〜180℃の範囲である。
また、反応は、一般的にはエポキシ当量、フェノール性水酸基量、軟化点、GPCによる数平均分子量を測定することによって追跡することが可能であるが、本発明では、実質的にエポキシ基が消失した時点、すなわち、エポキシ当量として20000(g/当量)以上となった時点を反応終点とする。
【0025】
このようにして得られる本発明の樹脂は、通常、数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲のものが好ましく、特に好ましくは2500〜5000の範囲のものである。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比(Mw/Mn)は5〜50であるものが好ましく、特に、10〜35であるものが好ましい。また、軟化点は、85〜150℃のものが好ましく、特に、100〜135℃のものが好ましい。さらに、Tgは50℃〜90℃のものが好ましく、特に55〜70℃のものが、低温定着性、耐オフセット性および耐ブロッキング性の確保の点で、好ましい。また、本発明の樹脂は、通常、100〜200KOHmg/g、好ましくは120〜200KOHmg/gの水酸基価を有するものである。
【0026】
また、本発明は、前記ポリオール樹脂を主成分とする電子写真用トナー(以下、「本発明のトナー」という)を提供するものである。本発明のトナーは、前記ポリオール樹脂を主成分とし、必要に応じて、この種の電子写真用トナーに配合される、着色剤、磁性粉、結着樹脂等の各種成分を含むものである。
【0027】
本発明のトナーに配合される着色剤は、この種の電子写真用トナーに常用される着色剤でよく、所望の色、結着樹脂との相溶性等に応じて適宜選択され、特に制限されない。例えば、黒色の電子写真用トナーを調製する場合は、従来公知の黒色の着色剤を使用することができる。黒色の着色剤の具体例として、カーボンブラック、表面を化学処理したグラフト化カーボンブラック等の顔料を挙げることができる。黒色以外の電子写真用トナー、例えば、イエロー、マゼンタまたはシアンの三原色の電子写真用トナーを調製する場合、それぞれ従来公知の着色剤を使用することができ、特に制限されない。例えば、イエローの電子写真用現像剤トナーを調製する場合に用いられる着色剤として、クロームイエロー、キノリンイエロー等が挙げられる。また、マゼンタの電子写真用トナーを調製する場合に用いられる着色剤として、例えば、デュポンオイルレッド、ローズベンガル等が挙げられる。さらに、シアンの電子写真用現像剤トナーを調製する場合に用いられる着色剤として、例えば、アニリンブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルーが挙げられる。
【0028】
本発明のトナーにおける着色剤の配合量は、トナーの全量に対して、通常、0.01〜20重量%程度、好ましくは1〜10重量%程度となる量である。
また、本発明のトナーを1成分系現像剤である磁性トナーとして用いる場合には、磁性粉が配合される。用いられる磁性粉としては、例えば、フェライト、マグネタイト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケル等の金属からなるものが挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この磁性粉は、粒径1μm以下の微粉末であることが好ましい。
本発明のトナーが磁性粉を含有する磁性トナーである場合、その配合割合は、通常、結着樹脂100重量部に対して30〜300重量部程度、好ましくは50〜200重量部の割合である。
【0029】
さらに、本発明のトナーは、前記の結着樹脂、着色剤、または磁性粉以外に、必要に応じて、従来の電子写真用トナーに常用される各種の配合剤を配合することができる。例えば、結着樹脂として常用されているスチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を配合することができる。また、必要に応じて、荷電調整剤、可塑剤、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、アミドワックス、シリコンオイル等の離型剤、シリカ等の流動性向上剤などを配合することもできる。
【0030】
本発明のトナーは、通常、平均粒径3〜20μm、好ましくは5〜15μmの粒子の形態で使用に供される。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤としての顔料または染料、および1成分系現像剤である磁性トナーとする場合には、さらに磁性粉、ならびに必要に応じて荷電調整剤、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機によって十分混合した後、加熱ロール、ニーダー、押出機等の加熱混合機を用いて溶融混合する。次に、冷却固化後、ジェットミル等を用いて粉砕および分級を行って製造することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例におけるエポキシ当量、GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点、軟化点、定着性ならびに耐ブロッキング性は、下記の方法にしたがって測定または評価した。
【0032】
1)エポキシ当量
樹脂試料0.2〜5gを精秤し、200mlの三角フラスコに入れた後、ジオキサン25mlを加えて溶解させる。1/5規定の塩酸溶液(ジオキサン溶媒)25mlを加え、密栓して十分混合後、30分間静置する。次に、トルエン−エタノール混合溶液(1:1容量比)50mlを加えた後、クレゾールレッドを指示薬として1/10規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。滴定結果に基づいて下記式に従ってエポキシ当量(g/当量)を計算する。
エポキシ当量(g/当量)=1000×W/〔(B−S)×N×F〕
W:試料採取量(g)
B:空試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)
S:試料の試験に要した規定水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)
N:水酸化ナトリウム水溶液の規定度
F:水酸化ナトリウム水溶液の力価
【0033】
2)GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定樹脂試料80mgをTHF10mlに溶解して試料液を調製し、この試料液100μlをカラムに注入し、下記の条件で保持時間の測定を行う。また、平均分子量既知のポリスチレンを標準物質として用いて、保持時間を測定して、予め作成しておいた検量線から樹脂試料の数平均分子量をポリスチレン換算で求めた。
【0034】
3)ガラス転移温度(Tg);
下記の示差走査型熱量計を用いて、下記条件で測定した。
【0035】
4)軟化点;
軟化点測定装置(メトラー社製、FP90)を使用して、1℃/minの昇温速度で試料の軟化温度を測定した。
5)水酸基価の測定
(a)25mlメスフラスコに樹脂1.5〜2.0gを精秤して入れ、モレキュラーシーブ4Aでエタノールおよび水を除去した精製クロロホルムを加えて、溶解させた。樹脂を完全に溶解させた後、精製クロロホルムを追加して、25mlの標線にメスアップして試料溶液を調製した。
(b)試料溶液を、KBr液セル(厚さ:0.2mm)にとり、精製クロロホルムを対照として4000cm-1〜3000cm-1の波数領域の吸収スペクトルを測定した。
【0036】
(c)表れた2つの吸収ピークの吸光度T1 およびT2 をベースとなる吸光度を基準(零)として求めた。次に、T1 +T2 の値から、予め作成しておいた検量線から、水酸基濃度(eq/l)を求め、下記式にしたがって、水酸基価を換算した。
水酸基価(KOHmg/g )=(水酸基濃度/4)×56.1×F/〔試料重量(g) 〕×100
F:KBrセルの厚さ補正 F=L1 /L2
L1 :検量線作成時のセルの厚さ(mm)
L2 :測定時に使用したセルの厚さ(mm)
【0037】
検量線の作成
(a)6つの25mlフラスコにモレキュラーシーブ4Aで脱水した精製ジエチレングリコールの0.1、0.2、0.3、0.4、0.5および0.6gを、それぞれ採取した後、精製クロロホルムで標線にメスアップして6種の標準液を調製した。
これらの標準液は、それぞれ0.075、0.151、0.226、0.301、0.376および0.452eq/lの水酸基当量の標準液である。
(b)これらの標準液について、KBr液セル(厚さ:0.2mm)を用いて、4000〜3000cm-1の波数領域における吸収スペクトルを測定する。
表れる2つの吸収ピークの吸光度T1 およびT2 をベースとする吸光度を基準(零)として求め、T1 +T2 の値と水酸基当量の関係をプロットして、検量線とする。
6)定着試験
富士ゼロックス社製の電子写真複写機(富士ゼロックス3500)の定着用熱ローラーの表面温度を変更可能に改造した複写試験機を用いて、定着用熱ローラーの表面温度を100〜200℃の範囲で変えて、上記の現像剤による複写を行った。得られる複写画像の消しゴムで摩擦したときの複写画像の濃度変化を目視で観察した。定着用熱ローラーの表面温度を110℃から5℃刻みで上げ、定着率が85%を超えた時の温度を最低定着温度とした。さらに温度を上げ試験を行い、該トナーが熱ローラーに付着し始めた温度をオフセット開始温度とした。
【0038】
7)耐ブロッキング性
70mlのガラス製サンプル瓶中にトナー10gを入れ、60℃、相対湿度35%の恒温恒湿槽中に3h放置した。その後室温まで冷却しその凝集度を観察し以下の基準で評価した。
A:サンプル瓶を逆さにしただけでトナーが落ちる
B:サンプル瓶を逆さにし、軽く振っただけでトナーが落ちる
C:サンプル瓶を逆さにし、軽くたたくとトナーが落ちる
D:サンプル瓶を逆さにし、強い振動を与えるとトナーが落ちる
E:サンプル瓶を逆さにし、強い振動を与えてもトナーは落ちない
【0039】
(実施例1)
攪拌装置、温度計、窒素導入口、および還流管を備えた容量500mlセパラブルフラスコに、ポリオキシプロピレン−(1,1)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三井東圧化学社製、KB−280、OH価:291KOHmg/g)33.9g、無水フタル酸26.1g、およびキシレン15gを仕込み、系が均一になるまで内温80℃で攪拌した。次に、触媒としてベンジルジメチルアミン(BDMA)30mgを添加後、130℃まで昇温し4時間反応させた。
【0040】
反応混合物を50℃以下に冷却後、ビスフェノールA41.3g、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三井石油化学社製、エポミックR140P、エポキシ当量188g/eq)127.6g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(三井石油化学社製、エポミックR309、エポキシ当量2750g/eq)48g、安息香酸19.7g、およびステアリン酸3.5gを仕込み、80℃でテトラメチルアンモニウムクロリド50%水溶液0.12gを加えた。160℃で1時間反応後、還流管を減圧蒸留装置に替え、減圧度を徐々に高めながらキシレンおよび水を留去した。1時間後、減圧度は1333Pa(10mmHg)に達した。さらに1時間攪拌した後、反応系内の圧力を常圧に戻し、攪拌を7時間継続した。この時点で、生成したポリオール樹脂をサンプリングしてエポキシ当量を測定し、エポキシ当量が20000以上であることを確認した後、生成したポリオール樹脂をフラスコから抜き出した。
【0041】
得られたポリオール樹脂の軟化点は124℃、ガラス転移温度:59℃、数平均分子量(Mn):3400、重量平均分子量(Mw):75000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は22、水酸基価は158(KOHmg/g)であった。以下、このポリオール樹脂を(P−1)という。
ここで、各仕込み原料について、前記(1)〜(6)式の値を求めたところ、(1)式では3200、(2)式では0.98、(3)式では0.16、(4)式では0.20、および(6)式では0と計算され、各(1)〜(6)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、原料の使用量をビスフェノールAを46.1g、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を133.7g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量=2640g/eq)を40.5g、安息香酸を19.7g、ステアリン酸を0gに変えた以外は、実施例1と同様に反応を行いポリオール樹脂を製造した。
【0043】
得られたポリオール樹脂の軟化点は121℃、ガラス転移温度:60℃、数平均分子量(Mn):3350、重量平均分子量(Mw):54800、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は16.4、水酸基価は159(KOHmg/g)であった。以下、このポリオール樹脂を(P−2)という。
ここで、各仕込み原料について、前記(1)〜(6)式の値を求めたところ、(1)式では3400、(2)式では0.98、(3)式では0.135、(4)式では0.20、および(6)式では0と計算され、各(1)〜(6)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0044】
(実施例3)
実施例1において、原料の使用量をビスフェノールAを51g、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を150.5g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を0g、安息香酸、ステアリン酸をp−クミルフェノール31.9gに変え、無水フタル酸を6.6g加えた以外は、実施例1と同様に反応を行いポリオール樹脂を製造した。
【0045】
得られたポリオール樹脂の軟化点は123℃、ガラス転移温度:63℃、数平均分子量(Mn):4100、重量平均分子量(Mw):71000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は17.3、水酸基価は141(KOHmg/g)であった。以下、このポリオール樹脂を(P−3)という。
ここで、各仕込み原料について、前記(1)〜(6)式の値を求めたところ、(1)式では3600、(2)式では0.98、(3)式では0、(4)式では0.20、および(6)式では0.022と計算され、各(1)〜(6)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0046】
(実施例4)
実施例1において、原料の使用量をポリオキシプロピレン(1、1)−2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを17.0g、無水フタル酸を13g、ビスフェノールAを48.8g、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を150.8g、安息香酸を29.9g、ステアリン酸を0g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(エポキシ当量=2640g/eq)を30gに変え、さらに無水フタル酸を10.5g加えた以外は、実施例1と同様に反応を行いポリオール樹脂を製造した。
【0047】
得られたポリオール樹脂の軟化点は125℃、ガラス転移温度:60℃、数平均分子量(Mn):2500、重量平均分子量(Mw):59300、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は20.6、水酸基価は156(KOHmg/g)であった。以下、このポリオール樹脂を(P−4)という。
ここで、各仕込み原料について、前記(1)〜(6)式の値を求めたところ、(1)式では2300、(2)式では0.98、(3)式では0.10、(4)式では0.10、および(6)式では0.035と計算され、各(1)〜(6)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0048】
(比較例1)
撹拌装置、温度計、窒素導入口、蒸留冷却管、および受器を備えた容量500mlのセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三井石油化学社製、エポミックR140P、エポキシ当量:188(g/eq))139.0g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(三井石油化学社製、エポミックR309、エポキシ当量:2640(g/eq))30.0g、ビスフェノールA39.6g、ポリオキシプロピレン(1、1)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三井東圧化学社製、KB−280、OH価:291(KOHmg/g))15.0g、P−クミルフェノール67.4g、無水フタル酸9.0gおよびキシレン30gを仕込み、窒素雰囲気下で昇温を開始し、内温80℃で均一に溶解させた。次いで、反応触媒として水酸化ナトリウム10%水溶液1.0gを添加した。さらに昇温し、内温が180℃に到達したところで、キシレンの減圧濃縮を開始し、約0.5時間かけて1333Paまで減圧した。減圧下、1時間攪拌した後、反応系の圧力を常圧に戻し、さらに反応温度を180℃に維持しながら7時間反応させた。この時点でエポキシ基の残存量を測定したところ、エポキシ当量は20000(g/当量)以上であった。エポキシ基が実質的に消失したことを確認できたので、生成した溶融状態のポリオール樹脂をフラスコから抜き出した。
【0049】
得られたポリオール樹脂の軟化点は116℃、ガラス転移温度:59℃、数平均分子量(Mn):2600、重量平均分子量(Mw):45800、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は17.6、水酸基価は146(KOHmg/g)であった。以下、このポリオール樹脂を(P−5)という。
ここで、各仕込み原料について、前記(1)〜(6)式の値を求めたところ、(1)式では1800、(2)式では0.98、(3)式では0.1、(4)式では0.05、および(6)式では0.03と計算され、各(1)〜(6)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0050】
(比較例2)
撹拌装置、温度計、窒素導入口、蒸留冷却管および受器を備えた容量1lのセパラブルフラスコに、ジメチルテレフタレート450.1g、ジメチルフタレート13.9g、プロピレングリコール400g、およびシュウ酸錫0.18gを仕込み、170℃に昇温した。メタノールの留去が開始された後、徐々に昇温し、200℃でメタノール160gを留去し、トランスエステル化を終了した。次に、反応系内の温度を210℃、圧力を1333Paに保ちプロピレングリコールを留去しながら、高分子量化反応を5時間継続した。さらに、無水フタル酸17.2gを添加後、さらに3時間反応を行い、生成した樹脂をフラスコから取り出した。
得られたポリエステル樹脂の軟化点は121℃、ガラス転移温度:68℃、数平均分子量(Mn):3300、重量平均分子量(Mw):7800、Mw/Mn:2.4であった。
【0051】
(実施例5)
実施例1において、原料の使用量をポリオキシプロピレン−(1,1)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを45.2g、無水フタル酸を34.8g、ビスフェノールAを155.3g、ビフェノールA型液状エポキシ樹脂を342.8g、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を120g、安息香酸を69.9gに変え、ステアリン酸を使用せず、さらに三官能エポキシ樹脂(三井化学(株)製、テクモアVG−3101、エポキシ当量:210g/eq)を32.0g加えた以外は、実施例1と同様にして、ポリオール樹脂(P−6)を製造した。
得られたポリエステル樹脂の軟化点は120℃、ガラス転移温度:64℃、数平均分子量(Mn):2860、重量平均分子量(Mw):46600、Mw/Mn:16.3、水酸基価:167(KOHmg/g)であった。
ここで、各仕込み原料について、前記(3)〜(8)式の値を求めたところ、(3)式では0.15、(4)式では0.10、(6)式では0.04、(7)式では2600、および(8)式では0.98と計算され、各(3)〜(8)式を満足するものとなっていることが確認された。
【0052】
(実施例6)
実施例1で得られたポリオール樹脂(P−1)180g、カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA−100)12g、ポリプロピレンワックス(三洋化成社製、ビスコール660P)4gおよびスピロンブラックTRH(保土谷化学社製)4gを、スーパーミキサーで混合後、二本ロールで溶融混練した。得られた混合物を、冷却後、ジェットミルで粉砕し、さらに乾式気流分級機で分級して平均粒径10μmの粒子からなるポリオール樹脂粉末(P−7)を得た。次いで、全量の0.4wt%となる割合で疎水性シリカ(日本アエロジル社製、R972)を混合し、ヘンシェルミキサー内で2回、30秒間攪拌し、電子写真用トナーを得た。この電子写真用トナーの耐ブロッキング性の評価を行った。また得られた電子写真用トナー5gと、鉄粉キャリアー(平均粒径:60〜100μm)95gとを、均一に混合して現像剤を調製し、その現像剤を用いて定着試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例7〜10、比較例3)
各例において、ポリオール樹脂(P−1)の代わりに、ポリオール樹脂P−2〜7を使用した以外は、実施例6と同様にして電子写真用トナーを製造した。得られたトナーについて、耐ブロッキング性および定着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
ポリオール樹脂(P−1)の代わりに、比較例2で合成したポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例6と同様にしてトナーを製造し、耐ブロッキング性および定着性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
【発明の効果】
本発明のポリオール樹脂は、電子写真用トナーの主成分として用いて、低温での定着性および高温での耐オフセット性に優れ、さらに耐ブロッキング性に優れるため、長期間保存してもブロッキングしない電子写真用現像剤として好適なトナーを提供することができる。
また、本発明の電子写真用トナーは、低温での定着性および高温での耐オフセット性、さらに耐ブロッキング性に優れるため、電子写真用トナーとして好適なものである。
Claims (7)
- 軟化点が85〜150℃、Tgが50〜90℃、数平均分子量(Mn)が1000〜10000、かつ重量平均分子量/数平均分子量の比(Mw/Mn)が5〜50である請求項1に記載のポリオール樹脂。
- 前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)が、異なる数平均分子量を有する2種以上のビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物である請求項1に記載のポリオール樹脂。
- 前記反応を、さらに架橋剤(F)を用いて行う請求項1〜4のいずれかに記載のポリオール樹脂。
- 前記のビスフェノール類(A)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)、多価アルコール(C)と酸無水物との反応生成物(D)、化合物(E)、および架橋剤(F)を、下記の式:
A :ビスフェノールの重量
N5A:ビスフェノールの活性水素当量
B1 :数平均分子量300〜3000の低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂の
重量
NB1:数平均分子量300〜3000の低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂の
エポキシ当量
B2 :数平均分子量3000〜10000の高分子量ビスフェノール型エポキシ樹
脂の重量
NB2:数平均分子量3000〜10000の高分子量ビスフェノール型エポキシ樹
脂のエポキシ当量
C :多価アルコールの重量
NC :多価アルコールの活性水素当量
D :多価アルコールとの反応に供する酸無水物の重量
ND :酸無水物の分子量
E :エポキシ基と反応する活性水素を分子内に1個有する化合物の重量
NE :エポキシ基と反応する活性水素を分子内に1個有する化合物の分子量
F :架橋剤の重量
NF :架橋剤の活性水素当量、エポキシ当量
(酸無水物の場合は分子量)
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリオール樹脂を主成分とする電子写真用トナー。
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