JP3953652B2 - 変性樹脂粉体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗装用の変性樹脂粉体に関し、詳しくは流動浸漬塗装、静電塗装等の分野で広く使用される変性樹脂粉体に関する。
【0002】
【従来の技術】
流動浸漬塗装や静電塗装に用いられる接着性樹脂粉体は、通常の溶液塗料に比べ、有機溶剤を使用せず安全性が高いこと、および容易に高膜厚が形成可能なことから、鋼管被覆や鋼板被覆など多くの分野に使われている。この接着性樹脂粉体の原料としては、通常ポリエステル、エポキシ樹脂及びエチレン系重合体が使われている。このなかでもエチレン系重合体は安全性、耐薬品性、耐腐食性が高く、しかも廉価であることから、近年多く使われるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エチレン系重合体は極性基を有しないため、そのままでは鋼管や鋼板などの異種材料への接着性が劣るという欠点があった。
接着性が改良されたエチレン系重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸等と共重合させて官能基を導入し、接着性を付与したものが、特開昭50−4144号公報に開示されている。また、特開昭50−7848号公報、特開昭54−12408号公報、特開昭52−49289号公報などには、エチレン系重合体を固形ゴム、不飽和カルボン酸で変性して接着性を改良したものが提案されている。さらに、特開平1−156377号公報には、高膜厚塗装時の気泡防止のために変性エチレン系重合体にポリブタジエンを配合する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、従来のエチレン系重合体に無水マレイン酸などをグラフトした変性エチレン系重合体が配合された組成物を粉砕して得られる変性樹脂粉体は、塗装時に樹脂同士の融着が起こりやすいため、最終製品の塗面平滑性が十分でなかった。また、基材への接着強度も、必ずしも高いとはいえなかった。
【0005】
本発明の目的は、基材への接着性、および塗面平滑性に優れた変性樹脂粉体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、特定の分子構造を有するエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体に、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトした変性エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂材料が、変性樹脂粉体に優れた塗面平滑性と接着強度を与えることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の変性樹脂粉体は、下記(A)〜(E)の要件を満足するエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)と他のポリオレフィン系樹脂(ロ)とゴム(ハ)とを有し、かつエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)が1〜100重量%、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)が0〜99重量%、ゴム(ハ)が0〜20重量%である接着性材料を粉砕してなることを特徴とする。
(A)密度が0.92〜0.96g/cm3
(B)メルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分
(C)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(D)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつこの溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式a)の関係、および下記(式b)の関係を満足すること
(式a) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧0
(式b)
T75−T25≦−670×d+644
(E)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tm1と密度dが、下記(式c)の関係を満たすこと
(式c) Tm1≧150×d−17
【0008】
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)は、さらに下記(F)の要件を満足することが望ましい。
(F)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が下記(式d)の関係を満足すること
(式d) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下で、エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られたものであることが望ましい。
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)は、(G)ハロゲン濃度が10ppm以下であることが望ましい。
【0009】
さらに、前記他のポリオレフィン系樹脂(ロ)が、密度0. 86〜0.97g/cm3 のエチレン(共)重合体、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
そして、本発明の変性樹脂粉体の平均粒径は、50〜400μmであることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変性樹脂粉体は、エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)(以下、変性エチレン共重合体(イ’)と記す)、あるいは該変性エチレン共重合体(イ’)と他のポリオレフィン系樹脂(ロ)、ゴム(ハ)を有するものである。
【0011】
本発明におけるエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)(以下、エチレン共重合体(イ)と記す)とは、下記の(A)〜(E)の要件を満足するものである。
(A)密度が0.92〜0.96g/cm3
(B)メルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分
(C)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(D)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつこの溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式a)の関係、および下記(式b)の関係を満足すること
(E)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tm1と密度dが、下記(式c)の関係を満たすこと
(式c) Tm1≧150×d−17
【0012】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)のα−オレフィンとは、炭素数が5〜12、好ましくは5〜10のものであり、具体的には1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0013】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)の(A)密度は、0.92〜0.96g/cm3 、好ましくは0.925〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.925〜0.935g/cm3 の範囲である。密度が0.92g/cm3 未満では、得られる変性樹脂粉末の塗面平滑性や接着強度が十分でなく、また0.96g/cm3 を超えると、接着強度が低下する。
【0014】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)の(B)メルトフローレート(以下MFRと記す)は、0.01〜200g/分、好ましくは0.05〜50g/分、さらに好ましくは0.1〜40g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満、または200g/10分を越えると、変性樹脂粉末の塗面平滑性、接着強度が劣る。
【0015】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)の(C)分子量分布(Mw/Mn)は1.5〜5.0の範囲、好ましくは1.7〜4.0、さらに好ましくは1.8〜3.0の範囲である。上記Mw/Mnが1.5未満、または5.0を超えると、変性樹脂粉末の塗面平滑性、接着強度が劣る。
一般にエチレン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0016】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、図1に示すように、(D)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつこの溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%の量が溶出する温度、すなわち溶出温度−溶出量曲線を積分して得られた面積が、全体の25%の面積となる温度T25と、全体の75%が溶出する温度、すなわち溶出温度−溶出量曲線を積分して得られた面積が、全体の75%の面積となる温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式a)の関係、および下記(式b)の関係を満足する。
T75−T25と密度dが上記(式a)の関係を満足しない場合には、変性樹脂粉末の、接着強度と耐熱性が劣り、塗装後の焼き付け工程時に塗膜の劣化が生ずるおそれがある。また、上記(式b)の関係を満足しない場合にも、接着性と耐熱性が劣るものとなる。
【0017】
本発明に関わるTREFの測定方法は下記の通りである。試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたオルソジクロロベンゼン(ODCB)に試料濃度が0.05重量%となるように加え、135℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン・α−オレフィン共重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0018】
また、本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、(E)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tm1と密度dが、下記(式c)の関係を満足する。
(式c) Tm1≧150×d−17
融点Tm1と密度dが上記(式c)の関係を満足しないと、変性樹脂粉末の耐熱性および接着強度が劣るものとなる。
【0019】
さらに、本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、下記(G)の要件を満足することが好ましい。
(G)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式d)の関係を満足すること
(式d) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式d)の関係を満足することにより、変性樹脂粉末の接着性、塗面平滑性がより良好となる。
【0020】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、従来の典型的なメタロセン系触媒、すなわち、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む少なくとも1種の触媒下の存在下で得られるエチレン共重合体より分子量分布が広く、かつチーグラー系触媒で得られる低密度エチレン・α−オレフィン共重合体より低温成形性に優れており、これらのエチレン共重合体とは明確に区別されるものである。
【0021】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、前記特定のパラメーターを満足すれば触媒、製造方法等は特に限定されるものではないが、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下にエチレンまたはエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンを共重合させて得られるエチレン共重合体であることが望ましい。このような触媒を用いることによって、エチレン共重合体(イ)から得られる変性エチレン共重合体(イ’)の接着性を良好にすることができる。
【0022】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で重合することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物(式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0023】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物の式中、Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。pおよびqはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0024】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等があげられる。
【0025】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0026】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0027】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0028】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0029】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4-L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0030】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0031】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0032】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0033】
ホウ素化合物としては、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム(トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム(ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0034】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2等、またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5 、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でも、SiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0036】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンを含まない触媒を使用して製造することによりハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(ND:2ppm以下)ものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン共重合体は、化学的安定性に優れ、粉砕機あるいは塗装装置などを腐食させないため好適に使用される。
【0037】
本発明におけるエチレン共重合体(イ)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2 G、好ましくは常圧〜20kg/cm2 Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2 G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0038】
本発明における変性エチレン共重合体(イ’)とは、前記エチレン共重合体(イ)を不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフト変性したものである。グラフト変性の方法としては、ラジカル開始剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体をエチレン共重合体(イ)に押出機内で反応させる溶融法、あるいは溶液中で反応させる溶液法等が挙げられる。
【0039】
本発明においる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物;アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。中でも、特に無水マレイン酸が接着強度、経済性等の観点から好ましく使用される。
【0040】
前記ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族、ジクミル化合物等が挙げられる。
【0041】
有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。
【0042】
ジヒドロ芳香族としては、ジヒドロキノリンまたはその誘導体、ジヒドロフラン、1,2−ジヒドロベンゼン、1,2−ジヒドロナフタレン、9,10−ジヒドロフェナントレン等が挙げられる。
ジクミル化合物としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−メチルフェニル)ブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
【0043】
本発明における他のポリオレフィン系樹脂(ロ)としては、前記エチレン共重合体(イ)以外の通常のポリオレフィン樹脂すべてが挙げられる。中でも、密度が0.86〜0.97g/cm3 のエチレン(共)重合体、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体が、塗面平滑性、塗膜の強度等に優れる点で好ましい。
【0044】
密度が0.86〜0.97g/cm3 のエチレン(共)重合体とは、チグラー系、フイリップス型またはカミンスキー系触媒を用い、高圧法、中圧法、低圧法もしくはその他の公知の方法により得られるエチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。これは、密度が0.86〜0.91g/cm3 未満の超低密度ポリエチレン(以下、VLDPEと記す)、密度が0.91〜0.94g/cm3 未満の線状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと記す)、密度が0.94〜0.97g/cm3 の中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(以下、それぞれMDPE、HDPEと記す)を包含するものである。
【0045】
炭素数3〜12のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができる。これらの中でも、好ましいのは1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、とくに好ましいのは1−ブテンまたは1−ヘキセンである。エチレン共重合体中のα−オレフィン含有量は0.5〜40モル%であることが好ましい。
【0046】
前記高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン(LDPE)とは、公知の高圧法によって得られる密度0.91〜0.94g/cm3 のエチレン単独重合体である。
【0047】
エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。すなわち、エチレン50〜99.5重量%、酢酸ビニル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜25重量%からなる共重合体が好ましい。
【0048】
他の共重合可能な不飽和単量体とは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のオレフィン類、C2〜C3アルカンカルボン酸のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物類などの群から選ばれた少なくとも1種である。
【0049】
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、例えば、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また、エチレン50〜99.5重量%、(メタ)アクリル酸エステル0.5〜50重量%および不飽和ジカルボン酸またはその無水物0〜25重量%からなる共重合体が好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。
不飽和ジカルボン酸またはその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。また、その接着性を損なわない範囲で他の共重合可能な不飽和単量体を共重合させても良い。
【0051】
本発明における他のポリオレフィン系樹脂(ロ)のMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分、さらに好ましくは1〜50g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では塗面平滑性が不良となり、100g/10分を超えると、塗膜の強度が不十分となる。
【0052】
本発明におけるゴム(ハ)としては、例えば、エチレンプロピレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、エチレン−ブテンゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられ、これらは単独で用いても、混合物で用いてもよい。
【0053】
エチレンプロピレン系ゴムとしては、例えば、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
ブタジエン系ゴムとは、ブタジエンを構成要素とする共重合体をいい、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)およびその水添または部分水添誘導体であるスチレン−ブタジエン−エチレン共重合体(SBES)、1,2−ポリブタジエン(1,2−PB)、無水マレイン酸−ブタジエン−スチレン共重合体、コアシェル構造を有する変性ブタジエンゴム等が例示される。
これらの中でも、機械的強度の向上が良好であることから、エチレンプロピレン系ゴムおよびエチレン−ブテンゴムが好ましい。
また、塗膜内の気泡制御が目的ならば、ブタジエン系ゴムが好適に用いられる。
【0054】
本発明の変性樹脂粉体は、変性エチレン共重合体(イ’)1〜100重量%と、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)0〜99重量%と、ゴム(ハ)0〜20重量%とを有するものであり、好ましくは、変性エチレン共重合体(イ’)1〜50重量%、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)30〜99重量%、ゴム(ハ)0〜20重量%であり、さらに好ましくは、変性エチレン共重合体(イ’)2〜40重量%、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)40〜98重量%、ゴム(ハ)0〜20重量%である。変性エチレン共重合体(イ’)が1重量%未満では、変性樹脂粉末の接着強度が不十分となる。また、ゴム(ハ)が20重量%を超えると、粉砕工程での金網詰まりや、粉体形状の悪化、粉体同士のブロッキングなどが生じるおそれがある。
【0055】
また、本発明の変性樹脂粉体中の不飽和カルボン酸またはその誘導体の濃度は0.0001〜10重量%の範囲である。濃度が0.0001重量%未満では十分な接着強度が得られず、濃度が10重量%をこえると、変性樹脂粉体の熱安定性が低下し、塗装後の塗膜の劣化や着色などが生じるおそれがある。
【0056】
本発明の変性樹脂粉体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の常温機械粉砕、冷凍粉砕、化学粉砕等の方法で製造することができる。
常温機械粉砕法では、前述した変性樹脂組成物に、顔料、添加剤等を配合し、これらを通常のタンブラー等でドライブレンドしたり、あるいはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等の通常の混練機で溶融混練して均一に分散して粉砕前原料を製造し、ついで、該原料を粉砕機にかけ粉砕する。粉砕機としては、ピンミル、ターボミル、ハンマーミル等の微粉砕機が用いられる。
粉砕された粉体は、髭等の処理のために加熱処理を行い、形状を調整し、篩を通して分級する。
【0057】
本発明の変性樹脂粉体の平均粒径は、50〜400μmであることが望ましい。平均粒径は用途により異なり、流動浸漬法では160〜350μm、静電塗装法では100〜200μmが通常用いられる。
【0058】
本発明の変性樹脂粉体には、その使用目的に応じ、変性樹脂粉末の特性を損なわない範囲において、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、滑剤、顔料、紫外線吸収剤、核剤等の添加剤を配合しても良い。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
(物性試験方法)
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し約5mgの試料を打ち抜き230℃で10分保持後2℃/分にて0℃迄冷却後、再び10℃/分で170℃迄昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムは東ソーのGMHHR−H(S)を使用した。
【0060】
[TREF]
カラムを140℃に保って試料を注入して4℃/hrで25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。
溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:5℃/分、検出器:赤外分光器(波長3.42μm)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:1mg/ml
[メルトテンション]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、押出速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
[塩素濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下についてはNDとし、実質的には含まれないものとした。
【0061】
[接着強度測定]
被覆された試料の塗膜に10mm幅の傷を入れて、塗膜と基材を90゜で50mm/分で剥離し、そのときの荷重を測定した。
[塗面平滑性]
変性樹脂粉末を塗布した被覆鋼板上を目視にて観察し、塗面にムラがなく、平滑なものを○、そうでないものを×と評価した。
【0062】
(エチレン共重合体(イ)の製造)
[固体触媒の調製]
電磁誘導撹拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml,テトラエトキシジルコニウム(Zr(OEt)4 )22gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度2.5mmol/ml)を3200ml添加し2時間攪拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(グレース社製、#952、表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間撹拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒を得た。
【0063】
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、種々のエチレン共重合体(イ)(PE1〜3)を得た。これらエチレン共重合体の各物性を上記の試験法を用いて測定した。各物性の測定結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(チーグラー型触媒またはメタロセン触媒を用いたエチレン共重合体)
また、下記条件で得られたエチレン共重合体の各物性も表2に示す。
エチレン共重合体(PE4)
四塩化チタンとトリエチルアルミニウムからなる触媒を用い、気相法にてエチレンと1−ヘキセンを共重合させて線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得た。
エチレン共重合体(PE5)
四塩化チタンとジエチルアルミニウムクロリドからなる触媒を用い、溶液法にてエチレンと4−メチル−1−ペンテンを共重合させて線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得た。
エチレン共重合体(PE6)
メタロセン系触媒による市販の線状低密度ポリエチレン(銘柄:アフニティHF1030、ダウ・ケミカル株式会社製)を用いた。
【0066】
【表2】
【0067】
(実施例1)
エチレン共重合体(PE1)100重量部に、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.01重量部を添加し、2分間ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドを行った。ついで、無水マレイン酸0.4重量部を加え、さらに2分間ドライブレンドを行った。得られた混合物を温度290℃に設定した単軸50mm混練装置を用いて溶融混練し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸の量は0.30重量%、変性エチレン共重合体のMFRは2.1g/10分であった。
【0068】
この変性エチレン共重合体30重量%、通常のチグラー触媒で製造したLLDPE(密度0.922g/cm3 、MFR4g/10分)65重量%、ポリブタジエンゴム(ムーニー粘度ML1+4(100℃):35、シス−1,4−結合含有量94%)5重量%を混練し、変性樹脂組成物を得た。この変性樹脂組成物を粉砕し、平均粒径200μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末に、280℃に加熱したブラスト鋼板を30秒間浸漬し(流動浸漬法)、ついで260℃で5分間加熱し、樹脂膜厚1mmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表3に示す。塗面平滑性は良好であり、接着強度は10〜15kg/10mmで実用上十分な強度を有していた。また、流動浸漬槽の変性樹脂粉体は、20回連続使用後も焼けなどによる塗膜異常は生じなかった。
【0069】
(比較例1)
エチレン共重合体(PE4)を実施例1と同様に変性し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸量は0.30重量%、MFRは1.2g/10分であった。この変性エチレン共重合体を用いて実施例1と同様に変性樹脂組成物を調製、粉砕し、平均粒径210μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末に、280℃に加熱したブラスト鋼板を30秒間浸漬し、ついで260℃で5分間加熱し、樹脂膜厚1mmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表3に示す。塗面平滑性は悪く、接着強度は8〜14kg/10mmであり、実施例1に比べ相対的に低かった。
【0070】
(実施例2)
エチレン共重合体(PE2)910gを、トルエン7Lとともに、攪拌機付きの15Lオートクレーブに投入し、攪拌しながら昇温し、127℃に達したところで、トルエン400mlに溶かした無水マレイン酸27.3g、およびトルエン375mlに溶かしたジ−t−ブチルパーオキサイド2.4gをそれぞれ別の口から6時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間反応を行い、ついで冷却して105℃に達したところでアセトン7Lを加え生成物を析出回収し、生成物をアセトンで数回洗浄し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸の量は0.50重量%、変性エチレン共重合体のMFRは1.0g/10分であった。
【0071】
この変性エチレン共重合体5重量%、通常のチグラー触媒で製造したLLDPE−I(密度0.922g/cm3 、MFR15g/10分)75重量%、LLDPE−II(密度0.924g/cm3 、MFR7g/10分)20重量%を混練し、変性樹脂組成物を得た。この変性樹脂組成物を粉砕し、平均粒径155μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末を、静電塗装法でブラスト鋼板に10秒間塗布し、ついで200℃で10分間仕上げ加熱し、樹脂膜厚500μmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表3に示す。塗面平滑性は良好であり、接着強度は4〜5kg/10mmで実用上十分な強度を有していた。
【0072】
(比較例2)
エチレン共重合体(PE5)を実施例2と同様に変性し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸量は0.40重量%、MFRは0.6g/10分であった。この変性エチレン共重合体を用いて実施例1と同様に変性樹脂組成物を調製、粉砕し、平均粒径210μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末を、静電塗装法でブラスト鋼板に10秒間塗布し、ついで200℃で10分間仕上げ加熱し、樹脂膜厚500μmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表3に示す。塗面平滑性は良好であったが、接着強度は3kg/10mmであり、実施例2に比べ相対的に低かった。
【0073】
【表3】
【0074】
(実施例3)
エチレン共重合体(PE2)100重量部に、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.015重量部を添加し、2分間ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドを行った。ついで、無水マレイン酸0.8重量部を加え、さらに2分間ドライブレンドを行った。得られた混合物を温度290℃に設定した単軸50mm混練装置を用いて溶融混練し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸の量は0.51重量%、変性エチレン共重合体のMFRは1.7g/10分であった。
【0075】
この変性エチレン共重合体25重量%、通常のチグラー触媒で製造したLLDPE(密度0.922g/cm3 、MFR15g/10分)75重量%を混練し、変性樹脂組成物を得た。この変性樹脂組成物を粉砕し、平均粒径150μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末を、静電塗装法でブラスト鋼板に10秒間塗布し、ついで200℃で10分間仕上げ加熱し、樹脂膜厚500μmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表4に示す。塗面平滑性は良好であり、接着強度は5kg/10mmで実用上十分な強度を有していた。
【0076】
(比較例3)
エチレン共重合体(PE5)を実施例3と同様に変性し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸量は0.50重量%、MFRは0.9g/10分であった。この変性エチレン共重合体を用いて実施例1と同様に変性樹脂組成物を調製、粉砕し、平均粒径150μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末を、静電塗装法でブラスト鋼板に10秒間塗布し、ついで200℃で10分間仕上げ加熱し、樹脂膜厚500μmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表4に示す。塗面平滑性は悪く、接着強度は3〜4kg/10mmであり、実施例3に比べ相対的に低かった。
【0077】
(実施例4)
エチレン共重合体(PE3)100重量部に、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.01重量部を添加し、2分間ヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドを行った。ついで、無水マレイン酸0.4重量部を加え、さらに2分間ドライブレンドを行った。得られた混合物を温度290℃に設定した単軸50mm混練装置を用いて溶融混練し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸の量は0.30重量%、変性エチレン共重合体のMFRは1.5g/10分であった。
【0078】
この変性エチレン共重合体30重量%、通常のチグラー触媒で製造したLLDPE(密度0.922g/cm3 、MFR4g/10分)65重量%、ポリブタジエンゴム(ムーニー粘度ML1+4(100℃):35、シス−1,4−結合含有量94%)5重量%を混練し、変性樹脂組成物を得た。この変性樹脂組成物を粉砕し、平均粒径210μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末に、流動浸漬法で280℃に加熱したブラスト鋼板を30秒間浸漬し、ついで260℃で5分間加熱し、樹脂膜厚1mmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表4に示す。塗面平滑性は良好であり、接着強度は10〜15kg/10mmで実用上十分な強度を有していた。また、流動浸漬槽の変性樹脂粉体は、20回連続使用後も焼けなどによる塗膜異常は生じなかった。
【0079】
(比較例4)
エチレン共重合体(PE6)を実施例4と同様に変性し、変性エチレン共重合体を得た。得られた変性エチレン共重合体に付加した無水マレイン酸量は0.31重量%、MFRは1.3g/10分であった。この変性エチレン共重合体を用いて実施例4と同様に変性樹脂組成物を調製、粉砕し、平均粒径205μmの変性樹脂粉末を得た。
この変性樹脂粉末に、280℃に加熱したブラスト鋼板を30秒間浸漬し、ついで260℃で5分間加熱し、樹脂膜厚1mmの被覆鋼板を得た。この被覆鋼板の接着強度および塗面平滑性を評価した。結果を表3に示す。塗面平滑性は悪く、接着強度は8〜14kg/10mmであり、実施例4に比べ相対的に低かった。
【0080】
【表4】
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の変性樹脂粉体にあっては、上述の特定の要件を満足するエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)を有するものであるので、他の基材との接着性に優れ、かつ塗面平滑性にも優れる。このような塗装用粉体は、特に、流動浸漬法、静電塗装法等に好適に用いることができる。
【0082】
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)のメルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、さらに上記(F)の要件を満足する場合、接着性、塗面平滑性がより優れたものとなる。
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下で、エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られたものである場合、接着性がさらに優れたものとなる。
また、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)のハロゲン濃度が10ppm以下である場合、化学的安定性にすぐれ、粉砕機や塗装装置などを腐食させないものとなる。
【0083】
また、変性樹脂粉体が、前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)1〜100重量%と、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)0〜99重量%と、ゴム(ハ)0〜20重量%とを有する変性樹脂材料を粉砕してなる場合、変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)の有する優れた接着性と他のポリオレフィン系樹脂(ロ)、ゴム(ハ)の有する各種特性を兼ね備えたものとなる。
さらに、前記他のポリオレフィン系樹脂(ロ)が、密度0.86〜0.97g/cm3 のエチレン(共)重合体、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である場合、塗面平滑性、塗膜の強度等がより優れたものとなる。
そして、本発明の変性樹脂粉体の平均粒径が50〜400μmである場合、流動浸漬法、静電塗装法等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明におけるエチレン共重合体のTREF曲線の一例を示すグラフである。
Claims (6)
- 下記(A)〜(E)の要件を満足するエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)と他のポリオレフィン系樹脂(ロ)とゴム(ハ)とを有し、かつエチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)に、不飽和カルボン酸またはその誘導体がグラフトされた変性エチレン・α−オレフィン共重合体(イ’)が1〜100重量%、他のポリオレフィン系樹脂(ロ)が0〜99重量%、ゴム(ハ)が0〜20重量%である変性樹脂材料を粉砕してなることを特徴とする変性樹脂粉体。
(A)密度が0.92〜0.96g/cm3
(B)メルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分
(C)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(D)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつこの溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式a)の関係、および下記(式b)の関係を満足すること
(式a) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧0
(式b)
T75−T25≦−670×d+644
(E)融点ピークを1ないし2個有し、かつそのうち最も高い融点Tm1と密度dが、下記(式c)の関係を満たすこと
(式c) Tm1≧150×d−17 - 前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)は、さらに下記(F)の要件を満足することを特徴とする請求項1記載の変性樹脂粉体。
(F)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が下記(式d)の関係を満足すること
(式d) logMT≦−0.572×logMFR+0.3 - 前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下で、エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の変性樹脂粉体。
- 前記エチレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとの共重合体(イ)は、(G)ハロゲン濃度が10ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の変性樹脂粉体。
- 前記他のポリオレフィン系樹脂(ロ)が、密度0. 86〜0.97g/cm3 のエチレン(共)重合体、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の変性樹脂粉体。
- 平均粒径が50〜400μmであることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の変性樹脂粉体。
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