JP3953226B2 - 圧延前トリミング材のトリミング方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間圧延を行う前に予めサイドトリミングを実施する圧延前トリミング材に適用され、圧延後の母板エッジ部の耳荒れ・割れ等の品質不良を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延前にサイドトリマでトリミングを行い、その後冷間圧延を行う場合、圧延後にエッジ部に耳荒れ・割れ等の品質不良が発生することがある。
このような不良が発生する要因としては、
(1) 素材要因(エッジ組織、硬度、耳切り代等の要因)
(2) トリミング要因(サイドトリマの刃のクリアランス、オーバラップ等の要因)
(3) 冷間圧延要因(圧延ロール径、圧延荷重等の要因)
をあげることができる。
【0003】
この中で、特に(2) のトリミング要因に伴う品質不良を解決するために、従来は、刃のクリアランス、オーバラップを適正化して、できるだけ破断面を小さくし、剪断面を大きくすることのみが行われてきた。
また、サイドトリマの上刃と下刃は上下対称とされ、刃の径は上下同じものが用いられてきている。
【0004】
トリミング後の耳屑の処理も、耳屑をトラブルなく排出することのみが優先され、トリミング速度に対する耳屑排出速度偏差は+傾向とされ、特に意識されることはなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サイドトリマの刃のクリアランス、オーバラップを適性化するのみでは、以下の問題があった。
(a) 刃のクリアランス、オーバラップを同一条件としても、他の操業条件によって、トリミング部の剪断面・破断面比率が変化することから、冷間圧延後のエッジ状態に差異が生じる。
【0006】
(b) 丸刃でトリミングを行うサイドトリマでは、必ずしもクリアランス、オーバラップ設定に対応した剪断面・破断面を得ることができない。
そのため、従来のクリアランス、オーバラップを適正化するのみでは、他の操業要因の影響を受けて、圧延後のエッジ部の耳荒れ・割れ等の品質不良を完全に防止することができなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、他の操業要因の影響を受けても、圧延後のエッジ部の耳荒れ・割れ等の品質不良を防止することのできる圧延前トリミング材のトリミング方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷間圧延前に耳切り処理を施す圧延前トリミング材のトリミング方法であって、耳切りを行うサイドトリマのトリミング速度と耳切りした耳屑の耳屑排出速度を同期させるとともに、耳切りを行うサイドトリマの上刃を前記圧延前トリミング材の幅方向の中心から見て外側に、下刃を内側に配置し、前記上刃の上刃径と下刃の下刃径の関係を、上刃径>下刃径とすることで、トリミング後の母板の耳荒れ・割れを防止することを特徴とする圧延前トリミング材のトリミング方法によって上記課題を解決したのである。
【0010】
また、本発明は、冷間圧延前に耳切り処理を施す圧延前トリミング材のトリミング装置であって、耳切りを行うサイドトリマのライン速度制御装置と、耳屑を排出する耳屑排出装置の排出速度を制御する排出速度制御装置と、ライン速度制御装置と排出速度制御装置の同期をとり、両者の速度を一致させる速度同調装置と、から構成され、さらに、耳切りを行うサイドトリマの上刃と下刃の関係を、上刃を前記圧延前トリミング材幅方向の中心から見て外側に、下刃を内側に配置し、かつ、上刃径>下刃径とすることを特徴とする圧延前トリミング材のトリミング装置によって上記課題を解決したのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、図2を用いてサイドトリマでの耳屑の切断について説明する。
図2(a)で、帯状材1は図の右側から左の方に走行しており、サイドトリマ2の上刃2aと下刃2bが図示しない駆動機構で回転され、もしくは走行する鋼帯により回転され、トリミングを行っている。ここで、上刃2aが帯状材1の幅方向外側に配置され、下刃2bが内側に配置されている。トリミングされた帯状材1は、例えば図のa点(Aの位置)が分離点となって分離され、母板1aと耳屑1bに分かれる。ここで、耳屑1bは図示しない耳屑排出装置(耳屑巻込式、チョッパ式等)によって排出される。
【0014】
一方、帯状材1は図2(b)に示すように、b点(Bの位置)が分離点となって分離され、母板1aと耳屑1bに分かれる場合もある。
そして、サイドトリマでのトリミングでは、耳屑が耳屑排出装置に引っ張られる引張力に応じて、図2(a)のA位置から図2(b)のB位置までの範囲のいずれかの位置が分離点となる。
【0015】
図2(c)に、A位置が分離点となる場合について、A位置での模式的な断面図を示す。ここで、上刃2aと下刃2bは、帯状材に噛み込み始めた段階であり、帯状材1を、サイドトリマの上刃2aと下刃2bでちょうど挟み込んだ状態となっている。
この状態では、サイドトリマの刃による剪断力はほとんど働いていない状態であり、耳屑1bが耳屑排出装置による引張力で耳屑1bが引っ張られて破断している状態である。ここで、3は破断した破断面を示している。
【0016】
つまり、サイドトリマの刃が帯状材に噛み込むと同時に耳屑を引きちぎっており、エッジ部は破断面となる。この状態が、エッジ部の品質保証上最も悪い状態といえる。できるだけサイドトリマの刃で帯状材を剪断する時間を確保し、刃がオーバラップする最大位置(つまり、図2(b)に示すB位置)まで分離点を移動させることが必要である。分離点がB位置にあると、図2(d)に示すように、サイドトリマの上刃2aと下刃2bは帯状材1に十分に噛み込んでおり、破断面を最小に抑え、剪断面を最大にすることができる。すなわち、剪断面積比を最大にすることができる。
【0017】
ここで、分離位置をA位置からB位置に移動させるには、耳屑に引っ張り力を掛けないようにすればよく、帯状材のトリミング速度(ライン速度)と耳屑排出速度を同期させることで実現することができる。
次に、図3を説明する。なお、図3では簡単のため隠れ線の記載を省略し、すべて実線で記載するとともに、分離点a1 とbそれぞれで発生する耳屑を一つの図に模式的に図示している。これらの実際の位置関係については、図2を参照すれば自ずと明らかである。
【0018】
図3(a)では、サイドトリマの上刃2aの径を下刃2bの径よりも大きくした点に特徴がある。
刃がオーバラップする最大位置(つまり、図3(a)に示すB位置)は、図2の場合と同じであり、その断面の状態も図3(b)に示すように、図2(d)と同じとなるが、刃が帯状材に噛み込むa1 位置(A1 の位置)での刃の噛み込み状態が図2の場合のA位置での状態とは異なることになる。
【0019】
すなわち、図3(c)に示すように、A1 位置(a1 点)では、下刃2bは帯状材1の下面に接触した状態であるが、上刃2aは、刃の径が大きいため、すでに帯状材に噛み込んでおり、一部が剪断された状態となっている。そのため、この場合の破断面3は、図2(c)で示した破断面と比較して小さくなっている。つまり、上刃と下刃の径が同じ場合に比べて、剪断面積比を大きくすることができるのである。
【0020】
以上の知見をベースとして、図1に示す本発明の圧延前トリミング材のトリミング装置を構成することができる。
図1(a)において、帯状材1はサイドトリマ2でトリミングされ、母板1aはそのまま搬送され、耳屑1bが耳屑排出装置(巻込式)6に巻き込まれる。5は、それぞれの材料を通板させるためのピンチロール等のロールを示している。
【0021】
また、図1(b)では、耳屑1bが耳屑排出装置(チョッパ式)6aで細かく切断される。但し、他の構成は(a)と同じである。
ここで、本発明においては、耳屑排出装置6または6aの耳屑の排出速度を制御する排出速度制御装置7と帯状材1を通板するライン速度(つまり、トリミング速度)を制御するライン速度制御装置8とが両者の速度を同期させる速度同期装置10に接続されており、耳屑の排出速度とトリミング速度が同期して等しくなるようにされている。
【0022】
また、本発明においては、サイドトリマ2の上刃2aの径が下刃2bの径よりも大きくなるように構成されている。
【0023】
サイドトリマの上刃/下刃径比は、1.3 程度とすることが好適である。ここで、1以上であればよく、また、設備上の制約から1.5 以下としておくことが好ましい。
【0024】
【実施例】
図1(a)に示す本発明の装置を冷間圧延ラインの圧延機入側に設置されたサイドトリマに適用し、操業を行った。耳屑排出装置は、耳屑巻込方式を適用した。
処理対象である圧延前トリミング材は、極低炭素鋼であり、板厚は3.5mm である。トリミング速度は、250mpmに設定した。また、サイドトリマのクリアランスは0.12mm、オーバラップは0.35mmに設定されており、刃の径は、上下同一であるときは500mm としている。
【0025】
図4(a)に、ライン速度(トリミング速度:250mpm)に対する耳屑巻込速度偏差に対する剪断面積比のグラフを示す。
剪断面積比は、耳屑巻込速度偏差が小さくなるほど大きくなっており、耳屑巻込速度偏差0の場合が好適であることが分かる。ここで、耳屑巻込速度偏差が負の場合には、耳屑が巻き込みきれないことを示しており、操業を続けるとトリミングそのものができなくなることから不適である。
【0026】
次に、図4(b)に、サイドトリマの上刃/下刃径比と剪断面積比の関係を示す。
図4(b)から明らかなように、上刃/下刃径比が1を越えると剪断面積比が大きく改善されている。
【0027】
【発明の効果】
従来の操業では、サイドトリマの剪断面積比は50%程度であり、ばらつきも±20%程度あった。また、耳荒れ・割れ不良発生率も4.0 %であった。
しかしながら、表1に示すように、本発明の適用により、剪断面積比を大きく向上させることができ、そのばらつきを大幅に小さくすることができた。また、その結果、耳荒れ・割れ不良発生率も大きく減少した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1中、区分3が本発明例、区分1、2が比較例1、2、および、区分4が従来例である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトリミング装置を説明する模式図であり、(a)は巻込式の耳屑排出装置を適用した例であり、(b)はチョッパ式の耳屑排出装置を適用した例である。
【図2】サイドトリマにおける切断点(a、b)と切断の様子(c、d)を説明するための模式図である。
【図3】サイドトリマの上刃径/下刃径比が異なる場合の切断点(a)と切断の様子(b、c)を説明するための模式図である。
【図4】サイドトリマの耳屑巻込速度偏差に応じた剪断面積比(a)と、上刃径/下刃径比に応じた剪断面積比(b)のグラフである。
【符号の説明】
1 帯状材(圧延前トリミング材)
1a 母板
1b 耳屑
2 サイドトリマ
2a 上刃
2b 下刃
3 破断面
5 ロール
6 耳屑排出装置(巻込式)
6a 耳屑排出装置(チョッパ式)
7 排出速度制御装置
8 ライン速度(トリミング速度)制御装置
10 速度同期装置
Claims (2)
- 冷間圧延前に耳切り処理を施す圧延前トリミング材のトリミング方法であって、
耳切りを行うサイドトリマのトリミング速度と耳切りした耳屑の耳屑排出速度を同期させるとともに、
耳切りを行うサイドトリマの上刃を前記圧延前トリミング材の幅方向の中心から見て外側に、下刃を内側に配置し、
前記上刃の上刃径と下刃の下刃径の関係を、
上刃径>下刃径
とすることで、トリミング後の母板の耳荒れ・割れを防止することを特徴とする圧延前トリミング材のトリミング方法。 - 冷間圧延前に耳切り処理を施す圧延前トリミング材のトリミング装置であって、
耳切りを行うサイドトリマのライン速度制御装置と、
耳屑を排出する耳屑排出装置の排出速度を制御する排出速度制御装置と、
ライン速度制御装置と排出速度制御装置の同期をとり、両者の速度を一致させる速度同調装置と、
から構成され、さらに、
耳切りを行うサイドトリマの上刃と下刃の関係を、
上刃を前記圧延前トリミング材の幅方向の中心から見て外側に、下刃を内側に配置し、かつ、
上刃径>下刃径
とすることを特徴とする圧延前トリミング材のトリミング装置。
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