JP3952489B2 - アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動工具やハイブリッド電気自動車等に用いられる大電流での充放電を必要とするアルカリ蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金を主材とした負極を用いた密閉形アルカリ蓄電池は、優れた充放電特性と環境性等の点から最近用途が拡大しつつある。中でも、電動工具用やハイブリッド電気自動車(HEV)用の電池等として大電流充放電用電源としての需要が見込まれている。
【0003】
従来の焼結式正極を用いたアルカリ蓄電池は、高率での充放電における効率に優れるため、これらの大電流用途における主流電池であった。しかしながら正極の容量密度は450mAh/cm3 程度であり、電池の容量を増加させることには限界があった。
【0004】
一方、3次元の発泡状または繊維状金属多孔体を用いた非焼結式正極では550mAh/cm3 程度の容量密度が可能となり高容量化には効果があった。しかしながら、高率放電特性については焼結式正極に比べて抵抗が高くなる傾向があった。
【0005】
これらの電池は、渦巻きまたは積層した極群に集電端子をインダイレクト溶接などで溶着させるタブレス方式により、大電流時の電流密度を下げるような構造としていた。非焼結式電極の抵抗が高くなる原因としては、電極基板および活物質間の電子伝導性が低いことや、集電端子の溶接性が低いためと考えられている。
【0006】
電極基板については、発泡基板内の孔径を小さくするなどの改良が提案されており、活物質間の電子導電性については導電性ネットワークを形成するコバルト化合物の最適な合成による導電性の向上が提案されている。集電端子の溶接については、活物質を含まない部分にニッケル板などを溶接した上でシリーズ溶接するなどの提案が特開昭56−86459号公報等でなされている。また、工程を簡略化する目的で特開昭62−139251号公報では、あらかじめ溶接部を圧縮した発泡基板を用いてタブレス時の溶接強度を確保することができるとしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
より大電流での充放電を可能とするためには、集電端子の厚みを増加することや、溶接点数を増やす、外部端子(円筒形電池においては電池蓋部分に相当する)と集電端子間のリード片の距離を短くすることなどによる抵抗の低減が必要となる。しかしながら、従来の溶接方法を用いた場合、集電端子の厚みを厚くするとシリーズ溶接時の溶接に寄与しない無効電流を増加させることになり、溶接強度を高めることが困難となってくる。また、溶接点数の増加に伴う工程の増加や、リード片を短くすることによる溶接方法の困難化が問題となる。更に、従来の方法では封口時にリード片が折れ曲がるため、集電端子部にある一定方向の力がかかりやすく、大電流充放電用にリード片の厚みを増加させると集電端子と電極との溶着部が剥離するなどの問題が生じる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために、電池内部の集電構造を改良し、大電流充放電を可能にしたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものである。請求項1の発明は、耐アルカリ性金属リード片の両端に耐アルカリ性集電端子と電池外部端子部とをそれぞれ溶接することによって集電体を製作する工程、耐アルカリ性金属多孔体に活物質が充填された極板を巻き込んでまたは積層して製作した電極群を、前記極板の端部が電槽缶の開口部の方向を向いた状態で、有底筒形の電槽缶に挿入したのちに、前記電槽缶に電解液を入れ、そのあとに、前記集電体の集電端子の突起部を電極群の極板の端部に接触させたあと、前記集電板と前記電極群との溶接をおこなうことなしに、前記電槽缶を封口する工程を含むことを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法である。この製造方法によれば、前記極板の端部に前記集電端子の突起部が非溶接状態で接続していることを特徴とするアルカリ蓄電池が、得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態としては、以下のものがある。
【0011】
請求項2の発明は、前記極板の端部には活物質が充填されておらず、前記耐アルカリ性集電端子の突起部が、該端部に物理的に食い込んだ状態で接続しているアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0012】
請求項3の発明は、前記耐アルカリ性金属多孔体が、3次元の発泡状または繊維状の金属多孔体であるアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0013】
請求項4の発明は、前記耐アルカリ性集電端子の突起部が、複数の連続部分または複数の不連続部分から形成されているアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0014】
請求項5の発明は、前記極板の端部に、あらかじめ凹凸部分を設けたアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0016】
請求項6の発明は、前記耐アルカリ性金属リード片が、直線状に前記電池外部端子部および耐アルカリ性集電端子に接続されているアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0017】
請求項7の発明は、電池外部端子部と前記耐アルカリ性集電端子とが一体成形されているアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0018】
請求項8の発明は、前記耐アルカリ性金属多孔体、前記耐アルカリ性集電端子または前記耐アルカリ性金属リード片が、金属ニッケル単体または鉄にニッケルメッキしたもので形成されているアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0019】
【作用】
本発明には、以下の作用がある。
(1) 正極集電端子の溶接工程を省略できるため、製造工程の簡略化を図ることができる。
(2) 非焼結式正極基板を使用する場合におけるニッケル板を溶接する工程や基板の予備圧縮が不要となるため、工程の簡略化が図られる。
(3) 集電端子に突起を設けることにより食い込みによる強固な接触が得られるばかりでなく、発泡基板のような柔らかい基板を用いた場合、突起物による圧縮時の変形が導電性の向上をもたらし、かつ集電端子の突起による位置の固定がなされるため、耐振動性が向上する。
(4) 集電端子の溶接工程が不要であるため、集電端子の突起を自由に増加させることができる利点がある。
(5) あらかじめ活物質を含まない電極の端部に凹凸部分を設けることにより、集電端子の位置が固定され、かつ強固な接触がもたらされるため、電流の均一な導通が得られることとなる。
(6) 従来のDサイズ等の円筒形電池では溶接で使用しづらい0.5〜1mm程度の厚い集電端子を使用することが可能となるため、大電流の放電における電圧低下を低減することができる。
(7) リード片を別個に溶接することで形状の複雑な集電端子を接続することができる。
(8) これらの端子構造を用いることにより、従来では封口時に必要な余分なリード部が削減され、例えば電池蓋に最短距離の直線状のリード片を電池外部端子部および集電端子に接続することが可能となり、電流の流れる経路が短くなり、抵抗が低減される。
(9) 電池外部端子部と前記集電端子が一体成形されることにより抵抗低減の効果をさらに顕著なものにできるとともに、工程の簡略化も可能となる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明する。なお、本発明の形状等は以下に示した例に限定されるものではない。
【0021】
図1の1aは本発明に用いる正極の集電端子であり、直径25mmの円盤に幅2mmのスリット部が図のように存在し、スリット部の片側には図5の2aに示す連続した突起が存在している(1aの斜線部)。この円盤は、鉄に厚み4μmのニッケルメッキがされているものであり、円盤の厚みは1mm、突起部の高さは1mmである。
【0022】
図2の1bは本発明に用いる正極の集電端子であり、一辺が19mmの正方形の板に幅2mmのスリット部が図のように存在し、スリット部の片側及び最外周部には図5の2aに示す連続した高さ1mmの突起が存在している。材質は図1の1aと同じものである。
【0023】
図3の1cは本発明に用いる正極の集電端子であり、直径25mmの円盤に図6の2bに示すプロジェクションを設けたものであり、厚みは1mm、突起部の高さは1mmである。材質は図1の1aと同じものである。プロジェクションの間隔は、正極板に対して15mm毎に接触するようにした。
【0024】
図4の1dは従来の正極の集電端子であり、直径27mm、厚み0.3mmのニッケル板である。
【0025】
図7の3aは渦巻き状の電極群に図1の1aの集電端子の突起部がより強固にくい込むような圧縮痕である。
【0026】
図8の4bは正極のリード片であり、幅15mm、長さ15mm、厚み1mmの鉄に厚み4μmのニッケルメッキがされているものである。
(実施例)
水酸化ニッケルを主体とする活物質を3次元の発泡状ニッケル基板に充填し、高さ50mm、長さ700mm、厚み0.45mmの正極(公称容量8Ah)を作製した。一方、水素吸蔵合金を主体とする活物質をニッケルメッキパンチング鋼板に塗着し、高さ50mm、長さ750mm、厚み0.3mmの負極(公称容量15Ah)を作製した。これらの正極と負極とを高さ方向に2mmずらせた状態で不織布を介して円筒形に巻きこみ、最外周をテープにより固定した電極群を作製した。この電極群の正極の端部には幅1.5mmの活物質未充填部分を設けており、負極板についても同様の構造とした。
【0027】
この電極群の負極端部に0.3mmの厚みのニッケル板(直径28mm)をシリーズ溶接後、Dサイズの電槽缶に挿入し、電槽底部とスポット溶接を行った。溝付けを行った後、水酸化カリウムを主体とする電解液を所定量注液した。
【0028】
次に、図1の集電端子1aと図8の電池蓋(電池外部端子)4aと金属リード片4bとを溶接し、図8の形状の集電体を構成した。
【0029】
次に、この集電体をガスケット5a及び絶縁板5bを介して図9のように電極群5cに接触させた後、電池を封口することにより集電体が正極端部に強固に食い込みながら接続してなるものを本発明電池Aとした。
【0030】
集電端子1aの代わりに1bを用いた以外は本発明電池Aと同様に作製した電池を本発明電池Bとした。
【0031】
集電端子1bのかわりに1cを用いた以外は本発明電池Aと同様に作製した電池を本発明電池Cとした。
【0032】
次に比較例として、あらかじめ金属リード片4bと集電端子1dとを溶接した後に、電極群の正極端部とのシリーズ溶接(溶接点数は16点)を行い、溝付け、注液、金属リード片と電池蓋との溶接及び封口により作製した電池を比較例電池Dとした。
【0033】
これらの電池をそれぞれ4Aの電流で2時間12分充電し、8Aの電流でセル電圧が0.9Vになるまで放電するサイクルを10回繰り返した。
【0034】
次に4Aの電流で1時間36分充電した後(定格容量の80%の充電)、2時間の休止をおいて100Aの放電を11秒間行い、10秒目の電圧を測定した。測定後は8Aの電流でセル電圧が0.9Vになるまで放電した。
【0035】
続いて上記と同様の方法で充電を行った後、200Aの放電を11秒間行い、10秒目の電圧を測定した。全ての充電及び放電は25℃の温度雰囲気下で行った。
【0036】
表1に100A及び200Aでそれぞれ放電した時の10秒目の電池電圧を示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003952489
表1の結果より、本発明の集電構造を用いた電池では、比較例電池に比べて200A放電時における電圧の降下が少なくなっている。これは、従来の厚み及び長さの集電構造を用いた比較例電池Dでは、200Aの大電流放電時における接続端子間の抵抗が大きく、かつ温度上昇による抵抗増加が大きいためであると考えられる。
【0038】
本実施例では集電端子、金属リード片及び電池外部端子部を溶接により接続したが、一体成形することによりさらに工程の簡略化及び抵抗の低減を図ることができる。
【0039】
本実施例では集電端子の厚み及び金属リード片の厚みが1mmのものを用いたが、電池に要求される最大電流値により適切な厚みを選択することができる。その範囲は0.3〜2mmであることが望ましい。
【0040】
本実施例ではコストの低減を図るために鉄に厚み4μmのニッケルメッキされている材料を用いたが、金属ニッケル単体を用いることにより抵抗をさらに下げることができる。
【0041】
本実施例では円筒形の電池を用いたが、電極を平行に積層した角形電池に対しても同様の効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
このように本発明の製造方法は、溶接工程の簡略化が可能となるため、工業的価値は大きい。また非焼結式基板を用いた場合においても大電流放電時の電圧低下を抑制できるため、工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる集電端子の平面図である。
【図2】本発明に用いる集電端子の平面図である。
【図3】本発明に用いる集電端子の平面図である。
【図4】従来の集電端子の平面図である。
【図5】本発明に用いる集電端子の突起部の形状を示す斜視図である。
【図6】本発明に用いる集電端子の突起部の形状を示す斜視図である。
【図7】本発明に用いる電極群に設けられた凹凸箇所を示す図である。
【図8】本発明に用いる外部端子及び金属リード片及び集電端子の接続状態を示す図である。
【図9】本発明に係る電池内部の断面図を示す図である。
【符号の説明】
1a〜1d 集電端子
2a 集電端子上の連続した突起部
2b 集電端子上のプロジェクション状の突起部
3a 電極群上の凹凸
4a 電池外部端子部(安全弁付き電池蓋)
4b 金属リード片
5a ガスケット
5b 絶縁板
5c 電極群

Claims (8)

  1. 耐アルカリ性金属リード片の両端に耐アルカリ性集電端子と電池外部端子部とをそれぞれ溶接することによって集電体を製作する工程、耐アルカリ性金属多孔体に活物質が充填された極板を巻き込んでまたは積層して製作した電極群を、前記極板の端部が電槽缶の開口部の方向を向いた状態で、有底筒形の電槽缶に挿入したのちに、前記電槽缶に電解液を入れ、そのあとに、前記集電体の集電端子の突起部を電極群の極板の端部に接触させたあと、前記集電板と前記電極群との溶接をおこなうことなしに、前記電槽缶を封口する工程を含むことを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
  2. 前記極板の端部には活物質が充填されておらず、前記耐アルカリ性集電端子の突起部が、該端部に物理的に食い込んだ状態で接続している請求項1記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  3. 前記耐アルカリ性金属多孔体が、3次元の発泡状または繊維状の金属多孔体である請求項1または2記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  4. 前記耐アルカリ性集電端子の突起部が、複数の連続部分または複数の不連続部分から形成されている請求項1、2または3記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  5. 前記極板の端部に、あらかじめ凹凸部分を設けた請求項1、2、3または4記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  6. 前記耐アルカリ性金属リード片が、直線状に前記電池外部端子部および前記耐アルカリ性集電端子に接続されている請求項記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  7. 前記電池外部端子部と前記耐アルカリ性集電端子とが一体成形されている請求項1、2、3、4、または記載のアルカリ蓄電池の製造方法
  8. 前記耐アルカリ性金属多孔体、前記耐アルカリ性集電端子または前記耐アルカリ性金属リード片が、金属ニッケル単体または鉄にニッケルメッキしたもので形成されている請求項1、2、3、4、5、6または記載のアルカリ蓄電池の製造方法
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