JP3893856B2 - 角型アルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池に関するものであり、さらに詳しくは正極に非焼結式ニッケル極を用いた、角型構造を有するアルカリ蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池に代表されるアルカリ蓄電池の正極として用いられるニッケル極は焼結式と非焼結式に大別される。
【0003】
焼結式ニッケル極の製造方法としては、パンチングメタルなどの芯材とニッケル粉末を焼結させて得た多孔度80%程度の多孔質ニッケル焼結基体に、硝酸ニッケル水溶液などのニッケル塩溶液を含浸し、ついでアルカリ水溶液中に浸漬することにより多孔質ニッケル焼結基体中に水酸化ニッケルを生成させて作製する方法が一般的である。
【0004】
この極板は、活物質である水酸化ニッケルを必要量充填するために、上記の含浸・アルカリ浸漬処理を複数回繰り返さなければならないために工程が煩雑となる。また、多孔質基体の多孔度を上げて活物質の充填密度を高めようとしても、多孔度を80%程度よりも大きくすると極板の強度が著しく低下し、活物質が脱落しやすくなるため、活物質充填密度を高めることができないという課題がある。
【0005】
一方、非焼結式ニッケル極の製造方法としては、95%以上の多孔度を有する発泡状ニッケル多孔体を基体に用い、これに水酸化ニッケルを主体とする活物質粉末を水で混練したペーストを充填し、乾燥、プレス工程を経て作製する方法が一般的である。この極板は、焼結式ニッケル極と比較して製造方法が簡易である上に、活物質充填密度が大きいニッケル極が得られ、電池の高容量化が図れるため、通信機器、OA、パワーツールなど現在幅広い分野で使用されている。
【0006】
さらに近年、携帯電話などの電子機器においては小型化・薄型化の進展が目覚ましく、それらの駆動用電源である電池に対しても小型化・薄型化が要望されており、スペースの有効活用の観点から角型形状を有する電池に要望が集まりつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
角型電池は、円筒型電池と比較して機器収納時のスペース効率が優れている。しかしながら、正極板に非焼結式ニッケル極を用いて角型構造のアルカリ蓄電池を構成する場合には、以下に示すような課題がある。
【0008】
従来角型アルカリ蓄電池では、短冊状に切断した複数枚の正極板6及び負極板8をセパレータ7を介して交互に積層した電極体を角型ケース4に収納した構造を有する。この角型アルカリ蓄電池の模式断面図を図5に示す。
【0009】
このように、多数枚の極板のそれぞれにリード端子を溶接し、積層して電極体を構成しなければならない角型アルカリ蓄電池は、一枚の帯状の正極板、負極板をセパレータを介して捲回して構成される円筒型アルカリ蓄電池と比較して著しく生産性が劣る。
【0010】
また、このような積層構造の電極体には極板の位置ずれによる正極板と負極板の微小短絡不良(以下、リーク不良と述べる。)を防止するためにセパレータ7を袋状に溶着(以下、セパシールと述べる。)して正極板6または負極板8の少なくとも一方を挿入する工程が不可欠であり、角型電池の構成をさらに煩雑なものとしている。
【0011】
角型電池の生産性を向上させるための手段としては、例えば特開平9−293537号公報等に開示されている角型のリチウム・二次電池の捲回構造による構成、すなわち一枚の帯状の正極板と負極板をセパレータを介して相対向するように折り曲げて電極体を作製し、角型ケースに収納させる方法が考えられる。
【0012】
しかしながら、捲回構造の電極体を角型ケースに収納させるためには、極板を図3に示すような長円状、もしくは図6に示すような長方形状に捲回しなければならないため、折り曲げ部分において極板を非常に小さい曲率で屈曲させる必要がある。
【0013】
非焼結式ニッケル正極は小さい曲率で折り曲げた場合、折り曲げ部分において発泡ニッケル芯材の切断やひび割れ、あるいは活物質の剥離離脱が生じやすく、これらが要因となって電池のリーク不良が増大するという課題が発生する。
【0014】
以上示したとおり、正極に非焼結式ニッケル極を用いた角型アルカリ蓄電池の製造工程としては生産性と歩留まりが両立できる決定的な手段がないのが現状である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の角型アルカリ蓄電池は、3次元的に連なる空間を有する発泡状金属ニッケルからなる金属多孔体に水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末を充填した正極板と、負極板とをセパレータを介して少なくとも一回折り曲げて、相対向するように積層した電極体を、角型容器内に収納した角型アルカリ蓄電池において、正極板の折り曲げ部分の金属多孔体には活物質が充填されておらず、かつ圧延処理が施されているものとした。これによって、角型アルカリ蓄電池の課題である生産性の低さを改善した上で、高い歩留まりを達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、3次元的に連なる空間を有する発泡状金属ニッケルからなる金属多孔体に水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末を充填した正極板と、負極板とを、セパレータを介して少なくとも一回折り曲げて、相対向するように積層した電極体を角型容器内に収納した角型アルカリ蓄電池において、正極板の折り曲げ部分の金属多孔体には活物質が充填されておらず、かつ圧延処理が施されていることを特徴としたものである。
【0017】
これにより、非焼結式ニッケル極の折り曲げ部分からの活物質の脱落が発生せず、さらに金属多孔体の切断やひび割れが生じにくいように圧延処理が施されているため、リーク不良の増大を招くことなく、アルカリ蓄電池においてもリチウム二次電池と同様な捲回構造の電極体が構成可能となる。
【0018】
その結果、従来のように多数の極板を積層して構成する必要がなくなり、煩雑なセパシール工程も不要となるため極板構成が簡易となり、角型アルカリ蓄電池の生産性向上が図れる。
【0019】
金属多孔体としては、発泡状金属ニッケルを用いることが望ましい。発泡状金属ニッケルを用いることにより充放電特性や寿命特性が優れたアルカリ蓄電池が得られる。
【0020】
負極板としては、パンチングメタル芯材に水素吸蔵合金が塗着されたものを用いることが望ましい。これにより、高容量密度、高信頼性なアルカリ蓄電池が得られる。
【0021】
また、正極板の折れ曲がった部分の金属多孔体は圧延処理により多孔度5%以上、20%以下まで圧縮されていることが望ましい。折り曲げ部分を多孔度5%未満まで圧縮すると、基体の伸び率の差から、極板の折り曲げ部分と活物質充填部分の間の部分に亀裂が発生することが懸念される。また、多孔度20%を越える圧縮では、折り曲げ時の切断やひび割れを防止する効果が小さい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細な説明を行う。なお、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0023】
(実施例)
正極板1を次のように作製した。正極活物質として内部に少量のコバルト及び亜鉛を固溶した球状の水酸化ニッケル粉末を用意した。これに添加剤として水酸化コバルト、酸化亜鉛を水酸化ニッケルに対して重量比でそれぞれ8%、2%となるように混合し、水と少量のCMC(カルボキシメチルセルロース)を加えてペースト状に混練した。このペーストを多孔度95%の発泡状金属ニッケル多孔体中に充填し、乾燥後、厚さ約0.7mmとなるまで加圧し、さらに38mm×42mmの大きさに切断して極板を作製した。
【0024】
その際、図1に示すように、正極板1は、活物質ペーストを充填した活物質充填部分1aと活物質の充填されていない部分1bとからなり、この1bは極板の折り曲げ部分にあたる。この1bは、金属多孔体中に活物質をあらかじめ充填しないで、この部分をロールプレスにより圧延処理を行い、多孔度が約10%となるまで圧縮した。なお、この1bは、金属多孔体中に活物質を充填した後に超音波処理などにより活物質を金属多孔体中から剥離してもよい。このように作製した正極板に集電用のニッケルリード1cを溶接し、このリード1cの溶接部に保護テープ1dを貼って正極板1とした。
【0025】
次に負極板2を次のように作製した。合金組成がMmNi3.8Co0.6Al0.3Mn0.3(Mmはミッシュメタルを示す)である水素吸蔵合金粉末に水と少量のCMCとSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)と導電剤であるカーボンを加えてペースト状にし、鉄にニッケルメッキを施したパンチングメタル芯材の両面に塗布し、これを乾燥、プレス圧延後、38mm×62mmの大きさに切断し、負極板2とした。
【0026】
上述の方法で作製した正極板1と負極板2を、目付重量60g/m2、厚さ0.15mmである親水化処理を施したポリプロピレン製不織布からなるセパレータ3を介して捲回して電極体を構成し、これを角型ケース内に収納した。この電極体の構成状態の模式図を図2に示す。正極板は、活物質が存在せず、かつ圧延処理が施されている折り曲げ部分で折れ曲がるように構成した。
【0027】
さらに、ケース4内に6NのKOHと1NのLiOHからなるアルカリ電解液を注液後、封口を行い、理論容量750mAhの角型ニッケル・水素蓄電池500個を組み立てた。
【0028】
(比較例1)
また比較例1として、正極板1の折り曲げ部分にあたる基体中にも他の部分と同様に活物質を充填したこと以外は実施例と同様の方法で比較例の正極板5を作製した。この正極板5を実施例と同様に、負極板2、セパレータ3と対向させて捲回して電極体を構成し、これを角型ケース4に収納した。この電極体の構成状態の模式図を図3に示す。実施例と同様にアルカリ電解液を注液後、封口を行い、理論容量750mAhの角型ニッケル・水素蓄電池500個を組み立てた。
【0029】
(比較例2)
比較例2として、従来の角型アルカリ蓄電池の構成方法である積層構造による電極体を構成し、電池を組み立てた。実施例に示したのと同様の方法で活物質ペーストを発泡状金属ニッケル基体中に充填し、乾燥後、厚さ約0.7mmになるまで加圧した。その後、38mm×14mmの大きさの短冊状に切断し、集電用のニッケルリード6aを溶接し、この上に保護テープ6bを貼って図4に示されるような正極板6を作製した。
【0030】
得られた正極板6に対してセパシールを行った。ポリプロピレン製不織布からなるセパレータ7を熱溶着により袋状に成型した内部に正極板6を収納した。
【0031】
また、負極板8についても実施例に示したのと同様の方法にて水素吸蔵合金ペーストをパンチングメタル芯材に塗着し、乾燥、プレス圧延後、38mm×14mmの大きさに切断した。負極板8についても正極板6と同様に集電用のニッケルリード6aを溶接して保護テープ6bを貼った。
【0032】
得られたセパシール済み正極板6を3枚と負極板8を4枚、互いに対向するように組み合わせて積層して構成し、正極板6同士、負極板8同士がそれぞれ通電するようにリード部分の溶接を行い電極体を作製した。
【0033】
このようにして得られた電極体を角型ケース4内に収納し、電解液を注液後、封口を行い、理論容量750mAhの角型ニッケル・水素蓄電池500個を組み立てた。(表1)に実施例及び比較例1,2の電池のリーク不良の割合を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
(表1)に示されるように実施例電池は比較例1と比較してリーク不良の割合が大幅に低減しており、従来の構成方法による比較例2と同レベルであることがわかる。しかも実施例では比較例と異なり、面倒なセパシール工程や複数の極板を積層・溶接する工程が不要であり、工程の簡略化、生産性の向上が図れる。
【0036】
なお、本実施例においては、帯状の正極板、負極板をセパレータを介して長円状に捲回して構成したが、長方形状に捲回して構成した場合についても同様の効果が得られる。
【0037】
以上に示されたように、本発明に基づく折り曲げ部分の金属多孔体には活物質が充填されておらず、かつ圧延処理が施されていることを特徴とする非焼結式ニッケル極と、負極とセパレータを捲回して角型ケースに収納してなるアルカリ蓄電池は極板構成が簡易であるため生産性に優れ、リーク不良も低減することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明の角型アルカリ蓄電池によれば、角型構造を有するアルカリ蓄電池の課題であった生産性の低さを改善した上で、高い歩留まりを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における正極板の平面図
【図2】同長円状に捲回した電極体の断面図
【図3】比較例1における長円状に捲回した電極体の断面図
【図4】比較例2における正極板の平面図
【図5】従来の角型アルカリ蓄電池の模式断面図
【図6】従来の長方形状に捲回した電極体の断面図
【符号の説明】
1 正極板
1a 活物質充填部分
1b 活物質未充填部
1c 集電用リード
1d リード保護テープ
2 負極板
3 セパレータ
4 ケース
5 比較例1の正極板
6 比較例2の正極板
6a 集電用ニッケルリード
6b リード保護テープ
7 セパレータ
8 負極板
Claims (3)
- 3次元的に連なる空間を有する発泡状金属ニッケルからなる金属多孔体に水酸化ニッケルを主成分とする活物質粉末を充填した正極板と、負極板とを、セパレータを介して少なくとも一回折り曲げて、相対向するように積層した電極体を角型容器内に収納したアルカリ蓄電池において、前記正極板の折り曲げ部分の金属多孔体には活物質が充填されておらず、かつ圧延処理が施されていることを特徴とする角型アルカリ蓄電池。
- 負極板がパンチングメタル芯材上に水素吸蔵合金を塗着したものである請求項1記載の角型アルカリ蓄電池。
- 正極板の折り曲げ部分の金属多孔体は、その多孔度が5〜20%である請求項1記載の角型アルカリ蓄電池。
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