JP3952082B2 - 血圧監視装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体の血圧値の変動に関連して変動する、動脈内を伝播する脈波の脈波伝播速度情報、心拍情報、末梢部の脈波の面積、およびそれらに基づいて算出される推定血圧値等の血圧関連情報に基づいて、生体の血圧値の変動を監視する血圧監視装置に関するものである。
生体の動脈内を伝播する脈波の脈波伝播速度情報として、所定の2部位間の伝播時間DTや伝播速度VM(m/s)などが知られており、このような脈波伝播速度情報は、所定の範囲内では生体の血圧値BP(mmHg)と略比例関係を有することが知られている。そこで、予め測定される生体の血圧値BPと脈波伝播速度情報から、たとえばEBP=α(DT)+β(但しαは負の値)、或いはEBP=α(VM)+β(但しαは正の値)で表されるような関係式における係数α及びβを予め決定し、その関係式から、逐次検出される脈波伝播速度情報に基づいて、推定血圧値EBPを求めて生体の血圧値を監視し、その推定血圧値EBPが前回の血圧測定時から所定以上変動したことに基づいてカフによる血圧測定を起動させる血圧監視装置が提案されている。
また、上記生体の血圧値と脈波伝播速度情報との関係は、心筋の状態などの中枢側の事情や、末梢血管硬さや血流抵抗などの末梢側の事情の影響を受けて変化するため、中枢側の情報として心拍数や心拍周期等の心拍情報を用い、末梢側の情報として末梢部の脈波面積を用い、脈波伝播測定情報(またはその脈波伝播情報に基づいて算出される推定血圧値)が前回の血圧測定時から所定以上変動したと判断し、且つ上記心拍情報および末梢部の脈波面積の少なくとも一方が前回の血圧測定時から所定以上変動したと判断した場合にカフによる血圧測定を起動させる血圧監視装置が提案されている。たとえば、本出願人が先に出願して公開された特開平10−43147号公報(特許文献1)に記載された血圧監視装置がそれである。
特開平10−43147号公報
これら従来の血圧監視装置では、血圧測定の起動を判断するための推定血圧値等の上記血圧関連情報は、全く表示されなかったり、表示されるとしても、単に数値が表示され、或いはその血圧関連情報のみがトレンド形式で表示されていたので、その表示からは、患者の容体が血圧測定が起動される状態に近いのか、血圧測定が起動される可能性は低いのかを判断することは比較的困難であった。従って、上記従来の血圧監視装置では、血圧測定の起動が判定された時点で処置を開始することとなり、結果的に処置が遅れる場合があった。
本発明は以上のような事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、生体の血圧値の変動に関連して変動する血圧関連情報に基づいて生体の血圧値の変動を監視する血圧監視装置において、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを認識できるようにすることにある。
本発明に従った血圧監視装置は、生体の一部への圧迫圧力を変化させるカフを用いて該生体の血圧値を測定する血圧測定手段と、該生体の血圧値の変動に関連して変動する該生体の血圧関連情報を逐次決定する血圧関連情報決定手段と、該血圧関連情報が予め設定された異常判断基準値を越えたことに基づいて前記血圧測定手段による血圧測定を起動させる血圧測定起動手段とを備えて生体の血圧値を監視する血圧監視装置であって、前記血圧関連情報を表示するための表示器と、前記血圧関連情報決定手段において逐次決定される前記血圧関連情報の一拍毎の変化傾向を、前記表示器に表示する変化傾向表示手段とを、含むことを特徴とする。
また、本発明に従った血圧監視装置は、前記血圧関連情報決定手段により逐次決定される前記血圧関連情報と前記異常判断基準値とを対比可能にグラフ表示させるグラフ表示手段を、前記変化傾向表示手段に加えて前記表示器に表示することが好ましい。
本発明によれば、生体の血圧値の変動と関連して変動する情報として逐次決定される血圧関連情報の一拍毎の変化傾向が表示されるため、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを確認できる。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された血圧監視装置8の回路構成を説明するブロック線図である。
図1において、血圧監視装置8は、ゴム製袋を布製帯状袋内に有して、たとえば患者の上腕部12に巻回されるカフ10と、このカフ10に配管20を介してそれぞれ接続された圧力センサ14、切換弁16、および空気ポンプ18とを備えている。この切換弁16は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ10内を急速に排圧する急速排圧状態の3つの状態に切り換えられるように構成されている。
圧力センサ14は、カフ10内の圧力を検出して、その圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路22および脈波弁別回路24にそれぞれ供給する。静圧弁別回路22はローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器26を介して電子制御装置28へ供給する。脈波弁別回路24はバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SM1 を周波数的に弁別してその脈波信号SM1 をA/D変換器30を介して電子制御装置28へ供給する。この脈波信号SM1 が表すカフ脈波は、患者の心拍に同期して図示しない上腕動脈から発生してカフ10に伝達される圧力振動波である。
上記電子制御装置28は、CPU29、ROM31、RAM33、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。
心電誘導装置34は、生体の所定の部位に貼り着けられる複数の電極36を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波、所謂心電図を連続的に検出するものであり、その心電誘導波を示す信号SM2 を前記電子制御装置28へ供給する。なお、この心電誘導装置34は、心臓内の血液を大動脈へ向かって拍出開始する時期に対応する心電誘導波のうちのQ波或いはR波を検出するためのものであることから、第1脈波検出装置として機能している。
パルスオキシメータ用光電脈波検出プローブ38(以下、単にプローブという)は、毛細血管を含む末梢動脈へ伝播した脈波を検出する第2脈波検出装置或いは末梢脈波検出手段として機能するものであり、例えば、被測定者のたとえば指尖部などの生体皮膚すなわち体表面40に図示しない装着バンド等により密着した状態で装着されている。プローブ38は、一方向において開口する容器状のハウジング42と、そのハウジング42の底部内面の外周側に位置する部分に設けられ、LED等から成る複数の第1発光素子44aおよび第2発光素子44b(以下、特に区別しない場合は単に発光素子44という)と、ハウジング42の底部内面の中央部分に設けられ、フォトダイオードやフォトトランジスタ等から成る受光素子46と、ハウジング42内に一体的に設けられて発光素子44及び受光素子46を覆う透明な樹脂48と、ハウジング42内において発光素子44と受光素子46との間に設けられ、発光素子44から前記体表面40に向かって照射された光のその体表面40から受光素子46に向かう反射光を遮光する環状の遮蔽部材50とを備えて構成されている。
上記第1発光素子44aは、例えば660nm程度の波長の赤色光を発光し、第2発光素子44bは、例えば800nm程度の波長の赤外光を発光するものである。これら第1発光素子44a及び第2発光素子44bは、一定時間づつ順番に所定周波数で発光させられると共に、それら発光素子44から前記体表面40に向かって照射された光の体内の毛細血管が密集している部位からの反射光は共通の受光素子46によりそれぞれ受光される。なお、発光素子44の発光する光の波長は上記の値に限られず、第1発光素子44aは酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの吸光係数が大きく異なる波長の光を、第2発光素子44bはそれらの吸光係数が略同じとなる波長、すなわち酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとにより反射される波長の光をそれぞれ発光するものであればよい。
受光素子46は、その受光量に対応した大きさの光電脈波信号SM3 をローパスフィルタ52を介して出力する。受光素子46とローパスフィルタ52との間には増幅器等が適宜設けられる。ローパスフィルタ52は、入力された光電脈波信号SM3 から脈波の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去し、そのノイズが除去された信号SM3 をデマルチプレクサ54に出力する。この光電脈波信号SM3 が表す光電脈波は、患者の脈拍に同期して発生する容積脈波である。なお、この光電脈波は脈拍同期波に対応している。
デマルチプレクサ54は、電子制御装置28からの信号に従って第1発光素子44a 及び第2発光素子44b の発光に同期して切り換えられることにより、赤色光による電気信号SMR をサンプルホールド回路56及びA/D変換器58を介して、赤外光による電気信号SMIRをサンプルホールド回路60及びA/D変換器62を介して、それぞれ電子制御装置28の図示しないI/Oポートに逐次供給する。サンプルホールド回路56,60は、入力された電気信号SMR ,SMIRをA/D変換器58,62へ出力する際に、前回出力した電気信号SMR ,SMIRについてのA/D変換器58,62における変換作動が終了するまでに、次に出力する電気信号SMR ,SMIRをそれぞれ保持するためのものである。
電子制御装置28のCPU29は、RAM33の記憶機能を利用しつつROM31に予め記憶されたプログラムに従って測定動作を実行し、駆動回路64に制御信号SLVを出力して発光素子44a,44bを順次所定の周波数で一定時間づつ発光させる一方、それら発光素子44a,44bの発光に同期して切換信号SCを出力してデマルチプレクサ54を切り換えることにより、前記電気信号SMR をサンプルホールド回路56に、電気信号SMIRをサンプルホールド回路60にそれぞれ振り分ける。上記CPU29は、血中酸素飽和度を算出するために予め記憶された演算式から上記電気信号SMR ,SMIRの振幅値に基づいて生体の血中酸素飽和度を算出する。なお、この酸素飽和度の決定方法としては、例えば、本出願人が先に出願して公開された特開平3−15440号公報に記載された決定方法が利用される。
図2は、上記血圧監視装置8における電子制御装置28の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図2において、血圧測定手段70は、カフ圧制御手段72によってたとえば生体の上腕に巻回されたカフ10の圧迫圧力を所定の目標圧力値PCM(たとえば、180mmHg程度の圧力値)まで急速昇圧させた後に3mmHg/sec程度の速度で徐速降圧させられる徐速降圧期間内において、順次採取される脈波信号SM1 が表す脈波の振幅の変化に基づきよく知られたオシロメトリック法を用いて最高血圧値BPSYS 、平均血圧値PMEAN、および最低血圧値BPDIA などを決定する。
血圧関連情報決定手段の一つである脈波伝播速度情報算出手段74は、図3に示すように心電誘導装置34により逐次検出される心電誘導波の周期毎に発生する所定の部位たとえばR波から、プローブ38により逐次検出される光電脈波の周期毎に発生する所定の部位たとえば立ち上がり点或いは下ピーク点までの時間差(脈波伝播時間)DTRPを逐次算出する時間差算出手段を備え、その時間差算出手段により逐次算出される時間差DTRPに基づいて、予め記憶される数式(1)から、被測定者の動脈内を伝播する脈波の伝播速度VM (m/sec )を一拍毎或いは数拍毎に逐次算出する。尚、数式(1)において、L(m)は左心室から大動脈を経て前記プローブ38が装着される部位までの距離であり、TPEP (sec)は心電誘導波形のR波から光電脈波の下ピーク点までの前駆出期間である。これらの距離Lおよび前駆出期間TPEP は定数であり、予め実験的に求められた値が用いられる。
M =L/(DTRP−TPEP ) …(1)
対応関係決定手段76は、血圧測定手段70により測定された最高血圧値BPSYS とそれぞれの血圧測定期間内における脈波伝播時間DTRP或いは脈波伝播速度VM 、たとえばその期間内における脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM の平均値に基づいて、数式(2)或いは数式(3)で示される脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM と最高血圧値BPSYS との関係式における係数α及びβを、予め決定する。なお、上記最高血圧値BPSYS に代えて、血圧測定手段70により測定された平均血圧値BPMEAN或いは最低血圧値BPDIA と血圧測定期間内における脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM との関係が求められてもよい。要するに、監視(推定)血圧値EBPを最高血圧値とするか、平均血圧値とするか、最低血圧値とするかによって選択される。
EBP=α(DTRP)+β(但し、αは負の定数、βは正の定数) …(2)
EBP=α(VM )+β(但し、αは正の定数、βは正の定数) …(3)
推定血圧値決定手段78は、生体の血圧値とその生体の脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM との間の上記対応関係(数式(2)および数式(3))から、脈波伝播速度情報算出手段74により逐次算出される生体の実際の脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM に基づいて推定血圧値EBPを逐次決定する。
血圧関連情報決定手段の一つである心拍周期決定手段82は、心電誘導装置34により得られた心電波形の所定部位間の間隔たとえばR波間隔を計測することにより心拍周期RRを逐次決定する。また、同じく血圧関連情報決定手段の一つである脈波面積算出手段84は、光電脈波検出プローブ38により得られた光電脈波の面積Sをその1周期Wおよび振幅Lに基づいて正規化して算出し、正規化脈波面積VRを一拍毎或いは数拍毎に逐次算出する。すなわち、上記光電脈波は、図4に示すように、数ミリ或いは十数ミリ毎のサンプリング周期毎に入力される光電脈波の大きさを示す点の連なりにより構成されており、その1周期W内において光電脈波を積分(加算)することにより光電脈波の面積Sが求められた後、S/(W×L)なる演算が行われることにより正規化脈波面積VRが算出される。この正規化脈波面積VRは、その1周期Wと振幅Lとによって囲まれる矩形内における面積割合を示す無次元の値であり、%MAPとしても称される。
血圧測定起動手段86は、推定血圧値決定手段78により決定された推定血圧値EBPが予め設定された異常判断基準値(アラーム値)ALEBP を越えたことに基づいて血圧測定手段70による血圧測定を起動させる。たとえば、推定血圧値EBPが予め設定された異常判断基準値ALEBP を越え、さらに上記心拍周期RRおよび脈波面積VRの少なくとも一方が予め設定された異常判断基準値ALRR、ALVRを越えたことに基づいて前記血圧測定手段70による血圧測定を起動させる。ここで、上記推定血圧値異常判定手段87における予め設定された異常判断基準値ALEBP とは、推定血圧値EBP、またはその推定血圧値EBPの変化量または変化率として予め設定された値である。同様に、上記心拍周期異常判定手段88における予め設定された異常判断基準値ALRRとは、心拍周期RR、またはその心拍周期RRの変化量または変化率として予め設定された値であり、上記脈波面積異常判定手段89における予め設定された異常判断基準値ALVRとは、脈波面積VR、またはその脈波面積VRの変化量または変化率として予め設定された値である。
すなわち、血圧測定起動手段86は、推定血圧値決定手段78により逐次決定された推定血圧値EBP、またはその推定血圧値EBPの前回の血圧測定時を基準とした変化量或いは変化率が上記異常判断基準値ALEBP を越えたことを以て推定血圧値EBPの異常を判定する推定血圧値異常判定手段87、心拍周期決定手段82により逐次決定された心拍周期RR、またはその心拍周期RRの前回の血圧測定時を基準とした変化量或いは変化率が上記異常判断基準値ALRRを越えたことを以て心拍周期RRの異常を判定する心拍周期異常判定手段88、脈波面積算出手段84により算出された脈波面積VR、またはその脈波面積VRの前回の血圧測定時を基準とした変化量或いは変化率が上記異常判断基準値ALVRを越えたことを以て脈波面積VRの異常を判定する脈波面積異常判定手段89を備え、上記推定血圧値異常判定手段87により推定血圧値EBPの異常が判定され、且つ心拍周期異常判定手段88により心拍周期RRの異常が判定されるか或いは脈波面積異常判定手段89により脈波面積VRの異常が判定されたことに基づいて、前記血圧測定手段70による血圧測定を起動させる。なお、上記異常判断基準値ALEBP 、ALRR、ALVRは、1つ、または大きさの異なる2つの値が設定される。たとえば、推定血圧値EBPについて、大きさの異なる2つの異常判断基準値すなわち上側異常判断基準値ALHEBP と下側異常判断基準値ALLEBP が設定された場合は、逐次決定される推定血圧値EBPが上側異常判断基準値ALHEBP を大きい側に越え、または下側判断基準値ALLEBP を小さい側に越えたことに基づいて推定血圧値EBPの異常が判定される。
グラフ表示手段90は、前記血圧測定起動手段86において血圧測定を起動させる判断に用いられる前記血圧関連情報と、その血圧関連情報について予め設定された前記異常判断基準値ALとを、対比可能に表示器32に設けられたグラフに表示させる。または、前記血圧測定起動手段86において血圧測定を起動させる判断に用いられる前記血圧関連情報、その血圧関連情報について予め設定された前記異常判断基準値ALに加えて、その血圧関連情報が警戒を必要とする値として、異常判断基準値ALよりも早期に判断されるように予め設定された警戒判断基準値(アラート値)ATを、対比可能に表示器32に設けられたグラフに表示させる。なお、上記警戒判断基準値ATも、前記異常判断基準値と同様に、1つまたは大きさの異なる2つの値が設定される。
たとえば、グラフ表示手段90は、時間軸と前記血圧関連情報の一つを示す血圧関連情報軸との二次元座標に、その血圧関連情報についての異常判断基準値AL(および警戒判断基準値AT)と、その血圧関連情報をグラフ表示する。或いは、前記血圧関連情報を示す軸からなる三次元座標に、それら血圧関連情報についての異常判断基準値AL(および警戒判断基準値AT)と、その血圧関連情報をグラフ表示する。
図5および図6は、上記グラフ表示手段90において、表示器32に設けられたグラフの表示例を示す図である。図5は、時間軸92と推定血圧値EBPを表す推定血圧値軸94との二次元座標に、上記予め設定された上側異常判断基準値ALHEBP を示す上側判断基準線96、下側異常判断基準値ALLEBP を示す下側異常判断基準線98が表示され、さらに、上側異常判断基準値ALHEBP よりも小さい側に、推定血圧値EBPが警戒を必要とする値として予め設定された上側警戒判断基準値ATHEBP を示す上側警戒判断基準線100が表示され、下側異常判断基準値ALLEBP よりも大きい側に、推定血圧値EBPが警戒を必要とする値として予め設定された下側警戒判断基準値ATLEBP を示す下側警戒判断基準線102が表示されている。そして、その二次元座標上に、推定血圧値決定手段78において逐次決定される推定血圧値EBPがトレンド表示されている。なお、この推定血圧値EBPのトレンドは、逐次決定される推定血圧値EBPが直接表示されてもよいが、図5においては逐次決定される推定血圧値EBPに基づいて、1分間の移動平均値EBPAVが算出され、その移動平均値EBPAVがトレンド形式で表示されている。また、図5の○印は血圧測定手段70により測定された血圧値BPを示している。図5のように、血圧測定の起動を判断する血圧関連情報である推定血圧値EBPがトレンド形式で表示されると、そのトレンドから、今後の傾向を予測することができるので、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを容易に認識することができ、図5においては、推定血圧値EBPのトレンドの先端は、下側警戒判断基準線102と下側異常判断基準線98との間に表示されているので、患者の状態は比較的注意を要する状態であることが分かる。
図6は、推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRを示す互いに一点で交わる3本の軸から成る三次元座標すなわちレーダーチャート104である。図6に示されるレーダーチャート104のそれぞれの軸には、予め設定された上側異常判断基準値ALH、上側警戒判断基準値ATH、下側警戒判断基準値ATL、下側異常判断基準ALLが表示されている。そして、そのレーダーチャート104に、逐次決定される推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRを結んで形成される三角形106が表示されている。図6のように、血圧測定起動を判断する血圧関連情報が表示器32に対比可能にグラフ表示されると、血圧測定起動を判断する血圧関連情報が複数ある場合であっても、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを容易に認識することができる。
変化傾向表示手段108は、血圧関連情報として逐次決定される推定血圧値EBP等の一拍毎の変化傾向を、表示器32にグラフ表示する。この変化傾向とは、1分程度の所定時間の移動平均値或いは前回の値に対する差、または変化量或いは変化率である。図7は、上記変化傾向表示手段108において表示されるグラフ表示の一例を示す図であり、推定血圧値EBPの一拍前の値に対する変化率が矢印で示されている。図7のように、変化傾向が示されると、血圧測定起動手段86において血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかの判断が一層容易になる。すなわち、図5または図6に示されたグラフ表示のみでは、現在の推定血圧値EBP等の血圧関連情報の異常判断基準値ALおよび警戒判断基準値ATとの相対的位置関係が認識できるのみで、その血圧関連情報の現在の変化傾向を認識することが比較的困難なのである。
図8は、上記血圧監視装置8の電子制御装置28における制御作動の要部を説明するフローチャートである。図8において、ステップSA1(以下、ステップを省略する。)において図示しないフラグ、カウンタ、レジスタをクリアする初期処理が実行された後、脈波伝播速度情報算出手段74、心拍周期決定手段82および脈波面積算出手段84に対応するSA2では、カフ昇圧の直前において、心電波形のR波からプローブ38により逐次検出される光電脈波の立ち上がり点までの時間差すなわち伝播時間DTRPが決定され、心電誘導波形のR波間隔を計測することにより心拍周期RRが決定され、光電脈波検出プローブ38により得られた光電脈波から正規化脈波面積VRが算出される。
次いで、前記カフ圧制御手段72に対応するSA3およびSA4では、切換弁16が圧力供給状態に切り換えられ且つ空気ポンプ18が駆動されることにより、血圧測定のためにカフ10の急速昇圧が開始されるとともに、カフ圧PC が180mmHg程度に予め設定された目標圧迫圧PCM以上となったか否かが判断される。このSA4の判断が否定された場合は、上記SA3以下が繰り返し実行されることによりカフ圧PC の上昇が継続される。
しかし、カフ圧PC の上昇により上記SA4の判断が肯定されると、前記血圧測定手段70に対応するSA5において、血圧測定アルゴリズムが実行される。すなわち、空気ポンプ18を停止させ且つ切換弁16を徐速排圧状態に切り換えてカフ10内の圧力を予め定められた3mmHg/sec程度の緩やかな速度で下降させることにより、この徐速降圧過程で逐次得られる脈波信号SM1 が表す脈波の振幅の変化に基づいて、良く知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って最高血圧値BPSYS 、平均血圧値BPMEAN、および最低血圧値BPDIA が測定されるとともに、脈波間隔に基づいて脈拍数などが決定されるのである。そして、その測定された血圧値および脈拍数などが表示器32に表示されるとともに、切換弁16が急速排圧状態に切り換えられてカフ10内が急速に排圧される。
次に、前記対応関係決定手段76に対応するSA6では、SA2において求められた脈波伝播時間DTRPと、SA5において測定されたカフ10による血圧値BPSYS ,BPMEAN,またはBPDIA との間の対応関係が求められる。すなわち、SA5において血圧値BPSYS ,BPMEAN,およびBPDIA が測定されると、それら血圧値BPSYS ,BPMEAN,またはBPDIA のうちの1つと、脈波伝播時間DTRPとに基づいて、脈波伝播時間DTRPと推定血圧値EBPとの間の対応関係(数式(2))が決定される。
上記のようにして脈波伝播時間血圧対応関係が決定されると、SA7において、心電波形のR波および光電脈波が入力されたか否かが判断される。このSA7の判断が否定された場合はSA7が繰り返し実行されるが、肯定された場合は、前記脈波伝播速度情報算出手段74、心拍周期決定手段82、脈波面積算出手段84および推定血圧値決定手段78に対応するSA8において、新たに入力された心電波形のR波および光電脈波についての脈波伝播時間DTRP、心拍周期RRおよび脈波面積VRがSA2と同様にして算出され、さらに、その脈波伝播時間DTRPから、SA6において決定された対応関係を用いて推定血圧値EBPが算出される。
続くSA9では、上記SA8において決定された推定血圧値EBPを含む過去1分間の移動平均値EBPAVが算出され、且つ、上記SA8において決定された推定血圧値EBPの、一拍前の脈波に基づいて決定された推定血圧値EBPに対する変化率が算出される。
続くグラフ表示手段90に対応するSA10乃至SA11では、SA8において決定された推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRが表示器32に設けられたグラフに表示される。まず、SA10では、SA9において算出された推定血圧値EBPの移動平均EBPAVに基づいて、図5に示されているように、時間軸92と推定血圧値軸94との二次元座標に表示された推定血圧値EBPのトレンドグラフを更新する。
次いで、SA11では、図6に示されるように、推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRを示す3本の軸に、それらについて予め設定された異常判断基準値ALおよび警戒判断基準値ATが表示されたレーダーチャート104に、SA8において決定された推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRが三角形106として表示される。
続く変化傾向表示手段108に対応するSA12では、上記SA9において算出された推定血圧値EBPの変化率が、図7に示されるように矢印として、表示器32にグラフ表示される。
次いで、前記血圧測定起動手段86に対応するSA13では、たとえば図9に示す血圧測定起動判定ルーチンが実行されることにより、推定血圧値EBPの異常が判定され、且つ前記心拍周期RRおよび脈波面積VRの少なくとも一方の異常が判定されたことに基づいて前記血圧測定手段70による血圧測定を起動させる。
図9において、前記心拍周期異常判定手段88に対応するSB1では、図8のSA8において算出された心拍周期RRが異常判断基準値ALRRを越えた状態が、所定の拍数たとえば20拍以上連続して越えたか否かを判定することにより、心拍周期RRの異常が判定される。このSB1の判断が否定された場合はSB3以下が直接的に実行されるが、肯定された場合は、SB2において上記心拍周期RRの変動を示すためのRRフラグがオン状態とされる。
次いで、SB3において、末梢部で検出された光電脈波が正常であるか否かが判断される。このSB3は、光電脈波の形状が異常、たとえば基線の傾斜が所定以上であるもの、或いは校正が入ることによって脈波形状が途中でずれているものなどを除去するためのものである。上記SB3の判断が否定された場合はSB8以下が実行されるが、肯定された場合には、SB4以下が実行される。
前記脈波面積異常判定手段89に対応するSB4では、SA8において算出された正規化脈波面積VRが異常判断基準値ALVRを越えた状態が、所定の拍数たとえば20拍以上連続して越えたか否かを判定することにより、脈波面積VRの異常が判定される。このSB4の判断が否定された場合はSB6以下が直接的に実行されるが、肯定された場合は、SB5において上記脈波面積VRの異常を示すためのVRフラグがオン状態とされる。
次いで、前記推定血圧値異常判定手段87に対応するSB6では、SA8において決定された推定血圧値EBPが異常判断基準値ALEBP を越えた状態が、所定の拍数たとえば20拍以上連続して越えたか否かを判定することにより、推定血圧値EBPの異常が判定される。このSB6の判断が否定された場合はSB8以下が直接的に実行されるが、肯定された場合は、SB7において上記推定血圧値EBPの異常を示すためのEBPフラグがオン状態とされる。
そして、SB8では、EBPフラグがオン状態とされ且つRRフラグがオン状態とされているか否か、或いはEBPフラグがオン状態とされ且つVRフラグがオン状態とされているか否かが判断される。このSB8の判断が否定された場合はSA14が実行される。このSA14では、SA5においてカフ10による血圧測定が行われてからの経過時間が予め設定された15乃至20分程度の設定周期すなわちキャリブレーション周期を経過したか否かが判断される。このSA14の判断が否定された場合には、前記SA7以下の血圧監視ルーチンが繰り返し実行される。
しかし、上記SA14の判断が肯定された場合には、前記対応関係を再決定するために前記SA2以下のカフキャリブレーションルーチンが再び実行される。また、上記SB8の判断が肯定された場合はSA15において、推定血圧値EBP、心拍周期RRおよび脈波面積VRのうち異常が判定されたものについて、それらの変動を示す文字或いは表示が表示器32に表示される。SA15が実行されると、続いて、対応関係を再決定させるためにSA2以下が再び実行されることにより、カフ10による血圧測定が起動される。
上述のように、本実施例によれば、グラフ表示手段90(SA10)により、表示器32に、推定血圧値決定手段78(SA8)により逐次決定される推定血圧値EBPと、予め設定された異常判断基準値ALHEBP ,ALLEBP とが、時間軸92と推定血圧値軸94とから成る二次元座標に対比可能にグラフ表示されるので、その推定血圧値EBPと異常判断基準値ALEBP とのグラフ上の相対的位置関係から、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを認識できる。
また、本実施例によれば、グラフ表示手段90(SA11)により、表示器32に、推定血圧値決定手段78(SA8)により逐次決定され推定血圧値EBP、心拍周期決定手段82(SA8)により逐次決定される心拍周期RR、脈波面積算出手段84(SA8)により逐次算出される脈波面積VRと、それらについて予め設定された異常判断基準値ALEBP ,ALRR,ALVRとが対比可能にレーダーチャート104にグラフ表示されるので、その推定血圧値EBP、心拍周期RR、脈波面積VRと、それらの異常判断基準値ALEBP ,ALRR,ALVRとのレーダーチャート104上の相対的位置関係から、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを認識できる。
また、本実施例によれば、グラフ表示手段90(SA10)により、表示器32に、逐次決定される推定血圧値EBPが、異常判断基準値ALEBP 、およびその異常判断基準値ALEBP よりも早期に判断されるように予め設定された警戒判断基準値ATEBP と対比可能にグラフ表示されるので、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかが一層容易に認識できる。
また、本実施例によれば、グラフ表示手段90(SA11)により、表示器32に、逐次決定される推定血圧値EBP、心拍周期RR、および脈波面積VRが、異常判断基準値ALEBP ,ALRR,ALVR、およびそれらの異常判断基準値ALEBP ,ALRR,ALVRよりも早期に判断されるように予め設定された警戒判断基準値ALEBP ,ALRR,ALVRと対比可能にグラフ表示されるので、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかが一層容易に認識できる。
また、本実施例によれば、血圧監視装置8は、推定血圧値決定手段78(SA8)において逐次決定される推定血圧値EBPの一拍毎の変化率を、表示器32にグラフ表示する変化傾向表示手段108(SA12)を含むものであることから、推定血圧値EBPと異常判断基準値ALEBP との相対的位置関係に加えて、現在の推定血圧値EBPの一拍前の値に対する変化率が表示器32にグラフ表示されるので、血圧測定の起動が判断される状態に近いかどうかを一層正確に認識できる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例では、血圧測定起動手段86(SA13)では、推定血圧値EBPの異常が判定され、且つ心拍周期RRおよび脈波面積VRの少なくとも一方の異常が判定されたことに基づいて、血圧測定手段70による血圧測定の起動を判断していたが、推定血圧値EBPに代えて、推定血圧値EBPと1対1に対応する脈波伝播速度DTRPまたは脈波伝播速度VM の異常が判定されてもよい。また、それら推定血圧値EBP、心拍周期RR、脈波面積VRは、それぞれ、生体の血圧の変動を反映するものであるので、それら3つのうちいずれか2つ、または3つのうちの1つのみが用いられて、血圧測定手段70による血圧測定の起動を判断するものであってもよい。
また、前述の実施例において、グラフ表示手段90に対応するSA11では、レーダーチャート104に、逐次決定される推定血圧値EBP、心拍周期RR、および脈波面積VRが、それらについて予め設定された異常判断基準値および警戒判断基準値と対比可能に表示されていたが、たとえば、図10に示されるような棒グラフが血圧関連情報毎に設けられることによって、逐次決定される血圧関連情報と、その血圧関連情報について予め設定された異常判断基準値および警戒判断基準値とが、対比可能とされてもよい。なお、図10は、血圧関連情報の血圧測定時に対する変化率が表示された場合が示されている。すなわち、血圧測定起動手段86において、上記血圧関連情報の血圧測定時に対する変化率で以てそれらの血圧関連情報の異常を判定する場合である。
また、前述の実施例において、心拍周期RRが用いられていたが、心拍周期RR(sec )と心拍数HR(1/min )も1対1の対応関係(HR=60/RR)があるので、心拍周期決定手段82、心拍周期異常判定手段88、基準血圧測定起動情報表示手段90、血圧測定起動情報表示手段92において、心拍周期RRに代えて心拍数HRが用いられてもよい。
また、前述の実施例の変化傾向表示手段108(SA12)では、推定血圧値EBPの変化率は、図7の矢印として表示されていたが、図11に示されるように、棒グラフとして表示されるものでもよい。
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の一実施の形態である血圧監視装置の回路構成を説明するブロック線図である。 図1の血圧監視装置の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 図1の血圧監視装置の電子制御装置の制御作動により求められる時間差DTRPを例示する図である。 図1の血圧監視装置における、脈波面積VRの正規化の方法を説明する図である。 図1の血圧監視装置における、グラフ表示手段により表示器に表示される推定血圧値のトレンドグラフを説明する図である。 図1の血圧監視装置における、グラフ表示手段により表示器に表示されるレーダーチャートを説明する図である。 図1の血圧監視装置における、変化傾向表示手段により表示器に表示される推定血圧値の変化率を示す図である。 図1の血圧監視装置の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、血圧監視ルーチンを示す図である。 図8のSA13における血圧測定起動判定ルーチンの作動を詳しく説明する図である。 図1の血圧監視装置における、グラフ表示手段により表示器に表示される推定血圧値、心拍周期、脈波面積を示す図であって、図6とは別の例を示す図である。 図1の件津圧監視装置における、変化傾向表示手段により表示器に表示される推定血圧値の変化率を示す図であって、図7とは別の例を示す図である。
符号の説明
32 表示器、90 グラフ表示手段、108 変化傾向表示手段。

Claims (2)

  1. 生体の一部への圧迫圧力を変化させるカフを用いて該生体の血圧値を測定する血圧測定手段と、該生体の血圧値の変動に関連して変動する該生体の血圧関連情報を逐次決定する血圧関連情報決定手段と、該血圧関連情報が予め設定された異常判断基準値を越えたことに基づいて前記血圧測定手段による血圧測定を起動させる血圧測定起動手段とを備えて生体の血圧値を監視する血圧監視装置であって、
    前記血圧関連情報を表示するための表示器と、
    前記血圧関連情報決定手段において逐次決定される前記血圧関連情報の一拍毎の変化傾向を、前記表示器に表示する変化傾向表示手段と
    を、含むことを特徴とする血圧監視装置。
  2. 前記血圧関連情報決定手段により逐次決定される前記血圧関連情報と前記異常判断基準値とを対比可能にグラフ表示させるグラフ表示手段を、前記変化傾向表示手段に加えて前記表示器に表示することを特徴とする請求項1記載の血圧監視装置。
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