JP3951715B2 - リチウムイオン二次電池の正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムとコバルトを主体とした複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池に関し、特にその正極活物質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が急激に進んでいる。これにつれて、これら電子機器の駆動用電源を担う小型、軽量で高エネルギー密度を有する電池への要望が高まっている。このような観点から非水系二次電池、とりわけリチウムイオン二次電池は高電圧、高エネルギー密度を有する電池として、ノートパソコン、携帯電話、AV機器などに主に使用されている。このリチウムイオン二次電池の負極にはリチウムを吸蔵・放出可能な炭素材料が、正極には層状の結晶構造を有するリチウムと遷移金属であるコバルトとの複合酸化物であるLiCoO2が代表的に使用されている。昨今では電子機器の高性能化により消費電力が増大し、電源としてのリチウムイオン二次電池にはさらなる高エネルギー密度化が求められている。その手段のひとつとしてLiCoO2よりも可逆容量が大きいLiNiO2やLiNiO2のNiの一部に他の金属元素を置換させた正極活物質材料を使用することが検討されている。しかしながら、これらの材料は高温環境下での熱安定性やサイクル寿命特性、低温放電特性に課題があり、電池での実用化は一部の限定用途にとどまっている。
【0003】
一方、LiCoO2においてもエネルギー密度を高める検討が行なわれている。例えば、特開平11−273678号公報に開示されているように粒子の粒径や形状を制御して粉体の流動性や充填性を向上させることで、極板中の正極活物質をより高密度に充填することが可能となり、この極板を用いて電池の容量を高くすることが提案されている。
【0004】
上記公報の方法で合成される正極活物質の粉体は流動性が高いため極板とした時の活物質の充填が均一にできる。しかしながら、この粉体でも導電材や結着剤と混合して実際の電極とすると、その充填密度は充分に高くはない。なぜなら活物質粒子と活物質粒子の隙間の空間が大きく、この空間には極板を構成するための導電材や結着剤が占めているからである。また、この空間を活物質で埋めるために導電材や結着剤の量を減らして、極板をより大きな力で加圧プレスして活物質を変形あるいは粉砕させて高密度に充填する場合には、活物質相互間の電子伝導性低下による電池特性の低下や、活物質の粉砕により電解液との反応性が高くなるために、高温でのガス発生増大や、安全性が低下するなどの課題があった。また近年リチウムイオン二次電池に対しては更なる安全性の向上が求められており、LiCoO2の安全性を高めるために、LiCoO2のCoをMgなど様々な元素で置換することが検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
LiCoO2のCoをMgで置換したLiMgxCo(1-x)O2は(以下、Mg置換LiCoO2と称する)、Co3O4とLi2CO3とMgCO3の粉末を混合して焼成することで得られる。しかしながら、この方法では原料粉末の混合には粉末の大きさによる制限があり、CoとMgを均一に置換反応することが難しく、CoとMgの組成のズレやMgO等の不純物が残存するという問題がある。
【0006】
一方、原子レベルで均一に置換する方法としては共沈法が優れていることが知られている。共沈法で合成したMgxCo(1-x)OH2共晶を加熱処理して得られるMg3xCo(3-3x)O4を原料として、リチウム塩と混合し、焼成することでCoとMgが均一に置換したMg置換LiCoO2を得ることが出来る。しかしながらこの方法では、MgxCo(1-x)OH2共晶の見かけかさ比重が低いために、得られるMg置換LiCoO2の見かけかさ比重も低く、この材料を用いて電極を作製した場合には、極板中の活物質の充填密度が低いためにエネルギー密度の高い極板が得られなかった。さらには、このような見かけかさ比重が低い材料で電極を構成した場合には、粒子相互の接触面積が少なくなるために、粒子相互間の電子伝導性が低下して、電池の放電特性やサイクル寿命特性が低下するという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、LiCoO2及びMg置換LiCoO2の粒子形状を改良し、極板中の活物質充填密度が高くて高容量の正極、かつ電子伝導性に関しても良好な正極とし、この正極を用いて、高エネルギー密度で電気特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の主題はリチウムイオン二次電池の正極活物質として、一般式 LiMgxCo(1-x)O2(但し0≦x<0.1)で表されるリチウムとコバルトを主体とした複合酸化物で、SEM観察による粒径が1μm以下である小結晶の一次粒子が多数集合して形成される粒径2以上3μm以下の二次粒子が、主体をなす粒径8以上10μm以下の二次粒子の表面に存在し、これらの二次粒子が一次粒子の一部を共有することで互いに結合したものを用いたことである。
【0009】
この正極活物質は二次粒子相互間で一次粒子の一部を共有しており、この共有部分が粒子相互間での電子の導電経路となることで集電性が向上するために、その結果、極板中での活物質の利用率を高めることができる。また粒径が大きい二次粒子相互間の空間をその周りに部分的に結合している、粒径が小さい二次粒子が占めることができるため、極板中での活物質の充填密度を高めることができる。
【0010】
また本発明の正極活物質製造方法では、一次焼成で得られた平均粒径が2以上3μm以下の小粒径の生成物Aと、それよりも大粒径の平均粒径が8以上10μm以下の生成物Bとの2種類の粉体を混合してから二次焼成を行い、小粒径の生成物Aと大粒径の生成物Bとの粒子間の一部分を焼結させて結合させている。上記のような粒子形状とすることで、導電材と結着剤を混合して極板を構成した場合、粉体の分散状態が均一であるいう利点がある。すなわち、互いに結合していない小粒径と大粒径だけを混合した場合には均一に混合させることが出来るが、そこに導電材や結着剤および分散溶媒を添加して極板を製造する場合には、小粒径と大粒径では、結着剤や分散溶媒との親和力に差があるために、分散状態は不均一になってしまうが、小粒径と大粒径の一部分を結合させた形状とすることで分散状態を均一にすることが出来る。
【0011】
またこの製造方法とすることで、粒径が8以上10μmの二次粒子の表面に、粒径2以上3μm以下の二次粒子がそれらの一次粒子の一部を共有状態で結合した正極活物質が主体として出来ており、粒径が2以上3μm以下の二次粒子が単独で存在している割合は少ないことがSEM観察から観察される。このような粒子形状となる理由は以下のことが考えられる。小粒径の二次粒子と大粒径の二次粒子で焼結性が異なることと、さらには、小粒径の二次粒子と大粒径の二次粒子の混合比率を最適化したことが挙げられる。さらに詳細に述べると、小粒径の二次粒子を単独で用いて900℃で焼成を行なった場合には、焼結による粒子間の凝集が起こり、得られた活物質の粒径は不揃いでその粒径は大きくなる。一方、大粒径の二次粒子の場合には粒子間の凝集は起こらずその粒径はほとんど変化しない。このように小粒径と大粒径で焼結に差異があるのはそれぞれの比表面積の差によるものと考えられる。すなわち、小粒径の二次粒子は比表面積が大きいために、粒子間の接触面積が大きくなるために焼結により凝集すると考えられる。従って、大粒径の二次粒子間がつくる隙間に小粒径の二次粒子が入るような粒径の比率とし、さらにその混合比率を最適化することで、大粒径の二次粒子と小粒径の二次粒子が焼結により一部結合した粒子形状とすることができると考えられる。また、小粒径の二次粒子を介在して大粒径どうしが焼結する場合があるが、容易に粉砕することが可能である。また、本発明ではコバルト源とリチウム源を混合して600℃で反応させる工程を小粒径と大粒径で分けているが、これはリチウム源を均一に反応させる点でも重要である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態は、上記の一般式 LiMgxCo(1-x)O2(但し0≦x<0.1)で表されるコバルト酸リチウムからなる正極活物質において、SEM観察による粒径が1μm以下である小結晶の一次粒子が多数集合して形成した粒径2以上3μm以下の二次粒子を、粒径8以上10μm以下の二次粒子の表面に一次粒子の一部を共有することで結合していることを特徴とする。
【0013】
この正極活物質の製造方法の詳細を以下に述べる。
【0014】
コバルト源として平均粒径D50が2以上3μm以下のMg3xCo(3-3x)O4(0≦x<0.1)を、リチウム源としてLi2CO3またはLiOHのいずれかを用い、Coに対するLiの混合比率がモル比で0.98以上1.02以下の範囲内の混合物を600℃から650℃の温度で5時間以上焼成して得られた平均粒径D50が2以上3μm以下の生成物Aと、前記同様にコバルト源として平均粒径D50が8以上10μm以下のMg3xCo(3-3x)O4(0≦x<0.1)を、リチウム源としてLi2CO3もしくはLiOHのいずれかを用い、Coに対するLiの混合比率がモル比で0.98以上1.02以下の範囲内の混合物を600℃から650℃の温度で5時間以上焼成して得られた平均粒径D50が8以上10μm以下の生成物Bとを、生成物Aと生成物Bの重量比が1:9から4:6の範囲から選ばれる重量比で混合した後に、900℃から950℃の温度範囲で10時間から15時間焼成することで本発明の正極活物質を得ることができる。
【0015】
本発明の正極活物質に、導電材として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラックおよびアセチレンブラックなどの炭素材料と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどを加えて、N−2メチルピロリドンなどの分散媒を用いてペースト化した後に、アルミニウム等の金属箔上に塗布することで正極板を構成することができる。本発明の正極活物質を使用して作製した正極板の模式図を図1に示す。芯材1の両面に、正極活物質2、3と結着剤および導電材から構成された合剤層が形成されており、活物質は図1に示されるように充填されている(図中で結着剤及び導電材は図示していない)。
【0016】
図1から明らかなように、本発明による正極活物質を用いると、粒径が大きい粒子相互の隙間に粒径が小さい粒子が均一に入り込んで充填されるために、極板中の活物質の充填密度が高まり、さらには、粒子間の接触点も多いことが分かる。
【0017】
負極としては、リチウムを挿入・脱離できる炭素材料や人造黒鉛、天然黒鉛等を用いることができる。また電解液としては六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を電解質塩とし、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状エステルとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状エステルとの混合溶媒に溶解したものを用いることができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(例1)LiMgxCo(1-x)O2の合成
Coと置換するMgの置換量とCoに対するLiの混合比率を変えてLiMgxCo(1-x)O2の合成を行った。原料として一般式Mg3xCo(3-3x)O4(式中0≦x<0.1)で表されるMg含有コバルト酸化物と、Li2CO3で表される炭酸リチウムを用いた。Mg3xCo(3-3x)O4はCoSO4とMgSO4溶液を用いて共沈法により、MgxCo1-x(OH)2を作製した後に400℃で加熱処理することで得たものを用いた。Mg含有コバルト酸化物の粒径は平均粒径D50で8μmとし、Mgの置換量はxの値で0、0.05、0.10、0.15の4種類のもの用いた。これら4種類のMg含有コバルト酸化物に対して炭酸リチウムを混合し、その混合比はCoとMgの合計モル数に対してLiのモル数の比率Li/(Co+Mg)比がそれぞれ0.95、0.98、1.02、1.05となるようにした。これらの混合物を空気雰囲気中650℃で10時間焼成した後に、再度、粉砕と混合を行ない、その後、空気雰囲気中900℃で10時間焼成した。この焼成後の生成物16種類をそれぞれ本発明の正極活物質A1,A2,A3,・・・,A16とする。
【0020】
次に本実施例で得られた正極活物質を用いて正極板を作製した。合成した正極活物質と導電材としてアセチレンブラック、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを重量比で100:3:4の割合で混合しN−2メチルピロリドンを加えてペースト状にして厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して幅40mm、長さ400mm、厚み125μmの正極板を得た。正極板にはリード取り付け部分などの合剤無塗工部分が設けてあり、合剤塗工部分の長さは片面塗工に換算して630mmとした。塗工後極板の圧延はロールプレス機を用いて線圧1t/cmの条件で活物質密度が3.5g/ccになるように3から5回プレスした。活物質密度とは(合剤中に含まれる活物質重量)/(極板合剤部分の幾何体積)の値である。
【0021】
次いで、得られた正極板の極板強度の評価を行なった。極板の圧延方向に対して垂直な線(ただし極板の面内)で180°に折り曲げて、この時の合剤層の剥がれや極板の破断が起こらないか否かを確認した。充填性が低い活物質で極板を構成した場合には、合剤層の柔軟性がなくなり、また圧延時の極板の延びも大きくなる。その結果、極板の折り曲げ時に合剤の剥がれや極板の破断といった問題がおこる。
【0022】
極板の強度試験で破断が生じなかった正極に関して電池特性の評価を行った。電池の作製法について以下に詳細に述べる。正極板と対をなす負極板には、人造黒鉛粉末98重量%に対し結着剤としてスチレンブタジエンゴム2重量%を混合し、これらをカルボキシメチルセルロース水溶液に懸濁させてペースト状にし、このペーストを厚さ10μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して幅42.5mm、長さ370mm、厚み146μmとしたものを用いた。負極板にはリード取り付け部分などの合剤無塗工部分が設けてあり、合剤塗工部分の長さは片面塗工に換算して650mmとした。
【0023】
正極板と負極板をポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して平板状の巻芯で巻回し、角型のアルミニウム製の電池ケース(厚さ5.3mm、幅30.0mm、高さ48.0mm)に収納した。電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの体積比1:2の混合溶媒に、LiPF6を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解したものを使用した。電解液を極板群に注入し、0.1Aで1時間の充電処理をした後に、密閉封口して試験電池を作製した。
【0024】
電池の初期容量は20℃の環境下で測定した。充電条件は4.2Vの定電圧充電で、電流上限値を0.70A、電流値が0.05Aに達した時を充電終止とした。放電条件は定電流放電で、電流値を0.14A、電圧が3.0Vに達した時を放電終止とした。この条件で充放電したときの3サイクル目の放電容量を電池の初期容量とした。
【0025】
(例1)で合成した正極活物質を用いた極板の強度評価および電池の初期容量を(表1)に示す。(表1)の極板強度試験結果で×は極板が破断したもの、△は合剤層の表面の一部にひびが認められたものを意味する。
【0026】
極板強度をみると、Mgの置換量xが0.15となると極板の強度が著しく低下した。これは、Mgを置換することで見かけかさ比重が小さくなり、充填性が低下したからである。また、Li/(Co+Mg)の比率が0.95の場合と1.05の場合で極板強度が著しく低下した。Liの比率が大きくなる方向で結晶粒子の成長が促進されて二次粒子の表面が平滑になる。Li/(Co+Mg)比率が0.95の場合には表面の平滑性も悪いが、さらに結晶成長が十分でないので、粒子内部の空隙が増えて見かけかさ比重が低下するため充填性が悪くなると考えられる。またLi/(Co+Mg)比率が1.05の場合については、結晶粒子の成長が著しく二次粒子の焼結により凝集して充填性が低下したものと考えられる。
【0027】
これらの結果から、Mgの置換量xは0.10以下が良く、またLi/(Co+Mg)の比率は0.98以上1.02以下が良いことが分かる。
【0028】
また、電池の初期容量は、Mgの置換量xが増えると低下する方向であることが分かる。これは、Mgで置換すると可逆容量が低下するからである。Mgの置換量に関しては、電池の熱的な安定性に問題がなければ少ない方が電池容量の点から好ましい。
【0029】
【表1】
【0030】
(例2)LiMg0.05Co0.95O2の合成
本発明による正極活物質は以下に述べる方法で合成した。(例1)と同様の方法でMg0.15Co2.85O4を作製し、その平均粒径D50が1、2、3、4、6、8、10、12μmの8種類のMg0.15Co2.85O4を用意した。これら8種類のMg含有コバルト酸化物のそれぞれに対して炭酸リチウムを混合し、その混合比はCoとMgの合計モル数に対してLiのモル数の比率Li/(Co+Mg)比が1.00となるようにした。これらの混合物を空気雰囲気中650℃で10時間焼成(一次焼成工程)して、平均粒径D50が1、2、3、4、6、8、10、12μmの8種類の生成物を用意した。これら8種類の生成物で、平均粒径が1から4μmのものを小粒径生成物、6から12μmのものを大粒径生成物とした。小粒径生成物と大粒径生成物の粒径の組み合わせで16種類の混合物を作製し、その混合比は(小粒径の生成物の重量):(大粒径の生成物の重量)=2:8とした。これら16種類の混合物を空気雰囲気中900℃で10時間焼成(二次焼成工程)して、本発明の正極活物質B1,B2,・・・,B16を得た。また、比較のために粒径が3μmの小粒径生成物と8μm大粒径生成物をそれぞれ別々に二次焼成した後に混合した混合物B17を得た。
【0031】
極板強度及び電池の作製と容量の評価は(例1)と同様の方法で行なった。次いで、(例2)で作製した電池については、高率放電試験と保存試験を行った。以下その方法を述べる。
【0032】
高率放電試験は満充電の電池を用いて20℃の環境下で行なった。放電条件は定電流放電で、電流値を1.40Aとし電圧が3.0Vに達した時を放電終止として、このときの放電容量と初期容量との比を百分率で表して放電容量維持率とした。
【0033】
保存試験は、放電特性評価後の電池を4.2Vの定電圧充電で、電流上限値を0.70A、電流値が0.05Aに達したときを充電終止とした時の充電後の電池厚みと、その後電池を60℃の環境下で20日間保存し60℃の状態で電池厚みを測定し、保存前後での電池厚みの差を電池膨れ量として評価した。
【0034】
(例2)で合成した正極活物質での極板強度および電池特性の評価結果を(表2)に示す。(表2)の、極板強度試験結果で×は極板が破断したもの、△は合剤層の表面の一部にひびが認められたものを意味し、保存試験および放電容量維持率で、本発明を用いない場合と比較して向上したものを○、同等もしくは低下したものを×とした。
【0035】
【表2】
【0036】
極板強度をみると、粒径が2,3,4μmの小粒径生成物と粒径が8μm以上の大粒径生成物から得た正極活物質で極板強度が良好なことが分かる。これは、粒径の比率に関係していると考えられる。すなわち、粒子を球形と仮定した場合の最密充填を考えると、(小粒径の平均粒径)/(大粒径の平均粒径)の比率で0.414以下が良いと考えられ、実際にこの比が0.5以下のものでは活物質の充填性が良好で、極板の破断や合剤層の割れが発生しない。小粒径生成物の粒径が1μmの場合には極板強度が低下しているが、これは、大粒径生成物との粒径が違いすぎるために最密充填が起こりにくく充填性が低下しているからと考えられる。
【0037】
保存試験の結果を見ると、小粒径生成物の粒径が小さい場合には保存試験で電池の膨れ量が大きくなるという問題がある。これは、小粒径生成物の比表面積が大きく活性であるために電解液を酸化分解してCO2ガスの発生が多くなるからである。
【0038】
高率放電特性の結果を見ると、小粒径生成物の粒径が4μm以上の場合には、活物質の充填性が高く極板強度は良好であるが、粒径が大きいため放電特性が低下している。
【0039】
また、比較の混合物B17と比べると、本発明の正極活物質では初期容量が大きく高率放電特性も優れていることが分かる。その理由としては、本発明の正極活物質は、二次粒子相互間で一次粒子の一部を共有しており、この共有部分が粒子相互間での電子の導電経路となることで集電性が向上しているからである。また、極板中での活物質の分散が均一であることも集電性の向上に寄与している。
【0040】
以上の結果をあわせてみると、一般式 LiMgxCo(1-x)O2(但し0≦x<0.1)で表されるリチウムとコバルトを主体とした複合酸化物であって、SEM観察による粒径が1μm以下である小結晶の一次粒子が多数集合して形成される粒径が2以上3μm以下の二次粒子が、主体をなす粒径8以上10μm以下の二次粒子の表面に存在しており、それらの二次粒子は一次粒子の一部を共有することにより互いに結合している正極活物質とすることで、活物質を高密度に充填た極板においても極板強度が強く、かつ、電池の放電特性も良好なリチウムイオン二次電池が提供できることが分かる。
【0041】
なお本実施例ではLiMg0.05Co1.95O2を用いた場合について示したがMgを含まないLiCoO2を用いた場合についても全く同様の結果が得られた。
【0042】
また平均粒径D50が2以上3μm以下の生成物Aと平均粒径D50が8以上10μm以下の生成物Bの混合比については、活物質の充填性を考えると生成物A:生成物Bの重量比で1:9から4:6の範囲で同様の効果が得られる。より好ましくは2:8から3:7の範囲である。
【0043】
【発明の効果】
本発明による正極活物質を用いることで、正極板中での活物質の高充填化と集電性の向上がはかれ、その結果として高容量で放電特性の優れた非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるリチウムイオン二次電池正極の構造模式図
【符号の説明】
1 芯材
2 粉末A
3 粉末B
Claims (3)
- 一般式 LiMgxCo(1-x)O2(但し0≦x<0.1)で表されるリチウムとコバルトを主体とした複合酸化物であって、SEM観察による粒径が1μm以下である小結晶の一次粒子が多数集合して形成される粒径が2以上3μm以下の二次粒子が、主体をなす粒径8以上10μm以下の二次粒子の表面に存在しており、それらの二次粒子は一次粒子の一部を共有することにより互いに結合しているリチウムイオン二次電池の正極活物質。
- コバルト源として平均粒径D50が2以上3μm以下のMg3xCo(3-3x)O4(0≦x<0.1)を、リチウム源としてLi2CO3またはLiOHのいずれかを用い、Coに対するLiの混合比率がモル比で0.98以上1.02以下の範囲内の混合物を600℃から650℃の温度で5時間以上焼成して得られた平均粒径D50が2以上3μm以下の生成物Aと、前記同様にコバルト源として平均粒径D50が8以上10μm以下のMg3xCo(3-3x)O4(0≦x<0.1)を、リチウム源としてLi2CO3もしくはLiOHのいずれかを用い、Coに対するLiの混合比率がモル比で0.98以上1.02以下の範囲内の混合物を600℃から650℃の温度で5時間以上焼成して得られた平均粒径D50が8以上10μm以下の生成物Bとを、生成物Aと生成物Bの重量比が1:9から4:6の範囲から選ばれる重量比で混合した後に、900℃から950℃の温度範囲で10時間から15時間焼成することを特徴とするリチウムイオン二次電池の正極活物質の製造方法。
- リチウムイオンを可逆的に挿入・脱離出来る負極、リチウム塩を溶解した非水電解液を備え、正極には請求項1に記載の活物質を用いたリチウムイオン二次電池。
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