JP3950612B2 - X線ct装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線照射条件調節方法および装置並びにX線CT(computed tomography)装置に関し、とくに、対象に応じてX線照射条件を調節する方法および装置、並びに、そのようなX線照射条件調節装置を備えたX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線CT装置では、X線照射・検出装置により撮影の対象について透過X線信号を獲得し、透過X線信号に基づいて対象の断層像を生成(再構成)する。
【0003】
X線照射装置は、撮影断面を包含する広がり(幅)を持ちそれに垂直な方向に厚みを持つX線ビーム(beam)を照射し、X線検出装置は、複数のX線検出素子をアレイ(array)状に配置した多チャンネル(channel)のX線検出器でX線ビームを検出する。
【0004】
このようなX線照射・検出装置を対象の周りで回転(スキャン:scan)させて、対象の周囲の複数のビュー(view)方向でそれぞれX線による投影を求め、それら投影に基づいてコンピュータ(computer)により断層像を再構成する。
【0005】
SNR(signal−to−noise ratio)の良い断層像を得るために、対象に応じてX線照射条件を調節し、X線吸収量の大きいものほどX線の線量を上げて撮影する。X線の線量は管電流と通電時間の積、すなわち、いわゆるミリアンペア・セカンド(mAs)によって決めるので、線量を同一とした場合、管電流と通電時間は反比例の関係にある。したがって、スキャン時間を短くすなわちスキャンを高速化するほど管電流が増加する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
管電流に対してはX線管が許容し得る限度が設けられ、それを超える電流はリミッタ(limitter)でクリップ(clip)されるので、X線吸収量の大きな対象をスキャンする場合や高速のスキャンを行う場合は、線量が必要量を下回りSNRの良い画像が得られないことが多い。また、クリップされたとはいえ管電流が大きいので、X線管のクーリング(cooling)のためにスキャンが頻繁に停止し、撮影の能率が低下する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、対象に適応した線量のX線を照射するためのX線照射条件調節方法および装置、並びに、そのようなX線照射条件調節装置を備えたX線CT装置を実現することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記の課題を解決するための1つの観点での発明は、X線管から対象にX線を照射して透過X線信号を獲得し、前記透過X線信号に基づいて前記対象のプロジェクションを形成し、前記プロジェクションの大きさに応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とするX線照射条件調節方法である。
【0009】
この観点での発明では、プロジェクションの大きさに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0010】
(2)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は前記プロジェクションの面積に応じて行うことを特徴とする(1)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0011】
この観点での発明では、対象のプロジェクションの面積に応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0012】
(3)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は予め定めた閾値に対する前記面積の大小に応じて電圧を切り換えることにより行うことを特徴とする(2)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0013】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0014】
(4)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は前記プロジェクションの長さに応じて行うことを特徴とする(1)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0015】
この観点での発明では、対象のプロジェクションの長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0016】
(5)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより行うことを特徴とする(4)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0017】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0018】
(6)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は前記プロジェクションの面積および長さに応じて行うことを特徴とする(1)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0019】
この観点での発明では、対象のプロジェクションの面積および長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0020】
(7)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節は予め定めた閾値に対する前記面積の大小および予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより行うことを特徴とする(6)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0021】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小および閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0022】
(8)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記長さとしてプロジェクションの長さの最大値を用いることを特徴とする(4)ないし(7)のうちのいずれか1つに記載のX線照射条件調節方法である。
【0023】
この観点での発明では、プロジェクションの長さの最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0024】
(9)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記最大値として互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じての最大値を用いるとを特徴とする(8)に記載のX線照射条件調節方法である。
【0025】
この観点での発明では、互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じてのプロジェクション長の最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0026】
(10)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節を行った後に前記X線管の管電流を調節することを特徴とする(1)ないし(9)のうちのいずれか1つに記載のX線照射条件調節方法である。
【0027】
この観点での発明では、管電圧調節を行った後に管電流を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0028】
(11)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、X線管の管電流についてX線管の管電圧および対象に応じた最適値を求め、前記最適値が予め定めた範囲に入るように前記X線管の管電圧を調節することを特徴とするX線照射条件調節方法である。
【0029】
この観点での発明では、管電流の最適値が予め定めた範囲に入るように管電圧を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0030】
(12)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、X線管から対象にX線を照射して透過X線信号を獲得する信号獲得手段と、前記透過X線信号に基づいて前記対象のプロジェクションを形成するプロジェクション形成手段と、前記プロジェクションの大きさに応じて前記X線管の管電圧を調節する管電圧調節手段とを具備することを特徴とするX線照射条件調節装置である。
【0031】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、プロジェクションの大きさに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0032】
(13)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの面積に応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(12)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0033】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、対象のプロジェクションの面積に応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0034】
(14)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記面積の大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(13)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0035】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0036】
(15)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの長さに応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(12)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0037】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、対象のプロジェクションの長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0038】
(16)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(15)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0039】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0040】
(17)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの面積および長さに応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(12)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0041】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、対象のプロジェクションの面積および長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0042】
(18)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記面積の大小および予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(17)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0043】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小および閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0044】
(19)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記長さとしてプロジェクションの長さの最大値を用いることを特徴とする(15)ないし(18)のうちのいずれか1つに記載のX線照射条件調節装置である。
【0045】
この観点での発明では、プロジェクションの長さの最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0046】
(20)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記最大値として互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じての最大値を用いることを特徴とする(19)に記載のX線照射条件調節装置である。
【0047】
この観点での発明では、互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じてのプロジェクション長の最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0048】
(21)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節を行った後にX線管の管電流を調節する管電流調節手段を具備することを特徴とする(12)ないし(20)のうちのいずれか1つに記載のX線照射条件調節装置である。
【0049】
この観点での発明では、管電圧調節を行った後に、管電流調節手段により管電流を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0050】
(22)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、X線管の管電流についてX線管の管電圧および対象に応じた最適値を求める管電流算出手段と、前記最適値が予め定めた範囲に入るように前記X線管の管電圧を調節する管電圧調節手段とを具備することを特徴とするX線照射条件調節装置である。
【0051】
この観点での発明では、管電流の最適値が予め定めた範囲に入るように、管電圧調節手段により管電圧を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。
【0052】
(23)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、X線管から対象にX線を照射して透過X線信号を獲得する信号獲得手段と、前記透過X線信号に基づいて前記対象のプロジェクションを形成するプロジェクション形成手段と、前記プロジェクションの大きさに応じて前記X線管の管電圧を調節する管電圧調節手段と、前記調節を行った後に獲得した透過X線信号に基づいて前記対象の断層像を生成する画像生成手段とを具備することを特徴とするX線CT装置である。
【0053】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、プロジェクションの大きさに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0054】
(24)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの面積に応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(23)に記載のX線CT装置である。
【0055】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、対象のプロジェクションの面積に応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0056】
(25)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記面積の大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(24)に記載のX線CT装置である。
【0057】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0058】
(26)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの長さに応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(23)に記載のX線CT装置である。
【0059】
この観点での発明では、管電圧調節手段により、対象のプロジェクションの長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0060】
(27)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(26に記載のX線CT装置である。
【0061】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0062】
(28)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は前記プロジェクションの面積および長さに応じて前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(23)に記載のX線CT装置である。
【0063】
この観点での発明では、管電圧調節手段対象により、のプロジェクションの面積および長さに応じてX線管の管電圧を調節するので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0064】
(29)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記管電圧調節手段は予め定めた閾値に対する前記面積の大小および予め定めた閾値に対する前記長さの大小に応じて電圧を切り換えることにより前記X線管の管電圧を調節することを特徴とする(28)に記載のX線CT装置である。
【0065】
この観点での発明では、閾値に対するプロジェクション面積の大小および閾値に対するプロジェクション長さの大小に応じた電圧切換により管電圧を調節するので、管電圧の調節を簡便に行うことができる。
【0066】
(30)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記長さとしてプロジェクションの長さの最大値を用いることを特徴とする(26)ないし(29)のうちのいずれか1つに記載のX線CT装置である。
【0067】
この観点での発明では、プロジェクションの長さの最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0068】
(31)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記最大値として互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じての最大値を用いることを特徴とする(30)に記載のX線CT装置である。
【0069】
この観点での発明では、互いに垂直な2つの方向における2つのプロジェクションを通じてのプロジェクション長の最大値を用いるので、対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0070】
(32)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、前記調節を行った後にX線管の管電流を調節する管電流調節手段を具備することを特徴とする(23ないし(31)のうちのいずれか1つに記載のX線CT装置である。
【0071】
この観点での発明では、管電圧調節を行った後に管電流を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0072】
(33)上記の課題を解決するための他の観点での発明は、X線管から対象にX線を照射して透過X線信号を獲得する信号獲得手段と、前記X線管の管電流について前記X線管の管電圧および前記対象に応じた最適値を求める管電流算出手段と、前記最適値が予め定めた範囲に入るように前記X線管の管電圧を調節する管電圧調節手段と、前記調節を行った後に獲得した透過X線信号に基づいて前記対象の断層像を生成する画像生成手段とを具備することを特徴とするX線CT装置である。
【0073】
この観点での発明では、管電流の最適値が予め定めた範囲に入るように管電圧を調節するので、管電流を過大にすることなく対象に適応した線量のX線照射を行うことができる。それによって、画像生成手段により、SNRの良い断層像を得ることができる。
【0074】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。図1にX線CT装置のブロック(block)図を示す。本装置は本発明の実施の形態の一例である。本装置の構成によって、本発明の装置に関する実施の形態の一例が示される。本装置の動作によって、本発明の方法に関する実施の形態の一例が示される。
【0075】
図1に示すように、本装置は、信号獲得部2、撮影テーブル(table)4および信号処理部6を備えている。信号獲得部2はX線CT装置のいわゆるガントリ(gantry)に相当し、信号処理部6はいわゆるオペレータコンソール(operator console)に相当する。
【0076】
信号獲得部2はX線管20を有する。X線管20から放射された図示しないX線は、コリメータ(collimator)22により例えば扇状のX線ビームすなわちファンビーム(fan beam)となるように成形され、検出器アレイ24に照射される。検出器アレイ24は、扇状のX線ビームの幅および厚みの方向にアレイ状に配列された複数のX線検出素子を有する。検出器アレイ24の構成については後にあらためて説明する。
【0077】
X線管20、コリメータ22および検出器アレイ24は、X線照射・検出装置を構成する。X線照射・検出装置については、後にあらためて説明する。検出器アレイ24にはデータ(data)収集部26が接続されている。データ収集部26は、検出器アレイ24の個々のX線検出素子が検出した透過X線信号を表す検出データを収集する。X線管20、コリメータ22、検出器アレイ24およびデータ収集部26は、本発明における信号獲得手段の実施の形態の一例である。
【0078】
X線管20からのX線の照射は、X線コントローラ(controller)28によって制御される。なお、X線管20とX線コントローラ28との接続関係については図示を省略する。コリメータ22は、コリメータコントローラ30によって制御される。なお、コリメータ22とコリメータコントローラ30との接続関係については図示を省略する。
【0079】
以上のX線管20からコリメータコントローラ30までのものが、信号獲得部2の回転部34に搭載されている。回転部34の回転は、回転コントローラ36によって制御される。なお、回転部34と回転コントローラ36との接続関係については図示を省略する。
【0080】
撮影テーブル4は、図示しない対象を信号獲得部2のX線照射空間に搬入および搬出するようになっている。対象とX線照射空間との関係については後にあらためて説明する。
【0081】
信号処理部6はデータ処理装置60を有する。データ処理装置60は、例えばコンピュータ等によって構成される。データ処理装置60には、制御インタフェース(interface)62が接続されている。制御インタフェース62には、信号獲得部2および撮影テーブル4が接続されている。データ処理装置60は制御インタフェース62を通じて信号獲得部2および撮影テーブル4を制御する。
【0082】
信号獲得部2内のデータ収集部26、X線コントローラ28、コリメータコントローラ30および回転コントローラ36が制御インタフェース62を通じて制御される。なお、それら各部と制御インタフェース62との個別の接続については図示を省略する。後述するX線管の管電圧調整および管電流調整は、この制御系統を通じてデータ処理装置60により行われる。
【0083】
データ処理装置60には、また、データ収集バッファ64が接続されている。データ収集バッファ64には、信号獲得部2のデータ収集部26が接続されている。データ収集部26で収集された検出データがデータ収集バッファ64を通じてデータ処理装置60に入力される。
【0084】
データ処理装置60は、データ収集バッファ64を通じて収集した複数ビューの検出データを用いて画像再構成を行う。画像再構成には、例えばフィルタード・バックプロジェクション(filtered back projection)法等が用いられる。データ処理装置60は、本発明における画像生成手段の実施の形態の一例である。
【0085】
データ処理装置60には、また、記憶装置66が接続されている。記憶装置66は、各種のデータや再構成画像および本装置の機能を実現するプログラム等を記憶する。データ処理装置60には、また、表示装置68および操作装置70がそれぞれ接続され、それらを通じての操作者によるインタラクティブ(interactive)な操作を可能にしている。
【0086】
表示装置68は、データ処理装置60から出力される再構成画像やその他の情報を表示する。表示装置68は例えばグラフィックディスプレー(graphic display)等により実現される。操作装置70は、キーボード(keyboard)やポインティングデバイス(pointing device)等を備えた操作卓により実現される。
【0087】
図2に、検出器アレイ24の模式的構成を示す。同図に示すように、検出器アレイ24は、多数のX線検出素子24(i)をアレイ状に配列した多チャンネルのX線検出器となっている。iはチャンネル番号であり例えばi=1〜1000である。X線検出素子24(i)は、全体として、円筒凹面状に湾曲したX線入射面を形成する。
【0088】
X線検出素子24(i)は、例えばシンチレータ(scintillator)とフォトダイオード(photo diode)の組み合わせによって構成される。なお、これに限るものではなく、例えばカドミウム・テルル(CdTe)等を利用した半導体X線検出素子、あるいは、キセノン(Xe)ガスを利用した電離箱型のX線検出素子であって良い。
【0089】
図3に、X線照射・検出装置におけるX線管20とコリメータ22と検出器アレイ24の相互関係を示す。なお、図3の(a)は信号獲得部2の正面から見た状態を示す図、(b)は側面から見た状態を示す図である。同図に示すように、X線管20から放射されたX線は、コリメータ22により扇状のX線ビーム400となるように成形され、検出器アレイ24に照射される。図3の(a)では、扇状のX線ビーム400の広がりすなわちX線ビーム400の幅を示す。(b)ではX線ビーム400の厚みを示す。
【0090】
このようなX線ビーム400の扇面に体軸を交差させて、例えば図4に示すように、撮影テーブル4に載置された対象8がX線照射空間に搬入される。信号獲得部2は、内部にX線照射・検出装置を収容した筒状の構造を持つ。
【0091】
X線照射空間は、信号獲得部2の筒状構造の内側空間に形成される。X線ビーム400によってスライスされた対象8の像が検出器アレイ24に投影される。スライスの厚みはthである。検出器アレイ24は入射X線を検出する。X線照射・検出装置を対象8の体軸の周りで回転させて、複数のビュー方向でそれぞれX線による投影を得る。
【0092】
本装置の動作を説明する。本装置の稼働に当たり、先ず、対象に応じた管電圧調節および管電流調節を行う。図5に、管電圧調節および管電流調節の一例のフロー(flow)図を示す。以下、同図によって管電圧調節および管電流調節を説明する。
【0093】
先ず、ステップ(step)502で、正面スカウト(scout)撮影を行う。正面スカウト撮影は、対象8のこれから断層像を撮影しようとする部位について、対象8の正面から透視撮影を行うものである。
【0094】
次に、ステップ503で正面プロジェクションを形成する。これによって、例えば図6に示すような対象8の正面プロジェクションが得られる。プロジェクションの形成はデータ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明におけるプロジェクション形成手段の実施の形態の一例である。
【0095】
次に、ステップ504で、側面スカウト撮影を行う。側面スカウト撮影は、対象8のこれから断層像を撮影しようとする部位について、対象8の側面から透視撮影を行うものである。
【0096】
次に、ステップ505で側面プロジェクションを形成する。これによって、例えば図7に示すような対象8の側面プロジェクションが得られる。プロジェクションの形成はデータ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明におけるプロジェクション形成手段の実施の形態の一例である。
【0097】
ここまでの動作で、互いに垂直な2方向でのプロジェクションがそれぞれ得られる。
【0098】
次に、ステップ506でプロジェクションの面積を算出する。面積の算出は、正面プロジェクションまたは側面プロジェクションに基づいて行う。算出にはどちらのプロジェクションを用いても良い。これによって、図6および図7に示したプロジェクション面積Sを得る。どちらも同じ面積になる。プロジェクション面積Sはプロジェクションの大きさを表す。
【0099】
次に、ステップ508で、正面スカウト撮影で得たプロジェクション、すなわち正面プロジェクションについて、プロジェクション長の最大値を求める。これによって図5に示した最大プロジェクション長L1を得る。最大プロジェクション長L1はプロジェクションの大きさを表す。
【0100】
次に、ステップ510で、側面スカウト撮影で得たプロジェクション、すなわち側面プロジェクションについて、プロジェクション長の最大値を求める。これによって図7に示した最大プロジェクション長L2を得る。最大プロジェクション長L2はプロジェクションの大きさを表す。
【0101】
次に、ステップ512で、プロジェクション面積Sが所定の閾値を超えているかどうかを判定する。
【0102】
閾値を超えているときは、ステップ514で、X線管の管電圧として電圧V1を選択する。電圧V1は例えば140kVである。この電圧は、X線CT装置における通常の管電圧120kVよりも高い電圧である。
【0103】
X線の線量Qは次式で与えられる。
【0104】
【数1】
Figure 0003950612
【0105】
ここで、
V:管電圧(kV)
I:管電流(mA)
t:通電時間(sec)
上式において、Vが120〜140kVの範囲ではn=3である。したがって、X線の線量は、ミリアンペア・セカンドすなわちI・tに加えて、管電圧Vによっても調節することができる。すなわち、管電圧を140kVとすることにより、管電圧が120kVの場合よりもX線の線量を増加させることが可能になる。
【0106】
線量の変化率は、管電圧によるもののほうがミリアンペア・セカンドによるものより3倍大きいので調節の感度が高い。また、管電圧を高めることによりX線のエネルギー(energy)が増加して透過力が高まるので、検出器アレイにおける検出信号の信号強度が増大する。
【0107】
次に、ステップ516で管電流を算出する。管電流については、プロジェクション面積等に応じて最適値を算出するアルゴリズム(algorithm)が予め用意されており、それを用いて算出する。あるいは、種々のプロジェクション面積に対応する最適値を登録した例えばルックアップテーブル(look−uptable)等の数表を記憶装置66に予め記憶し、それを参照することにより管電流の最適値を求める。
【0108】
ステップ514で管電圧を大きくしたことにより、管電流の最適値は、管電圧を上げない場合よりも小さい値となる。このため、電流リミッタ等によりクリップされることなく、所用の線量のX線を発生することができる。また、X線管のクーリング頻度を増加させることもない。
【0109】
プロジェクション面積Sが閾値を超えていないときは、ステップ522で、プロジェクション長L1,L2のうちのいずれかが閾値を超えているかどうかを判定する。ここでの判定に用いられる閾値はプロジェクション長のための閾値であり、プロジェクション面積用のものとは異なる。
【0110】
L1,L2のうちのいずれかが閾値を超えているときは、上記と同様に、ステップ514で管電圧V1を選択し、ステップ516で管電流を算出する。これによって、プロジェクション長が閾値を超えているときも、通常よりも高い管電圧を選択し、その管電圧の下での管電流を求める。
【0111】
いずれも閾値を超えていないときは、ステップ524で管電圧として電圧V2を選択する。電圧V2は例えば120kVである。これは通常用いられる管電圧である。
【0112】
次に、ステップ526で管電流を算出する。管電流の算出は所定のアルゴリズムあるいはルックアップテーブル等を用いて行う。プロジェクションの面積および長さがそれぞれ所定の閾値を超えないことにより、算出される管電流は過大にならずリミッタでクリップされることがなく、また、X線管のクーリング頻度を増加させることもない。
【0113】
ステップ512,522における判定およびステップ514,524における管電圧の選択は、データ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明における管電圧調節手段の実施の形態の一例である。
【0114】
ステップ516,526における管電流の算出は、データ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明における管電流調節手段の実施の形態の一例である。
【0115】
図8に、別な手法により管電圧および管電流を調節する動作のフロー図を示す。同図に示すように、ステップ802で管電流の最適値の算出を行う。管電流の最適値の算出は所定のアルゴリズムあるいはルックアップテーブル等を用いて行われる。最適値の算出の基となるプロジェクションはスカウト撮影によって予め得られている。管電流算出の前提となる管電圧は初期設定値が用いられる。初期設定値は通常の管電圧例えば120kVとする。
【0116】
ステップ802における管電流の算出は、データ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明における管電流算出手段の実施の形態の一例である。
【0117】
次に、ステップ804で、算出した電流値が許容限度を超えているかどうかを判定する。許容限度はリミッタが作動する電流値である。
【0118】
許容限度を超えているときは、ステップ806で管電圧を変更する。これによって、管電圧が例えば140kVに変更される。
【0119】
ステップ806における管電圧の変更は、データ処理装置60によって行われる。データ処理装置60は、本発明における管電圧調節手段の実施の形態の一例である。
【0120】
次に、ステップ802で、新たな管電圧140kVの下での管電流を算出する。管電圧が高められたことにより、算出される管電流は管電圧が120kVの場合よりも値が小さくなる。
【0121】
この電流値が許容限度を超えているかどうかをステップ804で判定する。電流値がまだ許容限度を超えているときはステップ806で管電圧をさらに変更し、ステップ802で変更後の管電圧の下での管電流を求める。管電流が許容限度を超えている間はこの繰り返しにより、管電圧と管電流が変更され、許容限度内の電流値が得られたところで、管電圧および管電流の調節を終了する。
【0122】
図9に、本装置の撮影時の動作のフロー図を示す。同図に示すように、ステップ912で、操作者が操作装置70を通じてスキャン計画を入力する。スキャン計画には、X線照射条件、スライス厚、スライス位置等が含まれる。ここで、X線照射条件のうち、管電圧および管電流は上記のようにして調節された値が用いられる。以下、本装置は、入力されたスキャン計画に従い、操作者の操作およびデータ処理装置60による制御の下で動作する。
【0123】
ステップ914ではスキャン位置決めを行う。すなわち、操作者が操作装置70を操作して撮影テーブル4を移動させ、対象8の撮影部位の中心をX線照射・検出装置の回転の中心(アイソセンタ:isocenter)に一致させる。
【0124】
このようなスキャン位置決めを行った後にステップ916でスキャンを行う。すなわち、X線照射・検出装置を対象8の周囲で回転させて、例えば1000ビューのプロジェクションをデータ収集バッファ64に収集する。
【0125】
スキャン後あるいはスキャンに並行して、ステップ918で画像再構成を行う。すなわち、データ収集バッファ64に収集した複数ビューのプロジェクションに基づき、データ処理装置60が、例えばフィルタード・バックプロジェクション法等によって画像再構成を行い断層像を生成する。
【0126】
再構成した断層像はステップ920で表示装置68に表示する。管電圧および管電流が対象のプロジェクションに応じて自動調節されているので、SNRの良い高品質の断層像を得ることができる。
【0127】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、対象に適応した線量のX線を照射するためのX線照射条件調節方法および装置、並びに、そのようなX線照射条件調節装置を備えたX線CT装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の装置のブロック図である。
【図2】図1に示した装置における検出器アレイの模式図である。
【図3】図1に示した装置におけるX線照射・検出装置の模式図である。
【図4】図1に示した装置におけるX線照射・検出装置の模式図である。
【図5】図1に示した装置の動作のフロー図である。
【図6】対象のプロジェクションの概念図である。
【図7】対象のプロジェクションの概念図である。
【図8】図1に示した装置の動作のフロー図である。
【図9】図1に示した装置の動作のフロー図である。
【符号の説明】
2 信号獲得部
20 X線管
22 コリメータ
24 検出器アレイ
26 データ収集部
28 X線コントローラ
30 コリメータコントローラ
34 回転部
36 回転コントローラ
4 撮影テーブル
6 信号処理部
60 データ処理装置
62 制御インタフェース
64 データ収集バッファ
66 記憶装置
68 表示装置
70 操作装置
8 対象

Claims (11)

  1. X線管から対象に扇状のX線ビームを照射して透過X線信号を獲得する信号獲得手段と、
    前記対象における所定の断層部位について前記信号獲得手段によりCT撮影の前に行った撮影で獲得した前記透過X線信号に基づいて前記対象のプロジェクションを形成するプロジェクション形成手段と、
    前記プロジェクションの面積が予め定めた閾値に対して大きいか小さいかに従って前記X線管の管電圧を調節する管電圧調節手段と、
    前記調節を行った後に、前記所定の断層部位について前記信号獲得手段により前記X線管が扇状のX線ビームを照射しながら対象のまわりを回転する前記CT撮影を行って獲得した透過X線信号に基づいて前記対象の断層像を生成する画像生成手段とを具備することを特徴とするX線CT装置。
  2. 請求項1に記載のX線CT装置において、
    前記閾値と比較する前記プロジェクションは、前記信号獲得手段がスカウト撮影を行って獲得した透過X線信号に基づいた前記対象のプロジェクションであること特徴とするX線CT装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段は、前記プロジェクションの面積が予め定めた閾値を超えている場合に前記X線管の管電圧を高くすることを特徴とするX線CT装置。
  4. 請求項3に記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段は、前記プロジェクションの面積が予め定めた閾値を超えている場合に前記X線管の管電圧を120kVから140kVに変更することを特徴とするX線CT装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段は、前記プロジェクションの面積が予め定めた閾値を超えていない場合に、プロジェクション長の最大値である最大プロジェクション長が予め定めた閾値に対して大きいか小さいかに従って前記X線管の管電圧を調節することを特徴とするX線CT装置。
  6. 請求項5に記載のX線CT装置において、
    前記閾値と比較する前記プロジェクションは、前記信号獲得手段が対象に対して正面スカウト撮影及び側面スカウト撮影を行って獲得した透過X線信号に基づいた前記対象のプロジェクションであること特徴とするX線CT装置。
  7. 請求項6に記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段は、前記正面スカウト撮影で得た前記最大プロジェクション長又は前記側面スカウト撮影で得た前記最大プロジェクション長のいずれかが予め定めた閾値を超えている場合に前記X線管の管電圧を高くすることを特徴とするX線CT装置。
  8. 請求項7に記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段は、前記正面スカウト撮影で得た前記最大プロジェクション長又は前記側面スカウト撮影で得た前記最大プロジェクション長のいずれかが予め定めた閾値を超えている場合に前記X線管の管電圧を120kVから140kVに変更することを特徴とするX線CT装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれかに記載のX線CT装置において、
    前記管電圧調節手段が前記X線管の管電圧を調節した後に、前記X線管の管電流を調節する管電流調節手段を具備することを特徴とするX線CT装置。
  10. 請求項9に記載のX線CT装置において、
    前記管電流調節手段は、前記管電圧調節手段が前記X線管の管電圧を高くした後に、前記X線管の管電流を小さくすることを特徴とするX線CT装置。
  11. 請求項9又は請求項10に記載のX線CT装置において、
    前記画像生成手段は、前記管電圧調節手段及び前記管電流調節手段が前記調節を行った後に、前記信号獲得手段により前記X線管が扇状のX線ビームを照射しながら対象のまわりを回転して獲得した透過X線信号に基づいて前記対象の断層像を生成することを特徴とするX線CT装置。
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