JP3950434B2 - ガラス成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラスからなるレンズ等の光学素子を製造する方法に関し、加熱軟化した光学ガラス素材を成形型により高精度にプレス成形するガラス光学素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ、ピックアップ等の光学機器に用いられる光学ガラスレンズ等の光学素子を製造するにあたり、加熱軟化した光学ガラス素材を、金属やセラミック等からなる型によりプレス成形する製造法が多く提唱されてきた。光学ガラス素材の形状は球形、ロッド状、扁平楕円体形状等いろいろな形状がある。そして、成形後の光学素子の形状、即ち成形型の形状との相互関係によっては、型と光学ガラス素材の間に閉じた空間ができる構成でプレス成形しなければならない場合もある。この場合、空間内に存在する気体がプレス成形の進行に関わらず、空間内から排出されないままになると、気体の残留した部分では成形されたガラス表面に凹みが生じる。その結果、成形された光学素子の外観品質が影響を受けることがある。
【0003】
上記問題を解決するためにいくつかの方法が提案されている。
例えば、特開平6−9228号公報には、プレス圧力を一旦開放し再びプレス圧力を作用させることにより型とプリフォームとの間に残留した気体を排出する方法が開示されている。
特開平8−325023号公報には、型の周辺部に溝や切り欠きを設けて型とプリフォームとの間に残留した気体をプレス中のプリフォームの伸びと共に外周に排出しやすくする方法が開示されている。
特開昭61−99101号公報には、成形型中心部に小さな穴を設け型とプリフォームとの間に残留した気体を前記穴から排出させる方法が開示されている。
さらに、特開平11−236226号公報には、プレスする際、雰囲気を真空にすることで気体を最初から除去してプレスする方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−9228号公報
【特許文献2】
特開平8−325023号公報
【特許文献3】
特開昭61−99101号公報
【特許文献4】
特開平11−236226号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献に記載の発明は、以下のような問題点を有する。
プレス圧力を一旦開放し再びプレス圧力を作用させる方法(特許文献1)では、プレス温度で圧力を開放し、気体を排出するため、一旦、離型することになる。高温での離型は、ガラスの融着や成形された光学素子の外観不良を起こすことがある。
【0006】
型の周辺部に溝や切り欠きをいくつか設ける方法(特許文献2)では、プレスした光学素子に前記切り欠き・溝の形状が突起状として転写するので光学素子の本来の機能を損なうことになる。また、前記突起状が光学素子の機能・性能を損なう場合、後加工により除去する工程が必要となりコストアップとなる欠点を有する。
【0007】
成形型中心部に小さな穴を設ける方法(特許文献3)でも、光学素子の中心に突起ができ、除去するための後加工が必要になりコストアップとなる。そればかりか、非球面形状の場合、後加工で形状を再生することは困難であるという欠点も有する。
プレス雰囲気を真空にする方法(特許文献4)では、プリフォームのガラス成分の一部が揮発することがあり、揮発物の堆積による光学素子の外観性能が悪化し歩留まりが低下するという欠点を有する。
【0008】
本発明は、上記特許文献に記載の発明が有する問題点を解消するためになされたものである。即ち、本発明は、型成形面の曲率よりもガラス素材(プリフォーム)の曲率半径が大きいプレスの場合のように、型とプリフォームとの間に気体が残留する空間がある状態でプレス成形する必要がある場合であっても、かつ溝や切り欠きや中心部の穴を必要としない通常の成形型を用い、かつプレス成形中に真空にすることなく空間の残留気体を排出でき、外観性能が良好な光学ガラス成形体を製造できる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、本発明では、プリフォームの加熱を、前記空間を形成する成形型と接触した状態で行い、かつプレス開始当初の型の移動速度を工夫することによって、空間に気体が実質的に残存することなしにプレス成形でき、形状精度に優れた光学ガラス素子を製造できる。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
[請求項1]
上型及び下型を含む成形型を用いてガラス素材を押圧することによりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、上下方向に可動であり、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、成形面の光軸近傍に曲率半径r1の凹面を有し、
曲率半径r0の凸面を有する前記ガラス素材を成形型内に配置し、かつ上型及び下型とガラス素材とを接する状態にしたときに、前記上型及び下型の少なくとも一方の成形面とガラス素材の表面とが前記成形型の可動方向の最大高さがh(μm)である閉じた空間を形成するとともに、r1<r0を満足し、
1011ポアズの粘度を示す温度未満のガラス素材を上下型間に供給する工程、及び
供給されたガラス素材を、前記空間を生じる側の上型及び/又は下型との接触による熱伝導により加熱する工程を含み、
成形型の温度が、ガラス素材が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、前記上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させることを含む、前記製造方法。
[請求項2]
上型及び下型を含む成形型を用いてガラス素材を押圧することによりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、上下方向に可動であり、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、成形面の光軸近傍に曲率半径r1の凹面を有し、
曲率半径r0の凸面を有する前記ガラス素材を成形型内に配置し、かつ上型及び下型とガラス素材とを接する状態にしたときに、前記上型及び下型の少なくとも一方の成形面とガラス素材の表面とが前記成形型の可動方向の最大高さがh(μm)である閉じた空間を形成するとともに、r1<r0を満足し、
ガラス素材を上下型間に供給する工程、
供給されたガラス素材の表面部分が内部より高温であって、表面部分が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲内の所定温度T1にあり、かつ成形型の温度が、ガラス素材が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、前記上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させることを含む、前記製造方法。
[請求項3]
ガラス素材の表面部分が、107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲内の所定温度T1となるまで加熱したガラス素材を上下型間に供給することを特徴とする、請求項2の製造方法。
[請求項4]
前記移動距離がh(μm)に達した後の任意の時点で、上型及び下型にかける圧力を上昇させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項5]
圧力の平均上昇速度が1秒間に0.5kgf/mm2以下である請求項4に記載の製造方法。
[請求項6]
前記移動距離がh(μm)に達した後の任意の時点で、前記上型及び下型の少なくとも一方の平均移動速度を上昇させてガラス素材を押圧する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【0011】
さらに本発明の上記製造方法においては、上下型間に供給されたガラスを、前記空間を生じる側の上型及び/又は下型との接触による熱伝導により加熱する工程が10〜300秒であること、
前記熱伝導により加熱する工程は、成形型が、ガラス素材が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、成形型の温度を所定時間略一定に保持する工程を含むこと、
前記所定温度T2が、ガラス素材が107.5〜109.5ポアズの粘度を示す温度であること、並びに/又は
前記ガラス素材を、1011ポアズの粘度を示す温度未満の温度に予熱した後に、下型に供給することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の態様】
本発明は、上型及び下型を含む成形型を用いてガラス素材を押圧することによりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法である。
以下、ガラス素材がプリフォームの場合について説明するが、ガラス素材がガラスゴブ等であっても同様である。
本発明の製造方法に用いる成形型は、上型及び下型の少なくとも一方が、上下方向に可動である。通常は、上型又は下型のいずれか一方が、上方向及び下方向に可動である。
さらに、本発明の製造方法に用いる成形型は、上型及び下型の少なくとも一方が、プリフォームを成形型内に配置し、かつ上型及び下型とプリフォームとを接する状態にしたときに、上型及び下型の少なくとも一方の表面とプリフォームの表面とが閉じた空間を形成する形状を有する。プリフォームの表面と閉じた空間を形成するのは、上型及び下型のいずれか一方であっても、上型及び下型の両方あっても良い。
【0013】
本発明では、上記機能、形状を有する成形型を用い、プリフォーム、例えば、1011ポアズの粘度を示す温度未満のプリフォーム、を上下型間に供給し、次いでガラス素材を、空間のある側の下型及び/又は上型からの熱伝導により加熱する。
このとき、プリフォームの表面と閉じた空間を形成するのが下型のみの場合、プリフォームを下型の成形面上に供給し、供給後、プリフォームは、下型からの熱伝導により加熱される。プリフォームの下型からの熱伝導による加熱は、上型とプリフォームとが接触しない状態で行っても、接触した状態で行ってもよい。
【0014】
上型とプリフォームとが、プリフォームの表面と閉じた空間を生じる場合、プリフォームを下型に供給した後、上型又は下型を、上下型間を狭める方向に移動させて、上型とプリフォームとを接触させ、プリフォームの上型からの熱伝導による加熱を行う。この際、プリフォームは下型とも接触しており、下型の温度がプリフォームの温度より高い場合には、下型からの熱伝導によってもプリフォームは加熱される。
【0015】
上記のように、プリフォームとの間に空間を生じるのが上型及び下型のいずれか一方のみの場合、上型及び下型のいずれの側に空間が生じる態様でもよい。但し、下型である場合の方が、プリフォームを配置(供給)しただけで下型からの熱伝導による加熱ができ、加熱時間を短縮できると言う観点から好ましい。
【0016】
上型及び下型の両方が、プリフォームの表面と閉じた空間を生じる場合、プリフォームを下型に供給した後、上型又は下型を、上下型間を狭める方向に移動させて、上型とプリフォームとを接触させ、プリフォームの上型及び下型からの熱伝導による加熱を行う。
【0017】
下型に供給されるプリフォームの温度は、室温であってもよいし、予備加熱されていてもよい。但し、プリフォームが予備加熱されていれば、成形タクト(1つの成形品を製造するに要する時間)を短縮できることから好ましい。プリフォームを予備加熱する場合の予熱温度は、1011ポアズの粘度を示す温度未満であることが適当である。この温度で予備加熱されたプリフォームは、プリフォームを成形型に供給する際に、吸引部材を用いる場合にも好都合である。
【0018】
さらに、プリフォームの予備加熱温度はガラス転移点以下の温度であることが好ましい。これはプリフォームを搬送皿等の部材に接触させて加熱する場合、プリフォームをガラス転移点温度を超える温度で加熱すると、プリフォームが変形する場合があるからである。
【0019】
プリフォームを供給するときの上下型の温度は、供給されるプリフォームの表面温度以上、ガラス素材の粘度で107.4〜1010.5ポアズに相当する温度を超えないことが好ましい。上型及び下型の温度は略同一であることが好ましい。
そして、上記温度に予備加熱されたプリフォームを上型及び/又は下型との接触による熱伝導によって更に加熱し、プリフォームの表面部分が内部より高温であって、かつ表面部分が107.4〜1010.5ポアズの粘度に相当する温度範囲の所定温度T1になるまで加熱する事が好ましい。
【0020】
上記プリフォームの加熱は、型からの熱伝導により行われるが、型からの熱伝導によるプリフォームの加熱と同時に、型及び/又はプリフォームが、外部から加熱されていてもよい。例えば、型からの熱伝導によるプリフォームの加熱と同時に、成形型の周辺に設けられた加熱装置により、型及び/又はプリフォームが加熱されていても良い。
【0021】
プリフォームを型からの熱伝導により加熱する工程は、10〜300秒間行われることが好ましい。さらにこの工程は、成形型の温度がプレス開始のための所定温度T2にあるとき、所定時間、温度T2に保持する工程を含んで行っても良い。これにより、プリフォームの表面近傍の軟化を制御(促進)することもできる。これによってプリフォームと接している型表面からプリフォームへの熱の供給が制御(促進)され、プリフォームの熱特性(主に、熱伝導特性が低いこと)からプリフォームには、表面温度が高く中心部分の温度が低い、適切な温度分布が形成される。前記所定時間は、適切な温度分布が形成されると言う観点からは、プリフォームの容量にもよるが、10〜200秒であることが適当である。プリフォーム表面近傍の軟化を制御(促進)する工程をおくことは、必須ではない。しかし、プレス開始時には、プリフォームの表面と内部に温度分布(温度差)が存在していることが、プリフォームと成形型との間に形成された空間内の気体を排出する作用を得るには好ましい。但し、時間が長過ぎると、温度分布(温度差)は逆に小さくなり、気体排出作用を得られにくくなり、そればかりか、成形タクトを長期化することにもなるので、好ましくない。
【0022】
本発明では更に以下の態様が好ましい。プリフォームを上下型間に供給し、上下型間でプレス成形するとき供給されたプリフォームの表面部分が、プリフォームの内部より高温であって107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T1にあり、かつ成形型の温度が、プリフォームが107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、前記上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させることによってプリフォームを押圧する。
【0023】
プリフォームは、上下型間に供給してから前記のように型からの熱伝導により、表面部分が上記所定温度T1となるように加熱してもよく、又、上下型外で上記所定温度に加熱したのち、上下型間に供給してもよい。
【0024】
次に、プリフォームを、上下型外で上記所定温度T1に加熱したのち、上下型間に供給する場合について説明する。
【0025】
プリフォームは、型外の加熱手段によって上記所定温度すなわちガラス粘度で107.4〜1010.5ポアズ相当の温度に予め加熱することができる。好ましくは、107.5〜109.4ポアズ相当の温度である。この加熱には、例えば、高温ガス流体によって、又は赤外線輻射などによって、プリフォームを表面から加熱するなどの方法をとることができる。
【0026】
プリフォームを供給するときの上下型の温度は、供給されるプリフォームの表面温度以上、プリフォームの粘度で107.4〜1010.5ポアズに相当する温度を超えないことが好ましいが、プリフォームの表面温度以下であって、プリフォーム内部温度より高くてもよい。上型及び下型の温度は略同一であることが好ましい。
【0027】
プリフォームを上下型間で加熱する場合にも、型外で加熱する場合にも、その表面部分の温度が、107.4〜1010.5ポアズ相当の温度範囲内のT1にあるとき、プレス開始すればよい。
【0028】
このとき、プリフォームの表面部分は、内部より高温である。すなわちプリフォームの表面と内部に温度差が生じている。ここで内部とは、プリフォームの中心を含む部分であって、例えばプリフォームが球形としたときの半径をRとするとき、R/2より内側とすることができる。内部の温度は、ガラス粘度で1010.5ポアス相当温度未満であることが好ましい。
【0029】
プリフォームが供給され、成形型の温度が、プリフォームが107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるとき、または所定温度T2にあって、上記軟化制御(促進)工程を経た後に、上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させる。平均移動速度は、0.3〜6.0(mm/min)であることが好ましく、更には、0.5〜4.0(mm/min)が好ましい。
【0030】
h(μm)は、前記空間の成形型の可動方向での最大高さである。上下型いずれか一方に空間が生じる場合には、その空間の、型の可動方向での最大高さをh(μm)とする。図4には、下型2とプリフォーム(ガラス素材)4とが閉じた空間11を形成する場合を示す。上型及び下型の両方がプリフォームと閉じた空間を形成する場合、h(μm)は両方の空間の最大高さの合計を表す。
「移動距離がh(μm)に達するまで」とは、少なくとも下型と上型とがプリフォームに接触してプリフォームに荷重が作用し、プリフォームが変形し始めた状態から、移動距離がh(μm)に達するまでに相当する。
【0031】
例えば、下型の移動は、下型部材にシリンダー乃至モーター等の圧力を作用させる手段により持ち上げることで行うことができる。移動開始直後の下型の上昇速度を10mm/min以下とし、下型を更に上昇させることによってプリフォームに圧力を作用させる。この下型上昇速度は少なくともプリフォームと型成形面により形成される閉空間の型移動方向の最大高さh(μm)の距離だけ移動するまで実質的に維持される。
【0032】
型移動開始時の型の温度T2を、ガラス粘度で107.4ポアズ〜1010.5ポアズの範囲、好ましくは107.5ポアズ〜109.5ポアズの範囲に相当する温度とすることが、プリフォーム表面近傍の温度がプリフォームと型との間に形成されている空間内の気体をプリフォーム中心方向に膨らませることなく外周方向に広がりながら排出することができるため好ましい。
【0033】
さらに、プレス成形が完了するまでの間も、成形型の温度は、上記の温度範囲にすることが好ましい。例えば、プレス開始時の温度T2のまま一定に維持しても良い。
【0034】
型移動開始時は、プリフォーム表面の粘度も比較的高く、型とプリフォームとの接触面積が小さいため大きなプレス圧力を作用させると型が破損する場合がある。そこでプレス初期のプレス圧力は小さくしておくことが適当である。例えば、1〜10kgf/mm2のプレス圧力が適切である。プレス開始から終了までの間を通じて、プレス圧力は、1kgf/mm2 以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法では、プリフォームに圧力を作用させる下型の初期の移動速度を10mm/min以下としているため、プリフォームへの型からの初期圧力が徐々に伝わり、プリフォームと型との間に形成されている空間に面しているプリフォーム表面が徐々に変形し、前記空間内の気体が徐々に径方向に広がり外周に排出されやすくなる。下型の初期の移動速度は、6.0mm/min以下が好ましく、4.0mm/min以下がより好ましい。更に好ましくは3.0mm/min以下である。上型が移動する場合も同様である。
【0036】
下型の移動距離が、最大高さの合計hに達した後、プレス圧力を徐々に増加させていくことができる。これは、プレス圧力が小さいままではプレス時間が長くなり生産性が低下することを防止する為である。プリフォーム中心部に熱が伝わって行くに従ってプレス圧力を徐々に増加させることで型破損をさせずにプレス時間を最短にすることが可能となる。この時プレス圧力の増加は連続的でも段階的でも良く、正又は負の加速度をもって増加させても良い。プレス圧力の平均増加速度は0.5kgf/mm2/sec以下が好ましく、更には0.1kgf/mm2/sec以下が好ましい。また、下型及び/又は上型の移動距離がhに達した後は、下型及び/又は上型の移動速度も、10mm/min以上に上昇させても良い。
【0037】
空間内の気体が排出され、プリフォームが所望の肉厚の光学素子に成形されたところでプリフォームへのプレス圧力を開放する。その後、面精度が悪化しない程度の徐冷速度で冷却し、上型を離型後、ガラス成形体を下型から取り出す。プレス圧力の開放とは、型の成形面と成形されたガラス素子の間の密着が損なわれないように、更に若干の押圧を維持した状態も含む。
【0038】
本発明の製造方法によって成形される光学素子の形状は、型とプリフォームの間に、前記空間が生じる以外に特に制限は無い。特に有効なのは、空間の生じる側の、光学素子の成形面が凸形状の球面又は非球面であって、プリフォーム形状の曲率が、少なくとも部分的に成形型の曲率より大きく、このためにプリフォームと型の間に閉じた空間が生じる場合である。
【0039】
即ち、前記空間の生じる側の型の成形面が曲率半径r1の凹面を有し、該凹面に接するプリフォームの表面が、曲率半径がr0の凸面を有し、r1 < r0 である場合である。尚、成形面が非球面である場合には、その近軸曲率半径をr1とする。
【0040】
光学素子の大きさにも特に制約は無いが、例えば、外径10mm以下、更には、外径5mm以下のレンズに好ましく用いられる。
【0041】
本発明の製造方法により製造される光学素子の用途には特に制約は無い。例えば、光ディスク用のピックアップ対物レンズや光通信用レンズに好適に用いられ、特に、CD、DVD用の光学系に用いられる。これらのレンズは、その機能を発揮するために要求されるレンズ形状から、型との間に閉じた空間が生じることがあり、また、形状精度や外観の達成水準が極めて高い。特に、比較的波長の短い(例えば450nm以下)のレーザーを用いた光学系では、特に精度の基準が厳しいが、本発明の製造方法によれ得られる光学素子は、充分な性能を有する。
【0042】
本発明は、上記本発明の製造方法により製造されたガラス光学素子を含む、光ディスク用ピックアップ光学ユニットを包含する。光ディスク用ピックアップ光学ユニットは、例えば、図6に説明図を示す光ピックアップ装置あることができる。
図6に示す光ピックアップ装置は、半導体レーザ21、コリメータレンズ22、ビームスプリッター23、1/4波長板24、絞り(図示せず)、対物レンズ25、検出系集光レンズ27、光検出器28およびアクチュエーター29を備えており、ディスク26に情報を記録・再生する。本発明におけるピックアップ光学ユニットは、図6に示す光ピックアップ装置からディスク26を除いた物である。図6に示す光ピックアップ装置中の対物レンズ25を、本発明製造方法により製造されたガラス光学素子とすることができる。
【0043】
【作用】
本発明の光学ガラス成形体の製造方法では、プリフォームを成形型に接触させた状態で、空間を形成する側の型によりプリフォームを加熱する工程、又はプリフォームを成形型の外でガス流体や赤外線輻射などにより加熱する工程を有するため、その型と接触しているプリフォーム表面近傍の温度を、中心より高温とすることができる。このとき、プリフォーム中心部は、成形に適した温度範囲より低温のため、表面近傍より高い粘度を有している。プリフォームの表面と中心との間に温度分布、すなわち粘度分布の発生した状態で、プレスを行うと、粘度の高い中心部が、押圧力の反作用によって、型とプリフォームによって形成されている空間内の気体を押し出す作用が生じるものと考えられる。
【0044】
ここで、プリフォームに圧力を作用させる型の初期の移動速度を10mm/min以下としているため、プリフォームへの型からの初期圧力が徐々に伝わり、プリフォームと型との間に形成されている空間に面しているプリフォーム表面が徐々に変形し、前記空間内の気体が徐々に径方向に広がり外周に排出されやすくなる。この後、プリフォーム中心部に熱が伝わって行くに従ってプレス圧力を徐々に増加させることで型破損をさせずにプレス時間を最短にすることが可能となる。
【0045】
【実施例】
第1実施例
図1は、本発明の第1実施例に用いたガラス成形体のプレス装置の型周辺部の縦断面図である。図2には本第1実施例におけるプレススケジュールを示す。
【0046】
まず、図1に示すプレス装置の構成について説明する。
プリフォーム4は球体でありnd=1.80610 νd=40.73 屈伏点温度600℃ 転移点温度560℃の光学ガラス素材をφ1.6mmに研磨加工によって製造されたものである。このプリフォーム4を成形面の曲率半径が0.67mmである下型2の成形面上に室温で載せ、次に上型1、スリーブ3をセットする。下型2とプリフォーム3との間には空間11が形成され、中心の最大高さは14μmである。尚、図1では、空間の大きさが強調して描写されている。上型、下型、スリーブはSiCでできており、成形面に離型膜としてDLC膜を被覆してある。
【0047】
尚、下型3は予め下型加熱部材6に保持させてある。下型加熱部材6は下型押圧部材8にネジ止めされており、前記下型押圧部材8は図示しないモーターに接続されていてモーターにより上下動とプリフォームへの加圧を行う。
【0048】
上型加熱部材5は上型固定部材7にネジ止めで固定されていて上型1、下型2を加熱するときは、図1のように上型加熱部材5と下型加熱部材6が上型1、下型2を覆うような位置に配置される。この時、上型加熱部材5は上型1に圧力を作用させないように隙間が設けられている。下型測温用熱電対10は下型2に差し込まれておりこれにより温度制御を行う。上型測温用熱電対9は上型加熱部材6に差し込まれており上下型の温度バランスをモニターする。
【0049】
以上のような構成とした上で上型加熱部材5、下型加熱部材6の周りに配した高周波誘導コイル(図示せず)により上型加熱部材5、下型加熱部材6を加熱する。ここで上型加熱部材5、下型加熱部材6はタングステンを主成分とした金属でできており高周波誘導加熱が可能である。
【0050】
プレス開始を、プリフォームのガラス粘度が109.2ポアズに相当する温度615℃とした。上下型を加熱し、上下型温度が、前記温度に達したところで120秒間この温度を一定に保持しプリフォームの昇温を制御した。
【0051】
その後、下型押圧部材を図示しないモーターにより上型1の上面と上型加熱部材5が接触する手前100μmの位置となるまで上昇速度を100mm/min程度の上昇速度で持ち上げ、上昇速度を0.96mm/minに切り替えて上昇させた。プレス圧力は0.5kgf/mm2で下型を定位置に維持できる様になっており、これを0.75kgf/mm2にしてプリフォームを押圧した。
【0052】
プリフォームを押圧し始めてから下型押圧部材の移動距離が20μmまで上昇速度を0.96mm/minを維持し、その後はプレス圧力を0.05kgf/mm2/secで連続的に増加させた。この時移動速度は徐々に増加するがプリフォームの変形が進むにつれて変形しづらくなるため移動速度は一定または遅くなっていった。40秒後に上型1の上端面とスリーブ3の上端面が一致し、プリフォームの押圧は終了した。その後、高周波コイルに通電しつつ窒素ガスを循環させて60℃/minの冷却速度で冷却し、Tg560℃以下の550℃に達したところでプレス圧力を開放し、離型した。
以上の構成・方法によりプレス成形を行うことでプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出され、成形面全体が転写していた。
【0053】
尚、空間内の気体は、プレス開始時の型の温度を高くするとプレス中に排出されにくくなり、型温度がガラス粘度で107.4ポアズに相当する温度654℃を超えると、成形体の一部に、中心部に残留した気体により窪んだ部分が認められた。また、プレス温度を下げていきガラス粘度で1010.5ポアズに相当する温度593℃未満では所望の肉厚となるまで押し切れなかった。
従って、この場合、良好な外観の光学素子が得られるという観点から、プレス開始時の型の加熱温度はガラス粘度で107.4〜1010.5ポアズに相当する温度が適当である。
【0054】
下型が、空間の高さhを移動してプレスするとき、下型上昇速度はプレス温度615℃において6mm/min以上ではプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出されないレンズが20%程度発生し、10mm/minを超えるとガラス成形体の50%以上にカンが発生した。従って、移動速度は、10mm/min以下が適切であるが、6mm/min以下であることが望ましい。本態様は1mm/min以下としたことで、連続プレスが安定して行えた。
【0055】
また、下型上昇速度をプリフォームを押圧し始めてから13μmの移動距離までしか維持しなかった場合はプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出されなかった。この場合、空間11の高さ14μmの下型移動距離までは上記下型上昇速度を維持することで空間内の気体は排出された。
【0056】
更に、下型の移動距離が14μmを越えた後、プレス荷重の上昇速度を0.2kgf/mm2/sec以上にするとカンが50%の割合で発生し、0.5kgf/mm2/sec以上になると型破損が発生した。
【0057】
以上のように、型と接触した状態でプリフォームを加熱することでプリフォームの内部と表面に温度差と粘度差が生じプリフォーム中心付近に粘度が高い部分が発生する。ガラス素材の107.4ポアズ〜1010.5ポアズに相当する温度に型を加熱しているのでプリフォーム表面の型と接触している部分は型温度とほぼ同一に加熱され、プリフォームと下型との間に形成された空間内の気体がプレス荷重によりプリフォーム内部に膨らまず、プリフォーム中心部の高い粘度の部分がプレス圧力の反作用により前記空間を中心から押し広げようとする作用が生じることで空間内の気体は周辺へと排出され残留せずに良好な外観を有したガラス成形体が得られる。また、上記の型移動速度は空間内の形状を急激に変形させることがないので外周方向へ薄く広げることが可能となる。そのため空間内の気体は確実に排出される。
【0058】
以上のように本実施例によればプリフォームと型との間に形成された空間内の気体を確実に排出することができるので良好な外観を有したガラス成形体を製造することが可能となった。また、粘度が高いガラスをプレスするために懸念される型破損やガラス成形体のワレやカンの発生ないので連続して高品質な外観性能を有したガラス成形体を製造することができる。
【0059】
第2実施例
図3は本発明の第2実施例を示す縦断面図、プレススケジュールは図2とパターンが同じでプレス温度、プレス荷重が変更されている。
第1実施例では室温でプリフォームを供給していたが、本実施例では予め加熱したプリフォームをプレス温度に加熱した成形型に供給し、一定時間保持してからプレス成形した。
まず図3の構成について説明する。
上型1は図3のようにスリーブ内で摺動可能な状態でセットされ上型加熱部材5に保持されている。下型2は下型加熱部材6に保持されている。上型1、下型2、スリーブ3はWCからなる超硬合金でできており、成形面に離型膜として貴金属膜を被覆してある。
【0060】
上型保持部材5には位置決めピン12が3ヶ所固定されており下型加熱部材6には前記位置決めピン12が挿入される位置に位置決め穴13が設けられている。
位置決めピン12が位置決め穴14に挿入され状態で上型加熱部材5の下端面と下型加熱部材6の上端面が当接した時上型1と下型2がスリーブ3内でプリフォーム4をプレスしガラス体であるレンズを形成できる位置関係となっている。プレス前には図3のように上下別々となっている。
下型加熱部材6は下型押圧部材8にネジ止めされており、前記下型押圧部材8は図示しないモーターに接続されていてモーターにより上下動とプリフォームへの加圧を行う。
上型加熱部材5は上型固定部材7にネジ止めで固定されている。
熱電対9、10は上型1、下型2にそれぞれ差し込まれており、下型側温用熱電対9により加熱温度が制御されている。
【0061】
プリフォーム4は球体でありnd=1.73077 νd=40.50 屈伏点温度535℃、転移点温度500℃の光学ガラス素材をφ2.0 mmに研磨加工によって製造されたものである。また、プリフォーム3と上型1との間には、図示されない空間が形成されるようになっており、この空間の最大高さは10μmであり、プリフォーム3と下型2との間に形成された空間11の最大高さは20μmである。
このプリフォーム4を、図示しない加熱装置により粘度が1013.5ポアズに相当する温度497℃に予め加熱した。
【0062】
まず、上下型加熱部材5、6の周りに配した高周波誘導コイル(図示せず)により上下型加熱部材5、6を加熱した。ここで上下型加熱部材5、6はタングステンを主成分とした金属でできており高周波誘導加熱が可能である。
上下型1、2のプレス開始の温度をプリフォームのガラス粘度が107.9ポアズに相当する温度560℃とし、この温度に上下型1、2を加熱した。前記予備加熱されたプリフォーム4を図示しないプリフォームの搬送手段により下型2の成形面上に搬送載置した。
【0063】
その後、下型押圧部材を図示しないモーターにより上型1の上面と上型加熱部材5が接触する位置となるまで上昇速度を100mm/min程度の上昇速度で持ち上げ、その位置で60秒間保持した後に、上昇速度を0.9mm/minに切り替えて上昇させた。プレス圧力は0.5kgf/mm2で下型を定位置に維持できる様になっており、これを0.75kgf/mm2にしてプリフォームを押圧した。
プリフォームを押圧し始めてから下型押圧部材の移動距離が100μmまで上昇速度を0.9mm/minを維持し、その後はプレス圧力を0.1kgf/mm2/secで連続的に増加させた。20秒後に下型加熱部材6の上端面と上型加熱部材の下端面が当接し、プリフォームの押圧は終了した。
【0064】
その後、高周波コイルに通電しつつ窒素ガスを循環させて60℃/minの冷却速度で冷却し、Tg500℃以下の480℃に達したところでプレス圧力を開放し、離型した。
以上の構成・方法によりプレス成形を行うことでプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出され、成形面全体が転写していた。
【0065】
尚、空間内の気体は第1実施例と同様にプレス温度を高くすると、排出されにくくなり、光学素子に形状不良が発生し、型温度がガラス粘度で107.4ポアズに相当する温度を超えると成形体の一部には、中心部に残留した気体により窪んだ部分が認められた。また、プレス温度を下げていきガラス粘度で1010.5ポアズに相当する温度518℃より低温では所望の肉厚となるまで押し切れなかった。
従って、この場合、良好な外観が得られるという観点から、型の加熱温度は、ガラス粘度で107.4〜1010.5ポアズに相当する温度とすることが好ましい。更に107.5〜109.5ポアズに相当する温度では、歩留りが良好だった。
【0066】
プレス中、下型が空間の高さ(h)を移動するときに、下型上昇速度は6mm/minの速度を超えるとプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出されないガラス成形体であるレンズが3%程度発生し、10mm/minを超えると50%以上発生した。この場合6mm/min以下の上昇速度が好ましいが、10mm/min以下でも良品を得ることは可能である。本態様では1mm/min以下としたので、安定に生産が可能だった。
【0067】
また、上記下型上昇速度を、プリフォームを押圧し始めてから29μmの移動距離までしか維持しなかった場合は、プリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出されなかった。この場合、空間11、12のそれぞれの高さを合わせた30μmの下型移動距離までは上記下型上昇速度を維持することで空間内の気体は排出された。
【0068】
プレス荷重の上昇速度を0.2kgf/mm2/sec以上にするとカンが2%の割合で発生し0.5kgf/mm2/secを越えると50%以上の割合でカン発生し、さらに上昇すると型破損が発生した。
【0069】
以上のように第1実施例と同様、型と接触した状態でプリフォームを加熱することでプリフォームの内部と表面に温度差と粘度差が生じプリフォーム中心付近に粘度が高い部分が発生する。ガラス素材の107.4〜1010.5ポアズに相当する温度に型を加熱しているので、ここでは、プリフォーム表面の型と接触している部分は型温度とほぼ同一となりプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体がプレス荷重によりプリフォーム内部に膨らまず、プリフォーム中心部の高い粘度の部分がプレス圧力の反作用により前記空間を中心から押し広げようとする作用が生じることで空間内の気体は周辺へと排出され残留せずに良好な外観を有したガラス成形体が得られる。
【0070】
また、上記の型移動速度は空間内の形状を急激に変形させることがないので外周方向へ薄く広げることが可能となる。そのため空間内の気体は確実に排出される。
【0071】
また、本実施例によればプリフォームを予めプレス温度より低い温度に加熱しているので第1実施例に比べるとプリフォームの加熱時間が短くなりタクトタイムの短縮が可能となり生産性が向上し、しかも外観が良好なガラス成形体を歩留まり良く得ることができる。
【0072】
本実施例では、成形型材料として、靱性が良好な超硬合金を用いているので、プレス荷重の上昇速度を上げても型破損しづらくタクト短縮に寄与できる。
【0073】
以上のように本実施例によれば、第1実施例に比べてタクトタイムを短縮しつつプリフォームと型との間に形成された空間内の気体を確実に排出することができ、良好な外観を有したガラス成形体を製造することが可能となった。
【0074】
第3実施例
本実施例でも図3の縦断面図に示す型構造を用いた。本実施例では図5の様にプリフォーム4を上方に吹き出す高温ガス流体により浮上させながら加熱した。ガス流体はプリフォーム浮上部材に設けられた管路を通り浮上部材を赤外線ランプヒーターにより加熱することにより加熱される。プリフォーム浮上部材には温度測定用の熱電対が差し込まれており、これによりプリフォーム加熱温度を制御する。
【0075】
プリフォームは球体でnd=1.69350 νd=53.20、屈伏点温度560℃ 転移点温度520℃の光学素材をφ2mmに研磨加工により製造されたものである。また、プリフォーム3と上型1との間には、図示されない空間が形成されるようになっており、この空間の最大高さは8μmであり、プリフォーム3と下型2との間に形成された空間11の最大高さは16μmである。
【0076】
プリフォーム4は図5の様に浮上させるために流す不活性ガスを供給する浮上ガス管路16を設けた浮上アーム15に浮上ガス管路16から供給される不活性ガスを上方に吹き出す穴とすり鉢上の状の受け部を設けた浮上皿14上で浮上しながら図示しないヒータによる加熱された。プリフォーム4の加熱温度は直接測定できないので浮上アーム15に取り付けられた図示しない温度センサー(熱電対)により測定し制御した。不活性ガスは浮上ガス管路を通る間に加熱された。ここではプリフォームの温度を107.5ポアズに相当する温度603℃に加熱した。所定温度に加熱されたところで浮上アーム15を図示しない駆動装置によりプリフォーム4が図3の下型2の真上になる位置まで移動させた。浮上アーム15は中心から分割されるように作られており、これを図5に示した矢印の方向に分割すると同時に浮上ガスを停止させることにより下型2に落下供給された。上下型1,2は高周波誘導コイルにより603℃に加熱されていて、プリフォーム4の落下供給後に浮上アーム15を待避させた。待避された浮上アームは再びプリフォームが供給されプリフォームを加熱した。下型押圧部材は図示しないモーターによりプリフォーム4の上面と上型1の成形面が接触する直前まで100mm/min程度の上昇速度で持ち上げ、その後上昇速度を2.4mm/minに切り替えて上昇させた。プレス圧力は0.75kgf/mm2としている。プレス速度はプリフォームを押圧し始めてから下型押圧部材の移動距離が50μmまで上昇速度を2.4mm/minを維持し、その後はプレス圧力を0.1kgf/mm2/secで連続的に増加させ、3kgfを超えない様にして下型加熱部材6の上端面と上型加熱部材の下端面が当接したところでプリフォームの押圧は完了した。その後、高周波コイルに通電しつつ窒素ガスを循環させて60℃/minの冷却速度で冷却し、500℃に達したところでプレス圧力を開放し、離型した。下型を下方に移動させた後プレスされたレンズを取り出し、再び上下型を昇温させた後加熱されたプリフォームを供給しプレスを繰り返した。
【0077】
以上の構成・方法によりプレス成形を行うことでプリフォームと下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出され、成形面全体が転写されていた。
尚、空間内の気体は型温度を高くし、あるいは、プリフォーム加熱温度を高くすると排出されにくくなり、光学素子に形状不良が発生する。型温度が107.4ポアズに相当する606℃を超えると成形体の一部には中心部に残留した気体により窪んだ部分が認められた。
【0078】
プリフォーム温度は浮上アームに取り付けられた温度センサー(本実施例では熱電対)で測定されているため誤差を生じるが、予めプリフォーム温度を放射温度計やサーモビュワーなどの非接触の温度センサーで測定した温度と浮上アームに取り付けられた熱電対との相関を取っておくことが好ましい。
【0079】
以上のような工程でプレスしたとき、プリフォームを押圧し始めてからの下型上昇速度が6mm/minを超えると第2実施例と同様下型との間に形成された空間内の気体は完全に排出されないレンズが3%程度発生し、10mm/minを超えると50%以上発生した。
【0080】
以上のように、プリフォームを型外で所定温度T1まで加熱すると、浮上加熱が可能であり、ガラス素材の表面欠陥を防止すること、及び成形タクトを短縮させられる点で有利である。
以上のように、本実施例では第2実施例よりもさらにタクトを短縮してもプリフォームと型との間に形成される空間内の気体を確実に排出することができ良好な外観を有したガラス成形体を製造することが可能となった。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、本発明のガラス成形体の製造方法によれば型の温度を光学ガラス素材の粘度で、107.4〜1010.5ポアズに相当する温度範囲の所定温度まで加熱し、表面部分が内部より高温であって、表面部分が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲内のガラス素材を供給し、閉じた空間の高さに相当する型の移動の速度を10mm/min未満でプレスするためプリフォームと型との間に形成された空間内の気体による空間の変形が周辺に薄く広がるように変形し、確実に排出することができるので良好な外観を有したガラス成形体を製造することが可能となる。また、粘度が高いガラスをプレスするために懸念される型破損やガラス成形体のワレやカンの発生が抑制され、連続して高品質な外観性能を有したガラス成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に用いたガラス成形体のプレス装置の型周辺部の縦断面図である。
【図2】第1実施例におけるプレススケジュールを示す。
【図3】本発明の第2実施例を示す縦断面図である。
【図4】下型とガラス素材との間に形成される、閉じた空間の説明図。
【図5】第3実施例に用いたプリフォーム4の浮上装置の概略断面図。
【図6】本発明の光ディスク用ピックアップ光学ユニットの説明図。
【符号の説明】
1 上型
2 下型
3 スリーブ
4 プリフォーム
5 上型加熱部材
6 下型加熱部材
7 上型固定部材
8 下型押圧部材
9 上型測温用熱電対
10 下型測温用熱電対
11 空隙(閉じた空間)
12 位置決めピン
13 位置決め穴
14 浮上皿
15 浮上アーム
16 浮上ガス管路
21 半導体レーザ
22 コリメータレンズ
23 ビームスプリッタ
24 1/4波長板
25 対物レンズ
26 光ディスク
27 検出系集光レンズ
28 光検出器
29 アクチュエーター
30 カバーガラス
31 情報記録面
Claims (6)
- 上型及び下型を含む成形型を用いてガラス素材を押圧することによりプレス成形すること
を含むガラス光学素子の製造方法において、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、上下方向に可動であり、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、成形面の光軸近傍に曲率半径r1の凹面を有し、
曲率半径r0の凸面を有する前記ガラス素材を成形型内に配置し、かつ上型及び下型とガラス素材とを接する状態にしたときに、前記上型及び下型の少なくとも一方の成形面とガラス素材の表面とが前記成形型の可動方向の最大高さがh(μm)である閉じた空間を形成するとともに、r1<r0を満足し、
1011ポアズの粘度を示す温度未満のガラス素材を上下型間に供給する工程、及び
供給されたガラス素材を、前記空間を生じる側の上型及び/又は下型との接触による熱伝導により加熱する工程を含み、
成形型の温度が、ガラス素材が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、前記上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させることを含む、前記製造方法。 - 上型及び下型を含む成形型を用いてガラス素材を押圧することによりプレス成形すること
を含むガラス光学素子の製造方法において、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、上下方向に可動であり、
前記上型及び下型の少なくとも一方は、成形面の光軸近傍に曲率半径r1の凹面を有し、
曲率半径r0の凸面を有する前記ガラス素材を成形型内に配置し、かつ上型及び下型とガラス素材とを接する状態にしたときに、前記上型及び下型の少なくとも一方の成形面とガラス素材の表面とが前記成形型の可動方向の最大高さがh(μm)である閉じた空間を形成するとともに、r1<r0を満足し、
ガラス素材を上下型間に供給する工程、
供給されたガラス素材の表面部分が内部より高温であって、表面部分が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲内の所定温度T1にあり、かつ成形型の温度が、ガラス素材が107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲の所定温度T2にあるときに、前記上型及び下型の少なくとも一方を、移動距離がh(μm)に達するまで10(mm/min)以下の平均移動速度で、上下型間を狭める方向に移動させることを含む、前記製造方法。 - ガラス素材の表面部分が、107.4〜1010.5ポアズの粘度を示す温度範囲内の所定温度T1となるまで加熱したガラス素材を上下型間に供給することを特徴とする、請求項2の製造方法。
- 前記移動距離がh(μm)に達した後の任意の時点で、上型及び下型にかける圧力を上昇させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 圧力の平均上昇速度が1秒間に0.5kgf/mm2以下である請求項4に記載の製造方法。
- 前記移動距離がh(μm)に達した後の任意の時点で、前記上型及び下型の少なくとも一方の平均移動速度を上昇させてガラス素材を押圧する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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