JP3950269B2 - 貼合用フィルム及びフィルム貼合品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は柔軟性を有する貼合用フィルム及びフィルム貼合品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鞄表皮材の裏打ち用フィルムや床材に裏打ちされて貼合わされるフィルムには、風合い、防水性、生地との接着性等の性能が要求されるところから、可塑化塩化ビニルフィルムが使用されてきた。特に、鞄表皮材にナイロン生地が使用されている場合は、可塑化塩化ビニルフィルムが接着剤を介してナイロン生地に貼合わせて使用される。
【0003】
この貼合用可塑化塩化ビニルフィルムとしては、可塑剤含有量の多い塩化ビニルフィルム、具体的には塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を40重量部以上含有する可塑化塩化ビニルフィルムが好適に用いられており、このフィルムの柔軟性は生地に貼合わせることによって、高級感を有する風合いとなる。
さらに、生地が織布であれば通水するので、該フィルムによって防水性を付与することが可能となる。
また、フィルムに接着剤を塗布し乾燥した後、接着活性温度まで加熱した状態で生地と貼合わせる際に、高温において高い溶融張力を有する物性が、優れた加工適性を示していた。
【0004】
しかし、近年において、環境汚染問題が重要視されており、塩素を含む可塑化塩化ビニルの使用は、あらゆる分野で問題視されている。特に、塩化ビニルフィルムを含む鞄等の表皮材廃棄物を焼却する際に、ダイオキシンを発生する等の問題が生じている。
【0005】
このため、最近では塩化ビニルの代替材料として、ポリオレフィン系樹脂が注目されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂フィルムは塩化ビニルフィルムと異なり、接着加工ラインに適した耐熱性と最終製品の風合いとが相反する特性であるため、両立させることは困難であった。
【0006】
この問題を解決するために、例えば特開平6−927号公報には、プロピレンと種々のα−オレフィンとのランダム共重合体を主成分とする層の両面にランダムポリプロピレンを主成分とする層が積層された、塩化ビニルフィルム代替ポリオレフィン系樹脂フィルムが提案されている。
【0007】
しかしながら、このポリオレフィン系樹脂フィルムは現行製品ほど柔軟性や風合いがなく、耐熱性が低く、しかも加工特性も劣っていた。
これらの問題点を解決するために、さらに柔軟性を有する樹脂が検討されてきたが、柔軟性を有するポリオレフィン系樹脂は低融点の傾向があり、加熱接着工程において耐熱性を維持することができず、溶融した樹脂層が搬送ロールに付着して、作業性や品質を損なうという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、柔軟性、加工適性に優れるので、織布や生地とラミネートして鞄表皮材や床材として好適に使用でき、可塑化塩化ビニルフィルムを代替可能なポリオレフィン系樹脂からなる貼合用フィルム及びそのフィルム貼合品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の裏打ち用フィルムは、単層又は多層のポリオレフィン系樹脂層からなり、少なくとも一方の表面が、エラストマー成分を40重量%以上含有する、リアクターブレンド法による共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を主成分とする融点140℃以上のポリプロピレン系樹脂層から形成されており、曲げ弾性率が100〜500kgf/cm2(但し、500kgf/cm2を除く)であることを特徴とする。
【0010】
本発明の貼合用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層からなり、単層又は多層のいずれであってもよいが、風合いや加工適性等の点から可塑化塩化ビニルフィルムを代替するには、曲げ弾性率が100〜500kgf/cm2 (但し、500kgf/cm 2 を除く)に制限される。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン;プロピレンの単独重合体、ランダム重合体、ブロック重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレンとα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
上記曲げ弾性率を得るためには、EPR(エチレン・プロピレンゴム)等のエラストマー成分を40重量%以上含有するポリプロピレン系樹脂を主原料とし、柔軟化剤などを併用することが好ましい。
【0012】
上記裏打ち用フィルムは、織布又は生地を積層して使用するために、少なくとも一方の表面層に、エラストマー成分を40重量%以上含有する、リアクターブレンド法による共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を主成分とする融点140℃以上のポリプロピレン系樹脂層が設けられる。織布又は生地の積層が片面の場合は積層する側の表面層に、織布又は生地の積層が両面の場合は両方の表面層に、ポリプロピレン系樹脂層が設けられる。
【0013】
上記貼合用フィルムを得る方法としては、樹脂シートやフィルムを成形するための公知の方法が使用可能であり、例えば、Tダイやインフレーションによる押出成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0014】
上記貼合用フィルムの厚みは、特に限定されず、用途や要求される風合いによって適宜決定すればよい。
【0015】
上記貼合用フィルムは、少なくとも一面のポリプロピレン系樹脂層に織布又は生地が積層され、フィルム貼合品として使用される。
織布又は生地の積層は、その種類によって適宜接着剤を選択すればよいが、フィルムの濡れ性を向上させるために、フィルム側にコロナ処理が施されてもよい。コロナ処理によってフィルムのべたつきが起こる場合は、接着面にアンチブロッキング剤を配合してもよい。この際、脂肪酸アミド系のスリップ剤を使用すると接着阻害を起こすことがあるため、接着面にスリップ剤の使用は極力避けることが好ましい。また、用途によって耐擦傷性が要求される場合は、接着面と反対側の面にスリップ剤やアンチブロッキング剤を配合することが好ましい。
上記スリップ剤やアンチブロッキング剤の使用量は用途により適宜決定される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
エチレン−プロピレン成分よりなるゴム成分を40重量%含有し、該ゴム成分中のエチレン含有量が20重量%以上であり、かつ結晶化度41%、密度0.89g/cm3 、MFR2g/10分である、リアクターブレンド法により共重合されたプロピレン系共重合体を50重量%含有するポリプロピレン系樹脂に、柔軟化剤としてSIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)を加え、さらにアンチブロッキング剤としてシリカ等を添加した樹脂組成物をTダイ法にて成膜して200μm厚のポリプロピレン系樹脂層からなる単層裏打ち用フィルムを得た。
別工程にて固形分濃度30重量%の水系ウレタン接着剤を単層裏打ち用フィルムの一面に塗布後、接着剤塗布面をナイロン織布に積層し、表面温度200℃で4秒間乾燥した直後に金属エンボスロール及びゴムロールで挟圧して、ナイロン織布が片面に積層されたフィルム貼合品を得た。
【0018】
(比較例1)
実施例1のポリプロピレン系樹脂層の片面に低密度ポリエチレン樹脂層を層比1:1で積層し、2層貼合用フィルムを得た。また、2層貼合用フィルムのポリプロピレン系樹脂層側に、実施例1と同様にしてナイロン織布を積層し、フィルム貼合品を得た。
【0019】
(比較例2)
貼合用フィルムとして、200μm厚のランダム共重合ポリプロピレン樹脂単層フィルムを用いた。また、実施例1と同様にしてナイロン織布を片面に積層し、フィルム貼合品を得た。
【0020】
上記貼合用フィルム及びフィルム貼合品について下記の測定を行い、結果を表1に示した。
(1)厚み
ダイヤルゲージを用いて、貼合用フィルムのTD方向について20箇所の厚みを測定し、平均値を求めた。
(2)曲げ弾性率
貼合用フィルムの曲げ弾性率を、JIS K 6758に準拠して測定した。
(3)表面層の融点
貼合用フィルムのナイロン織布側のポリプロピレン系樹脂層の融点をDSC法によって測定した。
(4)接着強度
30mm幅に切断したフィルム貼合品について、引張試験機で180度剥離試験を行い、貼合用フィルムとナイロン織布との接着強度を測定した。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
本発明の貼合用フィルムは、上述の構成であり、柔軟性、加工適性に優れ、生地や織布を積層したフィルム貼合品は、塩化ビニルフィルムを代替して鞄表皮材や床材として好適に使用することができる。
Claims (2)
- 単層又は多層のポリオレフィン系樹脂層からなり、少なくとも一方の表面が、エラストマー成分を40重量%以上含有する、リアクターブレンド法による共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を主成分とする融点140℃以上のポリプロピレン系樹脂層から形成されており、曲げ弾性率が100〜500kgf/cm2(但し、500kgf/cm2を除く)であることを特徴とする裏打ち用フィルム。
- 請求項1記載の裏打ち用フィルムのポリプロピレン系樹脂層に、織布又は生地が積層されていることを特徴とするフィルム貼合品。
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