JP3949529B2 - スクリーン印刷装置を使用した樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な意匠性を有する樹脂成形体に使用する印刷フィルムを製造する装置およびこの装置を使用した印刷フィルムの製造方法、ならびに樹脂成形体の製造方法に係り、特に、車両、船舶、航空機用内外装パネル、建材、家電製品、家具、壁紙、仏壇、仏具、表札、容器、衣料、靴、バック、テレフォンカード、クレジットカード、ICカード等に好適な樹脂成形体の低廉な製造技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
意匠性を付与した樹脂成形体としては、プラスチック基材に図柄を付与し、その表面に塗料樹脂液を流し込み、硬化させた樹脂成形体が知られている。また、樹脂成形体により高度な意匠性を付与するために、表面に凹凸を形成すべく、エンボス賦形フィルムを用いて樹脂表面にエンボス加工した樹脂成形体、または、その後にワイピング印刷をさらに施した樹脂成形体等が知られている。さらに、特開平5−57864号公報では、凹凸感を強調した意匠的に優れた樹脂成形品が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来技術では立体感、本物感が乏しく、特開平5−57864号公報に開示の樹脂成形体は立体感が得られるものの、溝模様を形成する工程、着色透明樹脂液を流込む工程、樹脂液を硬化させる工程および樹脂を除去する工程が必須要件であるため、製造工程が煩雑であり、製造コストが高いという問題があった。また、上記従来の樹脂成形体は表面に凹凸を有する構成であるため、耐久性、防汚性といった点で問題を有するものであり、また、特異な手触り感があり、この樹脂成形体を利用できる用途が限定されてしまうという問題もあった。
【0004】
これらの問題の中でも、特に樹脂成形体の製造コスト低減の要請が強く、とりわけ、樹脂成形体の製造に使用する印刷フィルムをいかに低廉に製造するかが大きな問題であった。
【0005】
したがって、本発明は以上のような問題点に鑑み、立体感が得られ、高度な意匠性を表現できる樹脂成形体を得ることができるのはもちろんのこと、そのような樹脂成形体の製造に使用する印刷フィルムの低廉な製造を可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂を印刷、硬化して紫外線硬化性樹脂層を形成するにあたり、通常の印刷工程を行った後、紫外線硬化性樹脂層に波長の異なる2種類の紫外線を順次照射することによって、印刷フィルムの製造を低廉に実現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の樹脂成形体の製造方法は、熱可塑性フィルムの裏面に絵付け印刷して印刷絵付け層を形成する工程と、熱可塑性フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂を印刷して紫外線硬化性樹脂層を形成する工程と、紫外線硬化性樹脂層に、第1の波長の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層の表面部を硬化する工程と、次いで、紫外線硬化性樹脂層の全体を第1の波長よりも長い第2の波長の紫外線照射により硬化させる工程と、紫外線硬化性樹脂層を熱可塑性フィルム中に埋没させるとともに、印刷絵付け層の紫外線硬化性樹脂層が設けられた領域に対応する領域とその他の領域との間で表面からの距離に差が生じるように、積層体の印刷絵付け層側に樹脂基材を成形して一体化する工程とを有する樹脂成形体の製造方法であって、さらに、樹脂成形体の最表面に位置する埋没した紫外線硬化性樹脂層表面と熱可塑性フィルム表面とが平坦であることを特徴とするものである。
【0008】
図1は、本発明の装置による紫外線硬化性樹脂層への紫外線照射態様を示す図である。本発明は、通常の印刷工程を行った後、同図に示すように、まず第1の紫外線照射部により、フィルム1上に形成された紫外線硬化性樹脂層2の表面に第1の波長の紫外線を照射して表面部を硬化させる。次いで第2の紫外線照射部により、紫外線硬化性樹脂層の全体を第1の波長よりも長い第2の波長の紫外線照射により硬化させることで、紫外線硬化性樹脂層4の所望形状を得る。その際、第1の波長を短く設定することにより、紫外線が紫外線硬化性樹脂層の表面部までしか達しないようにし、その表面部のみを硬化させる。この状態では、紫外線硬化性樹脂層は硬化(架橋)した表面部2aと粘性を有する部分2bとの2層構造となっており、架橋構造の網目内に粘性を有する部分の樹脂が浸入して表面部2aの体積が増加する。そして表面部2aの体積分が膨らむことにより、波状模様3が形成される。本発明によれば、2種類の紫外線を段階的に照射することで立体的な波状模様3を形成することができるので、上記した特開平5−57864号公報と比較すると、その工程および装置が格段に簡略化される。したがって、立体感があって高度な意匠性を表現できる樹脂成形体を低廉なコストで得ることができる。本発明における第1の波長としては180〜300nmの短波長を用い、好ましくは230〜270nmの短波長を用いる。また第2の波長としては300〜400nmの長波長を用い、好ましくは320〜370nmの長波長を用いる。
【0009】
また本発明の印刷フィルムの製造方法は、上記装置を使用して低廉にその製造を可能としたものであり、フィルムを送出す工程と、フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂を印刷して、紫外線硬化性樹脂層を形成する工程と、紫外線硬化性樹脂層に、第1の波長の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層の表面部を硬化する工程と、次いで、紫外線硬化性樹脂層の全体を第1の波長よりも長い第2の波長の紫外線照射により硬化させる工程と、紫外線硬化性樹脂層を有するフィルムを巻取る工程とを有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記のとおり、通常の印刷工程を行った後に、紫外線硬化性樹脂層に波長の異なる2種類の紫外線を順次照射することによって、立体感が得られ、高度な意匠性を表現できる樹脂成形体の製造に使用する印刷フィルムの製造を低廉に実現することができる。
【0010】
ここで、上記したような波状模様3を確実に形成するためには、架橋構造の網目内に樹脂が浸入するための時間が必要である。この観点から、第1の波長の紫外線による照射から第2の波長の紫外線による照射までは3秒以上間隔を空けることが望ましい。なお、製造コストを考慮すると、上記照射間隔を5秒以下とすることが特に有利である。
【0011】
さらに本発明の樹脂成形体の製造方法は、熱可塑性フィルムの裏面に絵付け印刷して印刷絵付け層を形成する工程と、熱可塑性フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂を印刷して紫外線硬化性樹脂層を形成する工程と、紫外線硬化性樹脂層に、第1の波長の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層の表面部を硬化する工程と、次いで、紫外線硬化性樹脂層の全体を第1の波長よりも長い第2の波長の紫外線照射により硬化させる工程と、紫外線硬化性樹脂層を熱可塑性フィルム中に埋没させるとともに、印刷絵付け層の紫外線硬化性樹脂層が設けられた領域に対応する領域とその他の領域との間で表面からの距離に差が生じるように、積層体の印刷絵付け層側に樹脂基材を成形して一体化する工程とを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の製造方法によれば、特に、熱可塑性フィルムの裏面に印刷絵付け層が設けられ、熱可塑性フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層が設けられた構成の印刷フィルムに、印刷絵付け層側から樹脂基材を成形することによって、紫外線硬化性樹脂層が設けられた領域の印刷フィルムの厚さと設けられていない領域の印刷フィルムの厚さが異なる。これにより、部分的に表面からの距離の異なる印刷絵付け層を形成することができ、同時に、成形時の熱により柔軟性を有した熱可塑性フィルム中に紫外線硬化性樹脂層を埋没させることができる。
【0013】
また、紫外線硬化性樹脂層は、通常、加熱成形時において延びが少ないため印刷インキが割れ易いが、本発明によれば、この層が存在しない領域が選択的に延伸されることにより、印刷インキの割れを防ぎ、平板状のみならず自由な形状、例えばU字型、コの字型等の成形体を製造することができる。
【0014】
そして、本発明の樹脂成形体の製造方法は、紫外線硬化性樹脂層の表面に、第1の波長の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層の表面部分を硬化させる工程と、次いで、紫外線硬化性樹脂層の全体を第2の波長の紫外線照射により硬化させる工程とを含むものであることから、上述した印刷フィルムの製造方法と同様に、紫外線硬化性樹脂層の所望形状を得るに際し、低廉な製造を実現することができる。なお、この製造方法においても、第1の波長の紫外線と第2の波長の紫外線との照射間隔を、3秒以上とすることが望ましい。また樹脂基材の成形方法としては、真空成形、圧空成形、射出成形型内同時加飾成形、押し出し成形同時貼り等を用いることが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスクリーン印刷装置およびこの装置を使用した印刷フィルムの製造方法、ならびに樹脂成形体の製造方法について説明する。
(本発明のスクリーン印刷装置)
図2は、本発明の紫外線照射部を有するスクリーン印刷装置を示す図であり、図中符号10はフィルムの送出し部、11はスクリーン印刷部、12は第1の紫外線照射部、13は第2の紫外線照射部、14はフィルムの巻取り部である。
【0016】
ここで、フィルムの送出し部10はロール芯10aと支柱10bを備え、このロール芯10aにはフィルム15の一端が巻回されている。フィルム15の他端は、スクリーン印刷部11、第1の紫外線照射部12および第2の紫外線照射部13を介してフィルムの巻取り部14まで延在している。
【0017】
スクリーン印刷部11は、フィルム15の表面に紫外線硬化性樹脂16を印刷して紫外線硬化性樹脂層17を形成する印刷機11aと支柱11b,11cを備える。また、第1の紫外線照射部12は、紫外線硬化性樹脂層17の表面に第1の波長(以下「短波長」という。)の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層17の表面部を硬化させる短波長照射器12aと支柱12bとを備え、第2の紫外線照射部13は、紫外線硬化性樹脂層17の全体を第2の波長(以下「長波長」という。)の紫外線照射により硬化させる長波長照射器13aを備える。フィルムの巻取り部14はロール芯14aを備え、このロール芯14aにはフィルム15の他端が巻回されている。なお、フィルムの送出し部10とスクリーン印刷部11との間、およびスクリーン印刷部11と第1の紫外線照射部12との間、すなわち支柱10bと支柱11bとの間、および支柱11cと支柱12bとの間には、それぞれ、フィルム15のたるみ部15a,15bが形成されている。これは各部10,11,12におけるフィルム15の移動速度が異なることから、それを吸収するためのものである。
【0018】
(本発明のスクリーン印刷装置を使用した印刷フィルムの製造方法)
本発明の印刷フィルムの製造方法は、以上に示したような装置を用いて実施することができ、フィルム15をフィルムの送出し部10から、スクリーン印刷部11、第1の紫外線照射部12および第2の紫外線照射部13を介してフィルムの巻取り部14へ(図2中の太矢印の方向へ)移動させるに際し、まずフィルム15の表面に紫外線硬化性樹脂16を印刷して、紫外線硬化性樹脂層17を形成する。そして、紫外線硬化性樹脂層17の表面に、短波長の紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層17の表面部を硬化させて波状模様を形成し、次いで、紫外線硬化性樹脂層17の全体を長波長の紫外線照射により硬化させる。最後に、紫外線硬化性樹脂層17を有するフィルム15をフィルムの巻取り部14で巻取る。
【0019】
このような印刷フィルムの製造方法においては、短波長の紫外線と長波長の紫外線との照射間隔を、3秒以上とすることが好ましく、例えば、第1の紫外線照射部12および第2の紫外線照射部13でのフィルム15の移動速度を10m/分とした場合には、フィルム15の第1の紫外線照射点と第2の紫外線照射点との間隔を85cm以上とすることにより、この照射間隔を実現することができる。
【0020】
(本発明のスクリーン印刷装置を使用した樹脂成形体の製造方法)
「印刷絵付け層の形成工程」
熱可塑性フィルムとしては、透明であり、印刷が可能なフィルムであれば特に限定はないが、特に、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が好ましい。
【0021】
印刷絵付け層としては、特に限定は無く、絵柄、模様、文字等を印刷することができる。また、印刷絵付け層の絵柄等のベース色としては、アルミ顔料等を用いた高輝度な色調を有するものが好ましく、これにより、優れたコントラストを得ることができる。
【0022】
印刷絵付け層の形成方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の公知技術を用いることができ、これによって、図3(a)のように、上記の熱可塑性フィルム21の裏面に印刷絵付け層22を印刷して形成する。
【0023】
「紫外線硬化性樹脂層の形成工程」
紫外線硬化性樹脂としては、一般公知の樹脂、例えば、ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂等を用いることができる。これらの紫外線硬化性樹脂23は、一般的には、スクリーン印刷、グラビア印刷等によって、図3(b)に示すように、熱可塑性フィルム21の表面上に所望のパターンを印刷することができ、その後、紫外線硬化性樹脂層23を適宜紫外線により硬化させて印刷フィルム30を作製する。本発明では、この工程を上述したように、紫外線が表面部までにしか達しないようにし、表面部のみを硬化する。そして、上記のような波状模様を確実に形成するには、短波長の紫外線と長波長の紫外線との照射間隔を、3秒以上とすることが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂成形体においては、意匠性や美観を向上させるために、この紫外線硬化性樹脂層表面をつや消し状態とすることが好ましい。このつや消し状態の形成方法としては、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、特開平9−53024号公報に開示の方法を用いて、紫外線硬化性樹脂層の表面に微細な皺を形成し、つや消し状態を形成することができる。このつや消し方法によれば、金型に依存すること無く、任意の領域をつや消し状態とすることができるので好ましい。
【0025】
さらに、本発明における紫外線硬化性樹脂層は、熱可塑性フィルム中に埋没する構成であるため、この層がいずれの形状であっても剥がれにくいものであるが、より耐久性を向上させるためには、図3(b)〜(d)に示すように、紫外線硬化性樹脂層23の熱可塑性フィルム21との接触面の面積が印刷表面の面積よりも大きい形状とすることが好適である。紫外線硬化性樹脂層23がこのような形状であっても、本発明の製造方法によれば、後述の樹脂基材の形成工程における熱により熱可塑性フィルムが柔軟性を有し、この熱可塑性フィルム21中に紫外線硬化性樹脂層23を完全に埋没させることができる。
【0026】
「樹脂基材を成形し、印刷フィルムを接着一体化する工程」
樹脂基材としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)を単独または複数組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明における樹脂基材の成形方法としては、真空成形、圧空成形、射出成形型内同時加飾成形、押し出し成形同時貼り等を用いることができる。これらの中でも本発明においては、特に、射出成形型内同時加飾による樹脂基材成形方法が好適である。
【0028】
また、本発明の接着一体化工程においては、予め、印刷フィルムを加熱し、熱可塑性フィルムを軟化させることにより、本発明の樹脂成形体を好適に製造することができる。この印刷フィルムの加熱時間および加熱温度は、熱可塑性樹脂により異なるが、一般的な熱可塑性樹脂を用いた場合、150〜550℃、1〜60秒の範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の接着一体化方法としては、まず、図3(c)に示すように、予め加熱された印刷フィルム30上の紫外線硬化性樹脂層23の印刷表面を金型またはロール24で圧着する。次いで、印刷フィルム30の印刷絵付け層22側から上記の成形方法により樹脂基材25を成形する。この樹脂基材25の成形時の圧力により、印刷フィルム30全体が金型またはロール24に押し付けられ、予めの加熱および成形時の熱によって柔軟性を有した熱可塑性フィルム21中に紫外線硬化性樹脂層23が完全に埋没され、同時に、部分的に表面からの距離が異なる印刷絵付け層22が形成される。
【0030】
このような絵付け層22の形状は、図3(d)に示すように、紫外線硬化性樹脂層23が設けられた領域の印刷フィルム30の厚さよりも設けられていない領域の厚さのほうが薄いため、印刷フィルム30が金型またはロール24に押し付けられた際に、紫外線硬化性樹脂層23が設けられた領域の印刷絵付け層22よりも設けられていない領域の方が金型またはロール24に近づけられ、紫外線硬化性樹脂層32の有無による部分的な段差が印刷絵付け層22に生じるために形成される。これにより、樹脂基材25と、この上に一体化された印刷フィルム30とを備える本発明の樹脂成形体40が製造される。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここでは、最終目的物としての樹脂成形体について説明する。
<実施例1>
まず、アクリルフィルム(熱可塑性フィルム)の裏面に、アルミニウム顔料を用いたメタリック色の印刷絵付け層をグラビア印刷により形成した。次に、イソホロンジイソシアネート666部とテトラヒドロフルフリルアクリレート440部とポリエチレングリコールジアクリレート300部とを混合し、さらにトリメチロールプロパンとイプシロンカプロラクトンの開環反応物1200部を添加しながら70℃で攪拌反応させ、イソシアネート基が減少したのを確認した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート350部を仕込み、70℃で反応させ、イソシアネート基を完全に消滅させてウレタンアクリレートを合成した。次いで、このウレタンアクリレートと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとを97:3重量部で配合したものを、アクリルフィルムの表面にスクリーン印刷して紫外線硬化性樹脂層を形成した。
【0032】
その後、紫外線硬化性樹脂層の表面に、まず波長が254±20nmである短波長の紫外線を照射し、その3秒後に紫外線硬化性樹脂層の全体に波長が350±20nmである長波長の紫外線を照射した。具体的には、第1の紫外線照射部および第2の紫外線照射部でのフィルムの移動速度を10m/分とし、フィルムの第1の紫外線照射点と第2の紫外線照射点との間隔を85cmとした。以上のようにして、印刷フィルムを作製した。
【0033】
次に、360〜390℃に10秒程度加熱してアクリルフィルムを軟化させた印刷フィルムを、紫外線硬化性樹脂層の印刷表面が金型に圧着するように真空形成し、次いで、印刷フィルムの印刷絵付け層側からアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を射出成形し、本発明の樹脂成形体を製造した。この際のシリンダー温度:240度、射出圧:1800kg/cm2、保圧:1400kg/cm2(2秒)、1000kg/cm2(2秒)であった。
【0034】
図4は、製造した本発明の樹脂成形体である。紫外線硬化性樹脂層が設けられた領域が奥に見え、紫外線硬化性樹脂が設けられていない領域が手前に見えている。しかしながら、この樹脂成形体は、最表面に位置する紫外線硬化性樹脂層表面と熱可塑性フィルム表面とが略平坦であるため、凹凸の無い手触り感の優れた表面が形成されている。すなわち、本発明の樹脂成形体は、立体感(奥行き感)といった高度な意匠性を表現している。
【0035】
<比較例1>(原着インジェクション)
樹脂基材用の樹脂をそのままインジェクション成形し、比較例1の樹脂成形体を製造した。
<比較例2>(カラーミックスインジェクション)
塗料を混ぜ合わせた樹脂基材用の樹脂をインジェクション成形し、比較例2の樹脂成形体を製造した。
<比較例3>(インジェクション+塗装)
比較例1の樹脂成形体に塗装を施して、比較例3の樹脂成形体を製造した。
【0036】
<比較例4>(インジェックション+水転写フィルム)
所望の柄模様を印刷した水溶性のフィルムを水の入った容器に浸けてフィルムを溶かし、インクが水面に浮いたところに、予め水中に沈めておいた比較例1の樹脂成形体を持ち上げて成形体表面にインクを付着させ、比較例4の樹脂成形体を製造した。
【0037】
<比較例5>(インジェクション成形・印刷フィルム同時貼り(現行印刷フィルム))
印刷フィルムを予め内側に圧着させた金型を用いてインジェクション成形を行うことによって、インジェクション成形と同時に印刷フィルムを貼り付け、比較例5の樹脂成形体を製造した。
【0038】
上記の実施例1および比較例1〜5の樹脂成形体を用いて下記の評価を行い、その結果を表1に示した。
1.色柄模様
所望の絵柄、模様を樹脂成形体上に容易に表せるかを評価した。
○:印刷フィルムを用いるもの。
△:フィルムを用いずに樹脂成形体に直接色付けを行うもの。
×:全く絵柄等を表せないもの。
【0039】
2.立体感
樹脂成形体上に描かれた色柄模様が、立体的に目に映るか否かを評価した。
○:立体的に見えた。
×:立体的には見えなかった。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の実施例1の樹脂成形体では、色柄模様および立体感の両項目において優れた特性を示した。これに対し、従来技術の比較例では少なくともいずれかの項目が劣っていた。詳細に見ていくと、色柄模様に関しては、比較例4および5は実施例1と同様、印刷フィルムを使用するため複雑な柄模様等を工業的に簡易に作り出すことができるが、比較例3は絵柄を描くことは可能であるものの大変手間がかかり、工業的には適さない。また、比較例2は塗料の混ぜ方によりマーブル模様のような模様を作成することができるものの一定の模様を作成することはできず、比較例1に至っては樹脂そのものの色であり、柄の表現は不可能である。さらに、立体感に関しては、色柄模様が立体的に見えるような高度な意匠性を有するものは比較例には無かった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、立体感が得られ、高度な意匠性を表現できる樹脂成形体を得ることができるのはもちろんのこと、そのような樹脂成形体の製造に使用する印刷フィルムの低廉な製造を可能とすることでき、これにより本発明は、好適な樹脂成形体の製造が実現される点で有望である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の装置による紫外線硬化性樹脂層への紫外線照射態様を示す図である。
【図2】 本発明の紫外線照射部を有するスクリーン印刷装置を示す図である。
【図3】 本発明の樹脂成形体の製造方法の各工程を説明する図である。
【図4】 本発明の樹脂成形体の一実施形態を示す写真である。
【符号の説明】
10…フィルムの送出し部、11…スクリーン印刷部、12…第1の紫外線照射部、13…第2の紫外線照射部、14…フィルムの巻取り部。
Claims (3)
- 熱可塑性フィルムの裏面に絵付け印刷して印刷絵付け層を形成する工程と、
前記熱可塑性フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂を印刷して紫外線硬化性樹脂層を形成する工程と、
前記紫外線硬化性樹脂層に、第1の波長の紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂層の表面部を硬化する工程と、
次いで、前記紫外線硬化性樹脂層の全体を上記第1の波長よりも長い第2の波長の紫外線照射により硬化させる工程と、
前記紫外線硬化性樹脂層を前記熱可塑性フィルム中に埋没させるとともに、前記印刷絵付け層の前記紫外線硬化性樹脂層が設けられた領域に対応する領域とその他の領域との間で表面からの距離に差が生じるように、上記積層体の前記印刷絵付け層側に樹脂基材を成形して一体化する工程とを有する樹脂成形体の製造方法であって、
上記樹脂成形体の最表面に位置する埋没した紫外線硬化性樹脂層表面と上記熱可塑性フィルム表面とが平坦であることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。 - 前記第1の波長の紫外線と第2の波長の紫外線との照射間隔を3秒以上としたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
- 前記樹脂基材の成形方法を真空成形、圧空成形、射出成形型内同時加飾成形、押出し成形同時貼りのいずれかとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。
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