JP3948698B2 - 可逆性感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。しかし、これら実用化されている従来の記録媒体は環境問題上、リサイクルや使用量の減量化などの見直しが迫られているが、不可逆的な発色であるため、一度記録した画像を消去して繰り返し使用することはできないし、新しい情報は画像が記録されていない部分に追記されるぐらいで記録可能な部分の面積は限られている。そのため、記録する情報量を減らしたり、記録エリアがなくなった時点でカードを作り直しているのが実状である。そこで、近年盛んに論じられているゴミ問題や森林破壊問題を背景に、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれている。
【0003】
これらの要求から様々な可逆性感熱記録媒体が提案されてきた。たとえば、透明・白濁という物理的変化を利用した高分子タイプの可逆性感熱記録媒体が特開昭63−107584号公報、特開平4−78573号公報などに開示されている。また、新たに化学的変化を利用した染料タイプの可逆性感熱記録媒体も提案されている。具体的には、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組み合わせを用いる特開昭60−193691号公報、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いる特開昭61−237684号公報、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有する特開昭62−138556号公報、特開昭62−138568号公報および特開昭62−140881号公報、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いた特開昭63−173684号公報、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いる特開平2−188293号公報および特開平2−188294号公報などが開示されている。
【0004】
さらに本発明者らは、先に特開平5−124360号公報において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行わせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造の使用(特開平6−210954公報に記載)が提案されている。
【0005】
しかし、いくらこのような可逆性感熱記録媒体を提案しても、PETなどの合成樹脂フィルムを支持体として用いることは、ゴミ問題や環境問題を考慮すると説得力に欠ける。そこで、感熱紙に用いられているような上質紙を可逆性感熱記録媒体の支持体として用いれば、フィルムに比べ環境への負荷は低減され、更に、低コスト化・軽量化が可能であると考えられる。しかし、このような紙ベースの可逆性感熱記録媒体の試みは非常に少ないのが現状である。なぜなら、可逆性感熱記録媒体としての用途が例えばポイントカードのようなカード類が中心であり、これらは財布やバックに入れて持ち歩くことが多いため、折れたり、破れたりしにくいPETフイルムの基質のもののほうが好ましく用いられているためである。
【0006】
しかし近年、パソコンの急速な普及に伴って試し打ち印刷による普通紙の消費が増加し、新たな問題を引き起こしている。そこで、例えばA4サイズのような大判で何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体が提案されれば、試し打ち印刷や1回閲覧しただけで廃棄してしまうような普通紙の消費を減らすことができる。しかも、このような場合には支持体がPETフイルムである必要はなく、安価で環境に優しい紙を支持体として用いることが可能となってくる。
【0007】
本発明者らは、例えばA4サイズのような大判で紙ベースの可逆性感熱記録媒体について検討を行なった結果、紙特有のカールやクラックなど、いままでの可逆性感熱記録媒体では考えられない新たな課題が発生し、改善していく必要が出てきた。
実際、多くのカール防止策として、紙をベースとする水系感熱記録媒体やフィルムをベースとする溶剤系感熱記録媒体(特開平8−290660号公報、特開平8−318675号公報に記載)において、支持体に対して感熱層面とは反対側にカール防止層を設けることが提案されている。
【0008】
しかし、これらの提案は、ある特定の水系樹脂、アクリル樹脂や紫外線および/または電子線硬化性樹脂を設けることを特徴としているが、カールの原理は、表と裏の膨張率の差例えば吸湿膨張係数或いは温度膨張係数の差と塗膜強度の差によって決まる。すなわち、記録層面側の処方、層構成、膜厚などが変わればカール防止層も同様に変更を余儀なくされているのが現状である。また、紙ベース自身を規定することで繰り返し使用してもカールの発生が少なくなるという提案(特開平8−85256号公報に記載)がされているが、繰り返し使用においても十分な耐久性が得られる塗膜を塗布した場合、表と裏の引っ張り強度バランスが崩れ、上記問題点を解決するものではない。
【0009】
また、クラック防止策としては以下のような提案がされている。繰り返し使用による力学的ストレスで媒体表面の印字箇所にクラックが発生するので、これを改善する提案(特開平11−334220号公報に記載)や、また、積層塗工していくと層間の熱収縮ストレスの違いによりクラックが発生するので、これを改善する提案(特開平8−099469号公報に記載)がされている。しかし、本発明者らが解決しようとしているクラックとこれらのクラックとは性質が大きく異なる。本発明者らのクラックは紙特有の折り曲げや、あちこちにぶつかったときに生じるクラックを意味し、上記提案によって解決されるものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、カールを防止し、且つ、クラックの発生しにくい、繰り返し使用によっても記録媒体への打こんの発生のない耐久性に優れた可逆性感熱記録媒体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題を解決するための検討を行なった結果、可逆性感熱記録層側の塗膜強度がある条件を満足することにより耐久性や耐クラック性が優れ、更に可逆性感熱記録層側およびカール防止層側それぞれの塗膜強度がほぼ等しくなることによりカールの条件が抑えられ、かかる目的を達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、基紙上に電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態を形成しうる可逆性感熱組成物を含有する可逆性感熱記録層を設けて成る可逆性感熱記録媒体において、該可逆性加熱記録層上に保護層を設け、該基紙の可逆性感熱記録層とは反対側にカール防止層を設け、かつ該可逆性感熱記録層および該カール防止層および該保護層に用いられるバインダー樹脂が、硬化剤によって架橋状態にあり、該樹脂を硬化させる硬化剤が、イソシアネート系硬化剤であり、しかも該可逆性感熱記録層側および該カール防止層側それぞれの剛体振り子自動減衰振動法より測定される粘弾性対数減衰率のピーク温度が100℃以上150℃未満、かつピーク温度における対数減衰率が0.05以上0.30未満であることによりカールを防止し、且つ、クラックの発生しにくい、繰り返し使用によっても記録媒体への打こんの発生のない耐久性に優れた可逆性感熱記録媒体が得られることを見い出した。
【0013】
本発明において、可逆性感熱記録層側および該カール防止層(以下、バック層とも云う。)側それぞれに用いられる材料は高分子材料に属するが、一般的に、高分子材料の化学構造はガラス転移温度Tgと融点Tmに同様な影響を与え、経験的に、非対象性高分子ではTgがTmのほぼ2/3(但しTは絶対温度)、対象性高分子ではTgがTmのほぼ1/2になることが知られている。そして、高分子材料の融点Tmは、
Tm=(Hl−Hc)/(Sl−Sc)=ΔHf/ΔSf
(Hはエンタルピー、Sはエントロピー、添字l、cは融点(絶対温度)におけるそれぞれ液体、固体、添字fは溶融状態)で表わされる。
【0014】
高分子の構造がそのガラス転移点、融点に及ぼす影響の概略は極く定常的に知られているものであり、例えば、上式において融点Tmのパラメータであるエンタルピー変化量(典型的には例えば個々の基相互の凝集時に放出される発熱量であって加熱時には潜熱の形で吸収される内部熱)ΔH、及び、エントロピー変化量(典型的には例えば分子を構成する部位同士の相互排斥作用による位置エネルギーの変化量)ΔSと、高分子の構造との間に相関関係があり、例えば、ΔHfは主に側鎖に位置する基の種類により左右され、水素結合をつくる−CONH−、−NHCOO−、−OHなどが側鎖に導入された場合や双極子相互作用のある−CN基、ハロゲン化炭化水素基などが導入された場合には、加熱すると、与えられた外部エネルギーは先ずこれらの水素結合や双極子相互作用を解くための潜熱として吸収されるので、上式中のΔHfが大になってTmが上昇することが経験的に知られ、一方、ΔSfは高分子の一次構造を主に支配する主鎖が剛直であるか或いはたわみ易いかというコンホメーション変化の難易度や分子量等と相関関係があり、例えば、たわみ易さに富み大きな屈曲性を付与する−CH2−構造や−C−O−C−構造が主鎖に存在する場合には分母のΔSfが大であるのでTmが低下するが高分子の一次構造としての主鎖のへリックス構造(らせん構造)の径が大きいときなどには高分子一次構造が剛直になり、ΔSfが小さくなりTmが上昇すること等が経験的に知られ、したがって、例えば図14に示されるような概念が、経験的に知られ、理想的な可逆性感熱記録媒体用樹脂はゴム状またはペースト状物質と繊維物質の中間のごく狭い領域のものであると考えられ、図14、図15及び図16に示されるような高分子の物性と対比して考慮することができる。
【0015】
しかしながら、図14に示されるような大まかな概念が常に可逆性記録媒体用の大多数の高分子材料に当て嵌まる訳ではない。
つまり、可逆性感熱記録媒体の場合には、画像発色性、画像消色性、ヘッドマッチング性、耐カール性等々についても満足しなければならず、また、可逆性感熱記録媒体製造時の諸特性も満足しなければならず、したがって、ΔSやΔHだけでなく、高分子の分子量やその分布(例えば混在する小さい分子量の高分子の末端基の影響や小さい分子量の高分子の溶媒としての作用)、レオロジー、表面張力等に依存する問題も考慮しなければならない。
しかしながら、例えば図17、図18のグラフから理解されるように、水系エマルジョンを硬化したものは一般的に対数減衰率のピーク温度がない場合が多い。また、塗料用硬化皮膜は一般的に極く厚く、層内部と層表面とで硬化状態が異なるので対数減衰率のピーク温度が複数生じ勝ちである。
【0016】
そして、通常の熱可塑性樹脂はピーク温度(換言すればTg)が100℃未満のものが大部分であり100℃以上150℃未満のものは特殊である。また、本発明においては、架橋樹脂を用いるものであり、架橋度を注意深く調節する必要がある。ピーク温度が150℃以上のものも特殊(Tgはポリエチレンで-125℃、ポリジメチルシロキサンで-123℃、ポリブタジエンで-90℃、イソプレンで-73℃、イソブチレンで-60℃、ポリオキシメチレンで-50℃、ポリフッ化ビニリデンで-35℃、ポリプロピレンで-18℃、ポリ塩化ビニリデンで-17℃、ポリアクリル酸メチルで3℃、ポリ酢酸ビニルで29℃、ナイロン66で50℃、ナイロン6で50℃、ニトロセルロースで53℃、ポリエステルでは高TgのPETでも69℃、トリアセチルセルロースで69℃、ポリフッ化ビニルで73℃、ポリビニルアルコールで85℃、ポリ塩化ビニルで87℃であり、100℃以上のものとしてはフエニル基が頻度高く存在するため主鎖セグメントが剛直で高Tgであるはずのポリスチレンで100,105℃、強力な極性基が頻度高く存在するため主鎖セグメントの回転が阻害され高Tgであるはずのポリアクリロニトリルで104,130℃、ポリメタクリル酸メチルで105,120℃、ポリビニルホルマールで105℃、ポリテトラフルオロエチレンで126℃、ポリカーボネートで150℃で、これより高いTgのもの(Tgが150℃以上のもの)はポリアリール樹脂樹脂のような所謂エンプラの範疇に属するものが多く、フエニル基及び/又は極く強力な極性基(例えば-CN基,-OH基,-CONH-部位等)が頻度高く存在するものである必要がある)である。一方、剛体振り子自動減衰振動法によれば、実際的かつ明確に、可逆性感熱記録媒体の望ましい特性を把握することができる。
【0017】
以下、本発明の可逆性感熱記録媒体について更に詳しく説明する。
本発明における剛体振り子自動減衰振動法によって測定される対数減衰率は、塗膜の硬さや柔軟性の度合いを表わし、値が小さいほど架橋密度が緻密で塗膜の剛直性を表している。また、対数減衰率のピーク温度はガラス転移温度Tgを表わし、Tg点が高いほどポリマー主鎖が剛直で、かつ、ガラス状態からゴム状態へ転移する時の温度が高いことを表わしている。以上のことより、繰り返し耐久性を向上させるには、塗膜が柔らかくてもガラス転移温度が高いか、ガラス転移温度が低くても塗膜に剛直性があればよい。すなわち、可逆性感熱記録層側の対数減衰率のピーク温度が100℃以上150℃未満、かつピーク温度における対数減衰率が0.30未満の粘弾性物性値の関係を満たすことが重要であり、これにより繰り返し使用によっても記録媒体への打こんの発生のない耐久性に優れた可逆性感熱記録媒体が得られる。
【0018】
また、耐クラック性を向上させるには、逆に塗膜の硬さや柔軟性の度合いを表わす対数減衰率が大きいほどよい。すなわち、対数減衰率が大きいほど塗膜の柔軟性を表わし、可逆性感熱記録層側の対数減衰率が0.05以上のとき、耐クラック性に優れた可逆性感熱記録媒体が得られる。以上より、耐クラック性と繰り返し耐久性の両方を向上させるには、可逆性感熱記録層側の対数減衰率のピーク温度が100℃以上150℃未満、かつピーク温度における対数減衰率が0.05以上0.30未満の粘弾性物性値の関係を満たすことが重要である。
【0019】
次に、基材が紙の場合、ある湿度条件下では、紙の繊維が水分によって繊維断面方向に膨張や収縮が起こりやすい。そして、各面の吸湿膨張係数が異なればそれがカールの現象につながるという問題が発生する。紙がカールを起こす要因としては、(1)紙の厚さ方向に乾燥ムラが生じる、(2)紙の表と裏の繊維配向性の違い、(3)片面コーティング、などが挙げられる。そこで、カールコントロールとしては、(1)強制的にカールする方向と反対側に加重をかける、(2)両面コーティングを行なう、(3)水や水蒸気を利用する、などが挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる可逆性感熱記録層は、繰り返し耐久性が強く求められるので、用いられる樹脂の平均分子量が大きかったり、ガラス転移温度が非常に高かったり、また架橋により密度を上げたりしている。そのため、いくら紙自身のカールをコントロールしても、可逆性感熱記録層に用いられるバインダー樹脂自身の強い引っ張り強度が大きな影響を及ぼすことが判った。そのため、カールについては、紙のカールコントロールより塗膜の強度コントロールに重点を置く必要がある。
【0021】
そこで、従来技術では、バック面に特定の紫外線および/または電子線硬化性樹脂やアクリル樹脂を設けることによりカールを防止することができることが開示されている。しかし、記録層面側の処方、層構成、膜厚などが変わればカール防止層も同様に変更を余儀なくされる。すなわち、カール防止層に用いられる樹脂や材料を特定することは必ずしも全ての条件を満足させることはできないということである。全ての条件を満足させるには、表側と裏側の持つ塗膜強度をほぼ等しくさせるということである。すなわち、記録層側の剛体振り子自動減衰振動法によって測定される対数減衰率およびガラス転移温度Tgが、カール防止層のそれとほぼ等しくなればカールしないと考えられる。このことから、記録層面側の処方・層構成・膜厚などが変更になっても、あるいはカール防止層の処方・層構成・膜厚などが変更になっても上記条件を満たせばカールの発生しにくい、繰り返し使用によっても記録媒体への打こんの発生のない耐久性に優れた可逆性感熱記録媒体が得られる。
【0022】
本発明における対数減衰率は次の方法により測定される。
測定装置:
(株)エー・アンド・ディ製の剛体振り子型物性試験器RPT−3000
【0023】
剛体振り子:
丸棒型シリンダーエッジRBP−040と剛体振り子FRB−100の組み合わせ
【0024】
試料:
任意の支持体上に、可逆性感熱記録層側またはカール防止層側に用いる層をそれぞれ塗工する。そして、該サンプルを巾20mm、長さ25mmに裁断する。(すでに製品になっている記録媒体の場合は、それぞれの表側と裏側を測定しても問題なく、同様の結果が得られる。)
【0025】
測定手順:
試料を加熱・冷却ブロック上に設置し、シリンダーエッジRBP−040を試料測定面上に乗せる。次に振り子の振動を開始し、9℃/分の昇温速度で25℃から200℃まで加熱する。
【0026】
解析:
この振り子の自由振動周期および振動振幅を解析し、測定温度毎の対数減衰率を求め、対数減衰率曲線にプロットする。対数減衰率曲線が最大値を示す温度を対数減衰率のピーク温度とする。また、この温度における対数減衰率をピーク温度における対数減衰率とする。
【0027】
本発明において用いられるロイコ染料としては、この種の可逆性感熱記録媒体に用いられる化合物を1種または2種以上で用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体が挙げられる。
【0028】
また、本発明において用いられる顕色剤としては、代表例として、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報などに記載されている化合物である。ここで用いる顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させる顕色能をもつ構造、たとえばフェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基などと、分子間の凝集力を制御する構造、たとえば長鎖炭化水素基が連結した構造を一つ以上もつ化合物である。連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していても良く、また長鎖炭化水素基中にも同様の連結基および/または芳香族基が含まれていても良い。このような可逆性顕色剤の具体例はたとえば特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報に記載され、1種または2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
本発明における可逆性感熱記録層には、必要に応じて塗布特性や発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、たとえば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤などがある。
【0030】
本発明における可逆性感熱記録層には、図1に示すプロセスで発色・消色する。初期の消色状態(A)を加熱すると温度T1以上でロイコ染料と顕色剤が溶融混合して発色し(B)、この状態を急冷すると発色状態が固定される。発色状態(C)を加熱すると、発色温度より低い温度T2で消色し、冷却すれば初期と同様の消色状態となる。このように記録層は加熱温度および加熱後の冷却速度の制御によって記録消去ができる。
【0031】
本発明における可逆性感熱記録層は、ロイコ染料、顕色剤、種々の添加剤をバインダー樹脂とともに形成される。このとき用いられる樹脂は、支持体上にこれらの材料を結着でき、繰り返し時の耐久性を向上させるため、イソシアネート系硬化剤を用い、熱によって硬化可能な樹脂が用いられ、とくにイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化型の樹脂、例えばアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが特に好ましく用いられる。記録層中の発色成分と樹脂の割合は、発色成分1に対して0.1から10が好ましく、これより少ないと記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。また、本発明におけるバインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶け出し溶質中には残らなくなるためである。
なお、本発明にて支持体として用いられる紙としては、坪量50g/m2〜180g/m2の塗工紙、非塗工紙が用いられ、特に好ましくは80g/m2〜140g/m2のものが用いられる。塗工紙の場合は軽量コート紙、コート紙、アート紙等が用いられ、塗料塗布量20g/m2程度から5g/m2程度以下のものが広く用いられる。また、基紙中に用いられるパルプの種類、てん料等は公知のものが広く用いられる。
【0032】
本発明における可逆性感熱記録層は、ロイコ染料、顕色剤、種々の添加剤、バインダー樹脂ならびに塗液溶媒よりなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液を用いて形成する。塗液調製に用いられる溶媒の具体例としてはアルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を例示することができるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0033】
塗液調製はペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等公知の塗液分散装置を用いて行なうことができる。また、上記塗液分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散しても良いし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせても良い。更に加熱溶解して急冷または除冷によって析出させても良い。
【0034】
本発明における塗工方法については特に制限はなく、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法を用いることができる。
【0035】
本発明に用いられるカール防止層は、上記記載の溶媒、バインダー樹脂とともに、有機/無機フィラー、滑剤、着色顔料などを用いることができ、上記記載の分散装置、塗工方法を用いて塗膜を作製することができる。
【0036】
これらの層中には、上記記載の溶媒、バインダー樹脂とともに、有機/無機フィラー、紫外線吸収剤、滑剤、着色顔料などを用いることができ、上記記載の分散装置、塗工方法を用いて塗膜を作製することができる。
無機フィラーの具体例としては、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられ、有機フィラーの具体例としては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などを有する化合物が挙げられる。滑剤の具体例としては、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類などが挙げられる。ただし本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0037】
本発明において、Tg100℃以上150℃未満のものは、例えば比較的柔軟な被架橋性材料と架橋剤との適当量の組み合わせにより、都合よく達成することができる。本発明におけるカール防止塗布層の厚みは、支持体等によっても異なるが、一般的に50g/m2乃至0.10g/m2であることが好ましい。50g/m2を超える厚さにしてもそれに応じてカール防止効果が更に上昇するということがない場合があるだけでなく、層表面と層内部とで架橋度や性質が異なる場合が生じ得る。また、0.10g/m2未満の塗布量ではカール防止効果が生じないことがある。
【0038】
また、本発明においては発色感度の向上、耐久性の向上、耐光性の向上等のために上記記載のバインダー樹脂を用いた保護層を設ける。また同様の目的のためにアンダー層などを設けても良い。また、記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層に含まれる材料が記録層へ移行する、あるいは、記録層に含まれる材料が保護層へ移行することを防止する目的で、両者の間に中間層を設けても良い。
【0039】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、熱可逆性記録部と情報記録部の両方を設けることにより、情報記憶部に記憶された情報を熱可逆性記録部に表示することで、特別な装置がなくても情報を確認することができ、利便性が向上する。その際に用いられる記憶部は磁気記録層やIC記録部などが好ましく用いられる。
【0040】
また、これらのものはその用途に応じた形に加工することができ、カード状、シート状、ロール状などに加工される。カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカードさらにはクレジットカードなどへの応用が挙げられ、A4サイズなど一般文書サイズに加工されたシート状のものは、印字/消去装置を用いることにより、試し印字はもちろんのこと、回覧文書や会議資料など一時出力用途などに広く用いることができる。さらに、ロール状に加工されたものは、印字/消去部を有した装置に組み込まれるなどして、表示板・掲示板または電子黒板に用いることができる。このような表示装置は塵、ゴミなどの発生がないため、クリーンルームなどに好ましく用いることができる。
【0041】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、非可逆の感熱記録層を併用しても良く、このときそれぞれの記録層の発色色調は同じでも異なっても良い。また、本発明の可逆性感熱記録媒体の一部分もしくは全面に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、またはインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けても良く、さらに着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けても良い。これらの支持体は可逆性感熱記録層と同一面および/または反対面に磁気記録層を有していても良い。
【0042】
【発明の実施の形態】
而して、本発明の可逆性感熱記録媒体が書換可能なバーコードを設けたものである場合は、感熱層の背面に光を正反射する層を設けることが好ましい。光を正反射する層を設けることにより、白濁部の白濁度が向上し、ひいてはコントラストが向上し、バーコードの読み取り精度を向上させることができる。
【0043】
本発明の可逆性記録媒体が、書換可能なバーコードと人間が目視で認識する画像、文字、数字などの両方を設けたものである場合には、反射率の異なる2種以上の部位からなるものとすることができる。すなわち、書換可能なバーコードの背面には、上述の光を反射する層を設け、人間が目視する部位の背面には光を吸収する層、つまり着色層を設けることが好ましい。というのは、人間が目視する場合には、例えば白濁状態の画像部と着色状態の非画像部とは光量差に加えて色調差があり、かつ、目視する角度によっては非画像部からの過度の反射光によるグレアがなくなるので可逆的可視像を目視し易くするが、一方、これを反射濃度計やバーコード読取り装置のような装置で読み取る場合には、通常、光を斜めから入射させ面に対し垂直方向にセンサーを置き読み取ることになり、これは、とりもなおさず、着色層により可視光の少なくとも一部が吸収されコントラストが低くなった結果を計測するに過ぎないためである。したがって、本発明の可逆性感熱記録媒体における着色層は、可視光に対する反射率の異なる2種以上の部位からなり、かつ、その少なくとも一方の部位が可視光を吸収する層であり、他の少なくとも一部が可視光を反射する層からなるものとして、目視でも画像を認識しやすく、かつ、装置による測定でも高コントラストが得られるものとすることができる。
【0044】
例えば、本発明の可逆性感熱記録媒体は図2(a)に示されるように、支持体(11)上に、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルム、図2(b)に示されるように、支持体(11)上に、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設け支持体(11)の裏面に磁気記録層(16)を設けてなるシート又はフィルムとすることができ、また、磁気記録層(16)上にバック層(15)を設けることができ、磁気記録層(16)にバック層(15)と同様な機能を同時に与えることによりバック層(15)を省略することができる。そして、これらシート又はフィルムを図3に示されるように、印刷表示部(19)を有する例えばA4版のシート(18)に加工した形であることができ、この場合、磁気記録部(20)は、シート(18)の1部領域のみ、又は全領域に設けることができる。
【0045】
さらに、例えば図4(a)に示されるように、支持体(11)上に、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムをシート状に加工し、ICチップを納める窪み部(23)を形成するとともにシート状に加工した形であることができる。この例においては、シート状の可逆性感熱記録媒体に印刷表示部(19)が設けられるとともに、可逆感熱記録媒体の裏面側には所定箇所にICチップ埋め込み用窪み部(23)が形成されており、この窪み部(23)に、図4(b)に示されるようなウェハ(231)が組み込まれて固定される。ウェハ(231)は、ウェハ基板(232)上に集積回路(233)が設けられると共に、この集積回路(233)に電気的に接続されている複数の接触端子(234)がウェハ基板(232)に設けられる。この接触端子(234)はウェハ基板(232)の裏面側に露出しており、専用のプリンタ(リーダライタ)がこの接触端子(234)に電気的に接触して所定の情報を読み出したり書き換えたりできるように構成されている。この可逆感熱記録シートの1つの機能例を、図5を参照しつつ説明する。
【0046】
図5(a)は、集積回路(233)を示す概略の構成ブロック図であり、図5(b)はRAMの記憶データの1例を示す構成ブロック図である。集積回路(233)は、例えばLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU(235)と、CPU(235)の動作プログラムデータを格納するROM(236)と、必要なデータの書き込み及び読み出しができるRAM(237)を含む。さらに集積回路(233)は、入力信号を受けてCPU(235)に入力データを与えるとともにCPU(235)からの出力信号を受けて外部に出力する入出力インターフェース(238)と、図示していないが、パワーオンリセット回路、クロック発生回路、パルス分周回路(割込パルス発生回路)、アドレスデコーダ回路とを含む。CPU(235)は、パルス分周回路から定期的に与えられる割込パルスに応じて、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路はCPU(235)からのアドレスデータをデコードし、ROM(236)、RAM(237)、入出力インターフェース(238)にそれぞれ信号を与える。入出力インターフェース(238)には、複数(図中では8個)の接触端子(234)が接続されており、前記の専用プリンタ(リーダライタ)からの所定データがこの接触端子(234)から入出力インターフェース(238)を介してCPU(235)に入力される。CPU(235)は、入力信号に応答して、かつROM(236)内に格納されたプログラムデータに従って、各動作を行い、かつ、所定のデータ、信号を入出力インターフェース(238)を介してシートリーダライタに出力する。
【0047】
図5(b)に示されるように、RAM(237)は複数の記憶領域(239a)〜(239g)を含む。例えば領域(239a)にはシート番号が記憶され、(239b)には例えばシート管理者の氏名、所属、電話番号等のIDデータが記憶され、領域(239c)には例えば使用者の使用しうる残存余白又は取り扱いに関する情報が記憶され、領域(239d)(239e)(239f)及び(239g)には前管理責任者、前使用者に関する情報が記憶される。
【0048】
本発明の可逆性感熱記録媒体の印字は、通常の感熱記録と同様にサーマルヘッドで行なうことができ、消去は温度制御されたヒートローラ、セラミックヒータ等の発熱体およびサーマルヘッドなどによってできるため、小型で簡易な書き替え記録装置を使用することができ、例えば、図6、図7及び図8のような装置とすることができる。
【0049】
図6の可逆性感熱記録装置においては、感熱層の反対側に磁気記録層を設けた可逆性感熱記録媒体(1)は往復の矢印で図示されている搬送路に沿って搬送され、或いは搬送路に沿って装置内を逆方向に搬送される。可逆性感熱記録媒体(1)は、磁気ヘッド(34)と搬送ローラ(31)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間で像消去のため加熱処理され、サーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間で像形成され、その後、装置外に搬出される。先に説明したように、セラミックヒータ(38)の設定温度は110℃以上が好ましく、112℃以上が更に好ましく、115℃以上が特に好ましい。ただし磁気記録の書きかえはセラッミックヒータによる画像消去の前であっても後であってもよい。また、所望により、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間を通過後、又はサーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間を通過後、搬送路を逆方向に搬送され、セラミックヒータ(38)よる再度の熱処理、サーマルヘッド(53)による再度の印字処理を施すことができる。
【0050】
図7の可逆性感熱記録装置においては、出入口(30)から挿入された可逆性感熱記録媒体(1)は一点破線で図示されている搬送路(50)に沿って進行し、或いは搬送路(50)に沿って装置内を逆方向に進行する。出入口(30)から挿入された可逆性感熱記録媒体(1)は、搬送ローラ(31)及びガイドローラ(32)により記録装置内を搬送され、搬送路(50)の所定位置に到達するとセンサ(33)により制御手段(34C)を介してその存在を認識され、磁気ヘッド(34)とプラテンローラ(35)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、ガイドローラ(36)及び搬送ローラ(37)間を通過し、ガイドローラ(39)及び搬送ローラ(40)間を通過し、センサ(43)により、セラミックヒータ制御手段(38C)を介してその存在を認識して作動するセラミックヒータ(38)とプラテンローラ(44)間で像消去のため加熱処理され、図示していない回転制御手段により制御(停止を含む回転速度及び回転方向の制御)される搬送ローラ(45)(46)(47)により搬送路(50)内を搬送され、所定位置にてセンサ(51)により、サーマルヘッド制御手段(53C)を介してその存在を認識して作動するサーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で像形成され、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)(図示していない回転手段により制御される)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出される。符号(38a)はセラミックヒーター(38)のための温度センサ、符号(53a)はサーマルヘッド(53)のための温度センサを示す。ここで、セラミックヒータ(38)の設定温度は、先に説明したように、110℃以上が好ましく、112℃以上が更に好ましく、115℃以上が特に好ましい。
【0051】
また、所望により、搬送路切換手段(55a)を切り替えることにより搬送路(56b)に導き、可逆性感熱記録媒体(1)の押圧により入力するリミットスイッチ(57a)の作動より逆方向に動き、かつ図示していない制御手段により回転速度が制御される搬送ベルト(58)によって、可逆性感熱記録媒体(1)を再度、サーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で熱処理した後、搬送路切換手段(55b)を切り替えることにより通じる搬送路(49b)、リミットスイッチ(57b)、図示していない制御手段により回転速度が制御される搬送ベルト(48)を介して順方向に搬送し、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出することができる。さらに、このような分岐した搬送路及び搬送切換手段は、セラミックヒータ(38)の両側に設けることもでき、その場合にはセンサ(43)をプラテンローラ(44)と搬送ローラ(45)の間に設けることが望ましい。
【0052】
図8に示される本発明の可逆性感熱記録媒体の記録装置及び記録方法は、上記の記録媒体の両面に設置された印字方向を示す標識を書き替え記録装置が検出し、それに従って記録装置が印字方向を決定し文書の印字を実施するものである。また、本発明の可逆性感熱記録(文書書替)装置は、可逆性感熱記録(文書書替)媒体でかつ両面に記録可能で、いずれの面も記録方向が限定されない可逆性感熱記録(文書書替)媒体を用いることができる記録(書替)装置であって、可逆性感熱記録(文書書替)媒体に表示または加工された標識の有/無を検出し、有のときに第2の検出機構を作動させるための標識有無信号を発する第1の信号検出機構と、該標識有無信号が入力されたときに作動して標識の向きを識別し、2種類の標識方向信号を発する第2の信号検出機構と、該2種類の標識方向信号のうちの1方の信号が入力されたときには印字手段に通じる前記第1の搬送路を開にし、他方の信号が入力されたときには閉にする搬送路切換手段と、該他方の信号が入力されたときに印字手段への通電回路を遮断する手段とを有する。
【0053】
即ち、図8に示される可逆性感熱記録(文書書替)装置においては、挿入口(70)から挿入された可逆性感熱記録媒体(71)は搬送ベルト(73)により第1の搬送路(72)に沿って搬送され、或いは第1の搬送路(72)又は(85)に沿って装置内を逆方向に戻送される。第1の搬送路(85)の途中には印字手段としてのサーマルヘッド(88)が設けられている。
まず、挿入口(70)から挿入された可逆性感熱記録媒体(71)は、搬送ベルト(73)及びガイドローラ(74)により記録装置内を搬送され、第1搬送路(72)の所定位置に到達すると、制御手段(75)を介する省略してもよい磁気記録層領域部分への磁気記録のための磁気記録装置の磁気ヘッド(76)とプラテンローラ(77)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、更に、搬送ベルト(78)により第1搬送路(72)を搬送される。所定位置にて、制御手段(80)を有する第1の信号検出機構としての第1センサ(79)を介して標識の存在の有/無が検出され、有のときには制御手段(82)を有する第2センサ(81)を作動させるための標識有無信号が発せられる。標識が有のときとは、既に可逆性感熱記録媒体(71)の第1面に文書情報及び標識が印字されている状態を意味する。
この標識有無信号は、第2の信号検出機構としての第2センサ(81)に入力され、これにより第2センサ(81)は作動して標識の向きを識別し、その結果、2種類の標識方向信号を発する。うち、可逆性感熱記録媒体(71)の向きが正しい方向であることを示す一方の標識方向信号は、搬送路切換手段(84)を図示してない稼動手段により稼動して、制御手段(87)を介して作動する印字手段としてのサーマルヘッド(88)に通じる第1の搬送路(85)を開にし第2の搬送路(92)を閉にする。また、可逆性感熱記録媒体(71)の向きが誤った方向であることを示す他方の標識方向信号は、第1の搬送路(72)を閉にし第2の搬送路(92)を開にする。さらに、他方の標識方向信号は、印字手段としてのサーマルヘッド(88)への図示してない通電回路のスイッチに入力され通電回路を遮断する。第1の搬送路(85)に搬送された可逆性感熱記録媒体(71)は、搬送ベルト(86)により搬送され、所定位置にてサーマルヘッドの制御手段(87)を介して作動するサーマルヘッド(88)及びプラテンローラ(89)間で像形成され、搬送ベルト(90)により第1の出口(91)を経て装置外に搬出される。
一方、標識のモニタの結果誤った向きに挿入され第2の搬送路(92)に搬送された既に第1面に文書情報及び標識が印字されている可逆性感熱記録媒体(71)は、可逆性感熱記録媒体(71)の押圧により入力するリミットスイッチ(93)の作動により逆方向に動き、且つ、図示していない制御手段により回転速度及び方向が制御される搬送ベルト(94)によって、第2の搬送路(92)を逆方向に搬送され、搬送路切換手段(84)を通過し、図示していない制御手段により回転速度及び方向が制御される搬送ベルト(78)、同様の搬送ベルト(73)により逆方向に搬送され、挿入口(70)より装置外へ搬出される(戻される)。このように、サーマルヘッド(88)は、可逆性感熱記録媒体(71)が、未記録媒体であると判断された場合、または、情報記録面、挿入方向が正しいと判断された場合にのみ、図示していない制御手段により通電が制御され、加熱される。
【0054】
図8の本発明の可逆性感熱記録(文書書替)装置においては、可逆性感熱記録媒体(71)が誤った向きに挿入されたときには、これを印字手段(88)に接触させることなく装置内から搬出するための手段を具備していることが好ましく、そのため、搬送路切換手段(84)は、印字手段(88)に通じる前記第1の搬送路(85)と、印字手段(88)をバイパスして装置外に記録媒体を搬出する第2の搬送路(92)との分岐点に設けられている。第2の搬送路(92)の搬送端は、第1の搬送路(72)又は(85)の第1の搬出口(91)に連らなっていてもよく、また、第1の搬出口(91)とは別の第2の搬出口を有していてもよい。
上記のように、第2の搬送路(92)には、ここに搬送された可逆性感熱記録媒体(71)を搬入口(70)の方向に逆送するための手段を設けることができ、その場合には第2の搬出口を設ける必要はない。さらに、可逆性感熱記録媒体(71)が誤った向きで挿入されたため第2の搬送路(92)に導びかれる場合には、節電目的及び装置内の残存熱の影響を受けないようにする等のため、印字手段(88)への通電回路を自動的に遮断することができる。
【0055】
図9には、先に説明した本発明の記録装置例に関連し、該装置における通電量微調整手段を有するセラミックヒーター及びサーマルヘッドのための制御回路の一例が示されている。この例においては、トランジスタ(TR11)とトランジスタ(TR12)とでセラミックヒーター(38)のための第1の自走マルチバイブレータを形成し、(TR11)と(TR12)とを交互に導通させ、トランスの1次側コイル(L11)への交番入力に対応する高電圧の2次誘導出力を2次側コイル(L21)に得、これを、負荷(R1)として抵抗(R1)と(R11)を有するセラミックヒーター(38)の電源とすることにより、パルス通電加熱を行なうものであり、また、この自走マルチバイブレータ回路の制御を、トランジスタ(TR1)と抵抗(Rx)と図7における温度センサ(38a)のサーミスタ(SM1)とで構成され、該自走マルチバイブレータ回路の負荷変動に対して負の入出力関係が成立する帰還回路により行なう。該自走マルチバイブレータについて付言すると、1方のトランジスタ例えば(TR11)が導通するとトランスの1次側コイル(L11)が通電し、その結果、2次側コイル(L21)には若干時間を置いて2次誘導出力を得てこれをヒータ源とすると同時にこの2次出力により、コイル(L11)にはまた若干時間を経て発生する3次誘導出力を得て、この時間を置いて得られた3次出力を今度は他方のトランジスタ(TR12)に帰還してこれを導通させることによりトランジスタ(TR12)の場合にもトランジスタ(TR11)の場合と同様の動作をさせ、以下交互にこの動作を繰り返させて、マルチバイブレータとするものである。コンデンサ(C1)は、回路中のコイル(L11)と共働して両トランジスタの導通時定数(即ちパルス通電頻度)を定めるためのものであり、また、この回路の電源には無論整流器(D)からの直流成分が充てられる。
【0056】
サーマルヘッド(53)、図7の温度センサ(53a)のサーミスタ(SM2)を含む第2の自走マルチバイブレータについても同様である。
スイッチ(SW)は、セラミックヒーター(38)を高発熱量(R1+R11)と低発熱量(R1のみ)に切換えることができ、またサーマルヘッド(53)を高発熱量(R2+R12)と低発熱量(R2のみ)に切換えることができるようになっている。
さらに、回路素子をサ−ジ電圧から保護するための従来公知の手段を組み合わせることができ、例えば、整流器(D)のための抵抗(R3)部分には突然の過電圧流から整流器(D)を保護するため、ツェナー破壊電圧に達すると導通するツェナーダイオードを抵抗(R3)+整流器(D)に並列配置することにより、過電流バイパス路を設けることができる。この回路装置の場合には、パルス出力であるという利点だけでなく、ダイオードと抵抗からなるような一般的な高時定数の逆起電力吸収回路を含まないという利点がある。
【0057】
図10には、本発明の前記装置における通電量微調整手段のさらに他の例が示されている。
図10における通電量調整手段(103)は本発明の記録(書替)装置を制御するための情報を入力するための入力手段(104)と、セラミックヒーター(38)を制御するための判定・比較手段(105)と、サーマルヘッド(53)を制御するための判定・比較手段(106)と、第1温度センサ(38a)のサーミスタ(SM1)と、第2温度センサ(53a)のサーミスタ(SM2)と、本発明の装置を制御するための書換装置制御手段(107)とセラミックヒーター(38)やサーマルヘッド(53)の積算時間の基準クロックを作るタイマ入力手段(108)と、セラミックヒーター(38)やサーマルヘッド(53)の積算時間をカウントしたり、零払いを行い再カウントするデータメモリ(109)と、第1温度センサ(SM1)及び第2温度センサ(SM2)からの情報やデータメモリ(109)からの情報等によりある一定のシーケンスで装置の加熱系全体を制御するコントローラ(110)と、そのシーケンスを記憶したメモリ(111)とで構成される。
【0058】
そして、コントローラ(110)には、タイマ入力手段(108)により入力されるクロック信号が取り込まれ、該クロック信号と判定・比較手段(105)によるセラミックヒーター(38)における加熱データが判定・比較手段(105)の出力温度信号として取り込まれると共に、該クロック信号と判定・比較手段(106)による印字用加熱データが判定・比較手段(106)の出力温度信号として取り込まれる。そして、ある一定のシーケンスを記憶するメモリ(111)からの信号により、コントローラ(110)が作動し、このコントローラ(110)によって、書換装置制御手段(107)がセラミックヒーター(38)へのパルス電通のためのセラミックヒーター用リレー(CR1)、及びサーマルヘッド(53)へのパルス通電のためのサーマルヘッド用リレー(CR2)を例えばON−OFF制御する。具体的には、コントローラ(110)は、メモリ(111)とデ−タメモリ(109)をも内蔵したワンチップマイクロコンピュータによって実現され、入力手段(104)は、制御入力スイッチ(113a)、(113b)によって入力信号をマイコンに入力する。また、セラミックヒーター(38)の判定・比較手段(105)としては、感温抵抗素子(SM1)とサーモボリューム(114)からなる直列回路の中間入力電圧と抵抗(115)、抵抗(116)の直列接続の中間電圧である基準電圧の比較検出を行なうコンパレータ(117)により判定・比較を行ない、セラミックヒーター(38)の現在温度が何度であるかをマイコン(125)へ「H」であるか「L」であるかのデジタル出力信号で入力する。抵抗(118)は温度設定を行なうサーモボリューム(114)にON点とOFF点を設けるためのサーモデファレンシャル値用の抵抗である。
【0059】
図11にて示されるように、この制御回路の電源回路は、交流電源(126)、整流器(D)、コンデンサ(129)等により構成されており、タイマ制御回路(130)は、マイコン(125)の内部のタイマ回路を制御するためのものである。同図において、マイコン(125)には、電源端子(VD)、入力スイッチ(113a)を介して判定・比較手段(105)を動作させる出力のための出力端子、入力スイッチ(113b)を介して判定・比較手段(106)を動作させる出力のための出力端子があり、また入力ポートとして、コンパレータ(117)の出力を入力するための入力ポート(AΦ)、コンパレータ(123)の出力を入力するための入力ポート(BΦ)、タイマ制御回路(130)の出力を入力するための入力ポート(CΦ)、出力ポートとして、トランジスタ(TR1)のベース電極へ出力するための出力ポート(DΦ)、トランジスタ(TR2)のベース電極へ出力するための出力ポート(EΦ)がある。マイコン(125)は電源端子(VD)からの直流電源にて動作を開始し、制御入力スイッチ(113a)、(113b)のON−OFF信号によって運転制御モ−ドを選択する。
【0060】
図11を参照して、マイコン内部の制御につき、制御入力スイッチ(113a)がONで(113b)がOFFの場合について説明すると、書換装置に通電を開始し、セラミックヒーター(38)が加熱されてサーモディファレンシャアル(△t)のOFF点に達したときには、コンパレータ(117)の出力が出る即ちマイコン(125)のAφポートに「L」信号が出る。それと同時に出力端子DφポートにはL(低)信号が出てリレー(CR1)を切断させ、タイマ入力手段(108)からのクロック信号をデータメモリ(111)内でカウントし、データメモリ(111)内でカウントした値、即ち通電停止時間が予め決められた初期設定時間(t1)を経過すると、DφポートにはH(高)信号を出して強制的にONして通電を開始する。これと同時にデータメモリ(109)内の積算時間を零にして次の通電時間の積算を始める。この通電時間が予め定められた一定期間(t0)を経過すると、DφポートにはL(低)信号が出てリレー(CR1)を強制的に切断させて通電を停止させる。本装置はこれによって、通電時間前(t0)と通電停止時間(t1)をそれぞれ予め調節設定することができ、また「この予めの調節設定」によってサーモディファレンシャアル(△t)のOFF点及びON点を定めることができ、而して、サーモディファレンシャアル(△t)の幅もOFF点とON点との差として予め選択することができる。
【0061】
この装置は、本発明の理解を容易にするため、判定・比較手段(105)、(106)及びコンパレータ(117)、(123)を別個なものとして説明したが、実際には、前記入力手段(104)を通じてマイコンに制御入力スイッチ(113a)をON−OFF制御させることによって、判定・比較手段(105)及びコンパレータ(117)と判定・比較手段(106)及びコンパレータ(123)の部分とを兼ねさせることができる。
【0062】
図12は、前記通電パルスとセラミックヒーター(38)の温度変化の様子を示す。
まず、前記位置検出センサ(43)の出力信号を基準にした加熱タイミングに合わせて、可逆性感熱記録媒体(1)が発色加熱用のセラミックヒーター(38)に到達する前に可逆性感熱記録媒体(1)を温度(T1)に通電してセラミックヒーター(38)を急加熱する。セラミックヒーター(38)は、可逆性感熱記録媒体が到達したときには記録媒体を温度(T1)まで加熱し発色し得る温度になっているので、後は連続した一定の通電パルスをセラミックヒーター(38)に印加してその温度を維持し、記録媒体を発色させる。
【0063】
この例では、上記通電パルスの周期(C)を10msとし、温度立ち上げ時には、通電時間Pを9msとして所定数の通電パルスを印加して全面発色加熱用のセラミックヒーター(38)の急速な昇温を行ない、セラミックヒーター(38)が可逆性感熱記録媒体を全面発色し得る温度になった時点で通電時間を2msとしてその温度を維持するように加熱し、可逆性感熱記録媒体(1)の長さ分に対応する数の通電パルスを印加した後に通電を終了させる。
【0064】
図13は、コントローラ(110)による通電パルスの処理内容を示す図である。一連の通電パルスのパルス数をNn、通電周期をCn、通電時間をPnとする。これらのデータ(Nn、Cn、Pn)は予めROM(リードオンリーメモリ)(141)に書き込まれており、ROMにコントローラ(110)からアドレス信号が与えられることによってデータ(Nn、Cn、Pn)が読み出され、レジスタ部(143)、データラッチ部(144)へ順次送られる。このレジスタ部(143)、データラッチ部(144)は、前記コントローラ(110)により制御され、データNnはNパルスカウンタ部(145)へ送られ、データ(Cn、Pn)は通電時間作成カウンタ部(146)へ送られる。
【0065】
この通電時間作成カウンタ部(146)は、データ(Cj、Pk)により1パルス分の通電時間を決定し、その出力データをドライバ部(147)に入力する。このドライバ部(147)は、通電時間データに応じた通電パルスを出力してセラミックヒーター(38)を駆動する。同時に、前記Nパルスカウンタ部(145)は、通電パルスの出力数をカウントし、データNiだけカウントした時点で前記コントローラ(110)へ信号を送る。
【0066】
これにより、前記コントローラ(110)は次のサイクルのアドレス信号を出力すると共に前記レジスタ部(143)、データラッチ部(144)を制御する。例えば、本発明においてはCn=10msで一定とし、温度立上げ時にはP0=9ms、N0=30とし、恒温制御時にはP1=2ms、N1=213〜215とすることができる。なお、各モードでの通電時間、パルス数は、予め収集されたデータに基づき設定されている。
【0067】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」および「%」はいずれも重量を基準とするものである。
実施例1
<記録層液の調整>
下記構造式の顕色剤 4部
【0068】
【化1】
ジアルキル尿素(日本化成社製、ハクリーンSB) 1部
アクリルポリオール50%溶液
(三菱レイヨン社製、LR503) 9部
メチルエチルケトン 70部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約1μmまでなるように粉砕分散した。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 2部
顕色剤を粉砕分散した分散液に上記組成物を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
【0069】
<保護層液の調整>
紫外線吸収性ポリマー(日本触媒社製、G−100) 21部
イソシアネート系硬化剤
(日本ポリウレタン社製、コロネートHX) 3部
フィラー(水澤化学社製、P526) 4部
シリコーンポリマー(日本油脂社製、FS700) 1部
メチルエチルケトン 30部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0070】
<バック層液の調整>
アクリルポリオール50%溶液
(三菱レイヨン社製、LR2506) 27部
イソシアネート系硬化剤
(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 9部
フィラー(水澤化学社製、P526) 2部
メチルエチルケトン 18部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0071】
<可逆性感熱記録媒体の作製>
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのコート紙上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間のキュアーを行なって膜厚約10g/m2の記録層を設けた。更に、上記組成の保護層塗布液を、該記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間のキュアーを行なって膜厚約3g/m2の保護層を設けた。更に、上記組成のバック層塗布液を、該記録層面側と反対の面上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間のキュアーを行なって膜厚約8g/m2のバック層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0076】
比較例1
<記録層液の調整>
下記構造式の顕色剤 3部
【0077】
【化2】
ジアルキル尿素(日本化成社製、ハクリーンSB) 1部
アクリルポリオール50%溶液
(三菱レイヨン社製、LR327) 9部
テトラヒドロフラン/メチルエチルケトン=1/1 70部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約1μmまでなるように粉砕分散した。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 3部
顕色剤を粉砕分散した分散液に上記組成物を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
【0078】
<保護層液の調整>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂
(大日本インキ社製、C7−157) 15部
炭酸カルシウム(4.4μm) 1部
酢酸エチル 85部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0079】
<バック層液の調整>
アクリルポリオール50%溶液
(三菱レイヨン社製、LR327) 27部
イソシアネート系硬化剤
(日本ポリウレタン社製、コロネート2030) 5部
イソシアネート系硬化剤
(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 5部
フィラー(水澤化学社製、P527) 2部
メチルエチルケトン 18部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0080】
<可逆性感熱記録媒体の作製>
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのコート紙上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間のキュアーを行なって膜厚約10g/m2の記録層を設けた。更に、上記組成の保護層塗布液を、上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚2μmの保護層を設けた。更に、上記組成のバック層塗布液を、該記録層面側と反対の面上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間のキュアーを行なって膜厚約10g/m2のバック層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0081】
比較例2
実施例1の保護層液の調整を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
<保護層液の調整>
紫外線吸収性樹脂(大塚化学社製、PUVA−30S) 10部
シリコーンオイル 1部
テトラヒドロフラン 7部
上記組成物を良く攪拌し保護層塗布液を調製した。
【0084】
上記実施例1および比較例1〜2で作製した可逆性感熱記録媒体について、下記の評価方法により試験し、その結果を下記表1に示した。
【0085】
試験1(対数減衰率のピーク温度およびピーク温度における対数減衰率試験)
前記した方法に従ってサンプルを作製し、対数減衰率のピーク温度およびピーク温度における対数減衰率を求めた。
【0086】
試験2(繰り返し後の記録媒体表面試験)
300dpiのサーマルヘッドおよび130℃に加熱されたヒートローラーを兼ね備えたプリンター(線速30mm/s)を用いて、A4サイズの可逆性感熱記録媒体で消去と印字を100回繰り返し、記録媒体表面の状態を目視で観察して下記のランクで評価した。
ランク1:記録媒体表面に打こんと傷は発生しなかった。
ランク2:記録媒体表面に打こんは発生しなかったが、傷が発生した。
ランク3:記録媒体表面に打こんと傷が発生した。
ランク4:記録媒体表面に激しい打こんと傷が発生した。
【0087】
試験3(カール試験)
<生カール試験>
A4サイズの可逆性感熱記録媒体を25℃、65%RH環境下、4時間放置後カールの状態を確認した。
<消去・印字後のカール試験>
A4サイズの可逆性感熱記録媒体を消去バーおよびサーマルヘッドを兼ね備えたプリンターに10回消去・印字を行ないカールの状態を確認した。
ランク1:カール高さ20mm未満
ランク2:カール高さ20mm以上、筒状になるまで
ランク3:筒状
【0088】
試験4(クラック試験)
幅2cm、長さ10cmのサンプル裏面側を12mmφの丸棒に押しあて、両端を90°方向に1往復させ、表面を顕微鏡で観察した。
○:クラックの発生なし
×:クラックの発生あり
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1は、カールがなく記録媒体はフラットであり、クラックや繰り返し後の打痕もなかったのに比べ、比較例1ではクラックが発生、比較例2では繰り返し時の打痕、カールが発生した。
【0091】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の可逆性感熱記録媒体は、カールやクラックの発生しにくい、繰り返し使用によっても記録媒体への打こんの発生のない耐久性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の可逆性感熱記録媒体の発色・消色特性を示す図である。
【図2】 本発明の可逆性感熱記録媒体の層構成例を示す図である。
【図3】 本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す図である。
【図4】 本発明の可逆性感熱記録媒体の他の一例を示す図である。
【図5】 本発明の可逆性感熱記録媒体の一使用例を示す図である。
【図6】 本発明の可逆性感熱記録装置の一例を示す図である。
【図7】 本発明の可逆性感熱記録装置の他の一例を示す図である。
【図8】 本発明の可逆性感熱記録装置の他の一例を示す図である。
【図9】 本発明の可逆性感熱記録装置における通電制御手段の一例を示す図である。
【図10】 本発明の可逆性感熱記録装置における通電制御手段の他の一例を示す図である。
【図11】 本発明の可逆性感熱記録装置における通電制御手段の電源回路を示す図である。
【図12】 本発明における通電パルスとサーマルヘッドの温度変化の様子を示す図である。
【図13】 本発明における通電パルスの処理内容を示す図である。
【図14】 各種樹脂の融点及びガラス転移点、強度を概念的に示す図である。
【図15】 樹脂材料を構成する各基、部位の凝集エネルギー及び分子容を示す表である。
【図16】 各高分子材料の凝集エネルギーを示す表である。
【図17】 水系エマルジョン樹脂の一般的な振動周期及び対数減衰率を示すグラフである。
【図18】 硬化樹脂塗膜の対数減衰ピーク温度と対数減衰率との関係を示すグラフである。
Claims (8)
- 基紙上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態を形成しうる可逆性感熱組成物を含有する可逆性感熱記録層を設けて成る可逆性感熱記録媒体において、該可逆性感熱記録層上に保護層を設け、該基紙の可逆性感熱記録層とは反対側にカール防止層を設け、かつ該可逆性感熱記録層および該カール防止層および該保護層に用いられるバインダー樹脂が、硬化剤によって架橋状態にあり、該樹脂を硬化させる硬化剤が、イソシアネート系硬化剤であり、しかも該可逆性感熱記録層側および該カール防止層側それぞれの剛体振り子自動減衰振動法より測定される粘弾性対数減衰率のピーク温度が、100℃以上150℃未満、かつピーク温度における対数減衰率が、0.05以上0.30未満であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
- 熱可逆性記録部と情報記憶部とを有することを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
- 前記情報記憶部が、磁気記録層またはICであることを特徴とする請求項2に記載の可逆性感熱記録媒体。
- カード状またはシート状に加工されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
- ロール状になって用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
- 印刷部分を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
- 発色開始温度よりも低い温度に加熱して、消色することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体の消去装置。
- 前記消去装置の加熱部分が、サーマルヘッド、セラミックヒーター、面状ヒーター、ヒートローラーから選ばれるヒーターであることを特徴とする請求項7に記載の消去装置。
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