JP3948301B2 - 加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、加工装置の検出回路チェック方法 - Google Patents
加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、加工装置の検出回路チェック方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、加工装置の検出回路チェック方法、特に、回転工具の工具軸の所定量以上の撓みを直接的に容易に検出可能な加工装置及びその検出方法、また、その検出回路が正常か否かをチェックする検出回路チェック方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、回転駆動により研削加工や切削加工等を行う回転工具がある。例えば、先端に刃部を有しワークに所定径の穴を開けるドリル状の回転工具や、ワークに形成された穴の内壁面を研削(研磨)する円柱状の砥石が先端に固定された回転工具等がある。これらの回転工具は、モータ等を内蔵する加工装置に装着され使用される。図5には、回転工具100を装着した加工装置102の構成概念図が示されている。図5において、回転工具100は、先端部が円柱状の砥石100aと、加工装置102の回転自在なスピンドル104の先端に設けられたコレット106に把持され、回転運動を伝達する工具軸100bで構成されている。また、スピンドル104は、スピンドルケース108に固定されたベアリング110により回転自在に軸支されている。スピンドル104の軸側面には、当該スピンドル104を回転駆動するためのモータ112のロータ112aが固定されている。一方、スピンドルケース108の内壁面には、モータ112のステータ112bが固定されている。従って、モータ112を所定速度で回転させることにより、回転工具100は回転する。そして、ワーク114に形成された穴114aの内壁面に砥石100aを接触させることにより、所望の研削(研磨)加工を行うことができる。
【0003】
ところで、回転工具100は、前述したように、回転工具100をコレット106で把持するために工具軸100bが必要である。この工具軸100bは、把持の目的の他に、加工装置102がワーク114と干渉することを避けることや、砥石100aによる加工位置の目視を可能とする等のために、コレット106から砥石100aを所定距離突き出す機能も有している。コレット106からの突き出し長さは、加工対象や加工部位によって決まるが、この長さが長すぎる場合、砥石100aをワーク114に押し当て加工する時に生じる押し付け力(加工負荷)により、工具軸100bが撓んでしまう場合がある。工具軸100bの撓みは、直接砥石100aの回転精度に影響を与え、加工精度の低下を招く。
【0004】
工具軸100bの撓み量がワーク114の加工公差以内であれば、問題ないが、それを越える撓みが発生した場合、例えば、加工装置102の加工送りミスや砥石100aの摩耗等により撓みが増大した場合、直接加工精度の低下に繋がる。
【0005】
従来、上述のような加工負荷による工具軸100bの撓みの検出は、例えば、スピンドル104を駆動するモータ108に流れる電流の変動に基づき、回転工具100にかかる負荷を推定することにより行っていた。また、別の方法としては、スピンドルケース108に歪みゲージを貼り付けたり、ロードセルを挿入したりして、スピンドルケース108の変形を検出し、回転工具にかかる負荷を推定することにより行っていた。そして、工具軸100bの撓み推定の結果に基づき、アラーム処理等を必要に応じて行っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したモータ108に流れる電流の測定や、歪みゲージやロードセルを用いた測定に基づくものは、いずれも直接的な工具軸100bの撓みの測定ではなかった。つまり、正確な撓みの推定ではなく、信頼性が低いという問題がある。
【0007】
また、モータ108に流れる電流の変動の検出は、モータ108が高速回転して、流れる電流がある程度大きい領域でなければ、十分な検出精度を得ることができず、回転工具100の通常使用回転領域で、加工公差数μm以内の加工を行う場合には、正確な撓み推定を行うことができない。また、歪みゲージやロードセルを用いた測定に関しても、負荷が小さい領域では、検出精度が低く、加工公差数μm以内の加工を行うような場合には、正確な撓み推定を行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、容易な構成により回転工具の工具軸の撓みを直接的に検出することのできる加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、さらには、その検出を行う回路が正常であるか否かをチェックする検出回路チェック方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、導電性を有する工具軸を有する回転工具を装着し、加工を行う加工装置において、前記工具軸を支持し回転駆動する導電性の工具駆動部と、前記工具軸の軸側面と所定の隙間を隔てて周設される、接地された導体性部材からなる周設部材と、前記工具駆動部を介して前記工具軸に直流電流を供給する直流電源と、前記工具軸に電流が流れたことを検出する検出手段と、を含み、前記検出手段は、前記工具軸が所定量以上撓み、周設部材に接し、直流電源を含む直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする。
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は、工具駆動部が支持する回転工具の工具軸の撓みを検出する撓み検出方法であって、導電性の工具軸の軸側面と所定間隔を隔て周設された接地された導電性の周設部材と、導電性の工具駆動部に接続された直流電源とで、直流回路を構成し、前記工具軸が所定値以上撓み周設部材に接し、直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする。
【0011】
ここで、所定の隙間とは、加工時に許容される加工公差に対応した隙間である。また、工具軸はその表面のみが導電性を有していても全体が導電性を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、工具軸の撓みが発生し、前記加工公差を越えた場合、導電性の工具軸と接地された導電性の周設部材と工具駆動部を含む回路が閉路し、直流電流が流れる。そして、直流電流が流れたことを検出手段、例えば電流計等により検出することにより、工具軸の所定量以上の撓みの有無を直接的に検出することができる。なお、回路に接続されているのは直流電源であるので、工具軸と周設部材が接触しない状態、すなわち、工具軸の撓みが加工公差以内の時には、反応せず、加工精度に影響する撓みの有無を明確に認識させることができる。
【0013】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記工具軸の側面と周設部材とが形成する隙間を任意に変更する変更手段を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、隙間の大きさを適宜変更することにより、加工対象毎の加工公差に容易に対応することが可能になり、加工装置の汎用性を向上することができる。
【0015】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、さらに、前記工具軸に交流電流を供給する交流電源と、前記工具軸に電流を供給する前記直流電源と前記交流電源との接続を切り替える切り替え手段と、を含み、前記検出手段は、前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記交流電源を含む交流回路が前記隙間を介して閉路することを検出することにより前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする。
【0016】
また、上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記直流電源に変えて交流電源を接続して、前記工具軸を支持する工具駆動部と周設部材と交流電源とで交流回路を構成し、前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記隙間を介して交流電源を含む交流回路が閉路することを検出することにより、前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする。
【0017】
前述したように、工具軸の撓みの有無は、工具軸と周設部材との接触の有無により工具駆動部を含む回路が閉路するか否かにより判断している。この時、工具駆動部は、従来工具を回転させるために形成された機構部であるため、その機構部の導電性が常に確保されているか否かが、工具軸の撓み検出の信頼性に直接関連する。そこで、工具軸と周設部材とが接触していない状態で、工具駆動部を含む回路が動作するか否かをチェックする必要がある。
【0018】
上記構成によれば、交流電源を上記回路に切り替え接続することにより、交流電流を工具軸と周設部材との僅かな隙間を介しても通電することができる。この場合、回路に欠落が存在しない場合、検出手段を介して電流の流れが確認される。すなわち、工具軸と周設部材とで構成する仮想的なスイッチング部以外の回路が正常であることを容易にチェックすることができる。
【0019】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記隙間には、静電容量部材が満たされていることを特徴とする。
【0020】
ここで、静電容量部材とは、周設部材に対する工具軸の回転の妨げにならない物質であり、例えば水溶性や油性のクーラントであることが望ましい。この場合、直流電源接続時には、静電容量部材の存在により通電は起こらないが、交流電源接続時には、容易に通電を行うことができる。つまり、クーラント等を使用した場合には、低周波数の安価な交流電源でも隙間を介した導通確認を行うことができるので、設備コストの増加や設備サイズの増大等を抑制することができる。
【0021】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記検出手段の検出結果を出力する出力手段を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、出力手段とは、例えば、ランプの点灯や音声等によるアラーム出力や加工装置自体の動作停止指令や、上位の装置へのデータ出力等を含む。
【0023】
この構成によれば、加工軸の撓み検出や、加工装置に不具合を迅速に認識することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の加工装置10の構成概念図が示されている。加工装置10は、従来技術と同様に、回転工具100を回転駆動し所望の加工、例えば研削(研磨)加工等を行うものである。回転工具100は、先端部に固着された円柱状の砥石100aと、工具軸100bで構成される。この工具軸100bは導電性(少なくとも軸側面部分が導電性を有していればよい。もちろん、全体が導電性を有していてもよい)を有し、加工装置10に設けられた回転自在なスピンドル12の先端に設けられたコレット14に把持され、スピンドル12の回転を砥石100aに伝達する。スピンドル12は、スピンドルケース16に固定されたベアリング18により回転自在に軸支されている。また。スピンドル12の軸側面には、当該スピンドル12を回転駆動するためのモータ20のロータ20aが固定されている。一方、スピンドルケース16の内壁面には、モータ20のステータ20bが固定されている。従って、モータ20を所定速度で回転させることにより、回転工具100は回転する。そして、ワーク114に形成された穴114aの内壁面に砥石100aを接触させることにより、所望の研削(研磨)加工を行うことができる。また、加工装置10はその全体を絶縁性のカバー等で覆われていることが望ましい。
【0026】
本実施形態の特徴的事項は、前記工具軸100bの軸側面100cと所定の隙間を隔てて周設される、接地された導体性部材からなる周設部材22が配置されると共に、スピンドルケース16、ベアリング18、スピンドル12、コレット14等で構成される導電性の工具駆動部及び、工具軸100b、周設部材22とで形成される回路に電流を供給する電源部24を備えているところである。
【0027】
なお、前記周設部材22は、絶縁部材(例えば、熱硬化性フェノール樹脂やガラス等)26を介して、スピンドルケース16側と絶縁された導電性部材、例えばステンレス等で形成されている。また、電源部24には、直流電源28と交流電源30が切り替えスイッチ(切り替え手段)32を介して選択的に電流計(検出手段)、望ましくは整流器付きの電流計34に接続可能に配置され、電流計34の他端側が導電性のスピンドルケース16(工具駆動部の一部)に接続されている。また、直流電源28と交流電源30及び周設部材22はそれぞれ接地され、電源部24、工具駆動部、工具軸100b、周設部材22で一つの電気回路を構成している。
【0028】
本実施形態においては、回転工具100の工具軸100bが加工負荷等により撓み、本来あるべき位置、方向よりズレが生じた場合に、その所定量以上の撓みによるズレの有無を検出するために、工具軸100bに対し周設部材22を所定間隔隔てて配置している。つまり、切り替えスイッチ32を介して直流電源28を接続している場合に、加工時に工具軸100bの所定量以上の撓みにより工具軸100bと周設部材22とが接触すると、前記直流電源28が接続された電気回路(撓み検出回路)が閉路し、加工軸100bの撓みを検出することができる。
【0029】
なお、工具軸100bと周設部材22との間に設定される所定間隔とは、工具軸100bの撓みが加工精度に有害となるレベルで決定され、例えば、内径のテーパが1/1000程度を必要とする工具突き出し代(工具軸100bを支持するコレット14の先端面から砥石100aの中央までの距離)が100mm程度の回転工具100の場合、幾何学的に片側2μm程度となる。
【0030】
一方、切り替えスイッチ32を介して交流電源30を回路に接続する場合に、前述の周設部材22を用いた撓み検出回路に欠落を有することなく、正常に機能しているか否かをチェックするチェック回路を構成する。この場合、交流電源30を回路に接続することにより、工具軸100bと周設部材22との間に所定の隙間が存在する場合でも、回路に欠落がない場合には、通電を確認することができる。この時、隙間部分が空気ギャップとして形成されている場合には、交流電源30として、高周波数交流電源(例えば100MHz等)を用いることにより、隙間を静電容量部分と見なすことが可能になり、チェック回路を構成することができる。また、加工軸100bと周設部材22との間に何らかの静電容量部材、例えば、油性や水性のクーラントで満たすことにより、低い周波数の安価な交流電源(例えば1000Hz程度)の交流電源を用いても同様なチェック動作を行うことができる。なお、隙間にクーラント等を満たすことにより、この隙間から異物等が工具駆動側に侵入することを防止することもできる。また、このクーラントは、隙間に定常的に満たされるものでもよいし、加工時等に周囲から適宜供給されるものでもよい。
【0031】
図2には、図1の加工装置10の等価回路が示されている。この等価回路を用いて本実施形態の撓み検出動作時及び回路のチェック動作を説明する。ここで、スピンドルケース16の固有の抵抗値、工具軸100bの固有の抵抗値等は回路全体に占める影響が小さいため、本実施形態では無視するものとして説明する。また、図2に示す等価回路においては、ベアリング18による抵抗36と共に、ベアリング18が有するグリス等による静電容量38を有するものとする。
【0032】
まず、工具軸100bの撓み検出動作を行う場合には、切り替えスイッチ32により直流電源28を回路に接続する。工具軸100bが撓むことにより、当該工具軸100bが周設部材22と接触することにより、つまり工具軸100bの撓みが許容値を越えた場合に、等価回路のスイッチ40がオンすることになり、回路中を直流電流が流れ、電流計34が反応して、工具軸100bが所定値以上(公差の許容量以上)撓んだことを検出する。一方、工具軸100bの撓みが許容値以内の場合、スイッチ40はオンせず、また、クーラント等による静電容量部分42の存在により、直流電源28を接続した回路は、閉路せず、電流計34は反応しない。つまり、工具軸100bの撓みが許容範囲以内であることを明確に示すことができる。なお、電流計34により工具軸100bの撓みが許容値以上であることが検出できた場合、例えば、電流計34の出力により、工具軸100bが許容値以上撓んだことを示すアラーム(ランプや音声による警告)を出すようにしてもよいし、加工装置10の駆動を一時的に停止するように制御信号を出力してもよい。また、検出信号を上位の装置にデータとして供給して、別途制御に利用するようにしてもよい。
【0033】
このように、工具軸100bに所定の間隔を隔てて周設部材22を配置し、直流電源28による直流電流を供給する回路を構成することにより、容易に工具軸100bの許容値以上の撓みを直接的に検出することができる。
【0034】
ところで、前述したように、撓み検出のための回路は、ベアリング18部分等の機構系部分を利用した回路なので、撓み検出回路全体が欠落(破損)することなく電気的な接続が維持されていることが必要である。もし、撓み検出回路のいずれかで欠落が生じている場合、工具軸100bの撓みにより工具軸100bと周設部材22とが接触しても電流計34が撓みによる通電を検出できなくなってしまう。
【0035】
そこで、本実施形態には、回路チェックモードが設けられている。この回路チェックモードは、切り替えスイッチ32により撓み検出のための回路に直流電源28に代えて交流電源30を接続することにより行う。この場合、工具軸100bと周設部材22とが接触していない場合でも、工具軸100bと周設部材22との間にクーラント等により形成される静電容量部分42を交流電流が流れるということに基づき確認される。このチェックモードは、スピンドル12が回転している時または停止している時、いずれの場合でもよいが、加工を行っていないとき、つまり工具軸100bに加工負荷がかかっていないときに行われる。撓み検出のための回路、つまり、工具軸100bと、周設部材22と、スピンドルケース16、ベアリング18、スピンドル12、コレット14等で構成される導電性の工具駆動部とで形成される回路に欠落(不導電部分)が存在しない場合、供給された交流電流はクーラントを介して通電可能となるので、交流電流が回路を流れたことを電流計34で検出することにより当該撓み検出回路に電気的な欠落が無いことを容易にチェックすることができる。つまり、ベアリング18部分等で電気的接続が阻害されている場合には、交流電流を流しても電流計34は反応せず、回路の欠落を容易に検出することができる。なお、この時、使用する交流電源30はクーラントが存在すれば、1000Hz程度の周波数の交流電源でも十分に静電容量部材42を介して通電することができるが、S/N比を向上し信頼性の高いチェックを行うためには、1MHz以上のものを用いることが望ましい。
【0036】
このように、使用する電源を交流電流に切り替えることにより、撓み検出回路が正常に機能しているか否かを容易にチェックすることができる。
【0037】
図3には、工具軸100bと周設部材22との間に形成する隙間を説明する断面図が示されている。前述したように、工具軸100bと周設部材22との間に形成する隙間Aは、加工公差に基づき正確に設定され、この隙間Aにクーラント等の静電容量部材42が満たされることになる。
【0038】
図4には、工具軸100bに対する隙間を変化させることのできる周設部材44の一例が示されている。図4の場合、3種類の隙間A,B,Cが設定できる構造になっている。周設部材44の工具軸100bの対向面には、加工公差aに対応する隙間Aを形成した部分と、加工公差bに対応する隙間Bを形成した部分と、加工公差cに対応する隙間Cを形成した部分とを有している。また、図4の例の場合、表面から隙間A,B,Cの位置を容易に確認できるように、周設部材44の表面には、隙間A,B,Cと対向する位置にマークA,B,Cが付されている。そして、使用時には、図1において、砥石100aとワーク114との接触方向に応じて、工具軸100bに対する周設部材44の位置決めを行う。例えば、砥石100aを加工公差aのワーク114の穴114aの上側に接触させ研削(研磨)加工を行う場合、マークAが加工装置10の上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定する。回転工具100によりワーク114の穴114aの研削(研磨)加工を行う場合、その加工負荷により工具軸100bが撓む方向は下方向、つまり、隙間Aが形成されている方向であるので、工具軸100bの撓みを隙間Aに基づき検出することができる。同様に、砥石100aを加工公差bのワーク114の穴114aの上側に接触させ研削(研磨)加工を行う場合、マークBが上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定し、研削(研磨)加工を行うことにより、加工公差b以上の撓みを検出することができる。また、マークCが上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定すれば、加工公差cのワーク114の穴114aの加工時に、加工公差c以上の撓みを検出することができる。
【0039】
このように、複数の隙間A,B,C等を準備することにより、容易に様々な加工公差のワーク加工時に工具軸100bの撓み検出を行うことが可能で、加工装置10の汎用性の向上を容易に行うことができる。なお、隙間の種類の設定は適宜選択可能である。また、この隙間を変更する変更手段の構造は、任意であり、例えば、テーパスリーブの周囲にナットを配置し、そのナットの締まり具合によりテーパスリーブの締まり具合の調整を行い、工具軸100bに対する隙間の調整を連続的に行うようにしてもよい。なお、周設部材44等による隙間の変更は、例えば、別途駆動機構等により、自動調整するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態においては、回転工具として内径研削(研磨)用の砥石を有する工具を例に取り説明したが、工具軸において撓みが発生する可能性のある回転工具であれば、適用可能である。例えば、ボーリング加工用、ドリル加工用、フライス加工用等に適用可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0041】
また、工具軸の撓み判定の結果を加工精度の良否判定として出力したり、回転工具の摩耗検出用、或いは、加工条件の確認用として出力するようにしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、工具軸の撓みが発生し、前記加工公差を越えた場合、導電性の工具軸と接地された導電性の周設部材と導電性の工具駆動部を含む回路が閉路し、直流電流が流れる。そして、直流電流が流れたことを検出手段により検出することにより、工具軸の所定量以上の撓みの有無を直接的、かつ容易に検出することができる。なお、回路に接続されているのは直流電源であるので、工具軸と周設部材が接触しない状態、すなわち、工具軸の撓みが加工公差以内の時には、反応せず、明確に撓みの有無を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る加工装置の概略構成を説明する構成図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る加工装置の撓みの検出及び回路チェックをするための回路の等価回路図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る加工装置の工具軸と周設部材との隙間を説明する構成図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る加工装置の工具軸と周設部材との隙間を変更可能とする構造を説明する構成図である。
【図5】 従来の加工装置の概略構成を説明する構成図である。
【符号の説明】
10 加工装置、12 スピンドル、14 コレット、16 スピンドルケース、18 ベアリング、20 モータ、22 周設部材、24 電源部、26 絶縁部材、28 直流電源、30 交流電源、32 切り替えスイッチ、34 電流計、100 回転工具、100a 砥石、100b 工具軸。
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、加工装置の検出回路チェック方法、特に、回転工具の工具軸の所定量以上の撓みを直接的に容易に検出可能な加工装置及びその検出方法、また、その検出回路が正常か否かをチェックする検出回路チェック方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、回転駆動により研削加工や切削加工等を行う回転工具がある。例えば、先端に刃部を有しワークに所定径の穴を開けるドリル状の回転工具や、ワークに形成された穴の内壁面を研削(研磨)する円柱状の砥石が先端に固定された回転工具等がある。これらの回転工具は、モータ等を内蔵する加工装置に装着され使用される。図5には、回転工具100を装着した加工装置102の構成概念図が示されている。図5において、回転工具100は、先端部が円柱状の砥石100aと、加工装置102の回転自在なスピンドル104の先端に設けられたコレット106に把持され、回転運動を伝達する工具軸100bで構成されている。また、スピンドル104は、スピンドルケース108に固定されたベアリング110により回転自在に軸支されている。スピンドル104の軸側面には、当該スピンドル104を回転駆動するためのモータ112のロータ112aが固定されている。一方、スピンドルケース108の内壁面には、モータ112のステータ112bが固定されている。従って、モータ112を所定速度で回転させることにより、回転工具100は回転する。そして、ワーク114に形成された穴114aの内壁面に砥石100aを接触させることにより、所望の研削(研磨)加工を行うことができる。
【0003】
ところで、回転工具100は、前述したように、回転工具100をコレット106で把持するために工具軸100bが必要である。この工具軸100bは、把持の目的の他に、加工装置102がワーク114と干渉することを避けることや、砥石100aによる加工位置の目視を可能とする等のために、コレット106から砥石100aを所定距離突き出す機能も有している。コレット106からの突き出し長さは、加工対象や加工部位によって決まるが、この長さが長すぎる場合、砥石100aをワーク114に押し当て加工する時に生じる押し付け力(加工負荷)により、工具軸100bが撓んでしまう場合がある。工具軸100bの撓みは、直接砥石100aの回転精度に影響を与え、加工精度の低下を招く。
【0004】
工具軸100bの撓み量がワーク114の加工公差以内であれば、問題ないが、それを越える撓みが発生した場合、例えば、加工装置102の加工送りミスや砥石100aの摩耗等により撓みが増大した場合、直接加工精度の低下に繋がる。
【0005】
従来、上述のような加工負荷による工具軸100bの撓みの検出は、例えば、スピンドル104を駆動するモータ108に流れる電流の変動に基づき、回転工具100にかかる負荷を推定することにより行っていた。また、別の方法としては、スピンドルケース108に歪みゲージを貼り付けたり、ロードセルを挿入したりして、スピンドルケース108の変形を検出し、回転工具にかかる負荷を推定することにより行っていた。そして、工具軸100bの撓み推定の結果に基づき、アラーム処理等を必要に応じて行っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したモータ108に流れる電流の測定や、歪みゲージやロードセルを用いた測定に基づくものは、いずれも直接的な工具軸100bの撓みの測定ではなかった。つまり、正確な撓みの推定ではなく、信頼性が低いという問題がある。
【0007】
また、モータ108に流れる電流の変動の検出は、モータ108が高速回転して、流れる電流がある程度大きい領域でなければ、十分な検出精度を得ることができず、回転工具100の通常使用回転領域で、加工公差数μm以内の加工を行う場合には、正確な撓み推定を行うことができない。また、歪みゲージやロードセルを用いた測定に関しても、負荷が小さい領域では、検出精度が低く、加工公差数μm以内の加工を行うような場合には、正確な撓み推定を行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、容易な構成により回転工具の工具軸の撓みを直接的に検出することのできる加工装置及び加工装置に装着する回転工具の撓み検出方法、さらには、その検出を行う回路が正常であるか否かをチェックする検出回路チェック方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、導電性を有する工具軸を有する回転工具を装着し、加工を行う加工装置において、前記工具軸を支持し回転駆動する導電性の工具駆動部と、前記工具軸の軸側面と所定の隙間を隔てて周設される、接地された導体性部材からなる周設部材と、前記工具駆動部を介して前記工具軸に直流電流を供給する直流電源と、前記工具軸に電流が流れたことを検出する検出手段と、を含み、前記検出手段は、前記工具軸が所定量以上撓み、周設部材に接し、直流電源を含む直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする。
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は、工具駆動部が支持する回転工具の工具軸の撓みを検出する撓み検出方法であって、導電性の工具軸の軸側面と所定間隔を隔て周設された接地された導電性の周設部材と、導電性の工具駆動部に接続された直流電源とで、直流回路を構成し、前記工具軸が所定値以上撓み周設部材に接し、直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする。
【0011】
ここで、所定の隙間とは、加工時に許容される加工公差に対応した隙間である。また、工具軸はその表面のみが導電性を有していても全体が導電性を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、工具軸の撓みが発生し、前記加工公差を越えた場合、導電性の工具軸と接地された導電性の周設部材と工具駆動部を含む回路が閉路し、直流電流が流れる。そして、直流電流が流れたことを検出手段、例えば電流計等により検出することにより、工具軸の所定量以上の撓みの有無を直接的に検出することができる。なお、回路に接続されているのは直流電源であるので、工具軸と周設部材が接触しない状態、すなわち、工具軸の撓みが加工公差以内の時には、反応せず、加工精度に影響する撓みの有無を明確に認識させることができる。
【0013】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記工具軸の側面と周設部材とが形成する隙間を任意に変更する変更手段を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、隙間の大きさを適宜変更することにより、加工対象毎の加工公差に容易に対応することが可能になり、加工装置の汎用性を向上することができる。
【0015】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、さらに、前記工具軸に交流電流を供給する交流電源と、前記工具軸に電流を供給する前記直流電源と前記交流電源との接続を切り替える切り替え手段と、を含み、前記検出手段は、前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記交流電源を含む交流回路が前記隙間を介して閉路することを検出することにより前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする。
【0016】
また、上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記直流電源に変えて交流電源を接続して、前記工具軸を支持する工具駆動部と周設部材と交流電源とで交流回路を構成し、前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記隙間を介して交流電源を含む交流回路が閉路することを検出することにより、前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする。
【0017】
前述したように、工具軸の撓みの有無は、工具軸と周設部材との接触の有無により工具駆動部を含む回路が閉路するか否かにより判断している。この時、工具駆動部は、従来工具を回転させるために形成された機構部であるため、その機構部の導電性が常に確保されているか否かが、工具軸の撓み検出の信頼性に直接関連する。そこで、工具軸と周設部材とが接触していない状態で、工具駆動部を含む回路が動作するか否かをチェックする必要がある。
【0018】
上記構成によれば、交流電源を上記回路に切り替え接続することにより、交流電流を工具軸と周設部材との僅かな隙間を介しても通電することができる。この場合、回路に欠落が存在しない場合、検出手段を介して電流の流れが確認される。すなわち、工具軸と周設部材とで構成する仮想的なスイッチング部以外の回路が正常であることを容易にチェックすることができる。
【0019】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記隙間には、静電容量部材が満たされていることを特徴とする。
【0020】
ここで、静電容量部材とは、周設部材に対する工具軸の回転の妨げにならない物質であり、例えば水溶性や油性のクーラントであることが望ましい。この場合、直流電源接続時には、静電容量部材の存在により通電は起こらないが、交流電源接続時には、容易に通電を行うことができる。つまり、クーラント等を使用した場合には、低周波数の安価な交流電源でも隙間を介した導通確認を行うことができるので、設備コストの増加や設備サイズの増大等を抑制することができる。
【0021】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記検出手段の検出結果を出力する出力手段を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、出力手段とは、例えば、ランプの点灯や音声等によるアラーム出力や加工装置自体の動作停止指令や、上位の装置へのデータ出力等を含む。
【0023】
この構成によれば、加工軸の撓み検出や、加工装置に不具合を迅速に認識することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の加工装置10の構成概念図が示されている。加工装置10は、従来技術と同様に、回転工具100を回転駆動し所望の加工、例えば研削(研磨)加工等を行うものである。回転工具100は、先端部に固着された円柱状の砥石100aと、工具軸100bで構成される。この工具軸100bは導電性(少なくとも軸側面部分が導電性を有していればよい。もちろん、全体が導電性を有していてもよい)を有し、加工装置10に設けられた回転自在なスピンドル12の先端に設けられたコレット14に把持され、スピンドル12の回転を砥石100aに伝達する。スピンドル12は、スピンドルケース16に固定されたベアリング18により回転自在に軸支されている。また。スピンドル12の軸側面には、当該スピンドル12を回転駆動するためのモータ20のロータ20aが固定されている。一方、スピンドルケース16の内壁面には、モータ20のステータ20bが固定されている。従って、モータ20を所定速度で回転させることにより、回転工具100は回転する。そして、ワーク114に形成された穴114aの内壁面に砥石100aを接触させることにより、所望の研削(研磨)加工を行うことができる。また、加工装置10はその全体を絶縁性のカバー等で覆われていることが望ましい。
【0026】
本実施形態の特徴的事項は、前記工具軸100bの軸側面100cと所定の隙間を隔てて周設される、接地された導体性部材からなる周設部材22が配置されると共に、スピンドルケース16、ベアリング18、スピンドル12、コレット14等で構成される導電性の工具駆動部及び、工具軸100b、周設部材22とで形成される回路に電流を供給する電源部24を備えているところである。
【0027】
なお、前記周設部材22は、絶縁部材(例えば、熱硬化性フェノール樹脂やガラス等)26を介して、スピンドルケース16側と絶縁された導電性部材、例えばステンレス等で形成されている。また、電源部24には、直流電源28と交流電源30が切り替えスイッチ(切り替え手段)32を介して選択的に電流計(検出手段)、望ましくは整流器付きの電流計34に接続可能に配置され、電流計34の他端側が導電性のスピンドルケース16(工具駆動部の一部)に接続されている。また、直流電源28と交流電源30及び周設部材22はそれぞれ接地され、電源部24、工具駆動部、工具軸100b、周設部材22で一つの電気回路を構成している。
【0028】
本実施形態においては、回転工具100の工具軸100bが加工負荷等により撓み、本来あるべき位置、方向よりズレが生じた場合に、その所定量以上の撓みによるズレの有無を検出するために、工具軸100bに対し周設部材22を所定間隔隔てて配置している。つまり、切り替えスイッチ32を介して直流電源28を接続している場合に、加工時に工具軸100bの所定量以上の撓みにより工具軸100bと周設部材22とが接触すると、前記直流電源28が接続された電気回路(撓み検出回路)が閉路し、加工軸100bの撓みを検出することができる。
【0029】
なお、工具軸100bと周設部材22との間に設定される所定間隔とは、工具軸100bの撓みが加工精度に有害となるレベルで決定され、例えば、内径のテーパが1/1000程度を必要とする工具突き出し代(工具軸100bを支持するコレット14の先端面から砥石100aの中央までの距離)が100mm程度の回転工具100の場合、幾何学的に片側2μm程度となる。
【0030】
一方、切り替えスイッチ32を介して交流電源30を回路に接続する場合に、前述の周設部材22を用いた撓み検出回路に欠落を有することなく、正常に機能しているか否かをチェックするチェック回路を構成する。この場合、交流電源30を回路に接続することにより、工具軸100bと周設部材22との間に所定の隙間が存在する場合でも、回路に欠落がない場合には、通電を確認することができる。この時、隙間部分が空気ギャップとして形成されている場合には、交流電源30として、高周波数交流電源(例えば100MHz等)を用いることにより、隙間を静電容量部分と見なすことが可能になり、チェック回路を構成することができる。また、加工軸100bと周設部材22との間に何らかの静電容量部材、例えば、油性や水性のクーラントで満たすことにより、低い周波数の安価な交流電源(例えば1000Hz程度)の交流電源を用いても同様なチェック動作を行うことができる。なお、隙間にクーラント等を満たすことにより、この隙間から異物等が工具駆動側に侵入することを防止することもできる。また、このクーラントは、隙間に定常的に満たされるものでもよいし、加工時等に周囲から適宜供給されるものでもよい。
【0031】
図2には、図1の加工装置10の等価回路が示されている。この等価回路を用いて本実施形態の撓み検出動作時及び回路のチェック動作を説明する。ここで、スピンドルケース16の固有の抵抗値、工具軸100bの固有の抵抗値等は回路全体に占める影響が小さいため、本実施形態では無視するものとして説明する。また、図2に示す等価回路においては、ベアリング18による抵抗36と共に、ベアリング18が有するグリス等による静電容量38を有するものとする。
【0032】
まず、工具軸100bの撓み検出動作を行う場合には、切り替えスイッチ32により直流電源28を回路に接続する。工具軸100bが撓むことにより、当該工具軸100bが周設部材22と接触することにより、つまり工具軸100bの撓みが許容値を越えた場合に、等価回路のスイッチ40がオンすることになり、回路中を直流電流が流れ、電流計34が反応して、工具軸100bが所定値以上(公差の許容量以上)撓んだことを検出する。一方、工具軸100bの撓みが許容値以内の場合、スイッチ40はオンせず、また、クーラント等による静電容量部分42の存在により、直流電源28を接続した回路は、閉路せず、電流計34は反応しない。つまり、工具軸100bの撓みが許容範囲以内であることを明確に示すことができる。なお、電流計34により工具軸100bの撓みが許容値以上であることが検出できた場合、例えば、電流計34の出力により、工具軸100bが許容値以上撓んだことを示すアラーム(ランプや音声による警告)を出すようにしてもよいし、加工装置10の駆動を一時的に停止するように制御信号を出力してもよい。また、検出信号を上位の装置にデータとして供給して、別途制御に利用するようにしてもよい。
【0033】
このように、工具軸100bに所定の間隔を隔てて周設部材22を配置し、直流電源28による直流電流を供給する回路を構成することにより、容易に工具軸100bの許容値以上の撓みを直接的に検出することができる。
【0034】
ところで、前述したように、撓み検出のための回路は、ベアリング18部分等の機構系部分を利用した回路なので、撓み検出回路全体が欠落(破損)することなく電気的な接続が維持されていることが必要である。もし、撓み検出回路のいずれかで欠落が生じている場合、工具軸100bの撓みにより工具軸100bと周設部材22とが接触しても電流計34が撓みによる通電を検出できなくなってしまう。
【0035】
そこで、本実施形態には、回路チェックモードが設けられている。この回路チェックモードは、切り替えスイッチ32により撓み検出のための回路に直流電源28に代えて交流電源30を接続することにより行う。この場合、工具軸100bと周設部材22とが接触していない場合でも、工具軸100bと周設部材22との間にクーラント等により形成される静電容量部分42を交流電流が流れるということに基づき確認される。このチェックモードは、スピンドル12が回転している時または停止している時、いずれの場合でもよいが、加工を行っていないとき、つまり工具軸100bに加工負荷がかかっていないときに行われる。撓み検出のための回路、つまり、工具軸100bと、周設部材22と、スピンドルケース16、ベアリング18、スピンドル12、コレット14等で構成される導電性の工具駆動部とで形成される回路に欠落(不導電部分)が存在しない場合、供給された交流電流はクーラントを介して通電可能となるので、交流電流が回路を流れたことを電流計34で検出することにより当該撓み検出回路に電気的な欠落が無いことを容易にチェックすることができる。つまり、ベアリング18部分等で電気的接続が阻害されている場合には、交流電流を流しても電流計34は反応せず、回路の欠落を容易に検出することができる。なお、この時、使用する交流電源30はクーラントが存在すれば、1000Hz程度の周波数の交流電源でも十分に静電容量部材42を介して通電することができるが、S/N比を向上し信頼性の高いチェックを行うためには、1MHz以上のものを用いることが望ましい。
【0036】
このように、使用する電源を交流電流に切り替えることにより、撓み検出回路が正常に機能しているか否かを容易にチェックすることができる。
【0037】
図3には、工具軸100bと周設部材22との間に形成する隙間を説明する断面図が示されている。前述したように、工具軸100bと周設部材22との間に形成する隙間Aは、加工公差に基づき正確に設定され、この隙間Aにクーラント等の静電容量部材42が満たされることになる。
【0038】
図4には、工具軸100bに対する隙間を変化させることのできる周設部材44の一例が示されている。図4の場合、3種類の隙間A,B,Cが設定できる構造になっている。周設部材44の工具軸100bの対向面には、加工公差aに対応する隙間Aを形成した部分と、加工公差bに対応する隙間Bを形成した部分と、加工公差cに対応する隙間Cを形成した部分とを有している。また、図4の例の場合、表面から隙間A,B,Cの位置を容易に確認できるように、周設部材44の表面には、隙間A,B,Cと対向する位置にマークA,B,Cが付されている。そして、使用時には、図1において、砥石100aとワーク114との接触方向に応じて、工具軸100bに対する周設部材44の位置決めを行う。例えば、砥石100aを加工公差aのワーク114の穴114aの上側に接触させ研削(研磨)加工を行う場合、マークAが加工装置10の上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定する。回転工具100によりワーク114の穴114aの研削(研磨)加工を行う場合、その加工負荷により工具軸100bが撓む方向は下方向、つまり、隙間Aが形成されている方向であるので、工具軸100bの撓みを隙間Aに基づき検出することができる。同様に、砥石100aを加工公差bのワーク114の穴114aの上側に接触させ研削(研磨)加工を行う場合、マークBが上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定し、研削(研磨)加工を行うことにより、加工公差b以上の撓みを検出することができる。また、マークCが上側に来るように周設部材44を工具軸100bに対して固定すれば、加工公差cのワーク114の穴114aの加工時に、加工公差c以上の撓みを検出することができる。
【0039】
このように、複数の隙間A,B,C等を準備することにより、容易に様々な加工公差のワーク加工時に工具軸100bの撓み検出を行うことが可能で、加工装置10の汎用性の向上を容易に行うことができる。なお、隙間の種類の設定は適宜選択可能である。また、この隙間を変更する変更手段の構造は、任意であり、例えば、テーパスリーブの周囲にナットを配置し、そのナットの締まり具合によりテーパスリーブの締まり具合の調整を行い、工具軸100bに対する隙間の調整を連続的に行うようにしてもよい。なお、周設部材44等による隙間の変更は、例えば、別途駆動機構等により、自動調整するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態においては、回転工具として内径研削(研磨)用の砥石を有する工具を例に取り説明したが、工具軸において撓みが発生する可能性のある回転工具であれば、適用可能である。例えば、ボーリング加工用、ドリル加工用、フライス加工用等に適用可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0041】
また、工具軸の撓み判定の結果を加工精度の良否判定として出力したり、回転工具の摩耗検出用、或いは、加工条件の確認用として出力するようにしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、工具軸の撓みが発生し、前記加工公差を越えた場合、導電性の工具軸と接地された導電性の周設部材と導電性の工具駆動部を含む回路が閉路し、直流電流が流れる。そして、直流電流が流れたことを検出手段により検出することにより、工具軸の所定量以上の撓みの有無を直接的、かつ容易に検出することができる。なお、回路に接続されているのは直流電源であるので、工具軸と周設部材が接触しない状態、すなわち、工具軸の撓みが加工公差以内の時には、反応せず、明確に撓みの有無を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る加工装置の概略構成を説明する構成図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る加工装置の撓みの検出及び回路チェックをするための回路の等価回路図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る加工装置の工具軸と周設部材との隙間を説明する構成図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る加工装置の工具軸と周設部材との隙間を変更可能とする構造を説明する構成図である。
【図5】 従来の加工装置の概略構成を説明する構成図である。
【符号の説明】
10 加工装置、12 スピンドル、14 コレット、16 スピンドルケース、18 ベアリング、20 モータ、22 周設部材、24 電源部、26 絶縁部材、28 直流電源、30 交流電源、32 切り替えスイッチ、34 電流計、100 回転工具、100a 砥石、100b 工具軸。
Claims (7)
- 導電性を有する工具軸を有する回転工具を装着し、加工を行う加工装置において、
前記工具軸を支持し回転駆動する導電性の工具駆動部と、
前記工具軸の軸側面と所定の隙間を隔てて周設される、接地された導体性部材からなる周設部材と、
前記工具駆動部を介して前記工具軸に直流電流を供給する直流電源と、
前記工具軸に電流が流れたことを検出する検出手段と、
を含み、
前記検出手段は、前記工具軸が所定量以上撓み、周設部材に接し、直流電源を含む直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする加工装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記工具軸の側面と周設部材とが形成する隙間を任意に変更する変更手段を有することを特徴とする加工装置。 - 請求項1または請求項2記載の装置において、
さらに、
前記工具軸に交流電流を供給する交流電源と、
前記工具軸に電流を供給する前記直流電源と前記交流電源との接続を切り替える切り替え手段と、
を含み、
前記検出手段は、前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記交流電源を含む交流回路が前記隙間を介して閉路することを検出することにより前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする加工装置。 - 請求項3記載の装置において、
前記隙間には、静電容量部材が満たされていることを特徴とする加工装置。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置において、
前記検出手段の検出結果を出力する出力手段を有することを特徴とする加工装置。 - 工具駆動部が支持する回転工具の工具軸の撓みを検出する撓み検出方法であって、
導電性の工具軸の軸側面と所定間隔を隔て周設された接地された導電性の周設部材と、導電性の工具駆動部に接続された直流電源とで、直流回路を構成し、
前記工具軸が所定値以上撓み周設部材に接し、直流回路が閉路したことを検出することにより前記工具軸の撓みを認識することを特徴とする撓み検出方法。 - 請求項6記載の方法を用いた加工装置の検出回路チェック方法であって、
前記直流電源に変えて交流電源を接続して、前記工具軸を支持する工具駆動部と周設部材と交流電源とで交流回路を構成し、
前記工具軸が非加工の無負荷状態時に、前記隙間を介して交流電源を含む交流回路が閉路することを検出することにより、前記直流電源が接続される回路の動作チェックを行うことを特徴とする加工装置の検出回路チェック方法。
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