JP3947947B2 - フィルタ濾材及びフィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工場、ビル等において外気を取り入れる場合に使用される空気清浄用フィルター、またビル個別空調、自動車内に用いられる空気清浄用フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より工場、ビル等において外気を取り入れる場合、あるいはビル個別空調、自動車内空間や一般家庭の室内空間の浄化を目的として、シート状の脱臭フィルタを成型した空気清浄用フィルターが使用されている。
【0003】
従来、これらの空気清浄用フィルタとしては、例えば、特開昭48−72088等に記載されているように、基材を不織布シートにし、このシートにエマルジョン系の接着剤を塗布し、更に吸着材粒子を散布し、熱処理乾燥する方法が知られているが、この方法では、不織布一面に塗布された接着剤により通気抵抗が大きく、また、接着剤による吸着材の表面の被覆率が大きいため、吸着性能の有効発現率が小さくなり、吸着性能を有効に引き出せないといった問題等を生じていた。
【0004】
かかる問題点を解決することを目的とし種々の検討が行われている。例えば、特開平4−74505や特開平5−245325には、圧損を低減すべく、基材として、ネット状や網状、編み物形態のものを使用し、この基材に上述の方法で吸着材粒子を担持することにより、通気抵抗を低くする方法が開示されている。しかし、これらの方法では、脱臭材の安定固持性に欠け、また吸着性能は十分満足できるものではなかった。
【0005】
また、近年、これらのフィルタの機能として、脱臭性能のみではなく、除塵性能を付加したものが要求されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑み、低圧力損失ながら、安定した脱臭性能を発現することができ、さらに、優れた除塵性能をも有するフィルタ濾材を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、平均粒径100〜5000μmの粒状脱臭材と接着性樹脂からなる層及びエレクトレット不織布からなる層を含むフィルタ濾材であり、前記接着性樹脂が直径200μm以下であるフィルタ濾材を提供するものである。
【0008】
本発明のフィルタ濾材の好ましい実施態様は、上記のエレクトレット不織布が、フィルムスプリットファイバー型のエレクトレット繊維不織布である。
【0009】
本発明のフィルタ濾材の好ましい実施態様は、上記の接着性繊維のASTM D2979のプローブタックが25℃において300g/5mmφ以上である。
【0010】
また、本発明は、上記のフィルタ濾材が、波状あるいはプリーツ状に成型されてなるフィルタを提供するものである。
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明のフィルタ濾材で用いられる粒状脱臭材の素材は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム等の金属単体、又はこれらの金属の金属酸化物や金属塩化物等、あるいは、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、セピオライト等が挙げられ、本発明においては、これらを単一に、あるいは、組み合わせて用いることができる。
なお、上記の活性炭の種類も特に限定されるものではなく、例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系等の活性炭が用いられる。
【0012】
本発明のフィルタ濾材で用いられる粒状脱臭材は、例えば、特定ガスの吸着性能を向上すること等を目的に、上記に挙げた脱臭材に薬品添着処理を施したものでもよい。
例えば、酸性、塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることを目的に、エタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、アニシジン等アミン系薬剤やNaOH、リン酸グアニジン等のアルカリ成分を粒状脱臭材に担持もしくは添着することにより、アルデヒド系ガスやNOx 、SOx 、硫黄化合物、酢酸等の酸性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。また、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の酸性薬剤を粒状脱臭剤に担持もしくは添着することにより、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン等の塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。
【0013】
本発明のフィルタ濾材で用いられる粒状脱臭材の量は、一般的な空気清浄での脱臭性能効果を考慮すると20g/m2 以上が好ましく、より好ましくは50g/m2 以上である。また平均粒径は、100〜5000μmであることが必要であり、好ましくは150〜2000μmである。平均粒径が100μmより小さい場合には、脱臭材の担持量を増加したとき、圧力損失が高くなりすぎるため実用的ではない。平均粒径が5000μmより大きい場合には、フィルター厚みが大きくなりすぎたり、脱臭材の分布が不均一になり易く、また吸着速度が小さくなる等の問題が生じるため実用的ではない。また、低圧損、脱臭性能の有効発現性のためには、分布ムラを小さくすることが好ましい。
【0014】
本発明のフィルタ濾材で用いられる粒状脱臭材の散布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ロータリフィーダー、テーブルフィーダー、ベルトフィーダー、バケットフィーダー、振動フィーダー、コンベヤー方式等が採用され得る。
【0015】
本発明のフィルタ濾材で用いられる接着性繊維は、ASTM D 2979に記されるプローブタックが、25℃において300g/5mmφ以上であることが好ましい。これは、プローブタックを300g/5mmφを以上とすることにより該繊維状接着剤が固化した場合にも粘着力による接着が可能となり、環境温度が低い場合や塗布時の繊維径が細い場合等においても安定した接着を可能とするためであり、プローブタックが300g/5mmφ未満の場合は、溶融状態で被接着体に直接塗布された繊維状接着剤が完全に固化する前に素早く圧締することにより被接着体同士を接着することが可能となるが、環境温度が低い場合や接着剤塗布時の繊維径を細くした場合には溶融状態で塗布された繊維状接着剤が短時間で固化するために接着ができなかったり、接着力が不充分となり易い。
【0016】
本発明のフィルタ濾材で用いられる接着性繊維の平均繊維径は200μm以下であることが必要であり、100μm以下であえrばより好ましい。平均繊維径を200μm以下とすることにより、接着剤単位重量当たりの繊維本数が増加し、接着に寄与する繊維の表面積が増加し、少量で充分な接着強度を得ることができる。
【0017】
本発明のフィルタ濾材で用いられる接着性繊維は、接着性樹脂を繊維状として用いられる。かかる方法としては、例えば、溶融状態にあるホットメルト接着剤をノズルから吐出すると同時に加熱されたエアーにより延伸する方法等が好適に用いられる。この様にして繊維状となったホットメルト接着剤は、被接着層に挟まれる様に塗布され、直ちに接着層を形成する。
この際の溶融粘度は、例えば700〜30,000cps、好ましくは1,000〜10,000cps、より好ましくは4,000〜7,000cpsで塗布される。700cpsより低い粘度領域では、粒状の飛散物が生じ不均一な接着状態を呈し、30,000cpsより高い粘度領域では、流動性が小さすぎて繊維状に塗布すること自体が不可能となる。
【0018】
本発明のフィルタ濾材で用いられる接着性繊維の樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、ブタジエン、イソプレン、ブテン、プロピレン、エチレンの6種類の成分の内、少なくとも2成分からなる共重合体を含む合成ゴム系のホットメルト接着剤であることが好ましい。接着剤を前記組成とすることにより、充分なタック性を有し、操業性のよい接着剤を得ることができる。
【0019】
本発明のフィルタ濾材で用いられる接着性繊維の使用量は、粒状脱臭材に対して、5〜50重量%であることが好ましい。平均使用量が50重量%を超える場合には、接着層を構成する繊維本数が多すぎるため吸着材本来の吸着性能が損なわれ、圧力損失が増大する。平均使用量が5重量%未満では接着に必要な繊維表面積を得ることができず、粒状脱臭剤の脱落を生じる。粒状脱臭材に対する接着材量は前述のように常温で粘度の高いものであり吸着材の内部まで入り込まないので外圧により物理的に分離する方法で重量を調べることが可能であり容易に最適条件を設定できる。
【0020】
本発明のフィルタ濾材は、エレクトレット不織布を含むことが必要である。タバコ煙、ディーゼルカーボン、海塩等のサブミクロン粒子を低圧損で効率よく除去するためである。
エレクトレットフィルターは一般に、加熱により電荷の放出や中和が起こり、エレクトレット性が低下しフィルターの捕集効率低下を招くことが知られている。しかし本発明においてはフィルター濾材を構成する被接着シートとしてエレクトレット化された不織布を使用した場合においても製造時に被接着シートに直接の熱を加える必要がないため、上記問題点の発生を防ぐことが可能である。
【0021】
本発明のフィルタ濾材に用いられるエレクトレット不織布の素材は、分極化して誘電体となる材質であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系ポリマー、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのα−ポリオレフィン系ポリマー、テフロン等のフッ素系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明のフィルタ濾材に用いられるエレクトレット不織布は、フィルムスプリットファイバー型であればより好ましい。フィルムスプリットファイバー型のエレクトレット不織布は、繊維充填密度を低くすることが可能であるため、サブミクロン粒子はもちろんの事、数ミクロンから数十ミクロンオーダーの花粉、スパイク粉塵、砂塵等のいわゆる粗塵粒子に対して目詰まりが起こりにくく長寿命化が可能である。
【0023】
本発明のフィルタ濾材は、少なくとも一層がJIS L1096に規定されるスライド法による剛軟性試験においてMD、TD両方向とも0.4N・cm以上であることが好ましい。MD、TD両方向とも0.4N・cm以上であれば波状、あるいは折り山角度がより鋭角になったプリーツ状に成型したフィルターユニットにおいて、フィルターが変形しにくく、形状維持性に優れたものになる。
また、かような素材としては、例えば、ポリエステル系、ポリプロピレン系等何でもよく、また、樹脂含浸等の後加工で上述の剛性を付与してもかまわない。
【0024】
本発明のフィルタは、上記にて説明したフィルタ濾材を、波状あるいはプリーツ状に成形されてなることが必要である。被処理流体との接触面積を増加することにより、フィルタ機能を向上するためである。
【0025】
本発明のフィルタ濾材を波型あるいはプリーツ加工する方法としては、通常のレシプロ式、ギヤ式、ロータリー式の成型加工機による方法が挙げられる。その際、複数のシートを予め接着繊維や網状接着シート等で積層しておき加工する方法でも、単純にお互い重ね合わせて加工する方法でもよい。また、上記加工後、折り山同士を固定するため高分子材料等で各折り山頂点を連結する方法でより強固なフィルターユニットにすることもできる。
【0026】
本発明のフィルタ濾材は、接着性繊維や粒状脱臭材、あるいは、その他の層に、例えば、難燃剤、抗菌、抗カビ剤、抗ウイルス剤を含むことが好ましい。難燃剤を適量添加することによりシート全体で種々の難燃基準、例えばFMVSS.302で規定される遅燃性の基準に合致させたり、抗菌、抗カビ剤、抗ウイルス剤を適量添加することでシート全体で抗菌性能、抗カビ性能、及び抗ウイルス性能が発現させるためである。
【0027】
以下実施例によって本発明を更に詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお、実施例中に記載されているフィルター性能評価方法はシート形態で直交流でガス、及び粉塵を流通させる方法で実施した。詳細は下記に示す。
【0028】
(1) 脱臭性能
使用ガス:トルエン及びアセトアルデヒドガス
測定法 :25℃、50%RHの条件下で63φのガラスカラムに風速30cm/sで10ppmのガスを流通させ、入口、出口の濃度変化から脱臭容量を計算し、接着性繊維を使用せずにシート化した場合の脱臭容量との変化率(%)を算出した。
脱臭用量の変化率(%)=((V1 /V2 )ー1)×100
但し、V1 :シート化後の脱臭容量
V2 :接着性繊維を使用せずにシート化した場合の脱臭容量
【0029】
(2) 圧損
上記と同様形状のカラムで、風速30cm/sの条件下で圧損上昇率(%)の値を測定した。(25℃、50%RH)
圧損上昇率(%)=((A1 /A2 )ー1)×100
但し、A1 :シート化後の総圧力損失
A2 :接着性繊維を使用せずにシート化した場合の総圧力損失
【0030】
(3) 除塵性能
使用粉塵:0.3μmの大気塵
測定法 :25℃、50%RHの条件下で63φのガラスカラムに風速10cm/sで入口、出口の粒子数をカウントし清浄効率の計算から低下率を算出した。
清浄効率の低下率(%)=((K1 /K2 )ー1)×100
但し、K1 :シート化後の除塵性能
K2 :製造工程で熱処理せずにシート化した場合の除塵性能
【0031】
(4) JIS8種(平均粒径約8μm)粉塵保持量は、初期圧損から150Pa上昇したときを寿命と判断し該時点において濾材に堆積した粉塵量を天秤で秤量した値である。
【0032】
(5) JIS L1096法(剛軟度)
剛軟度(N・cm)=((W×L4)/(8×δ))
但し、W:試験片の単位面積当たりの重力(N/cm2
L:試験片の長さ(cm)
δ:試験片のたわみ(cm)
【0033】
(実施例1)
不織布A:平均繊維径35μのポリエステル繊維で構成される目付60g/m2 シートがあり、このシートのJISL1096に規定される剛軟性はMD、TD方向共0.7N・cmであり、非常に剛性の高いシートである。
不織布B:ポリプロピレンを主成分とした厚さ50μmのキャストフィルムを溶融押出成型で作成し、これをフィルム厚さ10μmまで延伸し、このフィルムを10KV(陽極)の印加電圧下でアース板に接触させながら1秒間の走行荷電処理をし、針密度60本/cm2 の8突起体丸刃開繊カッターでフィブリル化比を種々変えて開繊を施し、しかる後に75mmにカットしてカードにてウェッブシートを作製し、目付30g/m2 にしたフィルムスプリット型エレクトレット不織布である。
1平米の不織布Aにスチレン、ブタジエン、イソプレン、プロピレン、エチレンを成分として含み、ASTM D 2979に記されるプローブタックが、25℃において950g/5mmφである繊維径50μmの接着性繊維を重量が30gとなるように吹きかけ、その後平均粒径300μmの活性炭300gを散布後、前述の接着性繊維を30g吹きかけた。更にこのシートの片側に不織布Bではさみ込みシート状フィルターを得た(活性炭に対する接着性繊維の比率は20%)。また、このシートを常套手段によりプリーツ加工しフィルターユニットにしたところ、このフィルターユニットは堅固であり折り山側から3m/sの風速を与えても山崩れせず取り扱い性にすぐれたものであった。特性的には、使用中に活性炭の流動もなく脱臭性能は低下率の非常に小さいもので、圧損の上昇率も非常に小さいものであった。また製造工程上熱処理が不要なため、エレクトレット化された不織布からの電荷の漏洩がなくサブミクロン粒子に対して清浄効率の維持率が高い理想的なフィルターを実現できた。更には、数ミクロンオーダーの粒子、たとえばJIS8種の粉体においての粉塵保持量が平米換算70gと非常に大きな値となり、長寿命フィルターであることを意味する。
【0034】
(実施例2)
実施例1の不織布シートBの代わりにポリプロピレンを主成分としてなる平均繊維径4μm、目付量20g/m2 の不織布に+20KVの直流高電圧を印加してエレクトレット化されたメルトブローン型不織布(以下不織布シートCとする)としシート状フィルターを得た。脱臭性能、除塵性能は実施例1と同様低下率の非常に小さいもので、圧損の上昇率も非常に小さいものであった。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様材料及びプロセスでシート状フィルターを作製した。但し、活性炭として、平均粒径80μmの微細な活性炭300gを散布した。その結果、脱臭材の固持性が悪いため脱臭性能、圧損のバラツキが大きく実用的には問題のあるものとなった。
【0036】
(比較例2)
不織布シートAにスチレン、ブタジエン、イソプレン、プロピレン、エチレンを成分として含んだエマルジョン系の接着性微粒子を塗布(この接着剤の乾燥後の接着性は、25℃において950g/5mmφ)し、同時に平均粒径200μmの活性炭300gを散布し、更に前述の接着剤を介してエレクトレット化された不織布シートBではさみ込み120℃の熱風乾燥炉を通過させシート状フィルターを得た。このシートはシート化時に接着剤を乾燥するため熱処理を実施したのでエレクトレット化された不織布から電荷の漏洩が起こり、清浄効率が大きく低下した。また乾燥による製造コストが大きくなった。さらに、接着性樹脂として接着性微粒子を用いたため、接着剤の活性炭表面被覆度が大きくなり、脱臭性能の低下が大きく、また圧損も高いものになった。
【0037】
【表1】
Figure 0003947947
【0038】
【発明の効果】
本発明は、空気清浄用フィルター用途として用いる脱臭シートを製造する場合に、脱臭性能の低下を抑え、圧力損失の上昇を極力抑える接着方法により製作されたフィルターを提供しようとするものである。さらにエレクトレット化された素材を使用するケースにおいては、製造時に清浄効率の低下の無いフィルターを提供できる。

Claims (3)

  1. 平均粒径100〜5000μmの粒状脱臭材と接着性樹脂からなる層及びエレクトレット不織布からなる層を含むフィルタ濾材であり、前記接着性樹脂が直径200μm以下で、ASTM D2979のプローブタックが25℃において300g/5mmφ以上の接着性繊維であり、その使用量が粒状脱臭剤に対し5〜50重量%であることを特徴とするフィルタ濾材。
  2. 前記エレクトレット不織布が、フィルムスプリットファイバー型のエレクトレット不織布であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ濾材。
  3. 請求項1乃至2に記載のフィルタ濾材が、ハニカム状あるいはプリーツ状に成型されてなることを特徴とするフィルタ。
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