JP3675686B2 - 空気清浄用フィルター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高ダスト捕集容量及び高捕集効率を有する、少なくとも2層の不織布からなる空気中のダストを分離捕集する空気清浄用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、主としてクリーンルームおよびビル空調などの分野で室内を循環させる空気をろ過し、室内空気を清浄化する目的で使用されていた空気清浄用フルターは、最近の自動車の増加や環境汚染の拡大に伴い、自動車室内および一般家庭などにおいてエアフィルター、キャビンフィルター等として普及してきている。
【0003】
これらのエアフィルターは、微粒子の捕集はもとより、比較的大きいダストを効率よく高容量で捕集し、さらにジグザグ折り、プリーツ折り等にした場合の形態保持性が要求されている。さらに、現在の機器・装置の小型化に対応できる、低圧力損失で高い粒子除去性を有するコンパクトなフィルターであることが要求され、比較的大きい粒子を捕集するための不織布と微粒子を捕集するためのエレクトレット処理不織布からなる積層体が開発されてきているが、2種類の不織布の接着工程、あるいはフィルタ加工工程での巻き締まりにより、フィルター内部の空隙が圧縮され、ダスト捕集する容量を著しく低下させるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の問題点を解決した少なくとも2層の不織布からなる高ダスト捕集容量と高捕集効率の空気清浄用フィルターを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維径の異なる3種類の繊維を混抄した不織布を基布層に用いることにより、高ダスト捕集容量と高捕集効率のフィルターが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、比較的大きい粒子を捕集する不織布からなる基布と微粒子を捕集するエレクトレット化不織布からなる表層とを積層一体化した空気清浄用フィルターであって、基布を構成する不織布が、(A)5デニール未満の繊維径のビニロン繊維5〜30重量%、(B)5デニール以上10デニール未満の繊維径のポリエステル繊維10〜40重量%、(C)10デニール以上の繊維径のビニロン繊維20〜60重量%の3種類の混合繊維からなり、表層がスパンボンド法またはメルトブロー法で製造された目付が10〜40g/m 、平均繊維径が3〜30μm、通気度が20〜700cc/cm /sec、厚みが0.1〜0.5mmのポリプロピレン不織布をエレクトレット化したエレクトレット化不織布であることを特徴とする空気清浄用フィルターである。
【0007】
また、本発明は、基布層不織布の全体平均繊維径が28〜38μmである前記の空気清浄用フィルターである。
【0008】
また、本発明は、目付が70〜140g/m、厚みが0.5〜1.2mm、MD剛軟度が1500mg以上、MD引張強度が10kg/50mm以上、通気度が15〜250cc/cm/sec、線速度が5.3cm/sec時の圧力損失が0.1〜5mmAqである前記の空気清浄用フィルターである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の空気清浄用フィルターは、比較的大きい粒子を保持するダスト保持層を構成する基布不織布と微粒子を保持するエレクトレット層を構成するエレクトレット化ポリプロピレン不織布からなる積層フィルターで、エアーの流れに対して、ダスト保持層側を上流とし、エレクトレット層側を下流として用いる。以下に、各構成について詳細に説明する。
【0010】
1.基布層(ダスト保持層)
本発明の空気清浄用フィルターの基布層は、上流側に位置し、エアー中の比較的大きい粒子を捕集し、保持するための不織布であり、繊維径の異なる3種類の繊維を混抄して得られる不織布であるため、高容量で、高強度である。
基布を構成する不織布の3種類の繊維は、(A)繊維径が5デニール未満の繊維が5〜30重量%、(B)繊維径が5デニール以上10デニール未満の繊維が10〜40重量%、(C)繊維径が10デニール以上の繊維が20〜60重量%からなる混合繊維である。この混合繊維からケミカルボンド法又はサーマルボンド法等によって基布層不織布は製造される。
【0011】
上記3種類の(A)〜(C)の繊維径を有する繊維の素材樹脂としては(A)及び(C)がビニロンであり、(B)がポリエステル繊維である。
(A)の細かい径の繊維と(C)の太い径の繊維にビニロンを用いることにより、厚みを保持する効果があり、(B)にポリエステル繊維を用いることにより、プリーツ折りしてフィルターとした時の剛性が付与される。
【0012】
基布層の不織布の全体平均繊維径は、28〜38μm(7〜13デニール)、好ましくは31〜35μm(9〜11デニール)である。平均繊維径が28μm未満では、基布層のダストの目詰まりが速くなり、38μmを超えると、基布層での比較的大きい粒子の捕集性能が低くなり、表層での目詰まりが速くなる。
【0013】
該不織布の目付は、40〜100g/m、好ましくは60〜80g/mである。目付が40g/m未満では、剛性が低く、プリーツ加工性が悪く、100g/mを超えると、厚みが上がり、プリーツ加工した時、構造圧損が上がり好ましくない。
【0014】
該不織布の通気度は、50〜1700cc/cm/sec、好ましくは150〜1000cc/cm/secである。通気度が50cc/cm/sec未満では、比較的大きい粒子の目詰まりが速く、1700cc/cm/secを超えると、比較的大きい粒子の捕集効果が低くなり、表層の目詰まりが速くなる。
【0015】
該不織布の厚みは、0.3〜1.5mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。厚みが0.3mm未満では、柔らかなプリーツ加工性が得られず、1.5mmを超えると、構造圧損が上昇し好ましくない。
【0016】
2.表層
本発明のフィルターの表層には、微粒子を捕集する機能を果たす細い繊維径のエレクトレット化ポリプロピレン系不織布を用いる。
ポリプロピレ系不織布に用いるポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、或いは過半重合割合のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体である。また、ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、10〜1200g/10分、特に15〜400g/10分のものが好ましい。これらプロピレンは、得られた不織布が下記物性を有する範囲であれば、単独でも、或いは複数種類の重合体の混合物としても使用することもできるし、ポリプロピレンを主成分としてなる樹脂でもよい。
【0017】
細い繊維径のポリプロピレ系不織布としては、上記のポリプロピレン系樹脂を用い、スパンボンド法またはメルトブロー法により製造される不織布が好ましい。
表層の不織布の平均繊維径は、3〜30μm(0.1〜6デニール)、好ましくは10〜23μm(0.6〜3.3デニール)である。平均繊維径が3μm未満では、微粒子の目詰まりが速く、30μmを超えると、微粒子捕集効率が悪くなる。
【0018】
該不織布の目付は、10〜40g/m、好ましくは20〜30g/mである。目付が10g/m未満では、微粒子捕集効率が悪くなり、40g/mを超えると、通気性が下がり、圧力損失が高くなる。
【0019】
該不織布の通気度は、20〜700cc/cm/sec、好ましくは200〜300cc/cm/secである。通気度が20cc/cm/sec未満では、目詰まりが速くなり、700cc/cm/secg/mを超えると、微粒子捕集効率が低くなる。
【0020】
該不織布の厚みは、0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.3mmである。厚みが0.1mm未満では、微粒子捕集効率が低くなり、0.5mmを超えると、通気性が下がり、圧力損失が高くなる。
【0021】
本発明の表層にエレクトレット化不織布を用いるのは、静電気力によって微細な粉塵を効率良く捕集することができるためである。このエレクトレット化は、不織布をアースされた電極上を走行させ、この上から針電極又はワイヤー電極に高電圧を印加することによってコロナ放電を行い達成される。このエレクトレット化の程度は、不織布の表面電荷密度を2×10−10クーロン/cm以上の電荷密度とするのが好ましい。この表面電荷密度が2×10−10クーロン/cm未満であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が劣るようになるため好ましくない。表面電荷密度が5×10−10クーロン/cm以上であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が著しく高まるため好ましく用いられる。
【0022】
3.フィルターの製造
本発明の空気清浄用フィルターは、上記基布層と上記表層を積層して製造される。積層方法は、パウダー接着法、ホットメルトスプレー法、超音波接着法、熱エンボス加工法等の一般に用いられている常法でもよいが、望ましくは基布層をスパンボンド又はメルトブロー製布ラインに供給し、直接スパンボンド不織布又はメルトブロー不織布と積層する直接法が一体性が高く好ましい。
【0023】
4.フィルターの物性
本発明の空気清浄用フィルターは、上記の基布層、表層を用いて積層されており、次のような物性を有しているのが好ましい。
(1)目付は、70〜140g/mであり、フィルターの剛性、粒子の保持量などに影響を与える。
(2)厚みは、0.5〜1.2mmであり、厚みが上がるとプリーツ加工した時は、構造圧損が上がり過ぎる。
(3)MD剛軟度は、1500mg以上であり、低すぎるとプリーツ加工性が得られない。
(4)MD引張強度は、10kg/50mm以上であり、低すぎるとプリーツ加工性が得られない。
(5)通気度は、15〜250cc/cm/secであり、低すぎると圧力損失をきたす。
(6)線速度が5.3cm/sec時の圧力損失は、0.1〜5mmAqであり、同じ捕集性であれば、低いほど好ましい。
【0024】
この積層シートをフィルター基材として、プリーツ加工、ユニット加工し、使用されるが、当然のことながら、使用時に空気抵抗を受ける。この力でフィルター基材が変形を受けるとユニットの構造圧損が増すため、これに耐える剛軟度が必要である。
【0025】
【実施例】
本発明を以下の実施例、比較例によって具体的に説明する。なお、物性の測定は以下の方法を用いて行った。
(1)繊維径:試験片の任意な5箇所を電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。
(2)目付:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりに換算して求めた。
(3)不織布の厚み:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
(4)通気度:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、JIS L 1096に準拠し、フラジール型試験機を用いて測定した。
(5)剛軟度:JIS L 1096(ガーレー法)に準拠して測定した。
(6)引張強度:50×200mmの試験片を採取し、JIS L 1096に準拠して測定した。
【0026】
(7)捕集効率:0.3μmのNaCl粒子の試験用粉塵含有空気を所定量の流量で通過させJIS Z 8813に準じた光散乱光量積算方式により、通過前通過後の粉塵濃度を同時に連続的に測定し、次式により、捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=(通過後の粉塵濃度(mg/m)−通過前の粉塵濃度(mg/m))/(通過前の粉塵濃度(mg/m)×100
(8)圧力損失:捕集効率の試験と並行してアネロイド式圧力計を用い、0.3μmのNaCl粒子の試験用粉塵含有空気の通過前後の線速度が5.3cm/sec時の圧力を測定し、その差圧を求めた。
(9)ダスト捕集容量(DHC):図1に示すエアーフローテスターで試験用粉塵JIS15種を用い、フィルター測定面積314cm、面風速10cm/sec、粉塵濃度100mg/mにより、圧力損失が初期圧損+30mmAqアップ時までの保持した粉塵重量をg/mで求めた。
【0027】
実施例1
(1)基布の製造
1.5デニールのビニロンステープル20重量部、15デニールのビニロンステープル50重量部及び6デニールのポリエステル繊維(帝人製)30重量部からなる混合繊維からケミカルボンド法により不織布を得た。得られた不織布の物性は、目付70g/m、厚み0.9mm、通気度400cc/cm/secであった。
【0028】
(2)表層の製造
MFR15g/10分のポリプロピレンからメルトブロー法により、目付20g/m、厚み0.21mm、通気度300cc/cm/sec、繊維径15μmの不織布を得た。このメルトブロー不織布をアース電極上に置きエレクトレット化処理をし、表面電荷が5×10−10クーロン/cmのエレクトレット化不織布を得た。
【0029】
(3)フィルターの製造
上記(1)と(2)で得た不織布をパウダー接着法で積層し、フィルターを得、フィルターの性能試験を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
比較例1
実施例1の基布の製造において、15デニールの繊維径のビニロン繊維の代わりに7デニールの繊維径のビニロン繊維を用いる以外は、実施例1と同様にしてフィルターを製造し、得られたフィルターの性能試験を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例2
実施例1の基布の製造において、2種類の繊維径のビニロン繊維の代わりに7デニールの繊維径のビニロン繊維のみを用いる以外は、実施例1と同様にしてフィルターを製造し、得られたフィルターの性能試験を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003675686
【0033】
表1から明らかなように、3種類の繊維径からなる基布を有するフィルターは、粒子捕集効率及び粒子捕集容量に優れている(実施例1)。一方、3種類の繊維径からなる不織布ではあるが、10デニール以上の繊維系を持つ繊維を用いないと粒子捕集容量に劣り(比較例1)、2種類の繊維径のみの不織布ではさらに粒子捕集容量が劣る(比較例2)。
【0034】
【発明の効果】
本発明の空気清浄用フィルターは、少なくとも比較的大きい粒子を捕集する基布を構成する不織布及び微粒子を捕集する表層を構成するエレクトレット化不織布の積層体からなり、該基布層の不織布に3種類の繊維径の繊維を混抄した不織布を用いているので、粒子捕集効率及び粒子捕集容量に優れ、エアフィルター用材料として、とくにキャビンフィルター用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダスト捕集容量(DHC)を測定するためのフローテスターの概略図である。
【符号の説明】
1 ダスト供給部
2 試料ホルダー
3 圧力損失測定部
4 ファイナルフィルター
5 流量測定部
6 流量制御用ブロワー

Claims (3)

  1. 比較的大きい粒子を捕集する不織布からなる基布と微粒子を捕集するエレクトレット化不織布からなる表層とを積層一体化した空気清浄用フィルターであって、基布を構成する不織布が、(A)5デニール未満の繊維径のビニロン繊維5〜30重量%、(B)5デニール以上10デニール未満の繊維径のポリエステル繊維10〜40重量%、(C)10デニール以上の繊維径のビニロン繊維20〜60重量%の3種類の混合繊維からなり、表層がスパンボンド法またはメルトブロー法で製造された目付が10〜40g/m 、平均繊維径が3〜30μm、通気度が20〜700cc/cm /sec、厚みが0.1〜0.5mmのポリプロピレン不織布をエレクトレット化したエレクトレット化不織布であることを特徴とする空気清浄用フィルター。
  2. 基布層不織布の全体平均繊維径が28〜38μmであることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄用フィルター。
  3. 目付が70〜140g/m、厚みが0.5〜1.2mm、MD剛軟度が1500mg以上、MD引張強度が10kg/50mm以上、通気度が15〜250cc/cm/sec、線速度が5.3cm/sec時の圧力損失が0.1〜5mmAqである請求項1又は2記載の空気清浄用フィルター。
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