JP2019166128A - 脱臭剤封入濾材及びエアフィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アルデヒドガスの吸着寿命に優れ、且つ、集塵性能、脱臭性能をも有する、エアフィルターに用いられる濾材を提供することを目的とするものである。【解決手段】通気性基材(A)と通気性基材(B)との間に脱臭剤を挟んで熱可塑性接着剤によって封入してなる脱臭剤封入濾材であって、空気流出側に配置される通気性基材(A)に平均粒子径1〜50μmの多孔質粒子であるアルデヒド吸着剤がバインダーにより担持されてなる濾材であり、且つ空気流入側に配置される通気性基材(B)がエレクトレット濾材であることを特徴とする脱臭剤封入濾材。【選択図】なし
Description
本発明は、アルデヒド類の吸着寿命に優れた脱臭剤封入濾材に関する。
近年、建材や内装材から放散されたVOC(Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物))、タバコ煙、大気汚染などによる人の健康への影響は深刻であることから、室内空気の質への注目が集まっている。家庭や職場などでは空気清浄化機を用いて塵埃や臭い、有害物質を除去する方法が普及している。
脱臭性能を有する除塵エアフィルターに用いられる濾材としては、通気性を有するウレタンの多孔質基材上に、粒状又は粉体状活性炭を接着させた濾材や、活性炭を含浸させた不織布に、エレクトレットを貼り付けた濾材がある。また、2枚の基材シート間に活性炭を挟み込んで、活性炭シートとした脱臭剤封入濾材(例えば、特許文献1参照)、2枚の基材の間に熱可塑性基材と脱臭剤を挟み込んで、該熱可塑性基材の融着作用によって一体化した脱臭剤封入濾材(例えば、特許文献2参照)がある。
近年の住宅は、冷暖房効率の向上を目的に気密性を高めていることから、換気が不十分になりやすく、室内空気の汚染が問題視されている。特に、住宅建材などに含まれるアルデヒド類は、シックハウス症候群の原因になると考えられ、快適な室内空間のためには、アルデヒド類の効率的な除去が望まれている。家庭や職場などでは空気清浄機を用いてアルデヒド類を除去する方法が普及している。
アルデヒド類は、脱臭剤として最も普及している活性炭では吸着容量が小さいと言う問題があり、吸着脱臭剤に特定のアゾール化合物を担持させたアルデヒド類浄化用吸着材(例えば、特許文献3参照)や特定の活性炭にアミン化合物と酸化防止剤が添着されたアルデヒド吸着材(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、これらのアルデヒド類浄化用吸着剤を封入した濾材を用いたエアフィルターを使用した場合、使用初期の頃はアルデヒド類を良好に吸着するが、当該吸着材は他種類のガスも吸着するため、アルデヒド類の吸着性能が経時と共に劣化すると言う問題がある。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、アルデヒド類の吸着寿命に優れ、且つ、集塵性能、脱臭性能をも有する、エアフィルターに用いられる濾材を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の脱臭剤封入濾材及び集塵脱臭フィルターを発明した。
(1)通気性基材(A)と通気性基材(B)との間に脱臭剤を挟んで熱可塑性接着剤によって封入してなる脱臭剤封入濾材であって、空気流出側に配置される通気性基材(A)に平均粒子径1〜50μmの多孔質粒子であるアルデヒド吸着剤がバインダーにより担持されてなる濾材であり、且つ空気流入側に配置される通気性基材(B)がエレクトレット濾材であることを特徴とする脱臭剤封入濾材。
(2)(1)の脱臭剤封入濾材を用いてなるエアフィルター。
(2)(1)の脱臭剤封入濾材を用いてなるエアフィルター。
本発明の脱臭剤封入濾材によれば、アルデヒド類の吸着寿命に優れ、且つ、集塵性能、脱臭性能をも有するという効果が達成される。そのため、本発明の脱臭剤封入濾材は、エアフィルターとして有効である。
以下、本発明の脱臭剤封入濾材について詳細に説明する。
本発明において、空気流出側に配置されるアルデヒド吸着剤について説明する。アルデヒド類を特異的に吸着する脱臭剤であれば、特に限定されるものではないが、アルデヒド類ガスと良好に反応することから、アゾール化合物、芳香族アミノ酸(例えばo−、m−、p−アミノ安息香酸、o−、m−、p−アミノサリチル酸等)の酸性塩、飽和環状第二アミン化合物(例えばモルホリン等)、イミダゾール及び/又はその誘導体、酸ヒドラジド化合物、ポリアミン化合物、アミノグアニジン塩化合物等の薬品類を多孔質体に添着させた脱臭剤が好ましい。
アルデヒド吸着剤の平均粒子径は1〜50μmであり、より好ましくは3〜20μmである。吸着剤の平均粒子径が1μmよりも小さい、もしくは50μmよりも大きいと、吸着剤の脱落が多くなり、アセトアルデヒド脱臭性能の低下が起こる。本発明における平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定されるメジアン径(d50)を指す。
アルデヒド吸着剤の含有量について、よりプリーツ加工し易いエアフィルター濾材を得るには、5〜40g/m2であることが好ましい。
本発明において、空気流出側に配置される通気性基材(A)について説明する。通気性基材(A)を構成する不織布は、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維等の合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、活性炭素繊維等の無機繊維:木材パルプ、竹パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、藁パルプ、バガスパルプ、コットンリンターパルプ、木綿、羊毛、絹等の天然繊維;古紙再生パルプ、レーヨン等の再生セルロース繊維;コラーゲン等のタンパク質、アルギン酸、キチン、キトサン、澱粉等の多糖類等を原料とした再生繊維等を単独又は組み合わせて使用することができる。これらの繊維には、親水性、難燃性等の機能を付与しても良い。よりプリーツ加工を施し易く、プリーツ加工したエアフィルターを高風速下で使用したときにエアフィルターが変形しないようにするには、ポリエチレンテレフタレート繊維であることが好ましい。
通気性基材(A)の目付は、好ましくは40〜120g/m2であり、より好ましくは50〜80g/m2である。目付が40g/m2未満だと、プリーツ加工を施し難くなり、プリーツ加工したエアフィルターを高風速下で使用したときにエアフィルターが変形する場合があり、目付が120g/m2超だと、プリーツ加工性の低下や、圧力損失(圧損)の上昇、ダスト保持量の低下が起こる場合がある。
通気性基材(A)の厚みは、好ましくは0.2〜1.4mmであり、より好ましくは0.4〜1.0mmである。厚みが0.2mmよりも薄いと、プリーツ加工を施し難くなり、プリーツ加工したエアフィルターを高風速下で使用したときにエアフィルターが変形する場合があり、厚みが1.4mmよりも厚いと、プリーツ加工を施し難くなり、プリーツの山高さが不揃いになる問題や濾材の蛇行が起きる場合がある。
通気性基材(A)とアルデヒド吸着剤とは、バインダーにより固着させることができる。水分散性のバインダーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、スチレン−アクリル樹脂、塩化ビニル−アクリル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンラテックス等が挙げられる。また、水溶性のバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールやデンプン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
バインダー量は、アルデヒド吸着剤に対し、固形分質量基準で5〜50質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。5質量%よりも少ないと、アルデヒド吸着剤の脱落が生じて、アルデヒド吸着性能が低下することがある。50質量%よりも多いと、アルデヒド吸着剤の表面の多くが被覆され、アルデヒド吸着性能が低下することがある。
本発明における通気性基材(A)と通気性基材(B)との間に挟む脱臭剤について説明する。該脱臭剤は、主に悪臭を除去する目的で用いられる薬剤の総称であり、具体的には、活性炭、天然及び合成ゼオライト、セピオライト、活性アルミナ、活性白土などを挙げることができ、アルデヒドと良好に反応する薬品を添着していない、又はアルデヒド以外のガスと良好に反応する薬品を添着した脱臭剤であれば、特に限定されるものではない。脱臭剤は、主に中性脱臭剤、アルカリ性脱臭剤、酸性脱臭剤に大別される。これらの脱臭剤の形状は特に限定されるものではないが、粒子状のものが好ましく、比表面積が50〜2000m2/gのものを適宜選択して用いることが可能である。
中性脱臭剤について説明する。中性脱臭剤は、脱臭剤のうち、脱臭剤と水とを接触させた際、その水のpHが6.0以上8.0以下になるものを指す。中性脱臭剤としては、中性活性炭、中性活性アルミナ、中性シリカゲル、ゼオライトなどを挙げることができる。
アルカリ性脱臭剤について説明する。アルカリ性脱臭剤は、脱臭剤と、脱臭剤に添着された塩基性成分とを含んでなる。脱臭剤は特に限定されるものではなく、塩基性成分を担持できる脱臭剤であればよい。塩基性成分とは、脱臭剤と水とを接触させた際、その水のpHが8.0を超える塩、あるいは芳香族アミノ酸塩基性塩を指す。
酸性脱臭剤について説明する。酸性脱臭剤は、脱臭剤と、脱臭剤に添着された酸性成分とを含んでなる。脱臭剤は特に限定されるものではなく、酸性成分を担持できる脱臭剤であればよい。酸性成分とは、脱臭剤と水とを接触させた際、その水のpHが6.0未満になるような塩を指す。
薬品を添着していない中性脱臭剤は、中性ガスが吸着可能であり、物理吸着サイト面積が大きい。そのため、トルエン、n−ブタン、ベンゼンなどの中性ガスをより多く吸着することができる。
塩基成分を添着した塩基性脱臭剤は、臭気成分のうち低級脂肪酸、硫化水素、メルカプタン類、硫黄酸化物、窒素酸化物等の酸性ガスと反応する。反応したガスは塩基性成分と中和することで、不揮発性物質に変化し、脱臭剤上に捕捉することができる。
酸性成分を添着した酸性脱臭剤は、臭気成分のうちアンモニアやトリメチルアミン、メチルアミン、エチルアミンなどの塩基性ガスと反応する。反応したガスは酸性成分と中和することで、不揮発性物質に変化し、脱臭剤上に捕捉することができる。
従来の脱臭剤封入濾材は、アルデヒド吸着剤と脱臭剤とが混合された状態で配置されていた。そのため。従来の配置では、アルデヒド吸着剤は、塩基性ガス、中性ガス、酸性ガスと同時に接触するため、塩基性ガス、酸性ガスは、良好にアルデヒドと吸着する薬剤と中和反応により吸着してしまい、結果、経時でアルデヒドの吸着性能が低下してしまう。
本発明における脱臭剤封入濾材は、脱臭剤封入濾材の空気流出側に配置する通気性基材(A)にアルデヒド吸着剤を担持させ、通気性基材(A)と通気性基材(B)との間に脱臭剤を配置させることを特徴とする。アルデヒド吸着剤が塩基性ガス、酸性ガスと接触する前に、空気流入側に配置させた塩基性又は/及び酸性脱臭剤が酸性ガス又は/及び塩基性ガスを吸着するため、アルデヒド吸着剤がこれらのガスを中和吸着することを防ぐと共に、中性脱臭剤が中性ガスを吸着するため、アルデヒド吸着剤の物理吸着サイトを保護できるので、アルデヒド類の吸着寿命を長くすることができる。
本発明において、脱臭剤の脱臭剤封入濾材への総封入量は、特に制限されるものではないが、30〜480g/m2であることが好ましく、50〜400g/m2であることがより好ましく、100〜300g/m2であることが更に好ましい。総封入量が、30g/m2未満であると、十分な脱臭性能が得られない場合があり、480g/m2を超えると、通気性基材間の接着強度が低くなり、また、厚さが大きくなってプリーツ加工が困難となるため、実用性が低下する場合がある。
本発明において、熱可塑性接着剤は、熱可塑性樹脂を主体とするものであり、熱可塑性樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合体又はこの変性物、エチレンアクリレート共重合体、アイオノマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン系などの樹脂が挙げられる。
本発明において、熱可塑性接着剤の軟化点又は融点は特に制限されるものではなく、脱臭剤封入濾材の後加工条件や使用環境温度、通気性基材又は脱臭剤の耐熱性などを考慮して適宜選択すれば良い。
本発明において、脱臭剤又は熱可塑性接着剤の形状は、粉体状、粒状、ウイスカー状又は短繊維状であることが好ましく、脱臭剤封入濾材中の脱臭剤の分布を均一にすることができる。
本発明において、脱臭剤又は熱可塑性接着剤が粉体状又は粒状である場合、その粒径は10〜100メッシュであることが好ましく、15〜90メッシュであることがより好ましく、20〜80メッシュであることが更に好ましい。粒径が10メッシュ未満では、活性炭が加圧時に割れる、通気性基材同士の接着点が不均一になるなどの問題が生じる場合があり、一方、粒径が100メッシュを超えると、通気性基材の目から離脱するなどの問題が生じる場合がある。
本発明において、脱臭剤(S)と熱可塑性接着剤(T)の質量比(S/T)は0.3〜4であることが好ましく、0.4〜2.8であることがより好ましく、0.6〜2.5であることが更に好ましい。質量比(S/T)が0.3より小さいと、熱可塑性接着剤が脱臭剤の表面を覆うため、著しく脱臭性能が低下する場合があると共に、脱臭剤封入濾材の通気性が損なわれる場合がある。一方、質量比(S/T)が4より大きいと、接着強度が不足し、2枚の通気性基材の剥離や脱臭剤の離脱が生じ易くなる場合がある。
次いで、本発明の脱臭剤封入濾材を作製する方法を説明する。
通気性基材(A)にアルデヒド吸着剤を担持させる方法としては、アルデヒド吸着剤を通気性基材(A)表面にできるだけ均一に形成できる方法であれば特に制限はなく、溶液又は分散液として、上記の通気性基材(A)に塗工、含浸又はスプレーなどの方法によって付与し、溶媒や分散媒を乾燥等の方法で除去し、アルデヒド吸着剤を担持させる方法が例示される。また、通気性基材(A)の原料となる樹脂や金属などに練り混みなどの手段によって担持させる方法も挙げられる。また、上記の方法以外に湿式抄紙法における内添のように、原料繊維をシート化する過程で、機能性薬剤を内添担持させる方法も挙げられる。
本発明における脱臭剤封入濾材製造工程は特に限定されるものではないが、一般に、空気流出側の通気性基材(A)の上に、脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布し、更にその上に脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布し、空気流入側の通気性基材(B)を重ね合わせ、加熱によって熱可塑性接着剤の接着性を発現させ、一体化して作製される。
一方の通気性基材の上に脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布する場合には、両者を個別に散布しても良いが、脱臭性などに特に影響がなければ予め混合したものを散布することが好ましい。散布の方法としては、ホッパー下部からの自由落下による散布、空気中に分散した送風による散布、水系分散してのスプレー塗工やダイ塗工などが挙げられる。
脱臭剤封入濾材製造工程における加熱は、特に限定されるものではないが、基本的には2方式に大別される。すなわち、一つは、一方の通気性基材上に熱可塑性接着剤、好ましくは脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布した後に加熱する方式である。もう一つは、一方の通気性基材上に脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布して、他方の通気性基材を重ね合わせた後に加熱する方式である。本発明の脱臭剤封入濾材を作製するには、所望に応じてどちらの加熱方式を用いても良く、また、両方の加熱方式を併用しても良い。
一方の通気性基材上に熱可塑性接着剤、好ましくは脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布した後に加熱する方式として、熱可塑性接着剤を散布した側から加熱する方式が挙げられ、接触式の熱伝導による加熱は困難であるため、熱風などの非接触式の加熱手段を採ることが好ましく、中でも赤外線ヒーターやガスバーナーヒーターのような放射熱による手段が特に好ましい。
非接触式の加熱手段において、放射熱又は熱風等を当てる側は特に限定されるものではないが、熱可塑性接着剤を散布した側から加熱することが好ましい。
一方の通気性基材上に脱臭剤と熱可塑性接着剤を散布して他方の通気性基材を重ね合わせた後に加熱する方式として、少なくとも一方が加熱された2本のロールに挟む加熱方式、及び少なくとも一方が加熱された2枚のベルト搬送器に挟む加熱方式など接触式の加熱方式が挙げられる。
通気性基材を重ね合わせた後の一体化は加圧することにより達成でき、例えば加圧したロール間を通す方法などを採用できる。加圧の程度は、接着強度、脱臭剤の潰れ、通気性への影響などを考慮して、適宜設定すればよい。
本発明における脱臭剤封入濾材は、単板で使用しても良いが、一般にプリーツ加工と呼ばれる山谷状の折り加工や段ボール加工における中しんなどの波状加工などを施した形状で使用しても良く、また、巻取り状に加工したロールフィルターとして使用しても良い。
次に、本発明におけるエレクトレット濾材について説明する。大気中の塵埃等の浮遊粒子を捕捉する除塵性能をもつエレクトレット濾材を使用することにより、捕集効率を向上することができる。本発明における通気性基材(B)に用いられるエレクトレット濾材の形態は特に限定されるものではない。コロナ放電などで帯電処理を施したフィルムを繊維状に断裁、それを不織布化したスプリットファイバーエレクトレット濾材や、メルトブロー紡糸時に高電圧を印加して熱エレクトレット的に繊維を帯電させたメルトブロー不織布式エレクトレット濾材、溶融紡糸時に高電圧を印加して熱エレクトレット的に繊維を帯電させたスパンボンド不織布式エレクトレット濾材、又は、一旦、不織布とした後、高電圧を印加して、不織布繊維を帯電させた各種不織布式エレクトレット濾材などを用いることができる。なお、メルトブロー不織布式エレクトレット濾材は単体では力学的強度が小さいため、乾式不織布やスパンボンドなどの補強材を貼り合わせて使用される場合がある。
本発明における帯電処理とは、半永久的に電気分極を保持し、外部に対して電気力を及ぼすものである。帯電方法としては、エレクトロエレクトレット、熱エレクトレット、ラジオエレクトレット、メカノエレクトレット、フォトエレクトレット、マグネットエレクトレットなどが挙げられるが、工業的にエアフィルター用不織布で用いられているものは、主にエレクトロエレクトレット又は熱エレクトレットであり、帯電処理の対象となる繊維材料としては、ポリプロピレン又はプロピレン主体の共重合体が用いられることが多く、また、耐熱性の向上などを目的として例えばステアリン酸アルミニウムやパルミチン酸カルシウムなどの脂肪酸塩等を少量含有する場合がある。
本発明における通気性基材(B)の目付は、好ましくは5〜50g/m2であり、より好ましくは10〜35g/m2である。目付が5g/m2未満だと、通気性基材(B)自体の強度が弱くなり、破れなどが生じて捕集効率が低下する場合があり、目付が50g/m2超だと、圧力損失(圧損)の上昇、ダスト保持量の低下が起こる場合がある。
本発明における通気性基材(B)の厚みは、好ましくは0.2〜0.9mmであり、より好ましくは0.4〜0.7mmである。厚みが0.2mmよりも薄いと、捕集効率の低下が起こる場合があり、厚みが0.9mmよりも厚いと、圧力損失(圧損)の上昇が起こる場合がある。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本実施例に限定されるものではない。
〔調製例1:脱臭剤の混合粉体の調製〕
中性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部に対して、塩基性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部、酸性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部を混合した後、熱可塑性接着剤(軟化点100℃のエチレン酢酸ビニル樹脂粉体)150質量部を混合し、脱臭剤の混合粉体を調製した。
中性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部に対して、塩基性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部、酸性脱臭剤(粒状活性炭)100質量部を混合した後、熱可塑性接着剤(軟化点100℃のエチレン酢酸ビニル樹脂粉体)150質量部を混合し、脱臭剤の混合粉体を調製した。
〔調製例2:通気性基材(B)の作製〕
坪量30g/m2の市販ポリプロピレン製スパンボンド不織布(三井化学(株)製)に、高電圧を印加してエレクトレット濾材を調製した。該エレクトレット濾材を通気性基材(B)とする。
坪量30g/m2の市販ポリプロピレン製スパンボンド不織布(三井化学(株)製)に、高電圧を印加してエレクトレット濾材を調製した。該エレクトレット濾材を通気性基材(B)とする。
<実施例1>
坪量50g/m2の市販ポリエステル製スパンボンド不織布(フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(株)製)に、平均粒子径20μmのアルデヒド吸着剤(4−アミノ−1,2,4−トリアゾールと塩化第二鉄を添着させた粒状活性炭)を固形分付着量が20g/m2となるように含浸塗布し、120℃で乾燥して、通気性基材(A)を作製した。なお、含浸塗布時には、ポリ塩化ビニル系エマルジョンバインダーをアルデヒド吸着剤に対して固形分質量基準で、20質量%となるように調製した。通気性基材(A)の上に、調製例1の混合粉体250g/m2を散布する。散布側から表面温度150℃の赤外線ヒーターを当てて加熱し、次いで、熱可塑性接着剤が可塑化した後に加熱を止め、速やかに通気性基材(A)の脱臭剤散布側に通気性基材(B)(調製例2のエレクトレット濾材)と重ね合わせて2本の回転ロール間に挟んで加圧し、接着により一体化し、実施例1の脱臭剤封入濾材を得た。
坪量50g/m2の市販ポリエステル製スパンボンド不織布(フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(株)製)に、平均粒子径20μmのアルデヒド吸着剤(4−アミノ−1,2,4−トリアゾールと塩化第二鉄を添着させた粒状活性炭)を固形分付着量が20g/m2となるように含浸塗布し、120℃で乾燥して、通気性基材(A)を作製した。なお、含浸塗布時には、ポリ塩化ビニル系エマルジョンバインダーをアルデヒド吸着剤に対して固形分質量基準で、20質量%となるように調製した。通気性基材(A)の上に、調製例1の混合粉体250g/m2を散布する。散布側から表面温度150℃の赤外線ヒーターを当てて加熱し、次いで、熱可塑性接着剤が可塑化した後に加熱を止め、速やかに通気性基材(A)の脱臭剤散布側に通気性基材(B)(調製例2のエレクトレット濾材)と重ね合わせて2本の回転ロール間に挟んで加圧し、接着により一体化し、実施例1の脱臭剤封入濾材を得た。
<実施例2>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤を固形分付着量が5g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤を固形分付着量が5g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の脱臭剤封入濾材を得た。
<実施例3>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤を固形分付着量が40g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤を固形分付着量が40g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の脱臭剤封入濾材を得た。
<実施例4>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を1μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を1μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の脱臭剤封入濾材を得た。
<実施例5>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を50μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を50μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の脱臭剤封入濾材を得た。
<比較例1>
坪量50g/m2の市販ポリエステル製スパンボンド不織布(フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(株)製)の上に、調製例1の混合粉体270g/m2を散布する。散布側から表面温度150℃の赤外線ヒーターを当てて加熱し、次いで、熱可塑性接着剤が可塑化した後に加熱を止め、速やかに市販ポリエステル製スパンボンド不織布の脱臭剤散布側に通気性基材(B)(調製例2のエレクトレット濾材)と重ね合わせて2本の回転ロール間に挟んで加圧し、接着により一体化し、比較例1の脱臭剤封入濾材を得た。
坪量50g/m2の市販ポリエステル製スパンボンド不織布(フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(株)製)の上に、調製例1の混合粉体270g/m2を散布する。散布側から表面温度150℃の赤外線ヒーターを当てて加熱し、次いで、熱可塑性接着剤が可塑化した後に加熱を止め、速やかに市販ポリエステル製スパンボンド不織布の脱臭剤散布側に通気性基材(B)(調製例2のエレクトレット濾材)と重ね合わせて2本の回転ロール間に挟んで加圧し、接着により一体化し、比較例1の脱臭剤封入濾材を得た。
<比較例2>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を0.5μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を0.5μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の脱臭剤封入濾材を得た。
<比較例3>
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を60μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた通気性基材(A)のアルデヒド吸着剤の平均粒子径を60μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の脱臭剤封入濾材を得た。
<比較例4>
実施例1で用いた調製例1の混合粉体250g/m2を、熱可塑性接着剤(軟化点100℃のエチレン酢酸ビニル樹脂粉体)5g/m2に代える以外は、実施例1と同様の方法により、比較例4の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1で用いた調製例1の混合粉体250g/m2を、熱可塑性接着剤(軟化点100℃のエチレン酢酸ビニル樹脂粉体)5g/m2に代える以外は、実施例1と同様の方法により、比較例4の脱臭剤封入濾材を得た。
<比較例5>
実施例1において、通気性基材(B)を、調製例2のエレクトレット濾材から坪量30g/m2の市販ポリプロピレン製濾材(三井化学(株)製)に代える以外は、実施例1と同様の方法により、比較例5の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1において、通気性基材(B)を、調製例2のエレクトレット濾材から坪量30g/m2の市販ポリプロピレン製濾材(三井化学(株)製)に代える以外は、実施例1と同様の方法により、比較例5の脱臭剤封入濾材を得た。
実施例1〜5及び比較例1〜5の脱臭剤封入濾材を、下記の性能試験に従って評価し、その結果を表1に示した。なお、下記各試験は、25℃、50%RH(相対湿度)の条件で行なった。
[初期脱臭試験]
JEM 1467脱臭性能試験に準拠して、風速0.5m/秒における実施例及び比較例の10cm×10cmに裁断した脱臭剤封入濾材の脱臭効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。測定対象ガスは、酢酸、アンモニア、アセトアルデヒドであり、濃度(ppm)はガス検知管で測定した。ガスの除去率から、次のように判定した。除去率100〜80%の場合「◎」、79〜50%の場合「○」、49〜20%の場合「△」、20%未満の場合「×」。
JEM 1467脱臭性能試験に準拠して、風速0.5m/秒における実施例及び比較例の10cm×10cmに裁断した脱臭剤封入濾材の脱臭効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。測定対象ガスは、酢酸、アンモニア、アセトアルデヒドであり、濃度(ppm)はガス検知管で測定した。ガスの除去率から、次のように判定した。除去率100〜80%の場合「◎」、79〜50%の場合「○」、49〜20%の場合「△」、20%未満の場合「×」。
[耐久脱臭試験]
JEM 1467脱臭性能試験に準拠して、風速0.5m/秒における実施例及び比較例の10cm×10cmに裁断した脱臭剤封入濾材の脱臭効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。測定対象ガスは、酢酸、アンモニア、アセトアルデヒドであり、濃度(ppm)はガス検知管で測定した。アセトアルデヒドの除去率が50%未満となるまで、上記の試験を繰り返した。50%未満となる試験回数から、次のように判定した。100回以上の場合「◎」、70〜99回の場合「○」、50〜69回の場合「△」、50回未満の場合「×」。
JEM 1467脱臭性能試験に準拠して、風速0.5m/秒における実施例及び比較例の10cm×10cmに裁断した脱臭剤封入濾材の脱臭効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。測定対象ガスは、酢酸、アンモニア、アセトアルデヒドであり、濃度(ppm)はガス検知管で測定した。アセトアルデヒドの除去率が50%未満となるまで、上記の試験を繰り返した。50%未満となる試験回数から、次のように判定した。100回以上の場合「◎」、70〜99回の場合「○」、50〜69回の場合「△」、50回未満の場合「×」。
[圧力損失測定]
JIS−B−9908に準拠して風速5cm/秒における実施例及び比較例の脱臭剤封入濾材の圧力損失(Pa)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。
JIS−B−9908に準拠して風速5cm/秒における実施例及び比較例の脱臭剤封入濾材の圧力損失(Pa)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。
[集塵試験]
JIS−B−9908に準拠して、風速5cm/秒における実施例及び比較例の脱臭剤封入濾材の0.3〜0.5μm粒径の大気塵の集塵効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。
JIS−B−9908に準拠して、風速5cm/秒における実施例及び比較例の脱臭剤封入濾材の0.3〜0.5μm粒径の大気塵の集塵効率(%)を測定した。空気流入側は通気性基材(B)、流出側は通気性基材(A)とする。
表1より、実施例の脱臭剤封入濾材は、集塵性能、脱臭性能を有するのみならず、比較例と比較して、アセトアルデヒド吸着の経時劣化を抑制できることが確認できた。
特に、実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方がアセトアルデヒド吸着の劣化が少なく良好であることがわかる。このことから、空気流出側に特定の粒子径のアルデヒド吸着剤を担持した通気性基材(A)が配置されてなる脱臭剤封入濾材は、アルデヒド類の吸着寿命に優れ、有効であることが確認できた。
本発明の脱臭剤封入濾材は、集塵性能、脱臭性能を有する。一定の範囲内の室内環境を改善することができるため、空調機、空気清浄機、掃除機、除湿機、乾燥機、加湿機、換気扇、熱交換装置等の各種空気処理装置のエアフィルターに利用できる。
Claims (2)
- 通気性基材(A)と通気性基材(B)との間に脱臭剤を挟んで熱可塑性接着剤によって封入してなる脱臭剤封入濾材であって、空気流出側に配置される通気性基材(A)に平均粒子径1〜50μmの多孔質粒子であるアルデヒド吸着剤がバインダーにより担持されてなる濾材であり、且つ空気流入側に配置される通気性基材(B)がエレクトレット濾材であることを特徴とする脱臭剤封入濾材。
- 請求項1記載の脱臭剤封入濾材を用いてなるエアフィルター。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018056778A JP2019166128A (ja) | 2018-03-23 | 2018-03-23 | 脱臭剤封入濾材及びエアフィルター |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018056778A JP2019166128A (ja) | 2018-03-23 | 2018-03-23 | 脱臭剤封入濾材及びエアフィルター |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019166128A true JP2019166128A (ja) | 2019-10-03 |
Family
ID=68105789
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018056778A Pending JP2019166128A (ja) | 2018-03-23 | 2018-03-23 | 脱臭剤封入濾材及びエアフィルター |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019166128A (ja) |
-
2018
- 2018-03-23 JP JP2018056778A patent/JP2019166128A/ja active Pending
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